説明

電力変換器、直流給電システムおよびその制御方法

【課題】負荷休止時間帯の電力消費を抑制して高い電力効率を得ることのできる直流給電システムを実現する。
【解決手段】第1の蓄電池(12)の充放電可能電圧範囲は直流バス(B)の母線電圧範囲を包含しており、各第1の動作電源および第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を制御する制御部(11)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭などの交流系統からは独立に制御可能な小規模エリアにおける直流給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広域に及ぶ交流系統範囲でIT技術を駆使することにより電力需給制御を行おうとするスマートグリッドが世界中で推進されている。一方、これとは独立に、デジタル家電などの直流家電が普及した家庭内などの小規模エリアでは、当該エリア内での電力システムを最適化しようとするマイクログリッドが提唱され、その計画が商用レベルで推進されている。
【0003】
太陽光発電は、これまで交流系統に連系したり、家庭内の交流配電と接続される必要があったことから、発電直流出力をパワーコンディショナによって交流電力に変換する必要があった。また、掃除機、洗濯機、エアコンディショナ、冷蔵庫などのようにモータを用いる家電機器や一般照明器具には交流電力の供給が適していた。しかし、昨今、家電のデジタル化が進んだことや照明のLED化が進められていること、TV装置や音響機器など元々機器内で交流−直流変換を行うことにより稼動していた家電機器などがあることから、家庭内においては必ずしも交流配電が優れているとは限らなくなった。例えば、交流で給電される家電機器は、内蔵する電源回路によって交流を直流に変換するので、交流−直流変換に伴う電力損失が発生するとともに、整流回路などは本来不要な部品であった。また、パワーコンディショナはインバータによって直流−交流変換を行うので、直流電力で稼動する機器にとっては余分な設備であって、インバータ内の損失が太陽光発電出力の利用効率向上を妨げていた。
【0004】
そこで、交流系統から受ける商用の配電システムの他に、外部からの直流給電により稼動する直流家電が接続される直流給電システムを一般家庭などの小規模エリア内に敷設することが提唱された。直流配電網では、図6に示す直流給電システム101のように、エアコンディショナ、TV装置などの直流機器130が、交流−直流変換を伴うことなく直接に、あるいは図示しないDC−DCコンバータを介してDCバスBに接続される。DCバスBには、太陽光発電装置110(例えば出力電圧100V〜380V)から直流−交流変換を伴うことなくDC−DCコンバータ120を介して直流電力が供給される。DCバスBの母線電圧は例えば380V〜400Vの一定範囲の電圧に保持されるよう制御される。また、昨今開発が進んだリチウムイオン電池などの蓄電池111が、DC−DCコンバータ121を介してDCバスBに接続可能に存在するようになったことで、余剰電力の蓄積が可能になり、直流給電システム101がますます現実的なものに押し上げられた。このように直流給電システムなどを導入することにより一般家庭内などの小規模エリア内における電力網の最適化を行う構想は前記マイクログリッドと呼ばれる。
【0005】
特許文献1には、直流給電路に蓄電池を備える場合の電力効率を改善した直流給電システムが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特許公開公報「特開2008−048470号公報:2008年2月28日公開」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の直流給電システム101においては、深夜にはほとんどの負荷が動作を停止し、実質的に待機電力のみを消費する状態となる。このときには、図6において、例えば蓄電池111がDCバスの漸次の電圧低下を補うように、貯蔵した電力をDC−DCコンバータ121を介してDCバスBに放電する。DC−DCコンバータ121は、蓄電池111の出力電圧(例えば30V〜60V)をDCバスBの電圧にまで昇圧する。
【0008】
しかしながら、このように深夜でもDC−DCコンバータを動作させる必要があるため、待機負荷にDC−DCコンバータの電力消費分が加わった電力が深夜に消費される。DC−DCコンバータの電力消費は、主にスイッチング損失である。この結果、図7に示すように、朝から夜にかけていくつかのピーク負荷を経た後に、深夜にほぼ負荷休止状態となったはずのシステムにおいても、無視できないほどの電力W0が消費される。
【0009】
このように、直流配電システムには、負荷休止時間帯でも一定以上の電力が消費されて、電力効率の向上が妨げられるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、負荷休止時間帯の電力消費を抑制して高い電力効率を得ることのできる直流給電システムおよびその制御方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
接続される直流機器に直流給電を行う直流給電システムであって、
上記直流給電の母線となる直流バスと、
上記直流バスに直流電力を供給する1つ以上の直流電力供給手段であって、第1の動作電源によって動作してそれぞれに定められた電圧範囲で直流出力を行う上記直流電力供給手段と、
上記直流バスとの間で充放電を行う第1の蓄電手段および第2の蓄電手段とを備えており、
直流電力発生装置と、上記第1の動作電源によって動作して上記直流電力発生装置と上記直流バスとの間に受け渡しする直流電力の電圧変換を行うように設けられた第1のDC−DCコンバータとを備えた上記直流電力供給手段が1つ以上含まれており、
上記第1の蓄電手段は、上記直流バスに直結された第1の蓄電池を備えており、
上記第2の蓄電手段は、第2の蓄電池と、第2の動作電源によって動作して上記第2の蓄電池と上記直流バスとの間で受け渡しする直流電力の電圧変換を行うように設けられた第2のDC−DCコンバータとを備えており、
上記直流バスの母線電圧範囲は、各上記直流電力供給手段から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲のそれぞれと、上記第2の蓄電手段から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲との和からなる1つの電圧範囲であり、
上記直流機器の動作可能電圧範囲は上記母線電圧範囲を包含しており、
上記第1の蓄電池の充放電可能電圧範囲は上記母線電圧範囲を包含しており、
各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を制御する制御部を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の発明によれば、第1の蓄電池の充放電可能電圧範囲が母線電圧範囲を包含しているので、母線電圧範囲の任意の電圧において第1の蓄電手段から直流バスへの電力供給を行うことができる。従って、軽負荷時には、制御部によって各第1の動作電源および第2の動作電源を遮断して各直流電力供給手段および第2の蓄電手段から直流バスへの電力供給を遮断することができる。これにより、各第1の動作電源および第2の動作電源を遮断した分だけ消費電力を削減することができる。
