説明

電力増幅回路および高周波モジュール

【課題】フィードバック制御を行っても、出力電力の低下を抑制できる電力増幅回路を実現する。
【解決手段】電力増幅回路を備える高周波モジュール10は、高周波電力増幅素子20、整合回路30、および駆動電源回路40を備える。高周波電力増幅素子20は、高周波増幅回路210、方向性結合器230を備える。方向性結合器230の主線路231の第1端は、高周波増幅回路210の後段増幅回路212の出力端子に接続されている。主線路231の第2端は、出力整合回路240を介して、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutに接続されている。後段増幅回路212の出力端子は、高周波電力増幅素子20
子20の第2駆動電源印加端子PV2にも接続されている。高周波信号出力端子Poutと高周波信号出力端子Poutとは、接続導体50で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を増幅する電力増幅回路および当該電力増幅回路を備える高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信端末のフロントエンドモジュールとして、高周波信号を増幅する電力増幅回路を備えた高周波モジュールが各種考案されている。
【0003】
特許文献1には、方向性結合器によるフィードバック制御を行うことで出力電力を制御する高周波増幅回路が記載されている。この高周波増幅回路は、高周波信号を増幅するパワーアンプを備える。パワーアンプの出力端には、方向性結合器が接続されている。方向性結合器は、互いに結合する主線路と副線路を備える。パワーアンプの出力信号は、主線路を介してアンテナ等の負荷へ出力される。副線路には、主線路を伝送する出力信号の一部が伝搬する。この副線路を伝送する信号は検波され、この検波結果に応じてパワーアンプの増幅率が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−68078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成では、パワーアンプからの出力信号の全てが方向性結合器を介するので、方向性結合器における主線路と副線路との結合度に応じた電力が副線路を伝搬する。副線路を伝搬する電力は高周波増幅回路からアンテナなどの負荷に出力されないため、高周波増幅回路からの出力電力は、方向性結合器の結合度に応じて低下してしまう。
【0006】
したがって、本発明の目的は、フィードバック制御を行っても、出力電力の低下を抑制することができる電力増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、入力された高周波信号を所定増幅率で増幅して出力する高周波増幅回路と、主線路の第1端が高周波増幅回路の出力端子に接続され、主線路の第2端が信号出力端子に接続された方向性結合器と、を備えた電力増幅回路であって、次の特徴を有する。この電力増幅回路は、高周波増幅回路の出力端子と主線路の第2端とを方向性結合器を介することなく接続する接続導体を備えている。
【0008】
この構成では、高周波増幅回路で増幅された高周波信号は、方向性結合器を介する経路と、方向性結合器を介さない経路とに分かれて出力される。これにより、方向性結合器で損失する信号が抑制され、出力電力の低下が抑制される。
【0009】
また、この発明の電力増幅回路では、次の構成であることが好ましい。電力増幅回路の高周波増幅回路の最終段の増幅素子における駆動電源電圧印加端子と、高周波増幅回路の出力端子とが接続されている。駆動電源電圧印加端子に接続導体が接続されている。
【0010】
この構成では、接続導体を高周波増幅回路へ接続する具体的な接続構成の一例を示している。高周波増幅回路は、複数段の増幅素子からなり、例えば、最終段の増幅素子にnpn型トランジスタを用いた場合、当該トランジスタのコレクタ端子が出力端子になるとともに、電源電圧(トランジスタの駆動電源電圧)印加端子にもなる。したがって、この駆動電源電圧印加端子に接続導体を接続することで、方向性結合器を介することなく、増幅後の高周波信号を外部へ出力する経路を実現できる。これにより、簡素な構成で接続導体を実現できる。
【0011】
また、この発明の電力増幅回路は主線路の第2端に第1整合回路が接続されていることが好ましい。
【0012】
この構成では、第1整合回路が備えられることで、電力増幅回路と後段の回路との間のインピーダンス整合が行われる。これにより、電力増幅回路から後段の回路へ、高周波信号を低損失に伝送できる。
【0013】
また、この発明の電力増幅回路は、主線路の第2端と、該第2端と接続導体との接続点との間に第2整合回路が接続されていることが好ましい。
【0014】
この構成では、方向性結合器を介する高周波信号のみにインピーダンス整合を行うことができる。これにより、方向性結合器を介する経路からの高周波信号と介さない経路からの高周波信号とが接続点で相殺することなく合成されるように、インピーダンス整合を行うことができる。
