説明

電力変換器の異常検出方式

【課題】電力変換器の主回路の駆動動作をフィードバックし、制御指令信号と比較して主回路素子の動作の不一致を監視する異常検出方式では不一致検出信号に対し所定猶予時間以内は検知マスクしていたが、主回路またはこれを駆動するドライブ回路などで異常が生じた場合に猶予時間の分の検出遅れが生ずるとともに、発振的な動作の異常が生じて猶予時間内の短時間で異常を繰り返す動作を行った場合の異常の検知ができないケースがあった。
【解決手段】電力変換器において、正常状態でフィードバック信号が遅延により不一致になるのは、制御指令信号が変化した直後の所定の時間範囲のみであることに注目し、制御指令信号が変化した直後のみ検出猶予時間を持つようにすることにより、発振動作等の異常に対しても検出が可能となるとともに、異常検出出力の遅れ時間を大幅に短縮する異常検出方式とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両などで駆動用電動機の制御に用いられる半導体スイッチ素子により構成される電力変換器の半導体スイッチ素子のドライブ異常を検出する異常検出方式に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両などの駆動用電動機の制御に用いられるインバータ装置などの電力変換器では、高圧大電流の電力制御を行う為、構成される半導体スイッチング素子が誤制御されると電源短絡などにより装置を激しく損傷する可能性がある。
したがって、半導体スイッチング素子が異常な動作をした場合、極力早く装置を停止させ、装置の損傷を避ける必要がある。このため半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路に対する制御指令信号と、ドライブ回路がスイッチング素子をオンまたはオフにするよう駆動する動作状態を検出するドライバ動作情報と前記制御指令信号とを比較し、不一致が生じた時にドライブ回路の異常動作と判定する異常検出方式が採用されている。
【0003】
図11にこの異常検出が実施されている従来のシステム例を示す。スイッチング素子数は電力変換器のシステムにより異なるが本図ではスイッチング素子が2個の場合を示す。図11によりその構成を説明する。電力変換器の制御装置1は制御指令信号発生部4で生成した制御信号を、電力変換器3を構成する個々のスイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)300、310に対し、制御情報PWM0、PWM1を個々のIGBTのドライブ回路200、210に出力している。この制御情報がドライブ回路200、210内で整形され、電力変換器を構成する半導体スイッチング素子IGBT300、310が駆動される。
【0004】
またIGBTのオン・オフの動作状態をドライブ回路200、210内で判定しその情報FB0、FB1が制御装置1にフィードバックされ不一致検出部不一致検出部400、410において制御指令信号と比較されて異常検出が行われている。不一致検出部400、410の各々により異常検出された信号は論理和機能20を介して制御指令信号発生部4に伝達され異常検出時には制御信号の発生を停止する構成となっている。上記はスイッチング素子に対応した系列が2系列の場合を示したが、スイッチング素子に対応した系列がさらに多数あっても論理和機能20を介して異常信号が統合され制御指令信号発生部4の停止を行う点は変わりがない。
【0005】
図12は上記図11の従来例の構成の内IGBT300に対応した1つの系列をより詳細に示した図である。図12によりさらに詳細に説明する。制御装置1の内部では電力変換器3の制御に対応しIGBTのオン・オフに対応した制御指令信号PWMPが制御指令信号発生部4より出力され、電気光変換器(E/O)5により光の制御信号PWM0に変換され、これが光ファイバ6を介してドライブ装置200に伝達される。光ファイバ6は高電圧回路である電力変換器3と電子回路である制御装置の間の電気的絶縁を取る為のものである。
【0006】
ドライブ回路200では制御指令は光電気変換器(O/E)7で再度電気信号に変換され波形整形回路8によりドライブ回路200内での電気的に整合の取れた波形DSに整形され、これをAMP回路9により駆動信号GSとしてIGBT300を駆動する。一方判定機能10は駆動信号GSを監視しIGBT300がオンに駆動されているかオフに駆動されているかを判定し、その判定情報DFBは論理反転機能11、電気光変換器(E/O)12、光ファイバ13、光電気変換器(O/E)14、及び論理反転機能15を介してフィードバック信号FBとして不一致検出部400に与えられる。
【0007】
