説明

雨水・汚濁物流入量演算モデルの作成装置及び作成方法

【課題】所望の降雨と下水管への流出現象及びポンプ場への流下現象を仮想的に生じさせ、それを入出力データに加え、第2の演算モデルを構築する。
【解決手段】1つ以上の方程式からなる,対象の下水道施設に合わせてその係数又は定数の値を予め定めた第1の演算モデル1と、1つ以上の方程式からなる,その係数又は定数の値が未定である第2の演算モデル2と、雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データ発生手段3と、第1の演算モデルより下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる仮想流入量データ発生手段4と、少なくとも仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データからなる仮想入出力データにより第2の演算モデルにおける未定の係数・定数の値を定める手段5を有し、第2の演算モデルを構築するためのデータを第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする雨水流入量演算モデルの作成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設の安全かつ効率的な運用のために、雨天時の雨水流入量および汚濁物量を予測する雨水・汚濁物流入量演算モデルの作成装置及び作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、都市下水道において降雨時に下水管や排水溝を流下してくる雨水を河川等に排水することを目的として、下水道施設が設置されている。下水道施設は、汚水の処理だけでなく、雨水に起因する災害を防止し、都市衛生の安全および環境の保持を図るため必要不可欠なものである。こうした下水道施設への雨水の流入量や汚濁物量を予測する手法に関しては、例えば特許文献1,特許文献2に開示されている。特許文献1,2には、雨水流出過程を水文学的に模擬したモデルと水理学に基づく偏微分方程式モデルを組合せて数値計算により解く方法や、「水理公式集」等で公知の汚濁負荷流出解析モデルが開示されている。
【0003】
また、雨水流出や汚濁負荷流出の現象を物理的な側面から詳細にモデル化するこれらのアプローチの他に、入力となる雨量と出力となる流入量の夫々の時系列データのみから入出力関係を同定するブラックボックス的なアプローチがある。具体的には、例えばニューラルネットワークを用いた手法が特許文献3に開示されている。更に、システム同定の手法を用いて非線形モデルの一種であるBlock-orientedモデルを同定する方法が特許文献4に開示されている。更には、非特許文献1には、雨天時の汚濁流出解析モデルについて水理公式を用いて説明してある。
【0004】
一般に、後者のブラックボックス的な手法により構築した数理モデルは、演算処理の簡便性から、前者の物理モデルに比べて、限られた計算機資源の中で短時間の応答が求められるようなオンラインシステムの場合に適している。
【特許文献1】特開平11−36422号公報
【特許文献1】特開平6−322808号公報
【特許文献3】特開平5−134715号公報
【特許文献4】特開2000−56835号公報
【非特許文献1】土木学会編、「水理公式集」、p.p.450-452、平成6年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モデルの入出力関係をブラックボックスモデルとして同定する場合、対象とする現象を再現しうるためには、プロセスの特性を捉えるのに適切な種類、数及びパターンのデータが必要となる。例えば、小雨のみのデータで同定したモデルでは、大雨のときの予測精度が著しく劣化する。従って、実績データから雨量とポンプ場流入量の間の入出力関係をブラックボックスとして同定する際に、データ収集が不十分あるいは不可能である場合や、収集したデータの中にないパターンの降雨現象に対しては、予測の信頼性に懸念が持たれていた。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、オンライン性が要求されない予測モデル作成の段階において、所望の降雨と下水管への流出現象およびポンプ場への流下現象を仮想的に生じさせ、それをブラックスボックスモデル構築のための入出力データに加えて、予測可能な流入パターンを拡充することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る雨水流入量演算モデルの作成装置は、請求項1記載のように、雨水の下水道施設への流入量の予測のための演算モデルを作成する装置であって、単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルと、単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルと、所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データ発生手段と、前記第1の演算モデルを用いて下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる仮想流入量データ発生手段と、少なくとも仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める手段を有し、前記第2の演算モデルを構築するためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする。
【0008】
(2) 本発明に係る雨水流入量演算モデルの作成装置は、請求項2に記載のように、前記(1)において、仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることを特徴とする。
【0009】
(3) 本発明に係る雨水流入量演算モデルの作成装置は、請求項3に記載のように、前記(1)又は(2)において、前記第1の演算モデルが、水文学に基づく雨水流出過程、あるいは水理学に基づく下水管内の雨水流下過程、もしくはそれらの組合せを記述した,単一または複数の方程式から構成され、数値計算により解かれること特徴とする。
【0010】
(4) 本発明に係る雨水流入量演算モデルの作成装置は、請求項4に記載のように、前記(1)〜(3)において、前記第2の演算モデルが、過去の入出力時系列データのみからその関数関係を定めるブラックボックスモデルであり、現時点での雨量と現時点より前の雨量、現時点での流入量と現時点より前の流入量を入力変数として、現時点より後の時刻の流入量を出力変数とし、これらの変数と係数あるいは定数から成る多項式の関数であることを特徴とする。
【0011】
