説明

電力変換装置

【課題】産業用車両に好適に利用可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】ハイサイドトランジスタMHUは、対応する相の出力端子OUTUと上側電源ラインLPの間に設けられ、電気的に並列なN個(Nは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニット14U1〜Nを含む。ローサイドトランジスタMLUは、対応する相の出力端子OUTUと下側電源ラインLNの間に設けられ、電気的に並列なN個のローサイドトランジスタユニット16U1〜Nを含む。スナバ回路12は、それぞれが、ひとつのハイサイドトランジスタユニット14およびそれと対応するひとつのローサイドトランジスタユニット16のペアごとに設けられる。ハイサイドトランジスタMHU、ローサイドトランジスタMLUおよびN個のスナバ回路12U1〜Nは、金属ベース基板上に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的な電力変換装置(インバータ)2の構成を示す回路図である。電力変換装置2は、モータをはじめとする負荷4を駆動するために利用される。電力変換装置2は、U、V、W相ごとに設けられたハイサイドトランジスタMH(U〜W)およびローサイドトランジスタML(U〜W)と、各相のハイサイドトランジスタMH(U〜W)、ローサイドトランジスタML(U〜W)を駆動するゲートドライブ回路10と、各相毎に設けられたスナバ回路12(U〜W)を備える。
【0003】
負荷に大電流を供給する場合、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLとして大容量のパワートランジスタが使用される。大容量のパワートランジスタにノイズが印加されると回路の信頼性を損なうおそれがあるため、これを防止するために、大型のスナバ回路が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−225140号公報
【特許文献2】特開2004−112999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、パワーモジュール(パワートランジスタ)の外側に、ブスバーを介して大容量のスナバ回路を接続する構成が開示される。一般にパワーモジュールの内部には、その容量に応じた個数のシリコンチップが内蔵される。この構成では、各シリコンチップとスナバ回路との距離が不均一となるため、スナバ回路との電気的な距離が遠いシリコンチップ上に形成されるトランジスタに対しては、十分なサージ抑制効果が得られないという問題が生ずる。
【0006】
またフォークリフトをはじめとする産業用車両では、インバータの高周波化が進んでおり、高周波のサージノイズを抑制する必要がある。ところが特許文献1の構成では、個々のパワーモジュールごとに大容量のスナバ回路が設けられるため、スナバ回路を構成する回路素子、たとえばキャパシタの容量値が大きくなる。キャパシタの周波数特性は、その容量の増大とともに劣化するため、これにより、高い周波数のサージを抑制することが困難となる。
【0007】
さらに産業用車両では、振動に対する耐性が重要である。特許文献1の構成では、スナバ回路が大容量の、すなわち大型で重い回路部品を用いて構成されており、それらがブスバー上にねじ止めされるため、振動が、回路の長期的な信頼性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、産業用車両に好適に利用可能な電力変換装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、フォークリフトに搭載され、モータに電力を供給する電力変換装置に関する。電力変換装置は、上側電源ラインと、下側電源ラインと、各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と上側電源ラインの間に設けられたハイサイドトランジスタと、各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と下側電源ラインの間に設けられたローサイドトランジスタと、N個のスナバ回路と、金属ベース基板と、を備える。
ハイサイドトランジスタは、電気的に並列なN個(Nは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニットを含んで構成される。ローサイドトランジスタは、電気的に並列なN個のローサイドトランジスタユニットを含んで構成される。N個のスナバ回路はそれぞれが、ひとつのハイサイドトランジスタユニットおよびそれと対応するひとつのローサイドトランジスタユニットのペアごとに設けられる。ハイサイドトランジスタ、ローサイドトランジスタおよびN個のスナバ回路は、金属ベース基板上に実装される。
ハイサイドトランジスタユニットおよびローサイドトランジスタユニットのペアおよびそれと対応するスナバ回路がひとつのレイアウト単位とされ、N個のレイアウト単位は金属ベース基板上に規則的に配置される。各レイアウト単位内において、ハイサイドトランジスタユニットおよびローサイドトランジスタユニットは、第1方向に隣接して配置され、それらと対応するスナバ回路は、ハイサイドトランジスタユニットおよびローサイドトランジスタユニットに対して、第1方向と垂直な第2方向に隣接して配置される。
