説明

電力分配型移相器及び電波送信システム

【課題】リターンロスを悪化させることなく、所望の電力分配比に合わせることが可能な電力分配型移相器、及び、該電力分配型移相器を備える電波送信システムを提供する。
【解決手段】電力分配型移相器(12)の第1導体パターン(24)は、回転軸の少なくとも一部を囲む第1囲繞部(30)と、第1囲繞部(30)から離間した位置にて、回転軸の周方向に延びる第1円弧部(36)とを含む。誘電層を挟んで第1導体パターン(24)と対向する第2導体パターン(52)は、回転軸の少なくとも一部を囲み且つ第1囲繞部(30)と対向する第2囲繞部(54)と、回転軸の周方向に延び且つ第1円弧部(36)と対向する第2円弧部(68)と、第2囲繞部(54)と第2円弧部(68)の間をそれぞれ延びる第1アーム部(64a)及び第2アーム部(64b)とを含む。第1アーム部(64a)は、第2アーム部(64b)とは異なる幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力分配型移相器、及び、電力分配型移相器を備える電波送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力分配型移相器は、高周波信号の線路長を機械的に変化させることによって、位相が変化させられた高周波信号を、設計電力分配比に応じて複数の出力端子から出力する。この種の電力分配型移相器は、例えば、フェーズドアレイアンテナの給電系に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1が開示する電力分配型移相器は、第1及び第2誘電体基板を備え、第1誘電体基板には、信号出力用ストリップ導体と信号入力用固定ストリップ導体が設けられている。信号出力用ストリップ導体は円環部及び2つの出力部を有してU字型をなし、信号入力用固定ストリップ導体は、出力部と平行に延びている。
【0004】
第2誘電体基板には、可動ストリップ導体が設けられ、可動ストリップ導体は、アーム部及び線状部を有する。アーム部は、信号入力用固定ストリップ導体とピンによって回動可能に連結され、線状部は、信号出力用ストリップ導体の円環部と同一の曲率を有する。可動ストリップ導体がピンを中心として回転すると、線状部は、円環部に沿って移動する。
【0005】
信号入力用固定ストリップ導体に対し高周波信号を入力すると、可動ストリップ導体の回転角度に応じて、2つの出力部から、位相が変化させられた高周波信号が出力される。
また、線状部は、設計電力分配比に対応した幅、及び、設計周波数の波長の1/4或いはその奇数倍の長さを有する。このため、設計電力分配比にしたがって、2つの出力部の各々から高周波信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−4305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示する電力分配型移相器には、線状部の幅の設定によって、電力分配比を所望の電力分配比(設計電力分配比)に合わせることができたとしても、リターンロスが悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、リターンロスを悪化させることなく、所望の電力分配比に合わせることが可能な電力分配型移相器、及び、該電力分配型移相器を備える電波送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板と対向して配置され、且つ、前記第1誘電体基板に対して垂直な回転軸を中心として相対回転可能な第2誘電体基板と、前記第1誘電体基板及び前記第2誘電体基板にそれぞれ設けられ、誘電層を挟んで相互に対向する第1導体パターン及び第2導体パターンと、を有し、前記第1導体パターンは、前記回転軸の少なくとも一部を囲む第1囲繞部と、前記第1囲繞部から離間した位置にて、前記回転軸の周方向に延びる第1円弧部とを含み、前記第2導体パターンは、前記回転軸の少なくとも一部を囲み且つ前記第1囲繞部と対向する第2囲繞部と、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1円弧部と対向する第2円弧部と、前記第2囲繞部と前記第2円弧部の間をそれぞれ延びる第1アーム部及び第2アーム部とを含み、前記第1アーム部は、前記第2アーム部とは異なる幅を有する、ことを特徴とする電力分配型移相器が提供される。
【0010】
好ましい態様として、前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、径方向外側に向かうに連れて相互に離れるように延びており、前記第1アーム部及び前記第2アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部に連なっている。
【0011】
好ましい態様として、前記第1アーム部及び前記第2アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部の両端に連なっており、前記第2円弧部の両端は、径方向外側に向かうに連れて前記第2円弧部の長さが短くなるように、面取りされている。
【0012】
