説明

電力変換装置

【課題】電子回路基板の変形を抑制し、小型で、放熱性に優れた電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置1は、互いの間に空間を設けながら厚み方向に積層配置された第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22と、第1電子回路基板21における第2電子回路基板22とは反対側の面に配置され、第1電子回路基板21に信号端子31が接続された複数の半導体モジュール3と、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とを互いに固定する固定部材4と、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間に介設され両者の間隔を保持するスペーサ5とを有する。スペーサ5は、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との積層方向から見たときの複数の半導体モジュール3の配置領域に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の電子回路基板を備えたインバータやコンバータ等の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等には、電源電力から駆動用モータを駆動するための駆動用電力に変換するためのインバータやコンバータ等の電力変換装置が搭載されている。かかる電力変換装置は、複数の半導体モジュールのスイッチング動作によって電力変換を行っている。
そして、電力変換装置には、上記複数の半導体モジュールをスイッチング駆動させるための駆動回路や、各種車両情報を基に駆動状態を制御するための制御回路等を有する電子回路基板が搭載されている。
【0003】
この電子回路基板としては、高圧系用と低圧系用の2枚の基板を用いることがある。たとえば、駆動回路を構成した高圧系の電子回路基板と、制御回路を構成した低圧系の電子回路基板とを用いることがある。2枚の電子回路基板を電力変換装置内に配置する際には、互いの間に空間を設けつつ厚み方向に積層するように配置する。このとき、二枚の電子回路基板の間には、例えば特許文献1の第1図に示すように、ボスを介在させることが考えられる。
すなわち、図22に示すごとく、二枚の電子回路基板92を、その角部付近においてボス93を介して互いに固定する。また、互いに固定された二枚の電子回路基板92は、ケースに固定されることとなる。
【0004】
ところが、電子回路基板92角端部付近のみにおいてボス93を用いて二枚の電子回路基板92を固定すると、例えば車両衝突等による外力が作用したとき電子回路基板92が変形しやすいという問題がある。そのため、電子回路基板92が変形したときに、二枚の電子回路基板92同士が接触しないようにするために、両者の間の間隔を大きくしておく必要が生じる。その結果、電力変換装置を小型化することが困難となる。
【0005】
かかる問題に対して、図23に示すごとく、2枚の電子回路基板92の間に、該電子回路基板92における互いに対向する辺に沿った一対のステー94を配置した電力変換装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−34790号公報
【特許文献2】特開2009−159767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に開示された電力変換装置のように、電子回路基板92における互いに対向する辺を構成する一対の端縁に沿って一対のステー94を配置しても、電子回路基板92の中央部付近のたわみ等の変形を充分に防ぐことはできない。
さらには、2枚の電子回路基板92の間の空間は、上記一対のステー94によって2辺が塞がれてしまうこととなるため、上記空間における空気が滞留しやすくなり、電子回路基板92の温度上昇を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、電子回路基板の変形を抑制し、小型で、放熱性に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、互いの間に空間を設けながら厚み方向に積層配置された第1電子回路基板及び第2電子回路基板と、
上記第1電子回路基板における上記第2電子回路基板とは反対側の面に配置され、上記第1電子回路基板に信号端子が接続された複数の半導体モジュールと、
上記第1電子回路基板と第2電子回路基板とを互いに固定する固定部材と、
上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との間に介設され両者の間隔を保持するスペーサとを有し、
該スペーサは、上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との積層方向から見たときの上記複数の半導体モジュールの配置領域に配設されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
上記電力変換装置においては、上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との間に、両者の間隔を保持するスペーサが介設されている。これにより、第1電子回路基板と第2電子回路基板との間の間隔を保つことができ、両者が近付く方向へ変形することを効果的に防ぐことができる。
そして、これにより、上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との間の間隔を小さくすることが可能となるため、すなわち基板の変形分を考慮して第1電子回路基板と第2電子回路基板との間の間隔を大きくしておく必要がないため、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、上記スペーサは、上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との積層方向から見たときの上記複数の半導体モジュールの配置領域(以下において、適宜「半導体モジュール配置領域」という。)に配設されている。そのため、少なくとも半導体モジュールの信号端子が接続されている部分における第1電子回路基板及び第2電子回路基板の変形を抑制することができる。これにより、車両衝突時等における信号端子の短絡を効果的に防ぐことができる。
