説明

電力増幅装置及び電力調整係数を取得する方法

【課題】起動される時点から低サイドローブを含むスペクトルを有した送信器を容易にする電力増幅装置等を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、電力増幅装置及び方法並びに電力調整係数を取得する方法を開示する。本発明の一実施形態に従う電力増幅装置は、入力信号に対して電力調整を行うよう構成される電力制御モジュールと、電力制御モジュールによる電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行うよう構成される電力増幅モジュールと、電力増幅モジュールの非線形特性を補償するよう構成される前置歪みモジュールとを有し、電力制御モジュールは、前置歪みモジュールと電力増幅モジュールとの間に直列に結合され、代替的に、前置歪みモジュールは、電力制御モジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合される。本発明の実施形態によれば、送信器は、起動時にさえ低サイドローブを含むスペクトルを与えられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、非線形電力増幅システム、特に、電力増幅装置及び電力調整係数を取得する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
電力増幅器(PA)は、電子装置において重要な構成要素であり、送信及び放射のために弱電子信号の電力を増幅することができる。一般的に、電力増幅器の入力信号と出力信号との間の電力関係を反映する特性曲線は、入力信号の電力が増大するにつれて線形領域、非線形領域及び飽和領域に分けられる。電力増幅器(PA)の出力は、入力信号の振幅が小さい領域においては実質的に入力信号の線形増幅から得られるが、電力増幅器(PA)は、入力信号の振幅が増大するにつれて徐々に顕著になる非線形特性を示し、それにより、出力信号は最後に飽和するまで歪む。周波数領域では、この非線形性は、上昇(elevated)サイドローブ及び歪んだ主ローブを含むスペクトルを伴う出力信号として現れる。上昇サイドローブは、隣接チャネルにおいて作動する他の装置の通常動作を妨げることがある。新しい変調スキームが出現する場合に、入力信号のエンベローブは、不可避の非線形歪みをもたらす増大したダイナミックレンジを有する。従って、PAの非線形特性は、そのような歪みを改善するために技術的に補償されなければならない。前置歪み(pre-distortion)は、このための作用アプローチである。
【0003】
しかし、前置歪み部は、特定の係数を有して動作すべきであり、前置歪み部の係数が適応的に取得される場合に、前置歪み部の係数は、送信器が動作を開始された後にのみ適応アルゴリズムにより取得され得る。PAの非線形性は、送信器が起動された後、適応アルゴリズムが完全に収束するまでは完全に補償されないので、出力信号のスペクトルは、隣接チャネルにおいて作動する他の装置の通常動作を妨げうる上昇サイドローブを依然として有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上を鑑み、本発明の実施形態は、起動される時点から低サイドローブを含むスペクトルを有した送信器を容易にする電力増幅装置等を提供する。
【0005】
更に、本発明の実施形態は、係数調整部のオンライン処理の複雑さを減らすとともに、開始される時間からサイドローブを含むスペクトルを有した送信器を容易にするよう、係数の組がオフラインで取得可能である電力調整係数の取得方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の態様に従って、入力信号に対して電力調整を行うよう構成される電力制御モジュールと、前記電力制御モジュールによる前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行うよう構成される電力増幅モジュールと、前記電力増幅モジュールの非線形特性を補償するよう構成される前置歪みモジュールとを有し、前記電力制御モジュールは、前記前置歪みモジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合され、代替的に、前記前置歪みモジュールは、前記電力制御モジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合される、電力増幅装置が提供される。
【0007】
本発明の実施形態の他の態様に従って、電力調整係数を取得する方法であって、0よりも大きく1よりも小さい係数に従って入力信号に対して電力調整を行い、前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行い、前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされた第1のスペクトル条件に合わない場合に、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされた第1のスペクトル条件に合うまで前記係数を低減して、該係数を電力調整係数の開始値であるよう決定し、前記電力増幅の間に生じる非線形性を補償するよう、前記電力増幅を受けた信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズム検索を行い、前記自己適応アルゴリズム検索が収束条件を満足する場合に前記係数を増大させ、前記電力調整係数が1になるまで前記電力調整から前記係数の増大までの動作を繰り返し行う方法が提供される。
【0008】
更に、本発明の他の態様に従って、情報処理装置で実行される場合に、該情報処理装置に、上記の電力増幅方法と、本発明に従う電力調整係数の取得方法とを実行させる機械読出可能なプログラムコードを含む記憶媒体も適用される。
【0009】
更に、本発明の更なる他の態様に従って、情報処理装置で実行される場合に、該情報処理装置に、上記の電力増幅方法と、本発明に従う電力調整係数の取得方法とを実行させる機械実行可能な命令を含むプログラムも提供される。
【0010】
本発明の実施形態の他の態様は、本発明の好ましい実施形態を十分に開示するよう意図された(しかし、限定ではない)本発明の以下の詳細な記載において提示される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態に従う上記の電力増幅装置及び電力調整係数の取得方法においては、前置歪み処理は電力制御と組み合わされてよく、それにより、電力増幅器の出力信号が電力制御により低サイドローブを含むスペクトルを提供されて、起動時でさえ低サイドローブを含むスペクトルを有した送信器を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電力増幅器(PA)の入力信号対出力信号の非線形特性の概略図である。
【図2】前置歪み部の入力信号対出力信号の特性の概略図である。
【図3】入力信号の電力とACLRとの間の関係の概略図である。
【図4】本発明の第1実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図5】本発明の第2実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図6】本発明の第3実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図7】本発明の第4実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図8】電力が本発明の実施例に従う電力増幅装置により増幅される場合における入力信号の電力とACLRとの間の関係の概略図である。
【図9】本発明の第5実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図10】本発明の第6実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図11】本発明の第7実施例に従う電力増幅装置の概略図である。
【図12】本発明の実施例に従う電力増幅方法のフローチャートである。
【図13】本発明の実施例に従う電力増幅方法の他のフローチャートである。
【図14】本発明の実施例に従う電力増幅方法の更なるフローチャートである。
【図15】本発明の実施例に従う電力調整係数の取得方法のフローチャートである。
【図16】本発明の実施例で用いられる情報処理装置としてのパーソナルコンピュータの構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の上記の及び他の目的及び利点は、図面を参照して具体的な実施形態に関連して以下で更に記載される。図面において、同じ又は対応する技術的特徴又は構成要素は、同じ又は対応する参照符号により表される。
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。本発明の実施例の理解を容易にするために、前置歪み部の動作原理について最初に簡単に紹介する。
【0015】
通常、電力増幅器(PA)の基本特性は:

Y=P{X} (1)

と記述可能である。非線形性を考慮して、一般的に:

Y≠aX (2)

である。ここで、aは定数であり、これは、入力信号が完全には増幅されず、対応して出力信号のスペクトルが上昇サイドローブを含むようなPAの非線形性を意味する。図1は、電力増幅器(PA)の入力信号対出力信号の非線形特性を表す。
【0016】
なお、前置歪み部Q{}が:

Z=Q{X} (3)

であるように前置歪みによって適切に構成され、且つ、前置歪み部がPAよりも前に結合される場合には、理想的に:

Y=P{Q{X}} (4)

であり、且つ

Y=aX (5)

