説明

電力計測装置

【課題】力率を別途計測することなく、簡単に電力を計測することができる電力計測装置を提供する。
【解決手段】この電力計測装置は、交流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された強磁性薄膜と、前記一次導体に接続され、前記強磁性薄膜に抵抗体を介して素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記強磁性薄膜端両端の出力を検出する検出部とを具備した磁界センサ10と、前記検出部の出力から直流成分を抽出する直流成分抽出部50とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力計測装置にかかり、特に磁性薄膜をセンサとして用い、電流および電圧を入力して、両入力から得られる電力に相当する信号を直接出力する電力計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等を利用する環境が整ってきた中で、電力の遠隔検針を含めた計測システムの開発が進められている。
使用した電力を円盤の回転数に変換し、積算演算を行うという既存の積算電力計に、回転を検出するセンサを付加したり、電流計(CT)、電圧計(PT)を新たに付加し、電子回路やマイクロプロセッサによる乗算計算を行い、電力を計測するなどの方法が用いられている。しかし、このような電力計は、装置が大型化するだけでなく、高価なものとなり、また、余計なエネルギーを消費しかねないという状況である。
そこで消費電力をそのまま電気量として測定することができるとともに、小型化および集積化の可能な電力計の開発が望まれている。
【0003】
特に、磁性薄膜の磁気抵抗効果を利用し、消費電力を電気量のまま測定することの可能な電力計測装置が提案されている(非特許文献1,2)。
【0004】
これは、交流が流れる一次導体に対し、平行に置かれた(基板上に構成された)磁性薄膜と、一次電圧が前記磁性薄膜の両端に抵抗を介して印加しており、磁性薄膜の(両端)から出力を取り出す電力センサにおいて、2倍周波数成分の振幅値から電力IVを取り出す方式をとるものである。
【0005】
この電力計測装置では、強磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、バイアス磁界なしで線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにしている。
ここで用いられる磁界センサは、外部磁界の変化を電気信号に変換する素子であり、強磁性薄膜や半導体薄膜等の磁界検出膜をパターニングし、その磁界検出膜のパターンに電流を流し電圧変化として外部磁界の変化を電気信号に変換するものである。
【0006】
ここで出力信号は次式(1)のようになる。
【0007】
【数1】

【0008】
ここで出力は、直流成分の項と、交流成分の項に分けられる。
A1はブリッジ抵抗のアンバランスで生ずる電力と関係のない不要な項、A2は電力に比例する項(瞬時電力)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】磁性膜を用いた薄膜電力計(電気学会マグネティックス研究会資料 VOL.MAG−05No.182)
【非特許文献2】磁性膜を用いた薄膜電力計(電気学会マグネティックス研究会資料 VOL.MAG−05No.192)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記電力計測装置においては、2ω成分の振幅値I1・V1の値を計測し、別途力率cosθを計測し、別途掛け算を行って、I1・V1・cosθを得るという方法をとっており、力率が1でない場合は力率を別途計測し演算する必要があった。また、高調波成分を有する電流波形の場合、基本波成分の電力しか取り出すことができないという問題があった。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、力率を別途計測することなく、簡単に電力を計測することができる電力計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の電力計測装置は、交流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された磁性薄膜と、前記一次導体に接続され、前記磁性薄膜に抵抗体を介して素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記磁性薄膜端両端の出力を検出する検出部とを具備した磁界センサと、前記検出部の出力から直流成分を抽出する直流成分抽出部とを具備したことを特徴とする。
上記構成によれば、磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、バイアス磁界なしで線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにし直流成分抽出部によって、検出部の出力から直流成分を抽出するようにしているため、抽出した波形は電流×電圧×力率成分となっているため、電力であり、波形から掛け算をすることなく直接計測することができるため、容易でかつ高精度の電力検出が実現可能である。