【0013】
以上により、負荷休止時間帯の電力消費を抑制して高い電力効率を得ることのできる直流給電システムおよびその制御方法を実現することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流電力供給手段として、上記第1の動作電源によって動作して交流系統の交流電力を直流電力に変換して上記直流バスに供給するAC−DCコンバータが備えられており、
上記制御部は上記AC−DCコンバータの動作電源の投入および遮断を制御することを特徴としている。
【0015】
上記の発明によれば、直流電力発生装置から直流バスへの電力供給を行うことができない場合に、交流系統から直流バスへ電力供給を行うことができるという効果を奏する。
【0016】
また、第1の蓄電手段から直流バスへの電力供給を行う間にAC−DCコンバータの動作を停止させることにより、交流配電網からの電力供給を止めるとともに、AC−DCコンバータの消費電力を削減することができるという効果を奏する。
【0017】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流バスの母線電圧を検出する電圧センサを備えており、
上記制御部は、供給される開始指示信号を受けて開始するとともに供給される終了指示信号を受けて終了する第1の制御モードであって、
供給される遮断指示信号を受けて各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のうちの動作しているものを遮断する遮断制御と、
上記遮断制御が行われた状態で、上記電圧センサによって検出された上記直流バスの母線電圧が上記母線電圧範囲の下限電圧を下回ると、各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧範囲の下限電圧を含む電圧範囲を分担するものから上記直流バスへの直流電力の供給を始めて、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第1の電源制御とを行う第1の制御モードで動作することが可能であり、
上記第1の制御モードの上記開始指示信号は上記遮断指示信号となることを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、制御部によって各第1の動作電源および第2の動作電源が遮断された状態において、直流バスの母線電圧が下限電圧より降下しても、必要最小限の電力供給によって直流バスを運転することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出する電流センサを備えており、
上記電流センサは、上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第1の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴としている。
【0020】
上記の発明によれば、直流機器がほとんど負荷電流を伴わない場合に、直流バスへの電力供給の遮断を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0021】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出する電流センサを備えており、
上記制御部は、上記第1の制御モードにおいて上記遮断制御が行われた状態で、上記電流センサによって上記負荷電流が所定値を超えたことが検出されると、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行うことを特徴としている。
【0022】
上記の発明によれば、直流機器がある程度の負荷電流を必要とする場合に、直流バスへの電力供給の再開を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0023】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記電流センサは、上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第2の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴としている。
【0024】
上記の発明によれば、直流機器がほとんど負荷電流を伴わない場合に、直流バスへの電力供給の遮断を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0025】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記制御部は、上記第1の制御モードで動作していないときに、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第3の電源制御を行う第2の制御モードで動作することが可能であることを特徴としている。
【0026】
上記の発明によれば、第2の制御モードでは、各直流電力供給手段および第2の蓄電手段によって、それぞれが分担する電圧範囲で直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記母線電圧範囲および上記充放電可能電圧範囲の各上限電圧は410Vであり、上記母線電圧範囲および上記充放電可能電圧範囲の各下限電圧は350Vであることを特徴としている。
【0028】
上記の発明によれば、太陽光発電装置やリチウムイオン電池といった汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近を用いて、直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0029】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記母線電圧範囲の上限電圧は410Vであるとともに上記母線電圧範囲の下限電圧は350Vであり、
上記充放電可能電圧範囲の上限電圧は380Vよりも380Vの8%以上だけ大きい電圧であるとともに、上記充放電可能電圧範囲の下限電圧は380Vよりも380Vの8%以上だけ小さい電圧であることを特徴としている。
【0030】
上記の発明によれば、太陽光発電装置やリチウムイオン電池といった汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近を用いて、直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0031】
また、第1の蓄電池の充放電可能電圧範囲が、実用的な電圧範囲で母線電圧範囲よりも広くなるため、母線電圧の変化に対して第1の蓄電池の動作マージンを適切に設定することができるという効果を奏する。
【0032】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流電力発生装置として太陽光発電装置が備えられており、
上記太陽光発電装置を備える上記直流電力発生装置から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲は、上記太陽光発電装置と上記直流バスとの間の直流電力の受け渡しをする上記第1のDC−DCコンバータによって400V±10Vに制御されることを特徴としている。