ここで、論理反転機能11、15は光ファイバ内の情報として光ありの場合をIGBT300のオフ動作状態情報、光なしの場合をIGBT300のオン動作状態情報に割り当て、ファイバ折損などの場合の光信号伝達不能時にスイッチング素子オンとみなしシステムの安全を図るためのものである。不一致検出部400では制御指令信号PWMPとフィードバック信号FBが不一致検出用のEOR機能16に入力され、不一致信号NEが検出猶予時間タイマ17の猶予時間出力DL以上に継続して出力されるとAND機能18を介して異常信号DTが出力される。
【0008】
ここで、検出猶予時間タイマ17は不一致信号NEの立ち上がりエッジでトリガされ、出力時間Texは、正常時の全ての動作条件において、制御指令信号PWMPが出力されてから駆動信号GSに至るまでの回路の動作遅れ時間と、駆動信号GSからフィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間との和の最大値よりも長くなるよう設定されている。
【0009】
異常信号DTが出力されると異常検出保持機能19によりこれが保持され異常信号CFDが出力されこれが論理和機能20を介して他の系列の異常信号とともに制御指令信号発生部4の制御指令信号PWMP出力が停止させられる。IGBT310に対応した系列も全く同様に構成され検出された異常信号は論理和機能20を介して一つの信号とされ制御指令信号発生部4の制御指令信号PWMPを停止させる。
【0010】
図13〜図16に従来例の動作波形を示す。図13は、本構成の中に異常がない場合における制御指令信号PWMPがオフからオンへ変化した時の動作(a)を示す。図13の時刻A点において制御指令信号発生部4からIGBTをオフからオンへ切り替えるよう制御指令信号PWMPが出力されたとする。この場合、図12の制御指令信号PWMPから駆動信号GSに至るまでの回路の動作遅れ時間Tpg1を経た後、図13のB点において駆動信号GSの信号がオフからオンに変化する。同様に、図12の駆動信号GSからフィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間Tgf1を経た後、図13のC点でフィードバック信号FBがオフからオンに変化する。
【0011】
不一致検出用のEOR機能16によってこのフィードバック信号FBが制御指令信号PWMPと比較されるので上記のTpg1及びTgf1の遅れによりA点からC点の間において不一致信号NEに不一致に対応する信号が現れるが、不一致に対する検出猶予時間タイマ17の猶予時間Texの設定値より短い、即ち、Tex>最大値(Tpg1+Tgf1)と設定されているので、猶予時間タイマ出力DLは、C点より後のD点まで継続し、その結果、不一致信号NEはAND機能18によりマスクされる。したがって異常検出保持機能19はセットされることは無く、その出力CFDには異常信号は現れない。即ち、構成の中に異常がない場合には異常信号は出力されない。
【0012】
同様に、図14は、従来例の構成の中に異常がない場合の制御指令信号がオンからオフへ変化した時の動作(b)を示す。図13と同様に時刻A点において制御指令信号発生部4からIGBT300をオンからオフへ切り替えるよう制御指令信号PWMPが出力されたとする。この場合の図14と同様に制御指令信号PWMPから駆動信号GSを経てフィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間によって不一致検出用のEOR機能16にTpg0とTgf0の合計の時間、即、ちA点からC点の間、不一致信号NEに不一致に対応する信号が現れるが、不一致に対する検出猶予時間タイマ17の猶予時間出力DLは猶予時間Tex経過後のD点まで継続され、不一致信号NEはマスクされ、異常検出保持機能19はセットされることは無く、その出力CFDには異常信号は現れない。
【0013】
図15に、制御指令信号がオフにもかかわらず何らかの異常によりドライバ回路出力の駆動信号GSがオンとなり猶予時間タイマの猶予時間Texより長く継続した場合(c)を示す。B点において駆動信号GSが異常動作すると、これが図12の判定機能10により検出され、フィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間Tgf1を経た後、C点でフィードバック信号FBがオフからオンに変化する。不一致検出用のEOR機能16によってこのフィードバック信号FBが制御指令信号PWMPと比較されるのでフィードバック信号FBとほぼ同時間不一致信号NEが出力され、猶予時間Tex経過後D点でAND機能によるマスクが解け、異常検出保持機能19はセットされ異常信号CFDが出力される。このようにして異常検出される。
【0014】