【0012】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記磁界センサが、前記直流成分抽出部と同一基板上に形成されたものを含む。
上記構成によれば、磁界センサが実装用の基板上に構成されるため、磁界センサと直流成分抽出部で囲む面が一次導体電流によって生ずる磁束を横切らないため、鎖交磁束による不要な誘導起電力の影響を減らすことができる。また、直流成分抽出部を含む処理回路と磁界センサとを基板上で同一面に形成できるため、電力計測装置を薄型に構成することができる。
【0013】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記磁界センサの前記磁性薄膜は、前記基板上に成膜され、前記検出部が前記基板上の配線パターンと直接接続されたものを含む。
上記構成によれば、基板上に磁性薄膜を形成しているため、磁界センサと処理回路が基板で一体化でき更なる薄型化・小型化が可能となる。
【0014】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記磁界センサは、前記基板上に成膜された磁性薄膜と、前記磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記磁性薄膜両端の出力を検出する検出電極部とを具備し、前記配線パターンが前記給電部と前記検出電極部と同一の導体層で構成されたものを含む。
上記構成によれば、通常の回路基板の構成に加えて、磁性体薄膜のパターンを形成するだけでよいため、極めて容易に形成可能である。
【0015】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されたものを含む。
上記構成によれば、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されているため、Vmr出力の最大値を大きく取ることができ、システムとしてのS/N比が向上する。
【0016】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記磁性薄膜は、磁化方向が前記素子電流の方向と一致するように形成されたものを含む。
上記構成によれば、自発磁化をもたせることにより、磁性薄膜に、プレーナホール効果すなわち磁気抵抗効果(磁界により抵抗値が変化する現象)が生ずる。従って自発磁化の方向を素子電流I2の方向に平行としておくことにより、一次導体による磁界方向正の最大値と、負の最小値で出力(絶対値)が等しくなりダイナミックレンジを最大にすることができる。一方、平行でなければ正負いずれかが出力され、出力(絶対値)が小さくなり、センサのダイナミックレンジが狭くなる。
【0017】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記検出部は、前記素子電流の方向に直交する方向に形成されたものを含む。
上記構成によれば、θ=π/4の磁界印加のときにVmrは最大値をとるため、出力取り出し点において対称である構成のときに最も効率よく信号を取り出すことができる。
【0018】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記直流成分抽出部は、出力値を商用周波数fのf分の1の周期毎に積算する積算部を具備したものを含む。
上記構成によれば、Vmrは、直流成分+商用周波数の公倍数であるから、商用周波数の周期期間中積算すれば交流分はプラスマイナスが相殺されて直流分だけを取り出すことができる。直流成分を周期単位で得ることができ高速演算に適うので、過渡応答性に優れる。また、周期で積算することで、1次の不要な項を落とすことができ、電力の高調波成分まで取り出すことができる。
【0019】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記素子電流の一次電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部を具備し、前記ゼロクロス点検出部の出力に応じて、前記直流成分抽出部の駆動タイミングが決定されるものを含む。
上記構成によれば、系統周波数は常時変動しているので周期を正しく測るには系統電圧を用いるのが最も精度が良く、素子電流I2のために電圧信号を基板に取り込んでいる箇所を分岐することで、新規に外部電圧信号線を施すことなく電圧信号から周期を検出することが可能となる。
【0020】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記検出部に並列接続されたコンデンサを具備したものを含む。
上記構成によれば、コンデンサでVmr信号を平滑化することで、周期未満の短期間で直流成分を取り出すことができるので高速で電力値を得ることができ、直流成分を簡単な回路構成で検出することが可能となる。
【0021】
