説明

電力供給装置、建物

【課題】車両を走行させる蓄電池の電力を建物でも使用可能にし、蓄電池の電力を建物で使用する間に車両の走行を可能にし、しかも導入費用の増加を抑制する。
【解決手段】電気自動車20は、複数個の蓄電池モジュール21が着脱可能であって、蓄電池モジュール21の電力により走行する。電力供給装置10は、建物30に設置され、車両に搭載された蓄電池モジュール21から選択される1個ないし複数個の蓄電池モジュール21が着脱可能に装着される装着装置11と、装着装置11に装着された蓄電池モジュール21の充放電を行う充放電装置12とを備える。充放電装置12は、建物30に設置された分電盤33に接続され、制御装置13により制御される。制御装置13は、装着装置11に装着された蓄電池モジュール21から建物30で使用する電気負荷31への給電と蓄電池モジュール21への充電との少なくとも一方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の電力を用いて走行する車両と配電線が敷設されている建物との間で電力の需給を連携させる電力供給装置、およびこの電力供給装置を設けた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車のような車両に搭載された蓄電池の電力を建物に供給する技術が提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1には、住宅の配電線に充放電器が接続され、電気自動車に搭載された蓄電池が必要に応じて充放電器に接続される電力供給システムが記載されている。また、特許文献2には、建物に電力変換部が設けられ、必要に応じて自動車の車載バッテリから電力変換部を通して建物の電気負荷に給電する電源システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330083号公報
【特許文献2】特開2009−278776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2に記載された技術は、自動車が搭載している蓄電池を、建物に設けられた電力変換器(充放電器、電力変換部)と電線を介して接続することにより、蓄電池の電力を建物で使用可能にしている。したがって、特許文献1、2に記載された技術では、自動車に搭載された蓄電池の電力を建物で使用している間に自動車を使用する必要が生じた場合、建物では蓄電池の電力を使用できなくなり、商用電源などの別電源から供給される電力を使用することになる。
【0005】
したがって、別電源が商用電源である場合、特許文献1に記載された技術では、自動車に搭載された蓄電池の残存容量に余裕があっても電力の購入が必要になる。一方、特許文献2に記載された技術では、建物に住宅用バッテリが設けられているから、住宅用バッテリの残存容量に余裕があれば商用電源から電力を購入することなく自動車を使用することが可能である。しかしながら、特許文献2に記載された構成では、自動車に搭載された車載バッテリのほかに住宅用バッテリが必要になる。
【0006】
ここに、車両を走行させたり、建物で電気負荷を動作させたりするには、大容量の蓄電池が必要であるから、価格が200万円程度と高価になる。したがって、特許文献2に記載の技術のように、車載バッテリに加えて住宅用バッテリが必要になると、導入費用が大幅に増加し、普及させることが困難になる。
【0007】
本発明は、車両を走行させる蓄電池の電力を建物でも使用可能にする構成であって、蓄電池の電力を建物で使用する間に車両の走行を可能にし、しかも、車両用以外の蓄電池を購入する必要がなく導入費用の増加を抑制することができる電力供給装置を提供することを目的とし、さらにこの電力供給装置を設置した建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電力供給装置は、車両の走行に用いる電力を供給し、車両に対して着脱可能である複数個の蓄電池モジュールを利用する電力供給装置であって、車両に搭載された蓄電池モジュールから選択される1個ないし複数個の蓄電池モジュールが着脱可能に装着される装着装置と、車両に搭載されている蓄電池モジュールと装着装置に装着された蓄電池モジュールとの充放電が可能である充放電装置とを建物に備え、さらに充放電装置を制御する制御装置を備え、充放電装置は、建物に設置された分電盤に接続され、制御装置は、装着装置に蓄電池モジュールが装着されている場合に、蓄電池モジュールから建物で使用する電気負荷への給電と蓄電池モジュールへの充電との少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0009】