【0010】
この態様によると、以下の利点を得ることができる。
第1に、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを複数のトランジスタユニットに分割し、各トランジスタユニットに隣接してスナバ回路を設けることにより、スナバ回路と保護対象のトランジスタの電気的な距離を短くでき、サージの抑制効果を高めることができる。
第2に、各レイアウト単位において、トランジスタユニットとスナバ回路の電気的な距離が等長とすることができる。これにより、一部のトランジスタユニットの信頼性が低下するのを防止できる。
第3に、N個のスナバ回路に分割することにより、ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタ全体に対して、ひとつのスナバ回路を設ける場合に比べて、スナバ回路を構成するキャパシタの容量値を小さくでき、高周波サージを好適に抑制できる。
第4に、また構成部品を金属ベース基板上に実装することにより、金属ベース基板を介して放熱することができ、温度上昇を抑制できる。
第5に、スナバ回路の構成部品が、金属ベース基板上に実装されるため、ブスバーを介して接続する場合に比べて、振動に対する耐性を高めることができる。
これらの利点によって、産業用車両に好適に利用することが可能となる。
【0011】
金属ベース基板は、レイアウト単位ごとに物理的に分割して形成されてもよい。
この態様によれば、隣接するレイアウト単位の間の熱伝導を抑制することができ、あるレイアウト単位のスナバ回路あるいはトランジスタが、別のレイアウト単位のトランジスタからの熱によって加熱されるのを抑制できる。一般的には、回路部品や、回路部品と基板を接続するはんだは、温度が上昇、低下を繰り返すことにより、劣化が早まることになるが、この態様では温度変化が緩和されるため、長期的な信頼性を高めることができる。
さらにレイアウト単位ごとに物理的に分割することにより、異なる容量の負荷を駆動するいくつかの種類の電力変換装置を設計する際に、レイアウト単位の個数を容易に増減できるため、上述の利点を損なうことなく、設計効率を高めることができる。
【0012】
ある態様において、金属ベース基板には、スナバ回路それぞれを第2方向に挟むように形成されたスリットのペアが設けられていてもよい。
あるレイアウト単位のスナバ回路に着目すると、同じレイアウト単位のトランジスタからの熱的影響に加えて、隣接するレイアウト単位のトランジスタからの熱的影響を緩和できるため、長期的な信頼性を高めることができる。
【0013】
ハイサイドトランジスタユニットおよびローサイドトランジスタユニットはそれぞれ、第1方向に隣接する2個のサブトランジスタユニットを含んでもよい。金属ベース基板は、ハイサイドトランジスタユニットごと、ローサイドトランジスタユニットごとに分割されてもよい。
【0014】
ハイサイドトランジスタユニットおよびローサイドトランジスタユニットはそれぞれ、第1方向に隣接する2個のサブトランジスタユニットを含み、金属ベース基板は、2個のサブトランジスタユニットごとに分割して形成されてもよい。
【0015】
N個のスナバ回路はそれぞれ、上側電源ラインと下側電源ラインの間に直列に設けられた第1キャパシタおよび第2キャパシタを含むCスナバ回路であってもよい。第1キャパシタは、ハイサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置され、第2キャパシタは、ローサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置されてもよい。
【0016】
N個のスナバ回路はそれぞれ、上側電源ラインと下側電源ラインの間に順に直列に設けられた第3キャパシタ、第1ダイオード、第2ダイオードおよび第4キャパシタと、第3キャパシタと第1ダイオードの接続点と、下側電源ラインの間に設けられた第1抵抗と、第2ダイオードと第4キャパシタの接続点と、上側電源ラインの間に設けられた第2抵抗と、を含むRCDスナバ回路であってもよい。第3キャパシタおよび第1ダイオードは、ハイサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置され、第2ダイオードおよび第4キャパシタは、ローサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置されてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、産業用車両に要求される仕様を満たす電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的な電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す等価回路図である。
【図3】図2の電力変換装置の構成を示す平面図である。