【0015】
また、この発明の電力増幅回路では、第1整合回路は、信号伝送ラインに直列接続された第1キャパシタを備えることが好ましい。
【0016】
この構成では、高周波増幅回路に印加される直流電圧が第1キャパシタで遮断され、後段の回路へ伝送されない。
【0017】
また、この発明の電力増幅回路では、第1整合回路として、第1キャパシタに直列接続されたインダクタと、該第1キャパシタとインダクタとの接続点とグランド電位との間に接続された第2キャパシタと、を備えるようにすることもできる。
【0018】
この構成は、第1整合回路の具体的な構成例を示している。このように直列接続されたインダクタ及びキャパシタと、これらの接続点に接続されるキャパシタとを備えることで、単一のインダクタやキャパシタを用いるよりも、インピーダンス整合範囲を広くできる。
【0019】
また、この発明は、入力された高周波信号を所定増幅率で増幅して出力する高周波増幅回路を内蔵する高周波電力増幅素子と、該高周波電力増幅素子が実装される基板と、を備えた高周波モジュールであって、次の特徴を有する。この高周波モジュールの高周波電力増幅素子は、主線路の第1端が高周波増幅回路の出力端子に接続され、主線路の第2端が高周波電力増幅素子の信号出力端子に接続された方向性結合器を内蔵する。高周波電力増幅素子は、高周波増幅回路に駆動電源を印加する第1実装用端子と、信号出力端子である第2実装用端子と、を備える。基板は、第1実装用端子と第2実装用端子とを接続する接続導体を備える。
【0020】
この構成では、上述の電力増幅回路を備える高周波モジュールの構造を示している。高周波増幅回路に駆動電源を印加する第1実装用端子と、方向性結合器の第2端に対応する第2実装用端子とが、基板に形成された接続導体で接続されている。これにより、方向性結合器を介する高周波信号と、方向性結合器を介さない高周波信号とを合成して出力する構成を容易に実現できる。
【0021】
また、この発明の高周波モジュールは次の構成であることが好ましい。第1実装用端子と第2実装用端子は、高周波電力増幅素子において隣り合う端子である。第1実装用端子と第2実装用端子とを接続する接続導体は、略直線状である。
【0022】
この構成では、高周波増幅回路に駆動電源を印加する駆動電源印加用の第1実装用端子と、方向性結合器の第2端に対応する第2実装用端子とが近接し、これらが略直線状の接続導体で接続される。これにより、方向性結合器を介する高周波信号と、方向性結合器を介さない高周波信号とを合成して出力する構成を容易に且つ省スペースに実現できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、フィードバック制御を行っても、出力電力の低下を抑制することができる。これにより、出力電力を精度良く制御しながら、電力付加効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路を備える高周波モジュール10の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路の高周波増幅回路210の最終段の接続構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の高周波モジュール10と従来構成の高周波モジュールとの対比を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路を高周波モジュール10の実装状態図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る電力増幅回路を備える高周波モジュール10Aの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路およびこの電力増幅回路を回路構成として備える高周波モジュールについて、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路を備える高周波モジュール10の回路図である。
【0026】
高周波モジュール10は、高周波電力増幅素子20、整合回路30、駆動電源回路40を備える。高周波電力増幅素子20は、高周波増幅回路210、入力整合回路220、方向性結合器230、本発明の第2整合回路に相当する出力整合回路240、バイアス設定回路250、検波回路260を備える。
【0027】
高周波増幅回路210は、前段増幅回路211と後段増幅回路212とを有する。
【0028】
前段増幅回路211の入力端子は、入力整合回路220を介して、高周波電力増幅素子20の高周波信号入力端子Pinに接続されている。この高周波信号入力端子Pinが高周波モジュール10としての高周波信号入力端子RFinとなる。
【0029】
