説明

電力伝達用絶縁回路および電力変換装置

【課題】入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることが可能な電力伝達用絶縁回路および電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力伝達用絶縁回路101は、スイッチ素子Z1およびZ2を含む入力スイッチ部21と、スイッチ素子Z3およびZ4を含む出力スイッチ部22と、スイッチ素Z1子ないしスイッチ素子Z4のうち少なくともいずれか2つの温度を検出するための温度検出部15と、温度検出部15によって検出された各スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるスイッチ素子の故障を検出するための制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関し、特に、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する電力伝達用絶縁回路および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の交流電力を用いて電気自動車(EV:Electric Vehicle)およびプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
このようなEV等の主電池への充電を目的とするものではないが、交流電力を直流電力に変換する電源装置用絶縁回路の一例が、たとえば、特許第3595329号公報(特許文献1)に記載されている。すなわち、この電源装置用絶縁回路は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、上記整流回路から供給される直流電流に残存する脈流成分を低減する第1のコンデンサーと、上記第1のコンデンサーから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第1のスイッチ回路と、上記第1のスイッチ回路から供給される電流を蓄積する第2のコンデンサーと、上記第2のコンデンサーから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第2のスイッチ回路と、上記第2のスイッチ回路から供給される電流を保持するとともに負荷側に放出する第3のコンデンサーとを備える。また、ONとなる時間がOFFとなる時間よりも短く設定された方形波によって構成されるコントロール信号φ1、および上記コントロール信号φ1と相補的にONするとともにON時間がOFF時間よりも短く設定されたコントロール信号φ2を生成するゲートコントロール回路を備える。上記コントロール信号φ1により上記第1のスイッチ回路の開閉を行い、上記コントロール信号φ2により上記第2のスイッチ回路の開閉を行なう。このような構成により、大きな容積を占める電源トランスを使用することなく交流電圧を直流電圧に変換し、かつ交流電源側と負荷側とを電気的に絶縁することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3595329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路では、各スイッチ回路におけるスイッチ素子が故障して短絡した場合、入力側および出力側間の絶縁が確保できない可能性がある。しかしながら、特許文献1には、このような問題に対処するための構成は開示されていない。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることが可能な電力伝達用絶縁回路および電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、第1端、および上記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および上記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のうち少なくともいずれか2つの温度を検出するための温度検出部と、上記温度検出部によって検出された各上記スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における上記スイッチ素子の故障を検出するための制御部とを備える。
【0008】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路の故障検出を、簡易な構成および処理で安価に実現することができる。また、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、故障時にはエラー出力およびシステムの停止を行い、また、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。これにより、システム全体の信頼性を向上することができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、上記制御部は、検出した上記各スイッチ素子の温度間の差を算出し、算出した上記差が第1の閾値以上である場合には、上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における上記スイッチ素子が故障したと判定する。
【0010】
このように、温度差の閾値を用いる構成により、簡易な処理で各スイッチ素子の故障判定を行なうことができる。
【0011】
より好ましくは、上記制御部は、上記温度検出部によって検出された上記スイッチ素子の温度が第2の閾値以上の場合には上記スイッチ素子の温度が異常上昇の状態にあると判定し、上記制御部は、算出した上記差が略ゼロであり、かつ上記各スイッチ素子の温度が上記第2の閾値より低い第3の閾値未満である場合には、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子が故障したと判定する。