好ましい態様として、前記第1導体パターンは、前記第1円弧部の径方向外側に、前記第1円弧部から離間した位置にて前記回転軸の周方向に延びる1つ以上の第1外側円弧部を更に含み、前記第2導体パターンは、前記第2円弧部の径方向外側に、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1外側円弧部の各々と対向する少なくとも1つの第2外側円弧部と、前記第2円弧部と前記第2外側円弧部との間若しくは前記第2外側円弧部同士の間をそれぞれ延びる、第1外側アーム部及び第2外側アーム部とを更に含み、前記第1外側アーム部は、前記第2外側アーム部とは異なる幅を有する。
【0013】
好ましい態様として、前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部は、径方向外側に向かうに連れて相互に離れるように延びており、前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部の径方向外側の端は、前記第2外側円弧部に連なっている。
【0014】
好ましい態様として、前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部の両端に連なっており、前記第2外側円弧部の両端は、径方向外側に向かうに連れて前記第2外側円弧部の長さが短くなるように、面取りされている。
【0015】
好ましい態様として、前記第1導体パターンは、前記第1囲繞部を経由して直線状に延びる入出力用ストリップ線路と、前記第1円弧部及び前記第1外側円弧部の各々の両端に連なるとともに前記入出力用ストリップ線路と平行に延び、前記第1円弧部及び前記第1外側円弧部の各々と協働して出力用ストリップ線路を構成する直線部とを含み、前記入出力用ストリップ線路の一端に入力された高周波信号を、前記入出力用ストリップ線路の他端、及び、前記直線部の各々の一端から出力する。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、第1誘電体基板と、前記第1誘電体基板と対向して配置され、且つ、前記第1誘電体基板に対して垂直な回転軸を中心として相対回転可能な第2誘電体基板と、前記第1誘電体基板及び前記第2誘電体基板にそれぞれ設けられ、誘電層を挟んで相互に対向する第1導体パターン及び第2導体パターンと、を有し、前記第1導体パターンは、前記回転軸から離間した位置にて、前記回転軸の周方向に延びる第1円弧部を含み、前記第2導体パターンは、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1円弧部と対向する第2円弧部と、前記回転軸の径方向に延び且つ前記第2円弧部に連なる第1アーム部及び第2アーム部とを含み、前記第1アーム部は、前記第2アーム部とは異なる幅を有する、ことを特徴とする電力分配型移相器が提供される。
また、本発明の一態様によれば、前記電力分配型移相器と、前記電力分配型移相器と接続された複数のアンテナ素子を有するフェイズドアレーアンテナと、を備えることを特徴とする電波送信システムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リターンロスを悪化させることなく、所望の電力分配比に合わせることが可能な電力分配型移相器、及び、該電力分配型移相器を備える電波送信システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の電波送信システムを概略的に示す図である。
【図2】第1実施形態の電力分配型移相器を分解して概略的に示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の電力分配型移相器における、第1導体パターン及び第2導体パターンの形状を説明するための平面図である。
【図4】第2実施形態の電波送信システムを概略的に示す図である。
【図5】第2実施形態の電力分配型移相器を分解して概略的に示す斜視図である。
【図6】第2実施形態の電力分配型移相器における、第1導体パターン及び第2導体パターンの形状を説明するための平面図である。
【図7】第2実施形態の電力分配型移相器の実施例における、第1導体パターン及び第2導体パターンの寸法を説明するための平面図である。
【図8】(a)は、図7の寸法を有する電力分配型移相器における、入力電力と各出力電力の比のデシベル値(LogMag)の周波数依存性を示すグラフであり、(b)は、(a)の縦軸を拡大して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の電波送信システム10を概略的に示す図である。
電波送信システム10は、高周波回路(送信回路)12を有し、高周波回路12は、送信すべき高周波信号を生成し、電力分配型移相器(以下、単に移相器ともいう)14に向けて出力する。移相器14は、入力された高周波信号を、それぞれ適当な位相及び電力を有する複数の高周波信号に分割し、フェイズドアレーアンテナ(以下、PAアンテナともいう)16に向けて出力する。
【0020】
PAアンテナ16は、適当に配列された複数のアンテナ素子18を有し、アンテナ素子18は、入力された高周波信号を電波として放射する。本実施形態では、移相器14は、例えば、1入力3出力の電力分配型移相器であり、PAアンテナ16は、移相器14の出力数に対応して3つのアンテナ素子18を有する。なお、PAアンテナ16の各アンテナ素子18は、位相及び電力(強度)が相互に異なる電波を放射し、これによって、PAアンテナ16は、全体として特定の指向性をもって、電波を放射する。
【0021】
〔電力分配型移相器〕
図2は、移相器14を分解して概略的に示す斜視図である。
移相器14は、例えば四角形状の第1誘電体基板20を有する。第1誘電体基板20は、例えば、ガラスエポキシ及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等からなる群より選択される一種からなる。
