説明

電力変換装置

【課題】主回路インダクタンスを低減でき、かつ、電流振動が発生する周波数帯域で高抵抗になる導体形態を有する電力変換器を提供することにある。
【解決手段】上記の課題を解決する手段として、正極側電流を流す導体と絶縁シートと負極側電流を流す導体とを積層接着させ、各々の導体に流れる電流の経路を対向させた電力変換器の主回路配線において、積層された導体の表面のうち、他方の導体側の面について、導体内部よりも高周波帯域において高抵抗な部材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関わり、特に、主回路配線の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導体に高周波電流が流れる場合、その電流密度は導体の表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果という現象が知られている。表皮効果を利用し、電流の振動を抑制する電力変換器の例として、特許文献1の特開2001−32600号公報に記載された半導体装置では、モジュール内の半導体チップの配線部材に、抵抗率の低い主配線部分とそれよりも抵抗率及び透磁率の高い表皮部分とで構成された配線が用いられている。また、特許文献2の特開2005−020868号公報に記載された電力変換回路では、配線又は電極の電流を流す部分の少なくとも一部を、抵抗率が銅よりも大きな材料により構成する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−32600号公報
【特許文献2】特開2005−020868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換器で発生する損失の低減には、電力変換器の高速駆動が有効である。しかし、高速駆動に伴って、高周波での電流振動が発生しやすくなり、電磁ノイズなどの悪影響を発生しやすくなる。この電流振動は、主回路インダクタンスとスイッチ素子の容量成分との共振により発生する。これを抑制するためには、主回路インダクタンスの低減と振動周波数帯域での抵抗分増加の両方が必要である。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、複数のスイッチ素子を1モジュールに収めたモジュール内部の形態について記載されており、複数スイッチ素子を並列に接続し使用する大容量の電力変換器のように、スイッチ素子どうしを外部で配線する形態については述べられていない。特に大容量の電力変換器では、1スイッチあたり1モジュールを用いるため、各モジュールを接続する配線による低インダクタンス化の扱いが極めて重要になる。また、特許文献2の構成についても、低インダクタンス化は検討されていないため、電流振動の課題は解決できない。
【0006】
本発明の目的は、主回路インダクタンスを低減でき、かつ、電流振動が発生する周波数帯域で高抵抗になる導体形態を有する電力変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する手段として、積層配置された正極側電流を流す正極導体及び負極側電流を流す負極導体の一方又は両方について、導体内部よりも導体表面部の方が高周波の電流に対する抵抗値が大きくなるように導体を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、電力変換器における振動の抑制と低インダクタンス化を両立でき、損失の低減や電磁ノイズ及び跳ね上がり電圧の抑制が可能となり、電力変換器を安全に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施例を示す図である。
【図2】抵抗部材の厚みと周波数の関係を示す一例である。
【図3】本発明で用いる導体の抵抗値と周波数の関係を示す一例である。
【図4】導体表面の抵抗値と周波数の関係を示す一例である。
【図5】各導体に電流が流れた場合に発生する磁束の一例である。
【図6】第一実施例による電圧の振動及び跳ね上がり低減効果の一例である。
【図7】第一実施例による主回路配線の一例である。
【図8】本発明の第二の実施例を示す図である。
【図9】図8に示す実装例の上面図である。
【図10】図8に示す実装例の主回路配線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の第一実施例を示す図であり、図1(a)は電力変換器を構成する主回路配線の断面を示している。前記主回路配線の正極側電流を流す正極側金属導体1、前記主回路配線の負極側電流を流す負極側金属導体2、前記正極側金属導体1と前記負極側金属導体2の間に積層される絶縁シート3から主回路配線は構成される。
