説明

電力変換装置及びその制御装置

【課題】負荷に対し高精度に電圧及び電力を供給する。
【解決手段】積分回路55は、小容量コンデンサ53の直流電圧値VDを積分した電圧積分値∫Vdtを求めてコンパレータ58に送る。計算回路64は、有効電力基準P*をインバータ周波数Fで除すことでインバータ周波数1サイクル毎の電圧基準Vm*(=αP*/F)を計算し、コンパレータ58に送る。コンパレータ58は、積分回路55からの電圧積分値∫Vdtと、計算回路64からの電圧基準Vm*を比較し、pwm回路59は、コンパレータ58の比較に基づいてpwm信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、整流回路とインバータ回路を備えた電力変換装置、及び制御装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、商用周波数の交流系統から受電する電力変換装置では、交流系統からの交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路と、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路とを組み合わせて用いている。このうち、インバータ回路は、モータの駆動源をはじめ変圧器を介して交流の高圧高周波電力を供給する電源、あるいは、変圧器の二次を整流してEVなどのバッテリーを充電する充電装置などに応用されている。一方、整流回路は、インバータ回路に直流電圧を供給する直流電源であって、優れた力率を発揮するものとして、スイッチング素子を備えたものが提案されている。中でも、pwmコンバータは直流電圧の一定制御が可能なので多用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のようなpwmコンバータを利用した電力変換装置は、電源力率がほぼ1という高力率を発揮することができ、直流電圧の変動もなく、安定した動作が可能である。しかしその反面、この種の電力変換装置は、pwmコンバータブリッジが高価なスイッチング素子からなるので、コストが高いという問題点があった。また、損失が多いので効率が低いといった短所も指摘されていた。そこで従来から、低コストで高効率であるダイオード整流回路が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
ところが、ダイオード整流回路はアクティブな素子を用いないので、力率が低下することは否めない。高力率の改善を達成するためには、整流後の平滑度を向上させて交流側のピーク電流を低くすれば良い。具体的には、直流部に小容量コンデンサを設け、この小コンデンサ容量によって整流後の電流を平滑化した多相整流回路を採用することが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−94913号公報
【特許文献2】特開2010−239736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイオード整流回路と小容量コンデンサを備えた電力変換装置には、上述した力率の低下とは別に、次のような不具合が指摘されている。すなわち、pwmコンバータと違い、ダイオード整流回路では、直流電圧が交流入力電圧の変動をダイレクトに受けてしまい、しかも負荷の変動にも弱い。
【0007】
交流入力電圧や負荷の変動により、ダイオード整流回路の出力する直流電圧が変動すれば、インバータ回路もその影響を受け、負荷に供給する電圧及び電力は不安定となる。このため、ダイオード整流回路を備えた電力変換装置は、直流電圧変動の影響を受け難い負荷にしか応用することができず、適用範囲の狭さが問題となっていた。
【0008】
しかし、電力変換装置の需要は急速に高まる近年、経済的に有利なことが重視されている。したがって、ダイオード整流回路を備えた電力変換装置の適用分野をさらに広げることが望まれていた。そこで、ダイオード整流回路を備えた電力変換装置において、直流電圧変動の影響を受けず、負荷側の変動にも迅速に対応可能な電力変換装置の制御技術の開発が待たれていた。
【0009】
