説明

電力供給システム

【課題】蓄電池のより最適な充放電スケジュールを決定することができる電力供給システムを提供する。
【解決手段】統合電力制御装置18は、充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電ユニット14の蓄電池および車載蓄電装置21の車載蓄電池の充放電電力を制御する。充放電スケジュールは、混合整数計画問題に定式化して算出される。混合整数計画問題は、数理計画問題の1つであり、数学的に充放電スケジューリングを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電手段の発電量と電力使用量に応じて、蓄電手段の蓄電量および放電量を制御する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
系統電力および太陽光発電等の複数の電力供給源と、車載用蓄電池および建物に設置される蓄電池など複数の蓄電池の電力を利用できる建物において、電気料金や二酸化炭素排出量などを最小化する方法が求められている。特許文献1に記載の技術では、住宅内の電力供給状況を考慮して、車両と住宅との間で授受される電力をマネジメントする電力システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−54439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気料金および二酸化炭素排出量を最小にするためには、時間毎に変化する様々な要因を考慮して、蓄電池の充放電スケジュールを決定する必要がある。様々な要因は、たとえば時間毎の建物内の消費電力、太陽光発電力、複数の蓄電池の蓄電量、車載用蓄電池から建物へ電力を供給可能な時間、および時間毎の電気料金などである。このような様々な要因を考慮して、蓄電池の最適な充放電スケジュールを短時間で決定することは困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、蓄電池のより最適な充放電スケジュールを決定することができる電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、電力供給契約に基づいて電力供給元の電力系統から建物(11)に供給される供給電力を、配線(12)に接続された電気負荷(13)および蓄電手段(14)に給電可能な電力供給システム(10)であって、
太陽光によって発電を行う太陽光発電手段(16)と、
建物の配線に接続され、太陽光発電手段によって発電された太陽光電力および電力系統から供給される供給電力を蓄電可能であるとともに、蓄電された電力を配線へ放電可能な蓄電手段(14)と、
電力系統から供給される供給電力の消費を制御するとともに、太陽光電力の消費を、蓄電手段への蓄電による消費と、電気負荷による消費と、電力系統への逆潮流による消費とで制御する電力制御手段(18)と、を含み、
電力制御手段は、
予測期間における電気負荷の予測電力量の推移を示す消費量予測データを、電気負荷の使用履歴に基づいて算出し、
予測期間における太陽光発電手段の予測発電量の推移を示す発電量予測データを、予測期間の天候予測データを用いて算出し、
消費量予測データおよび発電量予測データに基づいて、予測期間における蓄電手段の蓄電および放電の推移を示す充放電スケジュールを、蓄電手段の充放電電力を決定するために使用する評価指標が所定の値となるように、混合整数計画問題に定式化して算出し、
算出された充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電手段の充放電電力を制御することを特徴とする電力供給システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明に従えば、電力制御手段は、充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電手段の充放電電力を制御する。充放電スケジュールは、消費量予測データおよび発電量予測データに基づいて、評価指標が所定の値となるように、予測期間における蓄電手段の蓄電および放電の推移を示すものである。評価指標は、たとえば電力コストおよび二酸化炭素の排出量である。所定の値は、たとえば最小値および最大値である。充放電スケジュールは、混合整数計画問題に定式化して算出される。混合整数計画問題は、数理計画問題の1つであり、数学的に充放電スケジューリングを導出する。混合整数計画問題を用いれば、消費量予測データおよび発電量予測データから一意的に最適解を見出すことが可能である。電力制御手段は、このように求められた充放電スケジュールに従って蓄電手段の充放電電力を制御する。したがって算出した最適解の充放電スケジュールを用いて蓄電手段の充放電制御をすることによって、最適な制御を実現することができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、蓄電手段は、車両に搭載され、建物の配線に接続されている場合には、供給電力を蓄電可能であり、蓄電された電力を配線へ放電可能である車載蓄電装置(21)を含み、
電力制御手段は、消費量予測データ、発電量予測データ、および車両の使用履歴に基づいて算出される車載蓄電装置が配線に電気的に接続されている期間に基づいて、予測期間における車載蓄電装置を含む蓄電手段の充放電スケジュールを、混合整数計画問題に定式化して算出することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、電力制御手段は、車載蓄電装置を含む蓄電手段の充放電スケジュールを、混合整数計画問題に定式化して算出する。蓄電手段には、車載蓄電装置も含まれる。電力制御手段は、車載蓄電装置と建物に設置される蓄電手段とを用いた場合における最適な充放電スケジュールを算出することができる。これによって建物に設置される蓄電手段と、車載蓄電装置とを効率よく用いることができる。
【0011】
さらに請求項3に記載の発明では、混合整数計画問題は、論理変数を用いた線形不等式制約によって条件分岐が表現されて定式化されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、混合整数計画問題は、論理変数を用いた線形不等式制約によって条件分岐が表現されて定式化されている。混合整数計画問題では、制約に条件分岐が含まれている場合には、最適化ツールで解を求めることが不可能である。そこで本発明では、論理変数を用いた線形不等式制約によって1本の式で目的関数を表して、条件分岐を表現する。これによって条件分岐が含まれている場合であっても、最適化ツールでの求解が可能となる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明では、混合整数計画問題は、蓄電手段に蓄電されている電力の逆潮流を防ぐ制約条件を含めて定式化されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明に従えば、混合整数計画問題に定式化する際に、蓄電手段に蓄電される電力の逆潮流を防ぐ制約条件が含まれる。これによって蓄電手段に蓄電されている電力が逆潮流することを防ぐことができる。現状の日本国及び諸外国の制度では、蓄電手段から逆潮流が許可されていない。このような現状の制度下では、前述のような逆潮流を禁止する制約条件を用いずに充放電スケジュールを決定しても、実際に実施できないという問題がある。そこで本発明では、逆潮流を防ぐ制約条件を含むことによって、現状の制度下でも実施可能な最適な充放電スケジュールを算出することができる。