また、本発明の電力測定方法は、上記電力計測装置を用い、磁性薄膜のパターンに対し、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように、素子電流を供給する工程と、前記素子電流の供給によって生起された出力の直流成分を取り出し、電力情報とする。
この構成によれば、力率を別途計測する必要がなく、簡単に計測することができ、かつ積算による場合に比べ、誤差も低減される。
【0022】
また、本発明の電力計測装置に用いられる磁界センサは、磁性薄膜と、前記磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記素子電流の方向に直交する方向における前記磁性薄膜(端部間)の電圧を検出する検出部とを具備し、前記磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されたことを特徴とする。
上記構成によれば、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成することで、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
【0023】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、外形が円形であるものを含む。
この構成によれば、対称形であり、磁気抵抗が対称となるように形成しやすく、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0024】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、環状体であるものを含む。
この構成によれば、磁性薄膜の幅が小さくなるため、電気抵抗が増大し、素子の外形を大きくすることなく抵抗値を大きくすることができ、出力を大きくすることが可能となる。
【0025】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、正方形の環状体で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部が設けられたものを含む。
この構成によれば、説明は後述するが、センサの出力Vmrは角度90度の時に最大となる。
丸形環状においても略同式にて表現できるが、円形状の場合、電流密度ベクトルの方向がAからC、AからDの間で変化し、出力最大となるφ=45度以外の成分も存在するためひし形に比べて出力が小さくなる。
【0026】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、環状体であり、線幅が一定である。
この構成によれば、磁界を印加しないときの電圧が等しくなり、電圧出力がゼロとなるため、後段の回路において増幅をした時にオフセットによる飽和を抑制することができ、回路構成が簡単となり、かつ高精度の磁界検出が可能となる。
【0027】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、正方形の環状体で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部が設けられたものを含む。
【0028】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記磁性薄膜は、前記環状体の内部に、磁性膜からなる内部磁性薄膜が設けられたものを含む。
この構成により、磁性体の間に空間が形成されるため、外部磁界に対する感度が低下する。そこで電気抵抗を高めたままで、磁気的な感度のみを向上すべく、電気的に独立して内部磁性体膜を設けたことで、より高感度化を図ることができる。
【0029】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と同一材料からなる磁性薄膜で構成されたものを含む。
この構成によれば、製造が容易でパターンの変更のみで高感度で信頼性の高い磁界センサを提供することができる。
【0030】
また本発明は、上記磁界センサにおいて、前記内部磁性薄膜は、前記磁性薄膜と異なる磁性薄膜で構成されたものを含む。
この構成によれば、感度を調整することができ、また、多数の磁界センサを並べて配列する場合、感度をそろえるために、内部磁性薄膜の材料を調整することによっても感度の調整を図ることが可能となる。
【0031】
また本発明の電力計測装置における磁界測定方法は、磁性薄膜のパターンに対し、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように、素子電流を供給し、前記素子電流の供給方向に直交する方向で、前記磁性薄膜(端部間)の電圧を検出することで磁界強度を測定する。
この構成によれば、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成することで、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明してきたように、本発明によれば、出力電圧の直流成分を取り出すことで、極めて簡単な構成で、力率を別途計測する必要がなく、直接電力を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の電力測定装置の概要説明図
