説明

電力供給装置

【課題】車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリを用いることなく、しかも、新たに設ける回路を極力抑えることができる電力供給装置を提供する。
【解決手段】電力供給装置1は、DC−DCコンバータ装置10とヒータ接続スイッチ11とを備えている。DC−DCコンバータ装置10は、高電圧バッテリB10の出力する直流電圧を絶縁して降圧し、低電圧バッテリB11に供給する装置である。電力供給装置1は、DC−DCコンバータ装置10を利用してヒータH1に電力を供給する。そのため、従来のように、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリB11を用いることはない。しかも、回路及び動作を若干変更するだけでよい。従って、新たに設ける回路を極力抑えて電力供給装置を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び走行用の電動機を備えたハイブリッド車で、内燃機関や触媒装置を加熱するためのヒータに電力を供給する電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関及び走行用の電動機を備えたハイブリッド車で、内燃機関や触媒装置を加熱するためのヒータに電力を供給する電力供給装置にとして、例えば特許文献1に開示されているヒータ付触媒の電源装置がある。
【0003】
このヒータ付触媒の電源装置は、内燃機関の排気ガスを浄化する触媒を加熱するためのヒータに電力を供給する装置である。ここで、触媒は、所定温度に達しないと活性化せず充分な浄化機能を発揮できない。そのため、触媒の温度が低いときであっても、短時間で充分な浄化機能が得られるように、ヒータによって加熱する構成がとられている。
【0004】
ヒータ付触媒の電源装置は、バッテリと、DC−DCコンバータと、コンデンサと、スイッチとを備えている。バッテリは、DC−DCコンバータの入力端に接続されている。コンデンサは、DC−DCコンバータの出力端に接続されている。スイッチは、コンデンサとヒータの間に接続されている。DC−DCコンバータは、バッテリの出力する直流電圧12Vを120Vに昇圧してコンデンサを充電する。そして、内燃機関始動時の所定時間だけスイッチがオンし、コンデンサからヒータに電力を供給する。これにより、ヒータを発熱させ触媒を加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−011941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したヒータ付触媒の電源装置を車両に適用する場合、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する12Vの低電圧バッテリを用いることになる。低電圧バッテリの出力する直流電圧を昇圧してコンデンサを充電する際、低電圧バッテリの電圧が大きく低下する。そのため、低電圧バッテリだけでなく車両に搭載されている各種電子装置にも大きなストレスが加わる。その結果、低電圧バッテリや各種電子装置の寿命を縮めてしまうという問題があった。また、前述したヒータ付触媒の電源装置を車両に適用する場合、DC−DCコンバータ回路やスイッチを新たに設けなければならない。そのため、車両が大型化するとともにコストアップしてしまうという問題もあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリを用いることなく、しかも、新たに設ける回路を極力抑えることができる電力供給装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、この課題を解決すべく、内燃機関及び走行用の電動機を備えたハイブリッド車において、高電圧バッテリの電圧を変換して低電圧バッテリに供給する直流電圧変換装置を利用することで、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリを用いることなく、しかも、新たに設ける回路を極力抑えられることを見出すことができる。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の電力供給装置は、内燃機関及び走行用の電動機を備えたハイブリッド車で、前記内燃機関、及び、前記内燃機関の排気ガスを浄化する触媒装置の少なくともいずれかを加熱するためのヒータに電力を供給する電力供給装置において、1次巻線と2次巻線を有するトランスと、高電圧バッテリと1次巻線の間に接続され、高電圧バッテリの出力する直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線に印加する入力側回路と、2次巻線と高電圧バッテリより電圧が低い低電圧バッテリの間に接続され、2次巻線の出力する交流電圧を直流電圧に変換して低電圧バッテリを供給する出力側回路と、入力側回路を制御する制御回路とを備えた直流電圧変換装置と、トランスにヒータを接続する接続回路と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、高電圧バッテリの電圧を変換して低電圧バッテリに供給する直流電圧変換装置を利用することで、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリを用いることなく、しかも、新たに設ける回路を極力抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の電力供給装置は、トランスは、出力側回路に接続される2次巻線とは別の2次巻線を有し、接続回路は、別の2次巻線にヒータを接続することを特徴とする。この構成によれば、別の2次巻線を介してヒータに電力を供給することができる。