である。ここで、aは定数であり、式は、PAの非線形性が補償されて、入力信号が完全に線形に増幅されることを意味する。図2は、図1に表される非線形特性を相殺する電力増幅器前置歪み部の入力信号対出力信号の概略図を表す。
【0017】
前置歪み部Q{}は様々に構成されてよいが、一般的に、Qαi{}と記述され得る。すなわち、一連のパラメータαiは、式(4)及び(5)を満足するように、前置歪み部Q{}の特性を変更するよう調整されてよい。適応アルゴリズムにより係数αiを取得する工程は、前置歪み部の適応収束処理である。
【0018】
なお、一般的に、送信器が直接起動されて、PAが動作を開始する場合には、前置歪み部の適切な係数αiは知られておらず、従って:

Z=Q{X}=X (6)

であるように、前置歪み部をトランスペアレントにする何らかの値(例えば、0又は1)にそれらを設定することが標準的である。次いで、同等に、前置歪み部は(PAよりも前に結合されているとしても)この時点で動作せず、従って、PAは強い非線形性を依然として示す。適応前置歪みアルゴリズムは、その後に、式(4)及び(4)を満足するよう適切なαiを検索するために動作するが、PAの非線形性はこの処理においては完全に補償されず、それにより、PAの出力信号のスペクトルは、深刻な高サイドローブを依然として含み、隣接チャネルにおける装置の動作を妨げうる。
【0019】
特に、PAの出力信号のスペクトルにおけるサイドローブの高さは、隣接チャネル漏れ比(ACLR;Adjacent Channel Leakage Ratio)の値によって定量的に反映され得る。図3は、入力信号の電力とACLRとの間の関係の概略図を表す。入力信号の電力は、定電流の場合において入力信号の振幅との間に正の相関が認められるので、概略図は、また、入力信号の振幅とACLRとの間の関係も体現することができる。図3から明らかなように、入力信号の電力が高ければ高いほど、ACLRの値はますます大きい。これは、より高いサイドローブによって出力信号のスペクトルにおいて反映され得、対応して、隣接チャネルにおける装置への干渉も大きくなる。
【0020】
実際の用途においては、出力信号のACLR値が特定の条件を満たす限りは、隣接チャネルにおける装置への出力信号の干渉は無視可能であると考えられる。すなわち、隣接チャネル干渉は現れない。このために、様々な周波数インターバルのための閾値が、図3において横座標に平行に破線により表されるような、完全なスペクトル放射マスク(MASK)を構成するように、周波数領域における様々な周波数インターバルのための閾値を設定することが標準的である。このとき、出力信号のACLR値がMASK値を下回る限りは、隣接チャネル干渉は現れないと考えられてよい。
【0021】
従って、前置歪み部の収束処理は、本質的に、PAの出力信号のスペクトルに漸進的にMASK要件を満足させる処理として考えられてよい。例えば、入力信号の電力がP(すなわち、図3に表される点P)と仮定され、送信器が直接起動されて、PAが動作を開始する場合に、ACLR値は図3において点Kにあり、明らかに、この時点で、出力信号のスペクトルはMASK要件を満足しない。次いで、前置歪み部の適応アルゴリズムは、アルゴリズムの収束まで適切なαIを連続的に検索するよう起動され、この処理は、図3において、横軸に直交する方向において点Kから点Tへ漸進的にACLRを遷移させる処理として表されている。明らかに、出力信号のスペクトルは、点Tに達するとMASK要件を満足する。同等に、適切なαiは、この時点で前置歪み部に対して位置付けられて、前置歪み部は、出力信号のスペクトルがその後に送信器の動作中MASK要件を満足することを確かにするよう、そのようなパラメータを有して常に動作することができる。
【0022】
要約すると、PAの出力信号のスペクトルにおけるサイドローブが要件を満足する高さを有するかどうかは、ACLR値がMASK値を下回るかどうかによって表すことができ、ACLR値の大きさは、前置歪み部の係数に加えてPAへ入力される信号の電力に依存する。
【0023】
このことに関して、本発明の実施形態は、最初に、直列に結合されている電力制御モジュール、前置歪みモジュール、及び電力増幅モジュールを有する電力増幅装置を提供する。電力制御モジュールは、入力信号に対して電力調整を行うよう構成され、電力増幅モジュールは、電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行うよう構成され、前置歪みモジュールは、電力増幅モジュールの非線形特性を補償するよう構成される。すなわち、入力信号の電力は、入力信号に対して行われる電力増幅よりも前に電力増幅モジュールの非線形性を補償するよう更に調整されるべきであり、電力増幅装置に対する元の入力信号は、前置歪みモジュール及び電力制御モジュールによって処理された後に電力増幅のために電力増幅モジュールへ入力されるべきである。
【0024】
実施例において、電力制御モジュール403は、図4に表されるように、前置歪みモジュール402と電力増幅モジュール401との間に直列に結合されてよい。他の実施例では、前置歪みモジュール502は、図5に表されるように、電力制御モジュール503と電力増幅モジュール501との間に直列に結合されてよい。すなわち、前置歪みモジュール及び電力制御モジュールは、同じ効果を達成するよう順序を調整されてよい。これは、前置歪みモジュールが、電力増幅モジュールの非線形性を補償する働きをし、技術の進歩のおかげで、前置歪みモジュールは、一般的に、実質的に信号の電力を変えることなしに動作することができるためである。例えば、図4においては、前置歪みモジュールへ入力される信号はx(t)であり、前置歪みモジュールから出力される信号はx(t)である。ここで、x(t)は、x(t)に対して実質的に電力が変更されていない。従って、電力制御モジュールへ入力される信号はx(t)であり、電力制御モジュールはx(t)に対して電力制御を行うが、これは、本質的に、x(t)に対する直接的な電力制御(すなわち、図5の場合)と同じ効果を有する。
【0025】
実際の用途では、電力制御モジュールは、電力調整係数により電力制御を行うことができる。また、スペクトルは起動時にのみMASKに違反しうるので、電力調整は、電力増幅装置の起動時にのみ電力調整係数に従って入力信号に対して実行され得る。
【0026】
この場合に置いて、実施例が図6に表されている。前置歪みモジュール602は、電力増幅モジュールの出力信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を行い、検索された係数に基づき入力信号に対して前置歪み処理を行い、収束条件が満足される場合に電力制御モジュールへ電力調整通知を送信する。電力制御モジュール603は、係数調整部6031及び乗算部6032有する。係数調整部6031は、電力増幅装置がオンされる場合に0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値を生成し(初期値はゼロよりも大きく且つ1よりも小さい(通常、ゼロに近い)。)、電力調整係数が1へ調整されるまで電力調整通知を受け取るたびに電力調整係数を調整するよう構成され、乗算部6032は、受信信号に電力調整係数を乗じるよう構成される。電力増幅モジュール601は、受信信号に対して電力増幅を行うよう構成される。実施例において、係数調整部6031は、多数回の増分調整の後に電力調整係数が1へ調整されるまで、電力調整通知を受け取るたびに、1以下であるインターバルにおいて電力調整係数に対して一度増分調整を行うことができる。すなわち、電力制御モジュール603は、電力増幅装置の起動時にゼロに近い初期値を有し、且つ、係数が1に増大するまで漸進的に増大する係数を、当該モジュールへ入力される信号に乗じるべきである。
【0027】
当然、増分調整は、必ずしも、電力調整係数を調整するよう何度も実行されなくてもよく、小さい値から始まって最終的に1に調整され得るのであれば、他の種類の調整も可能であってよい。
【0028】
特に、電力調整通知は、前置歪みモジュール602から送信されるトリガメッセージであってよく、当然、電力調整通知は他の方法において送信されてよい。
【0029】
図6に表される実施例では、電力増幅装置の起動時に、電力制御モジュール603は、電力調整係数の低い初期値を生成して、該初期値を用いて受信信号の電力を調整することによって、電力増幅モジュール601へ入力される信号の電力を低い値に低減することができ、PAは当該PAへ入力される信号の電力が低い場合には線形領域の近くで動作することができるので、PAの出力信号のスペクトルは低サイドローブを含む。次いで、前置歪みモジュール602が機能し始める。すなわち、サイドローブは、たとえ低いとしても、依然として出力信号のスペクトルに存在し、前置歪みモジュール602は、PAの出力信号のスペクトルに依存して適応アルゴリズム検索を実行し、検索された係数に基づき入力信号に対して前置歪み処理を実行し、収束条件が満足される場合に電力制御モジュールへ電力調整通知を送信することができる。電力制御モジュール603は、前置歪みモジュール602から送信された電力調整通知を受け取るたびに一度電力調整係数を調整し、次いで、前置歪みモジュール602は再びアルゴリズム検索を実行し、電力制御モジュール603は、電力調整係数が1へ調整されるまで、再び電力調整係数を調整する。すなわち、電力増幅モジュール601へ入力される信号の電力は、送信器の元の入力信号に電力が等しくなるよう漸進的に調整される処理を受ける。
【0030】
当然、上述されたように、電力制御モジュール及び前置歪みモジュールは、代替的に、本発明の他の実施形態においては別なふうに接続されてよい。例えば、図7を参照すると、本発明の実施例に従う他の電力増幅装置の概略図が表されている。前置歪みモジュール702は、電力制御モジュール703と電力増幅モジュール701との間に直列に結合されており、同様に、電力制御モジュール703は、更に、係数調整部7031及び乗算部7032を有してよい。
【0031】