【0012】
このような構成により、第1のスイッチ素子ないし第4のスイッチ素子がすべて短絡故障したために温度差では故障判定が困難な場合でも、第1のスイッチ素子ないし第4のスイッチ素子の故障を検出することができるため、回路の信頼性をさらに向上させることができる。
【0013】
好ましくは、上記温度検出部は、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の温度を検出し、上記制御部は、上記温度検出部によって検出された上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における上記スイッチ素子の故障を検出する。
【0014】
このように、第1のスイッチ素子ないし第4のスイッチの温度をすべて検出する構成により、電力伝達用絶縁回路における各スイッチ素子の故障をより確実に検出することが可能である。
【0015】
好ましくは、上記入力スイッチ部は、さらに、上記第1のスイッチ素子および上記第2のスイッチ素子にそれぞれ直列接続された第1のダイオードおよび第2のダイオードを含み、上記出力スイッチ部は、さらに、上記第3のスイッチ素子および上記第4のスイッチ素子にそれぞれ直列接続された第3のダイオードおよび第4のダイオードを含み、上記温度検出部は、さらに、上記第1のダイオードないし上記第4のダイオードのうち少なくともいずれか2つの温度を検出し、上記制御部は、さらに、上記温度検出部によって検出された各上記ダイオードの温度を比較し、比較結果に基づいて上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における上記ダイオードの故障を検出する。
【0016】
このように、スイッチ素子に加えて、ダイオードの温度検出および故障検出を行なう構成により、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子およびダイオードの故障を検出することにより、回路の信頼性をさらに向上させることができる。
【0017】
より好ましくは、上記第1の閾値は設定変更可能である。
【0018】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路の使用環境に応じて柔軟に閾値を設定することが可能となるため、使用環境に関わらず各スイッチ素子の故障を確実に検出することができる。
【0019】
より好ましくは、上記第2の蓄電素子の第1端および第2端は負荷に接続され、上記第1の閾値は、上記電力伝達用絶縁回路から上記負荷への出力電流が大きい場合には大きく設定され、上記電力伝達用絶縁回路から上記負荷への出力電流が小さい場合には小さく設定される。
【0020】
このような構成により、電力供給対象である負荷の種類に応じて適切に閾値を設定することができ、各スイッチ素子の故障を確実に検出することができる。
【0021】
好ましくは、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子はPN接合を有する。
【0022】
PN接合を有するIGBT等のスイッチ素子は、短絡故障時におけるオン電圧が正常時と比べて大幅に小さくなることから、このようなスイッチ素子を用いる構成により、第1の閾値の設定が容易となり、故障判定をより正確に行なうことが可能となる。
【0023】
好ましくは、上記制御部は、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御し、上記制御部は、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返す。
【0024】
このように、デッドタイムを設ける構成により、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の絶縁を確実に確保することができる。
【0025】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、受けた交流電力を整流するための整流部と、上記整流部および上記負荷間を絶縁しながら、上記整流部によって整流された電力を上記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、上記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、上記整流部と上記第1の蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子および上記整流部と上記第1の蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、上記整流部によって整流された電力を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のうち少なくともいずれか2つの温度を検出するための温度検出部と、上記温度検出部によって検出された各上記スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて上記入力スイッチ部または上記出力スイッチ部における上記スイッチ素子の故障を検出するための制御部とを含む。
【0026】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路の故障検出を、簡易な構成および処理で安価に実現することができる。また、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、故障時にはエラー出力およびシステムの停止を行い、また、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。これにより、システム全体の信頼性を向上することができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチ素子の静特性を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチ素子の発生損失を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【0031】