【図2】同等価回路図
【図3】同原理説明図
【図4】同電力計測装置の説明図
【図5】同電力計測装置の断面図
【図6】同電力計測装置の出力特性を示す図
【図7】同電力計測装置の出力取り出し方向を示す説明図であり、(a)および(b)は自発磁化の方向が素子電流I2の方向と平行である場合、(c)および(d)は自発磁化の方向が素子電流I2の方向と平行でない場合
【図8】同電力計測装置の外部磁界と出力電圧との関係を示す図
【図9】同電力計測装置の検出部の説明図
【図10】同電力計測装置の検出部の説明図であり、(a)はθが0のとき、(b)はθがπ/4のときを示す
【図11】電力計測装置の電力を出力としてとりだしたときの出力値の1周期分を示す図
【図12】本発明の実施の形態2の電力計測装置の説明図
【図13】本発明の実施の形態3の電力計測装置の説明図
【図14】本発明の実施の形態の電流計測装置で用いられる磁界センサ(実施の形態5)の原理説明図
【図15】本発明の実施の形態5の磁界センサの上面図
【図16】本発明の実施の形態5の磁界センサの断面図
【図17】本発明の実施の形態5の磁界センサの素子特性を測定するための測定装置を示す回路説明図
【図18】本発明の実施の形態5の磁界センサの素子特性の測定結果を示す図
【図19】本発明の実施の形態5の磁界センサの素子特性の測定結果を示す図
【図20】本発明の実施の形態5の磁界センサの電流値と出力電圧との関係を示す図
【図21】本発明の実施の形態6の磁界センサの原理説明図
【図22】本発明の実施の形態6の磁界センサの上面図
【図23】本発明の実施の形態6の磁界センサの断面図
【図24】本発明の実施の形態6の変形例の磁界センサの断面図
【図25】本発明の実施の形態6の変形例の磁界センサの上面図
【図26】本発明の実施の形態7の磁界センサの原理説明図
【図27】本発明の実施の形態8の磁界センサの上面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態の説明に先立ち、本発明の測定原理について説明する。
【0035】
この電力計測装置では、強磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、バイアス磁界なしで線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにしている。図1および2にこの測定原理を示す。図1はこの電力測定装置の概要説明図、図2は等価回路図である。
ここで用いられる磁界センサは、外部磁界の変化を電気信号に変換する素子であり、磁界検出膜としての強磁性薄膜5をパターニングし、その磁界検出膜のパターンに電流を流し電圧変化として外部磁界の変化を電気信号に変換するものである。
ここで図2に示すように、強磁性薄膜はR1,R2,R3,R4からなる抵抗ブリッジとみなすことができる。
【0036】
ここで、平衡状態(R1=R2=R3=R4)であるとき、
【0037】
【数2】

【0038】
となり、直流成分の項(第1項)と、交流成分の項(第2項)とに分けられる。
すなわち、抵抗ブリッジが零磁界でVmr=0の場合(R1=R2=R3=R4)、印加磁界により現れる出力Vmrは抵抗変化率に比例する。
【0039】
これは以下の理由による。
抵抗変化率ΔR1/R1はI1に比例し、強磁性薄膜にかかる電圧VbはI2に比例するよう設計可能であるため、Vmr出力はI1とI2の積に比例する。すなわち電力に比例する信号成分である。I1とI2を瞬時式に展開すると、Vmrは、(DC項)+(2ω項)である。
【0040】
一般に抵抗ブリッジは不平衡であるため、それはω項として現れるがこの成分は電力には無関係である。さらに正確にいうと、不平衡度が多ければ大きい値になるので、不平衡度合いと電力成分を分離できない。
【0041】
そこで、第1項である直流成分の項をとりだすことで、直接電力を取り出すことが可能となる。
【0042】
次に、本発明の電力計測装置で用いられる磁界センサの測定原理について説明する。
本発明では、磁性薄膜として用いる強磁性薄膜に対し、素子電流方向に対し直交する方向に出力取り出しを行うようにするとともに、出力取り出し方向に対してほぼ対称となるようにしている。
【0043】
つまり図3に原理説明図を示すように、円形の強磁性薄膜3のパターンの中心に対して対称な位置にあり、この強磁性薄膜パターンの周縁上にある点A,Bを通電部とし、この線分ABに直交するとともに、円の中心を通る線分C,Dを出力取り出し方向としている。
【0044】
このとき、図3に示すように、強磁性薄膜3にその直径方向に沿って配置された導体5に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、強磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、
点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
これを数式化すると、
CD=I(ΔRsin2θ) (4)
で表すことができる。ここでIは電流密度ベクトル、BM0は磁束密度ベクトル、Iは素子電流である。