この電力供給装置において、制御装置は、車両について予定されている走行距離を入力情報として、車両に搭載する蓄電池モジュールの充電容量が当該走行距離を満たすように充放電装置を制御することが好ましい。
【0010】
この電力供給装置において、充放電装置は、装着装置に装着された蓄電池モジュールを個別に充放電する機能を有することが好ましい。
【0011】
この電力供給装置において、充放電装置は、装着装置に装着された蓄電池モジュールを個別に充電する機能を有し、制御装置は、走行距離を満たす充電容量に達するまで車両に搭載する蓄電池モジュールを順に充電することが好ましい。
【0012】
この電力供給装置において、充放電装置は、装着装置に装着された蓄電池モジュールを個別に充電する機能を有し、制御装置は、走行距離を満たす充電容量と蓄電池モジュールの容量とから車両に搭載する蓄電池モジュールの個数を定めることが好ましい。
【0013】
この電力供給装置において、制御装置は、蓄電池モジュールごとに蓄電池の劣化度を計測する劣化計測手段と、蓄電池の劣化が進行して劣化度が規定した第1の基準値に達すると蓄電池モジュールが車両に適さなくなったことを報知し、蓄電池の劣化がさらに進行して劣化度が第1の基準値よりも大きい第2の基準値に達すると蓄電池モジュールが交換時期になったことを報知する報知手段とを備えることがさらに好ましい。
【0014】
この電力供給装置において、電気料金の単価が時間帯ごとに変化する商用電源の電力系統に分電盤が接続されている場合に、制御装置は、電気料金の単価が相対的に安い時間帯に蓄電池モジュールを充電し、電気料金の単価が充電時よりも高い時間帯に蓄電池モジュールから放電して建物の電気負荷に給電することがさらに好ましい。
【0015】
この電力供給装置において、分電盤は商用電源の電力系統に接続され、制御装置は、電気事業者が管理する端末装置と通信する通信手段を備え、装着装置に蓄電池モジュールが装着された状態において、通信手段を通して端末装置から指示を受けたときに蓄電池モジュールから放電して建物の電気負荷に給電することがさらに好ましい。
【0016】
本発明に係る建物は、上述のいずれか1項に記載の電力供給装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、車両を走行させる蓄電池の電力を建物でも使用可能であり、しかも、蓄電池の電力を建物で使用する間にも車両の走行が可能であり、さらに、車両用以外の蓄電池を購入する必要がなく導入費用の増加を抑制することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上に用いる制御装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に説明する実施形態は、建物として戸建て住宅を例示する。建物は、戸建て住宅のほか、店舗、集合住宅などであってもよく、建物についてとくに制限はないが、車両の走行に用いる蓄電池の容量、建物の電気負荷で使用する電力量は考慮する必要がある。また、車両は、電気自動車が望ましいが、走行用の動力として電動機とともにガソリンエンジンを備えたハイブリッド車や電動二輪車(いわゆる、電動バイク、電動スクータ)などであってもよい。ただし、蓄電池は、車両の走行に用いるだけではなく、建物の電気負荷に給電する目的でも用いるから、全体としての容量(公称容量)が比較的大きい蓄電池を搭載した車両が望ましい。以下では、車両が電気自動車である場合を想定して説明する。
【0020】
図1に示すように、電気自動車20は、走行に用いる電力を供給するための蓄電池モジュール21が搭載される。蓄電池モジュール21は、高エネルギーを蓄えるために、多数個の蓄電池(セル)211をパッケージに内蔵している。電気自動車20は、複数個の蓄電池モジュール21が搭載可能である保持装置22を備える。保持装置22は、複数個の蓄電池モジュール21を保持するときには、蓄電池モジュール21を並列に接続する。電気自動車20は、1個以上の蓄電池モジュール21が保持装置22に装着されていると、蓄電池モジュール21から供給される電力による走行が可能になる。
【0021】
保持装置22は、規定個数の蓄電池モジュール21を直列に接続する構成を採用してもよいが、この場合、保持装置22が保持する蓄電池モジュール21の個数は規定個数の整数倍であることが要求される。また、保持装置22に装着する蓄電池モジュール21の最小個数は上述した規定個数になる。
