説明

電力供給装置

【課題】コモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧を低くすることより、高耐電圧性能を有する部品以外の部品を選定できるようにし、コモンモード補償回路のコストアップ及び大型化を防止する。
【解決手段】3相交流電源300からの三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路2と、整流回路2から出力される直流電圧を平滑する平滑回路3と、平滑回路3により平滑された直流電圧を3相交流電圧に変換して電動機200に出力するインバータ回路4と、3相交流電源300と電動機200との間に流れるコモンモードノイズを除去するコモンモードノイズ補償回路5とを備え、コモンモードノイズ補償回路5の電源が、3相交流電源300の中性点Nと3相交流電源300のR相、S相又はT相とを接続することにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードノイズ補償回路を有する電力供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコモンモードノイズ補償回路を有する電力供給装置としては、例えば特許文献1に示すように、コモンモード電圧を検出する電圧検出手段と、この電圧検出手段により検出されたコモンモード電圧により制御されてコモンモード電圧と同じ大きさで逆極性の電圧を発生する制御電圧源(スイッチング素子)と、この制御電圧源により発生した電圧を前記コモンモードに重畳して当該コモンモード電圧を相殺する電圧重畳手段(トランス)とを有する電力供給装置がある。そして制御電圧源には、整流回路から出力された直流電圧が印加されることにより、コモンモードノイズ補償回路の電源とされている。
【0003】
しかしながら、上記のように構成されたコモンモードノイズ補償回路では、3相交流電源が高電圧化するに連れて制御電圧源を構成するスイッチング素子の耐電圧性能を高電圧化しなければならない。例えば、3相交流電源の交流電圧が200Vであれば、整流回路による整流後の直流電圧は280Vであり、コモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧は設計マージンを含めても600V程度である。一方で、3相交流電源の交流電圧が380V以上であれば、整流回路による整流後の直流電圧は537V以上となり、コモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧は設計マージンを含めても1200V以上にする必要がある。このようにコモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧性能を1200V以上とすると、部品の選定を行う余地が狭まるとともに当該部品のコストアップを招いてしまう。また、コモンモードノイズ補償回路を構成する回路基板においても、1200V以上の高電圧に対する絶縁距離を確保して設計する必要があり、回路基板が大型化してしまうとともにコストアップを招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−94244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであり、コモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧を低くすることより、高耐電圧性能を有する部品以外の部品を選定できるようにし、コモンモード補償回路のコストアップを防止するだけでなく大型化を防止することを主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る電力供給装置は、電動機に三相交流電力を供給する電力供給装置であって、3相交流電源からの三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路から出力される直流電圧を平滑する平滑回路と、前記平滑回路により平滑された直流電圧を3相交流電圧に変換して前記電動機に出力するインバータ回路と、前記3相交流電源と前記電動機との間に流れるコモンモードノイズを除去するコモンモードノイズ補償回路とを備え、前記コモンモードノイズ補償回路の電源が、前記3相交流電源の中性点と前記3相交流電源の何れか1つの相とを接続することにより構成されている。
【0007】
このようなものであれば、コモンモードノイズ補償回路の電源が、3相交流電源の中性点と3相交流電源の何れか1つの相とを接続することにより構成されているので、コモンモードノイズ補償回路を構成する部品に印加される電圧を下げることができ、当該部品の耐電圧性能等のスペックを下げることができ、高耐電圧性能を有する部品以外の部品を選定できるだけでなく、コストアップを防ぐことができる。また、コモンモードノイズ補償回路を構成する回路基板においても、絶縁距離を短くすることができ、回路基板の大型化を防ぐとともに、コストアップを防ぐことができる。
【0008】
具体的には、前記コモンモードノイズ補償回路が、前記3相交流電源の中性点及び前記3相交流電源の何れか1つの相に接続されて交流電圧を直流電圧に変換する整流回路部と、前記整流回路部から出力される直流電圧を平滑する平滑用コンデンサと、前記平滑用コンデンサにより平滑された直流電圧からコモンモード補償用の交流電圧に変換するスイッチング素子とを備え、前記スイッチング素子から出力されたコモンモード補償用の交流電圧を前記電動機のグランドラインに供給するものであることが望ましい。