【0012】
請求項3に記載の電力供給装置は、接続回路は、低電圧バッテリが出力側回路から遮断された状態で別の2次巻線にヒータを接続することを特徴とする。この構成によれば、低電圧バッテリに電圧を供給しない状態でヒータに電力を供給することができる。そのため、ヒータに充分な電力を供給することができる。
【0013】
請求項4に記載の電力供給装置は、トランスは、別の2次巻線の出力する交流電圧が1次巻線に印加される交流電圧以上になるように巻数比が設定されていることを特徴とする。この構成によれば、より高い交流電圧でヒータに電力を供給することができる。そのため、ヒータに流れる電流を抑えることができる。従って、ヒータに接続される配線を細くすることができる。
【0014】
請求項5に記載の電力供給装置は、ヒータは、複数の小ヒータからなり、トランスは、別の2次巻線を小ヒータと同数有し、接続回路は、別の2次巻線に小ヒータをそれぞれ接続することを特徴とする。この構成によれば、それぞれの小ヒータに供給する電力を抑えることができる。つまり、それぞれ小ヒータに供給する電圧を抑えることができる。そのため、トランスや接続回路の耐圧を抑えることができる。従って、コストを抑えることができる。また、それぞれの小ヒータ間の絶縁距離を小さくすることができる。そのため、小ヒータをより近接して配置できる。従って、ヒータを小型化することができる。
【0015】
請求項6に記載の電力供給装置は、接続回路を介して接続される別の2次巻線と小ヒータの配線経路の一部は、車両本体によって形成されていることを特徴とする。この構成によれば、配線部材を削減することができる。そのため、コストを抑えることができる。また、配線経路で発生した熱を、車体本体を介して放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の電力供給装置の回路図である。
【図2】図1の電力供給装置において低電圧バッテリを充電しているときの回路図である。
【図3】図1の電力供給装置においてヒータに電力を供給しているときの回路図である。
【図4】第1実施形態の電力供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】第2実施形態の電力供給装置の回路図である。
【図6】図4の電力供給装置において低電圧バッテリを充電しているときの回路図である。
【図7】図4の電力供給装置においてヒータに電力を供給しているときの回路図である。
【図8】第2実施形態の電力供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
【0018】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態の電力供給装置について説明する。まず、図1を参照して第1実施形態の電力供給装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態の電力供給装置の回路図である。
【0019】
図1に示す電力供給装置1は、エンジン(内燃機関)及び走行用のモータ(電動機)を備えたハイブリッド車において、エンジンの排気ガスを浄化する触媒装置を加熱するためのヒータに電力を供給する装置である。電力供給装置1は、DC−DCコンバータ装置10(直流電圧変換装置)と、ヒータ接続スイッチ11(接続回路)とを備えている。
【0020】
DC−DCコンバータ装置10は、高電圧バッテリB10の出力する直流電圧を絶縁して降圧し、低電圧バッテリB11に供給する装置である。ここで、高電圧バッテリB10は、走行用のモータに供給する電力を蓄えるためのバッテリである。また、低電圧バッテリB11は、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給するための、高電圧バッテリB10より電圧が低いバッテリである。DC−DCコンバータ装置10は、トランス100と、入力側回路101と、出力側回路102と、出力遮断スイッチ103と、制御回路104とを備えている。
【0021】
トランス100は、1次側に入力される交流電圧を絶縁した状態で降圧し、2次側から出力する素子である。トランス100は、1次巻線W1と、2次巻線W21、W22とを備えている。また、2次巻線W21、W22とは別の2次巻線W23を備えている。1次巻線W1と2次巻線W21の巻数比は、n1:n21(n1≧n21)に設定されている。また、1次巻線W1と2次巻線W22の巻数比は、n1:n22(n22=n21)に設定されている。さらに、1次巻線W1と2次巻線W23の巻数比は、n1:n23(n23>n1)に設定されている。1次巻線W1の一端と他端は、入力側回路101に接続されている。2次巻線W21、W22は、直列接続されている。具体的には、2次巻線W21の一端と2次巻線W22の一端が接続されている。2次巻線W21の他端と2次巻線W22他端は、出力側回路102にそれぞれ接続されている。2次巻線W23の一端はヒータ接続スイッチ11に、他端はヒータH1にそれぞれ接続されている。