入力整合回路220は、高周波増幅回路210の入力インピーダンス(前段増幅回路211の入力インピーダンス)と、高周波信号入力端子Pinに接続される、当該高周波モジュール10に高周波信号を印加する外部前段回路とのインピーダンス整合を行うように、素子値が設定されている。入力整合回路220は、例えば、前段増幅回路211と高周波信号入力端子Pinとの間に接続されたキャパシタによって構成される。
【0030】
方向性結合器230は、高周波増幅回路210の出力端子、すなわち後段増幅回路212の出力端子に接続されている。方向性結合器230は、主線路231と副線路232とを備える。主線路231と副線路232とは、高周波信号の周波数において所定結合度で電磁界結合するように配置されている。主線路231の第1端は高周波増幅回路210の出力端子に接続されている。主線路231の第2端は、出力整合回路240を介して、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutに接続されている。
【0031】
出力整合回路240は、所望の出力特性が得られるように高周波信号出力端子Poutにおけるインピーダンスが適切に設定されるように、素子値が設定されている。出力整合回路240は、例えば、主線路231の第2端と高周波信号出力端子Poutとの間に接続されたキャパシタによって構成される。
【0032】
方向性結合器230の副線路232の第1端は接地されている。言い換えれば、副線路232の第1端はグランド電位に接続されている(図示せず)。副線路232の第2端は検波回路260に接続されている。検波回路260は、高周波電力増幅素子20の検波信号出力端子PVDETに接続されている。
【0033】
前段増幅回路211と後段増幅回路212には、バイアス設定回路250が接続されており、該バイアス設定回路250は、高周波電力増幅素子20のバイアス入力端子PVCTLに接続されている。前段増幅回路211には、高周波電力増幅素子20の第1駆動電源印加端子PV1を介して、高周波電力増幅素子20外にある駆動電源回路40が接続されている。後段増幅回路212には、高周波電力増幅素子20の第2駆動電源印加端子PV2を介して、高周波電力増幅素子20外にある駆動電源回路40が接続されている。
【0034】
駆動電源回路40は、高周波増幅回路210の駆動電源電圧Vccを供給する電圧源、インダクタL1、キャパシタC1,C2を備える。電圧源は、第1駆動電源印加端子PV1に接続されている。また、電圧源は、インダクタL1を介して第2駆動電源印加端子PV2に接続されている。電圧源と第1駆動電源印加端子PV1との接続点は、キャパシタC1によって接地されている。電圧源とインダクタL1との接続点は、キャパシタC2によって接地されている。
【0035】
後段増幅回路212に接続する第2駆動電源印加端子PV2と高周波信号出力端子Poutとは、接続導体50によって短絡されている。この接続導体50が本発明の「接続手段」に相当する。
【0036】
より具体的には、図2に示すように、接続導体50が配置されている。図2は、本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路の高周波増幅回路210の最終段の接続構成例を示す図である。なお、図2は本発明の特徴を分かりやすくするため最小の回路構成で示しており、例えばバッファトランジスタをさらに設ける構成等にも適用することができる。
【0037】
後段増幅回路212を構成する最終段トランジスタ221F(本発明の「最終段の増幅素子」に相当する。)は、npn型トランジスタであり、エミッタ接地されている。最終段トランジスタ211Fのベースは、前段増幅回路211の出力端子に接続されている。最終段トランジスタ211Fのベースには、バイアス設定回路250が接続されている。
【0038】
最終段トランジスタ211Fのコレクタは、第2駆動電源印加端子PV2を介して駆動電源回路40に接続されるとともに、方向性結合器230の主線路231の第1端に接続されている。主線路231の第2端は、出力整合回路240を介して高周波信号出力端子Poutに接続されている。接続導体50は、駆動電源回路40と第2駆動電源印加端子PV2との接続点を、高周波信号出力端子Poutに接続している。
【0039】
高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutには、整合回路30が接続されている。整合回路30は、本発明の「第1整合回路」に相当する。整合回路30は、一方端が高周波電力増幅素子20としての高周波信号出力端子Poutに接続され、他方端が高周波モジュール10としての高周波信号出力端子RFoutとなる。整合回路30は、インダクタL11とキャパシタC11との直列回路を備える。インダクタL11は高周波信号出力端子Poutに接続し、キャパシタC11は高周波信号入力端子RFoutに接続する。インダクタL11とキャパシタC11との接続点は、キャパシタC12を介して接地されている。キャパシタC11が本発明の「第1キャパシタ」に相当し、キャパシタC12が本発明の「第2キャパシタ」に相当する。整合回路30は、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutと、高周波モジュール10の高周波信号出力端子RFoutに接続される後段の回路とのインピーダンス整合を行うように、各素子値が設定されている。