【図4】第1の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図5】第2の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図6】第3の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【図7】図7(a)、(b)は、図6のレイアウト単位の構成例を示す図である。
【図8】図8(a)、(b)は、図6のレイアウト単位の別の構成例を示す図である。
【図9】図9(a)、(b)は、フォークリフトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
図2は、実施の形態に係る電力変換装置2の構成を示す等価回路図である。電力変換装置2は、フォークリフトをはじめとする産業用車両に搭載され、荷役用のモータや、車輪用のモータを駆動する。電力変換装置2の基本的な構成は、図1の電力変換装置2rと同様である。すなわち、電力変換装置2は、上側電源ラインLPと、下側電源ラインLNと、各相ごとに設けられ、対応する相U(V、W)の出力端子OUTU(OUTV、OUTW)と上側電源ラインLPの間に設けられたハイサイドトランジスタMHU(MHV、MHW)と、各相U(V、W)ごとに設けられ、対応する相U(V、W)の出力端子OUTU(OUTV、OUTW)と下側電源ラインLNの間に設けられたローサイドトランジスタMLU(MLV、MLW)を備える。図2にはU相の構成のみが示され、V相、W相に関する構成は省略されている。また、電力変換装置2は、U相、V相、W相が同様に構成されるため、その特徴についてはU相を参照して説明するものとする。
【0023】
ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタのいずれで構成されてもよい。
【0024】
ハイサイドトランジスタMHUは、電気的に並列なN個(Nは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニット14U1〜Nを含んで構成される。同様に、ローサイドトランジスタMLUは、電気的に並列なN個のローサイドトランジスタユニット16U1〜Nを含んで構成される。
【0025】
電力変換装置2は、N個のスナバ回路12U1〜Nを備える。各スナバ回路12Uは、トランジスタユニットのペア14U、16Uごとに設けられる。
【0026】
図3は、図2の電力変換装置2の構成を示す平面図である。図3にはN=4の場合が示される。ハイサイドトランジスタMHを構成するトランジスタユニット14U1〜4、ローサイドトランジスタMLを構成する16U1〜4およびN個のスナバ回路12U1〜4は、金属ベース基板20上に実装される。
【0027】
i番目(1≦i≦N)のトランジスタユニットに着目すると、ハイサイドトランジスタユニット14Uおよびローサイドトランジスタユニット16Uのペアおよびそれと対応するスナバ回路12Uがひとつのレイアウト単位22Uとされる。そして、N個のレイアウト単位22U1〜4は金属ベース基板20上に規則的に配置される。
【0028】
各レイアウト単位22U内において、ハイサイドトランジスタユニット14Uおよびローサイドトランジスタユニット16Uは、第1方向Xに隣接して配置される。また、それらと対応するスナバ回路12Uは、ハイサイドトランジスタユニット14Uよびローサイドトランジスタユニット16Uに対して、第1方向Xと垂直な第2方向Yに隣接して配置される。
【0029】
以上が電力変換装置2の構成である。この電力変換装置2によると、以下の利点を得ることができる。
【0030】
U相に着目すると、ハイサイドトランジスタMHUがN個のトランジスタユニット14U1〜Nに分割され、ローサイドトランジスタMLUがN個のトランジスタユニット16U1〜Nに分割され、さらに、スナバ回路12UがN個に分割して構成される。これにより、各スナバ回路12Uを、それに対応する各トランジスタユニット14U、16Uに隣接して配置することができ、スナバ回路と、保護対象のトランジスタの電気的な距離を短くできる。それにより、サージの抑制効果を高めることができる。
【0031】
各レイアウト単位22Uにおいて、トランジスタユニット14U、16Uとスナバ回路12Uの電気的な距離が等長とすることができる。これにより、すべてのトランジスタユニットに対するサージを抑制でき、一部のトランジスタユニットの信頼性が低下する状況を防止できる。
【0032】
図1のようにハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタ全体に対して、ひとつのスナバ回路を設ける場合、スナバ回路12を構成するキャパシタの容量値が大きくなる。この場合、低周波のサージノイズは好適に抑制できるが、高周波サージを抑制することは困難であり、高周波化が進むフォークリフト用の電力変換装置では問題となる。これに対して実施の形態に係る電力変換装置2では、N個のスナバ回路12U1〜Nに分割することにより、各スナバ回路12Uそれぞれのキャパシタの容量値が小さくなるため、高周波サージを好適に抑制できる。
【0033】
さらに、また構成部品を金属ベース基板20上に実装することにより、金属ベース基板20を介して放熱することができ、各部品の温度上昇を抑制できる。
【0034】
さらに、スナバ回路12の構成部品が、金属ベース基板20上に実装されるため、ブスバーを介して接続する場合に比べて、振動に対する耐性を高めることができる。