特に、図7の電力増幅装置は、前置歪みモジュール及び電力制御モジュールが接続される順序関係を除いて、図6の電力増幅装置と同じであり、従って、ここでは、繰り返しの記載は省略される。
【0032】
留意すべきは、前置歪みモジュールで用いられる特定の適応アルゴリズムは、本発明のいずれの実施例においても定義されないことである。満足される収束条件は、出力信号のスペクトルが、適応アルゴリズムの完全な収束時に、又は適応アルゴリズムがある程度収束した後に、等、前もってセットされた要件を満たしていることに言及することができる。
【0033】
更に、留意すべきは、上述されたように、前置歪みモジュールは、実質的に元の入力信号の電力に影響を及ぼすことなく動作するので、乗算部から出力される信号は、送信器の元の入力信号に電力調整係数を乗じた結果に等しいことである。係数Rは、0よりも大きく且つ1以下である小さい数であり、従って、乗算の結果は、乗算部から出力される信号の電力を元の入力信号に対して低減するとともに、電力増幅モジュールへ入力される信号の電力も低め、それにより、電力増幅モジュールの出力信号のACLRを低減する。明らかなように、係数Rの初期値が十分に小さい限りは、電力増幅モジュールの出力信号のスペクトルが送信器の起動時にMASK要件を満たすことが確かにされ得る。このために、係数Rの初期値は、特定の用途においては、0に近い小さい数を取ることができる。
【0034】
その後に、前記歪みモジュールは、漸進的にαiを検索し、検索された係数αiに基づき入力信号に対して前置歪み処理を行い、それにより、電力増幅器の出力信号のACLRは、収束条件が適切な検索されたαiを用いて満足されるまで、漸進的に低減され、収束条件が満足されると、前置歪みモジュールは、前置歪みアルゴリズムが収束条件を満足したことを電力制御モジュールに示すよう電力制御モジュールへトリガ信号を送信する。
【0035】
電力制御モジュールが前置歪みモジュールから送信されたトリガ信号を受信した場合に、係数調整部は電力調整係数を調整し、具体的に、前置歪みモジュールからトリガ信号を受信するたびに一度電力調整係数に対して増分調整を行うことができ、当然、インクリメントされた電力調整係数は1を超えない。
【0036】
すなわち、前置歪みアルゴリズムが収束条件を満足した後、係数調整部は、電力調整係数を増大させることができ、この時点で、電力増幅装置の出力信号ACLRも然るべく増大される。現在の前置歪みモジュールが前の状態のために既に適切な係数を検索している場合に、電力調整係数が過度にインクリメントされない限り、電力調整係数が増大された後に電力増幅器の出力信号のACLRが依然としてMASKを下回っていることが確かにされ得る。次いで、前置歪みモジュールは、再び前置歪み適応アルゴリズム検索を開始し、前置歪みアルゴリズムが再び収束条件を満足した後、係数Rを増大させる。これは、電力調整係数が1に増大されるまで繰り返される。
【0037】
特に、処理において、前置歪みモジュールは、現在の電力調整係数により複数回適応アルゴリズム検索を実行する。あるいは、電力制御モジュールは、前の状態における電力調整係数の値に従って前置歪みモジュールによって実行される適応アルゴリズム検索から得られる前置歪み係数により複数回電力調整係数を調整することができる。例えば、夫々の状態における電力調整係数の値がR、R及びR(ここで、R=1)であり、元の入力信号の電力がPであるならば、適応アルゴリズム検索は、電力増幅モジュールの入力信号の電力がR×Pである状態において最初に実行され、アルゴリズムが収束すると、適切な係数αがこの状態のために検索され、前置歪み処理がαに基づき行われる。次に、電力調整係数はRに増大され、この時点で、電力増幅モジュールの入力信号の電力はR×Pになるので、前置歪みモジュールはαから検索を開始し、他の収束に達すると、適切な係数αがこの状態のために検索され、前置歪み処理がαに基づき行われる。そして、次に、電力調整係数はR=1に増大される。電力増幅モジュールの入力信号の電力はPになり、前置歪みモジュールはαから検索を開始する。更なる他の収束に達すると、適切な係数αがこの状態のために検索される。この時点で電力調整パラメータは1になっているので、これ以上の増分調整は行われず、この時点で、前置歪みモジュールはαの係数を有して動作し続ける。すなわち、前置歪みモジュールは、αに基づき入力信号に対して前置歪み処理を行う。
【0038】
すなわち、電力増幅モジュールの出力信号のACLR値は、電力調整係数が制御されたステップサイズによってインクリメントされる限りは、MASK要件を満たすことが確かにされ得る。これは、入力信号に対して検索される前置歪み係数が、電力増幅モジュールの入力信号の電力が互いに十分に近い限り、他の入力信号にも適用されるためである。そして、本発明の実施例においては、電力増幅モジュールの入力信号の電力は、電力制御モジュールの電力調整係数によって決定され、従って、Rの電力調整係数に関して前置歪みモジュールによって検索される前置歪み係数は、2つの電力調整係数R及びRが互いに十分に近い限り、Rの電力調整係数にも適用される。明らかなように、出力信号のスペクトルは、係数Rの初期値が十分に低く、制御される範囲でインクリメントされる限りは、常にMASK要件を満足することが、上記の電力増幅装置により確かにされ得る。すなわち、本発明の実施形態に従う電力増幅装置は、上記の効果的な働きを達成するための基礎を提供する。
【0039】
実際の用途において、前置歪みモジュールは、前置歪み器(pre-distorter)二より実施されてよく、電力増幅モジュールは、電力増幅器により実施されてよい。
【0040】
本発明の実施例に従う技術的解決法のより直感的な理解のために、以下、本発明の実施例について、図6に表されている本発明の実施例に従う電力増幅装置を用いて出力信号のACLRがどのように変化するのかに関して、更に記載する。
【0041】
図8において、グラフ81は、前置歪み部を備えていない電力増幅器の出力信号のACLRと入力信号の電力との間の関係を表し、グラフ82は、前置歪み部による前置歪みアルゴリズムの収束時の電力増幅器の出力信号のACLRと入力信号の電力との間の関係を表す。
【0042】
送信器の元の入力信号の電力がPである場合に、上述されたように、送信器が直接オンされるならば、PAの出力信号のACLRはグラフ81上の点Kにあり、著しくMASKに違反している。その場合に、前置歪み部が起動されるので、ACLRはグラフ82上の点Tへと漸進的に低減される。
【0043】
本発明の実施例に従う電力増幅装置によれば、極めて小さい電力調整係数Rは送信器の起動時にとることができるので、起動時の出力信号のACLRは低く、グラフ81上の点aにあると考えられる。次いで、前置歪みモジュールは、前置歪みアルゴリズムに従って前置歪み係数を更新するよう動作し始め、完全な収束(これが収束条件であるとされる。)に達すると、PAの出力信号のACLR値はグラフ82上の点Iにあり、前置歪み係数は更新を停止する。この時点で、前置歪みモジュールにおける係数は、起動時の(1又は0の係数を有する)トランスペアレント状態におけるCoe.0からCoe.1の収束係数へと変化している。この時点で、前置歪みモジュールは、増大した係数がRであるように、電力調整係数Rを調整するよう(例えば、係数Rを増大させるよう)電力制御モジュールに指示することができる(例えば、R=R+Δ;0<Δ<1)。次いで、電力増幅モジュールの出力信号のACLR値は点bに増大する。この時点で、前置歪み係数を更新するアルゴリズムは、Coe.2に収束するまで、Coe.1の初期値を有して再び検索を開始される。この時点で、出力信号のACLR値は点IIにある。次に、係数Rは、更に値をインクリメントされ、前置歪み係数は、係数Rの値が1であり、それ以上変化しなくなるまで、更に更新される。そのような状態において、前置歪みモジュールが適切な前置歪み係数を更に検索すれば十分である。
【0044】
留意すべきは、係数Rが初期値から一度増大される場合に、PAの出力信号のACLR値は、この時点では前置歪み係数がCoe.1であるので、グラフ81上の点まで増大しないことである。これは、前置歪みモジュールが機能していることを意味する。すなわち、係数Rが増大した後、前置歪みモジュールは、0又は1の初期値から始まる代わりに、最後の収束の結果に基づき機能する。従って、上記の結果は、前置歪みモジュール及び電力制御モジュールの協働により達成され得る。その後の処理も同様であり、すなわち、ACLR値は、係数Rをインクリメントする間、グラフ81を下回る。
【0045】
更に、前置歪みモジュールの収束処理及び結果はPAの特定の出力信号に依存するので、すなわち、係数Rにより電力が変化するPAへ入力される特定の信号に依存するので、前置歪みモジュールにおける夫々の収束から得られる係数も常に変化する。例えば、上記の例においては、収束係数がCoe.1である場合に、前置歪みモジュールはR=Rを有して動作し、この時点で、PAへ入力される信号の電力はR×Pであり、すなわち、前置歪みモジュールは、PAの入力信号の電力がR×Pである場合にCoe.1の収束係数をもたらす適応アルゴリズム検索を実行する。次に、PAの入力信号の電力は、係数RがRに増大された後にR×Pに変化する。従って、前置歪みモジュールは、Coe.1に基づき再び適切な収束係数を検索する。すなわち、前置歪みモジュールは、係数Rが1まで増大し、且つ、PAの入力信号の電力がPへと変化する、すなわち、送信器の元の入力信号の電力に等しくなるまで、PAの入力信号の電力がR×Pである場合にCoe.2の収束係数をもたらす検索を再び実行する。それにより、前置歪みモジュールは、PAの入力信号の電力がPである場合に、前の状態のために検索される収束係数に基づきCoe.nの適切な収束係数を検索する。電力制御モジュールを用いずに行うことと対比して、送信器がオンされるのでCoe.nの収束係数を導出するのにより長い時間を要するが、PAの出力信号のスペクトルがMASKに違反する可能性は著しく低い。
【0046】