【0012】
前記主回路配線は、前記正極側金属導体1と前記絶縁シートと前記負極側金属導体2を積層接着させた構成である。なお、各金属導体においては、前記積層された導体の表面部のうち、他方の導体側の面に、導体内部よりも高周波帯域において高抵抗な特性を有する高抵抗部材4を使用している。ここで高抵抗部材4の形成には、電気めっき、無電解めっき、溶融亜鉛めっき、真空蒸着、クラッド等、導体の材料の表面に異なる金属を被覆させる手法を用い、前記金属導体の表面に前記高抵抗部材4を被覆する。或いは、前記積層された金属導体については、他方の金属導体側の面に近づくに従い、高抵抗となる合金を用いても良い。この場合、合金の作製方法に、焼結法、合金めっき等、導体の材料の表面に1種類以上の金属を添加する方法を用い、高抵抗部材4を形成する。また、高抵抗部材4を形成する箇所については、前記積層された導体のうち、他方の導体側の面の全面のみならず、必要な部分においてのみであっても良い。
【0013】
図1(b)は、第一実施例を適用する電力変換装置の回路図であり、直流電力を交流電力に変換する電力変換器5と、前記電力変換器の直流側に接続したコンデンサ6とで構成される。また、前記電力変換器内部には、上アーム側スイッチ素子7と下アーム側スイッチ素子8と、が備えられている。さらに、図1(a)で示した主回路配線は、前記電力変換器5と前記コンデンサ6と前記電力変換器内の各スイッチ素子7,8を接続する配線に用いられる。ここで、図1(b)に示す電力変換器5は、1相のアームを備える構成にも適用可能であり、多相のアームを備える構成でも適用可能である。
【0014】
電力変換器5においては、スイッチ素子7あるいは8のオフ時には、スイッチ素子7あるいは8の接合容量と主回路配線のインダクタンスにより、高周波の共振電流が主回路配線上に発生する。この共振電流により、出力端における出力電圧も振動する。ここで高周波とは、電力変換器の出力周波数の最大値(10Hz〜数百Hz)に対し、数MHz程度かそれ以上の周波数である。即ち、高周波は電力変換器の出力周波数より100倍以上大きい周波数と定義できる。
【0015】
この共振電流はスイッチ素子7,8の遮断速度が大きいほど顕著になる。このため、シリコンを使用した半導体スイッチ素子よりも、シリコンカーバイドやガリウムナイトライド等を使用した半導体スイッチ素子の方が電流の振動は大きくなり、電磁ノイズを引き起こす恐れがある。
【0016】
なお、図1(b)は、スイッチ素子7および8が1つのモジュールにより構成され、図1(a)に示す主回路配線を外部で接続する形態であってもよい。また、図1(b)は、2in1や6in1のように、多素子を有するモジュールにより構成され、スイッチ素子7および8と主回路配線を内蔵する形態であっても良い。
【0017】
第一実施例によれば、前記主回路配線の正極側電流を流す正極側金属導体1と前記主回路配線の負極側電流を流す負極側金属導体2が前記絶縁シート3を介して積層される構造をとるため、前記積層された金属導体の表面のうち、他方の導体と対向する面において、電流が集中し、発生する磁束を相殺することでインダクタンスを低減する効果がある。また、導体に高周波電流が流れる場合、その電流密度は導体の表面で高く表面から離れると低くなる表皮効果が知られている。スイッチ素子の接合容量と主回路配線のインダクタンスにより決定する共振電流の振動は高周波であるため、電流の振動は前記主回路配線の正極側金属導体1及び負極側金属導体2の表面部分に集中する。以上のことから、前記積層された導体の表面のうち、他方の導体側の面について導体の中央部よりも高周波帯域において前記高抵抗部材4を用いることで、高抵抗部材4により電流振動を減衰する効果がある。
【0018】
さらに、第一実施例の構成を用いることで、電力変換器における振動の抑制と低インダクタンス化を両立でき、損失及びノイズの低減や跳ね上がり電圧の抑制が可能となり、電力変換器を安全に駆動することができる。特に、SiCやGaNのように、従来用いられてきたSiよりも高速で遮断可能なデバイスの使用時には、高速駆動に伴うdV/dtの増大により、高周波成分が増加し、電流の振動及び跳ね上がり電圧の増大が問題となるため、本発明の効果は大きい。
【0019】