図1を参照して、電力変換装置201は、電力伝達用絶縁回路101と、整流部51とを備える。電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC0〜C2と、入力スイッチ部21と、出力スイッチ部22と、制御部14と、温度検出部15と、温度検出素子K1〜K4を含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1,Z2と、ダイオードD1,D2とを含む。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3,Z4と、ダイオードD3,D4とを含む。
【0032】
電力伝達用絶縁回路101において、スイッチ素子Z1〜Z4は、たとえばNチャネルIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、スイッチ素子Z1〜Z4は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FET(Field Effect Transistor)等、他の種類のトランジスタであってもよい。
【0033】
ここでは、スイッチ素子Z1の第1端および第2端がそれぞれスイッチ素子Z1のコレクタおよびエミッタに相当し、スイッチ素子Z2の第1端および第2端がそれぞれスイッチ素子Z2のエミッタおよびコレクタに相当し、スイッチ素子Z3の第1端および第2端がそれぞれスイッチ素子Z3のコレクタおよびエミッタに相当し、スイッチ素子Z4の第1端および第2端がそれぞれスイッチ素子Z4のエミッタおよびコレクタに相当する。
【0034】
ダイオードD1〜D4は、電力伝達用絶縁回路101における電流の逆流を防ぐために設けられている。
【0035】
スイッチ素子Z1は、ダイオードD1を介してキャパシタC0の第1端T11と電気的に接続された第1端、およびキャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第2端を有する。スイッチ素子Z2は、ダイオードD2を介してキャパシタC0の第2端T12と電気的に接続された第1端、およびキャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第2端を有する。スイッチ素子Z3は、ダイオードD3を介してキャパシタC1の第1端T13と電気的に接続された第1端、およびキャパシタC2の第1端T15と電気的に接続された第2端を有する。スイッチ素子Z4は、ダイオードD4を介してキャパシタC1の第2端T14と電気的に接続された第1端、およびキャパシタC2の第2端T16と電気的に接続された第2端を有する。
【0036】
ダイオードD1は、キャパシタC0の第1端T11とスイッチ素子Z1の第1端との間に接続されている。ダイオードD2は、キャパシタC0の第2端T12とスイッチ素子Z2の第1端との間に接続されている。ダイオードD3は、キャパシタC1の第1端T13とスイッチ素子Z3の第1端との間に接続されている。ダイオードD4は、キャパシタC1の第2端T14とスイッチ素子Z4の第1端との間に接続されている。
【0037】
より詳細には、ダイオードD1は、キャパシタC0の第1端T11に電気的に接続されたアノードと、スイッチ素子Z1のコレクタに電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD2は、スイッチ素子Z2のエミッタに電気的に接続されたアノードと、キャパシタC0の第2端T12に電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD3は、キャパシタC1の第1端T13に電気的に接続されたアノードと、スイッチ素子Z3のコレクタに電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD4は、スイッチ素子Z4のエミッタに電気的に接続されたアノードと、キャパシタC1の第2端T14に電気的に接続されたカソードとを有する。
【0038】
スイッチ素子Z1は、ダイオードD1のカソードに電気的に接続されたコレクタと、キャパシタC1の第1端T13に電気的に接続されたエミッタと、制御部14からのゲート制御信号G1を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z2は、キャパシタC1の第2端T14に電気的に接続されたコレクタと、ダイオードD2のアノードに電気的に接続されたエミッタと、制御部14からのゲート制御信号G2を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z3は、ダイオードD3のカソードに電気的に接続されたコレクタと、キャパシタC2の第1端T15に電気的に接続されたエミッタと、制御部14からのゲート制御信号G3を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z4は、キャパシタC2の第2端T16に電気的に接続されたコレクタと、ダイオードD4のアノードに電気的に接続されたエミッタと、制御部14からのゲート制御信号G4を受けるゲートとを有する。
【0039】
キャパシタC2の第1端T15と負荷302のプラス側端子とが接続され、キャパシタC2の第2端T16と負荷302のマイナス側端子とが接続されている。
【0040】