更に、留意すべきは、入力電力とACLR値との間の変動関係のみが、時間的な概念を体現することなしに、図8に表される概略図において体現されていることである。時間的な概念も考慮されるならば、ACLR値は、点aから点Iへと漸進的に変化する。すなわち、ACLR値は点Iへと漸進的に低下する。しかし、ACLR値は、点Iから点bへは劇的に変化する。すなわち、ACLR値は、点Iから点bへ直接ジャンプする。続く処理は同様であり、すなわち、ACLR値は、係数Rが1にインクリメントするまで、点bから点IIへ漸進的に変化し、更に、点IIから点Cへは劇的に変化し、次いで、点cから点IIIへ漸進的に変化し、更に、点IIIから点dへは劇的に変化する。特に、漸進的な変化は、前置歪み係数の更新に帰せられ、劇的な変化は、電力調整係数Rのインクリメントに帰せられる。
【0047】
実際の用途において、係数調整部は、初期値から1へと漸進的にインクリメントされるパラメータの予め記憶された組から、電力調整係数を生成して増大させる。すなわち、極めて小さい値から1へと漸進的にインクリメントされるパラメータの組が、予め取得されて記憶され得る。係数調整部は、予め記憶されたパラメータの組から直接に夫々の状態における係数Rの値を取り出すことができる。例えば、パラメータの組における第1のパラメータは、送信器の起動時の係数Rの初期値として取り出され、インクリメントされた係数Rに関し、その後の値は、係数Rが1になるまでパラメータの組から取り出される。明らかに、係数調整部におけるオンライン処理の複雑さは、既知のパラメータから直接取り出すことにより本アプローチでは低減され得る。
【0048】
代替的に、係数調整部は、予め記憶された初期値から電力調整係数の初期値を生成し、予め記憶されたステップサイズだけ電力調整係数をインクリメントすることができる。すなわち、電力調整係数Rの初期値及びステップサイズΔは予め記憶されており、従って、予め記憶された初期値は、送信器の起動時に係数調整部の電力調整係数の初期値として直接的に決定され、電力調整係数は、予め記憶されたステップサイズΔを現在の電力調整係数に加えることによってインクリメントされる。特に、ステップサイズΔは、一定又は不定の値をとってよい。不定値の場合において、続いて起こるステップサイズΔは、前のステップサイズ以下であってよい。すなわち、よりMASK値に近いステップサイズΔは、より小さい値をとることができる。特に、予め記憶された初期値及びステップサイズは、実験的に導出されてよい。
【0049】
上述されたように、前置歪みモジュールは、複数回にわたり適応アルゴリズム検索を開始する。このとき、適応アルゴリズム検索は、様々な方法で開始されてよい。例えば、図9に表される実施例では、電力増幅装置は、電力増幅モジュール901の出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断するよう構成されるスペクトル検出モジュール904を更に有してよく、前置歪みモジュール902は、判断結果が、電力増幅モジュール901の出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合に、前置歪み自己適応アルゴリズム検索を開始又は再開する。すなわち、前置歪みモジュール902は、スペクトル検出モジュール904の判断結果に応答して自動的に自己適応アルゴリズム検索を開始することができる。
【0050】
例えば、送信器がオンされた後に、スペクトル検出モジュール904が電力増幅モジュール901の出力信号を検出し、その出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合わない場合は、前置歪みモジュール902は、自動的に自己適応アルゴリズム検索を開始し、収束条件が満足される場合には電力調整通知を送信する。次いで、電力調整モジュール903は、電力増幅モジュール901へ入力される信号の電力を昇圧し、然るに、電力増幅モジュール901の出力信号は変化する。これは、より高い値の高さへジャンプするスペクトルのサイドローブによって反映され得る(当然、その高さへジャンプするサイドローブはスペクトル条件を満足することができる。すなわち、ACLR値は、未調整状態に関し前置歪みモジュール902によって検索される係数α1により、MASKよりも低い。)。この時点で、前置歪みモジュール902は、このことをスペクトル検出モジュール904の出力結果から知り、現在検索されている係数α1がもはや適切ではないと気付いて、適応アルゴリズム検索を再開し、収束条件が満足される場合には再び電力調整通知を電力制御モジュール903へ送信することができる。この処理は繰り返されてよい。
【0051】
当然、図10に表されている他の実施例では、電力調整モジュール1003は、毎回電力調整係数を調整した後に、検索開始通知を前置歪みモジュール1002へ送信してよい。すなわち、前置歪みモジュール1002が適応アルゴリズム検索を開始するかどうかは、電力調整モジュール1003によって制御される。言い換えると、前置歪みモジュール1002は、電力調整モジュール1003から開始信号を受信したときにのみ、適応アルゴリズム検索を開始することができる。当然、前置歪みモジュール1002は、新たな適応アルゴリズム検索が開始されると、電力増幅モジュール1001の出力信号に応答して適応アルゴリズム検索を実行する。
【0052】
要約すると、毎回調整するための係数又は係数の初期値及びステップサイズを含む何らかのデータが、電力増幅よりも前の信号に対する電力調整のために、予め記憶される。本発明の実施例においては、電力調整係数の調整は、環境要因、装置のエージング又は他の要因による影響を回避するように、実際の状況に依存してオンラインで制御されてよい。
【0053】
これに関連して、本発明の実施例に従う電力増幅装置はスペクトル検出モジュールを更に有してよく、他の関連するモジュールは図9に表されているように接続される。図11を参照すると、フィードバックモジュール1104は、電力増幅モジュール1101からの出力される信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかを判断し、その判断結果を電力制御モジュール1103へフィードバックするよう構成される。ここで、前もってセットされたスペクトル条件は、出力信号のACLR値がMASKよりも小さいことであってよい。
【0054】
これに対して、係数調整部11031は、更に、電力増幅モジュール1101から出力される信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するとスペクトル検出モジュール1104が判断するまで、スペクトル検出モジュール1104の判断結果が、電力増幅モジュール1101から出力される信号が前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合には、電力調整係数の現在の値及び増分調整のためのステップサイズを低減し、且つ、前置歪み適応アルゴリズム検索を実行するよう前置歪みモジュール1102を起動又は再起動するために開始通知を前置歪みモジュール1002へ送信するよう構成されてよい。すなわち、電力調整モジュール1003は、毎回電力調整係数を調整した直後に再び適応アルゴリズム検索を実行するよう前置歪みモジュール1002を起動しなくてもよく、代わりに、毎回電力調整係数を調整した後に、電力増幅モジュール1101の出力信号のACLR値がMASKを超えるかどうかを最初に判断し、ACLR値がMASKを超えない場合には、再び適応アルゴリズム検索を実行するよう前置歪みモジュール1002を起動することができる。一方、ACLR値がMASKを超える場合には、MASKがもはや侵されなくなるまで、電力調整モジュール1003は、現在の電力調整係数及び電力調整のためのステップサイズを低減し、電力増幅モジュール1101の出力信号のACLR値がMASKを超えるかどうかをスペクトル検出モジュール1104により再び判断することができる。
【0055】
例えば、送信器の起動時に、電力制御モジュール1103の係数調整部11031は、最初に、予め記憶された初期値により動作を開始し、スペクトル検出モジュール1104は、電力増幅モジュール1101の出力信号のACLR値がこの時点でMASKを下回っているかどうかを判断することができる。ACLR値がMASKを下回っている場合には、電力制御モジュール1103は、前置歪み適応アルゴリズム検索を開始するよう前置歪みモジュール1102をトリガすることができる。一方、ACLR値がMASKを下回っていない場合には、係数調整部11031は、例えば、係数Rの初期値をR−β(0<β<R)へ調整し、出力信号のACLR値がMASKを下回る場合に前置歪み処理を開始するよう再び前置歪みモジュール1102を起動することによって、係数Rの初期値を低減することができる。
【0056】
次いで、係数Rの調整中に、出力信号のACLR値がこの時点でMASKを上回っているとスペクトル検出モジュール1104が気付いた場合には、係数調整部11031は、最初に、電力調整係数の現在の値及びステップサイズΔを低減することができ、次いで、スペクトル検出モジュール1104は、出力信号のスペクトルを検出することができる。そして、係数Rを更にインクリメントする次の時点で、現在の係数Rは、低減されたステップサイズΔだけ増大され得る。すなわち、Δ=γΔ(0<γ<1及び0<Δ<1)、その場合に、R=R−Δ。一方、ACLR値がMASKを上回っていない場合には、係数Rは、前のステップサイズによってインクリメントされ得る。
【0057】