【0022】
第1誘電体基板20の一方の面には、全面に渡って、導電体からなる接地層22が設けられている。接地層22は、例えば、第1誘電体基板20に積層された、銅等の金属からなる箔やめっき膜によって構成される。
【0023】
〔第1導体パターン〕
また、第1誘電体基板20の他方の面には、所定形状の第1導体パターン24が設けられている。第1導体パターン24は、例えば、第1誘電体基板20の表面に積層された、銅等の金属からなる箔又はめっき膜をエッチングすることによって作製可能である。
【0024】
第1導体パターン24は、入出力用ストリップ線路26及び出力用ストリップ線路28を含む。入出力用ストリップ線路26は、第1誘電体基板20の一辺に沿って、端から端まで真っ直ぐに延びている。入出力用ストリップ線路26は、長手方向中央に囲繞部(第1囲繞部)30を含み、囲繞部30の内周縁は、貫通孔32の壁面を構成している。貫通孔32は、第1誘電体基板20、接地層22及び入出力用ストリップ線路26を、第1誘電体基板20の厚さ方向に貫通している。
なお、囲繞部30は、平面でみて環状をなしているが、円弧形状やC字形状であってもよい。即ち、囲繞部30は、貫通孔32の少なくとも一部を囲むような形状とすることができる。また、囲繞部30は、貫通孔32の壁面を構成せずに、貫通孔32から離間して設けることもできる。
【0025】
入出力用ストリップ線路26の一方の端部は、第1誘電体基板20に固定されたコネクタ34aに接続され、コネクタ34aを通じて、高周波回路12に接続される。一方、入出力用ストリップ線路26の他方の端部は、第1誘電体基板20に固定されたコネクタ34bに接続され、コネクタ34bを通じて、アンテナ素子18に接続される。
【0026】
このため以下では、入出力用ストリップ線路26における、囲繞部30からコネクタ34a側の部分を、入力用ストリップ線路26aとも称し、囲繞部30からコネクタ34b側の部分を、出力用ストリップ線路26bとも称する。このような定義によれば、入力用ストリップ線路26a及び出力用ストリップ線路26bは、囲繞部30を介して同軸上に配置されている。
なお、入力用ストリップ線路26a及び出力用ストリップ線路26bには、特性インピーダンスの調整のため、適当な形状の拡幅部が設けられている。
【0027】
出力用ストリップ線路28は、貫通孔32の中心を曲率中心として円弧状に延びる円弧部(第1円弧部)36と、円弧部36の両端に一体に連なり、それぞれ入出力用ストリップ線路26と平行に延びる直線部38を含む。つまり、直線部38は、円弧部36の両端に連なるとともに入出力用ストリップ線路26と平行に延び、円弧部36と協働して出力用ストリップ線路28を構成している。
円弧部36と直線部38とが繋がっている部分には、面取りが施されており、円弧部36の径方向内側の円弧と直線部38の側辺とは、面取り線39を介して繋がっている。
【0028】
直線部38,38の端部は、第1誘電体基板20に固定されたコネクタ34c,34dに接続され、コネクタ34c,34dを通じて、アンテナ素子18,18にそれぞれ接続される。
なお以下では、コネクタ34a,34b,34c,34dをコネクタ34ともいう。
【0029】
第1誘電体基板20には、第1導体パターン24を覆うように、誘電体シート40が積層される。誘電体シート40は、例えば、超高分子量ポリエチレン、PTFE、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、及び、ポリエステル等からなる群より選択される一種からなる。誘電体シート40には、第1誘電体基板20の貫通孔32に対応する位置に、連通孔42が形成されている。
【0030】
また、第1誘電体基板20上には、誘電体シート40を間に挟んで、第2誘電体基板44が配置されている。第2誘電体基板44は、例えば、ガラスエポキシ、及び、PTFE等からなる群より選択される一種からなり、略扇形状を有する。
【0031】
第2誘電体基板44の頂部には、貫通孔46が設けられ、貫通孔46は、誘電体シート40の連通孔42を通じて、第1誘電体基板20の貫通孔32と連通する。そして、貫通孔32、連通孔42、及び貫通孔46には、樹脂製の螺子48が挿通され、螺子48の先端に2つのナット50が螺合される。螺子48及びナット50によって、第2誘電体基板44は、第1誘電体基板20に対し、螺子48を回転軸として相対回転可能に連結される。第1誘電体基板20に対する第2誘電体基板44の相対回転角度は、例えば、図示しないアクチュエータによって適宜調整される。
【0032】
〔第2導体パターン〕
第2誘電体基板44の第1誘電体基板20側の面には、所定形状の第2導体パターン52が設けられている。第2導体パターン52は、例えば、第1誘電体基板44の表面に積層された、銅等の金属からなる箔又はめっき膜をエッチングすることによって作製可能である。
【0033】
図3は、第2導体パターン52の形状とともに、第1導体パターン24を示す概略的な平面図である。図3では、誘電体シート40が省略され、且つ、第2誘電体基板44が1点鎖線にて示されている。
【0034】
図3に示したように、第2導体パターン52は、略扇形状の外形形状を有する。
第2誘電体基板44に形成された貫通孔46は、第2導体パターン52の頂部も貫通しており、第2導体パターン52の頂部は、貫通孔46の壁面を規定する囲繞部(第2囲繞部)54を有する。囲繞部54は、第1導体パターン52の囲繞部30と対向するように配置される。