【0033】
上記の発明によれば、汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近を用いて、直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0034】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流電力供給手段として、交流系統の交流電力を直流電力に変換して上記直流バスに供給するAC−DCコンバータが備えられており、
上記AC−DCコンバータから上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲は、上記AC−DCコンバータによって380V±10Vに制御されることを特徴としている。
【0035】
上記の発明によれば、交流電力を汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近に変換して用いるので、直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0036】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記第2の蓄電手段から上記直流バスへ供給する直流電力の電圧範囲は、上記第2のDC−DCコンバータによって360V±10Vに制御されることを特徴としている。
【0037】
上記の発明によれば、この構成によれば、直流バスの最も低い電圧範囲を分担することからベース電力を貯蔵することができるので、直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【0038】
本発明の直流給電システムは、上記課題を解決するために、
上記直流電力発生装置として太陽光発電装置が備えられていることを特徴としている。
【0039】
上記の発明によれば、太陽光発電装置を、発電電力の利用効率をあまり低下させずに直流給電システムに好適に利用することができるという効果を奏する。
【0040】
本発明の直流給電システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
上記直流給電システムを制御する直流給電システムの制御方法であって、
上記直流バスの母線電圧を検出し、
上記制御部に、供給される開始指示信号を受けて開始するとともに供給される終了指示信号を受けて終了する第1の制御モードであって、
供給される遮断指示信号を受けて各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のうちの動作しているものを遮断する遮断制御と、
上記遮断制御が行われた状態で、上記直流バスの母線電圧が上記母線電圧範囲の下限電圧を下回ると、各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧範囲の下限電圧を含む電圧範囲を分担するものから上記直流バスへの直流電力の供給を始めて、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第1の電源制御とを行う第1の制御モードで動作させ、
上記第1の制御モードの上記開始指示信号は上記遮断指示信号となることを特徴としている。
【0041】
上記の発明によれば、制御部によって各第1の動作電源および第2の動作電源が遮断された状態において、直流バスの母線電圧が下限電圧より降下しても、必要最小限の電力供給によって直流バスを運転することができるという効果を奏する。
【0042】
本発明の直流給電システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出し、
上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第1の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴としている。
【0043】
上記の発明によれば、直流機器がほとんど負荷電流を伴わない場合に、直流バスへの電力供給の遮断を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0044】
本発明の直流給電システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出し、
上記制御部に、上記第1の制御モードにおいて上記遮断制御が行われた状態で、上記負荷電流が所定値を超えたことを検出すると、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行わせることを特徴としている。
【0045】
上記の発明によれば、直流機器がある程度の負荷電流を必要とする場合に、直流バスへの電力供給の再開を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0046】
本発明の直流給電システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第2の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴としている。
【0047】
上記の発明によれば、直流機器がほとんど負荷電流を伴わない場合に、直流バスへの電力供給の遮断を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0048】
本発明の直流給電システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
上記制御部に、上記第1の制御モードで動作していないときに、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行う第2の制御モードで動作させることを特徴としている。
【0049】
上記の発明によれば、第2の制御モードでは、各直流電力供給手段および第2の蓄電手段によって、それぞれが分担する電圧範囲で直流バスを効率よく運転することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0050】
この発明によれば、負荷休止時間帯の電力消費を抑制して高い電力効率を得ることのできる直流給電システムおよびその制御方法を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、直流給電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、図1の直流給電システムにおける1日の電力使用量の変化を表す負荷曲線を示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態を示すものであり、第1の蓄電池の充電量と電圧との関係を説明するグラフである。
【図4】本発明の実施形態を示すものであり、図1の直流給電システムによる第1の制御モード時の動作を電圧および電流との関係で示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態を示すものであり、(a)はDC−DCコンバータの構成を示す回路ブロック図、(b)は(a)のDC−DCコンバータの制御信号の波形図である。