例えば、Δ=0.1及びγ=0.5とし、係数Rが一度に0.6から0.7へインクリメントされ、この時点で、出力信号のACLR値がMASKを上回っているとスペクトル検出モジュール1104が気付いたとすると、ステップサイズΔは0.1×0.5=0.05に変更され、係数Rは0.7から0.7−0.05=0.65に低減される。次いで、スペクトル検出モジュール1104は、出力信号のACLR値が依然としてMASKを上回っているかどうかを判断し、もはやACLR値がMASKを上回っていない場合には、係数調整部11031は、0.65の係数Rにより適応アルゴリズム検索を実行して、検索された係数に基づき受信信号に対して前置歪みを実行するよう前置歪みモジュール1102をトリガする。そして、係数Rは、アルゴリズムの収束時に、0.65から0.7にインクリメントされる。一方、依然としてACLR値がMASKを上回っている場合には、Δは0.05×0.05=0.025に変更され、係数Rは0.65から0.65−0.025=0.625に低減される。以降、同様に続く。当然、これは単に一実施例にすぎず、他の実施形態は制限されない。
【0058】
実際の用途では、出力信号のACLR値が処理全体を通じてMASKに違反しないことを確かにするために、通常のMASKよりも厳しい「保護MASK」がスペクトル検出モジュール1104において更に設定されてよい。電力調整係数Rの現在の値、すなわち、ステップサイズは、電力調整係数Rの生成又は調整の間に保護MASKの違反が見つけられると変更される。具体的な変更方法は、上述されたものと同じであってよく、ここでは、繰り返しの記載は省略される。
【0059】
明らかに、上記のオンライン調整により解決法においては、電力調整係数及びステップサイズはフィードバックモジュールからのフィードバックに応答して調整され得るので、本発明の実施例に従う電力増幅装置は、環境要因(例えば、温度、湿度等)、装置のエージング又は他の要因に影響されず、それより、装置の有効性を改善する。
【0060】
更に、係数調整部11031がアルゴリズム検索を実行するよう前置歪みモジュール1102を起動し、前置歪みモジュール1102のアルゴリムが収束した後に、ACLR値は図8に表されるグラフ82の上又は近くにないという状況も起こり得る。このとき、前置歪みモジュール1102は、適応アルゴリズム検索を再開するよう指示され得る。検索が複数回にわたって開始された後にACLR値が依然として図8に表されるグラフ82の上又は近くにない場合には、係数調整部11031は、現在の係数Rを低減し、次いで、適応アルゴリズム検索を再開して、前置歪みアルゴリズムが収束し且つACLR値が図8に表されるグラフ82の上又は近くとなるまで、検索された係数により前置歪み処理を実行するよう、前置歪みモジュール1102を起動する。当然、係数Rは、係数が増大される範囲よりも小さい範囲で低減される。
【0061】
留意すべきは、図8に表されるグラフ82上の夫々の点におけるACLR値は、出力信号のACLR値がグラフ82の上又は近くにあるかどうかを判断するために、実験的に又は別なふうに再取得され得ることである。適応アルゴリズム検索が入力信号の特定の電力により実行される場合に、アルゴリズムが収束した後、出力信号のACLR値の実際の値が最初に取得され、次いで、その電力に対応する予め取得されたACLR値と比較され、それらの差が前もってセットされた範囲内にある場合には、ACLR値が図8に表されるグラフ82の上又は近くにあることが分かる。
【0062】
更に、留意すべきは、上記のシナリオにおいて特定の値に変更された電力調整係数により一度前置歪みモジュールがアルゴリズム検索を実行した後、収束後の信号のACLR値が要件を満たさないことがフィードバック信号から知られる場合に、電力調整係数を変更することなくアルゴリズム検索が再開されることである。当然、この処理においては、電力調整係数は値を変更されず(すなわち、電力増幅モジュールへ入力される信号は、電力が変わらない。)、アルゴリズム検索が再開されるたびに収束結果は変化しうる。これは、アルゴリズム検索自体が、特定の確率で特定の状態に達する多変数の最適化処理であるので、適応アルゴリズム自体によって決定される。従って、同じ環境においてさえアルゴリズム検索が再開されるたびに結果は変化しうる。
【0063】
以上、本発明の実施例に従う電力増幅装置について詳述してきた。前置歪み処理及び電力制御が電力増幅装置において組み合わされてよく、それにより、送信器の起動時に、電力増幅の出力信号は、電力制御による低サイドローブを含むスペクトルを与えられ得、このようにして、起動時にさえ低サイドローブを含むスペクトルを有する送信器を容易にする。
【0064】
更に、本発明の実施例は、電力増幅方法を更に提供する。図12は、本発明の実施例に従う電力増幅方法のフローチャートを表す。
【0065】
図12に表されるように、最初に、電力調整が、本実施例に従う電力増幅方法のステップS1201で、入力信号に対して行われる。特に、入力信号は、電力増幅装置へ入力信号を呼び、上述されたように、電力調整は、電力調整又は前置歪み処理が最初に実行されるかどうかに関わらず、電力増幅装置へ入力される信号に対して直接的又は間接的に実行される。次に、電力増幅が、ステップS1202で、電力調整を受けた信号に対して行われる。当然、ステップS1203は、更に、電力増幅に起因する非線形性を補償するよう、電力増幅の間、実行される。
【0066】
特に、非線形性の補償の間、前置歪み適応アルゴリズム検索が、電力増幅を受けた信号に対して行われ、収束条件が満足される場合には、電力調整通知が送信されてよい。これに対して、電力制御は、0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値が電力増幅装置の起動時に生成され、且つ、電力調整係数が1に調整されるまでは電力調整通知を受け取るたびに調整されるように、電力増幅よりも前に信号に対して実行されてよい。例えば、電力増幅よりも前の信号は、送信器の起動から電力を調整されてよく、0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値は送信器の起動時に生成されてよく、電力調整係数は、複数回にわたって増加的に調整された後に1に調整されるまでは、電力調整通知を受け取るたびに1以下であるインターバルにおいて一度増加的に調整されてよい。
【0067】
特に、電力調整係数は、1へと漸進的にインクリメントされる予め記憶されたパラメータの組から生成されてインクリメントされてよい。代替的に、電力調整係数の初期値は、予め記憶された初期値から生成されてよく、電力調整係数は、予め記憶されたステップサイズによってインクリメントされてよい。
【0068】
実施例において、前置歪み適応アルゴリズム検索は、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかを判断することによって、開始又は再開されてよい。代替的に、前置歪み適応アルゴリズム検索は、電力調整係数を調整した後に、開始又は再開されてよい。
【0069】
図13を参照すると、前置歪み適応アルゴリズム検索は、以下のように、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかを判断することによって開始又は再開され得る。
【0070】
最初に、ステップS1301において、電力調整係数は、極めて小さい初期値R(例えば、0に近い値)に設定され、送信器が起動される。
【0071】
次いで、ステップS1302において、前置歪みモジュールは、収束条件が満足されるまで、出力信号のスペクトルに依存する前置歪み処理の適応アルゴリズム検索を開始してよい。そして、ステップS1303において、係数Rが1に増大したかどうかが判断され、係数Rが1である場合には、フローはステップS1305に続く。係数Rが依然として1未満である場合には、フローはステップS1304に続く。
【0072】
ステップS1304において、係数調整部は、係数Rを増大させ、ステップS1302に戻ってよい。すなわち、前置歪みモジュールは、(例えば、出力信号のACLR値の動的な変化の検出時に)出力信号のスペクトルに依存する前置歪み処理の適応アルゴリズム検索を再開することができる。フローはステップS1305で終了する。
【0073】
更に、電力調整係数及びそのステップサイズは、出力信号のスペクトルに依存してオンラインで調整されてよい。具体的に、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかが判断されてよい。そして、判断結果が、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足しないというものである場合には、電力調整係数の現在の値及びその調整のためのステップサイズは、前もってセットされたスペクトル条件が満足されるまで低減され得る。次いで、前置歪み適応アルゴリズム検索が開始又は再開され得る。このオンライン調整法では、電力増幅方法は、環境要因(例えば、温度、湿度等)、装置のエージング又は他の要因に影響されない。
【0074】
特に、前もってセットされたスペクトル条件は、電力増幅を受けた信号の隣接チャネル漏れ比(ACLR)が前もってセットされた閾値を下回ることを含む。閾値は、スペクトル放射マスクMASK、又はMASKを下回る保護閾値であってよい。
【0075】
実際の用途においては、上記の動作は、図14に表されるフローチャートに従って、図11に表される電力増幅装置によって、上述されたようなオンライン調整により行われてよい。
【0076】
最初にステップS1401で、電力調整係数は、極めて小さい初期値R(例えば、0に近い値)に設定され、送信器が起動され、それにより、電力増幅モジュールへ入力される信号が電力を低減され得、前置歪みモジュールが非アクティブである場合でさえ出力信号のスペクトルがMASKに違反しないことが確かにされ得る。
【0077】
次に、出力信号のACLR値がMASKに違反しないことを確かにするために、ステップS1402において、出力信号のACLRがMASKに違反するかどうかがチェックされ、ACLRがMASKに違反する場合には、フローはステップS1403に続く。ACLR値がMASKに違反しない場合には、フローはステップS1404に続く。特に、ステップS1403において、初期値は低減される。例えば、R=R−ε(ε<R)。次いで、フローは、出力信号のACLRがMASKに違反するかどうかがチェックされるステップS1402に続く。