(5) 本発明に係る汚濁物流入量演算モデルの作成装置は、請求項5に記載のように、下水道施設に流入する雨天時の汚濁物量の予測のための演算モデルを作成する装置であって、単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルと、単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルと、所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データ発生手段と、前記第1の演算モデルを用いて、下水道施設へ汚濁物量の流入現象を仮想的に生じさせる仮想汚濁物データ発生手段と、少なくとも仮想雨量時系列データと仮想濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める手段を有し、前記第2の演算モデル構築のためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする。
【0012】
(6) 本発明に係る汚濁物流入量演算モデルの作成装置は、請求項6に記載のように、前記(5)において、仮想雨量時系列データと仮想汚濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることを特徴とする。
【0013】
(7) 本発明に係る汚濁物流入量演算モデルの作成装置は、請求項7に記載のように、前記(5)又は(6)において、前記第1の演算モデルが、水文学的に基づく雨水流出過程と、水理学に基づく下水管内の雨水流下過程,汚濁物の堆積,移流の各過程を記述する単一または複数の方程式から構成され、数値計算により解かれること特徴とする。
【0014】
(8) 本発明に係る汚濁物流入量演算モデルの作成装置は、請求項8記載のように、前記(5)〜(7)において、前記第2の演算モデルが、過去の入出力時系列データのみからその関数関係を定めるブラックボックスモデルであり、少なくとも現時点での雨量と現時点より前の雨量、現時点での汚濁物量と現時点より前の汚濁物量を入力変数として含み、現時点より後の時刻の汚濁物量を出力変数とする演算モデルであり、これらの変数と係数あるいは定数から成る多項式の関数であることを特徴とする。
【0015】
(9) 本発明の雨水流入量演算モデルの作成方法は、請求項9に記載のように、雨水の下水道施設への流入量の予測のための演算モデルを作成する方法であって、単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルを作成する工程と、所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データを作成する工程と、前記第1の演算モデルを用いて下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる仮想流入量データを作成する工程と、少なくとも仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める工程とを具備し、単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルを構築するためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする。上記作成方法においては、上記(2)と同様、仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることができる。
【0016】
(10) 本発明の汚濁物流入量演算モデルの作成方法は、請求項10に記載のように、下水道施設に流入する雨天時の汚濁物量の予測のための演算モデルを作成する方法であって、単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルを作成する工程と、所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データを作成する工程と、前記第1の演算モデルを用いて、下水道施設へ汚濁物量の流入現象を仮想的に生じさせる仮想汚濁物データを作成する工程と、少なくとも仮想雨量時系列データと仮想濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める工程とを具備し、単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である前記第2の演算モデル構築のためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする。上記作成方法においては、仮想雨量時系列データと仮想汚濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることができる。
【発明の効果】
【0017】
新設ポンプ場などのように機場データが未収集あるいは不十分であっても、入力する降雨データに対して第1のモデルが出力する下水道施設への雨水流入量や流入汚濁物データを信用するという条件の下で、それら仮想的な雨水流出現象や汚濁物流出現象を再現可能であると期待されるブラックボックスの流入量汚濁物量予測モデルを作ることができる。従って、本発明は、短時間の応答が求められるようなオンラインシステムに用いる予測モデル作成に対して有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。なお、本実施例は下記に述べることに限定されない。
(実施例1)(請求項1〜4,9対応)
図1は本発明の実施例1に係る雨水流入量演算モデルの作成装置の構成を示すブロック図であり、図2は図1の各データの説明図を示す。
実施例1に係る雨水流入量演算モデルの作成装置は、第1の演算モデル1と、第2の演算モデル2と、仮想雨量データ発生手段3と、仮想流入量データ発生手段4と、未定係数・未定数決定手段5とを具備している。第1の演算モデル1は、単一または複数の方程式から構成されており、対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めるものである。第2の演算モデル2は、単一または複数の方程式から構成されており、その係数あるいは定数の値が未定である。仮想雨量データ発生手段3は、所望の雨量データを仮想的に発生させる機能を有している。仮想流入量データ発生手段4は、第1の演算モデル1を用いて下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる機能を有している。未定係数・未定数決定手段5は、仮想雨量時系列データ6と仮想流入量時系列データ7の組みからなる仮想入出力データ、及び実績雨量時系列データ8から第2の演算モデル2における未定の係数あるいは定数の値を定める機能を有している。なお、図中の符番9は、実績流入量時系列データを示す。
【0019】
第1の演算モデル1は、水文学に基づく雨水流出過程、あるいは水理学に基づく下水管内の雨水流下過程、もしくはそれらの組合せを記述した,単一または複数の方程式から構成される。例えば特開平6−322808号公報に開示されている公知の方法では、下記数1〜数4のように表される。
【数1】

