説明

難燃性樹脂組成物の折り曲げ加工品

【課題】難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品を提供する。
【解決手段】少なくとも1箇所以上の折り曲げ部分を有する難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品であって、該折り曲げ加工品は、(イ)加熱変形温度が100℃以上であり、(ロ)厚さが0.5mm未満であり、(ハ)UL94記載の20mm垂直燃焼試験においてV−0に判定される難燃性能を有し、(二)臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする折り曲げ加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品に関する。詳しくは、折り曲げ加工特性と高度難燃性が同時に達成された、難燃絶縁部材として好適な難燃性の樹脂組成物からなる折り曲げ加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性を有する樹脂組成物からなるシートやフィルムは、電気・電子製品の内部において難燃絶縁部材をはじめとして、幅広い用途に使用されている。特に、電源部周辺に使用される難燃絶縁部材は高度な難燃性能が要求される。
しかしながら、一般的にシートやフィルムはその厚みが小さくなると、高度な難燃性を達成することが非常に困難となる。特に、最近では環境調和型の材料が望まれる風潮から、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を使用することなしに、厚み0.5mm未満で米国UL94規格の20mm垂直燃焼性試験に対してV−0を達成できるシートやフィルムが強く望まれているが、その要求を十分に満たしているとはいえない。
【0003】
例えば、特許文献1、2では組成物中にハロゲンを含まない、厚み0.25mmでUL94規格でVTM−0の難燃性を有する絶縁シートもしくはフィルムが提案されているが、VTM−0に較べて難燃性のレベルとしては厳しいV−0難燃性の評価については触れられていない。
一方で、難燃絶縁部材として使用されるシートもしくはフィルムは、電気・電子製品の内部において空間使用効率を高めるために、折り曲げ加工品として使用されるのが一般的である。しかしながら、電気・電子製品で使用される難燃絶縁部材としては、通常高い耐熱使用温度が望まれるため、この耐熱要求を満足する樹脂組成物のシートもしくはフィルムでは室温領域における材料剛性は高く、このため折り曲げ加工が一般にしづらく、また、シートもしくはフィルムの厚みが大きくなるほど、その折り曲げ加工性は大きく低下する。
【0004】
従って、難燃絶縁部材として使用されるシートもしくはフィルムは、その厚みを少しでも小さくすることができれば、家電製品の内部空間効率を高めることができるのみならず、折り曲げ加工による賦型が極めて容易となり、その生産性を高めることができる。同時に、折り曲げ加工に伴う材料の破損や亀裂の発生を押さえることができ、良品取得率を高くすることができる。
上記のように、難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品を提供することができれば、その産業上の利用価値が極めて大きい。
【0005】
【特許文献1】特開2002−30209号公報
【特許文献2】特開2002−226694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まない難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも1箇所以上の折り曲げ部分を有する難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品であって、該折り曲げ加工品は、(イ)加熱変形温度が100℃以上であり、(ロ)厚さが0.5mm未満であり、(ハ)UL94記載の20mm垂直燃焼試験においてV−0に判定される難燃性能を有し、(二)臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする折り曲げ加工品とすることにより課題が達成できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記[1]〜[4]である。
[1]少なくとも1箇所以上の折り曲げ部分を有する難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品であって、該折り曲げ加工品は、(イ)加熱変形温度が100℃以上であり、(ロ)厚さが0.5mm未満であり、(ハ)UL94記載の20mm垂直燃焼試験においてV−0に判定される難燃性能を有し、(二)臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする折り曲げ加工品。
[2]該難燃性の樹脂組成物が、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物であることを特徴とする前記[1]に記載の折り曲げ加工品。
【0009】
[3]該難燃性の樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、珪酸塩化合物(B)0.1〜20重量部、有機酸および/または有機酸誘導体(C)0.01〜1重量部、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.01〜1重量部、フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする前記[1]に記載の折り曲げ加工品。
[4]該折り曲げ加工品が難燃絶縁部材であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の折り曲げ加工品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品は、難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないので、とりわけ難燃絶縁部材として有用であり、産業上の利用価値が極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の折り曲げ加工品に使用される難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムは、(イ)加熱変形温度が100℃以上であり、(ロ)厚さが0.5mm未満であり、(ハ)UL94記載の20mm垂直燃焼試験においてV−0に判定される難燃性能を有し、(二)臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする。