この従来例においては上記のようにして異常時には異常検知信号CFDが出力されるが、上記説明で明らかなように異常信号がフィードバック信号FBに現れた後、猶予時間Texという時間その出力を継続しないと検出信号を出力できないという問題がある。
【0015】
従来例において、スイッチング素子の異常動作、或いはドライブ回路内の異常により図16に示すように駆動信号GSが振動的な或いは発振的な異常を起こす場合(d)があるが、このような時、発振周期が短く、図16に示すように不一致信号NEが猶予時間Texの継続する時間D点以前のE点で消失し、その後、再度、駆動信号GSが出力されることを繰り返すような異常の場合には、猶予時間Texが解除されるD点以前のE点で不一致信号NEがオフするため、この異常が検出できない。さらに、この異常が発振動作のように繰り返し動作を行う場合、異常が継続し装置を破壊するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の従来例の異常検出方式では、異常信号はある程度固定的な或いは長時間継続するという前提で構成されたもので、スイッチング素子の異常動作、或いはドライブ回路内の異常による振動的な或いは発振的な異常は考慮されていない。本発明の目的は上記のような振動的な或いは発振的な異常のケースにも対応可能な異常検出方式を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る異常検出方式では、正常時には、制御指令信号に対しフィードバック信号FBが不一致になるのは、制御指令信号が変化した時のFBの遅れによるもののみであることに着目し、制御指令信号がオフからのオン或いはオンからオフへの変化後の所定の時間、即ち制御指令を出力しそれに対応したオン・オフ判定信号がフィードバックされるまでの遅れ時間の最大値に対応した時間範囲でのみ不一致を許容し、それ以外の時間に発生した不一致は全て異常と判定する方式とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記のような振動的な異常の場合も制御指令信号が変化した直後の所定時間経過後は全て異常検出が可能となる。また、ドライブ回路で発生した異常の情報を確実に判定できるので異常に対する保護動作を早く作動することができ異常によるシステムの損傷を最小限に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施例の電力変換器の異常検出システムを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の異常検出システムの構成の内IGBT300に対応した1つの系列をより詳細に示した図である。
【図3】図3は、本発明に使用されるタイマ31の回路実施例の構成を示す図である。
【図4】図4は、PWMPと生成パルスの波形を示す。図3の動作波形を示す図である。
【図5】図5は、図2の詳細図の構成中に異常がない場合における制御指令信号がオフからオンへ変化した時の動作(a)を示す図である。
【図6】図6は、本構成の中に異常がない場合の制御指令信号がオンからオフへ変化した時の動作(b)を示す図である。
【図7】図7は、制御指令信号がドライブ回路に伝達されそのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間が何らかの異常によりTex以上に長くなった場合の動作(c)を示す図である。
【図8】図8は、制御指令信号がドライブ回路に伝達されそのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間が何らかの異常によりTex以上に長くなった場合の動作(d)を示す図である。
【図9】図9は、制御指令信号がオフにもかかわらず何らかの異常によりドライバ回路出力GSがオンとななった場合(e)を示す図である。
【図10】図10は、スイッチング素子の異常動作、或いはドライブ回路内の異常により駆動信号GSが振動的な或いは発振的な異常を起こした場合(f)を示す図である。
【図11】図11は、従来例の異常検出システムを示すブロック図である。
【図12】図12は、図11の従来例の異常検出システムのより詳細を示すブロック図である。
【図13】図13は、図11の従来例の異常検出システムによる動作波形(a)を示す図である。
【図14】図14は、図11の従来例の異常検出システムによる動作波形(b)を示す図である。
【図15】図15は、図11の従来例の異常検出システムによる動作波形(c)を示す図である。