なお、囲繞部54は、平面でみて環状をなしているが、囲繞部30と同様に、円弧形状やC字形状等、貫通孔32の少なくとも一部を囲むような形状とすることができ、貫通孔32から離間して設けることもできる。
【0035】
第2導体パターン52の外形形状は、囲繞部54の一部の外縁と、囲繞部54から径方向外側に向かって延びる2本の線分(半径線)56a,56bと、貫通孔46の中心を曲率中心とする円弧58によって主に構成されている。半径線56a,56bと円弧58が交わるべき角は面取りされており、半径線56a,56bは、面取り線57a,57bを介して、円弧58に繋がっている。面取り線57a,57bは、第1導体パターン24の円弧部36の内側から外側まで、円弧部36を跨いで延びている。
【0036】
また、第2導体パターン52には、扇形状の開口60が形成されており、第2導体パターン52は、開口60を囲む閉ループによって構成されている。
より詳しくは、第2導体パターン52は、開口60を規定する半径線62aと半径線56aの間に位置するアーム部(第1アーム部)64aと、開口60を規定する半径線62bと半径線56bの間に位置するアーム部(第2アーム部)64bと、開口60を規定する円弧66と円弧58の間に位置する円弧部(第2円弧部)68とを有する。
【0037】
アーム部64a及びアーム部64bは、径方向外側に向かうに連れて相互に離間するようにそれぞれ直線状に延び、円弧部68の両端に連なっている。
ここで、開口60の円弧66の曲率中心は、貫通孔46の中心(回転中心)に一致しており、円弧部36及び円弧58の曲率中心に一致しているが、第2導体パターン52において、開口60の位置は、半径線62aの側に偏っている。このため、本実施形態では、径方向と直交する方向でのアーム部64aの幅がアーム部64bの幅よりも細くなっている。
【0038】
このように、アーム部64aの幅が、アーム部64bの幅と異なっているのは、アーム部64a,64bの各々の幅が、コネクタ34b,34c,34dから出力されるべき電力の比(電力分配比)に応じて設定されるからである。
【0039】
また、径方向でみて、円弧66は円弧部36の内側に位置し、円弧58は円弧部36の外側に位置している。従って、径方向での円弧部68の幅は、円弧部36の幅よりも大である。
円弧部68の幅方向中心は、円弧部36の幅方向中心に一致しており、また、円弧部68の曲率中心は、円弧部36の曲率中心に一致しているので、第2誘電体基板44が第1誘電体基板20に対して相対回転すると、円弧部68は、円弧部36と対向しながら、円弧部36に沿って移動する。
なお、周方向での円弧部68の長さは、面取りによって、径方向外側に向かうに連れて徐々に短くなっている。
【0040】
そして、アーム部64a,64b及び円弧部68の各々の幅方向中心での長さは、好ましくは、使用周波数に対応する波長の1/4の奇数倍に設定されるが、必ずしもこれに限定されることはない。
【0041】
上述した第1実施形態の移相器14では、第2導体パターン52において、2つのアーム部64a,64bの幅が相互に異なることによって、所望の電力分配比が達成される。
【0042】
一方、上述した第1実施形態の移相器14では、第2導体パターン52が閉ループによって構成されていることによって、リターンロスが低減されている。すなわち、リターンロスを悪化させることなく、所望の電力分配比に合わせることが可能となる。
【0043】
また、上述した第1実施形態の移相器14では、第1導体パターン24の円弧部36と直線部38との交差部分が面取りされているため、より一層、リターンロスの低減が図られている。
【0044】
更に、上述した第1実施形態の移相器14では、第2導体パターン52の円弧部68の両端が面取りされているため、より一層、リターンロスの低減が図られている。
【0045】
また更に、上述した第1実施形態の移相器14では、円弧部68の長さをアーム部64a,64bの長さと略同一に設定することによって、全体として小型化が図られる。
【0046】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態と同一又は類似の構成については、同一の名称又は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
図4は、第2実施形態の電波送信システム100を概略的に示す図である。電波送信システム100では、移相器102は、1入力7出力の電力分配型移相器である。つまり、移相器102の出力数は、電波送信システムの構成に応じて選択可能であり、2以上であればよい。
そして、電波送信システム100のPAアンテナ104は、移相器102の出力数に対応して、7つのアンテナ素子18を有する。
【0048】
図5は、移相器102を分解して概略的に示す斜視図である。
移相器102の第1誘電体基板110は、第1実施形態の第1誘電体基板20よりも大であり、一方の面の全域が接地層112よって覆われている。
〔第1導体パターン〕
第1誘電体基板110の他方の面に設けられた第1導体パターン114は、入出力用ストリップ線路26及び出力用ストリップ線路(第1の出力用ストリップ線路)28に加えて、第2の出力用ストリップ線路116、及び、第3の出力用ストリップ線路118を含んでいる。
【0049】
第2の出力用ストリップ線路116は、第1の出力用ストリップ線路28と同様に、円弧部(第1外側円弧部)120及び直線部122,122を有する。つまり、直線部122は、円弧部120の両端に連なるとともに入出力用ストリップ線路26と平行に延び、円弧部120と協働して出力用ストリップ線路116を構成している。