ここで、加熱変形温度とは、ISO−75−1に準じて荷重1.82MPaで測定した値[単位:℃]を示す。
【0012】
本発明では、該「加熱変形温度」は100℃以上300℃以下であり、105℃以上280℃以下が好ましく、110℃以上250℃以下が更に好ましく、115℃以上230℃以下が特に好ましい。
厚さとは、シートまたはフィルムの平均厚みとする。
本発明では、該「厚さ」は0.5mm未満であり、0.1mm以上0.49mm以下が好ましく、0.2mm以上0.49mm以下がより好ましく、0.3mm以上0.49mm以下が更に好ましい。
【0013】
本発明にかかわる難燃性のシートまたはフィルムを構成する樹脂組成物は、ポリカーボ
ネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、から選ばれる樹脂の少なくとも一つを含む樹脂組成物が好ましく使用される。
上記の中で、より好ましくは、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルから選ばれる樹脂の少なくとも一つを含む樹脂組成物であり、特に好ましくはポリカーボネートを含む樹脂組成物である。
【0014】
本発明の折り曲げ加工品に使用される難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムとして好ましい実施様態として、芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、珪酸塩化合物(B)0.1〜20重量部、有機酸および/または有機酸誘導体(C)0.01〜1重量部、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.01〜1重量部、フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含む樹脂組成物からなるシートまたはフィルムを挙げることができる。
ここで、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂とは、成分(A)の総量を100重量部とした場合に、成分(A)の50重量部を超える成分が芳香族ポリカーボネートであり、残りの樹脂成分が芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂であるものを示す。
【0015】
前記成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類、等を挙げることができる。
これらの中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
前記成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、公知の方法で製造したものを使用することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033(米国特許第4,948,871号に対応)、特開平1−271426、特開平3−68627(米国特許第5,204,377号に対応))などの方法により製造されたものを用いることができる。
【0017】
前記芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13,000〜50,000、特に好ましくは15,000〜30,000、とりわけ好まし
くは17,000〜25,000である。
本発明において、芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができ、測定条件は以下の通りである。すなわち、テトラヒドロフランを溶媒として、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
pc=0.3591Mps1.0388
(Mpcは芳香族ポリカーボネートの分子量、Mpsはポリスチレンの分子量)
【0018】
また、前記成分(A)として使用される芳香族ポリカーボネートは、分子量が異なる2種以上の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することもできる。
前記芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂において、好ましく使用することができる芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリルースチレン樹脂(AS樹脂)、ブチルアクリレートーアクリロニトリルースチレン樹脂(BAAS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレートーブタジエンースチレン樹脂(MBS樹脂)、ブチルアクリレートーアクリロニトリルースチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。特にAS樹脂、BAAS樹脂は流動性を向上させるのに好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるのに好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるのに好ましい。
【0019】
前記珪酸塩化合物(B)は金属酸化物成分とSiO成分とからなる珪酸塩化合物であり、天然物および人工合成物のいずれも使用することができる。
前記成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物は、その組成が実質的に下記式(1)で示されるものである。
xMO・ySiO・zHO (1)
(ここでxおよびyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MOは金属酸化物成分を表し、複数の金属酸化物成分であってもよい。)
【0020】
上記金属酸化物MOにおける金属Mは、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどを挙げることが出来る。