【0022】
入力側回路101は、高電圧バッテリB10と1次巻線W1の間に接続され、高電圧バッテリB10の出力する直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線W1に印加する回路である。入力側回路101は、IGBT101a〜101dを備えている。IGBT101a〜101dは、スイッチングすることで、高電圧バッテリB10の出力する直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線W1に印加するスイッチング素子である。IGBT101a、101b及びIGBT101c、101dは、それぞれ直列接続されている。具体的には、IGBT101a、101cのエミッタがIGBT101b、101dのコレクタにそれぞれ接続されている。直列接続された2組のIGBT101a、101b及びIGBT101c、101dは、高電圧バッテリB10に並列接続されている。具体的には、IGBT101a、101cのコレクタが高電圧バッテリB10の正極端に、IGBT101b、101dのエミッタが高電圧バッテリB10の負極端にそれぞれ接続されている。IGBT101a、101bの直列接続点は1次巻線W1の一端に、IGBT101c、101dの直列接続点は1次巻線W1の他端にそれぞれ接続されている。また、IGBT101a〜101dのゲートは、制御回路104にそれぞれ接続されている。
【0023】
出力側回路102は、2次巻線W21、W22と低電圧バッテリB11の間に接続され、2次巻線W21、W22の出力する交流電圧を直流電圧に変換して低電圧バッテリB11に供給する回路である。出力側回路102は、ダイオード101a、102bを備えている。
【0024】
ダイオード102a、102bは、2次巻線W21、W22にそれぞれ接続され、2次巻線W21、W22の出力する交流電圧をそれぞれ整流する素子である。ダイオード102aのアノードは2次巻線W21の他端に、カソードは低電圧バッテリB11の正極端にそれぞれ接続されている。ダイオード102bのアノードは2次巻線W22の他端に、カソードは低電圧バッテリB11の正極端にそれぞれ接続されている。
【0025】
出力遮断スイッチ103は、低電圧バッテリB11を出力側回路102から遮断する素子である。出力遮断スイッチ103の一端は2次巻線W21、W22の直列接続点に、他端は低電圧バッテリB11の負極端にそれぞれ接続されている。また、制御端は、制御回路104に接続されている。
【0026】
制御回路104は、入力側回路101、出力遮断スイッチ103及びヒータ接続スイッチ11に接続され、外部から入力される車両始動信号に基づいて、入力側回路101、出力遮断スイッチ103及びヒータ接続スイッチ11を制御する回路である。ここで、車両始動信号は、ハイブリッド車の始動が予告されたとき、又は、ハイブリッド車が始動したときオン状態になる。具体的には、ハイブリッド車を始動するためにイグニッションスイッチを押したとき、高電圧バッテリB1をモータの駆動装置(図略)に接続するためのリレーをオンしたとき、又は、数分後に車両に乗り込むため事前にエアコンを動作させたとき等にオン状態になる。つまり、車両始動信号は、ハイブリッド車の始動予告時又は始動時を示す信号である。制御回路104は、IGBT101a〜101dのゲート、及び、出力遮断スイッチ103の制御端にそれぞれ接続されている。また、ヒータ接続スイッチ11に接続されている。
【0027】
ヒータ接続スイッチ11は、制御回路104に接続され、制御回路104によって制御され、2次巻線W23にヒータH1を接続する素子である。ヒータ接続スイッチ11の一端は、2次巻線W23の一端に接続されている。また、他端は、ヒータH1の一端に接続され、ヒータH1の他端は2次巻線W23の他端に接続されている。さらに、制御端は、制御回路104に接続されている。
【0028】
次に、図2〜図4を参照して電力供給装置の動作について説明する。ここで、図2は、図1の電力供給装置において低電圧バッテリを充電しているときの回路図である。図3は、図1の電力供給装置においてヒータに電力を供給しているときの回路図である。図4は、第1実施形態の電力供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0029】
図2に示す制御回路104は、図4に示すように、車両始動信号がオン状態か否かを判断する(S100)。車両始動信号がオフ状態のとき、制御回路104は、出力遮断スイッチ103をオンし、低電圧バッテリB11を出力側回路102に接続する(S101)。また、ヒータ接続スイッチ11をオフし、ヒータH1を2次巻線W23から遮断する(S102)。そして、入力側回路101を制御する(S103)。具体的には、IGBT101a〜101dのスイッチングを制御する。これにより、高電圧バッテリB10から低電圧バッテリB11を充電することができる(S104)。
