説明

電力供給装置および電子機器

【課題】太陽電池からの出力電力が少ない場合においても、発電した電力を有効に利用する。
【解決手段】太陽光による照射エネルギーを電力に変換する太陽電池10、および蓄電手段21を有する負荷20に接続され、太陽電池10からの入力電力を負荷20に供給する電力供給装置30であって、太陽電池10からの入力電力に対して、最大限の発電量に制御する最大電力追従手段50と、最大電力追従手段50に供給される電源をオンオフする切替手段40と、を備え、切替手段40により、太陽電池10からの入力電力を、最大電力追従手段50を介して負荷20に供給するモードと、最大電力追従手段50を介さずに負荷20に供給するモードと、を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置および電子機器に関する。さらに詳述すると、太陽電池からの出力電力を効率的に負荷に供給する電力供給装置およびこれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光による照射エネルギーを太陽電池により電力に変換して、この発電電力を負荷に供給する太陽光発電システムが普及しており、このような太陽光発電システムにおいて、太陽電池の発電能力を最大限に発揮する方法として、最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を行う装置(チャージコントローラ等)を用いて、出力電力最大点を追従させる方法が知られている。
【0003】
このMPPT制御に関して、特許文献1には、簡素な構成で低消費電力のMPPT制御を実現して太陽電池の発電量を最大化することを目的として、太陽電池モジュールの発電によって得られた入力電圧を昇圧する場合に、入力電圧値と閾値とを比較し、入力電圧が閾値以上であれば二次電池の満充電電圧まで昇圧させ、入力電圧が閾値未満であれば入力電圧と閾値との差電圧に比例して出力電圧を低下させる電力変換装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、装置の非稼働時に電源の供給量を低減して省電力化を図る電源制御において、省電力状態の省電力効果をより高めることを目的とする電源装置であって、装置の復帰要因検知を太陽電池で稼動する制御回路を用いて制御する発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような、従来の太陽電池からの出力によってMPPT制御を行うシステムにおいては、太陽電池からの出力電力が少なくMPPT制御に十分な電力に達しない場合に、発電した電力が有効に利用できないという問題があった。また、特許文献2においても同様に、制御回路でMPPT制御を行う場合に使用する電力が、MPPT制御を行った際の効率の上昇分を下回る場合には、発電電力が有効に利用できないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池からの出力電力が少ない場合においても、発電した電力を有効に利用することができる電力供給装置およびこれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の電力供給装置は、太陽光による照射エネルギーを電力に変換する太陽電池、および蓄電手段を有する負荷に接続され、太陽電池からの入力電力を負荷に供給する電力供給装置であって、太陽電池からの入力電力に対して、最大限の発電量に制御する最大電力追従手段と、最大電力追従手段に供給される電源をオンオフする切替手段と、を備え、切替手段により、太陽電池からの入力電力を、最大電力追従手段を介して負荷に供給するモードと、最大電力追従手段を介さずに負荷に供給するモードと、を切替えるものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力供給装置において、切替手段は、太陽電池の出力電圧に基づいて電源のオンオフを制御するものである。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電力供給装置において、周囲の照度を検知する照度センサに接続され、切替手段は、照度センサの検知結果に基づいて電源のオンオフを制御するものである。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電力供給装置において、時刻を検知する計時手段に接続され、切替手段は、時刻に基づいて電源のオンオフを制御するものである。
【0011】
また、請求項5に記載の電子機器は、負荷であって、請求項1から4までのいずれかに記載の電力供給装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、太陽電池からの出力電力が少ない場合においても、発電した電力を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る電力供給装置を含む太陽光発電システムの機能ブロック図である。