【0009】
前記平滑回路及び前記インバータ回路の間に設けられ、前記コモンモードノイズを検出するノイズ検出回路を備え、前記補償用スイッチング素子が前記ノイズ検出回路により得られた前記コモンモードノイズに基づいてコモンモード補償用の交流電圧を出力するものであることが望ましい。これならば、ノイズ検出回路の構成を簡単化することができる。
【0010】
前記インバータ回路の出力側に設けられ、前記コモンモードノイズを検出するノイズ検出回路を備え、前記補償用スイッチング素子が前記ノイズ検出回路により得られた前記コモンモードノイズに基づいてコモンモード補償用の交流電圧を出力するものであることが望ましい。これならば、ノーマルモードフィルタとしても兼用可能とすることができる。
【0011】
特に、三相交流電源が相間電圧が380V以上のものである場合には、整流回路により整流された後の直流電圧が537V以上となり、コモンモードノイズ補償回路の部品は、その耐電圧性能が設計マージンを含めて1200V以上のものを使用する必要がある。一方で、本発明のように、コモンモードノイズ補償回路の電源が、3相交流電源の中性点と3相交流電源の何れか1つの相とを接続することにより構成されているものでは、整流回路部のよる整流後の直流電圧が280V以上となり、コモンモードノイズ補償回路の部品は、その耐電圧性能が設計マージンを含めて600V程度のものを使用することができる。また、コモンモードノイズ補償回路を構成するプリント基板の設計においても従来の1/2電圧用の絶縁距離を確保することで対応可能であり、プリント基板の大型化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、コモンモード補償回路を構成する部品の耐電圧を低くすることより、高耐電圧性能を有する部品以外の部品を選定できるようにしてコモンモードノイズ補償回路のコストアップを防止することができる。また、本発明によれば、コモンモードノイズ補償回路を構成する部品の耐電圧を低くすることより、コモンモードノイズ補償回路を構成する回路基板の絶縁距離を短くすることができ、回路基板の大型化を防止できる結果、コモンモードノイズ補償回路の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る電力供給装置の回路構成を示す図である。
【図2】変形実施形態に係る電力供給装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態における電力供給装置100は、図1に示すように、3相4線式電源(相間電圧が380V以上)である3相交流電源300に接続されて、例えば空調機などの冷凍サイクルを構成する圧縮機のモータ等の電動機200に3相交流電力を供給するものである。
【0016】
具体的にこの電力供給装置100は、3相交流電源300のR相、S相及びT相に接続されて三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路2と、当該整流回路2から出力される直流電圧を平滑する平滑回路3と、当該平滑回路3により平滑された直流電圧を3相交流電圧に変換して電動機200に出力するインバータ回路4と、3相交流電源300と電動機200との間に流れるコモンモードノイズを除去するコモンモードノイズ補償回路5とを備えている。本実施形態では3相交流電源300と整流回路2との間には、R相、S相及びT相それぞれにリアクトル6が設けられている。また、平滑回路3は、平滑コンデンサ31とブリーダ抵抗32とから構成される。
【0017】
コモンモードノイズ補償回路5は、3相交流電源300の中性点N及び3相交流電源300のR相、S相又はT相の何れか1つに接続されて、その3相交流電源300の中性点NとR相、S相又はT相の何れか1つとを電源とするものである。つまり、このコモンモードノイズ補償回路5の電源電圧は、3相交流電源300の中性点NとR相、S相又はT相の何れかとの相間電圧であり、AC380Vの1/2(≒AC200V)である。なお、本実施形態では、3相交流電源300の中性点NとT相とを接続して電源としているがこれに限られない。
【0018】
具体的にコモンモードノイズ補償回路5は、3相交流電源300の中性点NとR相、S相又はT相の何れか1つに接続されて交流電圧(AC200V)を直流電圧(DC280V)に変換する整流回路部51と、この整流回路部51から出力される直流電圧を平滑する平滑用コンデンサ52と、平滑用コンデンサ52により平滑された直流電圧からコモンモード補償用の交流電圧に変換するスイッチング素子53とを備えている。また、このスイッチング素子53には、コモンモードノイズ補償回路5を駆動するための零相電流検出回路7が接続さている。本実施形態の零相電流検出回路7は、平滑回路3及びインバータ回路4の間に設けられたトランス71により零相電流(コモンモードノイズ)を検出する。
【0019】
そして、このように零相電流検出回路7により検出された零相電流(コモンモードノイズ)を相殺するようにスイッチング素子53が駆動されて、抵抗54及びコンデンサ55を介して電動機200のグランドラインGLにコモンモード補償用の交流電流が供給される。ここで、電動機200のグランドラインGLに供給されるコモンモード補償用の交流電流は、検出された零相電流の電流値を同じであり、且つ位相が逆位相の電流である。これにより、3相交流電源300及び電動機200の間で生じるコモンモードノイズを除去することができる。