【0022】
ところで、電気自動車20に用いられる蓄電池モジュール21の出力電圧は、一般に高圧(たとえば、300V程度)であり、保持装置22に対して蓄電池モジュール21を着脱する際にアークが発生すると電極の劣化などの不都合が生じる。したがって、電池保持装置22は、蓄電池モジュール21を着脱する際に回路を遮断する機能を有していることが好ましい。
【0023】
蓄電池モジュール21は、保持装置22に対して非接触で電力を伝達するように構成してもよい。非接触で電力を伝達する構成を採用すると、蓄電池モジュール21を保持装置22に着脱する際にアークの発生がなく、蓄電池モジュール21の取り扱いが容易になる。ただし、蓄電池モジュール21から保持装置22に非接触で電力を伝達すると、蓄電池モジュール21の電極を保持装置22の接触子に接触させる場合よりも電力の伝達効率が低下する。したがって、磁界共振型や電界共振型のように、電力伝達効率の高い非接触給電の技術を採用することが望ましい。
【0024】
一方、建物30には、車両20に搭載された蓄電池モジュール21から選択される1個以上の蓄電池モジュール21を利用して、建物30で使用する電気負荷31への給電を行う電力供給装置10が設けられる。電力供給装置10は、1個ないし複数個の蓄電池モジュール21が着脱可能に装着される装着装置11を備える。装着装置11は、電気自動車20に設けた保持装置22と同様に、複数個の蓄電池モジュール21を装着可能であり、1個以上の蓄電池モジュール21が装着されることにより、建物30の電気負荷31への給電が可能になる。また、装着装置11は、保持装置22と同様に、接触式あるいは非接触式で蓄電池モジュール21との間で電力を伝達する。
【0025】
電気自動車20の保持装置22が蓄電池モジュール21の電力を伝達する構成が接触式であれば装着装置11も接触式になり、保持装置22が非接触式であれば装着装置11も非接触式であることが望ましい。ただし、装着装置11と保持装置22とにおいて蓄電池モジュール21との間で電力を伝達する形式を異ならせることも可能である。ここに、保持装置22は、蓄電池モジュール21から受電のみを行うのに対して、装着装置11は、蓄電池モジュール21との間で電力を双方向に伝達する。さらに、装着装置11と保持装置22とは、ケーブル23を介して電気的に接続することも可能である。あるいはまた、電気自動車20に充電用のソケットを設けている場合、建物30側にプラグを設けておき、電気自動車20を建物30に所定の場所に駐車した状態でプラグとソケットとが自動的に結合されるようにしてもよい。
【0026】
建物30は、商用電源の電力系統32から受電する分電盤33を備える。分電盤33には、上述した電力供給装置10が接続され、さらに図示例では分電盤33に太陽光発電装置34が接続されている。また、電気負荷31は、分電盤33で分岐された配電線35を通して給電される。電気負荷31は、建物30で使用される照明機器、情報機器、映像機器、音響機器、厨房機器、健康機器など、電力を用いて動作する機器や装置を意味する。
【0027】
電力供給装置10は、装着装置11に装着された1個ないし複数個の蓄電池モジュール21の充電と放電とを行う充放電装置12を備える。充放電装置12は、装着装置11に装着された蓄電池モジュール21の充電と放電とをまとめて行う構成を採用することが可能であるが、本実施形態では、装着装置11に装着された蓄電池モジュール21の充電と放電とを個別に行う構成を採用している。すなわち、装着装置11は、蓄電池モジュール21を個別に装着する複数個の取付部(図示せず)を備え、充放電装置12は、蓄電池モジュール21の充電と放電とを取付部ごとに選択可能になっている。
【0028】
電気自動車20に設けた保持装置22も装着装置11と同様に取付部(図示せず)を備える。装着装置11と保持装置22とがケーブルあるいはソケットを介して接続されている状態では、保持装置22に装着された蓄電池モジュール21は、装着装置11に装着された場合と同様に扱われることが好ましい。すなわち、充放電装置12は、保持装置22に装着された蓄電池モジュール21の充電と放電とを取付部ごとに行うことが好ましい。
【0029】
また、充放電装置12は、取付部ごとに蓄電池モジュール21の有無を検出する機能を有し、蓄電池モジュール21が装着されていない取付部との間では電力の需給を禁止する機能を備える。取付部における蓄電池モジュール21の有無は、機械的なスイッチあるいは光電スイッチを用いて検出される。
【0030】