【0015】
さらに請求項5に記載の発明では、予測期間は、予め設定される制御周期のn周期分の期間であり、
電力制御手段は、
制御周期毎に、現在時刻から予測期間の充放電スケジュールを算出し、
算出された予測期間における充放電スケジュールのうち、最初の1周期分の充放電スケジュールに従って、蓄電手段の充放電電力を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明に従えば、電力制御手段は、周期毎に、現在時刻から予測期間の充放電スケジュールを算出する。そして電力制御手段は、算出された充放電スケジュールの最初の1周期分を用いて蓄電手段の充放電電力を制御する。周期毎に充放電スケジュールを算出し、最初の1周期分を用いて制御するので、予測期間内の予測が外れた場合および予測のためのデータが変更された場合であっても、修正した新たな充放電スケジュールにて制御される。したがって蓄電手段の実際の充放電電力を最適な充放電スケジュールに近づけることができる。
【0017】
さらに請求項6に記載の発明では、天候予測データを取得する取得手段と、
電気負荷の使用履歴が記憶されている記憶手段と、をさらに含み、
電力制御手段は、
消費量予測データを、記憶手段に記憶されている電気負荷の使用履歴に基づいて算出し、
発電量予測データを、取得手段によって取得された天候予測データを用いて算出することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明に従えば、取得手段および記憶手段をさらに含むので、本発明の電力供給システムを好適な形態で実現することができる。
【0019】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態における電力供給システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】充放電スケジュール決定処理を示すフローチャートである。
【図3】電力購入指数を示すグラフである。
【図4】第1の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図5】第1の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【図6】第2の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図7】第2の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【図8】第3の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図9】第3の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【図10】第4の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図11】第4の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【図12】第5の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図13】第5の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【図14】第6の例の売電電力量の一例を示すグラフである。
【図15】第6の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図15を用いて説明する。図1は、第1実施形態における電力供給システムの概略構成を示す模式図である。電力供給システム10は、電力供給契約に基づいて電力供給元の電力系統から供給される供給電力を、建物11内の交流電力線12に接続された電気負荷である一般負荷13に給電可能なシステムである。
【0022】
電力供給システム10は、たとえば住宅である建物11内に配線された交流電力線12と、交流電力線12に電気的に接続された蓄電ユニット14と、車両20に交流電力線12からの電力を供給して車載蓄電装置21に充電するための充電スタンド15と、太陽光によって発電を行う太陽光発電機16と、交流電力線12に電気的に接続された一般負荷13と、一般負荷13の電力消費をモニタリングするモニタリング装置17と、各部を制御する統合電力制御装置18と、各部を操作する操作表示器19と、を備えている。車両20は、比較的容量の大きな蓄電装置を搭載した車両20、たとえばプラグインハイブリッド自動車である。
【0023】
電力供給システム10は、建物11の外部にあるセンター40とインターネット網50を通じて通信可能である。具体的には、統合電力制御装置18は、センター40と通信して、センター40が有する情報を受信し、センター40へ情報を送信する。
【0024】
建物11内に配線された交流電力線12は、たとえば単相3線式の(1本の中性線と2本の電圧線とからなる)電力線であって、電力会社の電力系統の系統電力が統合電力制御装置18を介して供給されるようになっている。したがって統合電力制御装置18は分電盤としての機能も有する。統合電力制御装置18は、図示は省略するが、主幹ブレーカ、および、各回路系統に流れる電流上限値を規制する漏電検知機能付きの電流ブレーカが配設されている。
【0025】
交流電力線12は、統合電力制御装置18から、第1に充電スタンド15に、第2に太陽光発電機16に、第3に蓄電ユニット14に、第4にモニタリング装置17に分岐している。モニタリング装置17から交流電力線12が延び、モニタリング装置17から延びる交流電力線12に一般負荷13が接続される。したがって一般負荷13には、交流電力線12から電力が給電可能となっている。モニタリング装置17は、一般負荷13の消費電力を検知し、検知した消費電力に基づく情報を統合電力制御装置18に与える。
【0026】
先ず、太陽光発電機16に関して説明する。太陽光発電機16は、太陽光発電手段であって、交流電力線12に系統外電力を供給する。太陽光発電機16は、建物11の屋根に太陽光パネル(図示せず)を設け、太陽光を利用して発電するものである。太陽光発電機16は、発電した太陽光電力を太陽光発電用PCS(図示せず)に供給する。太陽光発電用PCSは、交流電力線12に電気的に接続され、太陽光発電機16からの直流電力を交流電力に変換して、交流電力線12へ給電する。