【図16】図16は、図11の従来例の異常検出システムによる動作波形(d)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、制御指令を出力しそれに対応したオン・オフ判定信号がフィードバックされるまでの遅れ時間の最大値に対応した時間範囲でのみ不一致を許容し、それ以外の時間に発生した不一致は全て異常と判定する方式をとる。以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1に本発明の実施例である電力変換器の異常検出方式のシステム例を示す。スイッチング素子数は電力変換器のシステムにより異なるが本図ではスイッチング素子が2個の場合を示す。図1により、その構成を説明する。電力変換器3の制御装置1は、制御指令信号発生部4で生成した制御指令信号を、電力変換器3を構成する個々のスイッチング素子であるIGBT300,310に対し、制御情報PWM0、PWM1を個々のIGBTのドライブ回路200、210に出力している。この制御情報がドライブ回路200、210内で整形され電力変換器を構成する半導体スイッチング素子IGBT300、310が駆動される。
【0022】
またIGBTのオン・オフの動作状態をドライブ回路200、210内で判定し、その情報FB0、FB1が制御装置1にフィードバックされ不一致検出部400、410において制御指令信号を所定の時間遅らせた信号DP0、DP1と比較されて異常検出が行われている。異常検出された信号は論理和機能20を介して制御指令信号発生部4に伝達され異常検出時には制御指令信号の発生を停止する構成となっている。上記はスイッチング素子に対応した系列が2系列の場合を示したが、スイッチング素子に対応した系列がさらに多数あっても論理和機能20を介して異常信号が統合され制御指令信号発生部4の停止を行う点は変わりがない。
【0023】
図2は、上記図1の構成の内IGBT300に対応した1つの系列をより詳細に示した図である。図2によりさらに詳細に説明する。制御装置1の内部では電力変換器3の制御に対応しIGBTのオン・オフに対応した制御指令信号PWMPが制御指令信号発生部4より出力され、電気光変換器(E/O)5により光の制御信号PWM0に変換され、これが、光ファイバ6を介してドライブ装置200に伝達される。光ファイバ6は高電圧回路である電力変換器3と電子回路である制御装置1の間の電気的絶縁を取る為のものである。ドライブ回路200では、制御信号PWM0は光電気変換器(O/E)7で再度電気信号に変換され波形整形回路8によりドライブ回路200内での電気的に整合の取れた波形DSに整形され、これをAMP回路9により駆動信号GSとしてIGBT300を駆動する。
【0024】
一方、判定機能10は駆動信号GSを監視しIGBT300がオンに駆動されているかオフに駆動されているかを判定し、その判定情報DFBは論理反転機能11、電気光変換器(E/O)12、光ファイバ13、光電気変換器(O/E)14、及び論理反転機能15を介してフィードバック信号FBとして不一致検出部400に与えられる。不一致検出部400では、制御指令信号PWMPを遅延機能21により所定時間遅らせた信号DP0とフィードバック信号FBが不一致検出用のEOR機能16に入力され、両方の入力信号がオン、オフ不一致時に不一致信号NEが出力される。
【0025】
一方、制御指令信号PWMPの変化点を検出しこの変化点より所定の時間幅のパルスRPを出力するタイマ31を有し、このタイマ出力RPと不一致信号NEとがAND機能18に入力される。AND機能18では不一致信号NEがタイマ出力RPの発生されている時間のみ通過を禁止するよう構成される。AND機能18を通過した不一致信号NEは異常検出保持機能19により保持され、異常信号CFDが出力され、これが論理和機能20を介して他の系列の異常信号とともに制御指令信号発生部4の制御指令信号PWMPの出力が停止させられる。
【0026】
ここで、遅延機能21は、不一致信号の出力をできるだけ短時間にするために設けられており、その遅延時間は、制御指令信号がドライブ回路に伝達されそのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間の平均値程度にセットされるが、前記遅延時間の最大値と最小値の中間値であればよく、厳密な設定は必要としない。
【0027】
また、タイマ31の発生するパルスRPのパルス幅は、正常時の全ての動作条件における、前記制御指令信号がドライブ回路に伝達されそのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間の最大値より大きい範囲でかつ極力短い時間が設定される。IGBT310に対応した系列も全く同様に構成され検出された異常信号は論理和機能20を介して一つの信号とされ制御指令信号発生部4の制御指令信号を停止させる。
【0028】
