説明

電力変換装置

【課題】 DC/DC変換部とDC/AC変換部とを備えて、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】 直流電源E1からの直流電圧Vdc1をオープンループ制御によって昇圧または降圧するDC/DC変換部1と、DC/DC変換部1が出力する直流電圧Vdc2をフィードバック制御によって交流電圧Vac1に変換するDC/AC変換部2とを備え、DC/AC変換部2は、交流電圧Vac1を検出する検出部23と、交流電圧Vac1の検出値が所定の目標値に一致する方向に交流電圧Vac1をフィードバック制御する制御回路24とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電圧を交流電圧に変換する電力変換装置があり、一般に、直流電圧を昇圧または降圧するDC/DC変換部と、DC/DC変換部が出力する直流電圧を交流電圧に変換するDC/AC変換部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図6に示す電力変換装置Bは、DC/DC変換部101と、DC/AC変換部102とを備えている。
【0004】
DC/DC変換部101は、スイッチング回路1011と、高周波トランスTr101と、整流回路1012と、検出部1013と、制御回路1014とで構成される。
【0005】
スイッチング回路1011は、直流電源E100の直流電圧Vdc101を入力とし、図示しないスイッチング素子をオン・オフ駆動することによって、直流電源E100から供給される電流を周期的に極性反転させて、高周波トランスTr101の一次巻線へ供給する。そして、高周波トランスTr101の二次巻線には誘起電圧が発生し、整流回路1012によって整流されて、整流回路1012の出力端間には直流電圧Vdc102が発生する。この直流電圧Vdc102は、直流電圧Vdc101を昇圧または降圧した電圧になる。
【0006】
そして、検出部1013は、直流電圧Vdc102を検出しており、制御回路1014は、直流電圧Vdc102の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路1011をスイッチング制御する。すなわち、制御回路1014は、直流電圧Vdc102を目標電圧にフィードバック制御している。
【0007】
次に、DC/AC変換部102は、スイッチング回路1021と、フィルタ回路1022と、検出部1023と、制御回路1024とで構成される。
【0008】
スイッチング回路1021は、直流電圧Vdc102を入力とし、図示しないスイッチング素子をオン・オフ駆動することによって、直流電圧Vdc102を交流電圧に変換する。そして、スイッチング回路1021が出力する交流電圧はフィルタ回路1022を通り、不要な周波数帯域が減衰した交流電圧Vac101をフィルタ回路1022から出力する。
【0009】
そして、検出部1023は、交流電圧Vac101を検出しており、制御回路1024は、交流電圧Vac101の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路1021をスイッチング制御する。すなわち、制御回路1024は、交流電圧Vac101を目標電圧にフィードバック制御している。
【0010】
このように電力変換装置Bは、DC/DC変換部101およびDC/AC変換部102の各出力を検出する検出部1013,1023と、各検出結果に基づいてフィードバック制御を行う制御回路1014,1024とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−44979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のようにDC/DC変換部とDC/AC変換部とを備えた電力変換装置において、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化が求められている。
【0013】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、DC/DC変換部とDC/AC変換部とを備えて、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電力変換装置は、直流電源からの直流電圧をオープンループ制御によって昇圧または降圧するDC/DC変換部と、前記DC/DC変換部が出力する直流電圧をフィードバック制御によって交流電圧に変換するDC/AC変換部とを備え、前記DC/AC変換部は、前記交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記交流電圧の検出値が所定の目標値に一致する方向に前記交流電圧をフィードバック制御する制御回路とを具備することを特徴とする。
【0015】
この発明において、前記DC/DC変換部は、インダクタ、トランスの一次巻線、コンデンサを直列接続した直列共振回路と、前記直流電源から前記直列共振回路に流れる共振電流を周期的に反転させるスイッチング動作を行うスイッチング素子とを備えることが好ましい。
【0016】
この発明において、前記スイッチング素子は、前記直列共振回路に直列接続され、前記スイッチング素子がオンしてから、このスイッチング素子に流れる共振電流が増加した後に所定電流を下回るまでの共振期間は、このスイッチング素子のオン期間以下に設定されることが好ましい。
