説明

電力変換装置

【課題】平滑コンデンサ18をインバータINVa,INVb,INVc毎に備える場合には、電力変換装置の大型化を招くこと。
【解決手段】平滑コンデンサ18およびノーマルモードチョークコイル16を備える電源装置PSCは、インバータINVa,INVb,INVcで共有されている。インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれは、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれによって、操作される。それら操作信号は、三角波比較PWM処理によって生成される。この際、インバータINV1,INV2,INV3同士で、設定されるキャリア周波数を互いに相違させて且つ、設定したキャリア周波数をスペクトラム拡散処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力変換回路を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1に見られるように、複数のモータのそれぞれに接続される電力変換回路(インバータ)を備える電力変換装置が提案されている。詳しくは、この装置は、交流電源の電力を整流器および平滑コンデンサによって直流電力に変換する回路をインバータ毎に各別に備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように、整流器および平滑コンデンサを備える回路をインバータ毎に備える場合には、電力変換装置の大型化を招く。このため、たとえば電力変換装置を車載用途とする場合にあっては、その搭載スペースの制約を満たすことが困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、複数の電力変換回路を備える新たな電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の車載補機のそれぞれに電力を供給する各別の電力変換回路と、前記複数の電力変換回路の入力端子に接続される共通のコンデンサと、前記複数の電力変換回路のスイッチング素子のそれぞれを操作する操作手段と、少なくとも1つの前記電力変換回路を構成するスイッチング素子について、該スイッチング素子を前記操作手段がオン・オフ操作する際のスイッチング周波数を変動させる変動手段とを備え、前記操作手段は、少なくとも2つの電力変換回路に関する前記スイッチング素子のスイッチング周波数を互いに相違しうるように設定することを特徴とする。
【0008】
複数の電力変換回路同士でコンデンサが共有される状況下、これら電力変換回路の操作に関するスイッチング周波数が相違する場合には、各別の電力変換回路のそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和の実効値を、上記リップル電流の実効値の和と比較して小さくすることができることが発明者らによって見出されている。そしてリップル電流の上記実効値が小さい場合には、上記共有化されたコンデンサの小型化や、同一種類のコンデンサを分割する場合における分割数の低減等が可能となる。
【0009】
ただし、スイッチング周波数が互いに相違しうる設定がなされたとしても、操作手段の誤差等に起因して実際のスイッチング周波数は意図せずして一致するおそれがある。こうした事態を回避するためには、相違させることを意図した周波数同士の間隔を拡大したり、操作手段として高精度のものを利用したりすることが考えられる。ただし、前者の場合、使用するスイッチング周波数帯域が過度に大きくなるおそれがあり、後者の場合、操作手段の選択に制約が生じるおそれがある。
【0010】
この点、上記発明では、変動手段を備えることで、上記意図せずしてスイッチング周波数同士が一致する事態を好適に抑制することができ、ひいては、リップル電流の特定の周波数成分の実効値が過度に大きくなる事態を回避することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記操作手段は、前記電力変換回路の出力電圧の指令値とキャリア周波数の設定されたキャリア信号との大小比較に基づき前記スイッチング素子の操作信号を生成するものであり、前記変動手段によるスイッチング周波数を変動させる処理は、前記設定されたキャリア周波数を変動させる処理であることを特徴とする。
【0012】
キャリア周波数に応じてリップル電流の周波数が変化することが発明者らによって見出されている。このため、キャリア周波数を変動させることで、リップル電流の特定の周波数成分の実効値が過度に大きくなることを好適に回避することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記操作手段は、操作対象とする前記電力変換回路毎に各別に設けられた操作部を備えて構成され、前記変動手段は、各操作部に前記キャリア周波数の指令値を出力する指令手段であることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、指令手段を備えることで、複数の操作部同士で通信して互いのキャリア周波数情報を取得することなく、設定するキャリア周波数(キャリア周波数の指令値)同士が一致する事態を好適に回避することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記操作手段は、操作対象とする前記電力変換回路毎に各別に設けられた操作部を備えて構成され、前記変動手段は、前記操作部に備えられて且つ、前記キャリア周波数をランダムに変更する手段であることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、操作部がキャリア周波数をランダムに変更する手段を備えることで、操作部同士が通信して互いのキャリア周波数情報を取得することなく、設定するキャリア周波数についての実際の値同士が一致することを好適に抑制することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記変動手段は、前記キャリア周波数を周期的なパターンに従って変更するものであることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、周期的なパターンを利用することで、変動手段の演算負荷を低減したり、変動手段の設計を簡素化したりすることができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記変動手段は、前記電力変換回路のそれぞれに関する前記キャリア周波数を変更することを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記変動手段は、前記複数の車載補機のうちの特定の車載補機に対応する電力変換回路に関する前記キャリア周波数を固定することを特徴とする。
【0021】
上記発明では、特定の電力変換回路に関するキャリア周波数を固定することができるため、特定の電力変換回路については、リップル電流の実効値の低減要求以外の要求要素に従った周波数設定がしやすい。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記変動手段は、前記キャリア周波数を可聴周波数よりも大きくすることを特徴とする。
【0023】
上記発明では、キャリア周波数を可聴周波数よりも大きくすることで、電力変換回路のスイッチング操作に伴って人に感知されうるノイズが生じる事態を好適に回避することができる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項2〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記変動手段は、前記キャリア周波数を上限値以下で変動させることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、上限値を定めることで、スイッチング損失が過度に大きくなる事態を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる操作信号の生成手法を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態の課題を示す図。
【図4】同実施形態にかかるスペクトラム拡散処理の手順を示す流れ図。
【図5】第2の実施形態にかかるスペクトラム拡散処理の手法を示す図。
【図6】第3の実施形態にかかるスペクトラム拡散処理の手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる電力変換装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0029】
図示される高電圧バッテリ10は、端子電圧がたとえば百V以上となるリチウムイオン2次電池やニッケル水素2次電池等の2次電池である。高電圧バッテリ10は、車体の電位とは相違する電位を基準電位(負極電位)とするものである。詳しくは、たとえば高電圧バッテリ10の両端に一対のコンデンサを接続し、それらの接続点を車体に接続するなどすることで、高電圧バッテリ10の正極電位および負極電位間の中央値が車体電位と等しくなるような設定がなされている。
【0030】
上記高電圧バッテリ10は車載主機としてのモータジェネレータ12用の電源であり、インバータ14を介してモータジェネレータ12に接続されている。モータジェネレータ12の回転軸は、駆動輪に機械的に連結されている。
【0031】
高電圧バッテリ10は、一対の電源ラインLp,Lnに接続されており、電源ラインLp,Lnは、電源装置PSCに接続されている。電源装置PSCは、電源ラインLp,Lnのそれぞれに接続されるノーマルモードチョークコイル16と平滑コンデンサ18とを備えて構成されている。上記平滑コンデンサ18として、本実施形態では、周波数特性の相違する2種類のコンデンサ18a,18bを備えたものを例示している。ここで、コンデンサ18aは、アルミ電界コンデンサであり、コンデンサ18bは、セラミックコンデンサである。コンデンサ18bは、コンデンサ18aと比較して高周波数帯域におけるインピーダンスが小さいため、高周波数帯域では主としてコンデンサ18bがノイズを吸収し、低周波数帯域では主としてコンデンサ18aがノイズを吸収する。
【0032】
電源装置PSCには、インバータINVa,INVb,INVcが並列接続されている。ここで、インバータINVaは、車載空調装置に搭載されるブロアファンの電動機20に、3相交流電圧を印加するためのものである。また、インバータINVbは、車載内燃機関のシリンダブロック内の冷却水を循環させるウォータポンプに搭載される電動機22に、3相交流電圧を印加するためのものである。さらに、インバータINVcは、車載空調装置に搭載されるヒータ24に3相交流を印加するためのものである。上記電動機20,22は、表面磁石同期電動機(SPMSM)である。
【0033】