【図6】従来技術を示すものであり、直流給電システムの構成を示すブロック図である。
【図7】従来技術を示すものであり、図6の直流給電システムにおける1日の電力使用量の変化を表す負荷曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態について図1ないし図5を用いて説明すれば、以下の通りである。
【0053】
図1に、本実施形態に係る直流給電システム1の構成を示す。
【0054】
直流給電システム1は、接続される直流機器30に直流給電を行うものである。直流給電システム1は、一例として一般家庭内における配電システムとして示されている。当該直流給電システム1は、DCバス(直流バス)B、太陽光発電装置(直流電力発生装置:図中「ソーラー」と表記)10、制御器(制御部)11、蓄電池(第1の蓄電手段、第1の蓄電池)12、蓄電池(第2の蓄電池)13、電圧センサ14、電流センサ15、DC−DCコンバータ(第1のDC−DCコンバータ)20、DC−DCコンバータ(第2のDC−DCコンバータ)22、および、AC−DCコンバータ(直流電力供給手段)23を備えている。
【0055】
直流機器30は、エアコンディショナやTV装置などの直流電力で動作する、直流家電などの負荷機器である。ここでは、一例として、直流機器30が350V−410Vの直流電圧で動作するものとする。当該直流機器30は、DCバスBにDC−DCコンバータを介することなく接続される。なお、直流機器30は、DCバスBにDC−DCコンバータを介することなく接続されていなくとも、電源スイッチなどのスイッチを介してDCバスBに接続されていてよい。
【0056】
また、上記例以外に、(1)DCバスBにDC−DCコンバータを介して接続される他の直流機器が存在する、あるいは、(2)直流機器としてDCバスBにDC−DCコンバータを介して接続される直流機器のみが存在する、のいずれかであってもよい。(1)および(2)の場合には当該DC−DCコンバータが直流給電システム1の構成要素に含まれる。
【0057】
DCバスBは、直流給電システム1の母線として直流機器30に供給する電力を搬送する。ここでは、DCバスBに直結される直流機器30に電力を供給する目的があることから、DCバスBの母線電圧範囲は直流機器30の動作電圧範囲内、すなわちここでは直流350V〜410Vの電圧範囲内、に設定される。また、前記(1)の場合には、DCバスBの母線電圧範囲はDCバスBにDC−DCコンバータを介することなく接続される直流機器30の動作電圧範囲に設定される。
【0058】
太陽光発電装置10は、DCバスBに発電した直流電力を供給する。太陽光発電装置10は、セルアレイ数に応じた直流の出力電圧、例えば100V−380Vを出力する。当該出力電圧はDCバスBへの電力供給に際して直流−交流変換が行われる必要がない。従って、当該出力電圧は、太陽光発電装置10とDCバスBとの間で受け渡しする直流電力の電圧変換を行うDC−DCコンバータ20によって、DCバスBの母線電圧に変換される。太陽光発電装置10とDC−DCコンバータ20とは、直流バスに直流電力を供給する直流電力供給手段を構成している。DC−DCコンバータ20は、ここでは太陽光発電装置10の出力電圧をDCバスBの母線電圧に昇圧する昇圧コンバータからなる。DC−DCコンバータ20は、DC−DCコンバータ20に個別に割り当てられた動作電源(第1の動作電源:図示せず)によって動作する。当該動作電源の投入および遮断は、制御器11から供給される制御信号ps1によって制御される。なお、DC−DCコンバータ20は、太陽光発電装置10の出力電圧をDCバスBの母線電圧に降圧する降圧コンバータからなっていてもよい。
【0059】
ここでは、太陽光発電装置10の出力電圧100V−380VはDC−DCコンバータ20によって400V±10Vの範囲で変換される。これにより、DCバスBの母線電圧は400V±10Vの電圧範囲に制御される。このように、太陽光発電装置10とDC−DCコンバータ20とは、母線電圧範囲350V−410Vのうち390V−410Vを分担する。この構成によれば、汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近を用いて、DCバスBを効率よく運転することができる。
【0060】
太陽光発電装置10が直流電力発生装置として設けられているので、発電電力の利用効率をあまり低下させずに直流給電システム1に好適に利用することができる。また、図示しないが、太陽光発電装置10が商用交流系統に連系されて、発電した電力の売電が行えるようになっていてもよい。直流電力供給手段として、太陽光発電装置10が必ずしも備えられている必要はない。また、第1のDC−DCコンバータと組み合わされて直流電力供給手段となる直流電力発生装置として、燃料電池などの化学燃料発電装置や、風力発電装置などの自然エネルギー発電装置(最終出力を直流とする)なども可能である。
【0061】
蓄電池12は、任意の2次電池で構成される。蓄電池12として、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)などが使用可能である。
【0062】
図1の蓄電池12の充電可能電圧範囲は、例えば350V−410Vである。ここでは、上記充放電可能電圧範囲の上限電圧は母線電圧の上限電圧と同じ410Vであり、上記充放電可能電圧範囲の下限電圧は母線電圧の下限電圧と同じ350Vであるが、充電可能電圧範囲はこれには限らない。蓄電池12の充電可能電圧範囲は、母線電圧範囲350V−410Vの中心電圧である380Vよりも380Vの8%以上だけ大きい上限電圧と、当該中心電圧380Vよりも380Vの8%以上だけ小さい下限電圧を有していてもよい。すなわち、蓄電池12の充電可能電圧範囲は、DCバスBの母線電圧範囲を包含している。これらの構成によれば、太陽光発電装置やリチウムイオン電池といった汎用の電力供給源の取り扱い電圧付近を用いて、直流バスを効率よく運転することができる。また、蓄電池12の充電可能電圧範囲は、DCバスBの母線電圧範囲を上述のように包含している場合には、蓄電池12の充放電可能電圧範囲が、実用的な電圧範囲で母線電圧範囲よりも広くなるので、母線電圧の変化に対して第1の蓄電池の動作マージンを適切に設定することができる。
【0063】
蓄電池12は、DCバスBに常時直結されており、DCバスBとの間で充放電を行う。蓄電池12とDCバスBとが互いに直結されているので、いずれか一方の電圧が他方の電圧よりも高い状態になると、電圧の高いほうから低いほうへ電力供給が行われて互いの電圧が等しくなるように互いの間で電流が流れる。図3に、蓄電池12の充電量と電圧との関係を示す。蓄電池12の充電可能電圧範囲が、DCバスBの母線電圧範囲(例えば350V−410V)を包含しているので、DCバスBが母線電圧範囲の任意の電圧にある場合でも、蓄電池12はDCバスBとの間で電力のやり取りを行うことが可能である。
【0064】
蓄電池13も蓄電池12と同様の2次電池で構成される。但し、蓄電池13の充電可能電圧は、DCバスBの母線電圧範囲の値よりも小さく、例えば30V−60Vの範囲にある。すなわち、充電可能電圧範囲で比較して、蓄電池12が高電圧蓄電池であるのに対して、蓄電池13は低電圧蓄電池である。また、蓄電池13は直流給電システム1のベース電力を貯蔵する大容量蓄電池であり、一般に、蓄電池12よりも容量が大きい。蓄電池13は、蓄電池13とDCバスBとの間で受け渡しする電力の電圧変換を行うDC−DCコンバータ22を介してDCバスBとの間で充放電を行う。蓄電池13とDC−DCコンバータ22とは第2の蓄電手段を構成している。