つまり交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
【0045】
また、この構成によれば、磁界を印加しないときのオフセットがなく、ゼロとなるため回路構成を簡単にすることができる。
この構成によれば、強磁性薄膜(端部間)の電圧を検出する検出部(C,D)との間に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、強磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
【0046】
(実施の形態1)
本実施の形態1の電力計測装置について説明する。図4にこの電力計測装置の説明図、図5に断面図、図6にこの電力計測装置の出力を示す。この電力計測装置は、交流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された強磁性薄膜と、前記一次導体に接続され、前記強磁性薄膜に抵抗体を介して素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、前記強磁性薄膜両端の出力を検出する検出部とを具備した磁界センサ10と、前記検出部の出力から直流成分を抽出する直流成分抽出部50とを具備したことを特徴とする。
【0047】
ここで磁界センサ10の給電部は、負荷としての抵抗体9を介して交流電源8に接続されている。また検出部に接続された直流成分抽出部50は、アンプ20と、A/D変換器30と、CPU40とで構成される。
また、この電力計測装置は、プリント配線基板からなる回路基板1上に配線パターン2を介して実装された磁界センサ10と、このプリント配線基板上の回路パターン2に半田接続されたチップ部品からなるアンプ20と、A/D変換器30と、CPU40とが接続されて構成されている。
【0048】
ここで図4に示すように、磁界センサが直流成分抽出部50とともに、回路基板1上に形成されているため磁界センサの強磁性薄膜とアンプ20の入力線とで囲む面Sが一次導体電流I1によって生じる磁束を横切らないので、鎖交磁束による不要な誘導記電力の影響を低減することができる。
また薄型化および小型化が可能となる。
【0049】
このようにして得られた出力を図6に示す。この出力VmrからDC成分を得ることで、直接電力を得ることができる。
本実施の形態の電力計測装置によれば、強磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、バイアス磁界なしで線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにし直流成分抽出部によって、検出部の出力から直流成分を抽出するようにしているため、抽出した波形は電流×電圧×力率成分となっているため、電力であり、波形から掛け算をすることなく直接計測することができるため、容易でかつ高精度の電力検出が実現可能である。
【0050】
また、本発明は、上記電力計測装置において、前記強磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成される。
【0051】
【数3】

としたとき、θ=π/4の磁界印加のときにVmrは最大値をとるが、出力取り出し点において対称である構成のときに最も効率よく信号を取り出すことができる。このように上記構成によれば、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成されているため、Vmr出力の最大値を大きく取ることができ、システムとしてのS/N比が向上する。
従って上記構成によれば、高精度の電力計測が可能となる。
【0052】
また、強磁性薄膜は、高感度化の点からは磁化方向が前記素子電流の方向と一致するように形成されるのが望ましい。
このように、自発磁化をもたせることにより、強磁性薄膜に、プレーナホール効果すなわち磁気抵抗効果(磁界により抵抗値が変化する現象)が生ずる。ここで電流I2ベクトルと、自発磁化の方向すなわち一次導体による磁界Hと、合成された磁束密度ベクトルBMOとの関係を図7に示す。この図から、従って自発磁化の方向を図7(a)および(b)に示すように素子電流I2の方向に平行としておくことにより、一次導体による磁界方向で正の最大値と、負の最小値で出力(絶対値)が等しくなりダイナミックレンジを最大にすることができる。図7(a)および(b)の下段は上断の合成磁化の生成を示す説明図である。一方、図7(c)乃至(d)に示すように平行でなければ正の最大値と、負の最小値(絶対値)のいずれかが小さくなるため、センサのダイナミックレンジが狭くなる。図8は素子出力と一次導体による磁界強度において、ダイナミックレンジを図中太線で示したものである。ダイナミックレンジは素子出力の正側と負側のいずれか小さい方で規定されるために、素子電流ベクトルI2と自発磁化が平行になるようにした場合に正側と負側が等しくなるので全体のダイナミックレンジが最も有効に取り得るものとなる。
【0053】
ここで製造に際し、スパッタリングによって成膜する場合には、磁界をかけながらスパッタリングを行うことで、自発磁化の方向が素子電流I2の方向に平行となるように形成することで容易に形成可能である。