本実施形態の電力変換装置及びその制御装置は、上記の課題を解決するために提案されたものである。本実施形態は、ダイオード整流回路を備えた電力変換装置の制御装置において、直流電圧の一定制御が可能で、且つ負荷に対し高精度に電圧及び電力を供給して安定した負荷制御を実現することにより、適用範囲の拡大を可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、実施形態の電力変換装置の制御装置は、次の点を特徴とする。
(1)電力変換装置には、ダイオード素子を含み商用周波数の交流系統電圧を整流して直流母線に出力する整流回路と、半導体スイッチング素子を含み直流母線の電圧を交流に変換して負荷に電力を供給するインバータ回路とが設けられている。
(2)直流母線には直流母線の電圧値を検出する電圧検出手段が設けられている。
(3)電圧検出手段には積分手段が接続されている。積分手段は、電圧検出手段の検出した電圧値を取り入れ、インバータ回路の周波数に同期してリセットすることで、インバータ周波数1サイクル毎の電圧積分値を求めるように構成されている。
(4)積分手段には、pwm信号生成手段が接続され、pwm信号生成手段には計算手段が接続されている。計算手段は、予め設定された負荷の有効電力基準とインバータ回路の周波数を取り込み、有効電力基準を周波数で除してインバータ周波数1サイクル毎の電圧基準を計算するように構成されている。
(5)pwm信号生成手段は、計算手段の求めたインバータ周波数1サイクル毎の電圧基準と積分手段の求めた電圧積分値とを比較して、インバータ回路を駆動させるpwm信号を生成するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】代表的な実施形態である電力変換装置及びその制御装置の回路図。
【図2】代表的な実施形態においてpwm信号を位相シフト形pwm信号に変換する場合のタイムチャート。
【図3】他の実施形態におけるpwm信号生成手段の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.代表的な実施形態の構成
以下、代表的な実施形態である電力変換装置とその制御装置について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
【0013】
(1)電力変換装置の構成
図1に示すように、電力変換装置Aは、整流回路を含むコンバータ部と、これに接続されたインバータ部とを含み、コンバータ部の受電端側に商用周波数の三相の交流電源1が接続され、インバータ部の送電端側に負荷であるオゾン発生装置14が接続されている。
【0014】
電力変換装置Aには、整流回路を構成するダイオードブリッジ51、52が設けられている。ダイオードブリッジ51、52の入力側には変圧器50を介して交流電源1が接続され、出力側には直流母線7が接続されている。ダイオードブリッジ51、52には、小容量コンデンサ53とサージエネルギー吸収回路54が設置されている。つまり、電力変換装置Aのコンバータ部は、ダイオードブリッジ51、52、小容量コンデンサ53及びサージエネルギー吸収回路54から構成される。
【0015】
一方、電力変換装置Aのインバータ部は、インバータブリッジ11と、変圧器12と、リアクトル13とから構成される。インバータブリッジ11は、直流母線7の電圧を交流に変換して、オゾン発生装置14に供給する回路であり、4つのIGBTを有している。図1中の符号GA〜GDは、インバータブリッジ11におけるIGBTのゲートを示している。変圧器12は、昇圧用のトランスであって、インバータブリッジ11とオゾン発生装置14との間に設置される。リアクトル13は、変圧器12に直列に接続されている。
【0016】
このような電力変換装置Aが交流電源1から三相交流を受電すると、変圧器50を経由した交流を、ダイオードブリッジ51、52が受け取る。ダイオードブリッジ51、52は、交流電源1から取り込んだ交流電圧を整流して直流母線7に出力する。そして、インバータブリッジ11が、直流母線7の直流電圧を交流電圧に変換する。変圧器12は交流電圧を昇圧し、リアクトル13を介して負荷との共振状態としてオゾン発生装置14に電力を供給する。
【0017】
(2)電力変換装置の制御装置
上記の電力変換装置Aの制御装置Bは、3つの部分から構成される。第1の部分は電力変換装置Aのコンバータ部の出力取込手段、第2の部分はインバータ部の出力取込手段、第3の部分はインバータ部に対する制御信号の生成手段である。