【0020】
このように構成した電力供給装置100によれば、コモンモードノイズ補償回路5の電源が、3相交流電源300の中性点Nと3相交流電源300の何れか1つの相とを接続することにより構成されているので、コモンモードノイズ補償回路5を構成する部品に印加される電圧を下げることができ、当該部品の耐電圧性能等のスペックを下げることができ、コストアップを防止することができる。
【0021】
具体的に本実施形態の電力供給装置100によれば、AC380V以上の三相交流電源300が接続されるものにおいて、コモンモードノイズ補償回路5の電源が、3相交流電源300の中性点Nと3相交流電源300のR相、S相又はT相の何れか1つとを接続することにより構成されているので、整流回路部51による整流後の直流電圧が280V以上となり、コモンモードノイズ補償回路5の部品(例えばスイッチング素子53)は、その耐電圧性能が設計マージンを含めて600V程度のものを使用することができる。また、コモンモードノイズ補償回路6を構成する回路基板の設計においても従来の1/2電圧用の絶縁距離を確保することで対応可能であり、回路基板の大型化を防止できる結果、コモンモードノイズ補償回路5の大型化を防止することができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、図2に示すように、コモンモードノイズ補償回路5におけるスイッチング素子53を駆動するための零相電流検出回路7のトランス71をインバータ回路4の出力側に設けても良い。これならば、ノーマルモードフィルタとしても兼用可能とすることができる。
【0023】
また、前記実施形態では、電動機のグランドラインにコモンモードノイズ補償用の交流電流を出力するように構成したものであったが、その他、インバータ回路の出力電圧にコモンモードノイズ補償用の交流電圧を重畳させて、コモンモードノイズを相殺する補償用トランスを有するものであっても良い。
【0024】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
100・・・電力供給装置
200・・・電動機
300・・・3相交流電源
N ・・・3相交流電源の中性点
2 ・・・整流回路
3 ・・・平滑回路
4 ・・・インバータ回路
5 ・・・コモンモードノイズ補償回路
51 ・・・整流回路部
52 ・・・平滑用コンデンサ
53 ・・・スイッチング素子
54 ・・・トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に三相交流電力を供給する電力供給装置であって、
3相交流電源からの三相交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路から出力される直流電圧を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路により平滑された直流電圧を3相交流電圧に変換して前記電動機に出力するインバータ回路と、
前記3相交流電源と前記電動機との間に流れるコモンモードノイズを除去するコモンモードノイズ補償回路とを備え、
前記コモンモードノイズ補償回路の電源が、前記3相交流電源の中性点と前記3相交流電源の何れか1つの相とを接続することにより構成されている電力供給装置。
【請求項2】
前記コモンモードノイズ補償回路が、
前記3相交流電源の中性点及び前記3相交流電源の何れか1つの相に接続されて交流電圧を直流電圧に変換する整流回路部と、
前記整流回路部から出力される直流電圧を平滑する平滑用コンデンサと、
前記平滑用コンデンサにより平滑された直流電圧からコモンモード補償用の交流電圧に変換する補償用スイッチング素子とを備え、
前記補償用スイッチング素子から出力されたコモンモード補償用の交流電圧を前記電動機のグランドラインに供給するものである請求項1記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記平滑回路及び前記インバータ回路の間に設けられ、前記コモンモードノイズを検出するノイズ検出回路を備え、
前記補償用スイッチング素子が前記ノイズ検出回路により得られた前記コモンモードノイズに基づいてコモンモード補償用の交流電圧を出力するものである請求項2記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記インバータ回路の出力側に設けられ、前記コモンモードノイズを検出するノイズ検出回路を備え、
前記補償用スイッチング素子が前記ノイズ検出回路により得られた前記コモンモードノイズに基づいてコモンモード補償用の交流電圧を出力するものである請求項2記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記3相交流電源が、3相4線式電源である請求項1乃至4の何れかに記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記三相交流電源が、相間電圧が380V以上である請求項5記載の電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−110836(P2013−110836A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253501(P2011−253501)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】