【0012】
また、上記半導体モジュール配置領域は、第1電子回路基板に他の電子部品が搭載されない。そして、この半導体モジュール配置領域においては、第1電子回路基板と第2電子回路基板との間の空間(以下において、適宜「基板間空間」という。)には、第1電子回路基板と上記信号端子との接続部が配置されるのみである。それゆえ、半導体モジュール配置領域における基板間空間には、充分なスペースが存在する。
そこで、このスペースに上記スペーサを配設することにより、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の面積を広げることなく、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の変形を抑制することができる。それゆえ、電力変換装置の大型化を防ぐことができる。
【0013】
また、上記スペーサは、上記半導体モジュール配置領域に配設されるため、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の端縁において上記基板間空間を塞ぐことがない。それゆえ、基板間空間とその外側との間での空気の循環を阻害することを防ぎ、基板間空間における空気の温度上昇を防ぐことができる。その結果、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の温度上昇を防ぐことができる。すなわち、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の放熱性を向上させることができる。
【0014】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、電子回路基板の変形を抑制し、小型で、放熱性に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における、電力変換装置の斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図2のB−B線矢視断面図。
【図4】実施例1における、半導体モジュール配置領域の説明図。
【図5】実施例2における、電力変換装置の断面図。
【図6】図5のC−C線矢視断面図。
【図7】実施例2における、スペーサの斜め下方から見た斜視図。
【図8】実施例2における、他のスペーサの斜め下方から見た斜視図。
【図9】実施例3における、電力変換装置の斜視図。
【図10】図9のD−D線矢視断面図。
【図11】図10のE−E線矢視断面図。
【図12】実施例3における、スペーサの斜視図。
【図13】実施例4における、第2電子回路基板を除去した状態で見た電力変換装置の平面図。
【図14】実施例4における、スペーサの斜視図。
【図15】実施例5における、電力変換装置の斜視図。
【図16】図15のF−F線矢視断面図。
【図17】図16のG−G線矢視断面図。
【図18】実施例5における、スペーサの斜視図。
【図19】実施例6における、電力変換装置の断面図。
【図20】実施例7における、電力変換装置の断面図。
【図21】図20のH−H線矢視断面図。
【図22】従来例における、2枚の電子回路基板の積層構造の斜視図。
【図23】他の従来例における、2枚の電子回路基板の積層構造の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、上記スペーサは、特に材質は限定されないが、樹脂等の絶縁体によって構成されていることが好ましい。この場合には、スペーサが半導体モジュールの信号端子に接触しても、信号端子を短絡させる等の不具合を招くことがない。
【0017】
また、上記第1電子回路基板及び上記第2電子回路基板は長方形状を有し、両者の間の空間は、上記長方形状の4辺に対応する部分を開口させていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記基板間空間が、その四方において外部空間に解放されるため、上記基板間空間と外部空間との間の空気の循環を確保することができる。その結果、基板間空間における熱を四方から放出することができ、電子回路基板の放熱性を一層向上することができる。
【0018】
また、上記スペーサは、隣り合う上記半導体モジュールの上記信号端子の間において、上記第1電子回路基板に当接していることが好ましい(請求項3)。
この場合には、第1電子回路基板の中でも特に変形しやすい部分の変形を効果的に抑制することができる。また、信号端子が接続された部分の第1電子回路基板の変形を抑制することができることで、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の変形による信号端子の短絡を効果的に防ぐことができる。
【0019】
また、上記信号端子は、上記第1電子回路基板を貫通しており、上記スペーサは、振幅が一定の波型に連続した形状を有し、上記波型における一方の頂部が、隣り合う上記半導体モジュールの上記信号端子の間において、上記第1電子回路基板に当接し、他方の頂部が上記第2電子回路基板に当接していることが好ましい(請求項4)。
この場合には、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の広い範囲にわたって、一部材によるスペーサを配置することができるため、組み付け作業を効率化することができる。
【0020】
また、上記スペーサは、矩形波形状を有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、波型の頂部が平坦面となり、この平坦面が第1電子回路基板及び第2電子回路基板に当接することとなる。そのため、第1電子回路基板及び第2電子回路基板の変形をより効果的に防ぐことができる。
【0021】