ここで、インバータINVa,INVb,INVcは、図中インバータINVaについて示したように、それらの入力端子(電源装置PSCの出力端子)の正極および負極のそれぞれをそれらの出力端子に接続するためのスイッチング素子S¥p,S¥n(¥=u,v,w)の直列接続体を3組備える直流交流変換回路である。そして、インバータINVaのスイッチング素子S¥#(¥=u,v,w;#=p,n)は、マイクロコンピュータ(変換用マイコン34a)からの操作信号g¥#によって操作される。同様に、インバータINVb,INVcのそれぞれは、変換用マイコン34b,34cのそれぞれによって操作される。
【0034】
上記変換用マイコン34a,34b,34cは、中央処理装置(CPU)やメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行するソフトウェア処理手段である。
【0035】
上記インバータINVa,INVbの各レッグには、図1にインバータINVaについて記載されるように、シャント抵抗Rsが設けられている。このシャント抵抗Rsの電圧降下量は、線間電流の極性や線間電流の変化量の極性を検出するためのものである。これら線間電流の極性や線間電流の変化量の極性は、電動機20,22の回転角度を検出する手段を備えることなくそれらの制御量を制御するためのパラメータである。すなわち、たとえば最大トルク最小電流制御を行なう上では、変換用マイコン34a,34bによって、線間電流のゼロクロスタイミングと線間電流の変化量のゼロクロスタイミングとを一致させるように電動機20,22に印加する指令電圧の位相を操作すればよい。こうした手法については、たとえば特開2008−278736号公報に記載されている。
【0036】
ちなみに、上記ヒータ24は、電熱器であるが、本実施形態では、上記インバータINVa,INVbと同様の3相インバータによって駆動可能に設計されている。
【0037】
変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれには、車体を基準電位とする電子制御装置(ECU40)から電動機20,22およびヒータ24のそれぞれの制御量の指令値が出力される。詳しくは、ECU40は、指令値に関する情報が含まれるデータをフォトカプラ30を介して通信用マイコン32に出力する。通信用マイコン32は、指令値に関する情報が含まれるデータを変換用マイコン34a,34b,34cに出力する。これら通信用マイコン32や変換用マイコン34a,34b,34cは、高電圧バッテリ10の電圧を降圧して出力するDCDCコンバータ36を電源とするものであり、ともに車体とは相違する基準電位(高電圧バッテリ10の負極電位)にて動作する。
【0038】
上記通信用マイコン32は、中央処理装置(CPU)やメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行するソフトウェア処理手段である。また、フォトカプラ30は、通信用マイコン32とECU40との基準電位が相違することに鑑み、通信用マイコン32を備える車載高電圧システムとECU40を備える車載低電圧システムとを絶縁しつつ信号の伝達を司る絶縁通信手段である。
【0039】
上記通信用マイコン32、フォトカプラ30、電源装置PSC、およびDCDCコンバータ36は、電源用基板50pに搭載されている。また、インバータINVaと変換用マイコン34aとは変換用基板50aに搭載されており、インバータINVbと変換用マイコン34bとは変換用基板50bに搭載されており、インバータINVcと変換用マイコン34cとは変換用基板50cに搭載されている。
【0040】
これら電源用基板50pや変換用基板50a,50b,50cは、単一のケースCAに収容され、車載補機(電動機20,22やヒータ24)は、ケースCAに対して外付けされている。これは、ケースCAを小型化し、車両衝突時等においても損傷を受けにくいところに配置することを1つの目的としてなされた設定である。
【0041】
ちなみに、従来、補機用アクチュエータとその制御システム(電動機20と変換用マイコン34aおよびインバータINVaや、電動機22と変換用マイコン34bおよびインバータINVb等)は、同一のケース内に収容される傾向があった。これは、補機電動機の回転角度を検出する手段としてはホール素子等の廉価なものを用いることが一般的であり、その場合、制御システム(変換用マイコンやインバータ)を電動機に近接配置することが望まれたためである。本実施形態では、上述したセンサレス制御によってこうした要求が生じる事態を回避している。
【0042】
次に、本実施形態にかかる変換用マイコン34a,34b,34cによる補機の制御量の制御について説明する。本実施形態では、ECU40から出力された指令値に制御すべく、補機に印加する指令電圧(インバータINVa,INVb,INVcの出力電圧の指令値)を操作する。これは、図2に示すように、周知の三角波PWM処理によって行われる。すなわち、操作量としての3相の指令電圧vu*,vv*,vw*をインバータINVa,INVb,INVcの入力電圧(電源電圧VDC)で規格化したDuty信号D¥(¥=u,v,w)と三角波形状のキャリア信号との大小に基づき、PWM信号g¥を生成し、これらPWM信号g¥とその論理反転信号とに基づき、デッドタイム付与処理を経て操作信号g¥#が生成される。
【0043】