円弧部120の曲率中心は、貫通孔32の中心に一致し、円弧部120の曲率半径は、円弧部36よりも大である。直線部122は、直線部38と平行に延びており、直線部122の長さは、直線部38の長さよりも短い。
【0050】
第3の出力用ストリップ線路118も、円弧部(第1外側円弧部)124及び直線部126,126を有する。つまり、直線部126は、円弧部124の両端に連なるとともに入出力用ストリップ線路26と平行に延び、円弧部124と協働して出力用ストリップ線路118を構成している。
円弧部124の曲率中心は、貫通孔32の中心に一致し、円弧部124の曲率半径は、円弧部36,120よりも大である。つまり、円弧部36,120,124は、同心状に配列されている。直線部126は、直線部38,122と平行に延びており、直線部126の長さは、直線部38,122の長さよりも短い。
【0051】
第2の出力用ストリップ線路116及び第3の出力用ストリップ線路118の両端には、コネクタ34e,34f,34g,34hがそれぞれ接続され、第2の出力用ストリップ線路116及び第3の出力用ストリップ線路118は、コネクタ34e,34f,34g,34hを通じて、アンテナ素子18に接続される。
なお、円弧部120の径方向内側の円弧と直線部122の側辺、及び、円弧部124の径方向内側の円弧と直線部126の側辺も、面取り線128,129を介してそれぞれ繋がっている。
【0052】
誘電体シート130は、第1誘電体基板110の大きさに合わせて誘電体シート40よりも大であり、第1導体パターン114を覆っている。
【0053】
第2誘電体基板132の長さも、円弧部124の曲率半径の大きさに合わせて、第2誘電体基板44よりも延長されている。このため、第2誘電体基板132は、一部に曲線を含む略五角形の細長い外形形状を有する。
【0054】
〔第2導体パターン〕
第2誘電体基板132の第1誘電体基板110側の面には、第2導体パターン134が設けられている。
図6は、第2導体パターン134の形状とともに、第1導体パターン114を示す概略的な平面図である。図6では、誘電体シート130が省略され、且つ、第2誘電体基板132が1点鎖線にて示されている。
【0055】
図3に示したように、第2導体パターン134は、第1の領域140、第2の領域142、及び、第3の領域144からなり、第1の領域140は、第2導体パターン52と略同一の形状を有する。
第2の領域142は、第1の領域140の円弧部68の径方向外側に連なっている。より詳しくは、第2の領域142は、略扇形の外形形状を有し、第2の領域142の頂部は、第2導体パターン52の円弧部68に重なっている。
【0056】
第2の領域142の外形形状は、第1の領域140の円弧58から径方向外側に向かって延びる2本の半径線146a,146bと、貫通孔46の中心を曲率中心とする円弧148によって主に構成されている。半径線146a,146bと円弧148とが交わるべき角は面取りされており、半径線146a,146bは、面取り線150a,150bを介して、円弧148に繋がっている。面取り線150a,150bは、第1導体パターン114の円弧部120の内側から外側まで、円弧部120を跨いで延びている。
【0057】
また、第2の領域142には、扇形状の開口152が形成されており、第2の領域142は、開口152を囲む閉ループによって構成されている。
より詳しくは、第2の領域142は、開口152を規定する半径線154aと半径線146aの間に位置するアーム部(第1外側アーム部)158aと、開口152を規定する半径線154bと半径線146bの間に位置するアーム部(第2外側アーム部)158bと、開口152を規定する円弧156と円弧148の間に位置する円弧部(第2外側円弧部)160とを有する。アーム部158a及びアーム部158bは、それぞれ円弧部68と円弧部160の間を延びている。
【0058】
アーム部158a及びアーム部158bは、径方向外側に向かうに連れて相互に離間するようにそれぞれ直線状に延び、円弧部160の両端に連なっている。
ここで、開口152の円弧156の曲率中心は、貫通孔46の中心に一致しており、円弧部120及び円弧148の曲率中心に一致しているが、第2の領域142において、開口152の位置は、半径線146aの側に偏っている。このため、径方向と直交する方向でのアーム部158aの幅がアーム部158bの幅よりも細くなっている。
【0059】
また、径方向でみて、円弧156は円弧部120の内側に位置し、円弧148は円弧部120の外側に位置している。従って、径方向に沿う方向での円弧部160の幅は、円弧部120の幅よりも大である。
円弧部160の幅方向中心は、円弧部120の幅方向中心に一致しており、また、円弧部160の曲率中心は、円弧部120の曲率中心に一致しているので、第2誘電体基板132が第1誘電体基板110に対して相対回転すると、円弧部160は、円弧部120と対向しながら、円弧部120に沿って移動する。
なお、周方向での円弧部160の長さは、面取りによって、径方向外側に向かうにつれて徐々に短くなっている。
【0060】
第3の領域144は、第2の領域142の円弧部160の径方向外側に連なっている。より詳しくは、第3の領域144は、略扇形の外形形状を有し、第3の領域144の頂部は、第2の領域142の円弧部160に重なっている。
【0061】