【0035】
これらの利点によって、実施の形態に係る電力変換装置2は、産業用車両に要求される仕様を満たすことが可能となる。
【0036】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0037】
(第1の変形例)
図4は、第1の変形例に係る電力変換装置2aの構成を示す図である。
金属ベース基板20は、レイアウト単位22Uごとに物理的に分割して形成される。隣り合うレイアウト単位22U同士は、ねじ止めされてもよい。
【0038】
この変形例によれば、隣接するレイアウト単位22Uの間の熱伝導を抑制することができ、あるレイアウト単位22Uのトランジスタユニット14U、16Uあるいはスナバ回路12Uが、別のレイアウト単位22Uのトランジスタの熱により加熱されるのを抑制できる。これにより、トランジスタユニットやスナバ回路およびはんだの温度変動を抑制することができ、それらの劣化を抑制し、長期的信頼性を高めることができる。
【0039】
またこの変形例によれば、レイアウト単位22Uの個数を容易に増減することができ、電力変換装置の駆動能力(電流容量)を簡易に変更することができる。つまり、設計効率を高めることができる。
【0040】
(第2の変形例)
図5は、第2の変形例に係る電力変換装置2bの構成を示す図である。
金属ベース基板20には、スナバ回路12U1〜4それぞれを第2方向Yに挟むように形成されたスリットのペアが設けられる。
この変形例によれば、あるレイアウト単位22Uのスナバ回路12Uに着目すると、一方のスリットにより、同じレイアウト単位22Uのトランジスタユニット14U、16Uからの熱的影響を緩和でき、他方のスリットにより、隣接するレイアウト単位22Uのトランジスタユニット14U、16Uからの熱的影響を緩和でき、長期的な信頼性を高めることができる。
【0041】
第2の変形例を、第1の変形例と組み合わせてもよい。すなわち、レイアウト単位ごとに金属ベース基板20を分割するとともに、スナバ回路12の両側にスリットを形成してもよい。
【0042】
(第3の変形例)
図6は、第3の変形例に係る電力変換装置2cの構成を示す図である。
この変形例において、ハイサイドトランジスタユニット14Uおよびローサイドトランジスタユニット16Uはそれぞれ、第1方向Xに隣接する2個のサブトランジスタユニット26、28を含む。
【0043】
金属ベース基板20は、レイアウト単位22Uごとではなく、ハイサイドトランジスタユニット14Uごと、ローサイドトランジスタユニット16Uごとに分割して形成される。
【0044】
この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、金属ベース基板20を分割することにより、第1の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、サブトランジスタユニットおよびトランジスタユニットの名称は便宜的なものであり、図6のサブトランジスタユニットは、図3〜5のトランジスタユニットに相当する。図6において、サブトランジスタユニットを、トランジスタユニットと把握する場合、電力変換装置2cは、以下のように理解することも可能である。
【0046】
電力変換装置2cにおいて、ハイサイドトランジスタMHUは、電気的に並列なN=K×L個(K、Lは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニットを含んで構成される。図6の例では、K=2、L=2である。同様にローサイドトランジスタMLUは、電気的に並列なK×L個のローサイドトランジスタユニットを含んで構成される。
【0047】
図6の電力変換装置2cは、L個のスナバ回路を備える。各スナバ回路12Uは、K個のハイサイドトランジスタユニットおよびそれらと対応するK個のローサイドトランジスタユニットのセットごとに設けられる。
【0048】
そして、K個のハイサイドトランジスタユニットおよびK個のローサイドトランジスタユニットおよびそれらと対応するスナバ回路12Uがひとつのレイアウト単位22Uを構成する。L個のレイアウト単位22Uが、金属ベース基板20上に規則的に配置される。
【0049】
各レイアウト単位22U内において、K個のハイサイドトランジスタユニットおよびK個のローサイドトランジスタユニットは、第1方向Xに隣接して配置される。またそれらと対応するスナバ回路12Uは、K個のハイサイドトランジスタユニットおよびK個のローサイドトランジスタユニットに対して、第1方向Xと垂直な第2方向Yに隣接して配置される。
【0050】
図7(a)、(b)は、図6のレイアウト単位22Uの構成例を示す図である。図7(a)は基板上のレイアウトを、図7(b)は等価回路図を示す。図7(b)のスナバ回路は、Cスナバ回路である。スナバ回路12Uは、上側電源ラインLPと下側電源ラインLNの間に直列に設けられた第1キャパシタC11、第2キャパシタC12を含む。第1キャパシタC11は、2つの並列なキャパシタC11a、C11bを含み、ハイサイドトランジスタユニット14Uのサブトランジスタユニット26、28に隣接して配置される。同様に第2キャパシタC12は、2つの並列なキャパシタC12a、C12bを含み、ローサイドトランジスタユニット16Uのサブトランジスタユニット26、28に隣接して配置される。分割された金属ベース基板の間は、ジャンパ(金属プレート)30、32により結線される。