【0065】
ここでは、蓄電池13の出力電圧30V−60VはDC−DCコンバータ22によって360V±10Vの範囲で変換される。これにより、DCバスBの母線電圧は360V±10Vの電圧範囲に制御される。このように、蓄電池13とDC−DCコンバータ22とは、母線電圧範囲350V−410Vのうち350V−370Vを分担する。この構成によれば、DCバスBの最も低い電圧範囲を分担することからベース電力を貯蔵することができるので、DCバスBを効率よく運転することができる。
【0066】
このように、蓄電池12は高電圧小容量の蓄電池であり、蓄電池13は低電圧大容量の蓄電池である。蓄電池12が高電圧小容量の蓄電池であるので、ベース電力を貯蔵する大容量の蓄電池13の役割を阻害することなく、深夜などの軽負荷時の電力供給源として適切な容量を提供することができる。また、蓄電池12は高電圧蓄電池であるがゆえに小容量とすることで危険性の増大を抑制することが可能である。
【0067】
また、蓄電池13は低電圧蓄電池であることから、一般家庭内や限られたスペースで用いる場合の安全性が高い。DC−DCコンバータ22は、DCバスBから蓄電池13への充電を行うときに動作する降圧コンバータと、蓄電池13からDCバスBへの放電を行うときに動作する昇圧コンバータとが組み合わされた双方向DC−DCコンバータである。DC−DCコンバータ22は、DC−DCコンバータ22に個別に割り当てられた動作電源(第2の動作電源:図示せず)によって動作する。当該動作電源の投入および遮断は、制御器11から供給される制御信号ps2によって制御される。蓄電池12は直流給電システム1に常時接続されて使用される。
【0068】
AC−DCコンバータ23は、交流配電網40の交流電力を直流電力に変換してDCバスBに供給する。この交流配電網は、例えば商用交流系統から家屋内に引き込まれた単相3線による交流200Vの電源である。AC−DCコンバータ23として、ここではDCバスBの母線電圧が交流配電網40の交流電圧の整流電圧よりも大きいため昇圧型コンバータが用いられるが、DCバスBの母線電圧が交流配電網40の交流電圧の整流電圧よりも小さい場合には降圧型コンバータが用いられる。AC−DCコンバータ23は、AC−DCコンバータ23に個別に割り当てられた動作電源(第1の動作電源:図示せず)によって動作する。当該動作電源の投入および遮断は、制御器11から供給される制御信号ps3によって制御される。AC−DCコンバータ23は、必ずしも設けられる必要はない。
【0069】
ここでは、交流配電網40の交流電圧200VはAC−DCコンバータ23によって380V±10Vの範囲で変換される。これにより、DCバスBの母線電圧は390V±10Vの電圧範囲に制御される。このように、AC−DCコンバータ23は、母線電圧範囲350V−410Vのうち370V−390Vを分担する。
【0070】
このように、DCバスBの母線電圧範囲は、各直流電力供給手段からDCバスBに供給される直流電力の電圧範囲のそれぞれと、第2の蓄電手段からDCバスBに供給される直流電力の電圧範囲との和からなる1つの電圧範囲である。また、直流機器30の動作可能電圧範囲が上記母線電圧範囲を包含していれば、母線電圧が母線電圧範囲のどこにあっても直流機器30は動作可能である。
【0071】
なお、以上の電圧範囲の分担は一例であり、どのような機器がどのような電圧範囲を分担するかは適宜設定可能である。従って、互いに重なる電圧範囲を有する複数の機器が存在していてもよい。
【0072】
電圧センサ14はDCバスBの母線電圧を検出し、電圧検出信号s1を制御器11に供給する。電流センサ15はDCバスBから直流機器30に流れる電流の総和である負荷電流を検出し、電流検出信号s2を制御器11に供給する。
【0073】
制御器11は、直流給電システム1の給電制御を行う。給電制御として、ここでは通常負荷時制御モード(第2の制御モード)と軽負荷時制御モード(第1の制御モード)との2種類の動作を行う。制御器14は、ユーザの各種操作を受け付け可能なように、例えば1つの制御盤に収められていてもよい。
【0074】
通常負荷時制御モードは、朝から夜にかけての住人が活動する時間帯のように、通常量の負荷が稼動している場合に適合する給電制御モードである。軽負荷時制御モードは、深夜などの住人が活動を停止している時間帯のように、待機負荷程度の軽負荷が稼動しているあるいは無負荷の場合に適合する給電制御モードである。通常負荷であるか、軽負荷であるかはユーザの都合により決定されるので、1日のどの時間帯を通常負荷時制御モードで動作させるか軽負荷時制御モードで動作させるかは、ユーザによって適宜決定可能である。
【0075】
次に、制御器11の給電制御モードを詳細に説明することによって、直流給電システム1の給電制御を説明する。
【0076】
通常負荷時制御モードでは、制御器11は、予め定められたシーケンスに従って各電力供給手段および第2の蓄電手段のうちの母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによってDCバスBに直流電力が供給されるように、電力供給手段および第2の蓄電手段の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する電源制御(第3の電源制御)を行う。例えば、日中に日照量が十分で太陽光発電装置10からの電力供給が可能であれば、制御器11は、太陽光発電装置10からの発電量情報を参照するなどして、DC−DCコンバータ20の動作電源を投入する一方、DC−DCコンバータ22およびAC−DCコンバータ23の各動作電源を遮断する。このとき、母線電圧は400V±10Vの範囲に制御される。また、例えば日中に日照量が十分でない場合や、夜間などには、太陽光発電装置10からの発電量情報を得るなどして、AC−DCコンバータ23の動作電源を投入する一方、DC−DCコンバータ20およびDC−DCコンバータ22の各動作電源を遮断する。このとき、母線電圧は380V±10Vの範囲に制御される。
【0077】
また、蓄電池13からDCバスBへの電力供給についても、DC−DCコンバータ22の動作電源を投入する一方、DC−DCコンバータ20およびAC−DCコンバータ23の各動作電源を遮断してもよい。しかしここでは、蓄電池13は、太陽光発電装置10や交流配電網40からの電力供給のベース電力を賄うためにベース電力貯蔵用として機能させたいという目的がある。従って、通常負荷時制御モードでは、太陽光発電装置10や交流配電網40からの電力供給が行われている間に、DCバスBから充電電力を得るためにDC−DCコンバータ22の動作電源が投入されるのが有利である。また、蓄電池13は、太陽光発電装置10および交流配電網40からの電力供給が不能になった場合には、蓄電池13からDCバスBへ放電電力を与えるという非常用途にも適している。
【0078】
通常負荷時制御モードでは、各直流電力供給手段および第2の蓄電手段によって、それぞれが分担する電圧範囲で直流バスを効率よく運転することができる。
【0079】