【0030】
一方、車両始動信号がオン状態のとき、図3に示すように、制御回路104は、出力遮断スイッチ103をオフし、低電圧バッテリB11を出力側回路102から遮断する(S105)。また、ヒータ接続スイッチ11をオンし、2次巻線W23にヒータH1を接続する(S106)。そして、入力側回路101を制御する(S107)。具体的には、IGBT101a〜101dのスイッチングを制御する。これにより、高電圧バッテリB10からヒータH1に電力を供給することができる(S108)。なお、1次巻線W1と2次巻線W23の巻数比が、n1:n23(n23>n1)に設定されていることから、1次巻線W1に印加される交流電圧より高い交流電圧でヒータH1に電力を供給することができる。
【0031】
次に、効果について説明する。第1実施形態によれば、高電圧バッテリB10の電圧を変換して低電圧バッテリB11に供給するDC−DCコンバータ装置10を利用してヒータH1の電力を供給する。そのため、従来のように、車両に搭載された各種電子装置に電力を供給する低電圧バッテリB11を用いることはない。しかも、回路及び動作を若干変更するだけでよい。従って、新たに設ける回路を極力抑えることができる。
【0032】
また、第1実施形態によれば、トランス100は、出力側回路102に接続される2次巻線W21、W22とは別の2次巻線W23を有し、ヒータ接続スイッチ11は、別の2次巻線W23にヒータH1を接続する。そのため、別の2次巻線W23を介してヒータH1に電力を供給することができる。
【0033】
さらに、第1実施形態によれば、ヒータ接続スイッチ11は、低電圧バッテリB11が出力側回路102から遮断された状態で別の2次巻線W23にヒータH1を接続する。そのため、低電圧バッテリB11に電圧を供給しない状態でヒータH1に電力を供給することができる。従って、ヒータH1に充分な電力を供給することができる。
【0034】
加えて、第1実施形態によれば、トランス100は、別の2次巻線W23の出力する交流電圧が1次巻線W11に印加される交流電圧より大きくなるように巻数比が設定されている。そのため、より高い交流電圧でヒータH1に電力を供給することができる。従って、ヒータH1に流れる電流を抑えることができる。これにより、ヒータH1に接続される配線を細くすることができる。
【0035】
なお、第1実施形態では、1次巻線W1と2次巻線W23の巻数比が、n1:n23(n23>n1)に設定され、より高い交流電圧でヒータH1に電力を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。1次巻線W1と2次巻線W23の巻数比が、同一に設定されていてもよい。この場合、ヒータH1の電力を供給する際の交流電圧が低くなり、ヒータH1に流れる電流が増加することとなるが、それ以外では同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、第1実施形態では、エンジンの排気ガスを浄化する触媒装置を加熱するためのヒータに電力を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。冷えたエンジンを加熱するためのヒータに電力を供給する場合にも適用することができる。冷えたエンジン及び触媒装置の少なくともいずれかを加熱するためのヒータに電力を供給する場合に適用することができる。
【0037】
また、第1実施形態では、入力側回路101がIGBT101a〜101dによって構成され、出力側回路102がダイオード102a、102bによって構成されている例を挙げているが、これに限られるものではない。入力側回路は、FETによって構成されていてもよい。スイッチング素子によって構成されていればよい。また、出力側回路は、IGBTやFETのスイッチング素子によって構成されていてもよい。所定のタイミングでスイッチングすることで、ダイオードと同様に機能させることができる。
【0038】
さらに、第1実施形態では、DC−DCコンバータ装置10の制御回路104がヒータ接続スイッチ11を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。制御回路104以外の別の回路がヒータ接続スイッチ11を制御するようにしてもよい。
【0039】
加えて、第1実施形態では、2次巻線W23の出力する交流電圧が1次巻線W11に印加される交流電圧より大きくなるようにトランス100の巻数比が設定されている例を挙げているが、これに限られるものではない。2次巻線W23の出力する交流電圧が1次巻線W11に印加される交流電圧と等しくなるようにトランス100の巻数比が設定されていてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電力供給装置について説明する。第2実施形態の電力供給装置は、第1実施形態の電力供給装置が、ヒータが1つであるのに対して、ヒータが複数の小ヒータで構成されるようにしたものである。第2実施形態の電力供給装置は、トランスの構成、及び、制御回路の動作を除いて第1実施形態と同一である。
【0040】
まず、図5を参照して第2実施形態の電力供給装置について説明する。ここで、図5は、第2実施形態における電力供給装置の回路図である。