また、上記信号端子は上記第1電子回路基板を貫通しており、上記スペーサは上記第1電子回路基板との対向面に設けられた逃し穴を有し、上記第1電子回路基板から突出した上記信号端子は上記逃し穴に配置されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記スペーサの太さを太くしつつ、すなわち、スペーサにおける第1電子回路基板に平行な断面の断面積を大きくしつつ、信号端子と干渉しないようにスペーサを配置することができる。これにより、スペーサの強度を向上させることができると共に、スペーサの配置自由度を高くすることができる。
【0022】
また、上記複数の半導体モジュールは、上記第1電子回路基板に平行な方向に沿って1列または複数列に配列されており、上記スペーサは、上記半導体モジュールの配列方向に沿って形成された長尺部材からなり、上記第2電子回路基板に当接する天井板と、該天井板における幅方向の両端から上記第1電子回路基板に向って立設した一対の立設部とを有することが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記一対の立設部が、上記半導体モジュールの配列方向に沿って上記第1電子回路基板に当接することとなるため、信号端子と干渉しないようにスペーサを配設することが容易となる。すなわち、半導体モジュールが所定の方向に配列されるということは、信号端子も所定の方向に配列され、そして、信号端子が存在しない領域も所定の方向に連続することとなる。そのため、この領域に、配列方向に沿った長尺部材の立設部を当接させやすくなる。
また、上記スペーサは、天井板と一対の立設部とを有するため、安定して、第1電子回路基板と第2電子回路基板とを支持することができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電力変換装置につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例の電力変換装置1は、図1、図2に示すごとく、下記の第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22と、複数の半導体モジュール3と、固定部材4と、スペーサ5とを有する。
【0024】
第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とは、互いの間に空間を設けながら厚み方向に積層配置されている。
半導体モジュール3は、第1電子回路基板21における第2電子回路基板22とは反対側の面に配置され、第1電子回路基板21に信号端子31が接続されている。
【0025】
固定部材4は、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とを互いに固定している。
スペーサ5は、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間に介設され両者の間隔を保持する。
そして、図3に示すごとく、スペーサ5は、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との積層方向から見たときの複数の半導体モジュール3の配置領域(図4に示す半導体モジュール配置領域12)に配設されている。半導体モジュール配置領域12は、図4に示すごとく、間隔の大きいハッチングを施した長方形の領域であって、すべての半導体モジュール3をカバーするように形成された領域である。
【0026】
本例の電力変換装置1は、電気自動車又はハイブリッド自動車に搭載され、直流電源(図示略)と車両の駆動源としての三相交流回転電機(図示略)との間の電力変換を行うものである。
また、本例において、第1電子回路基板21は、複数の半導体モジュール3をスイッチング駆動させるための駆動回路を有する比較的高電圧の高圧系の電子回路基板であり、第2電子回路基板21は、各種車両情報を基に駆動状態を制御するための制御回路を有する低圧系の電子回路基板である。
【0027】
第1電子回路基板21には、図2〜図4に示すごとく、半導体モジュール3以外にも、上記駆動回路を構成するICやコンデンサや抵抗等の電子部品111が搭載されている。これらの電子部品111は、第1電子回路基板21における第2電子回路基板22側の面であって、上記半導体モジュール配置領域12を除く領域に実装されている。
また、第2電子回路基板22にも、上記制御回路を構成する複数の電子部品112が搭載されている。これらの電子部品112は、第2電子回路基板22における第1電子回路基板21側と反対側の面に搭載されている。
【0028】
また、図3に示すごとく、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22は長方形状を有する。そして、図1に示すごとく、両者の間の空間(基板間空間13)は、長方形状の4辺に対応する部分を開口させている。
つまり、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とは、これらの四隅に配置された固定部材4によって互いに固定されている(図3)。この固定部材4の配設位置以外においては、基板間空間13は、第1電子回路基板21及び上記第2電子回路基板22の4辺に対応する位置において、外部に開放されている。
【0029】
固定部材4は、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の四隅における両者の間に立設されており、図2に示すごとく、固定部材4における両端面に対して、ビス41によって第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とが、固定されている。4本の固定部材4は互いに同等の高さを有しており、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とは、一定の間隔を設けて平行に配置されている。
【0030】
半導体モジュール3は、図1、図2に示すごとく、スイッチング素子を内蔵する本体部30と、該本体部30における一つの端面から突出した5本の信号端子31とを有する。信号端子31は、図3に示すごとく、上記端面における長手方向の一方側に偏って配置されている。