図2は、第一実施例に使用する主回路配線の積層された金属導体の表面のうち、他方の金属導体側の面での、正極側金属導体の高抵抗部材4及び負極側金属導体の高抵抗部材4における厚みと周波数の関係を示す一例である。表皮効果によれば、導体に高周波電流が流れる場合、その電流密度は導体の表面で高く、表面から離れると低くなる。この高周波電流が流れる深さdを、表皮深さと呼び、次式にて求めることができる。
d=√(2ρ/(ωμ))[m]
ここで、ρは金属導体の電気抵抗、ωは電流の角周波数、μは金属導体の絶対透磁率を示す。
【0020】
電力変換器に発生する電流振動には、一般的に高周波成分が多く含まれている。そのため、前記主回路配線のインダクタンスとスイッチ素子の接合容量より決定する共振電流が流れる表皮深さを上式より求め、前記金属導体1及び2上に、共振電流が流れる表皮深さ以上の厚みがある前記高抵抗部材4を被覆する。或いは、前記金属導体1及び2上に共振電流が流れる表皮深さ以上の厚みがある前記高抵抗部材4を添加する。或いは、他方の金属導体側の面に近づくに従い、高抵抗となる合金を用いる場合には、高抵抗となる部分の表面からの厚みを共振電流が流れる表皮深さ以上の厚みとする。このようにすることで、電流振動を低減する効果が得られる。
【0021】
図3は、第一実施例に使用する主回路配線の高抵抗部材4を有する金属導体の抵抗値と周波数の関係を示す一例である。第一実施例に使用する主回路配線の高抵抗部材4を有する金属導体では、電力変換器の出力の駆動周波数の電流は減衰させず、高周波帯域での電流振動のみを抑制できる。
【0022】
図4は、第一実施例において使用される高抵抗部材4の抵抗値に対する電流周波数を示す一例である。図4に示す通り、銅のみで金属導体を形成した場合、高周波帯域での抵抗減衰は小さいため、電流振動の抑制は期待できない。一方、銅の金属導体に、例えばニッケルを高抵抗部材4として添加することで、主回路配線の高周波帯域における抵抗値が増加する。このように、金属導体の表面に高抵抗部材4を付加した導体を主回路配線に用いることで、電流の高周波成分を高抵抗部材4により減衰させ、その振動を抑制する効果が得られる。このように、異なる抵抗特性を有する金属導体を組み合わせることで、電力変換器の出力の駆動周波数の電流は減衰させず、高周波帯域での電流振動のみを抑制可能な主回路配線の導体を得る効果がある。その際、組み合わせる金属の数は2種類以上であっても良い。なお、前記高抵抗部材4の抵抗値は、抵抗値及び主回路配線のインダクタンス値及びスイッチ素子の接合容量より決定する減衰係数が、0.5より大きくなる値とする。これにより、低周波帯域では低い抵抗値、高周波帯域では高い抵抗値となる特性を有し、かつ所望周波数の電流振動を減衰する効果がある。
【0023】
図5は、第一実施例の主回路配線による出力電圧の振動及び跳ね上がりの低減効果を示す一例である。図5(a)は従来の主回路配線による回路構成での出力電圧と時間の関係を、図5(b)は第一実施例の主回路配線による、図5(a)と同等の回路構成での出力電圧と時間の関係をそれぞれ示す。ここで図5(a)では、主回路配線のインダクタンス及びスイッチ素子の接合容量による共振電流により発生する電圧の振動が、電力変換器5における損失及びノイズ増加の一因となる。一方、図5(b)では、高周波成分の電流が高抵抗部材4を流れることにより減衰するため、ほとんど電流振動が発生していない。また、図5(a)では、主回路配線のインダクタンスを検討していないため、跳ね上がり電圧が大きくなり、損失の増加につながる。さらに、跳ね上がり電圧が定格電圧を超えた場合には、素子破壊の恐れがある。一方、図5(b)では主回路配線の低インダクタンス化により、配線のインダクタンスに蓄えられるエネルギーが小さくなるため、跳ね上がり電圧を抑制できる。このように、高周波振動の抑制と低インダクタンス化を両立することで、損失及びノイズの低減、素子破壊の防止を実現する効果がある。図5には明示していないが、第一実施例の主回路配線により、図5(b)と同様に電流の振動を抑制できることは言うまでもない。
【0024】
図6は、図1に示す主回路配線の正極側金属導体及び負極側金属導体に電流が流れた場合に発生する磁束を示す一例である。一般に、対向する向きに電流が流れる2つの導体を近接して配置させることで、各導体から発生する磁束が相殺し、各導体のインダクタンスが低減することが知られている。ここでは、前記正極側金属導体1の電流経路と前記負極側金属導体2の電流経路を対向させることで、前記正極側金属導体1で発生する磁束9と前記負極側金属導体2で発生する磁束10の一部を相殺し、正極側金属導体1及び負極側金属導体2のインダクタンスを低減させる効果がある。さらに、前記正極側金属導体1と前記絶縁シート3と前記負極側金属導体2を積層接着させることで、前記正極側金属導体1と前記負極側金属導体2間の距離を短くし、相殺される磁束の割合を大きくして、インダクタンス低減の作用を増大させることが可能である。