ここで、本実施形態では、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれによって設定されるキャリア信号の周波数(キャリア周波数)が互いに相違する設定とする。これは、平滑コンデンサ18を介して流れるリップル電流の実効値を低減するための設定である。すなわち、キャリア周波数を互いに相違させることで、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和の実効値が、インバータINVa,INVb,INVcのスイッチング操作に伴うリップル電流の実効値の和と比較して小さくなる。これにより、平滑コンデンサ18の共有化によって、インバータINVa,INVb,INVc毎に各別に設ける場合と比較して、平滑コンデンサ18を小型化できる等のメリットが生じる。
【0044】
詳しくは、図3(a)に示されるように、インバータのスイッチング操作に伴うリップル電流の実効値の和と比較して、インバータのそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和の実効値の低減効果は、インバータ台数が多いほど大きくなる。なお、図3(a)の例では、計算の簡素化のためのいくつかの仮定をおくことで、台数Nに応じた上記和の実効値を台数が1台の場合の「√N」倍にできることが示されている。この関係の導出については、本明細書最後部の「備考」欄に与えてある。
【0045】
ところで、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれで用いるキャリア周波数を相違させる設定としたとしても、実際のキャリア周波数同士については、変換用マイコン34a,34b,34cの個体差等に起因して意図せずして一致するおそれがある。そして、この場合には、たとえばインバータの台数が2台の場合について図3(b)に例示するように、リップル電流の和の実効値が実効値の和に等しくなったり(図中、実効値比が「1」)、実効値の和に対する和の実効値の比(実効値比)がゼロとなったりする。
【0046】
ここで、実効値比がゼロとなるのは、2台のインバータで平滑コンデンサ18を共有することで、平滑コンデンサ18を介して流れる電流のリップル電流の実効値がゼロとなることを意味する。これは、最も好ましい状況であるとはいえ、これを実現するためには、キャリア周波数を一致させて且つキャリア周波数同士の位相差を特定の関係に設定することが要求され、個体差や経年変化にかかわらずその条件を満たすことが困難なものである。
【0047】
このため、キャリア周波数を互いに相違させることが、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和の実効値を低減することのできる簡易な手法であると考えられる。しかし、この場合、変換用マイコン34a,34b,34cの個体差等にかかわらずキャリア周波数同士が一致しないように、それらキャリア周波数同士を十分に離間させることが望まれる。そして、これは次のような新たな問題を招く要因となる。
【0048】
すなわち、使用されるキャリア周波数帯域が拡大することで、キャリア周波数帯域が可聴周波数帯域に重なると、ユーザが感知することのできるノイズを生じることとなる。また、使用されるキャリア周波数帯域が拡大することで、キャリア周波数帯域の高周波部分が過度に高い周波数となると、この周波数に対応するインバータのスイッチング状態の切り替え頻度が上昇し、ひいては損失が増大するおそれがある。こうした問題は、車載補機の数が増大するほど大きくなる。
【0049】
そこで本実施形態では、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれで用いるキャリア周波数を変動させるスペクトラム拡散処理を行なう。
【0050】
図4に、上記スペクトラム拡散処理の手順を示す。この処理は、通信用マイコン32によって、たとえば所定周期でくり返し実行される。
【0051】
この一連の処理では、まずステップS10において、所定時間が経過したか否かを判断する。ここで所定時間は、キャリア周波数を固定する時間として予め定められた長さを有したものである。この長さは、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれで用いられるキャリア周波数同士が実際には重なる事態が生じたとしても、上記リップル電流の和の実効値の増大に起因して平滑コンデンサ18の発熱量が顕著に大きくなることがない長さに設定されている。
【0052】
上記所定時間が経過したと判断される場合、キャリア周波数を変更するタイミングであるとして、ステップS12に移行する。ステップS12においては、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのためのキャリア周波数のパターンの指定変数jを更新する。ここでは、パターン数Nのそれぞれに対応する0〜N−1の整数を順にとるように指定変数jを更新する。
【0053】
続くステップS14においては、指定変数jによって指定されたキャリア周波数指令値を、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれに出力する。詳しくは、本実施形態では、互いに相違するキャリア周波数の指令値f1〜fNと指定変数jとの関係を定めたマップを用いて、指定変数jの値に基づき、各インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのためのキャリア周波数の指令値をマップ演算し、演算した指令値を出力する。このマップは、図に示されるように、指定変数jが0である場合、インバータINVa用のキャリア周波数の指令値を指令値f1とし、インバータINVb用のキャリア周波数の指令値を指令値f2とし、インバータINVc用のキャリア周波数の指令値を指令値f3とする。また、指定変数jが1である場合、インバータINVa用のキャリア周波数の指令値を指令値f2とし、インバータINVb用のキャリア周波数の指令値を指令値f3とし、インバータINVc用のキャリア周波数の指令値を指令値f4とする。このように、いずれの指定変数jにおいてもインバータINVa,INVb,INVcのキャリア周波数の指令値が互いに相違するように設定している。