通常負荷時制御モードは、ユーザによる通常負荷時制御モードの開始指示に伴って発生する開始指示信号が制御器11に供給されることで開始されてもよい。通常負荷時制御モードの終了についても、ユーザによる通常負荷時制御モードの開始指示で行うことができる。本実施形態では、通常負荷時制御モード用に設けた開始指示および終了指示は存在せず、次に説明する軽負荷時制御モードを行う期間以外であれば、必然的に通常負荷時制御モードで動作するようになっている。
【0080】
次に、軽負荷時制御モードでは、制御器11は、遮断制御と電源制御(第1の電源制御)とを行う。遮断制御では、制御器11に供給される遮断指示信号を受けて、DC−DCコンバータ20、DC−DCコンバータ22、および、AC−DCコンバータ23の各動作電源のうちの動作しているものを遮断する制御を行う。軽負荷時制御モードの開始指示信号は上記遮断指示信号となり、軽負荷時制御モードが開始されるときには、まず遮断制御が開始される。電源制御では、遮断制御が行われた状態で、電圧センサ14からの電圧検知信号s1によってDCバスBの母線電圧が母線電圧範囲の下限電圧350Vを下回ることが制御器11に伝達されると、各電力供給手段および第2の蓄電手段のうちの母線電圧範囲の下限電圧350Vを含む電圧範囲を分担する第2の蓄電手段からDCバスBへの直流電力の供給を始めるように、DC−DCコンバータ22の動作電源を投入する制御を行う。そして、電源制御では、この後に、予め定められたシーケンスに従って、各電力供給手段および第2の蓄電手段のうちの母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによってDCバスBに直流電力が供給されるように、各動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する。この構成によれば、制御器11によって各動作電源が遮断された状態において、DCバスBの母線電圧が下限電圧より降下しても、必要最小限の電力供給によってDCバスBを運転することができる。
【0081】
また、軽負荷時制御モードにおいて制御器11が電源制御を行っているときに、電流センサ15からの電流検知信号s2によってDCバスBから直流機器30へ流れる負荷電流が1A以下といった所定値以下になったことが制御器11に伝達されるとする。このような場合に、電流検知信号s2が前記遮断指示信号となり、制御器11が再び遮断制御を行うようにしてもよい。当該遮断制御が行われれば、電圧センサ14からの電圧検知信号s1によってDCバスBの母線電圧が母線電圧範囲の下限電圧350Vを下回ることが制御器11に伝達されると、再び電源制御が行われる。この構成によれば、直流機器30がほとんど負荷電流を伴わない場合に、DCバスBへの電力供給の遮断を効率よく行うことができる。なお、負荷電流が所定値以下になったときに電流センサ15が制御器11に遮断制御信号を供給する構成は、制御器11に必ずしも備わっていなくてよい。
【0082】
さらに、制御器11は、軽負荷時制御モードにおいて遮断制御が行われた状態で、電流センサ15によって負荷電流が1Aといった所定値を超えたことが検出されると、第1の電源制御とは異なる電源制御である第2の電源制御を行ってもよい。第2の電源制御では、予め定められたシーケンスに従って各電力供給手段および第2の蓄電手段のうちの母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによってDCバスBに直流電力が供給されるように、各動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する。この構成によれば、直流機器30がある程度の負荷電流を必要とする場合に、DCバスBへの電力供給の再開を効率よく行うことができる。
【0083】
軽負荷時制御モードは、ユーザによる軽負荷時制御モードの開始指示に伴って発生する開始指示信号が制御器11に供給されることで開始されてもよい。軽負荷時制御モードの終了についても、ユーザによる軽負荷時制御モードの開始指示で行うことができる。
【0084】
図4に、軽負荷時制御モードによるDCバスBの電圧変化の一例を示す。
【0085】
時刻t1では、それまで負荷電流が1A以下であることから各動作電源が遮断されていたものが、負荷電流が1Aを超えたため、DC−DCコンバータ22の動作電源が投入(スタート)された例を示す。時刻t1−t2の期間には、350V−370Vの電圧範囲においてDC−DCコンバータ22の動作電源のみが投入され、370V−390Vの電圧範囲においてAC−DCコンバータ23の動作電源のみが投入され、390V−410Vの電圧範囲においてDC−DCコンバータ20の動作電源のみが投入される。時刻t2では、負荷電流が1A以下となったために、そのときに動作していたDC−DCコンバータ20の動作電源が遮断(ストップ)され、全ての動作電源が遮断された状態となった例が示されている。時刻t2−t3の期間には、負荷電流が1A以下であることから各動作電源は遮断されたままとなる。従って、直流機器30の待機負荷などに起因してDCバスBの電圧が低下していき、その電圧低下分を補うように蓄電池12からDCバスBへの放電が行われる。時刻t3では、母線電圧が下限電圧350Vを下回ったこと、あるいは、負荷電流が1Aを超えたことにより、DC−DCコンバータ22の動作電源が投入(スタート)された例を示す。期間t3−t4には期間t1−t2と同様の制御が行われる。時刻t4では、負荷電流が1A以下となったために、そのときに動作していたDC−DCコンバータ22の動作電源が遮断(ストップ)され、全ての動作電源が遮断された状態となった例が示されている。時刻t4以降は、負荷電流が1A以下であることから全ての動作電源が遮断された状態が維持される。
【0086】
以上のような軽負荷時制御モードを、深夜に適用することによって、直流給電システム1は、深夜においてDC−DCコンバータ20・22およびAC−DCコンバータの動作電源が随時停止されることで、従来よりも深夜の消費電力が削減される。直流給電システム1には、太陽光発電装置10とDCバスBとの間にDC−DCコンバータ20が設けられているが、太陽光発電装置10の出力電圧がDCバスBの母線電圧と等しくなくても、従来のような直流−交流変換が不要であるし、負荷休止期間にはDC−DCコンバータ20の動作電源を停止することができるので、消費電力を極力抑制することができる。
【0087】
これにより、1日の消費電力の変化を示す図2の負荷曲線に示すように、朝から夜にかけての期間T1では通常負荷時制御モードによって従来と同様の電力消費を行う一方、深夜から朝にかけての期間T2には消費電力がW1となり、図7の消費電力W0よりも小さくなる。軽負荷時制御モードを深夜以外に適用する場合にも、同様の消費電力の削減が達成されることはもちろんである。
【0088】
これにより、負荷休止時間帯の電力消費を抑制して高い電力効率を得ることのできる直流給電システムおよびその制御方法を実現することができる。
【0089】
次に、図5(a)に、前記DC−DCコンバータ20・22に用いられるDC−DCコンバータの基本構成を示す。当該DC−DCコンバータの基本構成は、コンバータ部201と制御部202とを備えている。
【0090】
コンバータ部201は、例えば、チョークコイル201a、スイッチングトランジスタ201b、および、スイッチングトランジスタ201cを備えている。コンバータ部201の活性ライン上に、チョークコイル201aを入力側としてチョークコイル201aとスイッチングトランジスタ201cとが直列に接続されている。スイッチングトランジスタ201bは、チョークコイル201aとスイッチングトランジスタ201cとの接続点と、コモンラインとの間に接続されている。
