説明

電力変換装置

【課題】フィルタコンデンサの容量増加といった手段によらず、制御上の対策によってインバータの直流電圧の脈動を抑制する
【解決手段】チョッパ等の直流電圧源の出力電圧をインバータ13により交流電圧に変換し、チョッパの出力電圧を制御するための電圧調節器23と出力電流を制御するための電流調節器25とを備えた電力変換装置において、交流負荷18の瞬時電力を演算する電力演算器102と、前記瞬時電力とチョッパの出力電圧検出値とからインバータ13の入力電流瞬時値を演算する手段と、を有し、電圧調節器23から出力されるインバータ13の入力電流指令値に前記入力電流瞬時値を正極性で加算した値をチョッパの出力電流指令値とし、この出力電流指令値と出力電流検出値との偏差を電流調節器25に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の直流電圧をインバータにより交流電圧に変換する電力変換装置に関し、例えば、鉄道車両用の直流補機及び交流補機に安定した電源電圧を供給するための補助電源装置として好適な電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の補助電源装置では、通常、電源変圧器の3次巻線電圧を整流し、フィルタコンデンサにより平滑して得た直流電圧をチョッパにより安定化して出力する方式が採られている。
鉄道車両に搭載される各種の補機のうち、電源電圧として例えば100[V]の直流電圧が供給されるものは、一般に直流補機と呼ばれており、この直流補機には、前記チョッパから出力される直流電圧が供給されている。
一方、エアコンのコンプレッサー、照明器具等の補機には、電源電圧として例えば100[V],50[Hz]の交流電圧が供給されるため、これらの補機は交流補機と呼ばれている。これらの交流補機には、チョッパの直流出力電圧をインバータにより変換して得た交流電圧が供給されている。なお、インバータの入力電流(チョッパの出力電流)にはインバータの出力周波数の2倍周波数の脈動電流が含まれるので、この脈動電流成分の影響を受けて、インバータの直流入力電圧(チョッパの出力電圧)は同じ周波数で脈動することになり、言い換えれば、直流補機の電源電圧が脈動することになる。
【0003】
ここで、以下の説明では、直流補機を直流負荷とも呼び、交流補機を交流負荷とも呼ぶこととする。また、制御に関する説明において、各種制御信号として用いられる制御量は、具体的には電圧を意味している。
【0004】
さて、図6は、特許文献1の第11図に記載されたチョッパ装置に基づく降圧形チョッパによって直流負荷に直流電圧を供給し、かつ、この直流電圧をインバータにより交流電圧に変換して交流負荷に供給するようにした電力変換装置の構成図である。
以下、この回路の構成及び動作を説明する。
図6において、単相交流電源1の交流電圧は整流回路2により整流され、整流電圧用フィルタリアクトル3及び整流電圧用フィルタコンデンサ4により平滑されて直流電圧Eに変換される。
【0005】
直流電圧Eは、スイッチング素子5、還流ダイオード7、フィルタリアクトル8及びフィルタコンデンサ9からなるチョッパにより降圧され、直流負荷12が必要とする直流出力電圧Eに変換される。ここで、Echはスイッチング素子5の出力電圧であり、矩形波状電圧のパルス列である。
【0006】
チョッパの出力電流Iは出力電流検出器10により検出され、出力電流変換器28を介して出力電流検出値Idoとなる。また、チョッパの直流出力電圧Eは出力電圧検出器11により検出され、出力電圧変換器29を介して出力電圧検出値Edoとなる。なお、直流負荷12の両端には、交流負荷用単相インバータ13が接続されている。
【0007】
チョッパの出力電圧は、出力電圧設定器21により出力電圧指令値Edoとして与えられる。出力電圧指令値Edoと出力電圧検出値Edoとの偏差が加算器22により求められ、後段の電圧調節器23により上記偏差がゼロとなるように制御が行われる。この電圧調節器23の出力は、チョッパの出力電流指令値Idoとなる。
出力電流指令値Idoと出力電流検出値Idoとの偏差が加算器24により求められ、後段の電流調節器25により上記偏差がゼロになるように制御が行われる。
電圧調節器23及び電流調節器25には、それぞれ、電圧制御系及び電流制御系に適合した制御定数をもつ比例積分調節器(PI調節器)が用いられる。なお、以下の説明では比例積分調節器をPI調節器ともいう。
【0008】
電流調節器25の出力Eは、スイッチング素子5のオン/オフ状態を決める信号となる。鋸歯状波発生器26は、スイッチング素子5のスイッチング周波数を決めるキャリアとしての鋸歯状波信号Eを発生する。EとEとはゲートパルス発生器27により比較され、その出力はスイッチング素子5のオン/オフを決定するパルス列信号Eとなる。このパルス列信号Eはスイッチング素子駆動回路6を介してスイッチング素子5に与えられ、スイッチング素子5をオン/オフ駆動することでチョッパ動作が実現される。