本体部30における信号端子31の立設側と反対側の端面には、上記直流電源や上記三相交流回転電機に電気的に接続される主電極端子が形成されているが、図1、図2においては省略してある。
【0031】
複数の半導体モジュール3は、これらを冷却する冷却管(図示略)と共に交互に積層されており、この積層方向に2列整列配置されている。なお、この整列方向は、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22と平行であると共に、これらの長辺に平行である。
信号端子31は、第1電子回路基板21に設けたスルーホールに挿通されると共に、第1電子回路基板21における第2電子回路基板22側の面に形成された電極パッドにはんだ付け接合されている。
【0032】
図3に示すごとく、スペーサ5は、隣り合う半導体モジュール3の信号端子31の間において、第1電子回路基板21に当接している。また、スペーサ5は、第2電子回路基板22にも当接している。そして、スペーサ5は、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との少なくとも一方に対して、接着剤等の固定手段によって固定されている。
本例においては、図1〜図3に示すごとく、スペーサ5は、略楕円柱状の樹脂成形体からなり、積層方向に隣り合う半導体モジュール3の信号端子31の間に配置されている。
また、スペーサ5は複数個配置されており、これらのスペーサ5は、すべて同じ高さを有し、この高さは基板間空間13の間隔と一致する。
【0033】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記電力変換装置1においては、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間に、両者の間隔を保持するスペーサ5が介設されている。これにより、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間の間隔を保つことができ、両者が近付く方向へ変形することを効果的に防ぐことができる。
そして、これにより、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間の間隔を小さくすることが可能となるため、すなわち基板の変形分を考慮して第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間の間隔を大きくしておく必要がないため、電力変換装置1の小型化を図ることができる。
【0034】
また、図3に示すごとく、スペーサ5は、半導体モジュール配置領域12(図4)に配設されている。そのため、少なくとも半導体モジュール3の信号端子31が接続されている部分における第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の変形を抑制することができる。これにより、車両衝突時等における信号端子31の短絡を効果的に防ぐことができる。
【0035】
また、図4に示すごとく、半導体モジュール配置領域12は、第1電子回路基板21に他の電子部品111が搭載されない。そして、この半導体モジュール配置領域12においては、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との間の空間(基板間空間13)には、第1電子回路基板21と信号端子31との接続部が配置されるのみである。それゆえ、半導体モジュール配置領域12における基板間空間13には、充分なスペースが存在する。
そこで、このスペースにスペーサ5を配設することにより、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の面積を広げることなく、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の変形を抑制することができる。それゆえ、電力変換装置1の大型化を防ぐことができる。
【0036】
また、スペーサ5は、半導体モジュール配置領域12に配設されるため、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の端縁において基板間空間13を塞ぐことがない。それゆえ、基板間空間13とその外側との間での空気の循環を阻害することを防ぎ、基板間空間13における空気の温度上昇を防ぐことができる。その結果、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の温度上昇を防ぐことができる。すなわち、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の放熱性を向上させることができる。
【0037】
また、上記基板間空間13は、長方形状の4辺に対応する部分を開口させている。すなわち、基板間空間13が、その四方において外部空間に解放されるため、基板間空間13と外部空間との間の空気の循環を確保することができる。その結果、基板間空間13における熱を四方から放出することができ、電子回路基板(第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22)の放熱性を一層向上することができる。
【0038】
また、スペーサ5は、隣り合う半導体モジュール3の信号端子31の間において、第1電子回路基板21に当接している。それゆえ、第1電子回路基板21の中でも特に変形しやすい部分の変形を効果的に抑制することができる。また、信号端子31が接続された部分の第1電子回路基板21の変形を抑制することができることで、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の変形による信号端子31の短絡を効果的に防ぐことができる。
【0039】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、電子回路基板の変形を抑制し、小型で、放熱性に優れた電力変換装置を提供しようとするものである。