【0054】
ここで、指令値f1〜fNは、下限周波数fthL以上上限周波数fthH以下となるように設定されている。ここで、下限周波数fthは、平均的な人にとって特に感知されやすい可聴周波数の最大値よりも高周波(たとえば15kHz)に設定される。また、上限周波数fthHは、インバータINVa,INVb,INVcの損失が過度に大きくなることのない上限値に設定される。
【0055】
上記ステップS14の処理が完了する場合、ステップS16において、所定時間をリセットし、ステップS14において更新されたキャリア周波数の継続時間についての計時動作を開始する。
【0056】
なお、上記ステップS16の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0058】
(1)インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれでキャリア周波数を相違させる設定をして且つ、それらキャリア周波数を変動させた。これにより、指令値f1〜fNのうちの任意の2つの周波数差が、変換用マイコン34a,34b,34cの個体差によって実際のキャリア周波数が一致しうる程度に小さい場合であっても、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和の実効値を低減することができる。
【0059】
すなわち、たとえば変換用マイコン34aが指令値f1に従って且つ変換用マイコン34bが指令値f2に従っている期間に、変換用マイコン34a,34bのそれぞれの実際のキャリア周波数が一致する場合を考えてみる。この場合、変換用マイコン34bが指令値f1に従って且つ変換用マイコン34cが指令値f2に従っている期間に、変換用マイコン34b,34cのそれぞれの実際のキャリア周波数が一致する可能性は低い。また、変換用マイコン34aが指令値f2に従って且つ変換用マイコン34bが指令値f3に従っている期間に、変換用マイコン34a,34bのそれぞれの実際のキャリア周波数が一致する可能性も低い。
【0060】
このように、キャリア周波数を変動させることで、一時的にキャリア周波数同士が一致するとしても、その状態が継続する可能性を十分に低下させることができる。このため、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのスイッチング操作に起因したリップル電流の和について、平滑コンデンサ18の温度上昇が顕著となりうる長さの時間当たりの実効値については、キャリア周波数が実際に常時相違している場合の実効値に十分近づけることができる。
【0061】
また、各キャリア周波数同士の設定間隔を、個体差にかかわらず実際のキャリア周波数が一致しないように大きくする場合、キャリア周波数の最低値と最高値との間の間隔が広くなり、たとえば最大周波数が過度に大きくなりやすい。しかし、この場合であっても、スペクトラム拡散を行なうことで、特定のインバータのキャリア周波数を最大周波数に固定する場合と比較して、各インバータの単位時間当たりのスイッチング損失を低減することができる。
【0062】
(2)通信用マイコン32から変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれに、キャリア周波数の指令値を出力した。これにより、変換用マイコン34a,34b,34c同士で通信して互いのキャリア周波数情報を取得することなく、常時、設定するキャリア周波数同士が一致する事態を好適に回避することができる。
【0063】
(3)キャリア周波数を周期的なパターンに従って変更した。これにより、スペクトラム拡散処理の演算負荷を低減したり、スペクトラム拡散処理の設計を簡素化したりすることができる。
【0064】
(4)指令値f1〜fNを、可聴周波数よりも大きくした。これにより、インバータINVa,INVb,INVcのスイッチング操作に伴って人に感知されうるノイズが生じる事態を好適に回避することができる。
【0065】
(5)指令値f1〜fNを上限周波数fthH以下で変動させた。これにより、スイッチング損失が過度に大きくなる事態を好適に回避することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
本実施形態では、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれが、キャリア周波数の変更パターンを記憶し、これに基づきスペクトラム拡散処理を行なう。
【0067】