【0020】
【数2】

【0021】
【数3】

【0022】
【数4】

【0023】
但し、数1〜数4において、各符号は次のとおりである。
K、n:流域による定数、S:雨水貯留量[m]、Q:雨水流出量[m/s]、
t:時間[s]、P:雨水の流入量[mm/s]、A:水路断面積[m]、
g:重力加速度[m/s]、h:水深[m]、i:河床勾配[0/00]、
n:Manning (マニング)の粗度係数、q:単位長さ当たり支流合流量[m/s]、
Q:流量[m/s]、R:径深[m]、t:時間[sec]、
U:平均流速[m/s]、x:流下方向の座標[m]
第2の演算モデル2は、特開2000−56835号公報等で公知のBlock-orientedモデルを具体的として説明する。Block-orientedモデルは図3のよう表される。未定である定数として伝達関数の次数n,m,lと非線形の次数pがある。また、伝達関数A(z),B(z),C(z)の係数と非線形項を表す多項式f(u)の係数(a|i=1,2,…,n)、(b|i=1,2,…,m)、(c|i=1,2,…,l)も未定である。なお、図3中の符号uは降雨量データ、符号yは流出量データ、符号eは観測できない計測誤差を示す。
なお、本実施例1では、第2の演算モデルとしてBlock-orientedモデルを用いているが、その他の公知例としてARX、ARMAX、ニューラルネットワーク等によるブラックボックスモデルでもよい。
【0024】
次に、図2及び図5を用いて実施例1の作用について説明する。
(1) まず、図2(A)に示すような仮想雨量時系列データ6を発生させる。ブラックボックスの雨水流入量予測モデルを作成するためには、できるだけ長い期間,例えば1年〜数年の雨量時系列データを収集することが好ましい。また、データとしては、できるだけ種類と季節の異なるデータが好ましく、例えば小雨のときのデータ,大雨のときのデータ,一日中雨のときのデータ,一日のうち一時的に雨(例えば夕立)のときのデータ等の場合が挙げられる。このような雨量データのうち、実績データで足らない分を仮想データで補うものである。
【0025】
(2) 次に、仮想流入量データ発生手段4において、第1の演算モデル1を用いた数値計算により下水道施設への仮想流入量時系列データ7(図2(B)図示)を得る。その方法としては、上記式1〜式4を用いる他に公知のRRL法、修正RRL法等がある。
(3) つづいて、所望のデータが得られるまで仮想雨量時系列データ6と仮想流入量時系列データ7の組からなる仮想入出力データの発生を繰り返す。
【0026】
(4) 実績雨量時系列データ8(図2(C)図示)が得られていれば、仮想入出力データに加え、次のような方法で未定係数・未定定数を決定する。伝達関数の次数は、例えばAIC規範(赤池情報量規範)などによって求められる。非線形の次数は非線形性の強さと推定パラメータの数を考慮して決定される。そして、伝達関数の係数と非線形項を表す多項式の係数(a|i=1,2,…,n)、(b|i=1,2,…,m)、(c|i=1,2,…,l)が、予測対象時点からみて過去の雨量と流入量データとの関係に最も近くなるように推定される。推定方法としては、例えば最小2乗法が用いられる。
【0027】
実施例1によれば、新設ポンプ場などのように機場データが未収集あるいは不十分であっても、入力する降雨データに対して第1の演算モデルが出力するポンプ場への流入量データを信用するという条件の下で、それら仮想的な降雨現象を再現可能であると期待されるブラックボックスの流入量予測モデルを作ることができる。
【0028】
(実施例2)(請求項5〜8,10対応)
図4は、本発明の実施例2に係る汚濁物流入量演算モデルの作成装置の構成を示すブロック図である。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。実施例1との差異は、仮想流入量発生手段を仮想汚濁物量発生手段11に置き換えた点と、仮想流入量時系列データを仮想汚濁物量時系列データ12に置き換えた点と、第1の演算モデル1を構成する単一または複数の方程式に、水文学に基づく雨水流出過程および水理学に基づく下水管内の雨水流下過程の他に、汚濁物の堆積や移流の過程、もしくはそれらの組合せを記述する方程式が加わった点である。なお、図中の符番13は、実績汚濁物量時系列データを示す。また、仮想汚濁物量時系列データ12及び実績汚濁物量時系列データは、夫々時刻と汚濁物量との関係を示すデータである。
【0029】
第1の演算モデル1は、例えば非特許文献1の「水理公式集」で公知の雨天時の汚濁負荷流出解析モデル等で記述できる。具体的には、下記数5〜数8のように表される。
【数5】