【0027】
次に、蓄電ユニット14に関して説明する。交流電力線12には、たとえば建物11の外部に設置された蓄電ユニット14(蓄電システムまたは「e−Station」と呼ばれることもある)が接続されている。蓄電ユニット14は、図示は省略するが双方向PCS(パワーコンディショナ)、蓄電池および蓄電池ECU等を備えている。
【0028】
蓄電池は、蓄電手段であって、たとえばリチウムイオン二次電池等からなる単電池を複数組み合わせた集合体である。蓄電池は、双方向PCSを介して交流電力線12に電気的に接続される。双方向PCSは、交流電力線12からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池に供給し、蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して交流電力線12に供給する。
【0029】
蓄電池ECUは、双方向PCSと接続され、双方向PCSの作動を制御する。また蓄電池ECUは、双方向PCSを介して蓄電池に搭載された蓄電池監視ECU(図示せず)と通信可能に接続されている。蓄電池ECUは、統合電力制御装置18と接続されて、相互に情報交換(情報伝達)が可能となっている。
【0030】
次に、充電スタンド15に関して説明する。充電スタンド15は、たとえば建物11の外部に、蓄電ユニット14とは別体で設置されている。充電スタンド15は、統合電力制御装置18から分岐した交流電力線12に接続される。充電スタンド15は、交流電力線12から車両20に搭載される車載蓄電装置21へ供給電力を供給するとともに、車載蓄電装置21が蓄電している電力を交流電力線12へ放電する。充電スタンド15が備える放電用PCS(図示せず)は、交流電力線12に電気的に接続され、車載蓄電装置21が放電する際に、充電スタンド15からの直流電力を交流電力に変換して、交流電力線12へ放電する。
【0031】
交流電力線12は、充電スタンド15内にまで配設され、充電スタンド15の本体部から外部に延出する充放電ケーブル15aに接続している。充放電ケーブル15aの先端部には、接続端子部に相当する充放電コネクタ15bが取付けられている。また充電スタンド15内には、制御ECU(図示せず)などが配設されている。制御ECUは、統合電力制御装置18および車載蓄電装置21と通信することにより、車載蓄電装置21の充放電を制御する。
【0032】
車両20には、充放電コネクタ15bの差込口が設けられている。この差込口に充電スタンド15の充放電コネクタ15bを接続することにより、車載充放電器(図示せず)を介して、車載蓄電装置21を充放電することが可能となっている。車載蓄電装置21を充電する際には、充放電コネクタ15bに交流電力が供給され、供給された交流電力を車載充放電器が直流電力に変換して、車載蓄電装置21に充電する。一方、車載蓄電装置21を放電する際には、車載蓄電装置21の蓄電している直流電力を前述したように放電用PCSが交流電力に変換して、交流電力線12へ放電する。交流電力への変換は、車載充放電器が行ってもよい。
【0033】
次に、操作表示器19に関して説明する。操作表示器19は、たとえば建物11内に配設される遠隔操作手段(所謂リモコン)である。操作表示器19は、統合電力制御装置18と接続される。操作表示器19は、報知手段に相当する表示部19a、および、各部を操作する操作スイッチ19bを備えている。表示部19aには、たとえば蓄電ユニット14の蓄電状態、太陽光発電機16の発電量、一般負荷13による使用電力量、車載蓄電装置21の蓄電状態、および電力系統への逆潮流量などを表示する。また操作スイッチ19bを操作することによって、蓄電ユニット14への蓄電指示、車載蓄電装置21への充電指示、および各種設定などを行うことができる。
【0034】
次に、統合電力制御装置18に関して説明する。統合電力制御装置18は、各部を制御する電力制御手段としての機能も有する。統合電力制御装置18は、各部と接続され、操作表示器19の操作スイッチ19bによって入力された指示に従って、各部が動作するように各部に制御指令を与える。また統合電力制御装置18は、各部の状態に応じた情報を表示するように、操作表示器19の表示部19aを制御する。
【0035】
統合電力制御装置18は、構成の図示は省略するが、通信信号および大気圧センサ(図示せず)等からの検出信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいて各部を制御する制御信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、大気圧等の各種のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのロム(Read-Only Memory:略称ROM)、ラム(Random Access Memory:略称RAM)等を内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、後述する各処理を実行する。以下、統合電力制御装置18の演算部であるマイクロコンピュータを、統合電力制御装置18と表現することがある。
【0036】
統合電力制御装置18は、一般負荷13の使用履歴に基づいて算出される現在から24時間経過するまで(以下、この期間を単に「予測期間」ということがある)の電気負荷の予測電力量と、天候予測データによって予測される予測期間の太陽光発電機16の予測発電量とを算出する。統合電力制御装置18は、大気圧センサにより検出される大気圧の検出値に応じて予測期間の天候を予測し、この天候予測結果および過去の発電量実績に基づき予測期間の太陽光発電機16による発電量の予測発電量を算出する。
【0037】
さらに統合電力制御装置18は、モニタリング装置17から与えられる情報を用いて、一般負荷13の使用履歴に基づいて算出される予測期間の一般負荷13の消費電力量の時間毎の推移を示す消費量予測データと、天候予測データによって予測される予測期間の太陽光発電機16の発電量の時間毎の推移を示す発電量予測データを算出する。各データにおける各値の時間毎の推移としては、たとえば時間単位および分単位などの推移である。
【0038】
統合電力制御装置18は、記憶手段に記憶されている充放電スケジュールに従って、蓄電ユニット14および車載蓄電装置21へ充電する電力と、蓄電ユニット14および車載蓄電装置21から交流電力線12に放電する電力を制御する。充放電スケジュールは、消費量予測データ、発電量予測データ、および車載蓄電装置21の使用スケジュールによって決定される。
【0039】