図3に、本発明に使用されるタイマ31の回路実施例の構成を示す。本実施例は、タイマ設定時間が制御指令信号PWMPの最小出力パルス幅に比べて短時間であることを利用し簡易に構成している。即ち、制御指令信号PWMPは遅延機能35に入力され一定時間、即ち、検出猶予時間Tex遅延させられDL1として出力される。これがEOR機能34に入力され、これとPWMPが比較されて、制御指令信号PWMPの変化後において上記遅延機能35の遅延時間分Texの時間長パルスRPが生成される。図4に制御指令信号PWMPと生成パルスRPの波形を示す。
【0029】
図5〜図10に、図2に示す本発明の実施例の異常検出方式の動作波形を示す。図5は、図2の構成の中に異常がない場合における制御指令信号がオフからオンへ変化した時の動作(a)を示す。時刻A点において制御指令信号発生部4からIGBT300をオフからオンへ切り替えるよう制御指令信号PWMPが出力されたとする。この場合、図2の制御指令信号PWMPから駆動信号GSに至るまでの回路の動作遅れ時間によってTpg1を経たB点において駆動信号GSの信号がオフからオンに変化する。さらに駆動信号GSにおける信号変化は、図2の駆動信号GSからフィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間によってTgf1を経たC点で、フィードバック信号FBがオフからオンに変化する。
【0030】
一方、制御指令信号PWMPが、遅れ回路21によって、制御指令信号PWMPがドライブ回路に伝達され、そのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間平均値程度の時間長Tpfの時間遅れを受けた信号DP0と前記フィードバック信号FBとが不一致検出用のEOR機能16によって比較されるので、上記のTpg1及びTgf1の遅れ時間とTpfの遅れ時間の差分、即ち、C点からF点の間、不一致信号NEに不一致に対応する信号が現れる。C点、F点ともに、A点以後でかつ、A点から猶予時間Tex後に生じるD点より、以前に発生するように設定されているから、タイマ出力PRによりAND機能を介してマスクされる。したがって異常出力DTは出力されず異常検出保持機能19はセットされることは無く、その出力CFDには異常信号は現れない。即ち、構成の中に異常がない場合には異常信号は出ない。
【0031】
同様に、図6は、本構成の中に異常がない場合の制御指令信号がオンからオフへ変化した時の動作(b)を示す。図5と同様に時刻A点において制御指令信号発生部からIGBT300をオンからオフへ切り替えるよう信号が出力されたとする。この場合も図5と同様に不一致検出用のEOR機能16によってフィードバック信号FBと、制御指令信号PWMPが遅れ回路21によってTpfの時間遅れを受けた信号DP0とが比較されるので、上記のTpg0及びTgf0の遅れ時間とTpfの遅れ時間の差分、即ちC点からF点の間、不一致信号NEに不一致に対応する信号が現れる。このときも、前記と同様にC点、F点ともに、A点以後でかつ、A点からTex後に生じるD点以前に発生するからタイマ出力PRによりAND機能を介してマスクされる。したがって異常出力DTは出力されず異常検出保持機能19はセットされることは無くその出力CFDには異常信号は現れない。
【0032】
図7および図8に制御指令信号がドライブ回路に伝達されそのフィードバック信号FBが不一致検出部400に到達するまでの遅延時間が何らかの異常によりTex以上に長くなった場合の動作(c)および(d)を示す。いずれの場合もフィードバック信号FBの終点であるC点がD点を越えるため、不一致信号NEがタイマ出力RPによりマスクされない部分で異常出力DTが出力され異常検出される。
【0033】
図9に、制御指令信号がオフにもかかわらず、何らかの異常によりドライバ回路出力である駆動信号GSがオンとなった場合(e)を示す。B点において駆動信号GSが異常動作すると、これが図2の判定機能10により検出され、フィードバック信号FBに至るまでの回路の動作遅れ時間Tgf1を経た後、C点でフィードバック信号FBがオフからオンに変化する。不一致検出用のEOR機能16によってこのフィードバック信号FBがTpfの時間遅れを受けた信号DP0と比較されるが、制御指令信号PWMPが変化していないので、Tpfの時間遅れを受けた信号DP0も制御指令信号PWMPと同じ状態を保っているので即時に不一致信号NEが出力され、かつマスクを行うタイマ出力RPも発生されていないのでAND機能によるマスクはされず異常信号DTが出力され異常検出保持機能19はセットされ、異常信号CFDが現れる。
【0034】