したがって、充放電装置12は、装着装置11に複数個の蓄電池モジュール21が装着されている場合に、一部の蓄電池モジュール21を充電の対象とし、残りの蓄電池モジュール21を放電の対象とすることが可能になる。ただし、いずれかの蓄電池モジュール21に蓄電を行っている間に、他の蓄電池モジュールから放電することはできず、異なる蓄電池モジュール21であっても、充電と放電とは異なる時刻に行われる。言い換えると、装着装置11に装着されている蓄電池モジュール21の間で電力が授受されることは禁止されている。
【0031】
充放電装置12は分電盤33に接続される。分電盤33内において、充放電装置12が蓄電池モジュール21を充電する電力は、商用電源の電力系統32あるいは太陽光発電装置34から供給される。また、充放電装置12は、蓄電池モジュール21の電力を用いて電気負荷31に給電する機能も備える。したがって、装着装置11に蓄電池モジュール21が装着されている場合に、当該蓄電池モジュール21を充電することと、当該蓄電池モジュール21を放電させて蓄電池モジュール21の電力を用いて電気負荷31に給電することとが可能になる。
【0032】
太陽光発電装置34のように再生可能エネルギーないし自然エネルギーを用いて発電する発電装置を建物30に備えている場合、発電装置を電力系統32と連系させる構成と、発電装置を電力系統32と連系させない構成とのいずれかが採用される。発電装置を電力系統32と連系させない場合、発電装置で発電された電力のうち建物30の電気負荷31で利用されない余剰分は蓄電池モジュール21に充電される。また、発電装置を電力系統32と連系させている場合、発電装置で発電された電力のうち建物30の電気負荷31で利用されない余剰分は、原則として電力系統32に逆潮流され、電力系統32への逆潮流を行えない場合、蓄電池モジュール21に充電される。
【0033】
ところで、充放電装置12が、蓄電池モジュール21への充電を行うか、蓄電池モジュール21からの放電を行うかは、制御装置13に指示される。制御装置13は、図示例では建物30に設けられているが、建物30とは別に設けられていてもよい。制御装置13が建物30とは別に設けられている場合には、充放電装置12と制御装置13との間で通信を行う。制御装置13は、マイコン(DSP、FPGA、PICなどであってもよい)のようにプログラムに従って動作するプロセッサを主要なハードウェアとして備える。また、制御装置13は、液晶表示器のようなドットマトリクス方式の表示器を備える表示手段131と、タッチスイッチのような操作手段132とを備える。操作装置132は、押釦スイッチのような機械接点を備えるスイッチであってもよい。
【0034】
制御装置13は、電気自動車20について予定されている走行距離が操作手段132から入力されると、入力された走行距離に応じて蓄電池モジュール21の充電容量を制御する。蓄電池モジュール21の充電容量は、蓄電池モジュール21に保持されている電荷量に相当する。ここでは、説明を簡単にするために、1日を単位として蓄電池モジュール21を装着装置11に装着する場合を想定する。
【0035】
いま、電気自動車20を翌日に使用するために、蓄電池モジュール21を装着装置11に装着して充電を行っていると仮定する。この場合、すべての蓄電池モジュール21を満充電にし、すべての蓄電池モジュール21を電気自動車20に搭載することが考えられるが、電気自動車20に蓄電池モジュール21を搭載している間は、建物30では蓄電池モジュール21を利用できなくなる。また、買い物に用いる場合など、建物30から数km程度の範囲で電気自動車20を使用する場合、すべての蓄電池モジュール21を満充電にして搭載しても、充電容量のうちの多くが使用されずに残存することになる。すなわち、当日に必要な充電容量を大幅に上回る無駄に大きい充電容量の蓄電池モジュール21を電気自動車20に搭載することになる。そのため、電気自動車20の重量が大きくなってエネルギーの損失量が増加する(言い換えると、エネルギー利用効率が低下する)上に、蓄電池モジュール21の満充電を日々繰り返すことによって、蓄電池211が劣化しやすくなる。
【0036】
そこで、制御装置13は、操作手段132から翌日の走行距離の予定が入力情報として入力されると、翌日に電気自動車20に搭載する蓄電池モジュール21の充電容量が予定された走行距離を満たすように充放電装置12を制御する。すなわち、制御装置13は、操作手段132から入力された走行距離を満足する充電容量を計算し、かつ翌日に電気自動車20に搭載する蓄電池モジュール21の個数を計算する計算手段133を備える。計算手段133により電気自動車20に搭載する蓄電池モジュール21の個数が求められると、制御手段13は、当該個数の蓄電池モジュール21の充電容量が、計算手段133により求められた充電容量になるように充放電装置12を制御する。