【0017】
この発明において、前記共振期間は、前記スイッチング素子のオン期間に0.7を乗じた値以上に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明では、DC/DC変換部とDC/AC変換部とを備えて、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の電力変換装置を示すブロック構成図である。
【図2】同上のDC/DC変換部を示す回路構成図である。
【図3】ダイオードにおける電圧および電流を示す波形図である。
【図4】実施形態のダイオードにおける電圧および電流を示す波形図である。
【図5】同上の共振電流を示す波形図である。
【図6】従来の電力変換装置を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(実施形態)
図1は、本実施形態の電力変換装置A1(DC/ACコンバータ)のブロック構成を示しており、電力変換装置A1は、DC/DC変換部1と、DC/AC変換部2とを備えている。
【0022】
DC/DC変換部1は、スイッチング回路11と、高周波トランスTr1と、整流回路12とで構成され、図2にDC/DC変換部1の回路構成を示す。
【0023】
スイッチング回路11は、直列接続したスイッチング素子Q1,Q2と直列接続したスイッチング素子Q3,Q4との並列回路と、スイッチング素子Q1〜Q4の各々に並列接続したコンデンサC1〜C4とを備える。スイッチング素子Q1,Q2およびスイッチング素子Q3,Q4の各直列回路の両端間には、直流電源E1が接続されている。そして、駆動回路K1が、スイッチング素子Q1,Q4とスイッチング素子Q2,Q3とを交互にオン・オフ駆動する。さらに、スイッチング素子Q1,Q2およびスイッチング素子Q3,Q4の各接続中点間には、直列共振回路K2が接続されている。直列共振回路K2は、インダクタLsと、コンデンサCsと、高周波トランスTr1の一次巻線N1とが直列接続されており、スイッチング回路11は、LLC共振型コンバータを構成している。
【0024】
そして、整流回路12は、フルブリッジ接続したダイオードD1〜D4と、出力端間に接続したコンデンサC5とを備えている。高周波トランスTr1の二次巻線N2に発生する誘起電圧は、ダイオードD1〜D4によって全波整流され、この整流電圧がコンデンサC5の両端間に印加される。
【0025】
上記のように構成されたDC/DC変換部1は、スイッチング素子Q1,Q4とスイッチング素子Q2,Q3とを交互にオン・オフ駆動することで、直流電源E1から供給される電流を周期的に極性反転させて、高周波トランスTr1の一次巻線N1へ供給する。そして、高周波トランスTr1の二次巻線N2には誘起電圧が発生し、整流回路12によって整流されて、整流回路12の出力端間には直流電圧Vdc2が発生する。この直流電圧Vdc2は、直流電源E1からDC/DC変換部1に入力される直流電圧Vdc1を昇圧または降圧した電圧になる。
【0026】
ここで、駆動回路K1は、DC/DC変換部1に入力される直流電圧Vdc1、DC/DC変換部1から出力される直流電圧Vdc2の各値に関わらす、予め決められたスイッチング周波数(オン期間およびオフ期間)で、スイッチング素子Q1〜Q4をオン・オフ駆動する。すなわち、DC/DC変換部1は、オープンループ制御によって、直流電圧Vdc1を昇圧または降圧した直流電圧Vdc2を生成している。したがって、DC/DC変換部1の入出力状態を検出する検出部や、直流電圧Vdc2をフィードバック制御する制御回路が不要となり、消費電力の低減による電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる。
【0027】
次に、DC/AC変換部2は、スイッチング回路21と、フィルタ回路22と、検出部23(第1の出力検出部)と、制御回路24とで構成される。
【0028】
スイッチング回路21は、直流電圧Vdc2を入力とし、図示しないスイッチング素子をオン・オフ駆動することによって、直流電圧Vdc2を交流電圧に変換する。そして、スイッチング回路21が出力する交流電圧はフィルタ回路22を通り、不要な周波数帯域が減衰した交流電圧Vac1をフィルタ回路22から出力する。
【0029】
そして、検出部23は、交流電圧Vac1を検出しており、制御回路24は、交流電圧Vac1の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、交流電圧Vac1を目標電圧にフィードバック制御している。
【0030】
このように電力変換装置A1は、DC/DC変換部1がオープンループ制御を行い、DC/AC変換部2がフィードバック制御を行っている。したがって、オープンループ制御を行うDC/DC変換部1が出力する直流電圧Vdc2が変動した場合でも、フィードバック制御を行うDC/AC変換部2は、出力する交流電圧Vac1を目標電圧に一致させることができる。すなわち、電力変換装置A1は、消費電力の低減による電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図りながら、出力電圧の精度を確保することができる。
【0031】
また、DC/DC変換部1は、直列共振回路K2を用いたLLC共振型コンバータで構成されており、スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング損失を低減させることができ、さらなる高効率化を図ることができる。