金属酸化物MOにおいて好ましいものは、CaO、またはMgOのいずれかを実質的に含むものである。更に好ましいものは金属酸化物MOが、CaOおよびMgOから選択される少なくとも1種の成分から実質的になる場合であり、特に好ましいものはMgOから実質的になる場合である。
前記成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、等を挙ることができる。
【0021】
また、前記「珪酸塩化合物」は、任意の形状(板状、針状、粒状、繊維状等)のものが使用できるが、板状、針状のものが好ましく、中でも特に、板状の形態であるものが最も好ましい。
ここで板状の形態とは、平均粒子径を(a)、厚みを(c)とした場合に、a/c比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
【0022】
また、針状の形態とは、長軸方向の平均粒子径を(a)、単軸方向の平均粒子径を(c)とした場合に、a/c比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
前記成分(B)の平均粒子径は、0.1〜500μmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましく、1〜50μmが更に好ましく、2〜30μmが特に好ましく、3〜20μmが最も好ましい。
尚、本発明でいう平均粒子径は、レーザー回折法により(例えば、島津製作所製SALD−2000を使用して)平均粒子径を求める。
【0023】
前記成分(B)として特に好ましいものは、タルク、およびマイカである。
前記タルクは、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムであり、化学式4SiO・3MgO・HOで表され、通常、SiO 約63 重量%、MgO 約32%、HO 約5重量%、その他Fe、CaO、Alなどを含有しており、比重は約2.7である。
該タルクとして、焼成タルクや、塩酸や硫酸等の酸で洗浄して不純物を除いたタルク、等も好ましく使用することができる。さらに、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理を行ったタルクも使用することができる。
【0024】
一方、前記マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄、等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母(マスコバイト、化学式: K(AlSi3O10)(OH)2Al4(OH)2(AlSi3O10)K)、金雲母(フロゴパイト、化学式: K(AlSi3O10)(OH)2Mg6(OH)2(AlSi3O10)K)、黒雲母(バイオタイト、化学式: K(AlSi3O10)(OH)2(Mg,Fe)6(OH)2(AlSi3O10)K)、人造雲母(フッ素金雲母、化学式: K(AlSi3O10)(OH)2F2Mg6F2(AlSi3O10)K)等があり、いずれのマイカも使用できるが、好ましくは白雲母である。
また、かかるマイカはシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理されていてもよい。
前記成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.1〜20重量部であり、0.5〜15重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、2〜8重量部が更に好ましい。
【0025】
前記有機酸および/または有機酸誘導体(C)とは、具体的には、有機酸及び/または有機酸エステル、有機酸無水物から選ばれる有機酸誘導体を挙げることができ、これらは低分子化合物のみならず、オリゴマー状あるいはポリマー状のものを使用することができ、また二種以上を併用することもできる。
前記「有機酸」とは、−SOH基、−COOH基、−POH基からなる群から選ばれる基を分子構造中に少なくとも1つ含む有機化合物、すなわち、有機スルホン酸、有機カルボン酸、有機リン酸であり、これらの中でも有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましく、特に、有機スルホン酸が好ましい。
【0026】
中でも、成分(C)として有機スルホン酸、有機スルホン酸エステルを使用する場合は、樹脂組成物の溶融安定性が特に優れており、揮発成分の発生も低レベルに抑えることができるために、広い温度範囲で成形加工が行えると共に、成形品の外観にも極めて優れる。
前記成分(C)のうち、好ましく使用することができる有機スルホン酸として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジイソブチルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、等の芳香族スルホン酸、炭素数8〜18の脂肪族スルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル・スルホン化スチレン共重合体等のポリマーまたはオリゴマー状の有機スルホン酸、等を挙げることができる。
【0027】
また、前記成分(C)として好ましく使用することができる有機スルホン酸エステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル、ナフタレンスルホン酸メチル、ナフタレンスルホン酸エチル、ナフタレンスルホン酸プロピル、ナフタレンスルホン酸ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、等を挙げることができる。
該成分(C)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、さらに好ましくは0.08〜0.6重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0028】
前記組成物において、成分(C)の使用量(重量部数)は、前記成分(B)と成分(C)の混合物をJIS−K5101に基づいてpH値を測定したときに、該混合物のpH値が4〜8の範囲となる重量部数であることが好ましく、4.2〜7.8の範囲となる重量部数である場合がより好ましく、4.5〜7.6の範囲となる重量部数である場合がさらに好ましく、5.0〜7.4の範囲となる重量部数である場合が特に好ましく、5.5〜7.2の範囲となる重量部数である場合が最も好ましい。