【0037】
ところで、翌日の走行距離は、操作手段132から数値で入力可能であるが、一般の利用者にとって走行距離を数値で正しく入力するのは容易ではない。そこで、カーナビゲーション装置のように、出発地点と目的地点(複数地点の入力を可能にしておく)とを地図上で入力する機能を制御装置13に設け、制御装置13が自動的にコースを設定し、設定されたコースでの走行距離を自動的に算出することが望ましい。
【0038】
また、子供の送り迎えや買い物に電気自動車20を使用する場合のように、日々、繰り返して同じコースを利用する場合もある。このような場合に備えて、制御装置13は、複数のコースを選択肢としてあらかじめ登録する機能を備え、操作手段132を用いて翌日に利用するコースが選択されると、走行距離を自動的に計算する機能を備えることが好ましい。なお、走行距離を満たす充電容量は、計算上の走行距離に対して数kmから数十km程度の余裕分を見込んで計算しておくことが望ましい。
【0039】
さらに、制御装置13は、計算手段133が求めた個数の蓄電池モジュール21を、以下のいずれかの方法で充電するように充放電装置12を制御する。
【0040】
第1の方法では、制御装置は13は、走行距離を満たす充電容量に達するまで車両に搭載する蓄電池モジュール21を順に充電する。すなわち、制御装置13は、1つの蓄電池モジュール21が満充電または規定の充電容量まで充電した後に、次の蓄電池モジュール21が満充電または規定の充電容量まで充電するという動作を繰り返すように、充放電装置12を制御する。なお、規定の充電容量は、満充電の充電容量(公称容量)に対して所定の倍率(たとえば、0.6〜0.8の間で選択する)を乗じた充電容量を意味する。
【0041】
第2の方法では、制御装置13は、車両に搭載する個数の蓄電池モジュール21の充電容量が均等になるように充放電装置12を制御する。この場合、計算手段133は、求めた走行距離を満たす充電容量を求めた蓄電池モジュール21の個数で除算することによって蓄電池モジュール21ごとに要求される充電容量を求める。制御装置13は、計算手段133が求めた充電容量になるように、個々の蓄電池モジュール21の充電を行うように充放電装置12を制御する。
【0042】
いま、1個の蓄電池モジュール21は、容量(電力量)が1kWh、質量が10kgであって、電気自動車の走行距離が10km/kWhであると仮定する。翌日に予定した走行距離が12kmであるときに、充電容量は、(1.2+α)kWhになるから、蓄電池モジュール21は少なくとも2個必要である。ここで、α=0.2とする。第1の方法では、図2(a)のように、2個の蓄電池モジュール21のうちの1個は満充電になり、残りの1個の充電容量は0.4kWhになる。また、第2の方法では、図2(b)のように、2個の蓄電池モジュール21は、ともに0.7kWhになる。
【0043】
なお、装着装置11に装着したすべての蓄電池モジュール21を満充電まで充電しておき、翌日に予定した走行距離から求められる個数の蓄電池モジュール21を、電気自動車20に搭載するようにしてもよい。
【0044】
上述したように、翌日に予定している走行距離を満足するように充電容量を決め、その充電容量を満たすように、電気自動車20に搭載する蓄電池モジュール21の個数が決められる。したがって、走行距離を満たすのに必要な個数の蓄電池モジュール21を電気自動車20に搭載すればよく、全数の蓄電池モジュール21を搭載するよりも軽量になるから、電気自動車20の走行に関してエネルギーの利用効率が高くなる。すなわち、蓄電池モジュール21の残存容量に対する走行距離が長くなるという効果が期待できる。
【0045】
上述した動作は、電気自動車20に搭載する蓄電池モジュール21を装着装置11に装着して充電する場合を例示したが、ケーブル23を用いる場合は、電気自動車20から蓄電池モジュール21を保持装置22から外さずに充電することが可能である。すなわち、蓄電池モジュール21を保持装置22に装着したままで装着装置11に装着した場合と同様の方法で充電することが可能になる。
【0046】