【0032】
次に、DC/DC変換部1のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング周期と直列共振回路K2の共振電流との関係について、説明する。
【0033】
図3は、整流回路12のダイオードD1〜D4(以降、ダイオードD1〜D4を区別しない場合、ダイオードDAと称す)におけるカソード−アノード間の電圧Vkの電圧波形Y1、および順方向電流Ifの電流波形Y2を示す。なお、直列共振回路K2の共振電流は、スイッチング素子Q1〜Q4(以降、スイッチング素子Q1〜Q4を区別しない場合、スイッチング素子QAと称す)を流れるが、この共振電流の波形は、順方向電流Ifの電流波形Y2と略同様になる。
【0034】
スイッチング素子QAは、ターンオンした後、直列共振回路K2の共振電流が流れる(図3の電流波形Y2参照)。そして、共振電流が流れている途中でスイッチング素子QAがターンオフした場合、ダイオードDAに流れる電流も急激に減少し、ダイオードDAには逆回復電流Irが流れる(図3参照)。ダイオードDAにおいて、逆回復電流Irは電力損失の要因となる。
【0035】
そこで、本実施形態では、スイッチング素子QAの各スイッチング周期と共振電流との関係を、図4のように設定する。図4は、ダイオードDAにおけるカソード−アノード間の電圧Vkの電圧波形Y3、および順方向電流Ifの電流波形Y4を示しており、スイッチング素子QAがターンオンすると、スイッチング素子QAに流れる共振電流が増加した後に低下する。そして、スイッチング素子QAがターンオンしてから、共振電流が「0」近傍の所定電流を下回るまでの期間を共振期間Toとした場合、共振期間Toは、スイッチング素子QAのオン期間Ts以下に設定される。すなわち、直列共振回路K2のインダクタLsとコンデンサCsとの各定数を調整することによって、共振電流の共振期間Toとスイッチング素子QAのオン期間Tsとの関係を、[To≦Ts]に予め設定する。
【0036】
したがって、スイッチング素子QAがターンオフした時点で、ダイオードDAに流れる電流は略0になり、ダイオードDAに発生する逆回復電流Irは抑制されるので、整流回路12における電力損失が低減し、電力効率のさらなる向上を図ることができる。
【0037】
また、図5は共振電流の電流波形Y5,Y6を示しており、電流波形Y5は、共振電流の共振周波数を高くして、短い共振期間To1に設定した場合の電流波形であり、電流波形Y6は、共振電流の共振周波数を低くして、長い共振期間To2に設定した場合の電流波形である。そして、短い共振期間To1に対応する電流波形Y5のピーク値は、長い共振期間To2に対応する電流波形Y6のピーク値より高くなり、共振期間Toを短くするほど、スイッチング素子QAのオン抵抗による電力損失が増大してしまう。
【0038】
そこで、共振期間Toとスイッチング素子QAのオン期間Tsとの関係を、[0.7・Ts≦To≦Ts]に設定する。この場合、スイッチング素子QAのオン抵抗による電力損失を抑制でき、電力効率のさらなる向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
A1 電力変換装置
1 DC/DC変換部
11 スイッチング回路
12 整流回路
Tr1 高周波トランス
2 DC/AC変換部
21 スイッチング回路
22 フィルタ回路
23 検出部(第1の出力検出部)
24 制御回路
E1 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電圧をオープンループ制御によって昇圧または降圧するDC/DC変換部と、
前記DC/DC変換部が出力する直流電圧をフィードバック制御によって交流電圧に変換するDC/AC変換部とを備え、
前記DC/AC変換部は、前記交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記交流電圧の検出値が所定の目標値に一致する方向に前記交流電圧をフィードバック制御する制御回路とを具備する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記DC/DC変換部は、インダクタ、トランスの一次巻線、コンデンサを直列接続した直列共振回路と、前記直流電源から前記直列共振回路に流れる共振電流を周期的に反転させるスイッチング動作を行うスイッチング素子とを備えることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、前記直列共振回路に直列接続され、前記スイッチング素子がオンしてから、このスイッチング素子に流れる共振電流が増加した後に所定電流を下回るまでの共振期間は、このスイッチング素子のオン期間以下に設定されることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記共振期間は、前記スイッチング素子のオン期間に0.7を乗じた値以上に設定されることを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200122(P2012−200122A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64108(P2011−64108)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】