【0078】
ステップS1404において、前置歪み適応アルゴリズムは、収束条件(例えば、完全な収束、又は特定の状態への収束)が満足されるまで、更新のために開始される。
【0079】
次に、ステップS1405において、出力信号のACLRが十分に低いかどうかがチェックされる。ACLRが十分に低い場合には、フローはステップS1408に続く。ACLRが十分に低くない場合には、フローはステップS1406に続く。ステップS1406において、アルゴリズムが開始された回数が前もってセットされた閾値に達したかどうかがチェックされ、回数が閾値に達していない場合には、フローは、前置歪み処理の適応更新アルゴリズムを再開するステップS1404にジャンプする。回数が閾値に達した場合には、フローは、係数Rを減らすステップS1407に続く。例えば、R=R−ε(ε<R)。更に、フローはステップS1404にジャンプする。
【0080】
すなわち、前置歪みアルゴリズムが収束した後、ACLR値が図8に表されるグラフ82の近くにない場合には、前置歪み処理が再開され得る。複数回にわたって前置歪み処理が再開された後、依然としてACLR値が図8に表されるグラフ82の近くにない場合には、現在の係数Rが低減され、次いで、前置歪み処理は、前置歪み処理が収束し、且つ、ACLR値が図8に表されるグラフ82の近くになるまで、再開される。当然、係数Rは、係数が増大される範囲よりも小さい範囲で低減される。特に、図8に表されるグラフ82上の夫々の点におけるACLR値は、出力信号のACLR値が図8に表されるグラフ82の上又は近くにあるかどうかを判断するために、実験的に又は別なふうに予め取得されてよい。適応アルゴリズム検索が入力信号の特定の電力により実行される場合にアルゴリズムが収束した後、出力信号のACLRの実際の値が最初に取得され、次いで、その電力に対応する予め取得されたACLR値と比較される。それらの差が前もってセットされた範囲内にある場合には、ACLR値が図8に表されるグラフ82の上又は近くにあると分かる。
【0081】
ステップS1408において、係数Rがこの時点で1に増大されているかどうかがチェックされる。係数Rが1である場合には、フローはステップS1409に続く。係数Rが1未満である場合には、フローはステップS1410に続き、そして、フローはステップS1409で終了する。
【0082】
ステップS1410において、係数Rは増大される。例えば、R=R+Δ(0<Δ<1)。
【0083】
次に、ステップS1411において、出力信号のACLRがMASKに違反するかどうかがチェックされる。ACLRがMASKに違反する場合には、フローはステップS1412に続く。ACLRがMASKに違反しない場合には、フローはステップS1404に戻る。ステップS1412において、最初にステップサイズが、次いで係数Rの現在の値が、低減される。例えば、Δ=γ×Δ(0<γ<1)及びR=R−Δ。すなわち、係数Rが一度増大された後、増大のためのステップサイズが大きすぎるかどうかが判断され、大きすぎる場合には、ステップサイズは、出力信号がMASKに違反しないことを確かにするよう低減される。
【0084】
上記の電力増幅方法におけるステップは、電力増幅装置に含まれる夫々の構成要素における処理と同じであるから、それらの詳細についてはここでは記載されず、電力増幅装置の上記記載を参照されたい。
【0085】
更に、本発明の実施例は、上述されたように1へと漸進的にインクリメントされるパラメータの組を予め記憶することで係数Rを生成してインクリメントすることによって電力調整係数を取得する方法を更に提供する。本発明の実施例に従う電力調整係数の取得方法のフローチャートを表す図15を参照されたい。
【0086】
図15に表されるように、本発明の目下の実施形態に従う電力調整係数の取得方法においては、最初に、電力調整が、ステップS1501において、係数に従って入力信号に対して実行される。例えば、電力増幅よりも前の信号に対する電力制御は、送信器の起動時の電力制御の係数である前もってセットされた値から開始される。この値は、0よりも大きく1よりも小さい。
【0087】
次に、ステップS1502において、電力増幅が、電力調整を受けた信号に対して実行される。
【0088】
次いで、ステップS1502において、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかが判断され、スペクトル条件が満足される場合には、フローはステップS1505に続く。スペクトル条件が満足されない場合には、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するまで、フローは、係数を低減するステップS1504に続き、そして、フローは、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかを判断するステップS1503に戻る。次いで、フローはステップS1505に続く。特に、第1のスペクトル条件は、出力信号のACLR値がMASK又は保護MASKを超えないことであってよい。
【0089】
ステップS1505において、係数は、電力調整係数の状態値として決定される。
【0090】
次に、ステップS1506において、前置歪み適応アルゴリズム検索が、電力制御の係数である電力調整係数の現在決定されている状態値から開始される。
【0091】
次いで、ステップS1507において、収束条件が満足される場合に、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかが判断され、スペクトル条件が満足される場合には、フローはステップS1510に続く。スペクトル条件が満足されない場合には、フローはステップS1508に続く。ステップS1508では、検索が再開された回数が前もってセットされた閾値(例えば、5)を超えるかどうかが判断され、閾値を超えない場合には、フローは、前置歪み適応アルゴリズム検索を再開するステップS1506に戻る。閾値が超えられる場合には、フローは、電力制御のための係数を低減するステップS1509、そして、次にステップS1506に続く。当然、係数Rは、係数が増大される範囲よりも小さい範囲で低減されるべきである。
【0092】
特に、第2のスペクトル条件は、電力増幅を受けた信号の隣接チャネル漏れ比(ACLR)が前もってセットされた範囲になること、例えば、出力信号のACLRが図8に表されるグラフ82の上又は近くにあるかどうか、であってよい。すなわち、上記のステップS1507〜S1509によれば、前置歪みアルゴリズムが収束する場合に、出力信号のACLRが図8に表されるグラフ82の上又は近くにあるかどうかが更に判断されてよく、ACLRがグラフ82の上又は近くになる場合には、前置歪み処理が再開され得る。複数回にわたって検索が再開された後に、依然として出力信号のACLRが図8に表されるグラフ82の近くにない場合には、電力制御のために使用されている現在の値は低減されてよく、前置歪み処理は、出力信号のACLRが図8に表されるグラフ82の上又は近くにあるまで、再開されてよい。そして、対応する時点における係数は、電力調整係数の状態値として決定されてよい。当然、ステップS1507〜S1509は省略されてよい。すなわち、フローは、他の実施形態では、ステップS1506からステップS1510へ直接進んでよい。特に、図8に表されるグラフ82上の夫々の点におけるACLR値は、出力信号のACLR値がグラフ82の上又は近くにあるかどうかを判断するために、実験的に又は別なふうに予め取得されてよい。適応アルゴリズム検索が入力信号の特定の電力により実行される場合にアルゴリズムが収束した後、出力信号のACLRの実際の値が最初に取得され、次いで、その電力に対応する予め取得されたACLR値と比較される。それらの差が前もってセットされた範囲内にある場合には、ACLR値は図8に表されるグラフ82の上又は近くにあると分かる。
【0093】
ステップS1510において、電力制御のための係数が1であるかどうかが判断され、係数が1である場合には、フローは、フローが終了するステップS1512に(すなわち、係数が1に増大されるまで)続く。係数が1未満である場合には、フローはステップS1511に続く。
【0094】
ステップS1511において、電力制御のための係数は増大され、フローは、その係数により入力信号に対して電力調整を行うステップS1501に戻り、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するかどうかを判断することを続け、スペクトル条件が満足されない場合には、電力制御のための係数は、電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件を満足するまで低減される。
【0095】
上記の取得処理では、夫々の状態における電力調整係数の決定された値R(i=0,1,2,・・・,N(Nは正の整数))は記録されてよい。ここで、R=1。
【0096】
実際の用途では、夫々の状態における決定された値は、係数調整部において順次に記憶されてよく、このようにして、電力調整係数Rは、後続の処理において生成又はインクリメントされ得る。
【0097】
最初に、送信器が起動され、係数調整部は、Rの初期値により係数Rを生成する。次いで、係数調整部は、前置歪み適応アルゴリズム検索がその収束まで開始されることを可能にする命令を発する。そして、Rの値が、現在の前置歪み係数を保持している間、1に等しいかどうかがチェックされる。Rの値が1に等しい場合には、フローは終了する。Rの値が1未満である場合には、電力調整係数Rは、Rの新しい値へとインクリメントされる。
【0098】
更に、留意すべきは、上記の一連の処理及び装置は、また、ソフトウェア及び/又はファームウェアによって実施されてもよいことである。ソフトウェア及び/又はファームウェアによって実施される場合に、ソフトウェアを構成するプログラムは、記憶媒体から又はネットワークを介して専用のハードウェア構成を備えたコンピュータ(例えば、図16に表される汎用のパーソナルコンピュータ1600)にインストールされてよい。様々なプログラムをインストールされたコンピュータは様々な機能を実行することができる。