【0040】
キャパシタC11を備えることで、後述する接続導体50を介して印加される直流の駆動電源電圧Vccを抑圧することができる。したがって、高周波モジュール10に印加する直流の駆動電源電圧Vccが接続導体50を介して当該高周波モジュール10に接続する後段の回路に印加されることを防止できる。
【0041】
このような構成からなる高周波モジュール10に高周波信号が入力されると、次のように動作する。
【0042】
高周波信号は、高周波モジュール10の高周波信号出力端子RFin、高周波電力増幅素子20の高周波信号入力端子Pinを介して、高周波増幅回路210の前段増幅回路211へ入力される。この際、入力整合回路220を備えることで、高周波信号は低損失で前段増幅回路211へ入力される。
【0043】
前段増幅回路211は、駆動電源回路40からの駆動電源電圧Vccとバイアス設定回路250からのバイアス電圧に応じた増幅率で、高周波信号を増幅し、後段増幅回路212へ出力する。
【0044】
後段増幅回路212は、駆動電源回路40からの駆動電源電圧Vccとバイアス設定回路250からのバイアス電圧に応じた増幅率で、前段増幅回路211から入力された高周波信号を増幅して、最終段トランジスタ211Fのコレクタから出力する。以下、最終段トランジスタ211Fのコレクタから出力される高周波増幅回路210で増幅された高周波信号を、以下、「増幅後高周波信号」と称する。
【0045】
増幅後高周波信号は、方向性結合器230の主線路231に伝送されるとともに、第2駆動電源電圧入力端子PV2を介して、接続導体50にも伝送される。以下、方向性結合器230の主線路231に流れる増幅後高周波信号を「第1増幅後高周波信号」と称し、接続導体50に流れる増幅後高周波信号を「第2増幅後高周波信号」と称する。
【0046】
方向性結合器230は、主線路231と副線路232との結合により、主線路231を伝送する第1増幅後高周波信号の一部を副線路232に伝搬させる。したがって、第1増幅後高周波信号は、方向性結合器230において一部損失した状態で、出力整合回路240へ伝搬される。第1増幅後高周波信号は、出力整合回路240で位相調整されて、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutへ出力される。
【0047】
高周波信号出力端子Poutから出力された第1増幅後高周波信号と、接続導体50を介した第2増幅後高周波信号とは、高周波信号出力端子Poutと接続導体50との接続点で合成される。以下、この合成された高周波信号を「合成高周波信号」と称する。この際、整合回路30または出力整合回路240の素子値を適宜調整することで、第1増幅後高周波信号と第2増幅後高周波信号との位相を正確に一致させることができる。
【0048】
合成高周波信号は、整合回路30を介して、高周波モジュール10の高周波信号出力端子RFoutへ出力される。整合回路30を介することで、合成高周波信号は、高周波信号出力端子RFoutに接続する後段の回路へ、低損失で伝送される。
【0049】
副線路232に伝搬された結合信号は、検波回路260へ入力される。検波回路260は、結合信号を検波し、検波信号を検波信号出力端子PVDETから出力する。図示しない外部のコントロール部は、予め設定した電力で高周波信号が出力されるように、検波信号に基づいて、バイアス電圧を設定する制御信号を出力する。ここで、コントロール部には、検波信号すなわち第1増幅後高周波信号から得られる信号によって、合成高周波信号の電力が判別でき、当該合成高周波信号の電力を所定電力に制御するためのバイアス電圧の調整量が予め設定されている。コントロール部は、この設定内容にしたがって、バイアス電圧を設定する制御信号を出力する。
【0050】
制御信号は、バイアス入力端子PVCTLを介してバイアス設定回路250に与えられる。バイアス設定回路250は、制御信号に基づいて、バイアス電圧を決定し、前段増幅回路211および後段増幅回路212へ印加する。
【0051】
このようなフィードバック制御を行うことで、高周波モジュール10から出力される高周波信号(合成高周波信号)が、所望の電力となるように制御することができる。
【0052】
このような構成において、最終段トランジスタ211Fのコレクタから見ると、接続導体50側よりも、主線路231側の方が、負荷が大きく見える。したがって、第1増幅後高周波信号よりも第2増幅後高周波信号の方が高い電力となる。
【0053】