図5に、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれが記憶する変更パターンのマップを示す。図示されるように、変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれが記憶するパターンは、いずれもN個のキャリア周波数を用いたものであり、それらN個のキャリア周波数は変換用マイコン34a,34b,34c同士で同一である。ただし、N個のキャリア周波数の配列については、変換用マイコン34a,34b,34c同士で相違する設定がなされている。詳しくは、変換用マイコン34aのキャリア周波数faj(j=1〜N)と変換用マイコン34bのキャリア周波数fbk(k=1〜N)とが一致する場合、その前後に用いられるキャリア周波数同士は必ず相違するように設定されている。すなわち、その前に用いられるキャリア周波数fa(jf)とキャリア周波数fb(kf)とは互いに相違し(jf=j−1 mod N,kf=k−1 mod N)、その後に用いられるキャリア周波数fa(je)とキャリア周波数fb(ke)とは互いに相違(je=j+1 mod N,ke=k+1 mod N)する。
【0068】
同様に、変換用マイコン34aのキャリア周波数faj(j=1〜N)と変換用マイコン34cのキャリア周波数fck(k=1〜N)とが一致する場合、その前後に用いられるキャリア周波数同士は必ず相違するように設定されている。また同様に、変換用マイコン34bのキャリア周波数fbj(j=1〜N)と変換用マイコン34cのキャリア周波数fck(k=1〜N)とが一致する場合、その前後に用いられるキャリア周波数同士は必ず相違するように設定されている。
【0069】
こうした設定によれば、変換用マイコン34a,34b,34c同士が互いに他者の設定するキャリア周波数の値を知らない場合であっても、設定するキャリア周波数同士が一致し続ける事態を好適に回避することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0070】
本実施形態では、インバータINVaのキャリア周波数を周波数fa1に固定し、インバータINVb,INVcについてのみキャリア周波数のスペクトラム拡散処理を行なう。図6に、変換用マイコン34aが記憶するキャリア周波数と、変換用マイコン34b,34cのそれぞれが記憶する変更パターンのマップを示す。
【0071】
図示されるように、変換用マイコン34b,34cのそれぞれが記憶するパターンは、いずれもN個のキャリア周波数を用いたものであり、それらN個のキャリア周波数は変換用マイコン34b,34c同士で同一である。ただし、N個のキャリア周波数の配列については、変換用マイコン34b,34c同士で相違する設定がなされている。詳しくは、変換用マイコン34bのキャリア周波数fbj(j=1〜N)と変換用マイコン34cのキャリア周波数fck(k=1〜N)とが一致する場合、その前後に用いられるキャリア周波数同士は必ず相違するように設定されている。
【0072】
一方、変換用マイコン34aが用いるキャリア周波数fa1は、単一であり、これは、インバータINVb,INVcのそれぞれの用いるキャリア周波数fb1〜fbN、fc1〜fcNのいずれとも相違している。
【0073】
こうした設定によれば、たとえば、変換用マイコン34aの演算負荷を低減することができる。また、変換用マイコン34aの発熱が特に問題となる場合等にあっては、そのキャリア周波数fa1を、スペクトラム拡散によって設定されるキャリア周波数fb1〜fcNの平均値よりも小さくする設定等を実現することもでき、ひいては変換用マイコン34aが用いるキャリア周波数(の平均値)を、変換用マイコン34b,34cが用いるキャリア周波数の平均値よりも小さくすることが容易となる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0074】
「操作手段について」
PWM処理に用いるキャリア信号としては、三角波に限らず、たとえば鋸波であってもよい。
【0075】
キャリア信号との比較処理によって操作信号を生成するものに限らない。たとえば、特開2009−153254号公報に記載されている瞬時電流値制御であってもよい。ここでは、実際の電流と指令電流との差が許容領域からはみ出す場合にスイッチング状態を切り替える処理を行なうのに加えて、特定の条件が成立することでスイッチング状態を切り替えることで、三角波PWM処理と同様のスイッチングパターンとなることを狙っている。このため、この手法における許容領域の設定によって、三角波PWM処理におけるキャリア周波数を可変としたのと同様の効果が得られるものと考えられる。換言すれば、許容領域の設定によって、各インバータINVa,INVb,INVcのスイッチング周波数を相違させることができると考えられる。
【0076】
操作手段としては、電力変換回路毎に各別の操作部を備えるものに限らない。複数の電力変換回路に共通の単一の操作手段(変換用マイコン)とするなら、上記第1の実施形態と同様、各電力変換回路に関するキャリア周波数の設定値が偶然にも一致することのない設定が容易となる。
【0077】
「指令手段について」
上記発明では、通信用マイコン32が変換用マイコン34a,34b,34cのそれぞれに各別の信号線を介してキャリア周波数の指令値を出力するようにしたがこれに限らない。たとえば、各指令値がいずれのインバータに対応するものであるのかを特定するデータを付与することで、単一の信号線を介して全ての変換用マイコン34a,34b,34cに指令値を出力することも可能となる。
【0078】
「変動手段について」