電力変換装置201は、交流電源301から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷302に供給する。負荷302は、たとえば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池である。
【0041】
整流部51は、たとえば、ダイオードブリッジを含み、交流電源301から受けた交流電力を全波整流して電力伝達用絶縁回路101へ出力する。
【0042】
電力伝達用絶縁回路101において、キャパシタC0は、整流部51によって整流された電力を蓄える。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1の第1端およびスイッチ素子Z2の第1端において受けた電力すなわちキャパシタC0に蓄えられた電力をキャパシタC1に供給する。出力スイッチ部22は、キャパシタC1に蓄えられた電力をキャパシタC2に供給する。キャパシタC2に蓄えられた電力は、放電されて負荷302に供給される。
【0043】
制御部14は、ゲート駆動信号G1〜G4をスイッチ素子Z1〜Z4に出力することにより、スイッチ素子Z1〜Z4のオンおよびオフを切り替える。電力伝達用絶縁回路101は、制御部14のスイッチ制御により、整流部51および負荷302間を絶縁しながら、キャパシタC0に蓄えられた電力を負荷302に伝達する。
【0044】
温度検出素子K1〜K4は、たとえば、サーミスタ、熱電対、またはダイオードである。温度検出素子K1〜K4は、それぞれスイッチ素子Z1〜Z4の近傍またはスイッチ素子Z1〜Z4に接触して設けられ、スイッチ素子Z1〜Z4の温度を示す電圧または電流を温度検出部15へ出力する。
【0045】
温度検出部15は、温度検出素子K1〜K4から受けた電圧または電流に基づいて温度検出素子K1〜K4の温度をそれぞれ検出し、検出結果を示す信号を制御部14へ出力する。
【0046】
制御部14は、温度検出部15から受けた信号に基づいて、スイッチ素子Z1〜Z4の故障を判定する。
【0047】
[動作]
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路が電力伝達を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0048】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【0049】
図2を参照して、まず、制御部14は、期間T1において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオフし、スイッチ素子Z4をオフする。これにより、キャパシタC0に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC1に蓄えられる。スイッチ素子Z3およびZ4がオフされていることにより、整流部51および負荷302間の絶縁が確保される。
【0050】
次に、制御部14は、期間T2において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。すなわち、入力スイッチ部21における各スイッチおよび出力スイッチ部22における各スイッチを介して電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間、すなわち整流部51および負荷302間が短絡することを防ぐことができる。
【0051】
次に、制御部14は、期間T3において、スイッチ素子Z1をオフし、スイッチ素子Z2をオフし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。これにより、キャパシタC1に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC2に蓄えられる。スイッチ素子Z1およびZ2がオフされていることにより、整流部51および負荷302間の絶縁が確保される。
【0052】
次に、制御部14は、期間T4において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、期間T2と同様に、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。
【0053】
ここで、期間T1〜T4において、キャパシタC1は整流部51からの電力により充電されており、また、キャパシタC2に蓄えられた電力は放電されて負荷302に供給されている。また、期間T2およびT4においては、キャパシタC1における電荷の移動はない。
【0054】
そして、制御部14は、これら期間T1、期間T2、期間T3および期間T4をこの順番で繰り返すことにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間を絶縁しながら、整流部51と協働して、交流電源301からの交流電力を直流電力に変換して負荷302に供給する。
【0055】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路がスイッチ素子の故障判定を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0056】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチ素子の静特性を示す図である。図3は、耐圧1200Vおよび最大コレクタ電流60A(アンペア)のIGBTであるスイッチ素子について、ゲート−エミッタ間電圧が15Vの場合における、正常品および短絡故障品の静特性すなわち電流−電圧特性を実測した結果を示している。図3のグラフにおいて、横軸はスイッチ素子におけるコレクタ−エミッタ間電圧VCEであり、縦軸はスイッチ素子におけるコレクタ電流ICである。
【0057】
図3を参照して、短絡故障品では、正常品に比べて、同じコレクタ電流ICに対するコレクタ−エミッタ間電圧VCEが大幅に小さくなっていることが分かる。
【0058】