【図2】太陽電池から出力される(A)電圧電流特性、(B)電力電圧特性を示すグラフである。
【図3】MPPT回路の一例を示す回路構成図である。
【図4】太陽電池への照射強度と電力との関係を示すグラフで(1)ある。
【図5】電圧に閾値を設定した場合の電圧電流特性を示すグラフである。
【図6】太陽電池の出力電圧に基づいて電源のオンオフを制御する切替手段の回路構成図である。
【図7】周辺照度に基づいて電源のオンオフを制御する切替手段の回路構成図である。
【図8】プリンタの制御回路の機能ブロック図である。
【図9】切替手段を備えた制御回路の回路構成図である。
【図10】太陽電池への照射強度と電力との関係を示すグラフ(2)である。
【図11】時刻と照射エネルギーとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る構成を図1から図11に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係る電力供給装置は、太陽光による照射エネルギーを電力に変換する太陽電池(10)、および蓄電手段(21)を有する負荷(20)に接続され、太陽電池(10)からの入力電力を負荷(20)に供給する電力供給装置(30)であって、太陽電池(10)からの入力電力に対して、最大限の発電量に制御する最大電力追従手段(50)と、最大電力追従手段(50)に供給される電源をオンオフする切替手段(40)と、を備え、切替手段(40)により、太陽電池(10)からの入力電力を、最大電力追従手段(50)を介して負荷(20)に供給するモードと、最大電力追従手段(50)を介さずに負荷(20)に供給するモードと、を切替えるものである。
【0015】
[第1の実施形態]
(太陽光発電システムの構成)
図1に本実施形態に係る電力供給装置30と、太陽光による照射エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池(太陽電池モジュール、ソーラーパネル等)10と、電力供給装置30に接続される蓄電手段21(二次電池等)を備える負荷20と、から構成される太陽光発電システム100の機能ブロック図を示す。
【0016】
電力供給装置30は、太陽電池10から入力される電力に対して最大限の発電量に制御する機能を有した最大電力追従手段(MPPT回路)50と、当該最大電力追従手段50に供給される電源をオンオフする切替手段(SW)40により構成される。
【0017】
先ず、太陽電池10から出力される電圧電流特性および電圧電力特性を図2(A),(B)にそれぞれ示す。図2(A)に示すように太陽電池10からの出力は低電圧では定電流源、出力最大電圧付近では定電圧源として動作し、太陽電池10に照射するエネルギーが大きいほど同電圧での電流値は大きくなり、太陽電池10の温度が大きいほど同電流での電圧値は小さくなる。
【0018】
また、電力は電圧と電流を乗じたものであるので、電圧電力特性は図2(B)で示される。太陽電池10では、日照の変化や気温等の環境条件により、刻々と照射エネルギーと温度が変わるため、最大電力(Pmax)を得ることができる電圧も時々によって変化することとなる。
【0019】
そこで、電力供給装置30として、常に最大の電力を得る電圧に追従する最大電力追従手段50としてMPPT回路を用いる構成が知られている。図3に最大電力追従手段50としてのMPPT回路の回路図の一例を示す。なお、MPPT回路の構成は、図3に示す例に限られるものではなく、その他、公知、または新規のMPPT回路の構成であっても良い。なお、MPPT回路の構成は、公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0020】
図3に示すMPPT回路50によれば、マイクロコンピュータ51を用いることにより太陽電池10からの入力電圧と入力電流を検出し、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことで降圧および昇圧を行い、最大電力を出力することのできる電圧に追従するものである。しかしながら、太陽電池10からの入力電力が非常に小さい場合、マイクロコンピュータ51などの電子部品による消費電力がMPPT回路による発電効率の上昇よりも大きくなるという問題がある。
【0021】
そこで、本実施形態に係る電力供給装置30は、蓄電手段21を備えた負荷20への接続を、太陽電池からの直接接続(第1の接続モード)とMPPT回路50を介した接続(第2の接続モード)に切り替えることのできる切替手段(スイッチ)40を太陽電池10からの入力側に備えるものである。
【0022】
切替手段40を制御することにより、上述のようにMPPT回路50を用いることが却って電力効率の低下を生じるような場合には、MPPT回路50への電源を遮断することとし、これにより太陽電池10からの入力電力に関わらず効率の良い発電が可能となる。以下、切替手段40の制御例について詳細に説明する。
【0023】
(切替手段)