【0099】
図16において、中央演算処理装置(CPU)1601は、読出専用メモリ(ROM)1602に記憶されている又は記憶部1608からランダムアクセスメモリ(RAM)1603にロードされたプログラムに従って、様々な処理を実行する。CPU1601で実行される様々な処理等のために必要とされるデータも、必要に応じて、RAM1603に格納されてよい。
【0100】
CPU1601、ROM1602及びRAM1603は、バス1604を介して互いに接続されている。バス1604には、入出力インターフェース1605も接続されている。
【0101】
次の構成要素が入出力インターフェース1605に接続されている。すなわち、キーボード、マウス等を含む入力部1606、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ、スピーカ等を含む出力部1607、ハードディスク等を含む記憶部1608、及び例えば、LANカード、MODEM等のネットワークインターフェースカードを含む通信部1609である。通信部1609は、ネットワーク(例えば、インターネット等)を介して通信処理を行う。
【0102】
ドライバ1610も、必要に応じて、入出力インターフェース1605に接続される。リムーバブル媒体1611(例えば、磁気ディスク、光ディスク、磁気光学ディスク、半導体メモリ等)が、必要に応じて、ドライバ1610に組み込まれ、それにより、それから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて、記憶部1608にインストールされる。
【0103】
ソフトウェアで上記の一連の処理を実行する場合に、ソフトウェアを構成するプログラムは、ネットワーク(例えば、インターネット等)又は記憶媒体(例えば、リムーバブル媒体1611)等からインストールされる。
【0104】
当業者には明らかなように、記憶媒体は、プログラムが記憶され、且つ、そのプログラムをユーザに提供するよう装置とは別に与えられる、図16に表されているリムーバブル媒体1611に限られない。リムーバブル媒体1611の例には、(フロッピー(登録商標)ディスクを含む)磁気ディスク、(CD−ROM及びDVDを含む)光ディスク、(ミニディスク(登録商標)(MD)を含む)磁気光学ディスク、及び半導体メモリがある。代替的に、記憶媒体は、ROM1602、記憶部1608に含まれるハードディスク等であってよく、プログラムが記憶されており、記憶媒体を含む装置とともにユーザに与えられてよい。
【0105】
更に、留意すべきは、上記の一連の処理を実行するステップは、当然、記載される順序における時間系列で実行されてよいが、必ずしも時間系列で実行されなくてもよいことである。一部のステップは、並行に、又は互いから独立して、実行されてよい。
【0106】
本発明及びその利点について詳述してきたが、様々な変更、置換及び変形が、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の技術的範囲から逸脱することなく行われてよいことは明らかである。更に、語「有する」、「含む」又はそれらに類似する語は、一連の要素を含む処理、方法、物、又は装置がそれらの要素とともに、その処理、方法、物、又は装置に内在する要素や、明示的に挙げられていない要素を含むように、非排他的な包含を含むよう意図される。別なふうに述べられない限り、「・・・を有する」との表現で定義される要素は、その要素を含む処理、方法、物、又は装置における付加的な同一要素の存在を排除しない。
【0107】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
入力信号に対して電力調整を行うよう構成される電力制御モジュールと、
前記電力制御モジュールによる前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行うよう構成される電力増幅モジュールと、
前記電力増幅モジュールの非線形特性を補償するよう構成される前置歪みモジュールと
を有し、
前記電力制御モジュールは、前記前置歪みモジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合され、代替的に、前記前置歪みモジュールは、前記電力制御モジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合される、
電力増幅装置。
(付記2)
前記電力制御モジュールは、当該電力増幅装置の起動時にのみ電力調整係数に従って前記入力信号に対して電力調整を行う、
付記1に記載の電力増幅装置。
(付記3)
前記前置歪みモジュールは、前記電力増幅モジュールの出力信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を行い、検索された係数に基づいて前記入力信号に対して前置歪み処理を行い、収束条件が満たされる場合に前記電力制御モジュールへ電力調節通知を送信し、
前記電力制御モジュールは、
当該電力増幅装置がオンされる場合に0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値を生成し、前記電力調整係数が1に調整されるまで前記電力調整通知を受け取るたびに前記電力調整係数を調整するよう構成される係数調整部と、
受信信号に前記電力調整係数を乗じるよう構成される乗算部と
を有する、付記2に記載の電力増幅装置。
(付記4)
前記係数調整部は、前記電力調整係数の初期値を生成し、該初期値から予め記憶された1へと漸進的に増大するパラメータの組に従って前記電力調整係数を調整する、
付記3に記載の電力増幅装置。
(付記5)
前記係数調整部は、予め記憶された初期値に従って前記電力調整係数の初期値を生成し、予め記憶されたステップサイズを用いて前記電力調整係数に対して増分調整を行う、
付記3に記載の電力増幅装置。
(付記6)
前記電力増幅モジュールの出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断するよう構成されるスペクトル検出モジュールを更に有し、
前記前置歪みモジュールは、前記スペクトル検出モジュールの判断結果が、前記電力増幅モジュールの出力信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合に、前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を開始又は再開する、
付記3に記載の電力増幅装置。
(付記7)
前記電力増幅モジュールの出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断するよう構成されるスペクトル検出モジュールを更に有し、
前記スペクトル検出モジュールの判断結果が、前記電力増幅モジュールの出力信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合には、前記係数調整部は、前記前もってセットされたスペクトル条件に合うまで前記電力調整係数の現在値及び調整のためのステップサイズを低減し、開始通知を前記前置歪みモジュールへ送信し、
前記前置歪みモジュールは、前記電力制御モジュールからの前記開始通知に従って前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を開始又は再開する、
付記3に記載の電力増幅装置。
(付記8)
前記前もってセットされたスペクトル条件は、前記電力制御モジュールの出力信号の隣接チャネル漏れ比ACLRが前もってセットされた閾値よりも低いことを含む、
付記6又は7に記載の電力増幅装置。
(付記9)
前記閾値は、スペクトル放射マスクMASK又は該MASKよりも低い保護閾値である、
付記8に記載の電力増幅装置。
(付記10)
入力信号に対して電力調整を行い、
前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行い、
前記電力増幅の間に生じる非線形性を補償する
電力増幅方法。
(付記11)
電力調整は、電力増幅装置の起動時にのみ電力調整係数に従って前記入力信号に対して行われる、
付記10に記載の電力増幅方法。
(付記12)
前記電力増幅の間に生じる非線形性を補償することは、前記電力増幅を受けた信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズムの検査を行い、検索された係数に基づき前記入力信号に対して前置歪み処理を行い、収束条件が満足される場合に電力調整通知を送信することを含み、
前記入力信号に対して電力調整を行うことは、前記電力増幅装置がオンされる場合に0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値を生成し、前記電力調整係数が1に調整されるまで前記電力調整通知を受け取るたびに前記電力調整係数を調整し、受信信号に前記電力調整係数を乗じることを含む、
付記11に記載の電力増幅方法。
(付記13)
前記電力調整係数の初期値が生成され、前記電力調整係数が、前記初期値から予め記憶された1へと漸進的に増大するパラメータの組に従って調整される、
付記12に記載の電力増幅方法。
(付記14)
前記電力調整係数の初期値が、予め記憶された初期値に従って生成され、増分調整が、予め記憶されたステップサイズを用いて前記電力調整係数に対して行われる、
付記12に記載の電力増幅方法。
(付記15)
前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断し、