【0040】
(実施例2)
本例は、図5〜図8に示すごとく、スペーサ5における第1電子回路基板21との対向面51に逃し穴52を設け、第1電子回路基板21から突出した信号端子31を逃し穴52に配置した例である。
本例の場合には、図5、図6に示すごとく、2列のうちの一方の列に配列された半導体モジュール3の配置位置において、スペーサ5が基板間空間13に配設されている。そして、各逃し穴52に複数の半導体モジュール3の信号端子31が配置され、逃し穴52の周囲のスペーサ5の当接面51が、半導体モジュール3の信号端子31の周囲において、第1電子回路基板21に当接している。
【0041】
逃し穴52は、図7に示すごとく、各スペーサ5に1個形成され、一つの半導体モジュール3における複数の信号端子5が配置されるよう構成されていてもよいし、図8に示すごとく、各スペーサ5に複数個形成され、各逃し穴52に一本ずつ信号端子31が挿入配置されるよう構成することもできる。
なお、本例では、逃し穴52はスペーサ5を貫通していないが、スペーサ5をその高さ方向に貫通するような逃し穴を設けてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0042】
本例の場合には、スペーサ5を太くしつつ、すなわち、スペーサ5における第1電子回路基板21に平行な断面の断面積を大きくしつつ、信号端子31と干渉しないようにスペーサ5を配置することができる。これにより、スペーサ5の強度を向上させることができると共に、スペーサ5の配置自由度を高くすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(実施例3)
本例は、図9〜図11に示すごとく、振幅が一定の波型に連続した形状を有するスペーサ5を用いた例である。
そして、上記波型における一方の頂部531が、隣り合う半導体モジュール3の信号端子31の間において、第1電子回路基板21に当接し、他方の頂部532が第2電子回路基板22に当接している。
スペーサ5は、図10、図12に示すごとく、矩形波形状を有する。すなわち、一方の頂部531及び他方の頂部532は、それぞれ平坦面を有する。そして、一方の頂部531と他方の頂部532とは、互いに第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との積層方向に立設された立設部533によって連結されている。
【0044】
また、本例においては、図11に示すごとく、一方の列の半導体モジュール3における信号端子31と、他方の列の半導体モジュール3における信号端子31とは、互いに近接する側の端部に偏った位置に配置されている。
そして、図10に示すごとく、スペーサ5は、第2電子回路基板22に当接する頂部532と、その両端における立設部533との間に形成される空間に、第1電子回路基板21から突出した信号端子31が配置されるように、基板間空間13に配設される。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合には、第1電子回路基板及21及び第2電子回路基板22の広い範囲にわたって、一部材によるスペーサ5を配置することができるため、組み付け作業を効率化することができる。
また、スペーサ5は、矩形波形状を有するため、波型の頂部531、532が平坦面となり、この平坦面が第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22に当接することとなる。それゆえ、第1電子回路基板21及び第2電子回路基板22の変形をより効果的に防ぐことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0046】
なお、本例において、例えばスペーサ5を正弦波のような形状とすることも可能である。この場合は、頂部531、532が平坦面とならないが、一部材のスペーサ5を配置するだけで、第1電子回路基板及21及び第2電子回路基板22の広い範囲にわたってこれらを補強することができるという観点では、同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
(実施例4)
また、本例は、図13、図14に示すごとく、矩形波状のスペーサ5を、基板間空間13に配置した例である。
ただし、本例においては、矩形波の振幅方向が、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22との積層方向に直交する方向であり、実施例3の場合と比べて、スペーサ5の向きが、長手方向を中心に90°回転した状態となっている。
【0048】
そして、スペーサ5における一方の頂部531が、半導体モジュール3における厚み方向と直交する方向に隣り合う2つの半導体モジュール3の信号端子31の間に配置され、他方の頂部532が、厚み方向に隣り合う2つの半導体モジュール3の信号端子31の間の間に配置される。
すなわち、信号端子31は、スペーサ5における一方の頂部531とその両端における一対の立設部533との間に配置される。
その他は、実施例3と同様である。
【0049】
本例の場合にも、一部材のスペーサ5を配置するだけで、第1電子回路基板及21び第2電子回路基板22の広い範囲にわたってこれらを補強することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
なお、本例において、例えばスペーサ5を正弦波のような形状とすることも可能である。この場合にも、同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(実施例5)
本例は、図15〜図18に示すごとく、半導体モジュール3の配列方向に沿って形成された長尺部材からなるスペーサ5を用いた例である。
スペーサ5は、に示すごとく、第2電子回路基板22に当接する天井板541と、該天井板541における幅方向の両端から第1電子回路基板21に向って立設した一対の立設部542とを有する。
【0051】
一方の立設部542は、一方の列の半導体モジュール3の信号端子31の外側において、第1電子回路基板21に当接し、他方の立設部542は、他方の列の半導体モジュール3の信号端子31の外側において、第1電子回路基板21に当接している。