【0051】
図8(a)、(b)は、図6のレイアウト単位22Uの別の構成例を示す図である。図8(a)は基板上のレイアウトを、図8(b)は等価回路図を示す。図8(b)のスナバ回路は、RCDスナバ回路である。スナバ回路12Uは、上側電源ラインLPと下側電源ラインLNの間に順に直列に設けられた第3キャパシタC13、第1ダイオードD11、第2ダイオードD12および第4キャパシタC14と、第3キャパシタC13と第1ダイオードD11の接続点P7と下側電源ラインLNの間に設けられた第1抵抗R11と、第2ダイオードD12と第4キャパシタC14の接続点P8と上側電源ラインLPの間に設けられた第2抵抗R12と、を含む。
【0052】
第3キャパシタC13および第1ダイオードD11は、ハイサイドトランジスタユニット14Uのサブトランジスタユニット26、28と隣接して配置される。第2ダイオードD12および第4キャパシタC14は、ローサイドトランジスタユニット16Uのサブトランジスタユニット26、28と隣接して配置される。
【0053】
抵抗R11、R12の抵抗値は、配線の抵抗値に比べて十分に高いため、トランジスタとの電気的距離が遠くても、スナバ回路の機能に影響はない。そこで第1抵抗R11、第2抵抗R12h、金属ベース基板20の外部に外付けされる。
【0054】
図6〜図8の構成によれば、ひとつのサブトランジスタユニット26、28に対して、スナバ回路を構成するひとつの回路部品を対応付けることができ、効率的なレイアウトを実現することができる。
【0055】
上述の電力変換装置2の用途を説明する。電力変換装置2は、高周波化が進み、かつ耐振動性が要求されるフォークリフトに好適に利用できる。
【0056】
図9(a)、(b)は、フォークリフトの構成を示す図である。図9(a)に示すように、フォークリフト1は、本体60、フォーク62、昇降体64、マスト66、車輪68を備える。マスト66は本体60の全方に設けられる。昇降体64は、油圧ポンプ(不図示)などの動力源によって駆動され、マスト66に沿って昇降する。昇降体64には、荷物を支持するためのフォーク62が取り付けられている。
【0057】
図9(b)は、フォークリフト1の電気系統の構成を示す図である。フォークリフト1は、2系統のモータM1、M2を備える。第1モータM1は、車輪68を回転させるための車輪用モータであり、第2モータM2は、昇降体64を昇降させる油圧アクチュエータを制御するための荷役用モータである。電力変換装置2_1、2_2はそれぞれ、電池80から直流電圧を受け、それを3相交流信号に変換し、対応するモータM1、M2へと供給する。電池80、電力変換装置2_1、2_2、モータM1、M2は、本体60に固定される。電力変換装置2_1、2_2は、別個のモジュールであってもよいし、単一のモジュールとして構成されてもよい。
【0058】
上述の電力変換装置は、その耐振動性、高周波サージの耐性などに鑑みて、このようなフォークリフト1に好適に利用できる。
【0059】
実施の形態では、三相モータを駆動する電力変換装置2について説明したが、本発明は駆動対象のモータは三相に限定されず、2相以上の多相モータに適用可能である。また、実施の形態では、電力変換装置2に直接的にモータ4が接続される場合を説明したが、電力変換装置2とモータ4の間に、別の変換装置あるいはその他の回路ブロックが挿入されていてもよい。
【0060】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
1…フォークリフト、2…電力変換装置、4…モータ、6…電源、C1…平滑化コンデンサ、10…ゲートドライブ回路、12…スナバ回路、14…ハイサイドトランジスタユニット、16…ローサイドトランジスタユニット、20…金属ベース基板、22…レイアウト単位、24…スリット、26,28…サブトランジスタユニット、M1…ハイサイドトランジスタ、M2…ローサイドトランジスタ、LP…上側電源ライン、LN…下側電源ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトに搭載され、モータに電力を供給する電力変換装置であって、
上側電源ラインと、
下側電源ラインと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記上側電源ラインの間に設けられたハイサイドトランジスタであって、電気的に並列なN個(Nは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニットを含んで構成される、ハイサイドトランジスタと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記下側電源ラインの間に設けられたローサイドトランジスタであって、電気的に並列なN個のローサイドトランジスタユニットを含んで構成される、ローサイドトランジスタと、
それぞれが、ひとつのハイサイドトランジスタユニットおよびそれと対応するひとつのローサイドトランジスタユニットのペアごとに設けられた、N個のスナバ回路と、
前記ハイサイドトランジスタ、前記ローサイドトランジスタおよび前記N個のスナバ回路が実装される金属ベース基板と、