ここで、JIS−K5105のpH値の測定では、操作方法として煮沸法と常温法があるが、本発明では煮沸法を用いる。
【0029】
前記成分(D)は有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩である。
かかる成分(D)として好ましく使用できる有機酸金属塩は、有機スルホン酸の金属塩、及び/又は、硫酸エステルの金属塩であり、これらは単独の使用だけでなく2種以上を混合して使用することも可能である。
該有機酸金属塩に含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましいアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムであり、最も好ましくはナトリウム、カリウムである。
【0030】
前記成分(D)として、好ましい例として、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウム、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸カリウム、キシレンスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウム、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン
酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、等を挙げることができる。
これらの中で特に好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩であり、その例として、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を挙げることができる。
前記成分(D)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、0.05〜0.8重量部が好ましく、0.08〜0.7重量部がより好ましく、0.1〜0.5重量部が更に好ましく、0.15〜0.4重量部が特に好ましい。
【0031】
前記成分(E)は、フルオロポリマーであり、燃焼物の滴下を防止する目的で使用される場合があり、フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーが好ましく使用され、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体等のテトラフルオロエチレンポリマー、を好ましく使用することができ、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
該成分(E)は、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
【0032】
本発明で好ましく使用できるフルオロポリマーの水性ディスパージョンとして、三井デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン30J(登録商標)」、ダイキン工業(株)製「ポリフロンD−1(登録商標)」、「ポリフロンD−2(登録商標)」、「ポリフロンD−2C(登録商標)」、「ポリフロンD−2CE(登録商標)」を例示することができる。
また、成分(E)として、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーも好適に使用することができるが、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーに関する技術は、特開平9−95583号公報(米国特許第5,804,654号明細書に対応)、特開平11−49912号公報(米国特許第6,040,370号明細書に対応)、特開2000−143966号公報、特開2000−297189号公報等に開示されている。本発明において好ましく使用できる、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーとして、GEスペシャリティケミカルズ社製「Blendex 449(登録商標)」、三菱レーヨン(株)製「メタブレンA−3000、同A−3800、同A−3700(登録商標)」を例示することができる。
【0033】
かかる成分(E)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、より好ましくは0.08〜0.6重量部、さらに好ましくは0.1〜0.4重量部である。
本発明の折り曲げ加工品に使用される難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムは、必要に応じて、染顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滑剤、加工助剤、分散剤、離型剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを添加することもできる。
【0034】
次に、本発明にかかわる難燃性の樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明にかかわる難燃性の樹脂組成物は、好ましくは押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練することにより得ることが出来る。このときの各構成成分の配合、及び溶融混練は一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダー等の予備混合装置、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することが出来る。
また、本発明の樹脂組成物をシート、フィルムに成形するにはインフレーション法や、
カレンダー法、キャスティング法、プレス法、等も使用可能である。
【0035】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分を使用し、樹脂組成物を製造した。
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