この例において、ゲートパルス発生器27はE<EのときにE=1、すなわちスイッチング素子5をオンし、E≧EのときにE=0、すなわちスイッチング素子5をオフするように動作する。
【0009】
直流出力電圧Eは単相インバータ13によりPWM波形の交流電圧に変換され、交流フィルタ14及び絶縁変圧器15を通って交流負荷18用の交流出力電圧Eacに変換される。なお、単相インバータ13はフルブリッジ接続されたスイッチング素子Q〜Qにより構成されている。
交流出力電流Iacは交流出力電流検出器16により検出され、交流電流変換器35を介して出力電流検出値Iacoとなる。また、交流出力電圧Eacは交流出力電圧検出器17により検出され、交流電圧変換器36を介して出力電圧検出値Eacoとなる。
【0010】
交流出力電圧Eacは、交流電圧設定器30により出力電圧指令値Eacoとして与えられる。出力電圧指令値Eacoと出力電圧検出値Eacoとの偏差が加算器31により求められ、後段の交流電圧調節器32では上記偏差がゼロとなるように制御が行われる。交流電圧調節器32の出力Eagoは、過電流保護回路33に入力される。
【0011】
過電流保護回路33は、過電流制限機能を備えており、Iacoが所定の制限値以下である場合にはEagoをそのまま伝送し、インバータ用スイッチング素子駆動回路34の入力信号Eagとして出力する。また、過電流保護回路33は、Iacoが上記制限値を超える場合にはEagを遮断するように動作する。
インバータ用スイッチング素子駆動回路34は、入力信号Eagに基づいて、インバータ用スイッチング素子Q〜Qのゲート駆動パルス信号Qg1〜Qg4を生成し、出力する。
このように単相インバータ13は、チョッパの制御系とは切り離されて独立した制御系によって制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平6−11186号公報(第2頁左欄第29行〜第5頁左欄第5行、第11図〜第13図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、単相インバータ13の入力電流Iはインバータ周波数の2倍周波数で脈動し、チョッパの直流出力電圧Eもインバータ周波数の2倍周波数で脈動する。この脈動電圧を低減するために、図6に示した従来技術では、交流負荷18の容量に応じてフィルタコンデンサ9の容量を大きくするといった手段を講じており、これによって直流出力電圧Eに含まれる脈動電圧を規定値以下に収めている。
【0014】
図6に示したように、チョッパの出力側に、直流負荷と単相インバータ及び交流負荷が存在する場合について、チョッパの電圧及び電流の挙動をシミュレーションにより求めてみる。
一例として、シミュレーション条件を次のように設定する。
・交流電源1の電圧:単相,50[Hz],318[V](実効値)
・直流出力電圧E:100[V]
・チョッパ周波数f:8.1[kHz]
・フィルタリアクトル8のインダクタンス値:190[μH]
・フィルタコンデンサ9の容量値:4800[μF]
・直流負荷12:50[A]/2[Ω]
・単相インバータ13の出力周波数:50[Hz]
・単相インバータ13の入力電流I:(70+80sin2π×100t)[A]
すなわち、直流70[A]をベースとして、振幅80[A],周波数100[Hz]の正弦波電流源を負荷として模擬する。なお、tは時間[sec]である。
【0015】
図7は、上記シミュレーションの結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。
前述した如く、Eは直流出力電圧、Echはスイッチング素子5の出力電圧であり、8.1[kHz]の矩形波状電圧のパルス列である。また、Iはチョッパの出力電流、Eはチョッパのスイッチング素子5のオン/オフ時間を制御するためのチョッパ制御電圧(電流調節器25の出力)である。
【0016】
更に、期間Tは交流負荷18のみでIが断続している期間を示し、期間Tは、交流負荷18に直流負荷12(50[A]/2[Ω])が追加されてIが連続している期間を示している。
図7から明らかなように、Iの断続及び連続に関わらず、EはIの脈動に起因して、インバータ13の周波数(50[Hz])の2倍、すなわち100[Hz]で変動する脈動電圧となる。このEの脈動幅は、Iが断続する期間Tでは100±10[V](±10%)、Iが連続する期間Tでは100±6[V](±6%)であり、何れも大きい脈動電圧幅となっている。
【0017】