【0054】
かかる構成によれば、強磁性体内において、電流と磁化のなす角度によりその磁性体の電気抵抗値が変わる現象であるプレーナホール効果を利用し、バイアス磁界なしで線形特性を得ることができる点に着目し、電力に比例する信号成分を取り出すようにし直流成分抽出部によって、検出部の出力から直流成分を抽出するようにしているため、抽出した波形は電流×電圧×力率成分となっているため、電力であり、波形から掛け算をすることなく直接計測することができるため、容易でかつ高精度の電力検出が実現可能である。
【0055】
また、本発明は、この電力計測装置において、検出部は、図9乃至図10に説明図を示すように、素子電流の方向に直交する方向に形成されるのが望ましい。
ここで図10(a)は磁界Hがゼロの時、図10(b)は磁界Hがπ/4の角度をなすときであるときを示す。
この構成によれば、θ=π/4の磁界印加のときにVmrは最大値をとるため、出力取り出し点において対称である構成のときに最も効率よく信号を取り出すことができる。
【0056】
また、望ましくは、直流成分抽出部50は、出力値を商用周波数fのf分の1の周期毎に積算する積算部を具備している。
上記構成によれば、Vmrは、直流成分+商用周波数の公倍数であるから、図11にこの電力計測装置の電力を出力としてとりだしたときの出力値の1周期分を示すように、商用周波数の周期期間中積算すれば交流分はプラスマイナスが相殺されて直流分だけを取り出すことができる。直流成分を周期単位で得ることができ高速演算に適うので、過渡応答性に優れる。また、周期で積算することで、1次の不要な項を落とすことができ、電力の高調波成分まで取り出すことができる。
【0057】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態では、図12に示すように、磁界センサ10の検出部にゼロクロス検出部60および周期判定部70を接続し、このゼロクロス検出部の出力に基づいて周期判定部70で出力の周期を検出するようにしたことを特徴とするものである。ここではゼロクロス点検出部60の出力に応じて、周期判定部70で周期が判定され、この周期によって前記直流成分抽出部50の駆動タイミングが決定される。他の構成については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
この構成によれば、系統周波数は常時変動しているので周期を正しく測るには系統電圧を用いるのが最も精度が良く、素子電流I2のために電圧信号を基板に取り込んでいる箇所を分岐することで、新規に外部電圧信号線を施すことなく電圧信号から周期を検出することが可能となる。
【0058】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態では、図13に示すように、電力計測装置において、磁界センサの検出部にコンデンサ80を並列接続したものである。他の構成については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
この構成によれば、コンデンサでVmr信号を平滑化することで、周期未満の短期間で直流成分を取り出すことができるので高速で電力値を得ることができ、直流成分を簡単な回路構成で検出することが可能となる。
【0059】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。
前記実施の形態1では磁界センサはチップ部品で構成し、回路基板を構成するプリント配線板に搭載するようにしたが、回路基板を構成するプリント配線板1上の直接強磁性薄膜3のパターンを形成し、給電部および検出部を構成する導体パターンを配線パターンと同一工程で形成し、集積化したものである。そして増幅器やA/D変換器、CPUはチップ部品で構成する。あるいはシリコン基板上に処理回路を集積化するとともに、絶縁膜を介して磁界センサを形成し、モノリシック素子とすることも可能である。
この構成によれば、より薄型化小型化が可能となる。
【0060】
(実施の形態5)
以下、本実施の形態1乃至4で説明した電力計測装置に用いられる磁界センサについて説明する。図14にこの磁界センサの原理説明図、図15に上面図、図16に断面図を示す。この磁界センサは図15及び16に示すように、シリコンからなる基板1表面に絶縁膜2として酸化シリコン膜を形成し、この絶縁膜2上に強磁性特性を有する強磁性薄膜3からなる環状パターンを形成し、この環状パターンの直径方向に沿って給電部5A,5Bを構成する導体パターン、および、この給電部5A,5Bから供給される素子電流の方向に直交する方向に形成された検出部5C,5Dとしての導体パターンとを具備したものである。
【0061】
つまり図14に原理説明図を示すように、円形の強磁性薄膜3のパターンの中心に対して対称な位置にあり、この強磁性薄膜パターン1の周縁上にある点A,Bを通電部とし、この線分ABに直交するとともに、円の中心を通る線分C,Dを出力取り出し方向としている。
【0062】