【0018】
(2−1)コンバータ部の出力取込手段
コンバータ部の出力取込手段は、電圧検出器6と、積分回路55と、リセット回路56とを含む。電圧検出器6は、ダイオードブリッジ51、52が出力する直流電圧を検出する手段であって、直流電圧値VDを小容量コンデンサ53から取り込み、積分回路55に送るようになっている。
【0019】
リセット回路56は、インバータ周波数Fを取り込み、1サイクルの起点でリセット信号を積分回路55に出力する回路である。積分回路55は、電圧検出器6から直流電圧値VDを、リセット回路56からリセット信号をそれぞれ受け取って、直流電圧値VDを積分した電圧積分値∫Vdtを求める回路である。
【0020】
(2−2)インバータ部の出力取込手段
インバータ部の出力取込手段として、変流器15、変圧器16、掛算器17、18、ローパスフィルタ19、20、無効電力設定器21及び無効電力検出用信号発生器25、有効電力制御回路63、計算回路64及び有効電力設定器66が設けられている。
【0021】
変流器15及び変圧器16は、インバータブリッジ11とオゾン発生装置14との間に設置されている。変流器15はインバータブリッジ11の出力する電流値I15を検出する機器、変圧器16はオゾン発生装置14の出力する電圧値V16を検出する機器である。
【0022】
変流器15には掛算器17、18が接続されている。また、変圧器16には掛算器18と無効電力検出用信号発生器25が接続され、無効電力検出用信号発生器25には掛算器17が接続されている。掛算器17は、無効電力検出用信号発生器25から無効電力検出用信号V25を受け取るようになっている。
【0023】
掛算器17にはローパスフィルタ19が接続され、掛算器18にはローパスフィルタ20が接続されている。掛算器17はオゾン発生装置14の無効電力Qを算出する回路であり、掛算器18はオゾン発生装置14の有効電力Pを算出する回路である。
【0024】
ローパスフィルタ19には、無効電力設定器21及び無効電力制御回路23が順次接続されている。無効電力設定器21ではオゾン発生装置14の無効電力基準Q*を設定している。無効電力制御回路23はオゾン発生装置14の無効電力Qを制御してインバータブリッジ11のインバータ周波数Fを調整する回路である。
【0025】
ローパスフィルタ20には、有効電力設定器66及び有効電力制御回路63が順次接続されている。有効電力設定器66ではオゾン発生装置14の有効電力基準P*を設定している。有効電力制御回路63は、有効電力Pの制御に加えて、計算回路64の計算結果であるP*/F(後述)の補正処理を行う回路である。
【0026】
計算回路64は、有効電力設定器66で設定有効電力基準P*を、インバータ周波数Fで割ることで、インバータ周波数1サイクル毎の電圧基準Vm*(=αP*/F、αは係数である)を計算する回路である。
【0027】
(2−3)インバータの制御信号の生成手段
インバータの制御信号の生成手段は、コンパレータ58と、pwm回路59と、位相シフトpwm回路60とからなる。これらの回路は、積分回路55の出力側に順次接続されている。
【0028】
コンパレータ58は、計算回路64が求めた電圧基準Vm*と、積分回路55が求めた電圧積分値∫Vdtとを比較するものである。pwm回路59は、コンパレータ58の比較に基づいてpwm信号を生成する回路である。位相シフトpwm回路60は、pwm回路59の生成したpwm信号を、位相シフト形pwm制御の駆動信号に変換する回路である。
【0029】
(2−4)電力変換装置の制御装置の動作
上記の構成要素からなる制御装置Bは、次のように動作する。ダイオードブリッジ51、52の出力側では、電圧検出器6は小容量コンデンサ53の直流電圧値VDを検出して、これを積分回路55に送る。
【0030】
リセット回路56は、インバータ周波数Fの1サイクルの起点でリセット信号を積分回路55に送るので、積分回路55はリセット信号に基づいてリセットする。積分回路55は、リセット信号に挟まれるT0からT1までの間、電圧検出器6から小容量コンデンサ53の直流電圧値VDを積分した電圧積分値∫Vdtを求めることができ、これをコンパレータ58に送る。
【0031】