すなわち、すべての半導体モジュール3の信号端子31が、スペーサ5における一対の立設部542の間に配置されることとなる。
その他は、実施例3と同様である。
【0052】
本例の場合には、上記一対の立設部542が、半導体モジュール3の配列方向に沿って第1電子回路基板21に当接することとなるため、信号端子31と干渉しないようにスペーサ5を配設することが容易となる。すなわち、半導体モジュール3が所定の方向に配列されるということは、信号端子31も所定の方向に配列され、そして、信号端子31が存在しない領域も所定の方向に連続することとなる。そのため、この領域に、配列方向に沿った長尺部材の立設部542を当接させやすくなる。
また、スペーサ5は、天井板541と一対の立設部542とを有するため、安定して、第1電子回路基板21と第2電子回路基板22とを支持することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施例6)
本例は、図19に示すごとく、スペーサ5の一対の立設部542にフランジ部543を設けた例である。
フランジ部543は、立設部542の端部において、直角に屈曲形成されてなり、第1電子回路基板21と面接触する。
その他は、実施例5と同様である。
【0054】
本例の場合には、スペーサ5が第1電子回路基板21とも面接触することとなるため、第1電子回路基板21の変形を一層抑制することができる。
また、特にスペーサ5を第1電子回路基板21に固定する場合には、フランジ部543においてその固定を容易に行うことができる。
その他、実施例5と同様の作用効果を有する。
【0055】
(実施例7)
本例は、図20、図21に示すごとく、スペーサ5における一方の立設部542を、二つの列の半導体モジュール3の信号端子31の間において、第1電子回路基板21に当接させた例である。
すなわち、2列のうちの一方の列の半導体モジュール3の信号端子31が、スペーサ5における一対の立設部542の間に配置され、他方の列の半導体モジュール3の信号端子31は、スペーサ5の外側に配置されることとなる。
その他は、実施例5と同様である。
本例の場合には、スペーサ5を小型化することができるため、装置の軽量化及び低コスト化を図ることができる。
その他、実施例5と同様の作用効果を有する。
【0056】
なお、上記実施例5〜7において、上記立設部542に、開口部や切欠部を設けることもできる。この場合には、開口部や切欠部を通じて、空気が一対の立設部542の間の空間とその外側の空間とにおいて循環することが可能となるため、電子回路基板の放熱性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 電力変換装置
111、112 電子部品
12 半導体モジュール配置領域
13 基板間空間
21 第1電子回路基板
22 第2電子回路基板
3 半導体モジュール
31 信号端子
4 固定部材
5 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間に空間を設けながら厚み方向に積層配置された第1電子回路基板及び第2電子回路基板と、
上記第1電子回路基板における上記第2電子回路基板とは反対側の面に配置され、上記第1電子回路基板に信号端子が接続された複数の半導体モジュールと、
上記第1電子回路基板と第2電子回路基板とを互いに固定する固定部材と、
上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との間に介設され両者の間隔を保持するスペーサとを有し、
該スペーサは、上記第1電子回路基板と上記第2電子回路基板との積層方向から見たときの上記複数の半導体モジュールの配置領域に配設されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、上記第1電子回路基板及び上記第2電子回路基板は長方形状を有し、両者の間の空間は、上記長方形状の4辺に対応する部分を開口させていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、上記スペーサは、隣り合う上記半導体モジュールの上記信号端子の間において、上記第1電子回路基板に当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、上記信号端子は、上記第1電子回路基板を貫通しており、上記スペーサは、振幅が一定の波型に連続した形状を有し、上記波型における一方の頂部が、隣り合う上記半導体モジュールの上記信号端子の間において、上記第1電子回路基板に当接し、他方の頂部が上記第2電子回路基板に当接していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、上記スペーサは、矩形波形状を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記信号端子は上記第1電子回路基板を貫通しており、上記スペーサは上記第1電子回路基板との対向面に設けられた逃し穴を有し、上記第1電子回路基板から突出した上記信号端子は上記逃し穴に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記複数の半導体モジュールは、上記第1電子回路基板に平行な方向に沿って1列または複数列に配列されており、上記スペーサは、上記半導体モジュールの配列方向に沿って形成された長尺部材からなり、上記第2電子回路基板に当接する天井板と、該天井板における幅方向の両端から上記第1電子回路基板に向って立設した一対の立設部とを有することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−114968(P2011−114968A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269948(P2009−269948)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】