第2増幅後高周波信号は、接続導体50のみを介するものであり、殆ど損失がない。第1増幅後高周波信号は、方向性結合器230を介するので、結合度に応じた損失がある。このため、従来構成のように、方向性結合器230のみを介して出力する場合すなわち全てが第1増幅後高周波信号の場合と比較して、本実施形態の構成を用いた場合の方が、高周波モジュールとして出力する信号電力を高くすることができる。
【0054】
図3は、本実施形態の高周波モジュール10と従来構成の高周波モジュールとの対比を示すグラフである。図3(A)は入力電力に対する出力電力の特性を示すグラフであり、図3(B)は出力電力に対する電力付加効率(PAE)の特性を示すグラフである。なお、図3において実線が本実施形態の構成を用いた場合の特性であり、破線が従来構成、すなわち、接続導体50を設けない構成を用いた場合の特性である。
【0055】
図3(A)に示すように、本実施形態の構成を用いることで、同一の入力電力に対して、従来構成よりも高い出力電圧を得ることができる。これは、入力電圧を変化させても同じである。また、図3(B)に示すように、本実施形態の構成を用いることで、電力付加効率(PAE)を、従来構成よりも高くすることができる。
【0056】
このような高周波モジュール10は、図4に示すような構造で実現できる。図4は、本発明の第1の実施形態に係る電力増幅回路を高周波モジュール10の実装状態図である。
【0057】
高周波モジュール10は、基板100と、パッケージICからなる高周波電力増幅素子20と、を備える。基板100は、絶縁性基材からなる。絶縁性基材表面には、後述する各種の電極パターンが形成されている。高周波電力増幅素子20には、それぞれ高周波信号入力端子Pin、高周波信号出力端子Pout(本発明の「第2実装用端子」に相当する。)、検波信号出力端子PVDET、バイアス入力端子PVCTL、第1駆動電源印加端子PV1、第2駆動電源印加端子PV2(本発明の「第1実装用端子」に相当する。)となる外部接続パッドが形成されている。この際、高周波信号入力端子Pin、検波信号出力端子PVDET、バイアス入力端子PVCTLは、高周波電力増幅素子20を形成するパッケージICの第1側面近傍付近であって、当該第1側面に沿って形成されている。高周波信号出力端子Pout、検波信号出力端子PVDET、バイアス入力端子PVCTL、第1駆動電源印加端子PV1、第2駆動電源印加端子PV2は、高周波電力増幅素子20を形成するパッケージICの第2側面(第1側面に対向する側面)近傍付近であって、当該第2側面に沿って形成されている。さらに、高周波信号出力端子Poutの外部接続パッドと第2駆動電源印加端子PV2の外部接続パッドとは隣り合うように配置されている。
【0058】
基板100を構成する絶縁性基材の表面には、所定の電極幅からなる線状電極641,642,643,644,645,646,647,648,649、グランド電極631,632,633が形成されている。
【0059】
線状電極641,642,643,644,645,646は、それぞれの一方端が高周波電力増幅素子20の外部接続パッドのランドとなる位置に形成されている。線状電極641は、高周波信号入力端子Pinの実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。この構成により、高周波信号が線状電極641から高周波信号入力端子Pinへ印加される。
【0060】
線状電極642は、バイアス入力端子PVCTLの実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。この構成により、バイアス電圧設定用の制御信号が線状電極642からバイアス入力端子PVCTLへ入力される。
【0061】
線状電極643は、検波信号出力端子PVDETの実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。この構成により、検波信号出力端子PVDETからの検波信号が線状電極643から外部回路(コントロール部)へ出力される。
【0062】
線状電極644は、第1駆動電源電圧入力端子PV1の実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。
【0063】
線状電極645は、第2駆動電源電圧入力端子PV2の実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。線状電極646は、高周波信号出力端子Poutの実装位置を一方端として、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出される形状で形成されている。
【0064】
線状電極644,645,646は、高周波電力増幅素子20から外部へ引き出された直後に他の回路素子(それぞれキャパシタ素子612、インダクタ素子611、インダクタ素子622)と接続されており、他の回路素子までの電極の距離が短い。
【0065】