ところで、蓄電池211は充放電を繰り返すことによって劣化し、満充電時の充電容量が次第に低下する。そこで、制御装置13は、蓄電池モジュール21ごとに蓄電池の劣化度を計測する劣化計測手段134を備えていることが好ましい。劣化計測手段134は、電池電圧によって満充電を検出し、充電開始時の残留容量と満充電に到達するまでに充電した電荷量とにより、満充電時の充電容量を計測する。
【0047】
一般に蓄電池211は、電気自動車20に使用できない程度に劣化したとしても、建物30の電気負荷31に給電する目的であれば使用できることがあり、建物30の電気負荷31にも使用できなくなると交換することになる。したがって、劣化度に対する基準値を2段階に定めておき、劣化度が比較的小さい第1の基準値に達したときに電気自動車20に適さなくなったことを報知し、劣化度が第1の基準値よりも大きい第2の基準値に達すると交換を促すように報知することが好ましい。したがって、制御装置13には、蓄電池モジュール21ごとの劣化度を第1の基準値および第2の基準値と比較して報知を行う報知手段135が設けられる。
【0048】
第1の基準値は、たとえば、満充電時の充電容量が公称容量の60%になる状態の劣化度とし、第2の基準値は、たとえば、満充電時の充電容量が公称容量の30%になる状態の劣化度とすればよい。報知手段135は、蓄電池モジュール21の劣化度が第1の基準値に達すると、該当する蓄電池モジュール21を建物専用とすることを推奨する報知を行う。また、報知手段135は、蓄電池モジュール21の劣化が進み、劣化度が第2の基準値に達すると、該当する蓄電池モジュール21を交換してリサイクル用の資材とすることを推奨する報知を行う。
【0049】
ところで、商用電源の電気料金は、契約によって単価が時間帯ごとに変化する場合がある。たとえば、電気料金の単価は、1日に3段階に設定されている場合がある。このような場合、制御装置13は、蓄電池モジュール21の充電を、電気料金の単価が相対的に安い時間帯に行い、蓄電池モジュール21の放電を、電気料金の単価が充電時よりも高い時間帯に行うように充放電装置12を制御することが好ましい。この動作を行えば、需要家にとっては、電気料金の単価が安い時間帯の電力を利用することになり、電気料金の低減が可能になる。とくに、電気自動車20で使用する蓄電池モジュール21は、夜間など電気料金の安い時間帯に充電することが好ましい。
【0050】
また、制御装置13は、電気事業者の管理する端末装置40と通信する通信手段136を備えていることが好ましい。通信手段136は、専用通信網や公衆網のような通信ネットワーク41を通して端末装置40と通信する。通信手段136は、端末装置40からの指示を受けて制御装置13に蓄電池モジュール21の放電のタイミングを指示する。すなわち、装着装置11に蓄電池モジュール21が装着され、かつ蓄電池モジュール21の残留容量が規定値以上であるとき、端末装置40からの指示を受けて建物30の電気負荷31に給電することが可能になっている。ここに、蓄電池モジュール21の残留容量が規定値以上であるとは、蓄電池モジュール21に電気負荷31に給電できる程度の電荷量が蓄電されている状態を意味する。
【0051】
制御手段13が上述した機能を有する通信手段136を備えていると、需要家が使用する電力量に対して商用電源から供給可能な電力量の余裕がないときに、電気事業者からの要請によって、需要家にあらかじめ蓄電されている電力を用いることが可能になる。すなわち、商用電源の電力系統32において電力不足が生じる前に、電力系統32から需要家に供給する電力を低減させることが可能になる。
【0052】
なお、充放電装置12は、蓄電池モジュール21の充電と放電とを行っているが、蓄電池モジュール21の充電を別途に行うのであれば、蓄電池モジュール21の放電のみを行ってもよい。要するに、電気自動車20の走行に用いるための電力を供給する蓄電池モジュール21を用いて、建物30の電気負荷31への給電を行う機能のみを充放電装置12に持たせてもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の構成を採用することにより、電気自動車20を走行させるための電力を供給する蓄電池モジュール21を建物30の電気負荷31に給電するために流用することが可能になる。しかも、複数個の蓄電池モジュール21の一部を電気自動車20に用い、残りを建物30で用いることが可能であるから、蓄電池モジュール21の電力を建物30で使用する間にも電気自動車20の走行が可能になる。その上、電気自動車20に搭載された蓄電池モジュール21を建物30で流用するから、建物30に専用で用いる蓄電池モジュール21を購入する必要がなく、結果的に導入費用の増加を抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