【0091】
制御部202は、スイッチングトランジスタ201bの制御端子であるゲート端子に、図5(b)で示される制御信号X1を入力して、スイッチングトランジスタ201bの導通遮断を制御する。また、制御部202は、スイッチングトランジスタ201cの制御端子であるゲート端子に、図5(b)で示される制御信号X2を入力して、スイッチングトランジスタ201cの導通遮断を制御する。制御信号X1・X2のそれぞれはアクティブレベル(ここではHigh)と非アクティブレベル(ここではLow)との2値電圧により構成されている。制御信号X1のアクティブ期間と制御信号X2のアクティブ期間とは互いに重ならない。
【0092】
図5(a)のDC−DCコンバータに直流電圧が入力された状態で、制御信号X1がアクティブレベルになるとともに制御信号X2が非アクティブレベルになると、スイッチングトランジスタ201bが導通状態になるとともにスイッチングトランジスタ201cが遮断状態となる。従って、チョークコイル201aとスイッチングトランジスタ201bとを通して電流が流れる。このとき、チョークコイル201aには、スイッチングトランジスタ201bの導通期間の最後に流れる電流値によって決まる磁気エネルギーが蓄積される。この状態から、制御信号X1が非アクティブレベルになるとともに、制御信号X2がアクティブレベルになると、スイッチングトランジスタ201bが遮断状態になるとともにスイッチングトランジスタ201cが導通状態となる。このとき、チョークコイル201aに蓄積されていた磁気エネルギーはスイッチングトランジスタ201cを通して流れる電流によって電気エネルギーとして放出され、図示しないキャパシタなどで平滑化された直流出力となる。
【0093】
チョークコイル201aとスイッチングトランジスタ201bとを通して流れる電流は、スイッチングトランジスタ201bの導通抵抗が小さい場合に、およそ、入力電圧とチョークコイル201aの自己インダクタンスとに依存する比例定数を有するように増大する。すなわち、チョークコイル201aに蓄積される磁気エネルギーの大きさは、スイッチングトランジスタ201bの導通期間の長さに応じて変化する。従って、スイッチングトランジスタ201bの導通期間の長さと、スイッチングトランジスタ201cの導通期間の長さとを調節することにより、DC−DCコンバータの出力電圧の大きさを制御することができる。これにより、図5(a)の基本構成は、昇圧コンバータとしても降圧コンバータとしても使用することができる。DC−DCコンバータ20は前記例では昇圧コンバータのみからなるので、図5(a)の基本構成を1つ備えていればよい。DC−DCコンバータ22は昇圧コンバータと降圧コンバータとからなるので、図5(a)の基本構成が2つ、互いに逆並列になるように組み合わされた構成とすることができる。このとき、一方が昇圧コンバータまたは降圧コンバータとして動作するときには他方は動作を停止する。
【0094】
以上、直流給電システム1について説明した。なお、直流給電システム1は、一般家庭内に限らず、オフィスビルや工場などの事業所内でも有効に機能する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、マイクログリッドに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 直流給電システム
10 太陽光発電装置(直流電力供給手段の一部、直流電力発生手段)
11 制御器(制御部)
12 蓄電池(第1の蓄電手段、第1の蓄電池)
13 蓄電池(第2の蓄電手段の一部、第2の蓄電池)
14 電圧センサ
15 電流センサ
20 DC−DCコンバータ(直流電力供給手段の一部、第1のDC−DCコンバータ)
22 DC−DCコンバータ(第2の蓄電手段の一部、第2のDC−DCコンバータ)
23 AC−DCコンバータ(直流電力供給手段)
30 直流機器
40 交流配電網
B DCバス(直流バス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続される直流機器に直流給電を行う直流給電システムであって、
上記直流給電の母線となる直流バスと、
上記直流バスに直流電力を供給する1つ以上の直流電力供給手段であって、第1の動作電源によって動作してそれぞれに定められた電圧範囲で直流出力を行う上記直流電力供給手段と、
上記直流バスとの間で充放電を行う第1の蓄電手段および第2の蓄電手段とを備えており、
直流電力発生装置と、上記第1の動作電源によって動作して上記直流電力発生装置と上記直流バスとの間に受け渡しする直流電力の電圧変換を行うように設けられた第1のDC−DCコンバータとを備えた上記直流電力供給手段が1つ以上含まれており、
上記第1の蓄電手段は、上記直流バスに直結された第1の蓄電池を備えており、
上記第2の蓄電手段は、第2の蓄電池と、第2の動作電源によって動作して上記第2の蓄電池と上記直流バスとの間で受け渡しする直流電力の電圧変換を行うように設けられた第2のDC−DCコンバータとを備えており、
上記直流バスの母線電圧範囲は、各上記直流電力供給手段から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲のそれぞれと、上記第2の蓄電手段から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲との和からなる1つの電圧範囲であり、
上記直流機器の動作可能電圧範囲は上記母線電圧範囲を包含しており、
上記第1の蓄電池の充放電可能電圧範囲は上記母線電圧範囲を包含しており、
各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を制御する制御部を備えていることを特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
上記直流電力供給手段として、上記第1の動作電源によって動作して交流系統の交流電力を直流電力に変換して上記直流バスに供給するAC−DCコンバータが備えられており、
上記制御部は上記AC−DCコンバータの動作電源の投入および遮断を制御することを特徴とする請求項1に記載の直流給電システム。
【請求項3】
上記直流バスの母線電圧を検出する電圧センサを備えており、
上記制御部は、供給される開始指示信号を受けて開始するとともに供給される終了指示信号を受けて終了する第1の制御モードであって、
供給される遮断指示信号を受けて各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のうちの動作しているものを遮断する遮断制御と、
上記遮断制御が行われた状態で、上記電圧センサによって検出された上記直流バスの母線電圧が上記母線電圧範囲の下限電圧を下回ると、各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧範囲の下限電圧を含む電圧範囲を分担するものから上記直流バスへの直流電力の供給を始めて、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第1の電源制御とを行う第1の制御モードで動作することが可能であり、