を備え、
前記ハイサイドトランジスタユニットおよび前記ローサイドトランジスタユニットのペアおよびそれと対応する前記スナバ回路がひとつのレイアウト単位とされ、N個のレイアウト単位が前記金属ベース基板上に規則的に配置されるとともに、
各レイアウト単位内において、前記ハイサイドトランジスタユニットおよび前記ローサイドトランジスタユニットは、第1方向に隣接して配置され、それらと対応する前記スナバ回路は、前記ハイサイドトランジスタユニットおよび前記ローサイドトランジスタユニットに対して、前記第1方向と垂直な第2方向に隣接して配置されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記金属ベース基板は、前記レイアウト単位ごとに分割して形成されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記金属ベース基板には、前記スナバ回路それぞれを前記第2方向に挟むように形成されたスリットのペアが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ハイサイドトランジスタユニットおよび前記ローサイドトランジスタユニットはそれぞれ、前記第1方向に隣接する2個のサブトランジスタユニットを含み、
前記金属ベース基板は、前記ハイサイドトランジスタユニットごと、前記ローサイドトランジスタユニットごとに分割されることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記N個のスナバ回路はそれぞれ、前記上側電源ラインと下側電源ラインの間に直列に設けられた第1キャパシタおよび第2キャパシタを含むCスナバ回路であり、
前記第1キャパシタは、前記ハイサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置され、
前記第2キャパシタは、前記ローサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置されることを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記N個のスナバ回路はそれぞれ、
前記上側電源ラインと下側電源ラインの間に順に直列に設けられた第3キャパシタ、第1ダイオード、第2ダイオードおよび第4キャパシタと、
前記第3キャパシタと前記第1ダイオードの接続点と、前記下側電源ラインの間に設けられた第1抵抗と、
前記第2ダイオードと前記第4キャパシタの接続点と、前記上側電源ラインの間に設けられた第2抵抗と、
を含むRCDスナバ回路であり、
前記第3キャパシタおよび前記第1ダイオードは、それらと対応する前記ハイサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置され、
前記第2ダイオードおよび前記第4キャパシタは、前記ローサイドトランジスタのサブトランジスタユニットと隣接して配置されることを特徴とする請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
フォークリフトに搭載され、モータに電力を供給する電力変換装置であって、
上側電源ラインと、
下側電源ラインと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記上側電源ラインの間に設けられたハイサイドトランジスタであって、電気的に並列なK×L個(K、Lは2以上の整数)のハイサイドトランジスタユニットを含んで構成される、ハイサイドトランジスタと、
各相ごとに設けられ、対応する相の出力端子と前記下側電源ラインの間に設けられたローサイドトランジスタであって、電気的に並列なK×L個のローサイドトランジスタユニットを含んで構成される、ローサイドトランジスタと、
それぞれが、K個のハイサイドトランジスタユニットおよびそれらと対応するK個のローサイドトランジスタユニットのセットごとに設けられた、L個のスナバ回路と、
前記K個のハイサイドトランジスタ、前記K個のローサイドトランジスタおよび前記L個のスナバ回路が実装される金属ベース基板と、
を備え、
前記K個のハイサイドトランジスタユニットおよび前記K個のローサイドトランジスタユニットおよびそれらと対応する前記スナバ回路がひとつのレイアウト単位とされ、L個のレイアウト単位が前記金属ベース基板上に規則的に配置されるとともに、
各レイアウト単位内において、前記K個のハイサイドトランジスタユニットおよび前記K個のローサイドトランジスタユニットは、第1方向に隣接して配置され、それらと対応する前記スナバ回路は、前記K個のハイサイドトランジスタユニットおよび前記K個のローサイドトランジスタユニットに対して、前記第1方向と垂直な第2方向に隣接して配置されることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−17310(P2013−17310A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148543(P2011−148543)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】