図10にスイッチング素子の異常動作、或いはドライブ回路内の異常により駆動信号GSが振動的な或いは発振的な異常を起こした場合(f)を示す。即ち、B2,B3点で示すように、オンしその後オフすることを繰り返す場合、制御指令信号PWMPの変化直後のA点、D点間では、不一致信号NEはマスクされるが、タイマ出力RPが消失するD点以後、B2,B3点で駆動信号GSに発生する異常信号に対しては、マスクはされない。したがってC2、C3点で異常信号DTが出力され異常検知される。即ち、Texに比べて短い異常信号の繰り返しのような異常モードにおいても、異常をマスクするタイマ出力RP信号は、制御指令信号PWMPの変化直後に発生するのみであるから、異常信号GS或いは不一致信号NEに現れる異常波形に無関係にタイマ出力RPがオフした後は、不一致信号NEはマスクされず異常信号DTに出力され、異常検出保持機能19はセットされて異常信号CFDが現れる。
【0035】
本実施例においては、上記のように、不一致信号NEのマスクを、従来例のように不一致信号NEの波形に依存させるのでなく、制御指令信号PWMPの変化直後に限定するようにした。このため、スイッチング素子の異常動作、或いはドライブ回路内の異常により、駆動信号GSが振動的な或いは発振的な異常を起こした場合のようなケースにおいても、不要に検出猶予時間が発生されることは無く、確実に異常検知がなされる。また、制御指令信号PWMPが一定値を保っている場合、猶予時間は発生しないので異常発生時に即時に異常に対応する処置が可能となり、装置の保護上有効な異常検知が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ドライブ回路で発生した異常の情報を確実に判定できるので異常に対する保護動作を早く作動することができ異常によるシステムの損傷を最小限に抑制することが可能となるので、信頼性の高い電力変換装置となる。
【符号の説明】
【0037】
1 制御装置
3 電力変換器
4 制御信号発生部
5 電気光変換器
6 光ファイバ
7 光電気変換器
8 波形整形回路
9 AMP回路
10 判定機能
11 論理反転機能
12 電気光変換器
13 光ファイバ
14 光電気変換器
15 論理反転機能
16 EOR機能
17 タイマ
18 AND機能
19 異常検出保持機能
20 論理和機能
21 遅延機能
22 遅延機能
31 タイマ
34 EOR機能
35 遅延機能
200 ドライブ回路
210 ドライブ回路
300 IGBT
310 IGBT
400 不一致検出部
410 不一致検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流定電圧源のプラス側とマイナス側の間に複数の半導体スイッチング素子を接続して構成され、該複数半導体スイッチング素子のオン・オフ状態の組み合わせにより直流電圧源の電位レベルを選択し出力する電力変換器を制御する制御装置において、
個々の半導体スイッチング素子を駆動するドライブ回路に対して制御指令信号を出力するとともに該制御指令信号に対応して前記ドライブ回路がスイッチング素子を駆動している動作状態よりオン側に駆動しているかオフ側に駆動しているかを判定する判定機能の判定情報と該制御指令信号とを比較して該判定情報と該制御指令信号の不一致を検出する不一致検出手段と、
該不一致検出手段が前記制御指令信号の変化後から所定の時間範囲内のみで不一致を出力していることを監視し、前記所定の時間範囲を超えて不一致が検出された場合に、ドライブ回路或いはスイッチング素子自体の異常動作と判定する異常判定部と、を有することを特徴とする電力変換器の異常検出方式。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換器の異常検出方式において、
前記不一致検出手段に入力する制御指令信号は、該制御指令信号が出力された後、これに対応してドライブ回路が動作し、その動作を判定機能が検出し、その判定情報が前記不一致検出手段に到達するまでの所要時間とほぼ同等な遅れ要素を介して入力することを特徴とする電力変換器の異常検出方式。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換器の異常検出方式において、
前記所定の時間範囲以上の不一致を出力する状態が生じた時、その後不一致を出力する状態が消失してもその異常検出情報を保持するとともに異常検出情報により上記電力変換器内の半導体スイッチング素子をオフする制御指令を出力させることを特徴とする電力変換器の異常検出方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−246309(P2010−246309A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93907(P2009−93907)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】