【0041】
図5に示すように、ヒータH2は、第1実施形態のヒータH1とは異なり、8つの小ヒータh21〜h28(複数の小ヒータ)によって構成されている。
【0042】
電力供給装置2は、DC−DCコンバータ装置20と、ヒータ接続スイッチ21〜28(接続回路)とを備えている。
【0043】
DC−DCコンバータ装置20は、トランス200と、入力側回路201と、出力側回路202と、出力遮断スイッチ203と、制御回路204とを備えている。
【0044】
トランス200は、1次巻線W1と、2次巻線W21、W22とを備えている。また、2次巻線W21、W22とは別に、8つの2次巻線W231〜W238を備えている。つまり、2次巻線W21、W22とは別の2次巻線を小ヒータh21〜h28と同数有している。1次巻線W1と2次巻線W21、W22の巻数比及び接続は、第1実施形態と同一である。1次巻線W1と2次巻線W231〜W238の巻数比は、n1:n231〜n238(n231〜n238<n1)に設定されている。2次巻線W231〜W238の一端はヒータ接続スイッチ21〜28に、他端は小ヒータh21〜h28にそれぞれ接続されている。
【0045】
入力側回路201、出力側回路202及び出力遮断スイッチ203は、第1実施形態の入力側回路101、出力側回路102及び出力遮断スイッチ103と同一構成である。
【0046】
制御回路204は、入力側回路201、出力遮断スイッチ203及びヒータ接続スイッチ21〜28に接続され、外部から入力される車両始動信号に基づいて、入力側回路201、出力遮断スイッチ203及びヒータ接続スイッチ21〜28を制御する回路である。制御回路204は、IGBT201a〜201dのゲート、及び、出力遮断スイッチ203の制御端にそれぞれ接続されている。また、ヒータ接続スイッチ21〜28に接続されている。
【0047】
ヒータ接続スイッチ21〜28は、制御回路204に接続され、制御回路204によって制御され、2次巻線W231〜W238に小ヒータh21〜h28をそれぞれ接続する素子である。ヒータ接続スイッチ21〜28の一端は、2次巻線W231〜W238の一端にそれぞれ接続されている。また、他端は、車両本体に接地されている。さらに、制御端は、制御回路204に接続されている。ここで、小ヒータh21〜h28の一端は2次巻線W231〜W238の他端に接続され、他端は車両本体に接地されている。そのため、ヒータ接続スイッチ21〜28の他端は、車両本体を介して小ヒータh21〜h28の一端にそれぞれ接続されることになる。つまり、2次巻線W231〜W238と小ヒータh21〜h28の配線経路の一部が、車両本体によって形成されることになる。
【0048】
次に、図6〜図8を参照して電力供給装置の動作について説明する。ここで、図6は、図4の電力供給装置において低電圧バッテリを充電しているときの回路図である。図7は、図4の電力供給装置においてヒータに電力を供給しているときの回路図である。図8は、第2実施形態の電力供給装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0049】
図6に示す制御回路203は、図8に示すように、車両始動信号がオン状態か否かを判断する(S200)。車両始動信号がオフ状態のとき、制御回路204は、出力遮断スイッチ203をオンし、低電圧バッテリB21を出力側回路202に接続する(S201)。また、ヒータ接続スイッチ21〜28をオフし、小ヒータh21〜h28を2次巻線W231〜W238からそれぞれ遮断する(S202)。つまり、ヒータH2をトランス200から遮断する。そして、入力側回路201を制御する(S203)。具体的には、IGBT201a〜201dのスイッチングを制御する。これにより、高電圧バッテリB20から低電圧バッテリB21を充電することができる(S204)。
【0050】
一方、車両始動信号がオン状態のとき、図7に示すように、制御回路204は、出力遮断スイッチ203をオフし、低電圧バッテリB21を出力側回路202から遮断する(S205)。また、ヒータ接続スイッチ21〜28をオンし、2次巻線W231〜W238に小ヒータh21〜h28をそれぞれ接続する(S206)。つまり、トランス200にヒータH2を接続する。そして、入力側回路201を制御する(S207)。具体的には、IGBT201a〜201dのスイッチングを制御する。これにより、高電圧バッテリB20から小ヒータh21〜h28にそれぞれ電力を供給することができる。つまり、高電圧バッテリB20からヒータH2に電力を供給することができる(S208)。なお、1次巻線W1と2次巻線W23の巻数比が、n1:n231〜n238(n231〜n238<n1)に設定されていることから、1次巻線W1に印加される交流電圧より低い交流電圧で小ヒータh21〜h28にそれぞれ電力を供給することになる。しかし、小ヒータh21〜h28によって構成されるヒータH2には、全体として充分な電力を供給することができる。