線状電極647の一方端は、線状電極645の他方端から所定距離離間した位置にある。線状電極647の所定位置は、線状電極644に接続されている。この構成により、駆動電源電圧Vccが線状電極647,644を介して第1駆動電源電圧入力端子PV1へ印加される。また、線状電極645の他方端と線状電極647の一方端とは、インダクタ素子611(L1)で接続されている。この構成により、駆動電源電圧Vccが線状電極647、インダクタ素子611(L1)、線状電極645を介して第2駆動電源電圧入力端子PV2へ印加される。
【0066】
グランド電極631は、線状電極647に対して所定間隔をおいて形成されている。グランド電極631と線状電極647とは、キャパシタ素子613(C2)を介して接続されている。
【0067】
グランド電極632は、線状電極644に対して所定間隔をおいて形成されている。グランド電極632と線状電極644とは、キャパシタ素子612(C1)を介して接続されている。
【0068】
線状電極648の一方端は、線状電極646の他方端から所定距離離間した位置にある。線状電極648は、当該線状電極648への接続が必要な個数(本実施形態では三個)の素子が実装できる程度の長さからなる。線状電極646の他方端と線状電極648の一方端は、インダクタ素子622(L11)を介して接続されている。
【0069】
線状電極649の一方端は、線状電極648の他方端から所定距離離間した位置にある。線状電極648の他方端と線状電極649の一方端は、キャパシタ素子621(C11)を介して接続されている。
【0070】
グランド電極633は、線状電極646,648,649に対して所定間隔をおいて形成されている。グランド電極633と線状電極648とは、キャパシタ素子623(C12)を介して接続されている。グランド電極633は、高周波電力増幅素子20の底面を含む形状で所定形状に形成されている。
【0071】
線状電極645と線状電極646とは線状電極500によって接続されている。線状電極500が本発明の「接続導体」に相当する。線状電極500は、線状電極645に対する接続位置と線状電極646に対する接続位置とを直線で結ぶ形状で形成されている。これにより、線状電極645と線状電極646とが最短距離で接続される。
【0072】
このような構成により、高周波信号出力端子Poutから出力される第1増幅後高周波信号と、第2駆動電源印加端子PV2から出力される第2増幅後高周波信号とが合成され、合成高周波信号が、インダクタ素子622(L11)、線状電極648、キャパシタ素子621、線状電極649を介して、高周波モジュール10の高周波信号出力端子RFoutから後段の回路へ出力される。
【0073】
このように、図4に示す実装構成および電極構成を採用することで、上述の回路図に示したような電力付加効率を改善した高周波モジュール10を実現することができる。
【0074】
さらに、上述のように、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutと第2駆動電源電圧入力端子PV2とが近接し、且つこれらに接続する線状電極645と線状電極646とが線状電極500によって最短距離で接続されることにより、第2増幅後高周波信号の伝送経路が短くなり、伝送損失を抑制できる。これにより、電力付加効率をさらに向上させることができる。また、線状電極500の長さが第1増幅後高周波信号および第2増幅後高周波信号の波長と比較して十分に短いので、これらを合成する際の経路長の差に基づく位相差の調整を殆ど行う必要が無く、設計が容易になる。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態に係る電力増幅回路を備えた高周波モジュールについて、図を参照して説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る電力増幅回路を備える高周波モジュール10Aの回路図である。本実施形態の高周波モジュール10Aは、第1の実施形態に示した高周波モジュール10に対して、整合回路30Aが異なるものである。他の構成は、第1の実施形態に示した高周波モジュール10と同じであるので、説明は省略する。
【0076】
整合回路30Aは、本発明の「第1整合回路」に相当する。整合回路30Aは、インダクタL21,L22、キャパシタC21,C22,C23を備える。インダクタL21,L22およびキャパシタC21は、高周波電力増幅素子20の高周波信号出力端子Poutと、高周波モジュール10Aの高周波信号出力端子RFoutとの間に直列接続されている。インダクタL21とインダクタL22との接続点は、キャパシタC22を介して接続されている。インダクタL22とキャパシタC21との接続点は、キャパシタC23を介して接続されている。
【0077】
このような構成では、インピーダンス整合をする素子数が第1の実施形態の整合回路30よりも増加する。このため、整合できるインピーダンスの範囲を広くすることができる。これにより、高周波電力増幅素子20が、広い周波数範囲で高周波信号の増幅が可能なマルチバンドPA(パワーアンプ)であっても、後段の回路との間のインピーダンス整合を高精度に行うことができる。
