説明

電力変換装置

【課題】電力変換器を構成する昇圧回路とインバータ回路に備えた平滑コンデンサの放電回路を共用し、装置の小型化を図るとともに電力変換効率の向上を促進した電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流/交流変換を行う電力変換装置に、直流電源から得られる直流電力を受け入れる入力コンデンサCinと、この入力コンデンサCinの直流電圧を中間コンデンサCfに蓄えて昇圧動作を行う昇圧回路と、昇圧された直流電圧を平滑する平滑コンデンサCp、Cnとを備え、入力コンデンサCinと、中間コンデンサCfと、平滑コンデンサCp、Cnとにそれぞれ蓄えられた電荷を放電する共用の放電回路をもうけた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば太陽電池のような直流電源の直流電力を、電圧と周波数の異なる交流電力に変換する直流/交流変換を行う電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力変換装置は、系統連系装置が、発電源であるソーラーパネルからの発電電力を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路により昇圧された発電電力の周波数を商用電力周波数に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路と商用電力供給ラインとの間に介挿される系統連系スイッチと、前記系統連系スイッチが開状態となった場合に、前記昇圧回路が備える平滑用コンデンサに蓄えられている電荷を放電する放電回路とを具備するように構成される。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−350420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電力変換装置において、系統連系装置の稼動時にあっては、前記平滑用コンデンサの電位差が高電位となっているため、装置の故障時などにおけるメンテナンス時の作業性から、運転停止時のコンデンサを一定時間内に放電させる必要がある。ところが、このような従来の電力変換装置では、出力電力量の増加とともに平滑用コンデンサの容量を大きくするか、もしくは複数のコンデンサを備える必要がある。このため、放電回路に備えた放電抵抗の容量増加や部品点数の増加を招き、電力変換装置が大型になるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、直流/交流変換を行う電力変換装置において、平滑コンデンサの放電回路を他のコンデンサの放電回路と共用し、装置の小型化を図るとともに、電力変換効率の向上を促進した電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置は、直流電源から得られる直流電力を受け入れる入力コンデンサと、前記入力コンデンサの直流電圧を中間コンデンサに蓄えて昇圧動作を行う昇圧回路と、昇圧された直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、インバータ回路とを備えた電力変換部に、前記入力コンデンサと、前記中間コンデンサと、前記平滑コンデンサとにそれぞれ蓄えられた電荷を放電する共用の放電回路を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の電力変換装置によれば、電力変換部に備えた各コンデンサの放電回路を共用できるため、装置の小型化が可能となる。また、運転停止または制御電源喪失(故障)にて放電回路を形成するようにすることにより、電力変換装置の稼動直後にメンテナンス作業が行われる場合であっても、各コンデンサの電荷が放電されており、作業性が向上する。さらに、電力変換部に備えたダイオードを用いて放電回路を形成することにより、そのダイオードにワイドバンドギャップ半導体(SiC)を用いた場合、放電時だけでなく運転中の回路損失をも低減でき、その結果、電力変換効率の向上を促進した電力変換装置が実現できる。
【0008】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る電力変換装置の回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る入力コンデンサの放電経路を示す回路図である。
【図3】この発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る中間コンデンサの放電経路を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1及び実施の形態2に係る平滑コンデンサの放電経路を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中同一符号は同一あるいは相当部分を示すものとする。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置の回路図である。この発明の電力変換装置は、太陽電池等からなる直流電源1と接続可能な電力変換装置であって、昇圧回路21により昇圧された発電電力の周波数を商用電力周波数に変換するための電力変換部2と、電力変換部2により変換された交流電力を負荷及び/または商用電力系統4に連系するための連系スイッチ3(MC2)を備えている。
【0011】
電力変換部2には、直流電源1から得られる直流電力を遮断器MCCB1を介して受け入れる入力コンデンサCinと、入力コンデンサCinの直流電圧を中間コンデンサCfと平滑コンデンサCp及びCnを有する昇圧回路21と、前記入力コンデンサCinと、中間コンデンサCfと、平滑コンデンサCp及びCnとにそれぞれ蓄えられた電荷を放電する放電回路22と、インバータ回路23を備えている。
【0012】
昇圧回路21は、入力コンデンサCinの正極側に接続された直流リアクトルDCLと、直列接続された第1及び第2のスイッチング素子S1及びS2と、後述する中間コンデンサCfの充電経路と放電経路を与える直列接続された第1及び第2のダイオードD1及びD2と、スイッチング素子S1及びS2の接続点と、ダイオードD1及びD2の接続点との間に接続され、スイッチング素子S1及びS2のオン・オフにより充放電動作をする中間コンデンサCfと、ダイオードD2の一端とスイッチング素子S1一端との間に直列に接続された平滑コンデンサCp及びCnを備えている。
【0013】
放電回路22は、平滑コンデンサCpに並列に接続された第1のDCリレーMC1aと、平滑コンデンサCnに並列に接続された第2のDCリレーMC1bと、これら両リレーの開閉を制御するリレー制御部Reとからなるリレー回路24を含み、さらに各DCリレーMC1a及びMC1bにそれぞれ直列に接続された第1及び第2の放電用負荷DRP及びDRNからなる。リレー制御部Reの電源は、蓄電池または電力変換装置等から供給される。