上記実施形態では、変動させるキャリア周波数の候補(可変設定される各周波数)の数がインバータの数よりも多くなるように設定したが、これに限らず、たとえば同一であってもよい。ここで、各キャリア周波数同士の設定間隔が生じうるばらつきの範囲内に含まれる場合であっても、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのキャリア周波数を固定した場合と比較して、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれによるリップル電流の合計の実効値は小さくなると考えられる。なぜなら、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれのキャリア周波数f1,f2,f3を固定した場合、たとえば、変換用マイコン34a,34bの個体差等に起因してインバータINVa,INVbの実際のキャリア周波数同士が一致する状態が生じえ、この場合、この状態が継続されると考えられる。これに対し3つの周波数f1、f2、f3のみを用いてスペクトラム拡散を行なう場合、変換用マイコン34a,34bの個体差等に起因して変換用マイコン34a,34bのそれぞれがキャリア周波数f1,f2を採用することで実際のキャリア周波数同士が一致したとしても、変換用マイコン34aがキャリア周波数f3を採用し、変換用マイコン34cがキャリア周波数f2を採用し変換用マイコン34bがキャリア周波数f1を採用した場合にまで、実際の周波数同士が一致する事態が生じる確率は高くないと考えられるからである。
【0079】
所定のパターンに従ってキャリア周波数を周期的に変化されるものにおいて、各キャリア周波数に固定する期間を全て同一とするものに限らない。たとえば、上記第1の実施形態において、指定変数jに応じてキャリア周波数を固定する所定時間を変動させるなら、インバータINVa,INVb,INVcのそれぞれで、キャリア周波数の平均値を相違させることができる。
【0080】
変動手段としては、所定のパターンに従ってキャリア周波数を周期的に変動させるものに限らず、たとえば周囲のノイズのレベル等、確率に従って変動するパラメータに従ってキャリア周波数を都度選択してもよい。
【0081】
「コンデンサについて」
互いに相違する種類のコンデンサ18a,18bとしては、アルミ電界コンデンサとセラミックコンデンサとに限らない。たとえば、3種類以上のコンデンサを併用してもよい。またたとえば、1種類のコンデンサのみを用いてもよい。
【0082】
コンデンサの全てを電源用基板50pに搭載する設定に限らない。たとえば、コンデンサの一部を、変換用基板50aにおいてインバータINVaの入力端子に接続したり、変換用基板50bにおいてインバータINVbの入力端子に接続したり、変換用基板50cにおいてインバータINVcの入力端子に接続するなどしてもよい。これにより、インバータINVa,INVb,INVcにおけるスイッチング状態の切り替えに際して電流量が変化する寄生インダクタンスを小さくすることができるため、サージを低減することができる。なお、これら変換用基板50a,50b.50cに搭載されるコンデンサ自体、インバータINVa,INVb,INVcの入力電圧の変動を抑制する機能を有する。このため、この場合には、実際には、電源用基板50pと変換用基板50a,50b,50cとのそれぞれに搭載されるコンデンサの協働で入力電圧の変動を低減させることとなる。しかしこの場合であっても、インバータINVa,INVb,INVcに共通のコンデンサを搭載することで、上記実施形態の効果に準じた効果を奏することができる。
【0083】
「電源用基板について」
また、電源用基板としては、通信用マイコン32のみを備えるものに限らず、変換用マイコン34a,34b,34cについても備えるものであってもよい。
【0084】
「補機と電力変換回路との配置について」
上記実施形態では、補機をケースの外部に設けたが、これに限らない。たとえば複数の車載補機のいずれか1つと、上記実施形態の電源用基板50p、変換用基板50a,50b,50cとを1つのケースに収納してもよい。
【0085】
「変換用基板について」
1つのケースに収容される変換用基板の数としては、3つに限らず、2つであってもよく、また4つ以上であってもよい。また、互いに相違する複数の車載補機のそれぞれに対応するインバータを1つの変換用基板に形成してもよい。
【0086】
「絶縁通信手段について」
フォトカプラ30等、光絶縁素子に限らず、たとえば磁気絶縁素子であってもよい。
【0087】
「電力変換回路について」
3相インバータに限らない。たとえばヒータ24については、1相のインバータであってもよい。またたとえば、ブロアファンの電動機20として5相電動機を用いるなら、インバータとしては5相インバータとなる。
【0088】
なお、直流電圧源の正極および負極のそれぞれと補機の端子とを選択的に接続するスイッチング素子を備える直流交流変換回路にも限らない。
【0089】
「そのほか」
ハイブリッド車に限らず、たとえば車載主機に供給されるエネルギの貯蔵手段として、電気エネルギを出力する手段(2次電池、燃料電池)のみを備えるものであってもよい。この場合であっても、ブロアファンやヒータ等の複数の車載補機の電源をこの貯蔵手段とする場合等にあっては、本発明の適用が有効である。
【0090】
電源としては、車載主機用の電源に限らない。
【0091】
回転機の回転角度を検出する回転角度検出手段を備えてもよい。
【0092】
ケースとしては、単一のケースからなるものに限らず、たとえば電源用基板50pを収納するケース、変換用基板50aを収納するケース、変換用基板50bを収納するケース、および変換用基板50cを収納するケースのそれぞれを各別のケースとして且つ、これらのケースの側面にこれらケース同士を互いに連結可能とする手段を備えるものであってもよい。
<備考>
以下、複数のインバータのスイッチング周波数を互いに相違させることで、リップル電流の和の実効値を低減できることの定量的な説明を与える。