【0078】
なお、上述の説明では、高周波電力増幅素子20をパッケージICで実現する例を示したが、GaAsベアチップMMICや、SiGeベアチップMMICで実現しても良い。この場合、ベアチップからなる高周波電力増幅素子20と基板を接続するには、はんだバンプを形成してフェイスダウンで実装したり、ワイヤボンディングで実装すればよい。
【0079】
また、高周波電力増幅素子20を構成する高周波増幅回路210、入力整合回路220、方向性結合器230、出力整合回路240、バイアス設定回路250、および検波回路260を単一のチップで形成してもよく、それぞれ別のチップで形成してもよい。さらには、それぞれ異なるプロセスで製造したものを用いてもよい。例えば、GaAsプロセス、SiGeプロセス、Siプロセス等を組み合わせて製造したものであってもよい。
【0080】
また、上述の説明では、整合回路30,30Aを、線状電極と実装部品とで構成する例を示したが、GeAsプロセス、SiGeプロセス、Siプロセス等によって製造されたIPD(Integrated PassiveDevice)で構成してもよい。
【0081】
また、基板100は、低温焼成セラミックス(LTCC)基板であってもよい。さらには、整合回路30,30Aの構成要素の一部もしくは全部を、基板内に形成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10:高周波モジュール、
20:高周波電力増幅素子、
210:高周波増幅回路、211:前段増幅回路、212:後段増幅回路、220:入力整合回路、230:方向性結合器、231:主線路、232:副線路、240:出力整合回路、バイアス設定回路250、検波回路260、
30,30A:整合回路、
40:駆動電源回路、
50:接続導体、
100:基板、
500,641,642,643,644,645,646,647,648,649:線状電極、
611,622:インダクタ素子、
612,613,621,623:キャパシタ素子、
631,632,633:グランド電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された高周波信号を所定増幅率で増幅して出力する高周波増幅回路と、
主線路の第1端が前記高周波増幅回路の出力端子に接続され、前記主線路の第2端が信号出力端子に接続された方向性結合器と、を備えた電力増幅回路であって、
前記高周波増幅回路の出力端子と前記主線路の第2端とを前記方向性結合器を介することなく接続する接続導体を備えた、電力増幅回路。
【請求項2】
前記高周波増幅回路の最終段の増幅素子における駆動電源印加端子と、前記高周波増幅回路の出力端子とが接続されており、
前記駆動電源印加端子に前記接続導体が接続されている、請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項3】
前記主線路の第2端には第1整合回路が接続されている、請求項1または請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項4】
前記主線路の第2端と、該第2端と前記接続導体との接続点との間に、第2整合回路が接続されている、請求項3に記載の電力増幅回路。
【請求項5】
前記第1整合回路は、信号伝送ラインに直列接続された第1キャパシタを備える、請求項3または請求項4に記載の電力増幅回路。
【請求項6】
前記第1整合回路は、前記第1キャパシタに直列接続されたインダクタと、該第1キャパシタと前記インダクタとの接続点とグランド電位との間に接続された第2キャパシタと、を備える、請求項5に記載の電力増幅回路。
【請求項7】
入力された高周波信号を所定増幅率で増幅して出力する高周波増幅回路を内蔵する高周波電力増幅素子と、該高周波電力増幅素子が実装される基板と、を備えた高周波モジュールであって、
前記高周波電力増幅素子は、
主線路の第1端が前記高周波増幅回路の出力端子に接続され、前記主線路の第2端が前記高周波電力増幅素子の信号出力端子に接続された方向性結合器を内蔵し、
前記高周波増幅回路に駆動電源電圧を印加する第1実装用端子と、
前記信号出力端子である第2実装用端子と、を備え、
前記基板は、
前記第1実装用端子と前記第2実装用端子とを接続する接続導体を備える、高周波モジュール。
【請求項8】
前記第1実装用端子と前記第2実装用端子は、前記高周波電力増幅素子において隣り合う端子であり、
前記第1実装用端子と前記第2実装用端子とを接続する接続導体は略直線状である、請求項7に記載の高周波モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102363(P2013−102363A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245131(P2011−245131)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】