【0030】
【数6】

【0031】
【数7】

【0032】
【数8】

【0033】
但し、数5〜数8において、各符号は次のとおりである。
:管きょ流出負荷量、QSS:管内堆積量Qの流出負荷成分、QSR:路面等堆積量Sの流出負荷量成分、Q:管きょ内流量、Q:限界流送流量、R:降雨強度、DWF:晴天時負荷量、t:時間、f及びf:関数形、K:定数を表す。
【0034】
図6は、実施例2の作用を表すフローチャートである。実施例1との差異は、仮想流入量発生手段を仮想汚濁物量発生手段に置き換えた点である。
【0035】
実施例2によれば、新設ポンプ場などのように機場データが未収集あるいは不十分であっても、入力する降雨データに対して第1の演算モデル1が出力する下水道施設への流入汚濁物データを信用するという条件の下で、それら仮想的な汚濁物流出現象を再現可能であると期待されるブラックボックスの流入量汚濁物量予測モデルを作ることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、上記実施例の場合、仮想雨量時系列データや実績流入量時系列データの他に実績雨量時系列データに基づいて係数・定数未定の第2の演算モデルを形成する場合について述べてが、これに限らず、仮想雨量時系列データ及び実績流入量時系列データのみで係数・定数未定の第2の演算モデルを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1に係る雨水流入量演算モデルの作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の作成装置における仮想雨量時系列データ、仮想流入量時系列データ、実績雨量時系列データ及び実績流入量時系列データの説明図である。
【図3】公知のBlock-Orientedモデルの説明図である。
【図4】本発明の実施例2に係る汚濁物水流入量演算モデルの作成装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1の作成装置の作用を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2の作成装置の作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1…第1の演算モデル、2…第2の演算モデル、3…仮想雨量データ発生手段、4…仮想流量データ発生手段、5…未定係数・未定定数決定手段、6…仮想雨量時系列データ、7…仮想流入量時系列データ、8…実績雨量時系列データ、9…実績流入量時系列データ、11…仮想汚濁物量データ発生手段、12…仮想汚濁物量時系列データ、13…実績汚濁物量時系列データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水の下水道施設への流入量の予測のための演算モデルを作成する装置であって、
単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルと、
単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルと、
所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データ発生手段と、
前記第1の演算モデルを用いて下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる仮想流入量データ発生手段と、
少なくとも仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める手段を有し、
前記第2の演算モデルを構築するためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする雨水流入量演算モデルの作成装置。
【請求項2】
仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることを特徴とする請求項1記載の雨水流入量演算モデルの作成装置。
【請求項3】
前記第1の演算モデルは、水文学に基づく雨水流出過程、あるいは水理学に基づく下水管内の雨水流下過程、もしくはそれらの組合せを記述した,単一または複数の方程式から構成され、数値計算により解かれること特徴とする請求項1または請求項2に記載の雨水流入量演算モデルの作成装置。
【請求項4】
前記第2の演算モデルは、過去の入出力時系列データのみからその関数関係を定めるブラックボックスモデルであり、現時点での雨量と現時点より前の雨量、現時点での流入量と現時点より前の流入量を入力変数として、現時点より後の時刻の流入量を出力変数とし、これらの変数と係数あるいは定数から成る多項式の関数であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の雨水流入量演算モデルの作成装置。