したがって、短絡故障品を含んだ電力伝達用絶縁回路101をそのまま動作させた場合には、短絡故障品の発生損失および正常品の発生損失が異なることになる。
【0059】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチ素子の発生損失を示す図である。図4は、IGBTの正常品における発生損失と短絡故障品における発生損失とを比較した図である。
【0060】
具体的には、図4は、電力伝達用絶縁回路101の出力電力が3kWであり、出力電圧の直流レベルが300Vである場合において、電力伝達用絶縁回路101における4つのIGBTのうち、1つが短絡故障した場合における、正常品の発生損失と短絡故障品の発生損失の理論計算値を示している。この理論計算値は、図3に示す静特性を用いて算出した。
【0061】
図4に示す理論計算結果より、短絡故障品の損失は、正常品の約1/5になると予測される。すなわち、短絡故障品の温度上昇と正常品の温度上昇とで差が生じることになる。たとえば、2.9℃/Wの関係を用いて、短絡故障品の温度上昇と正常品の温度上昇との差を算出することが可能である。
【0062】
一方、スイッチ素子Z1〜Z4がすべて正常動作している場合には、スイッチ素子Z1〜Z4の温度上昇は、ほぼ均一となる。
【0063】
そこで、電力伝達用絶縁回路101では、温度検出素子K1〜K4を、それぞれスイッチ素子Z1〜Z4に、接触または非接触の状態で取り付けるかまたは半導体チップ上に形成する。
【0064】
そして、温度検出部15を介して制御部14にスイッチ素子Z1〜Z4の温度を通知し、スイッチ素子Z1〜Z4間の温度差が大きくなった場合には、スイッチ素子Z1〜Z4のうちの少なくともいずれか1つのスイッチ素子が短絡故障したと判断する。
【0065】
すなわち、温度検出部15は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の温度を検出する。制御部14は、温度検出部15によって検出されたスイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の温度を比較し、比較結果に基づいて入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるスイッチ素子の故障を検出する。
【0066】
具体的には、制御部14は、検出したスイッチ素子Z1ないしZ4の温度間の差を算出し、算出した差が閾値DTh1以上である場合には、入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるスイッチ素子が故障したと判定する。
【0067】
また、制御部14は、スイッチ素子Z1〜Z4の各々の温度に基づいて各スイッチ素子の故障検出を行なう動作をさらに行なってもよい。
【0068】
すなわち、制御部14は、温度検出部15によって検出されたスイッチ素子の温度が閾値ATh1以上の場合には当該スイッチ素子の温度が異常上昇の状態にあると判定する。ここで、閾値ATh1は、たとえば、デバイスの熱破壊を防止するためにIPM(Intelligent Power Module)等で行なわれる温度異常上昇検出用の閾値である。
【0069】
そして、制御部14は、検出したスイッチ素子Z1ないしZ4の温度間の差が略ゼロであり、かつスイッチ素子Z1ないしZ4の温度が閾値ATh1より低い閾値ATh2未満である場合には、スイッチ素子Z1ないしZ4が故障したと判定する。
【0070】
また、閾値DTh1は設定変更可能であってもよい。閾値DTh1の設定方法の一例として、回路を流れる電流に応じて閾値DTh1を設定することが考えられる。すなわち、故障と判断するための温度差の閾値DTh1については、たとえば電力伝達用絶縁回路101の出力電流に応じて可変とすることが望ましい。
【0071】
より詳細には、閾値DTh1は、電力伝達用絶縁回路101から負荷302への出力電流が大きい場合には大きく設定され、電力伝達用絶縁回路101から負荷302への出力電流が小さい場合には小さく設定される。
【0072】
具体的には、電力伝達用絶縁回路101の出力電力が3kWである場合、正常品であるスイッチ素子と短絡故障品であるスイッチ素子との温度上昇差が40℃であったとする。この場合、閾値DTh1を20℃に設定すればよい。
【0073】
また、電力伝達用絶縁回路101の出力電力が500Wである場合、正常品であるスイッチ素子と短絡故障品であるスイッチ素子との温度上昇差が4℃であったとする。この場合、閾値DTh1を2℃〜3℃に設定すればよい。
【0074】
ところで、特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路では、各スイッチ回路におけるスイッチ素子が故障して短絡した場合、入力側および出力側間の絶縁が確保できない可能性がある。これは、電力伝達用絶縁回路101でも同様である。
【0075】
すなわち、トランスレス絶縁回路である電力伝達用絶縁回路101では、IGBTおよびMOSFET等のスイッチ素子の耐電圧によって入出力間の絶縁を確保する。このため、電力伝達用絶縁回路101を用いるシステムの信頼性を向上させるために、スイッチ素子の短絡故障の検出機能を安価に実現することが課題となる。なお、スイッチ素子の開放故障の場合には、電力伝達用絶縁回路101の入出力間で通電不能となることから、短絡故障と比べて不具合の発生する可能性は低く、また、検出も容易である。
【0076】
各スイッチ素子の短絡故障の故障検出方法としては、たとえば、電力伝達用絶縁回路101から負荷302への出力電圧を監視する方法が考えられる。しかしながら、電力伝達用絶縁回路101では、1つのスイッチ素子が短絡故障しても出力電圧のレベルはほぼ変わらないことから、このような方法ではスイッチ素子の短絡故障を確実に検出することは困難である。
【0077】
また、電力伝達用絶縁回路101内における電圧を監視する方法も考えられるが、電圧検出部が別途必要となり、また、内部電圧の正常および異常を判定する処理が必要となることから、構成および処理が複雑になってしまう。