【0025】
図7(a)〜(c)は、第一実施例による主回路配線の他の変形例を示す断面図である。図1においては、絶縁シートを挟んで積層された正極側金属導体及び負極側金属導体の表面部のうち、他極側金属導体に近い表面部が、金属導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線の説明を行ったが、主回路配線の実装形態によっては、他極側金属導体に近い表面部以外の部位に電流が集中する可能性がある。この場合は、図7(a)に示すように、他極側金属導体とは逆側の表面部について、導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線を利用することにより、高周波電流を低減し、振動を抑制することが可能となる。
【0026】
または、図7(b)に示すように、金属導体表面の全面について、金属導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線とすることで、複雑な主回路配線の構成となった場合においても、発生する電流振動を減衰させる効果がある。
【0027】
または、図示していないが、他極側金属導体に近い表面部、及び他極側金属導体とは逆側の表面部が、金属導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線とすることによっても、発生する電流振動を減衰させる効果がある。
【0028】
または、図7(c)は、前記積層された金属導体の導体表面の形状を凹凸形状とし、表面を流れる電流に対する抵抗を増加させる例である。この場合は、高周波電流は表面を流れようとするため、金属導体表面の凹凸により金属導体の内部よりも電流経路が長くなるため、金属導体の内部と比較して金属導体表面の抵抗が増加する。これにより、高周波電流に対する抵抗が増加するため、高周波電流を低減し、振動を抑制する効果がある。
【0029】
本発明は、高周波電流が集中する導体の表面部分の抵抗値を導体内部の抵抗値よりも高くすることにより、高周波電流を減衰させるものである。そのため、主回路配線の実装形態に応じて、高周波電流が集中する部分に高抵抗部材4が配置させるように、図1及び図7(a)〜(c)に示す実施形態を使うと良い。
【実施例2】
【0030】
図8は、本発明の電力変換装置の第二実施例を示す図であり、電力変換装置の配置構成を示す側面図である。直流電力を交流電力に変換する電力変換器5と、前記電力変換器の直流側に接続したコンデンサ6で構成される。前記電力変換器5の複数の出力相の各相は上アーム側スイッチ素子7と下アーム側スイッチ素子8を直列接続した構成であり、前記上アーム側スイッチ素子7と前記コンデンサ6の正極側端子は第一の導体11で接続し、前記下アーム側スイッチ素子8と前記コンデンサ6の負極側端子は第二の導体12で接続し、前記上アーム側スイッチ素子7と前記下アーム側スイッチ素子8は第三の導体13で接続した構成である。ここでは、前記上アーム側スイッチ素子7及び前記下アーム側スイッチ素子8のそれぞれのスイッチを1つのモジュールとして構成する。ここでは、前記第一の導体11と前記第二の導体12、或いは、前記第二の導体12と前記第三の導体13、前記第一の導体11と前記第二の導体12と前記第三の導体13について、絶縁層を介して積層する。
【0031】
ここで第一の導体11,第二の導体12導体,第三の導体13は、第一実施例における図1と同様に、積層された導体の表面部のうち、他方の導体側の面について、導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である高抵抗部材4を使用する。ここで、高抵抗部材4を使用する導体は、前記第一の導体11及び前記第二の導体12及び前記第三の導体13の全てである必要はなく、例えば前記第一の導体11或いは前記第二の導体12或いは前記第三の導体13にのみ適用する構成であっても良い。このことにより、高周波帯域で高抵抗を有する導体の使用数を低減でき、特殊な仕様の配線の数を減らすことができるため、コストの低減と、電流振動及び跳ね上がり電圧の抑制を両立できる効果がある。
【0032】