上記第1の制御モードの上記開始指示信号は上記遮断指示信号となることを特徴とする請求項1または2に記載の直流給電システム。
【請求項4】
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出する電流センサを備えており、
上記電流センサは、上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第1の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴とする請求項3に記載の直流給電システム。
【請求項5】
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出する電流センサを備えており、
上記制御部は、上記第1の制御モードにおいて上記遮断制御が行われた状態で、上記電流センサによって上記負荷電流が所定値を超えたことが検出されると、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の直流給電システム。
【請求項6】
上記電流センサは、上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第2の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴とする請求項5に記載の直流給電システム。
【請求項7】
上記制御部は、上記第1の制御モードで動作していないときに、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第3の電源制御を行う第2の制御モードで動作することが可能であることを特徴とする請求項3から6までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項8】
上記母線電圧範囲および上記充放電可能電圧範囲の各上限電圧は410Vであり、上記母線電圧範囲および上記充放電可能電圧範囲の各下限電圧は350Vであることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項9】
上記母線電圧範囲の上限電圧は410Vであるとともに上記母線電圧範囲の下限電圧は350Vであり、
上記充放電可能電圧範囲の上限電圧は380Vよりも380Vの8%以上だけ大きい電圧であるとともに、上記充放電可能電圧範囲の下限電圧は380Vよりも380Vの8%以上だけ小さい電圧であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項10】
上記直流電力発生装置として太陽光発電装置が備えられており、
上記太陽光発電装置を備える上記直流電力発生装置から上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲は、上記太陽光発電装置と上記直流バスとの間の直流電力の受け渡しをする上記第1のDC−DCコンバータによって400V±10Vに制御されることを特徴とする請求項8または9に記載の直流給電システム。
【請求項11】
上記直流電力供給手段として、交流系統の交流電力を直流電力に変換して上記直流バスに供給するAC−DCコンバータが備えられており、
上記AC−DCコンバータから上記直流バスに供給される直流電力の電圧範囲は、上記AC−DCコンバータによって380V±10Vに制御されることを特徴とする請求項8から10までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項12】
上記第2の蓄電手段から上記直流バスへ供給する直流電力の電圧範囲は、上記第2のDC−DCコンバータによって360V±10Vに制御されることを特徴とする請求項8から11までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項13】
上記直流電力発生装置として太陽光発電装置が備えられていることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の直流給電システム。
【請求項14】
請求項1または2に記載の直流給電システムを制御する直流給電システムの制御方法であって、
上記直流バスの母線電圧を検出し、
上記制御部に、供給される開始指示信号を受けて開始するとともに供給される終了指示信号を受けて終了する第1の制御モードであって、
供給される遮断指示信号を受けて各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のうちの動作しているものを遮断する遮断制御と、
上記遮断制御が行われた状態で、上記直流バスの母線電圧が上記母線電圧範囲の下限電圧を下回ると、各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧範囲の下限電圧を含む電圧範囲を分担するものから上記直流バスへの直流電力の供給を始めて、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第1の電源制御とを行う第1の制御モードで動作させ、
上記第1の制御モードの上記開始指示信号は上記遮断指示信号となることを特徴とする直流給電システムの制御方法。
【請求項15】
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出し、
上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第1の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴とする請求項14に記載の直流給電システムの制御方法。
【請求項16】
上記直流バスから上記直流機器に流れる電流の総和である負荷電流を検出し、
上記制御部に、上記第1の制御モードにおいて上記遮断制御が行われた状態で、上記負荷電流が所定値を超えたことを検出すると、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行わせることを特徴とする請求項14または15に記載の直流給電システムの制御方法。
【請求項17】
上記制御部が上記第1の制御モードにおいて上記第2の電源制御を行っているときに、上記負荷電流が所定値以下になったことを検出すると、上記遮断指示信号を上記制御部に供給することを特徴とする請求項16に記載の直流給電システムの制御方法。
【請求項18】
上記制御部に、上記第1の制御モードで動作していないときに、予め定められたシーケンスに従って各上記電力供給手段および上記第2の蓄電手段のうちの上記母線電圧に適合する電圧範囲を分担するものによって上記直流バスに直流電力が供給されるように、各上記第1の動作電源および上記第2の動作電源のそれぞれの投入および遮断を選択制御する第2の電源制御を行う第2の制御モードで動作させることを特徴とする請求項14または15に記載の直流給電システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228028(P2012−228028A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91997(P2011−91997)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】