統合電力制御装置18による天候予測演算は、検出された大気圧値、当該大気圧値の振動の割合、および当該大気圧値の変化率のパラメータに基づいて、予測期間の太陽光発電量を決定する。したがって統合電力制御装置18は、天候予測データを取得する取得手段しての機能を有する。たとえば、統合電力制御装置18は、天候予測演算に使用する所定のマップを記憶手段に記憶している。当該マップは、当該大気圧値の振動の割合が大きく2つに分類されており、この振動の割合の分類毎に大気圧値の変化率に関する不等式がさらに複数に分類され、当該変化率の分類毎にさらに大気圧値に関する不等式が割り当てられている。そして、当該マップに、大気圧値、当該振動の割合、および当該変化率の各パラメータを当てはめることにより、一の予測発電量を決定することができる。大気圧値としては、たとえば演算に現在の検出値を使用し、当該振動の割合および当該変化率としては4時間前から現在までの振動の割合および変化率を使用するものである。したがって統合電力制御装置18は、過去の大気圧データと過去の太陽光発電量との相関関係を示すマップを、記憶手段に記憶している。統合電力制御装置18は、大気圧に基づいて、マップを用いて予測期間の太陽光発電量(予測発電量)を決定する。このようなマップは、たとえば過去の大気圧データと過去の発電量実績とを記録することによって、逐次更新することが有効である。
【0040】
また統合電力制御装置18は、電力が安価な時間帯に蓄電ユニット14を作動させ、蓄電ユニット14に蓄電を行わせることにより、新たな蓄電量が蓄電ユニット14に加わることになる。たとえば蓄電ユニット14および車載蓄電装置21は、深夜時間帯において蓄電される上限量である満充電量(限界蓄電量)まで蓄電される。
【0041】
また統合電力制御装置18は、インターネット網50を介してセンター40と情報を送受信して、各種処理を実行してもよい。統合電力制御装置18は、たとえば一般負荷13の使用履歴など記憶手段に記憶される情報をセンター40に送信する。またセンター40は、たとえば気象情報を統合電力制御装置18に送信する。統合電力制御装置18は、センター40からの気象情報を用いて、天候演算予測してもよい。また統合電力制御装置18は、充放電スケジュールの決定に必要なデータをセンター40に送信し、演算をセンター40が行い、演算結果をセンター40から取得するようにしてもよい。
【0042】
次に、統合電力制御装置18による制御に関して説明する。図2は、統合電力制御装置18の充放電スケジュール決定処理を示すフローチャートである。図2に示すフローは、統合電力制御装置18が電源投入状態において実行、制御周期毎、たとえば1周期を60分として、60分毎に実施される。
【0043】
フローが開始されると、ステップS11では、記憶手段に記憶されている過去の一般負荷13の使用電力量の推移、および過去の太陽光発電量の推移などのデータを読み込む処理を実行し、ステップS12に移る。過去の実績は、過去の予め定めた日数分の実績(たとえば日分の実績)であり、平日実績値と休日(土、日)実績値との二種類がある。読み込む際、読み込むときの曜日に応じて、いずれか1種類のデータが選択される。
【0044】
ステップS12では、読み込んだ使用電力量の実績に基づいて、使用電力量の偏差δを算出し、ステップS13に移る。ステップS13では、使用電力量の平均値と算出した偏差との合計を予測期間の消費量予測データとして、ステップS14に移る。したがって消費量予測データは、使用電力量の実績を用いて、その平均値に偏差を加えた値となる。また使用者の予測期間の一般負荷13の使用予定が既知である場合には、使用予定を読み込んで消費量予測データを算出してもよい。使用予定は、具体的な一般負荷13の使用予定だけでなく、使用者の行動予定、たとえば本来、在宅しない曜日であるのに、在宅することになった場合などの予定も含む。換言すると、使用電力の実績である消費電力の学習データは、季節、曜日、時刻、および在宅人数に関する過去のデータから生成されている。
【0045】
ステップS14では、記憶手段に記憶されている大気圧データを読込み、ステップS15に移る。大気圧データは、記憶手段に記憶されており、たとえば現在時刻から4時間前までの全体の大気圧データを読み込む。なおステップS14では、4時間という時間幅であるが、これに限定するものではなく、予め定めた時間幅の全大気圧データを読み込むステップであってもよい。
【0046】
ステップS15では、大気圧データに基づいて、予測期間の発電量予測データを算出し、ステップS16に移る。ステップS15では、記憶手段に記憶される大気圧と太陽光発電量との相関マップを用いて、読み込んだ大気圧値、大気圧値の振動の割合、および大気圧値の変化率の各パラメータを当てはめることにより、一つの発電量予測データを決定する。
【0047】
ステップS16では、消費量予測データおよび発電量予測データに基づいて、充放電スケジュールを決定し、本フローを終了する。充放電スケジュールを決定するために、消費量予測データと発電量予測データとを用い、予め設定される評価指標が所定の値(以下、「所定値」ということがある)となるように混合整数計画問題に定式化して算出する。評価指標は、交流電力線12からの供給電力量に応じた買電料金、具体的には供給電力量に単位当たりの買電基本値を乗じた買電料金から、交流電力線12への逆潮流量に応じた売電料金、具体的には逆潮流量に単位当たりに売電基本値を乗じた売電料金を差し引いた電気料金である。したがって電気料金は、電力供給契約に基づいて電力供給元に支払う電力料金である。この電気料金が所定値として、最小値となるように充放電スケジュールが決定される。電気料金が正の値の場合には、その料金を支払い、負の値の場合には、電力供給元から使用者にその料金が支払われる。
【0048】
このような充放電スケジュール決定処理によって、予測期間の充放電スケジュールが設定される。本フローは、予測期間よりも短い時間間隔で定期的に実行される処理であるので、最新の天候予測データによって充放電スケジュールを適宜更新設定される。したがって統合電力制御装置18は、予測期間よりも短い時間間隔で、現在時刻から予測期間の充放電スケジュールを定期的に算出し、算出された最新の充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電ユニット14および車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。たとえば1時間毎に現在時刻から24時間経過後までの充放電スケジュールを算出すると、算出した充放電スケジュールに従って1時間、蓄電ユニット14および車載蓄電装置21の充放電を制御することになる。
【0049】
次に、充放電スケジュールの具体的な算出方法に関して説明する。充放電スケジュールは、数理計画問題の1つである混合整数計画問題に定式化して算出される。統合電力制御装置18の記憶手段には、予め混合整数計画問題の式が記憶されている。統合電力制御装置18は、記憶手段に記憶されている混合整数計画問題の最適化変数を求めることによって、充放電スケジュールを決定する。したがって混合整数計画問題の最適化変数は、充放電スケジュールとなる。
【0050】
次に、混合整数計画問題への定式化に関して説明する。先ず、変数定義に関して説明する。最適化変数を数1に示す。数1に示す最適化変数は、混合整数計画問題によって求める変数である。
【数1】