【0078】
これに対して、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、温度検出部15は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4の温度を検出する。そして、制御部14は、温度検出部15によって検出された各スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるスイッチ素子の故障を検出する。
【0079】
すなわち、正常品のスイッチ素子と短絡故障品のスイッチ素子との静特性の差異に着目し、動作中の温度上昇が、正常品および短絡故障品間で異なることを利用して、スイッチ素子の故障検出を行なう。
【0080】
また、各スイッチ素子の温度を検出するための温度検出素子は、通常、これらのスイッチ素子の保護用に設けられる場合が多い。電力伝達用絶縁回路101では、電圧検出部等を別途設けることなく、保護用の温度検出素子を利用して、スイッチ素子Z1〜Z4の温度差を算出し、故障検出を行なう。
【0081】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路101の故障検出を、簡易な構成および処理で安価に実現することができる。
【0082】
また、各スイッチ素子の短絡故障を検出し、故障時にはエラー出力およびシステムの停止を行い、また、ユーザ等が必要な処置を講ずることにより、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の短絡による不具合を防ぐことが可能となる。これにより、システム全体の信頼性を向上することができる。
【0083】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させることができる。
【0084】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、検出した各スイッチ素子の温度間の差を算出し、算出した差が閾値DTh1以上である場合には、入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるスイッチ素子が故障したと判定する。
【0085】
このように、温度差の閾値DTh1を用いる構成により、簡易な処理で各スイッチ素子の故障判定を行なうことができる。
【0086】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、温度検出部15によって検出されたスイッチ素子の温度が閾値ATh1以上の場合には、当該スイッチ素子の温度が異常上昇の状態にあると判定する。そして、制御部14は、検出した各スイッチ素子の温度間の差が略ゼロであり、かつ各スイッチ素子の温度が閾値ATh1より低い閾値ATh2未満である場合には、スイッチ素子Z1ないしZ4が故障したと判定する。
【0087】
このような構成により、スイッチ素子Z1〜Z4がすべて短絡故障したために温度差では故障判定が困難な場合でも、スイッチ素子Z1〜Z4の故障を検出することができるため、回路の信頼性をさらに向上させることができる。
【0088】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、閾値DThは設定変更可能である。
【0089】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路101の使用環境に応じて柔軟に閾値DTh1を設定することが可能となるため、使用環境に関わらず各スイッチ素子の故障を確実に検出することができる。
【0090】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、閾値DThは、電力伝達用絶縁回路101から負荷302への出力電流が大きい場合には大きく設定され、電力伝達用絶縁回路101から負荷302への出力電流が小さい場合には小さく設定される。
【0091】
このような構成により、電力供給対象である負荷の種類に応じて適切に閾値DTh1を設定することができ、各スイッチ素子の故障を確実に検出することができる。
【0092】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4はPN接合を有する。
【0093】
PN接合を有するIGBT等のスイッチ素子は、短絡故障時におけるオン電圧が正常時と比べて大幅に小さくなることから、このようなスイッチ素子を用いる構成により、閾値DTh1の設定が容易となり、故障判定をより正確に行なうことが可能となる。
【0094】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、制御部14は、入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオンし、かつ出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフする期間T1と、入力スイッチ部21における各スイッチ素子および出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフする期間T2と、入力スイッチ部21における各スイッチ素子をオフし、かつ出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオンする期間T3と、入力スイッチ部21における各スイッチ素子および出力スイッチ部22における各スイッチ素子をオフする期間T4とをこの順番で繰り返す。
【0095】
このように、デッドタイムを設ける構成により、電力伝達用絶縁回路101の入力側および出力側間の絶縁を確実に確保することができる。