(A−1)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造された、ビスフェノールA系ポリカーボネートであり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを500ppm、および、ホスファイト系熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを500ppm含むもの。
重量平均分子量(Mw)=24,000
【0036】
2.成分(B):珪酸塩化合物
(B−1)
タルク(日本タルク株式会社製 「マイクロエースP3(登録商標)」)
3.成分(C):有機酸または有機酸誘導体
(C−1)
p−トルエンスルホン酸 和光純薬工業株式会社製
【0037】
4.成分(D):有機酸金属塩
(D−1)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ工業(株)製「メガファックF114(登録商標)」)
5.成分(E):フルオロポリマー
(E−1)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とポリメチルメタクリレート(PMMA)の50/50(重量比)粉体状混合物(三菱レーヨン株式会社製「メタブレンA−3800(登録商標)」)
【0038】
〔実施例1〜3、及び、比較例1〜3〕
各成分を表1に示す量(単位は重量部)で二軸押出機を用いて溶融混練して樹脂組成物を得た。
各成分は予めタンブラーを用いて5分間予備混合を行って原料混合物とした。
成分(B)と成分(C)の混合物をJIS−K5101に基づいてpH値を測定した結果、pH値は6.2となった。
しかる後に、2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)を使用し、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練を行った。
溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押出され、ペレタイズされる。得られたペレットを用いて、40mm単軸押出機とT型ダイス等を用いて所定厚みのシート(表1 実施例1〜比較例3)を作成した。
【0039】
得られたシートを以下の方法で評価した。
(1)難燃性
UL94規格20mm垂直燃焼試験方法に準じて、燃焼試験用の短冊状成形体(長さ:127mm、幅:12.7mm)を、シート押し出し方向と短冊片長軸方向が一致するように切り出し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日間保持した後、UL94規格に準じて20mm垂直燃焼試験を行い、V−0難燃性を判定した。
【0040】
(2)フィルム折り曲げ強度評価
得られたシートを、幅50mm、長さ100mmの短冊状に切り出し(但し、長さ方向とシート押し出し方向を一致させた)、その短冊の両端を揃えてセロハンテープで固定し、リング状の試験片を調製した。
引っ張り圧縮試験機(インストロン社製5581)を用い、図1に示すように前記リング状の試験片をサンプル用治具上に乗せ、圧縮モード(速度:5mm/min)で試験片に変形を加え、サンプル用治具間距離が2mmに到達したときの反発力を測定した。(単位:N)
該反発力が小さいほど、折り曲げ加工が行いやすいことを示す。
【0041】
(3)耐熱性
得られたシートを積層して、250℃でプレスすることにより、厚さ4mmのシートを作成し、該シートからISO−75−1に準拠して試験片を切り出し、荷重条件1.82MPaにて加熱変形温度を測定した。(単位:℃)
結果を表1に示す。
実施例1〜3は、難燃性(V−0)に優れ、フィルム折り曲げ強度が小さく(即ち、折り曲げ加工性に優れ)、さらに、耐熱性に優れることが示される。
一方、比較例1、2はフィルム折り曲げ強度が大きく(即ち、折り曲げ加工性に劣り)、また、比較例3では難燃性が劣る。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の折り曲げ加工品は、難燃性、耐熱性、折り曲げ加工性に優れ、かつ、臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品であり、電気電子部品材料、自動車部品材料、建築用材料等として、特に、難燃性と折り曲げ加工性が優れるので作業効率を高めることができ、また空間使用効率を高めることができるという点で極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】フィルム折り曲げ強度の測定方法を説明する概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1箇所以上の折り曲げ部分を有する難燃性の樹脂組成物のシートまたはフィルムの折り曲げ加工品であって、該折り曲げ加工品は、(イ)加熱変形温度が100℃以上であり、(ロ)厚さが0.5mm未満であり、(ハ)UL94記載の20mm垂直燃焼試験においてV−0に判定される難燃性能を有し、(二)臭素化合物難燃剤または塩素化合物難燃剤を含まないことを特徴とする折り曲げ加工品。
【請求項2】
該難燃性の樹脂組成物が、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ加工品。
【請求項3】
該難燃性の樹脂組成物が、芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、珪酸塩化合物(B)0.1〜20重量部、有機酸および/または有機酸誘導体(C)0.01〜1重量部、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.01〜1重量部、フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の折り曲げ加工品。
【請求項4】
該折り曲げ加工品が難燃絶縁部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の折り曲げ加工品。


【図1】
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【公開番号】特開2007−153983(P2007−153983A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349111(P2005−349111)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】