【0051】
次に、既知の情報を数2に示す。数2に示される式に基づく情報は、前述のように算出された消費量予測データおよび発電量予測データ、ユーザの入力指示によって得られて情報、および予め統合電力制御装置18の記憶手段に記憶されている情報などである。
【数2】

【0052】
電力最適化制御の混合整数計画問題への定式化のために、制約条件を定式化する。制約条件は、予め統合電力制御装置18の記憶手段に記憶されている。瞬間電力上限に関する制約条件を数3に示す。
【数3】

【0053】
ただし、W(t)は、車両20の台数をN、蓄電ユニット14内の蓄電池数をMとし、数4に定義される。
【数4】

【0054】
次に、総電力使用量の制約条件を、数5に示す。数5のJmaxは現在時刻tにおいて時刻t+Tまでの家庭の総消費電力の上限値である。
【数5】

【0055】
次に、車載蓄電装置21の最低残量維持に関する制約条件を数6に示す。
【数6】

【0056】
数6にて、下限値に時刻tの引数があるのは、ユーザーが希望する最低残量を時刻毎に自由に変えられるようにとの配慮である。
【0057】
次に、車載蓄電装置21のある時刻Tcharで車載蓄電装置21を満充電にする制約条件を数7に示す。

【数7】

【0058】
数7では、右辺は、満充電の値以下の値であってもよい。
【0059】
次に、車両20の使用を明示する論理変数γ(t)(時刻tにおいて使用時に1、未使用時0)を用いて、走行時は車載蓄電装置21に充電および充電スタンド15へ放電ができないという制約を、論理変数を用いて数8に示す。
【数8】

【0060】
次に、車両20使用による車載蓄電装置21の予測更新式を数9に示す。
【数9】

【0061】
次に、蓄電ユニット14のある時刻Tcharで蓄電ユニット14を満充電にする制約条件を数10に示す。
【数10】

【0062】
数10では、右辺は、満充電の値以下の値であってもよい。
【0063】
次に、蓄電ユニット14の最低残量維持に関する制約条件を数11に示す。
【数11】

【0064】
数11の第1式の下限値に時刻tの引数があるのは、ユーザーが希望する最低残量を時刻毎に自由に変えられるようにとの配慮である。
【0065】
次に、車載蓄電装置21の瞬間充放電能力に関する制約条件を数12に示す。数12では、車載蓄電装置21の充放電能力の上限と下限の制約を示している。
【数12】

【0066】

次に、蓄電ユニット14の瞬間充放電能力に関する制約条件を数13に示す。
【数13】

【0067】
次に、放電+売電制限として、蓄電池放電量は消費電力を上回ることはできない。すなわち売電できるのは太陽光発電電力のみとする制約条件を数14に示す。
【数14】

【0068】
次に、If−thenを含む蓄電ユニット14および車載蓄電装置21の最適充放電計画問題を、混合整数計画問題として定式化して、数15に示す。MLDS(Mixed Logical Dynamical System)表現を用いることによって、制約に条件分岐(If−then)が含まれている場合でも、論理変数を用いた線形不等式制約によって条件分岐を表現することで混合整数計画問題(MILP)への定式化が可能となる。これによって評価関数にIf−thenの条件が含まれる場合も対応することができる。たとえば電力購入時と電力販売時で評価が変わる問題に対応できる。
【数15】