一方、インバータブリッジ11の出力側では、変流器15がインバータブリッジ11の出力した電流値I15を検出して掛算器17、18に送る。変圧器16は、オゾン発生装置14の出力した電圧値V16を検出して掛算器18及び無効電力検出用信号発生器25に送る。
【0032】
掛算器17は、無効電力検出用信号発生器25から無効電力検出用信号V25を受け取り、無効電力検出用信号V25と変流器15の出力した電流値I15の積を求め、ローパスフィルタ19に送ってオゾン発生装置14の無効電力Qを算出する。無効電力制御回路23は、無効電力設定器21で設定した無効電力基準Q*と、前記無効電力Qを取り込み、無効電力基準Q*がゼロになるようにインバータブリッジ11のインバータ周波数Fを調整して、基本波の力率が1になるように制御する。
【0033】
掛算器18は、電流値I15と電圧値V16との積をローパスフィルタ20に送ってオゾン発生装置14の有効電力Pを算出する。計算回路64は、有効電力設定器66で設定した有効電力基準P*と、無効電力制御回路23で調整したインバータ周波数Fを取り込み、有効電力基準P*インバータ周波数Fで除し、商となるインバータ周波数1サイクル毎の電圧基準Vm*(=αP*/F)を求める。
【0034】
有効電力制御回路63は、有効電力設定器66で設定した有効電力基準P*と、前記有効電力Pを取り込む。有効電力制御回路63は、有効電力Pと有効電力基準P*とを比較増幅して有効電力Pを制御すると共に、計算回路64の計算結果であるαP*/Fの補正処理を行う。
【0035】
1サイクル毎の有効電力Pは、オゾン発生装置14の放電電圧Vzと、力率をほぼ1に制御した電流iと、インバータ周波数Fとの積として求まる(式1)。また、電流iと放電電圧Vzと1サイクル毎の電圧平均値Vmとの関係式2を、式1の電流iに代入すると、1サイクル毎の有効電力Pは、1サイクル毎の電圧平均値Vmとインバータ周波数Fとの積に比例することになる(式3)。このような関係が成立することから、有効電力制御回路63は、1サイクル毎に、計算回路64の求める電圧基準Vm*(=αP*/F)を補正処理することができる。
P=i・Vz・F…(1)
i=k・(Vm/Vz)…(2)
P=k・Vm・F…(3)
【0036】
コンパレータ58は、積分回路55から電圧積分値∫Vdtを受け取り、計算回路64から電圧基準Vm*を受け取って、両者を比較する。pwm回路59は、コンパレータ58による電圧積分値∫Vdtと電圧基準Vm*との比較に基づいてpwm信号を生成する。
【0037】
(2−5)pwm信号の生成
図2を参照して、pwm回路59におけるpwm信号の生成について、より具体的に説明する。図2において、上段から順に、aがインバータ周波数Fの動作波形、bがリセット回路56から出力されるリセット信号の動作波形、cが積分回路55から出力される電圧積分値∫Vdtの波形、dが電圧基準Vm*の電圧値である。
【0038】
電圧積分値∫Vdtの波形cが、1サイクルあたりの電圧基準Vm*の電圧値dに到達した時点をt1とし、これに基づいてpwm信号を生成している。すなわち、電圧積分値∫Vdtの波形cが電圧基準Vm*の電圧値d以下(T0からt1まで)では、pwm信号はHとなり、電圧積分値∫Vdtの波形cが電圧基準Vm*の電圧値dを超えれば(t1からT1まで)、pwm信号はLとなる。
【0039】
位相シフトpwm回路60は、pwm回路59の生成したpwm信号を、ゲート信号A、B、C、Dに変換し、位相シフト形pwm制御の駆動信号としてインバータブリッジ11のIGBTのゲートGA、GB、GC、GDに駆動信号を送って、インバータブリッジ11を制御する。
【0040】
(2−6)位相シフト形pwm制御
位相シフトpwm回路60によるゲート信号A、B、C、Dについては、図2の下段に示す。各ゲート信号A、B、C、Dは、次のような合成波形である。

【0041】
なお、図2の波形Eは、変圧器12の出力電圧を示している。変圧器12の負荷にインダクタンス分やコンデンサ部分がある場合には、変圧器12の一次側を短絡するモードにしておくことで、変圧器12の出力のゼロ部分を安定させるようになっている。
【0042】