【0051】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、ヒータH2は、8つの小ヒータh21〜h28によって構成され、トランス200は、出力側回路202に接続される2次巻線W21、W22とは別の2次巻線W231〜W238を小ヒータh21〜h28と同数の8つ有している。そして、ヒータ接続スイッチ21〜28が、別の2次巻線W231〜W238に小ヒータh21〜h28をそれぞれ接続する。そのため、それぞれの小ヒータh21〜h28に供給する電力を抑えることができる。つまり、それぞれの小ヒータh21〜h28に供給する電圧を抑えることができる。従って、トランス200やヒータ接続スイッチ21〜28の耐圧を抑えることができる。これにより、コストを抑えることができる。また、それぞれの小ヒータh21〜h28間の絶縁距離を小さくすることができる。そのため、小ヒータh21〜h28をより近接して配置できる。従って、ヒータH2を小型化することができる。
【0052】
また、第2実施形態によれば、ヒータ接続スイッチ21〜28によって接続される別の2次巻線W231〜W238と小ヒータh21〜h28をそれぞれ接続する配線経路の一部は、車両本体によって形成されている。そのため、配線部材を削減することができる。これにより、コストを抑えることができる。また、配線経路で発生した熱を、車体本体を介して放熱することができる。
【0053】
なお、第2実施形態では、DC−DCコンバータ装置20の制御回路204がヒータ接続スイッチ21〜28を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。制御回路204以外の別の回路がヒータ接続スイッチ21〜28を制御するようにしてもよい。
【0054】
また、第2実施形態では、高電圧バッテリB20からヒータH2に電力を供給する際、ヒータ接続スイッチ21〜28を全て同時にオンする例を挙げているが、これに限られるものではない。ヒータ接続スイッチ21〜28を必要に応じて別々にオンするようにしてもよい。必要な箇所を部分的に加熱することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、2・・・電力供給装置、10、20・・・DC−DCコンバータ装置(直流電圧変換装置)、100、200・・・トランス、W1・・・1次巻線、W21、W22、W23・・・2次巻線、W231〜W238・・・2次巻線(別の2次巻線)、101、201・・・入力側回路、101a〜101d、201a〜201d・・・IGBT、102、202・・・出力側回路、102a、102b、202a、202b・・・ダイオード、103、203・・・出力遮断スイッチ、104、204・・・制御回路、11、21〜28・・・ヒータ接続スイッチ(接続回路)、B10、B20・・・高電圧バッテリ、B11、B21・・・低電圧バッテリ、H1、H2・・・ヒータ、h21〜h28・・・小ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び走行用の電動機を備えたハイブリッド車で、前記内燃機関、及び、前記内燃機関の排気ガスを浄化する触媒装置の少なくともいずれかを加熱するためのヒータに電力を供給する電力供給装置において、
1次巻線と2次巻線を有するトランスと、高電圧バッテリと前記1次巻線の間に接続され、前記高電圧バッテリの出力する直流電圧を交流電圧に変換して前記1次巻線に印加する入力側回路と、前記2次巻線と前記高電圧バッテリより電圧が低い低電圧バッテリの間に接続され、前記2次巻線の出力する交流電圧を直流電圧に変換して前記低電圧バッテリを供給する出力側回路と、前記入力側回路を制御する制御回路とを備えた直流電圧変換装置と、
前記トランスに前記ヒータを接続する接続回路と、
を有することを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記トランスは、前記出力側回路に接続される前記2次巻線とは別の2次巻線を有し、
前記接続回路は、前記別の2次巻線に前記ヒータを接続することを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記接続回路は、前記低電圧バッテリが前記出力側回路から遮断された状態で前記別の2次巻線に前記ヒータを接続することを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記トランスは、前記別の2次巻線の出力する交流電圧が前記1次巻線に印加される交流電圧以上になるように巻数比が設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記ヒータは、複数の小ヒータからなり、
前記トランスは、前記別の2次巻線を前記小ヒータと同数有し、
前記接続回路は、前記別の2次巻線に前記小ヒータをそれぞれ接続することを特徴とする請求項2又は3に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記接続回路を介して接続される前記別の2次巻線と前記小ヒータの配線経路の一部は、車両本体によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103557(P2013−103557A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247573(P2011−247573)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】