第3の領域144の外形形状は、第2の領域142の円弧148から径方向外側に向かって延びる2本の半径線162a,162bと、貫通孔46の中心を曲率中心とする円弧164によって主に構成されている。半径線162a,162bと円弧164とが交わるべき角は面取りされており、半径線162a,162bは、面取り線166a,166bを介して、円弧164に繋がっている。面取り線166a,166bは、第1導体パターン114の円弧部124の内側から外側まで、円弧部124を跨いで延びている。
【0062】
また、第3の領域144には、扇形状の開口168が形成されており、第3の領域144は、開口168を囲む閉ループによって構成されている。
より詳しくは、第3の領域144は、開口168を規定する半径線170aと半径線162aの間に位置するアーム部(第1外側アーム部)174aと、開口168を規定する半径線170bと半径線162bの間に位置するアーム部(第2外側アーム部)174bと、開口168を規定する円弧172と円弧164の間に位置する円弧部(第2外側円弧部)176とを有する。アーム部174a及びアーム部174bは、それぞれ円弧部160と円弧部176の間を延びている。
【0063】
アーム部174a及びアーム部174bは、径方向外側に向かうに連れて相互に離間するようにそれぞれ直線状に延び、円弧部160の両端に連なっている。
ここで、開口168の円弧172の曲率中心は、貫通孔46の中心に一致しており、円弧部124及び円弧164の曲率中心に一致しているが、第3の領域144において、開口168の位置は、半径線162aの側に偏っている。このため、径方向と直交する方向でのアーム部174aの幅がアーム部174bの幅よりも細くなっている。
【0064】
また、径方向でみて、円弧172は円弧部124の内側に位置し、円弧164は円弧部124の外側に位置している。従って、径方向に沿う方向での円弧部176の幅は、円弧部124の幅よりも大である。
円弧部176の幅方向中心は、円弧部124の幅方向中心に一致しており、また、円弧部176の曲率中心は、円弧部120の曲率中心に一致しているので、第2誘電体基板132が第1誘電体基板110に対して相対回転すると、円弧部176は、円弧部124と対向しながら、円弧部124に沿って移動する。
なお、周方向での円弧部176の長さは、面取りによって、径方向外側に向かうにつれて徐々に短くなっている。
【0065】
このように、アーム部64aの幅がアーム部64bの幅と異なっており、アーム部158aの幅がアーム部158bの幅と異なっており、アーム部174aの幅が、アーム部174bの幅と異なっているのは、アーム部64a,64b,158a,158b,174a,174bの各々の幅が、コネクタ34b,34c,34d,34e,34f,34g,34hから出力されるべき電力の比(電力分配比)に応じて設定されるからである。
【0066】
上述した第2実施形態の移相器102では、第2導体パターン134において、アーム部64aとアーム部64bの間、アーム部158aとアーム部158bの間、アーム部174aとアーム部174bの間で、幅が相互に異なることによって、所望の電力分配比が達成される。
【0067】
一方、上述した第2実施形態の移相器102では、第2導体パターン134が閉ループによって構成されていることによって、リターンロスが低減されている。すなわち、リターンロスを悪化させることなく、所望の電力分配比に合わせることが可能となる。
【0068】
また、上述した第2実施形態の移相器102では、第1導体パターン114において、円弧部36,120,124と直線部38,122,126とが交差する部分が面取りされているため、より一層、リターンロスの低減が図られている。
【0069】
更に、上述した第2実施形態の移相器102では、第2導体パターン134の円弧部68,160,164の両端が面取りされているため、より一層、リターンロスの低減が図られている。
【0070】
また、上述した第2実施形態の移相器102では、第1乃至第3の領域140,142,144の各々の扇形の中心角度や、扇形の周方向での、第1の領域140に対する第2の領域142の連結位置及び第2の領域142に対する第3の領域144の連結位置の設定によっても、希望する電力の分配比や良好なリターンロスを達成することができる。
【実施例】
【0071】
以下、第2実施形態の移相器102の実施例について説明する。
1.構成
(1)材料
使用した材料は以下の通りである。
・第1誘電体基板110及び第2誘電体基板132
厚さ:1.6mm,比誘電率:3.425
・接地層112、第1導体パターン114及び第2導体パターン134
プロファイルフリー銅箔35μm
・誘電体シート130
製品名:中興化成工業株式会社FGF−400−2
実測厚さ:40μm
・コネクタ34
SMA−J
【0072】
(2)寸法
第1導体パターン114及び第2導体パターン134の各部位の寸法を図7に示す。図7に示すように、アーム部64a,64b,158a,158b,174a,174bの幅w1,w2,w3,w4,w5,w6は、それぞれ、1.1mm,7.6mm,1mm,7.8mm,1.5mm,9.8mmである。
そして、円弧部36,68,120,160,124,176の幅方向中心での曲率半径R1,R2,R3は、それぞれ、28mm,56mm,84mmである。
【0073】
2.評価
(1)評価方法
上記1(1),(2)の構成を有する移相器102において、コネクタ34aに2GHz帯(1.8GHz〜2.2GHz)の高周波の入力電圧Vinを印加したときの、各コネクタ34a〜34hからの出力電圧Va〜Vhをシミュレーション(Mentor Graphics社製IE3D)によって求めた。