図9は、図8に示す本発明の第二実施例の上面図であり、前記電力変換器5の出力相の各相において、前記上アーム側スイッチ素子7と前記下アーム側スイッチ素子8を接続する前記第三の導体13と、電力変換器の出力端子を、第四の導体14で接続する。前記第四の導体14についても、先ほどと同様に、前記第一の導体11、或いは、前記第二の導体12、或いは、前記第三の導体13と絶縁層を介して積層する構成であっても良い。前記第四の導体14においては、第一実施と同様に、積層された導体の表面部のうち、他方の導体側の面について、導体内部よりも高周波帯域における抵抗が高い高抵抗部材4を導体の表面部に使用する構成である。このことにより、図7に示す第二実施例と同様に、高周波帯域で高抵抗を有する導体の使用数を低減できるため、効果的に電流振動を抑制でき、尚且つコストを低減できる効果がある。
【0033】
図10は、第二実施例に使用する導体の一例であり、前記主回路配線の正極側電流を流す正極側の第一の導体11、前記主回路配線の負極側電流を流す負極側の第二の導体12、絶縁シート3から構成する。ここで、各導体は第一実施例と同様に、積層された導体の表面部のうち、他方の導体側の面について、導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である部材4を使用する。この構成においては、各導体は絶縁シート3で被覆し、正極側金属導体1及び負極側金属導体2の間は、絶縁シートの代わりに空気絶縁とする形態をとっても良い。なお、実施例2においても、実施例1と同様に、図7(a)に示す他方の導体と逆側の面について導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線、または、図7(b)に示す導体表面の全面について導体内部よりも高周波帯域において高抵抗である主回路配線、または、図7(c)に示す導体の導体表面の形状を変化させ、抵抗を増加させる主回路配線であっても良いことは言うまでもない。
【0034】
なお、実施例2で言及していない部分は、実施例1と同様の構成であるものとする。
【0035】
また、上述した各実施例では、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置を例に説明したが、本発明は当該電力変換装置に限定されるものではなく、例えば交流電力を直流電力に変換する電力変換装置にも適用可能である。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更して良い範囲内で様々に変形して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 正極側金属導体
2 負極側金属導体
3 絶縁シート
4 高抵抗部材
5 電力変換器
6 コンデンサ
7 上アーム側スイッチ素子
8 下アーム側スイッチ素子
9 正極側金属導体で発生する磁束
10 負極側金属導体で発生する磁束
11 第一の導体
12 第二の導体
13 第三の導体
14 第四の導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換、又は交流電力を直流電力に変換する電力変換器と、
前記電力変換器の直流側に接続したコンデンサと、
前記電力変換器と前記コンデンサを接続する主回路配線と、を有する電力変換装置において、
前記主回路配線は、積層配置された正極側電流を流す正極導体と負極側電流を流す負極導体とを有し、前記正極導体及び前記負極導体の一方或いは両方は、高周波の電流に対する抵抗値が、前記導体の内部よりも前記導体の表面部方が大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
高周波電流が集中する前記導体の表面部分の抵抗値が、前記導体内部の抵抗値よりも高いことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記積層配置された導体の表面部のうち導体内部よりも抵抗値が高い面が、積層された他方の導体側の面、或いは、積層された他方の導体側と逆側の面、或いは、積層された他方の導体側の面及び積層された他方の導体側と逆側の面、或いは、表面部全面であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかの電力変換装置において、