11 装着装置
12 充放電装置
13 制御装置
20 電気自動車(車両)
21 蓄電池モジュール
211 蓄電池
30 建物
31 電気負荷
33 分電盤
134 劣化計測手段
135 報知手段
136 通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に用いる電力を供給し、前記車両に対して着脱可能である複数個の蓄電池モジュールを利用する電力供給装置であって、前記車両に搭載された前記蓄電池モジュールから選択される1個ないし複数個の前記蓄電池モジュールが着脱可能に装着される装着装置と、前記車両に搭載されている前記蓄電池モジュールと前記装着装置に装着された前記蓄電池モジュールとの充放電が可能である充放電装置とを建物に備え、さらに前記充放電装置を制御する制御装置を備え、前記充放電装置は、前記建物に設置された分電盤に接続され、前記制御装置は、前記装着装置に前記蓄電池モジュールが装着されている場合に、前記蓄電池モジュールから前記建物で使用する電気負荷への給電と前記蓄電池モジュールへの充電との少なくとも一方を行うことを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車両について予定されている走行距離を入力情報として、前記車両に搭載する前記蓄電池モジュールの充電容量が当該走行距離を満たすように前記充放電装置を制御することを特徴とする請求項1記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記充放電装置は、前記装着装置に装着された前記蓄電池モジュールを個別に充放電する機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記充放電装置は、前記装着装置に装着された前記蓄電池モジュールを個別に充電する機能を有し、前記制御装置は、前記走行距離を満たす充電容量に達するまで前記車両に搭載する前記蓄電池モジュールを順に充電することを特徴とする請求項2記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記充放電装置は、前記装着装置に装着された前記蓄電池モジュールを個別に充電する機能を有し、前記制御装置は、前記走行距離を満たす充電容量と前記蓄電池モジュールの容量とから前記車両に搭載する前記蓄電池モジュールの個数を定めることを特徴とする請求項2記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記蓄電池モジュールごとに蓄電池の劣化度を計測する劣化計測手段と、前記蓄電池の劣化が進行して劣化度が規定した第1の基準値に達すると前記蓄電池モジュールが前記車両に適さなくなったことを報知し、前記蓄電池の劣化がさらに進行して劣化度が第1の基準値よりも大きい第2の基準値に達すると蓄電池モジュールが交換時期になったことを報知する報知手段とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項7】
電気料金の単価が時間帯ごとに変化する商用電源の電力系統に前記分電盤が接続されている場合に、前記制御装置は、電気料金の単価が相対的に安い時間帯に前記蓄電池モジュールを充電し、電気料金の単価が充電時よりも高い時間帯に前記蓄電池モジュールから放電して建物の電気負荷に給電することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記分電盤は商用電源の電力系統に接続され、前記制御装置は、電気事業者が管理する端末装置と通信する通信手段を備え、前記装着装置に前記蓄電池モジュールが装着された状態において、前記通信手段を通して前記端末装置から指示を受けたときに前記蓄電池モジュールから放電して前記建物の電気負荷に給電することを特徴とする請求項2記載の電力供給装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電力供給装置を備えることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74703(P2013−74703A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211596(P2011−211596)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】