【0074】
そして、式(1)に出力電圧Vaの場合を示すように、入力電圧Vinに対する出力電圧Va〜Vhの各々の比を2乗して電力比としてからデシベルに換算し、これをLogMagとして図8のグラフに示した。また、中心周波数2025MHzにおけるLogMagの値を表1に示した。
【0075】
図8(a)のグラフは、全てのコネクタ34a〜34hについてのLogMagを示しており、図8(b)のグラフは、図8(a)の縦軸を拡大して、コネクタ34b〜34hについてのLogMagを示している。
なお、コネクタ34b〜34hについてのLogMagは、電力の減衰量を表しているということができる。また、コネクタ34aについてのLogMagは、リターンロスの大きさを表しているということができる。
【0076】
【数1】

【0077】
【表1】

【0078】
(2)評価結果
(i)表1及び図8に示すように、コネクタ34aからの出力、則ち、リターンロスは、広帯域に渡って小さい。具体的には、1.8GHz〜2.2GHzの範囲で−20dB以下である。
【0079】
(ii)表1及び図8に示すように、同一の出力用ストリップ線路28,116,118の両端からの出力は、相互に異なっており、電力が良好に分配されている。具体的には、中心周波数である2025MHzにおいて、コネクタ34cとコネクタ34dとでは1dB、コネクタ34eとコネクタ34fとでは0.9dB、コネクタ34gとコネクタ34hとでは1.5dBだけ、LogMagが異なっている。
【0080】
(iii)表1及び図8に示すように、各コネクタ34b〜34hについてのLogMagの値は周波数依存性が少なく、周波数特性に優れている。具体的には、各コネクタ34b〜34hのLogMagの変化量は、1.8GHz〜2.2GHzの範囲で1dB以下である。
【0081】
本発明は、上述した第1実施形態、第2実施形態、及び、第2実施形態の実施例に限定されることはなく、第1及び第2実施形態を適宜組み合わせた形態や、これら形態に変更を加えた形態も含む。
【0082】
第1実施形態の移相器14においては、第2導体パターン52の閉ループの外形形状は、好ましい態様として、略扇形によって構成されていたけれども、他の形状によって構成されていてもよい。すなわち、アーム部64a,64bは、径方向に真っ直ぐに延びていたが、折れ曲がっていても、径方向に対して傾いていてもよい。
【0083】
また、第2実施形態の移相器102では、第2導体パターン134は、好ましい態様として、いずれも外形形状が略扇形の第1乃至第3の領域140,142,144、即ち3つの閉ループによって構成されていたが、各領域140,142,144の外形形状は相互に異なっていてもよい。
【0084】
更に、第1及び第2の実施形態では、好ましい態様として、第2導体パターン52,134の円弧部68,160,176とアーム部64a,64b,158a,158b,174a,174bとが交わる角は、面取りされていたが、円弧部68,160,176は、リターンロスが悪化しない範囲において、周方向にて、アーム部64a,64b,158a,158b,174a,174bから突出してもよい。
【0085】
また更に、第2の実施形態では、出力用ストリップ線路28,116,118の数が3本であり、これに対応して、第2導体パターン134が3つの領域140,142,144によって構成されていたが、出力用ストリップ線路の数は1本以上であればよく、これに対応して、第2導体パターンを構成する領域の数を設定可能である。
【0086】
一方、第1及び第2実施形態の移相器14,102では、第1導体パターン24,114と第2導体パターン52,134の間に絶縁シート40,130が配置されていたが、第1導体パターン24,114と第2導体パターン52,134の間に誘電層が設けられていればよい。誘電層は、設計によっては、空気からなる層であってもよい。
【0087】
また、実施例では、2GHz帯における移相器102のLogMagについて説明したが、移相器102は、必要に応じて設計を変更することによって、800MHz帯等の他の周波数帯域にも適用可能である。
【0088】
最後に、本発明の電力分配型移相器は、フェイズドアレーアンテナとともに用いることによって、電波送信システムに好適であるが、他の機器やシステムにも適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
10,100 電波送信システム
14,102 電力分配型移相器
20,110 第1誘電体基板
24,114 第1導体パターン
30 囲繞部(第1囲繞部)
36 円弧部(第1円弧部)
40,130 誘電体シート
44,132 第2誘電体基板
48 螺子(回転軸)
52,134 第2導体パターン
54 囲繞部(第2囲繞部)
64a アーム部(第1アーム部)
64b アーム部(第2アーム部)
68 円弧部(第2円弧部)
120,124 円弧部(第1外側円弧部)
158a,174a アーム部(第1外側アーム部)
158b,174b アーム部(第2外側アーム部)
160,176 円弧部(第2外側円弧部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1誘電体基板と、
前記第1誘電体基板と対向して配置され、且つ、前記第1誘電体基板に対して垂直な回転軸を中心として相対回転可能な第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板及び前記第2誘電体基板にそれぞれ設けられ、誘電層を挟んで相互に対向する第1導体パターン及び第2導体パターンと、を有し、