【0096】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路は、スイッチ素子Z1〜Z4の温度を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではなく、スイッチ素子Z1〜Z4のうちの少なくともいずれか2つの温度を検出する構成であれば、簡易な構成でスイッチ素子の故障を検出することにより、回路の信頼性を向上させる、という本発明の目的を達成することが可能である。
【0097】
一方、スイッチ素子Z1〜Z4の温度をすべて検出する構成により、電力伝達用絶縁回路101における各スイッチ素子の故障をより確実に検出することが可能である。
【0098】
また、電力伝達用絶縁回路101は、キャパシタC0を備えない構成であってもよい。ただし、キャパシタC0を設けることにより、電力伝達用絶縁回路101への入力電流のリップルを防ぎ、回路動作の安定化を図るという効果が得られる。また、整流部51において、整流された電力を蓄えるためのキャパシタが設けられる場合にも、電力伝達用絶縁回路101においてキャパシタC0を設けない構成が可能となる。
【0099】
また、本発明の第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路は、キャパシタC0〜C2を備える構成であるとしたが、キャパシタに限らず、コイル(インダクタ)等の他の蓄電素子を備える構成であってもよい。
【0100】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0101】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と比べて温度検出対象を追加した電力伝達用絶縁回路に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路と同様である。
【0102】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【0103】
図5を参照して、電力変換装置202は、電力伝達用絶縁回路102と、整流部51とを備える。電力伝達用絶縁回路102は、電力伝達用絶縁回路101と比べて、さらに、温度検出素子K5〜K8を含む。
【0104】
入力スイッチ部21は、電力伝達用絶縁回路101と同様に、スイッチ素子Z1およびスイッチ素子Z2にそれぞれ直列接続されたダイオードD1およびダイオードD2を含む。
【0105】
出力スイッチ部22は、電力伝達用絶縁回路101と同様に、スイッチ素子Z3およびスイッチ素子Z4にそれぞれ直列接続されたダイオードD3およびダイオードD4を含む。
【0106】
温度検出素子K5〜K8は、たとえば、サーミスタ、熱電対、またはダイオードである。温度検出素子K5〜K8は、それぞれダイオードD1〜D4の近傍またはダイオードD1〜D4に接触して設けられ、ダイオードD1〜D4の温度を示す電圧または電流を温度検出部15へ出力する。
【0107】
温度検出部15は、温度検出素子K5〜K8から受けた電圧または電流に基づいてダイオードD1〜D4の温度をそれぞれ検出し、検出結果を示す信号を制御部14へ出力する。
【0108】
制御部14は、温度検出部15から受けた信号に基づいて、ダイオードD1〜D4の故障を判定する。
【0109】
電力伝達用絶縁回路102では、温度検出素子K5〜K8を、それぞれダイオードD1〜D4に、接触または非接触の状態で取り付けるかまたは半導体チップ上に形成する。
【0110】
そして、温度検出部15を介して制御部14にダイオードD1〜D4の温度を通知し、ダイオードD1〜D4間の温度差が大きくなった場合には、ダイオードD1〜D4のうちの少なくともいずれか1つのダイオードが短絡故障したと判断する。
【0111】
すなわち、制御部14は、温度検出部15によって検出された各ダイオードの温度を比較し、比較結果に基づいて入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるダイオードの故障を検出する。
【0112】
具体的には、制御部14は、検出したダイオードD1ないしD4の各温度間の差を算出し、算出した差が閾値DTh2以上である場合には、入力スイッチ部21または出力スイッチ部22におけるダイオードが故障したと判定する。
【0113】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路では、スイッチ素子Z1〜Z4に加えて、逆阻止ダイオードD1〜D4の温度検出および故障検出を行なう。このような構成により、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する回路において、簡易な構成でスイッチ素子およびダイオードの故障を検出することにより、回路の信頼性をさらに向上させることができる。
【0114】
なお、本発明の第2の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路は、ダイオードD1〜D4の温度を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではなく、ダイオードD1〜D4のうちの少なくともいずれか2つの温度を検出する構成であればよい。
【0115】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
10〜12 出力電圧検出部
14 制御部
15 温度検出部
21 入力スイッチ部
22 出力スイッチ部
101,102 電力伝達用絶縁回路
51 整流部
201,202 電力変換装置
301 交流電源
302 負荷
C0〜C2 キャパシタ
K1〜K8 温度検出素子
Z1,Z2,Z3,Z4 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