直流出力電圧Eの脈動電圧幅を、仮に100±2[V](±2%)以内に抑えるとするならば、直流中間回路のフィルタコンデンサ9の容量値は5倍の約25000[μF]が必要となり、装置の大型化とコスト高を招く。従って、チョッパの直流出力電圧(インバータの直流入力電圧)の脈動を抑えて実用的な定電圧を実現するためには、制御上の対策が必要となる。
【0018】
そこで、本発明の解決課題は、フィルタコンデンサの容量増加による装置の大型化やコストの上昇を招くことなく、制御上の対策によってインバータの直流入力電圧の脈動を抑制するようにした電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、直流電圧源から出力される一定の直流電圧をインバータにより交流電圧に変換して交流負荷に供給する電力変換装置であって、前記直流電圧源の出力電圧を制御するための電圧調節手段と前記直流電圧源の出力電流を制御するための電流調節手段とを備えた電力変換装置において、
前記インバータの交流電圧検出値と交流電流検出値とから前記交流負荷の瞬時電力を演算する手段と、
前記瞬時電力と前記直流電圧源の出力電圧検出値とから前記インバータの入力電流瞬時値を演算する手段と、
を有し、
前記電圧調節手段から出力される前記インバータの入力電流指令値に前記インバータの入力電流瞬時値を正極性で加算した値を、前記直流電圧源の出力電流指令値として前記電流調節手段に入力するものである。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電力変換装置において、
前記電流調節手段は、比例調節手段及び積分調節手段を備え、
前記直流電圧源の出力電流指令値に比例する信号の大きさが前記積分調節手段の出力信号の大きさよりも小さくなった時に、前記積分調節手段の機能を無能化する積分調節機能無能化手段を備えたものである。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した電力変換装置において、
前記積分調節機能無能化手段を、
前記積分調節手段の出力側にアノードが接続されるダイオードと、
前記ダイオードのカソードと前記電流調節手段の入力側との間に接続される比例演算手段と、により構成したものである。
【0022】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載した電力変換装置において、
前記直流電圧源をチョッパにより構成し、このチョッパの直流出力電圧を電源電圧とする直流負荷を備えたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、単相インバータの入力電流瞬時値を直流電圧源の出力電流指令値に正極性で加算して電流制御系に脈動電流のフォーシングをかけることにより、直流電圧源の直流出力電圧、すなわちインバータの直流入力電圧の脈動を抑制することができる。
更に、電流調節手段を構成する積分調節手段の出力を電流調節手段の入力側に強制的に引き込むことにより、直流出力電流の連続、断続に関わらず、直流電圧の脈動を一層、小さくすることができる。
すなわち、従来のようにフィルタコンデンサの容量を大きくすることなく、制御系に若干の変更及び追加を加えることで直流電圧の脈動を抑制可能であり、特にこれらの制御系は主にソフトウェアによって構成されるため、ハードウェアを追加する必要もない。
従って、本発明によれば、装置の小型化、低価格化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態についてのシミュレーション結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。
【図4】第2実施形態についてのシミュレーション結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。
【図5】本発明の第3実施形態の主要部を示すブロック図である。
【図6】電力変換装置の従来技術を示す構成図である。
【図7】図6の従来技術についてのシミュレーション結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示すブロック図であり、図6と同一番号を付した構成要素は同一の機能を持つ要素である。なお、電圧、電流等の電気量についても、図1では図6と同一の記号を付してある。
以下では、図6との相違点を中心として本実施形態の構成及び動作を説明する。
【0026】
図1の第1実施形態では、図6に対して加算器101、電力演算器102及びインバータ入力電流演算器103が付加されている。
電力演算器102は交流負荷の瞬時電力Wacoを演算する機能を有し、交流出力電流検出値Iaco,交流出力電圧検出値Eaco及び係数αを用いて、Waco=αIaco×Eaco[W]を演算する。