判断結果が、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合に、前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索が再開される、
付記12に記載の電力増幅方法。
(付記16)
前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断し、
判断結果が、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合に、前記電力調整係数の現在値及び調整のためのステップサイズは、前記前もってセットされたスペクトル条件に合うまで低減され、前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索は開始又は再開される、
付記12に記載の電力増幅方法。
(付記17)
電力調整係数を取得する方法であって、
0よりも大きく1よりも小さい係数に従って入力信号に対して電力調整を行い、
前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行い、
前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされた第1のスペクトル条件に合わない場合に、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされた第1のスペクトル条件に合うまで前記係数を低減して、該係数を電力調整係数の開始値であるよう決定し、
前記電力増幅の間に生じる非線形性を補償するよう、前記電力増幅を受けた信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズム検索を行い、
前記自己適応アルゴリズム検索が収束条件を満足する場合に前記係数を増大させ、
前記電力調整係数が1になるまで前記電力調整から前記係数の増大までの動作を繰り返し行う方法。
(付記18)
前記前もってセットされた第1のスペクトル条件は、前記電力増幅を受けた信号の隣接チャネル漏れ比ACLRが前もってセットされた閾値よりも低いことを含む、
付記17に記載の方法。
(付記19)
前記収束条件が満足される場合に、前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされた第2のスペクトル条件に合わないならば、前記前置歪み自己適応アルゴリズム検索を再開し、
再開の回数が前もってセットされた閾値に達し、且つ、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされた第2のスペクトル条件に依然として合わないならば、前記係数を減じた後、前記前置歪み自己適応アルゴリズム検索を再開し、
前記係数は、該係数が増大される範囲よりも小さい範囲で低減される、
付記17又は18に記載の方法。
(付記20)
前記前もってセットされた第2のスペクトル条件は、前記電力増幅を受けた信号の隣接チャネル漏れ比ACLRが前もってセットされた範囲内にあることを含む、
付記19に記載の方法。
【符号の説明】
【0108】
401,501,601,701,901,1001,1101 電力増幅モジュール
402,502,602,702,902,1002,1102 前置歪みモジュール
403,503,603,703,903,1003,1103 電力制御モジュール
6031,7031,9031,10031,11031 係数調整部
6032,7032,9032,10032,11032 乗算部
1104 スペクトル検出モジュール
1600 コンピュータ
1601 CPU
1602 ROM
1603 RAM
1604 バス
1605 入出力インターフェース
1606 入力部
1607 出力部
1608 記憶部
1609 通信部
1610 ドライバ
1611 リムーバブル媒体
R 電力調整計数
Δ ステップサイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対して電力調整を行うよう構成される電力制御モジュールと、
前記電力制御モジュールによる前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行うよう構成される電力増幅モジュールと、
前記電力増幅モジュールの非線形特性を補償するよう構成される前置歪みモジュールと
を有し、
前記電力制御モジュールは、前記前置歪みモジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合され、代替的に、前記前置歪みモジュールは、前記電力制御モジュールと前記電力増幅モジュールとの間に直列に結合される、
電力増幅装置。
【請求項2】
前記前置歪みモジュールは、前記電力増幅モジュールの出力信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を行い、検索された係数に基づいて前記入力信号に対して前置歪み処理を行い、収束条件が満たされる場合に前記電力制御モジュールへ電力調節通知を送信し、
前記電力制御モジュールは、
当該電力増幅装置がオンされる場合に0よりも大きく1よりも小さい電力調整係数の初期値を生成し、前記電力調整係数が1に調整されるまで前記電力調整通知を受け取るたびに前記電力調整係数を調整するよう構成される係数調整部と、
受信信号に前記電力調整係数を乗じるよう構成される乗算部と
を有する、請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記係数調整部は、前記電力調整係数の初期値を生成し、該初期値から予め記憶された1へと漸進的に増大するパラメータの組に従って前記電力調整係数を調整する、
請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項4】
前記係数調整部は、予め記憶された初期値に従って前記電力調整係数の初期値を生成し、予め記憶されたステップサイズを用いて前記電力調整係数に対して増分調整を行う、
請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記電力増幅モジュールの出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断するよう構成されるスペクトル検出モジュールを更に有し、
前記前置歪みモジュールは、前記スペクトル検出モジュールの判断結果が、前記電力増幅モジュールの出力信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合に、前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を開始又は再開する、
請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
前記電力増幅モジュールの出力信号が前もってセットされたスペクトル条件に合うかどうかを判断するよう構成されるスペクトル検出モジュールを更に有し、
前記スペクトル検出モジュールの判断結果が、前記電力増幅モジュールの出力信号が前記前もってセットされたスペクトル条件に合わないというものである場合には、前記係数調整部は、前記前もってセットされたスペクトル条件に合うまで前記電力調整係数の現在値及び調整のためのステップサイズを低減し、開始通知を前記前置歪みモジュールへ送信し、
前記前置歪みモジュールは、前記電力制御モジュールからの前記開始通知に従って前記前置歪み自己適応アルゴリズムの検索を開始又は再開する、
請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項7】
前記前もってセットされたスペクトル条件は、前記電力制御モジュールの出力信号の隣接チャネル漏れ比ACLRが前もってセットされた閾値よりも低いことを含む、
請求項5又は6に記載の電力増幅装置。
【請求項8】
前記閾値は、スペクトル放射マスクMASK又は該MASKよりも低い保護閾値である、
請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項9】
電力調整係数を取得する方法であって、
0よりも大きく1よりも小さい係数に従って入力信号に対して電力調整を行い、
前記電力調整を受けた信号に対して電力増幅を行い、
前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされた第1のスペクトル条件に合わない場合に、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされた第1のスペクトル条件に合うまで前記係数を低減して、該係数を電力調整係数の開始値であるよう決定し、
前記電力増幅の間に生じる非線形性を補償するよう、前記電力増幅を受けた信号に従って前置歪み自己適応アルゴリズム検索を行い、
前記自己適応アルゴリズム検索が収束条件を満足する場合に前記係数を増大させ、
前記電力調整係数が1になるまで前記電力調整から前記係数の増大までの動作を繰り返し行う方法。
【請求項10】
前記収束条件が満足される場合に、前記電力増幅を受けた信号が前もってセットされた第2のスペクトル条件に合わないならば、前記前置歪み自己適応アルゴリズム検索を再開し、
再開の回数が前もってセットされた閾値に達し、且つ、前記電力増幅を受けた信号が前記前もってセットされた第2のスペクトル条件に依然として合わないならば、前記係数を減じた後、前記前置歪み自己適応アルゴリズム検索を再開し、
前記係数は、該係数が増大される範囲よりも小さい範囲で低減される、
請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−80537(P2012−80537A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214659(P2011−214659)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】