図4に、MPPT制御を行う場合と行わない場合のそれぞれの場合における太陽電池への照射強度と電力との関係を示すグラフを示す。図4に示すように、太陽電池10への照射エネルギー強度が低い場合((1)の領域)は、MPPT制御を行わない方が取り出すことのできる電力値が大きくなる。これに対し、照射エネルギーが高くなると、ある点(閾値)を境((1)領域と(2)領域との境界)として、MPPT制御を行う方が取り出すことのできる電力が大きくなる。
【0024】
そこで、切替手段40は、その境界となる照射強度の閾値を判断基準として、スイッチのオンオフ制御を行って、MPPT制御の有無を切り替えるものである。これにより、照射強度が低い場合においても、電力を効率良く得ることが可能となる。
【0025】
図5に図2(A)に示した電圧電流特性に、電圧に所定の閾値を設定したグラフを示す。図4に示すように、周辺照度が大きくなると、同じ抵抗を接続した際の太陽電池からの出力電圧値が上昇する。よって、出力電圧に閾値を設定し、閾値以上であるかどうかを検知する。
【0026】
図6に、太陽電池10から入力される電圧を基準としてオンオフ制御を行う切替手段40の一例を示す。この切替手段40は、太陽電池10からの入力電圧の大小によってコンパレータ41の出力を切り替え、各電界効果トランジスタ(FET1〜FET5)のオン/オフを行い、端子を切り替えることによって制御するものである。
【0027】
具体的には、太陽電池10からの入力電圧が閾値以下の場合、FET3およびFET5をオン、FET1,FET2およびFET4をオフとなり、太陽電池(+)入力は負荷(+)出力に、太陽電池(−)入力は負荷(−)出力に接続され、外部電源とMPPT回路50とは遮断される。
【0028】
これに対し、太陽電池10からの入力電圧が閾値を超える場合、FET1,FET2およびFET4をオン、FET3およびFET5をオフとなり、太陽電池(+)入力がMPPT(+)出力に、太陽電池(−)入力がMPPT(−)出力に接続され、外部電源とMPPT電源とが接続される。
【0029】
なお、閾値は、コンパレータ上部の抵抗42の抵抗値を製造時に設定することにより設定することができる。また、抵抗42を可変抵抗として、外部からの入力によって変化させることにより、最適な閾値を適宜設定可能とすることも好ましい。
【0030】
また、周辺照度に基づいて切替手段40のオンオフ制御を行うこととしても良い。図7に、周辺照度を基準としてオンオフ制御を行う切替手段40の一例を示す。図7に示す切替手段40は、太陽電池10の周辺の照度を検知する不図示の照度センサと接続され、照度センサからの出力を照度センサ入力に接続し、その信号の大小によってコンパレータ41の出力を切り替え、各電界効果トランジスタ(FET1〜FET5)のオンオフを行い、端子を切り替えることによって制御するものである。
【0031】
具体的には、照度センサからの入力電圧が閾値以下の場合、FET3およびFET5をオン、FET1,FET2およびFET4をオフとなり、太陽電池(+)入力は負荷(+)出力に、太陽電池(−)入力は負荷(−)出力に接続され、外部電源とMPPT回路50とは遮断される。
【0032】
これに対し、照度センサからの入力電圧が閾値を超える場合、FET1,FET2およびFET4をオン、FET3およびFET5をオフとなり、太陽電池(+)入力がMPPT(+)出力に、太陽電池(−)入力がMPPT(−)出力に接続され、外部電源とMPPT電源とが接続される。
【0033】
なお、閾値は、コンパレータ上部の抵抗42の抵抗値を製造時に設定することにより設定することができる。また、抵抗42を可変抵抗として、外部からの入力によって変化させることにより、最適な閾値を適宜設定可能とすることも好ましい。
【0034】
以上説明した電力供給装置30を用いた太陽光発電システム100とすることで、太陽電池10からの出力電圧や周辺照度に応じて、MPPT回路50の電源を切り替えることができるので、太陽電池10からの出力電力が小さく、MPPT回路50の消費電力に達しない場合でも、発電した電力を有効に利用することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る電力供給装置のその他の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同様の点についての説明は省略する。
【0036】
画像形成装置(プリンタ、ファクシミリ、複写装置、複合機)等の電子機器(負荷20)の多くは、その内部に制御回路を搭載しているが、上記実施形態で説明した電力供給装置30(切替手段40および最大電力追従手段50)を、それらの電子機器の制御回路(LSI)22が備える(組み込む)ようにすることも好ましい。本実施形態では、電子機器の一例としてプリンタを例として説明する。
【0037】
図8にプリンタの制御回路22の機能ブロック図の一例を示す。プリンタの制御回路22は、プリンタ全体の制御を司るCPU23と、CPU23が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM24と、画像データ等を一時格納し、プログラムを動作させるメインメモリであるRAM25と、ホストPC60とのデータ及び信号の送受を行うためのホストI/F26と、ネットワークや各種の周辺機器とデータ及び信号の送受を行うための外部I/F27等を備えている。