【0069】
数15において論理変数δ(t)を導入した式を数16に示す。
【数16】

【0070】
このように数15に示す式が、数16の第2式の不等式制約を含む評価関数に変換される。ここで、m<0とM>0は定数である。これによって評価関数として、現在時刻から時間ステップTまでの電力の購入価格(評価値が負の時は販売価格)を評価することができる。また係数f(t)とf(t)をそれぞれ電力消費時のCO2排出量(m/kWh)と発電時の二酸化炭素(CO2)削減量(m/kWh)とすることで、評価関数として現在時刻から時間ステップTまでのCO2の総排出量(評価値が負の時は総削減量)を評価することができる。
【0071】
同様に、車両20の使用に関する制約にIf−thenの条件が含まれる場合も対応することができる。また充放電回数の制限を表現する制約条件も導入することができる。また電力供給システム10内に複数の車載蓄電装置21と複数の蓄電ユニット14とが接続される場合であっても適応することができる。
【0072】
統合電力制御装置18は、数16に示すZ(電力コスト)が最小となるように、数1に示す最適化変数を算出する。したがって前述のように、数1に示す最適化変数が、充放電スケジュールとなる。
【0073】
前述のように、統合電力制御装置18は、充放電スケジュール決定処理を、60分毎に実行する。したがって24時間の予測期間は、制御周期の24周期分の期間である。これによって最新の天候予測データによって充放電スケジュールを適宜更新設定される。換言すると、receding horizon型の最適化計算手法を用いている。具体的には、制御周期Δt毎の最新の情報に基づいて電力の需要予測を行うので、突発的な電力需要の変化に対応できる。現在時刻tにおいて時刻t+Tまでの評価関数を最適化する充放電計画を行い充放電パターン(p(t)、p(t+Δt)、p(t+2Δt)、…、p(t+T))、(p(t)、p(t+Δt)、p(t+2Δt)、…、p(t+T))を求め、最初の1周期である時刻tからΔt間はその充放電計画通りのp(t)、p(t)の充放電を行う。そして、時間がΔt経過したら(つまり現在時刻が時刻t+Δtになったら)、1周期経過したのでt:=t+Δtとして同じ処理を繰り返す。
【0074】
次に、売電電力量および車載蓄電装置21の残量と時刻との関係について図3〜図15を用いて説明する。図3は、電力購入指数を示すグラフである。図3に示すように時間帯によって電力購入指数が異なり、深夜時間帯である0時から7時までが最も安価であり、9時から17時までが最も高い。たとえば電力購入指標は、図3に示す例では、7時〜9時および17時〜24時までは、21.2円/kWh、9時〜17時までは、31.4円/kWh、24時〜7時までは、9.3円/kWhとする。また売電基本値は、24時間一定であり48円/kWhとする。また図4〜図15では、横軸に時間を示し、縦軸に車載蓄電装置21の残量または売電電力量を示す。図4〜図15に示す例では、車載蓄電装置21の電力利用の効果を示すために、蓄電ユニット14を用いずに車載蓄電装置21を用いた場合の例である。
【0075】
図4は、第1の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図5は、第1の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図4および図5は、昼間の通勤に車両20を使用している場合のグラフである。第1の例では、通勤のため7時から18時まで車両20が充電スタンド15に接続されてなく、通勤によって車載蓄電装置21の残量が減っている。
【0076】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯では、深夜時間帯の安い電力を用いて充電していることがわかる。
【0077】
図6は、第2の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図7は、第2の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図6および図7は、昼間の通勤に車両20を使用している場合であって、昼間の電力消費量が第1の例よりも多い場合のグラフである。第2の例では、第1の例と同様に、通勤のため7時から18時まで車両20が充電スタンド15に接続されてなく、通勤によって車載蓄電装置21の残量が減っている。
【0078】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯では、第1の例と同様に深夜時間帯の安い電力を用いて充電していることがわかる。
【0079】
図8は、第3の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図9は、第3の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図8および図9は、主婦などの在宅者が昼間に3回車両20を使用している場合のグラフである。第3の例では、昼間に1時間×3回車両20が充電スタンド15に接続されてなく、車両20の使用によって車載蓄電装置21の残量が減っている。
【0080】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯が第1の例および第2の例よりも長いので、図8の売電電力量が−(売電)している量が多くなっていることがわかる。
【0081】
図10は、第4の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図11は、第4の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図10および図11は、第3の例と同様に、主婦などの在宅者が昼間に3回車両20を使用している場合のグラフである。第4の例では、第3の例と同様に、昼間に1時間×3回車両20が充電スタンド15に接続されてなく、車両20の使用によって車載蓄電装置21の残量が減っている。また第4の例では、昼間の電力消費量が第3の例よりも多い。
【0082】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯が第1の例および第2の例よりも長いが、電力消費量が多いので、図10の売電電力量が−(売電)している量が第3の例よりかは少なくなっていることがわかる。
【0083】