【0014】
インバータ回路23には平滑コンデンサCp及びCnの電圧が印加され、インバータ回路23で交流に変換された電力が、リアクトルLFU、LFV、及びLFWと、連系スイッチ3及び遮断器MCCB2を介して商用電力系統4または負荷に供給される。
【0015】
電力変換装置の稼動時には、DCリレーMC1a及びMC1bは開となっている。昇圧回路21は、第1のスイッチング素子S1のオンにより中間コンデンサCfが第1ダイオードD1を介して充電され、続いて第2のスイッチング素子S2のオンにより中間コンデンサCfが第2のダイオードD2を介して放電され、この放電電流が平滑コンデンサCp及びCnに与えられるものであり、両スイッチング素子S1及びS2を交互にオン状態として直流電源1の出力に重畳して昇圧を行ない、インバータ23により直流/交流の電力変換を行なう。
【0016】
電力変換装置が運転停止または制御電源喪失(故障)等で停止した場合、メンテナンスを行なうには、入力コンデンサCin、中間コンデンサCf、及び平滑コンデンサCp及びCnに蓄えられている電荷を放電する必要がある。このとき、リレー回路24のリレー制御部Reを動作させてDCリレーMC1a及びMC1bを閉じ、放電用負荷DRP及びDRNを含む放電回路22を閉成する。
【0017】
図2は、放電回路22の閉成時における入力コンデンサCinの放電経路を示す回路図である。図2中、矢印のループXがその放電経路を示す。入力コンデンサCinは、昇圧回路21内の直流リアクトルDCL→第1のダイオードD1→第2のダイオードD2→第1のDCリレーMC1a→第1の放電用負荷DRP→第2のDCリレーMC1b→第2の放電用負荷DRNの経路にて電荷を放電する。
【0018】
図3は、放電回路22の閉成時における中間コンデンサCfの放電経路を示す回路図である。図3中、矢印のループYがその放電経路を示す。中間コンデンサCfは、昇圧回路21内の第2のダイオードD2→第1のDCリレーMC1a→第1の放電用負荷DRP→第2のDCリレーMC1b→第2の放電用負荷DRN→第1のスイッチング素子S1の経路にて電荷を放電する。
【0019】
図4は、放電回路22の閉成時における平滑コンデンサCp及びCnの放電経路を示す回路図である。図4中、矢印のループZ1及びZ2がその放電経路を示す。平滑コンデンサCpは、第1のDCリレーMC1a→第1の放電用負荷DRPの経路にて電荷を放電し、平滑コンデンサCnは、第2のDCリレーMC1b→第2の放電用負荷DRNの経路にて電荷を放電する。
【0020】
以上のようにこの発明に係る電力変換装置においては、各コンデンサ(Cin、Cf、Cp、Cn)の放電経路は、いずれも放電回路22を共用するよう構成されるため、別々の放電回路が不要となり、使用部品の低減並びに装置の小型化を図ることができる。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を説明する。実施の形態2の構成では、前記放電回路22に、リレー制御部Reによるコイル励磁で主接点が開くDCリレー(b接点)MC1a及びMC1bからなるリレー回路24を採用している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0022】
この構成では、運転停止または制御電源喪失(故障)時に、リレー制御部Reの電源喪失によりDCリレーMC1a及びMC1bのコイル励磁が断たれたとき、DCリレーMC1a及びMC1bは閉じることにより放電回路22が閉成され、放電用負荷DRP及びDRNと、電力変換部2に備えた各コンデンサ(Cin、Cf、Cp、Cn)とが直列接続された閉回路が形成されるため、実施の形態1と同様の効果が得られると共に、運転停止時や故障時のいかなる場合においても、前記電力変換部2が備える各コンデンサを放電できるため、メンテナンス時の作業性が向上する。
【0023】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を説明する。実施の形態3では、図5に示すように実施の形態1の昇圧回路21の構成要素である第1のダイオードD1と第2のダイオードD2に、ワイドバンドギャップ半導体、例えばSiCを主材料としたダイオード(SiCダイオード25)を採用したものである。これにより、ダイオードD1及びD2が放電回路の一部となる放電時のみならず通常運転時の電力損失を低減でき、電力変換装置の高効率化を図ることができる。
【0024】
なお、上述した実施の形態1〜3では直流電源に太陽電池を用いた場合について説明したが、この発明はこれに限られることはなく、蓄電池や定電圧電源であってもよく、本発明の範囲内にある限り、別な構成、動作へ変更を加えて実施してもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 直流電源、 2 電力変換部、
3 連系スイッチ、 4 商用電力系統、
21 昇圧回路、 22 放電回路、
23 インバータ回路、 24 リレー回路、
25 SiCダイオード、
Cin 入力コンデンサ、 S1、S2 スイッチング素子、
D1、D2 ダイオード、 Cf 中間コンデンサ、
Cp、Cn 平滑コンデンサ、 MC1a、MC1b DCリレー、
Re リレー制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から得られる直流電力を受け入れる入力コンデンサと、前記入力コンデンサの直流電圧を中間コンデンサに蓄えて昇圧動作を行う昇圧回路と、昇圧された直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、インバータ回路とを備えた電力変換部に、前記入力コンデンサと、前記中間コンデンサと、前記平滑コンデンサとにそれぞれ蓄えられた電荷を放電する共用の放電回路を設けたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記放電回路は、コイル励磁で主接点が開くDCリレーと、該DCリレーに直列接続された放電用負荷を含む回路からなり、前記DCリレーの励磁が断たれたとき前記主接点が閉じて、前記放電用負荷と前記各コンデンサとが直列接続される閉回路を形成することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記昇圧回路は、前記放電回路の一部となるダイオードを含み、該ダイオードはワイドバンドギャップ半導体で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記直流電源は、太陽電池であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9476(P2013−9476A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139155(P2011−139155)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】