【0038】
上述した切替手段40および最大電力追従手段50を備えたプリンタの制御回路22の回路構成図を図9に示す。この制御回路22の消費電力をP、全ゲート数をN、電源電圧をVdd、ゲートが遷移する確率の平均をα(活性化率)、クロック周波数をf、C−MOSの負荷容量をCとした時、消費電力Pは、次式(1)により表すことができる。
P=N×α×f×C×Vdd ・・・(1)
【0039】
制御回路22はソーラーパネル10からの出力電力を検知し、内部で設定した閾値を超えたときに制御回路内のPWM回路28へのクロック(clk)供給や外部スイッチをオンし、閾値を下回ったときにPWM回路28へのクロック供給の停止や外部スイッチをオフする制御を行う。なお、外部からの入力は、上述のように太陽電池の出力電圧または周辺照度によって制御すれば良い。
【0040】
このようにすることで、PWM回路28でゲートの遷移が起こらなくなり、制御回路全体の活性化率が減るため消費電力を減少させ、また、MPPTに必要な抵抗やキャパシタで消費される電力が減少させることが可能となる。
【0041】
また、RTC(Real Time Clock、計時手段)を有したプリンタの場合、時刻をRTCより制御回路22が受信し、切替手段40のオンオフを制御することも好ましい。例えば、図11に示すように、十分な照射エネルギーが得られると考えられる時刻((1)の領域)にスイッチをオンとし、十分な照射エネルギーが得ることができないと考えられる時刻((2)の領域)にスイッチをオフにする制御を行うものである。
【0042】
また、以上説明した電源供給装置30に接続、または、これを有する負荷(電子機器)20は、AC電源等の本電源を有しており、電源供給装置30からの出力は、補助電源として蓄電手段(キャパシタ等)21等に蓄電する装置であることが好適である。
【0043】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 太陽電池(ソーラーパネル)
20 負荷
21 蓄電手段
22 制御回路
23 CPU
24 ROM
25 RAM
26 ホストI/F
27 外部I/F
28 PWM回路
30 電力供給装置
40 切替手段(SW)
41 コンパレータ
42 抵抗
50 最大電力追従手段(MPPT回路)
51 マイコン
52 ゲートドライブ回路
53a〜e 抵抗
54a,b コンパレータ
55a,b コンデンサ
56,57 ダイオード
58 トランジスタ
59 インダクタンス
60 ホストPC
100 太陽光発電システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2008−90672号公報
【特許文献2】特開2009−106144号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光による照射エネルギーを電力に変換する太陽電池、および蓄電手段を有する負荷に接続され、前記太陽電池からの入力電力を前記負荷に供給する電力供給装置であって、
前記太陽電池からの入力電力に対して、最大限の発電量に制御する最大電力追従手段と、
前記最大電力追従手段に供給される電源をオンオフする切替手段と、を備え、
前記切替手段により、前記太陽電池からの入力電力を、前記最大電力追従手段を介して前記負荷に供給するモードと、前記最大電力追従手段を介さずに前記負荷に供給するモードと、を切替えることを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記太陽電池の出力電圧に基づいて前記電源のオンオフを制御することを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
周囲の照度を検知する照度センサに接続され、
前記切替手段は、前記照度センサの検知結果に基づいて前記電源のオンオフを制御することを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項4】
時刻を検知する計時手段に接続され、
前記切替手段は、時刻に基づいて前記電源のオンオフを制御することを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記負荷であって、請求項1から4までのいずれかに記載の電力供給装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−124991(P2012−124991A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271641(P2010−271641)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】