入力電流演算器103はインバータ13の入力電流瞬時値Iaoを演算する機能を有し、瞬時電力Waco,直流出力電圧検出値Edo及び係数βを用いて、Iao=βWaco/Edo[A]を演算する。ここで、入力電流瞬時値Iaoは、インバータ13の入力電流検出値Iと同等の値となる。
【0027】
図1では、電圧調節器23の出力を入力電流指令値Iaoで表すと共に、加算器101にてIaoにIaoを正極性で加算して得たIod(=Iao+Iao)を電流調節器25の入力電流指令値とする。入力電流瞬時値Iaoには、交流負荷18に応じてインバータ周波数の2倍周波数で脈動する脈動電流が含まれるので、Iaoを電流調節器25の入力に正極性にて加算することは、電流制御系の電流指令値に脈動電流分を正極性にて加えること、つまりフォーシング制御することになる。これにより、直流出力電圧設定器21,出力電圧検出器11,出力電圧変換器29,加算器22及び電圧調節器23を含む電圧制御系において、脈動電流に起因する直流出力電圧Eの脈動成分がゼロになるように先行して補償されることになり、結果として直流出力電圧Eの脈動を抑制することができる。すなわち、フォーシング制御により、直流電圧制御系における脈動電流の影響が低減されることになる。
【0028】
図3は、図1について行ったシミュレーションの結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。シミュレーション条件は、前述した図6,図7における条件と同じである。
図3によれば、直流出力電圧Eの変動は、電流Iが断続する期間Tでは100±4.4[V](±4.4%)、電流Iが連続する期間Tでは100±1.7[V](±1.7%)となっており、図7に比べて大幅に低減されていることがわかる。
【0029】
次に、図2は本発明の第2実施形態を示すブロック図であり、以下では、図1の第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、図2において、図1と同一番号を付した構成要素は同一の機能を持つ要素であり、電圧、電流等の電気量についても図1と同一の記号を付してある。
【0030】
この第2実施形態において、104は図1の電流調節器25に相当する電流調節器であり、電流調節器104及び電圧調節器23は、それぞれの制御系に適合したPI定数をもつPI調節器により構成されている。
電流調節器104は、図2に示す如く加算器24の出力が加えられ、かつ互いに並列に接続されたP調節器(比例調節器)1041及びI調節器(積分調節器)1042と、これらの出力を加算する加算器1043とから構成される。すなわち、P調節器1041の出力信号EopとI調節器1042の出力信号Eoiとの加算結果E(=Eop+Eoi)がPI調節器104の出力信号(チョッパ制御電圧)Eとなっている。
【0031】
電圧制御系を構成する電圧調節器23はI調節要素を持つため、例えば100[Hz]の脈動電流には追従できない。このため、本実施形態では、100[Hz]の脈動電流にも追従できるように、電流制御系の電流調節器104の入力にインバータ13の入力電流瞬時値Iaoからフォーシングをかけている(第1実施形態における電流調節器25も同様)。
【0032】
しかし、直流負荷電流が小さくなって出力電流Iが断続する範囲では、電流調節器104の出力Eを急激に小さくしてチョッパのスイッチング素子5の通流率を絞る必要がある。そこで、本実施形態では、I調節器1042の出力Eoiをダイオード105と比例演算手段としての比例電圧変換器106を通して電流調節器104の電流指令値Idoに強制的に引き込むことにより、電流調節器104のI調節機能を無能化するようにしている。なお、ダイオード105の極性は、図示するようにI調節器1042の出力側がアノード、比例電圧変換器106側がカソードである。
つまり、Idoに比例電圧変換器106の比例定数を乗じた信号(Ido相当値)の大きさが信号Eoiの大きさより小さくなると、EoiがIdo相当値に等しくなり、実質的にI調節機能を無能化するように動作する。
ここで、ダイオード105及び比例電圧変換器106は、請求項における積分調節機能無能化手段を構成している。
【0033】
図4は、図2について行ったシミュレーションの結果を示す各部の電圧,電流の波形図である。シミュレーション条件は、第1実施形態の図1,図3(言い換えれば図6,図7)と同じである。
図4を図3と比較すると、特に、出力電流Iが断続する期間Tでチョッパ制御電圧Eが大きく絞られ、チョッパ出力電圧Echにはチョッパオフ期間が現れている。これにより、直流出力電圧Eは、出力電流Iが断続する期間T及び連続する期間Tとも100±1.7[V](±1.7%)となり、電圧変動幅が大幅に改善されていることがわかる。
【0034】