【請求項5】
下水道施設に流入する雨天時の汚濁物量の予測のための演算モデルを作成する装置であって、
単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルと、
単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルと、
所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データ発生手段と、
前記第1の演算モデルを用いて、下水道施設へ汚濁物量の流入現象を仮想的に生じさせる仮想汚濁物データ発生手段と、
少なくとも仮想雨量時系列データと仮想濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める手段を有し、
前記第2の演算モデル構築のためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする汚濁物流入量演算モデルの作成装置。
【請求項6】
仮想雨量時系列データと仮想汚濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データの他、実績雨量時系列データを用いて第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定めることを特徴とする請求項5記載の汚濁物流入量演算モデルの作成装置。
【請求項7】
前記第1の演算モデルは、水文学的に基づく雨水流出過程と、水理学に基づく下水管内の雨水流下過程,汚濁物の堆積,移流の各過程を記述する単一または複数の方程式から構成され、数値計算により解かれること特徴とする請求項5又は請求項6に記載の汚濁物流入量演算モデルの作成装置。
【請求項8】
前記第2の演算モデルは、過去の入出力時系列データのみからその関数関係を定めるブラックボックスモデルであり、少なくとも現時点での雨量と現時点より前の雨量、現時点での汚濁物量と現時点より前の汚濁物量を入力変数として含み、現時点より後の時刻の汚濁物量を出力変数とする演算モデルであり、これらの変数と係数あるいは定数から成る多項式の関数であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の汚濁物流入量演算モデルの作成装置。
【請求項9】
雨水の下水道施設への流入量の予測のための演算モデルを作成する方法であって、
単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルを作成する工程と、
所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データを作成する工程と、
前記第1の演算モデルを用いて下水道施設への流入現象を仮想的に生じさせる仮想流入量データを作成する工程と、
少なくとも仮想雨量時系列データと仮想流入量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める工程とを具備し、
単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である第2の演算モデルを構築するためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする雨水流入量演算モデルの作成方法。
【請求項10】
下水道施設に流入する雨天時の汚濁物量の予測のための演算モデルを作成する方法であって、
単一または複数の方程式から構成され,対象の下水道施設に合わせてその係数あるいは定数の値を予め定めた第1の演算モデルを作成する工程と、
所望の雨量データを仮想的に発生させる仮想雨量データを作成する工程と、
前記第1の演算モデルを用いて、下水道施設へ汚濁物量の流入現象を仮想的に生じさせる仮想汚濁物データを作成する工程と、
少なくとも仮想雨量時系列データと仮想濁物量時系列データの組みからなる仮想入出力データから第2の演算モデルにおける未定の係数あるいは定数の値を定める工程とを具備し、
単一または複数の方程式から構成され,その係数あるいは定数の値が未定である前記第2の演算モデル構築のためのデータを、前記第1の演算モデルを用いて拡充することを特徴とする汚濁物流入量演算モデルの作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−310682(P2008−310682A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159277(P2007−159277)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】