図12は、第5の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図13は、第5の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図12および図13は、準夜勤などで13時から深夜2時まで車両20を使用している場合のグラフである。通勤のため13時から深夜2時まで車両20が充電スタンド15に接続されてなく、通勤によって車載蓄電装置21の残量が減っている。
【0084】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし昼間に車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯が少ないので、図12の売電電力量が−(売電)している量が多くなっていることがわかる。
【0085】
図14は、第6の例の売電電力量の一例を示すグラフである。図15は、第6の例の車載蓄電装置21の残量の一例を示すグラフである。図14および図15は、準夜勤などで13時から深夜2時まで車両20を使用している場合のグラフである。通勤のため13時から深夜2時まで車両20が充電スタンド15に接続されてなく、通勤によって車載蓄電装置21の残量が減っている。また第6の例では、昼間の電力消費量が第5の例よりも多い。
【0086】
前述のように最適化変数を算出して充放電スケジュールが決定されているので、充放電スケジュールに従って統合電力制御装置18は車載蓄電装置21の充放電電力を制御する。したがって車両20使用中は、最適化前と最適後との波形は同じである。しかし昼間に車載蓄電装置21の電力が用いることができる時間帯が少なく、かつ昼間の電力使用量が多いので、図14の売電電力量が−(売電)している量が少なく最適化の効果が少なくなっていることがわかる。
【0087】
以上説明したように本実施形態の電力供給システム10の統合電力制御装置18は、充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電ユニット14の蓄電池および車載蓄電装置21の車載蓄電池(以下、まとめて蓄電手段ということがある)の充放電電力を制御する。充放電スケジュールは、消費量予測データおよび発電量予測データに基づいて、評価指標が所定の値となるように、予測期間における蓄電手段の蓄電および放電の推移を示すものである。評価指標は、たとえば電力コストおよび二酸化炭素の排出量である。所定の値は、たとえば最小値および最大値である。統合電力制御装置18は、充放電スケジュールに従って蓄電手段の充放電電力を制御する。
【0088】
充放電スケジュールは、混合整数計画問題に定式化して算出される。混合整数計画問題は、数理計画問題の1つであり、数学的に充放電スケジュールを導出する。充放電スケジュールを算出する場合、従来、蓄電池の容量制限など各種制約の下で複数パターンの総当り問題となるため、一般的に机上検討で解を導くことは困難である。そこで数理計画問題に定式化し、最適化ソフトウエアで求解することを考える。具体的には、混合整数計画問題を用いれば、消費量予測データおよび発電量予測データから一意的に最適解を見出すことが可能である。したがって算出した最適解の充放電スケジュールを用いて蓄電手段の充放電制御をすることによって、最適な制御を実現することができる。
【0089】
また本実施形態では、統合電力制御装置18は、蓄電ユニット14および車載蓄電装置21の充放電スケジュールを、混合整数計画問題に定式化して算出する。統合電力制御装置18は、車載蓄電装置21と建物11に設置される蓄電ユニット14とを用いた場合における最適な充放電スケジュールを算出することができる。これによって建物11に設置される蓄電ユニット14と、車載蓄電装置21とを効率よく用いることができる。
【0090】
さらに本実施形態では、混合整数計画問題は、論理変数を用いた線形不等式制約によって条件分岐が表現されて定式化されている。混合整数計画問題では、制約に条件分岐が含まれている場合には、最適化ツールで解を求めることが不可能である。そこで本発明では、論理変数を用いた線形不等式制約によって1本の式で目的関数を表して、条件分岐を表現する。これによって最適化ツールでの求解が可能となる。
【0091】
また本実施形態では、統合電力制御装置18は、混合整数計画問題に定式化する際に、蓄電手段に蓄電される電力の逆潮流を防ぐ制約条件が含まれる(数14参照)。これによって蓄電手段に蓄電されている電力が逆潮流することを防ぐことができる。したがって蓄電手段に蓄電されている電力の逆潮流を禁止するシステムであっても、最適な充放電スケジュールを算出することができる。
【0092】
さらに本実施形態では、統合電力制御装置18は、統合電力制御装置18、周期毎に、現在時刻から予測期間の充放電スケジュールを算出する。そして統合電力制御装置18は、算出された充放電スケジュールの最初の1周期分を用いて蓄電手段の充放電電力を制御する。周期毎に充放電スケジュールを算出し、最初の1周期分を用いて制御するので、予測期間内の予測が外れた場合および予測のためのデータが変更された場合であっても、修正した新たな充放電スケジュールにて制御される。したがって蓄電手段の実際の充放電電力を最適な充放電スケジュールに近づけることができる。
【0093】
また本実施形態では、最適な機器スペックを算出し、機器の設計にフィードバックすることができる。たとえば、同じ効果が出る最小の蓄電池容量や、適切な充放電能力を算出し、オーバースペックの蓄電池にならないよう、設計にフィードバックすることが可能である。また、推奨する車の使用時間帯を本手法から見極め、車の使用計画への助言も可能となる。
【0094】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0095】
前述の第1実施形態では、2つの蓄電手段の充放電スケジュールを決定する構成であるが、2つに限るものではなく、3つ以上であってもよい。したがって、たとえば蓄電ユニット14に複数の電池を備え、複数の車両20が接続される電力供給システム10において、充放電スケジュールを決定してもよい。
【0096】
前述の第1実施形態では、評価指標は電気料金であったが、電気料金に限るものではなく、他の値、たとえば二酸化炭素の排出量であってもよい。二酸化炭素の排出量が評価指標の場合には、二酸化炭素排出量を最小にするように充放電スケジュールが決定される。
【0097】
また前述の第1実施形態では、建物11は住宅であったが、これに限定されるものではない。たとえば、建物11は、店舗、工場、倉庫等であってもかまわない。