【0093】
ここでは、議論の簡素化のため、インバータINV1と、インバータINV2との2つのインバータがある場合について説明する。また、インバータINV1のリップル電流I1と、インバータINV2のリップル電流I2とを、スイッチング周波数に応じた角速度ω1,ω2を用いて以下の式にてモデル化する。
【0094】
I1=A1・sin(ω1・t−θ1) …(c1)
I2=A2・sin(ω2・t−θ2) …(c2)
上記リップル電流I1とリップル電流I2との和の実効値Irmsは、時間Tを用いると、以下の式(c3)にて表現される。
【0095】
【数1】


上記の式(c3)の右辺の平方根内の第2項は、以下の式(c4)に変形できる。
【0096】
【数2】


上記の式(c4)は、「ω1≠ω2」である場合には、時間Tが長くなるにつれてゼロに収束する。このため、実効値Irmsは、以下の式(c5)にて表現される。
【0097】
【数3】


一方、インバータINV1とインバータINV2とのそれぞれのリップル電流I1,I2の実効値I1rms,I2rmsは、時間Tを角速度ω1,ω2のそれぞれに対応する周期の公倍数とすることで、以下の式(c6)、(c7)にて表現される。
【0098】
【数4】


ここで、簡素化のために、リップル電流I1,I2の振幅A1,A2が互いに等しいとすると、「Irms/(I1rms+I2rms)」は、「1/√2」となる。なお、帰納的な議論によって、インバータがN個(>3)ある場合については、リップル電流の実効値の各別の和に対するリップル電流の和の実効値の比は、「1/√N」となる。
【0099】
なお、上記の式(c4)において、「ω1=ω2」、「θ1−θ2=π」且つ「A1=A2」なら、リップル電流の合計の実効値Irmsは、ゼロとなる。これが、先の図3(b)において実効値比がゼロとなる理由である。なお、リップル電流を、(c1)、(c2)とする代わりに、方形波とするモデル化を行なう場合、フーリエ変換によって、高調波成分を新たに考慮する必要があるが、それらの成分を加えたとしても結論自体に変化はない。
【符号の説明】
【0100】
18…平滑コンデンサ、32…通信用マイコン、34a,36b,38c…変換用マイコン,INVa,INVb,INVc…インバータ(電力変換回路の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載補機のそれぞれに電力を供給する各別の電力変換回路と、
前記複数の電力変換回路の入力端子に接続される共通のコンデンサと、
前記複数の電力変換回路のスイッチング素子のそれぞれを操作する操作手段と、
少なくとも1つの前記電力変換回路を構成するスイッチング素子について、該スイッチング素子を前記操作手段がオン・オフ操作する際のスイッチング周波数を変動させる変動手段とを備え、
前記操作手段は、少なくとも2つの電力変換回路に関する前記スイッチング素子のスイッチング周波数を互いに相違しうるように設定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記電力変換回路の出力電圧の指令値とキャリア周波数の設定されたキャリア信号との大小比較に基づき前記スイッチング素子の操作信号を生成するものであり、
前記変動手段によるスイッチング周波数を変動させる処理は、前記設定されたキャリア周波数を変動させる処理であることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記操作手段は、操作対象とする前記電力変換回路毎に各別に設けられた操作部を備えて構成され、
前記変動手段は、各操作部に前記キャリア周波数の指令値を出力する指令手段であることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記操作手段は、操作対象とする前記電力変換回路毎に各別に設けられた操作部を備えて構成され、
前記変動手段は、前記操作部に備えられて且つ、前記キャリア周波数をランダムに変更する手段であることを特徴とする請求項2記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変動手段は、前記キャリア周波数を周期的なパターンに従って変更するものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記変動手段は、前記電力変換回路のそれぞれに関する前記キャリア周波数を変更することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記変動手段は、前記複数の車載補機のうちの特定の車載補機に対応する電力変換回路に関する前記キャリア周波数を固定することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記変動手段は、前記キャリア周波数を可聴周波数よりも大きくすることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記変動手段は、前記キャリア周波数を上限値以下で変動させることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59181(P2013−59181A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195311(P2011−195311)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】