位相シフト形pwm制御では、インバータブリッジ11の対角のIGBTのゲートに対し、駆動信号を意図的にずらして与える。このような位相シフト形pwm制御によれば、ゼロ電圧スイッチングを実施でき、高効率化及び制御の安定化を図ることができ、オゾン発生装置14に逆起電力(インダクタンスC等)がある場合等に有効である。
【0043】
(3)実施形態の作用効果
以上のような本実施形態は、次のような作用効果を発揮する。すなわち、交流電源1の電圧変動やダイオードブリッジ51、52の出力側のリプル電圧等によって、小容量コンデンサ53に流れる直流電圧値VDが変動する。この場合、積分回路55の求める電圧積分値∫Vdtは、電圧基準Vm*に到達する時点t1が変わることになる。
【0044】
しかし、電圧基準Vm*で規定される1回のpwmの電圧波形の面積自体は変わることがない。したがって、整流回路がダイオードブリッジ51、52であっても、直流電圧を一定に制御することが可能である。つまり、直流電圧の変動があったとしても、電圧基準Vm*に達するまでの電圧積分値∫Vdtの大きさは変わらず、直流電力の一定制御が可能である。
【0045】
また、コンバータ出力の積分値はインバータ周波数Fに反比例するので、コンバータ側の出力変動をインバータブリッジ11の電圧制御に反映することができ、しかも、前記積分値をインバータ周波数Fの1サイクル毎にリセットしているので、インバータ電圧を極めて高速に制御することが可能である。
【0046】
さらに、本実施形態では、pwm回路59にて生成したpwm信号を、位相シフトpwm回路60により位相シフト形pwm制御の駆動信号に変換しており、オゾン発生装置14を安定且つ高精度に制御することが可能である。また、本実施形態では、オゾン発生装置14の有効電力Pが変動しても、有効電力制御回路63が有効電力Pを制御しつつ、1サイクル毎に電圧基準Vm*を補正するため、負荷制御の安定化に寄与することができる。
【0047】
したがって、ダイオード整流回路を備えた電力変換装置であっても、直流電圧変動の影響を懸念する必要がなくなり、経済的な電力変換装置の適用範囲を広げることができる。また、負荷制御の安定性も向上しているため、信頼性及び経済性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【0048】
2.他の実施形態
なお、本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。すなわち、上記の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0049】
例えば、上記の代表的な実施形態では、pwm信号の波形生成に際して、電圧積分値∫Vdtと電圧基準Vm*(=αP*/F)を比較したが、電圧積分値∫Vdtにインバータ周波数Fを掛ける掛算器68を設け、積分回路55の出力を積分値∫VFdtとしてもよい(図3参照)。
【0050】
このような実施形態では、コンパレータ58は、電圧積分値∫Vdtと電圧基準Vm*(=αP*/F)を比較するのではなく、両者にインバータ周波数Fを掛けた積分値∫VFdtと、有効電力基準P*と比較することで、pwm回路59がpwm信号を生成することができる。
【0051】
したがって、割り算を行うことで導いていた電圧基準Vm*(=αP*/F)を使う必要が無くなり、計算回路64が不要となる。割り算に比べて、掛け算は計算負担が軽いので、pwm回路59によって生成されるpwm信号は同じでありながら、処理速度が向上するという効果を発揮する。
【0052】
上記の実施形態は、ハード制御のブロック図で説明したが、ディジタル制御やマイコン制御であっても達成できる。従って、請求項においては、前記実施形態における回路を手段として記載したが、この手段には、回路のようにハードウェアのみによって構成されるものと、コンピュータプログラムによって実現される構成のいずれも含むものとする。
【0053】
また、発明の態様としては、制御装置の部分全体を制御回路として組み込んだ電力変換装置であってもよい。さらに、有効電力基準をインバータ回路の周波数で除した電圧基準V*の補正処理に関しては、インバータの電力制御出力ループによって補正することが可能であり、有効電力制御回路に限らず、補正処理専用の回路を設けてもよい。また、整流回路であるダイオードブリッジは、受電力率を向上させるために多相整流回路が有効であり、6相整流、12相整流、18相整流、24相整流等でも実施できる。