なお、第1及び第2実施形態はチョッパを降圧形とした場合のものであるが、本発明はチョッパを昇圧形とした場合にも適用可能である。
図5は、昇圧形チョッパを備えた第3実施形態の主要部を示すブロック図であり、図1,図2と同一番号を付した構成要素は同一の機能を有している。なお、図5において、51は昇圧形チョッパのスイッチング素子、61はスイッチング素子駆動回路、71はダイオード、81はフィルタリアクトル、91はフィルタコンデンサを示す。
【0035】
図示されていないが、この第3実施形態におけるチョッパの制御回路、単相インバータ13の制御回路としては図1または図2の構成を適用することができ、その動作としては、直流出力電圧Eがスイッチング素子51の直流入力電圧Eを昇圧した値になる以外は、実質的に第1または第2実施形態と同様である。
【0036】
以上の各実施形態では、インバータの直流入力電圧を降圧形チョッパまたは昇圧形チョッパの直流出力電圧から得る場合を説明した。しかし、本発明の要旨は、インバータの直流入力電圧の脈動を抑制することにあるので、この直流入力電圧を発生させるための直流電圧源の構成はチョッパに限定されるものではなく、所定の大きさの一定の直流電圧を発生可能な手段であれば良い。
【符号の説明】
【0037】
1 交流電源
2 整流回路
3 整流電圧用フィルタリアクトル
4 整流電圧用フィルタコンデンサ
5 スイッチング素子
6 スイッチング素子駆動回路
7 還流ダイオード
8 フィルタリアクトル
9 フィルタコンデンサ
10 出力電流検出器
11 出力電圧検出器
12 直流負荷
13 単相インバータ
14 交流フィルタ
15 絶縁変圧器
16 交流出力電流検出器
17 交流出力電圧検出器
18 交流負荷
21 直流出力電圧設定器
22 加算器
23 電圧調節器
24 加算器
25 電流調節器
26 鋸歯状波発生器
27 ゲートパルス発生器
28 出力電流変換器
29 出力電圧変換器
30 交流電圧設定器
31 加算器
32 交流電圧調節器
33 過電流保護回路
34 インバータ用スイッチング素子駆動回路
35 交流電流変換器
36 交流電圧変換器
51 スイッチング素子
61 スイッチング素子駆動回路
71 ダイオード
81 フィルタリアクトル
91 フィルタコンデンサ
101 加算器
102 電力演算器
103 インバータ入力電流演算器
104 電流調節器
1041 P調節器
1042 I調節器
1043 加算器
105 ダイオード
106 比例電圧変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源から出力される一定の直流電圧をインバータにより交流電圧に変換して交流負荷に供給する電力変換装置であって、前記直流電圧源の出力電圧を制御するための電圧調節手段と前記直流電圧源の出力電流を制御するための電流調節手段とを備えた電力変換装置において、
前記インバータの交流電圧検出値と交流電流検出値とから前記交流負荷の瞬時電力を演算する手段と、
前記瞬時電力と前記直流電圧源の出力電圧検出値とから前記インバータの入力電流瞬時値を演算する手段と、
を有し、
前記電圧調節手段から出力される前記インバータの入力電流指令値に前記インバータの入力電流瞬時値を正極性で加算した値を、前記直流電圧源の出力電流指令値として前記電流調節手段に入力することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力変換装置において、
前記電流調節手段は、比例調節手段及び積分調節手段を備え、
前記直流電圧源の出力電流指令値に比例する信号の大きさが前記積分調節手段の出力信号の大きさよりも小さくなった時に、前記積分調節手段の機能を無能化する積分調節機能無能化手段を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電力変換装置において、
前記積分調節機能無能化手段を、
前記積分調節手段の出力側にアノードが接続されるダイオードと、
前記ダイオードのカソードと前記電流調節手段の入力側との間に接続される比例演算手段と、
により構成したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した電力変換装置において、
前記直流電圧源をチョッパにより構成し、このチョッパの直流出力電圧を電源電圧とする直流負荷を備えたことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60848(P2012−60848A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204139(P2010−204139)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】