【0098】
また前述の第1実施形態では、車載蓄電装置21を搭載した車両20はプラグハイブリッド(PHV)自動車であったが、これに限定されるものではなく、たとえば、電気自動車であってもかまわない。また、蓄電池を搭載した車両20であれば、蓄電池に蓄えた電力を車両20の駆動に用いるものにも限定されるものではない。
【0099】
また前述の第1実施形態では、充放電スケジュールを算出する制御周期は1時間と一定であったが、一定に限るものではなく、30分であっても、2時間であってもよい。たとえば制御周期は、実測値と予測値との差が許容値を越えてより大きくなるにつれて、短くするように制御してもよい。許容値を越えた場合は、より早い時点で修正することが好ましいので、比較する間隔を短くすることによって、早い時点で予測が外れた場合の制御を実施することができる。これによって予測が大きく外れた場合であっても、速やかに対応することができる。また予測期間は、24時間に限るものではなく、12時間であってもよく、6時間であってもよい。したがって予測期間は、制御周期のn周期分であれば、その数値を限定するものではない。nは、2以上の整数である。
【0100】
また前述の第1実施形態では、蓄電ユニット14と充電スタンド15とは別体であったが、一体であってもかまわない。蓄電ユニット14と充電スタンド15とが別体の場合には、それぞれのユニットの設置位置の自由度が向上する。一方、蓄電ユニット14と充電スタンド15とが一体の場合には、構成を簡素化することが可能である。
【0101】
また前述の第1実施形態では、蓄電ユニット14の蓄電池、および、車載蓄電装置21の蓄電池は、いずれも二次電池であったが、これに限定されるものではない。充電可能および放電可能な蓄電手段であればよく、たとえばキャパシタ等を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
10…電力供給システム
11…建物
12…交流電力線(配線)
13…一般負荷(電気負荷)
14…蓄電ユニット(蓄電手段)
15…充電スタンド
15a…充放電ケーブル
15b…充放電コネクタ
16…太陽光発電機(太陽光発電手段)
17…モニタリング装置
18…統合電力制御装置(電力制御手段,取得手段)
19…操作表示器
19a…表示部
19b…操作スイッチ
20…車両
21…車載蓄電装置
40…センター
50…インターネット網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給契約に基づいて電力供給元の電力系統から建物(11)に供給される供給電力を、配線(12)に接続された電気負荷(13)および蓄電手段(14)に給電可能な電力供給システム(10)であって、
太陽光によって発電を行う太陽光発電手段(16)と、
前記建物の前記配線に接続され、前記太陽光発電手段によって発電された太陽光電力および前記電力系統から供給される前記供給電力を蓄電可能であるとともに、蓄電された電力を前記配線へ放電可能な蓄電手段(14)と、
前記電力系統から供給される前記供給電力の消費を制御するとともに、前記太陽光電力の消費を、前記蓄電手段への蓄電による消費と、前記電気負荷による消費と、前記電力系統への逆潮流による消費とで制御する電力制御手段(18)と、を含み、
前記電力制御手段は、
予測期間における前記電気負荷の予測電力量の推移を示す消費量予測データを、前記電気負荷の使用履歴に基づいて算出し、
前記予測期間における前記太陽光発電手段の予測発電量の推移を示す発電量予測データを、前記予測期間の天候予測データを用いて算出し、
前記消費量予測データおよび前記発電量予測データに基づいて、前記予測期間における前記蓄電手段の蓄電および放電の推移を示す充放電スケジュールを、前記蓄電手段の充放電電力を決定するために使用する評価指標が所定の値となるように、混合整数計画問題に定式化して算出し、
算出された前記充放電スケジュールに従って、前記予測期間における前記蓄電手段の充放電電力を制御することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記蓄電手段は、車両に搭載され、前記建物の前記配線に接続されている場合には、前記供給電力を蓄電可能であり、蓄電された電力を前記配線へ放電可能である車載蓄電装置(21)を含み、
前記電力制御手段は、前記消費量予測データ、前記発電量予測データ、および前記車両の使用履歴に基づいて算出される前記車載蓄電装置が前記配線に電気的に接続されている期間に基づいて、前記予測期間における前記車載蓄電装置を含む前記蓄電手段の前記充放電スケジュールを、前記混合整数計画問題に定式化して算出することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記混合整数計画問題は、論理変数を用いた線形不等式制約によって条件分岐が表現されて定式化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記混合整数計画問題は、前記蓄電手段に蓄電されている電力の逆潮流を防ぐ制約条件を含めて定式化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記予測期間は、予め設定される制御周期のn周期分の期間であり、
前記電力制御手段は、
前記制御周期毎に、現在時刻から前記予測期間の前記充放電スケジュールを算出し、
算出された前記予測期間における前記充放電スケジュールのうち、最初の1周期分の前記充放電スケジュールに従って、前記蓄電手段の充放電電力を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記天候予測データを取得する取得手段(18)と、
前記電気負荷の使用履歴が記憶されている記憶手段と、をさらに含み、
前記電力制御手段は、
前記消費量予測データを、前記記憶手段に記憶されている前記電気負荷の使用履歴に基づいて算出し、
前記発電量予測データを、前記取得手段によって取得された天候予測データを用いて算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−27214(P2013−27214A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161465(P2011−161465)
【出願日】平成23年7月24日(2011.7.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】