第1端、および前記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および前記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端において受けた電力を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のうち少なくともいずれか2つの温度を検出するための温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された各前記スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における前記スイッチ素子の故障を検出するための制御部とを備える、電力伝達用絶縁回路。
【請求項2】
前記制御部は、検出した前記各スイッチ素子の温度間の差を算出し、算出した前記差が第1の閾値以上である場合には、前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における前記スイッチ素子が故障したと判定する、請求項1に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度検出部によって検出された前記スイッチ素子の温度が第2の閾値以上の場合には前記スイッチ素子の温度が異常上昇の状態にあると判定し、
前記制御部は、算出した前記差が略ゼロであり、かつ前記各スイッチ素子の温度が前記第2の閾値より低い第3の閾値未満である場合には、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子が故障したと判定する、請求項2に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項4】
前記温度検出部は、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の温度を検出し、
前記制御部は、前記温度検出部によって検出された前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における前記スイッチ素子の故障を検出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項5】
前記入力スイッチ部は、さらに、前記第1のスイッチ素子および前記第2のスイッチ素子にそれぞれ直列接続された第1のダイオードおよび第2のダイオードを含み、
前記出力スイッチ部は、さらに、前記第3のスイッチ素子および前記第4のスイッチ素子にそれぞれ直列接続された第3のダイオードおよび第4のダイオードを含み、
前記温度検出部は、さらに、前記第1のダイオードないし前記第4のダイオードのうち少なくともいずれか2つの温度を検出し、
前記制御部は、さらに、前記温度検出部によって検出された各前記ダイオードの温度を比較し、比較結果に基づいて前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における前記ダイオードの故障を検出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項6】
前記第1の閾値は設定変更可能である、請求項2に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項7】
前記第2の蓄電素子の第1端および第2端は負荷に接続され、
前記第1の閾値は、前記電力伝達用絶縁回路から前記負荷への出力電流が大きい場合には大きく設定され、前記電力伝達用絶縁回路から前記負荷への出力電流が小さい場合には小さく設定される、請求項6に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項8】
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子はPN接合を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のオン・オフを制御し、
前記制御部は、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返す、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電力伝達用絶縁回路。
【請求項10】
交流電力を直流電力に変換して負荷に供給するための電力変換装置であって、
受けた交流電力を整流するための整流部と、
前記整流部および前記負荷間を絶縁しながら、前記整流部によって整流された電力を前記負荷に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
前記整流部と前記第1の蓄電素子の第1端との間に接続された第1のスイッチ素子および前記整流部と前記第1の蓄電素子の第2端との間に接続された第2のスイッチ素子を含み、前記整流部によって整流された電力を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部と、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のうち少なくともいずれか2つの温度を検出するための温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された各前記スイッチ素子の温度を比較し、比較結果に基づいて前記入力スイッチ部または前記出力スイッチ部における前記スイッチ素子の故障を検出するための制御部とを含む、電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157211(P2012−157211A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16173(P2011−16173)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】