【符号の説明】
【0054】
1…交流電源
2a、2b、2c…電流検出器
3a、3b、3c、13…リアクトル
5…コンデンサ
6…電圧検出器
7…直流母線
11…インバータブリッジ
12、16、50…変圧器
14…オゾン発生装置
15…変流器
17、18、68…掛算器
19、20…ローパスフィルタ
21…無効電力設定器
22…有効電力設定器
23…無効電力制御回路
24、63…有効電力制御回路
25…無効電力検出用信号発生器
51、52…ダイオードブリッジ
53…小容量コンデンサ
54…サージエネルギー吸収回路
55…積分回路
56…リセット回路
58…コンパレータ
59…pwm回路
60…位相シフトpwm回路
64…計算回路
A、C…電力変換装置
B、D…電力変換装置の制御装置
F…インバータ周波数
P…有効電力
P*…有効電力基準
Vm*…インバータ周波数1サイクル毎の電圧基準

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード素子を含み商用周波数の交流系統電圧を整流して直流母線に出力する整流回路と、半導体スイッチング素子を含み前記直流母線の電圧を交流に変換して負荷に電力を供給するインバータ回路とを備えた電力変換装置に用いられる制御装置であって、
前記直流母線の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、
前記直流電圧検出手段の検出した直流電圧を前記インバータ回路の出力周波数に同期してリセットすることでインバータ周波数1サイクル毎の電圧積分値を求める積分手段と、
前記負荷の有効電力基準を設定する有効電力設定手段と、
前記有効電力設定手段の設定した有効電力基準を前記インバータ回路の周波数で除してインバータ周波数1サイクル毎の電圧基準を計算する計算手段と、
前記積分手段の求めた電圧積分値と、前記計算回路の計算した電圧基準とを比較して、前記インバータ回路を駆動させるpwm信号を生成するpwm回路、を具備したことを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
ダイオード素子を含み商用周波数の交流系統電圧を整流して直流母線に出力する整流回路と、半導体スイッチング素子を含み前記直流母線の電圧を交流に変換して負荷に電力を供給するインバータ回路とを備えた電力変換装置に用いられる制御装置であって、
前記直流母線の直流電圧を検出する直流電圧検出手段と、
前記直流電圧検出手段の検出した直流電圧を前記インバータ回路の出力周波数に同期してリセットすることでインバータ周波数1サイクル毎の電圧積分値を求める積分手段と、
前記負荷の有効電力基準を設定する有効電力設定手段と、
前記積分手段の求めた電圧積分値と前記インバータ回路の出力周波数との積を求める掛け算手段と、
前記有効電力設定手段前記の設定した負荷の有効電力基準と、前記掛け算手段の求めた積とを比較して、前記インバータ回路を駆動させるpwm信号を生成するpwm回路、を具備したことを特徴とする電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
pwm回路の生成したpwm信号を位相シフトpwm信号に変換する位相シフトpwm回路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記負荷の有効電力を取り込む有効電力制御手段を備え、この有効電力制御手段により前記計算回路の計算した電圧基準を負荷の有効電力に基づいて補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置を組み込んだことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
前記整流回路は、多相整流回路からなることを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−257399(P2012−257399A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129169(P2011−129169)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】