前記導体の表面部において、当該導体よりも抵抗値の大きい金属を被覆することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記被覆する金属の厚みを、前記主回路配線のインダクタンス及び前記電力変換器に搭載されるスイッチ素子の接合容量より決定する共振電流が流れる表皮深さ以上とすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記被覆する金属の電気抵抗をρ、電流の角周波数をω、前記被覆する金属の絶対透磁率をμとした場合に、前記被覆する金属の厚みdが、
d=√(2ρ/(ωμ))[m]
で求まる値以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項4に記載の電力変換装置において、
金属を被覆する方法として、電気めっき、又は無電解めっき、又は溶融亜鉛めっき、又は真空蒸着、又はクラッド、により導体の材料の表面に1種類以上の異なる金属を被覆させる方法を用いることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記正極導体及び前記負極導体の一方或いは両方は、他方の導体側の面に近づくに従い、高抵抗となる合金により構成されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記高抵抗の部位の表面からの厚みを、前記主回路配線のインダクタンス及び前記電力変換器に搭載されるスイッチ素子の接合容量より決定する共振電流が流れる表皮深さ以上とすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記合金の電気抵抗をρ、電流の角周波数をω、前記合金の絶対透磁率をμとした場合に、前記高抵抗の部分の合金表面からの厚みdが、
d=√(2ρ/(ωμ))[m]
で求まる値以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項8に記載の電力変換装置において、
合金を作製する方法として、焼結法、又は合金めっき、により導体の材料の表面に1種類以上の異なる金属を添加する方法を用いることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記正極導体及び前記負極導体の一方或いは両方は、導体表面部に凹凸形状を有し、前記導体の内部の電流経路よりも前記導体の表面部の電流経路を長くすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置において、
前記電力変換器にスイッチ素子として搭載されるパワー半導体デバイスは、シリコンよりも高速に遮断可能なシリコンカーバイド又はガリウムナイトライドであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
各相に第一のスイッチ素子および第二のスイッチ素子が直列接続され、直流電力を交流電力に変換、又は交流電力を直流電力に変換する電力変換器と、
前記電力変換器の直流側に接続したコンデンサと、
前記第一のスイッチ素子と前記コンデンサの正側端子を接続する第一の導体と、
前記第二のスイッチ素子と前記コンデンサの負側端子を接続する第二の導体と、
前記第一のスイッチ素子と前記第二のスイッチ素子を接続する第三の導体と、
前記第三の導体と前記電力変換器の出力端子を接続する第四の導体と、を備え、
前記第一の導体と前記第二の導体、前記第一の導体と前記第三の導体、前記第二の導体と前記第三の導体、の少なくともいずれかは絶縁層を介し積層させた構成であり、
前記第一の導体、第二の導体、第三の導体、第四の導体のうち、少なくとも一つの導体は、高周波の電流に対する抵抗値が、導体内部よりも導体表面部の方が大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の電力変換装置において、
前記導体表面部における抵抗値及び前記主回路配線のインダクタンス値及び前記電力変換器に搭載されるスイッチ素子の寄生容量より決定する減衰係数を、0.5より大きい値とすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項2又は請求項14に記載の電力変換装置において、
高周波とは、電力変換器の出力周波数の最大値より100倍以上大きい周波数であることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−90342(P2013−90342A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225440(P2011−225440)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】