前記第1導体パターンは、前記回転軸の少なくとも一部を囲む第1囲繞部と、前記第1囲繞部から離間した位置にて、前記回転軸の周方向に延びる第1円弧部とを含み、
前記第2導体パターンは、前記回転軸の少なくとも一部を囲み且つ前記第1囲繞部と対向する第2囲繞部と、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1円弧部と対向する第2円弧部と、前記第2囲繞部と前記第2円弧部の間をそれぞれ延びる第1アーム部及び第2アーム部とを含み、
前記第1アーム部は、前記第2アーム部とは異なる幅を有する、
ことを特徴とする電力分配型移相器。
【請求項2】
前記第1アーム部及び前記第2アーム部は、径方向外側に向かうに連れて相互に離れるように延びており、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部に連なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力分配型移相器。
【請求項3】
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部の両端に連なっており、
前記第2円弧部の両端は、径方向外側に向かうに連れて前記第2円弧部の長さが短くなるように、面取りされている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力分配型移相器。
【請求項4】
前記第1導体パターンは、前記第1円弧部の径方向外側に、前記第1円弧部から離間した位置にて前記回転軸の周方向に延びる1つ以上の第1外側円弧部を更に含み、
前記第2導体パターンは、前記第2円弧部の径方向外側に、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1外側円弧部の各々と対向する少なくとも1つの第2外側円弧部と、前記第2円弧部と前記第2外側円弧部との間若しくは前記第2外側円弧部同士の間をそれぞれ延びる、第1外側アーム部及び第2外側アーム部とを更に含み、
前記第1外側アーム部は、前記第2外側アーム部とは異なる幅を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電力分配型移相器。
【請求項5】
前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部は、径方向外側に向かうに連れて相互に離れるように延びており、
前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部の径方向外側の端は、前記第2外側円弧部に連なっている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電力分配型移相器。
【請求項6】
前記第1外側アーム部及び前記第2外側アーム部の径方向外側の端は、前記第2円弧部の両端に連なっており、
前記第2外側円弧部の両端は、径方向外側に向かうに連れて前記第2外側円弧部の長さが短くなるように、面取りされている、
ことを特徴とする請求項5に記載の電力分配型移相器。
【請求項7】
前記第1導体パターンは、
前記第1囲繞部を経由して直線状に延びる入出力用ストリップ線路と、
前記第1円弧部及び前記第1外側円弧部の各々の両端に連なるとともに前記入出力用ストリップ線路と平行に延び、前記第1円弧部及び前記第1外側円弧部の各々と協働して出力用ストリップ線路を構成する直線部とを含み、
前記入出力用ストリップ線路の一端に入力された高周波信号を、前記入出力用ストリップ線路の他端、及び、前記直線部の各々の一端から出力する、
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の電力分配型移相器。
【請求項8】
前記出力用ストリップ線路において、前記第1円弧部若しくは前記第1外側円弧部と前記直線部とが繋がる部分が面取りされている、
ことを特徴とする請求項7に記載の電力分配型移相器。
【請求項9】
第1誘電体基板と、
前記第1誘電体基板と対向して配置され、且つ、前記第1誘電体基板に対して垂直な回転軸を中心として相対回転可能な第2誘電体基板と、
前記第1誘電体基板及び前記第2誘電体基板にそれぞれ設けられ、誘電層を挟んで相互に対向する第1導体パターン及び第2導体パターンと、を有し、
前記第1導体パターンは、前記回転軸から離間した位置にて、前記回転軸の周方向に延びる第1円弧部を含み、
前記第2導体パターンは、前記回転軸の周方向に延び且つ前記第1円弧部と対向する第2円弧部と、前記回転軸の径方向に延び且つ前記第2円弧部に連なる第1アーム部及び第2アーム部とを含み、
前記第1アーム部は、前記第2アーム部とは異なる幅を有する、
ことを特徴とする電力分配型移相器。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の電力分配型移相器と、
前記電力分配型移相器と接続された複数のアンテナ素子を有するフェイズドアレーアンテナと、
を備えることを特徴とする電波送信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227911(P2012−227911A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21758(P2012−21758)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】