このとき、図14に示すように、強磁性薄膜3にその直径方向に沿って配置された導体200に電流Iを流し、その電流によって生じる磁界をH、素子の持つ自発磁化をMとしたとき、磁界H、素子の持つ自発磁化Mを合成した磁束密度ベクトルをBM0とするとともに電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθと、磁性薄膜3の点A−B間の抵抗をR、磁界によって変化する点A−B間の抵抗値の最大値をΔRとすると、
点C−D間の電圧VCDは、電圧VACと電圧VADとの差で表すことができる。
従って前記式(2)が成り立ち、交流磁界を印加した時、正負を判定することができる。
また、磁界を印加しないときのオフセットがなく、ゼロとなるため回路構成を簡単にすることができる。
【0063】
ここで強磁性薄膜としては、単層構造の強磁性薄膜のほか、(強磁性体/非磁性導電体)構造のアンチフェロ(結合)型薄膜、(高保磁力強磁性体/非磁性導電体/低保磁力強磁性体)構造の誘導フェリ(非結合)型薄膜、(半強磁性体/強磁性体/非磁性導電体/強磁性体)構造のスピンバルブ型薄膜、Co/Ag系統の非固溶系グラニュラー型薄膜などから選択して形成される。
また導体パターンとしては金、銅、アルミニウムなどが用いられる。
【0064】
次に、この磁界センサの製造工程について説明する。
基板1としてのシリコン基板表面に、絶縁膜2としての酸化シリコン膜を形成し、この上層に、スパッタリング法により、強磁性薄膜3を形成する。このとき、磁界を印加しつつスパッタリングを行い、自発磁化方向が揃うように形成する。
そして、フォトリソグラフィによりこの強磁性薄膜3をパターニングし、円環状のパターンとする。
こののち、スパッタリング法により、金などの導電体薄膜を形成し、フォトリソグラフィによりパターニングし、図15及び図16に示すような給電部5A、5Bおよび検出部5C、5Dを形成する。
そして必要に応じて保護膜を形成し、磁界センサが完成する。
【0065】
本実施の磁界センサによれば、磁性薄膜の幅が小さくなるため、電気抵抗が増大し、出力を大きくすることができる。
【0066】
この磁界センサの出力特性を確認するため、図17に示すような測定装置を用いて実験を行った。図14乃至16に示した磁界センサ501の給電部ABに、交流電源507から変圧器506及び抵抗505を介して交流を供給するとともに、磁界センサ501の検出部CDにアンプ502を介して表示部としてのオシロスコープ504を接続したものである。503は安定化電源である。なおこの測定装置は鉄製のケーシング500内に収納されている。ここでは、この素子を搭載した素子基板を鉛直に配置し、素子と、測定すべき電流線とのり離間距離を約3mmとして測定を行った。
この測定結果を、図18および図19に示す。図18は素子電流I1を8.842Aとしたときの瞬時出力であり、図19は素子電流I1を0Aとしたときの瞬時出力である。
【0067】
このようにして得られた電流値と、素子出力電圧との関係を図20示す。ここでは、アンプによるオフセットが5.888Vとなっているが、それ以外はオフセットもなく、信頼性の高いものとなる。
【0068】
なお、前記実施の形態では、鉛直方向に配置した素子基板を用いた測定について説明したが、測定すべき電線を素子基板上に載せることによって測定を行うようにしてもよい。
【0069】
また前記実施の形態において、線幅は一定とするのが望ましい。一定ではない場合は、抵抗値が対称となるように、膜厚を調整したり、補助パターンを付加するのも有効である。
【0070】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。本実施の形態では、図21乃至図23に示すように、前記実施の形態5の磁界センサの環状パターンを構成する強磁性薄膜3の環の内周に沿って相似形である円状の強磁性薄膜の補助パターン4を形成したことを特徴とするものである。構成としてはこの補助パターン4が付加されただけで、他の構成については前記実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。同一部位には同一符号を付した。ここで図21はこの磁界センサの原理説明図、図22に上面図、図23に断面図を示す。この磁界センサは基本的には前記実施の形態5と同様であるが、この補助パターン4の存在により、電気抵抗は高めたままで磁気的な感度を高めるようにしたものである。外側の環状パターン(3)と内部の補助パターン4とは電気的に接触していないため、電気抵抗は前記実施の形態1の磁界センサと同様であるが、磁気的には空間部が磁性薄膜で埋められるため、より多くの磁束を導くことができ、高感度化を図ることができる。
【0071】
なお、素子構造としては、図24に変形例を示すように、磁性体薄膜パターンを形成後基板表面全体をポリイミド樹脂からなる保護絶縁膜16で被覆し、スルーホールを介して給電部5A,5Bおよび検出部5C,5Dを形成してもよい。この構成によれば、磁性体薄膜の劣化を防止し、信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0072】
さらにまた、環状パターンの内部に形成される補助パターンとしては、同一材料で構成してもよいし、図25に示すように別の材料からなる磁性体薄膜で補助パターン24を形成してもよい。
【0073】
なお、保護膜としては、酸化シリコン膜や酸化アルミニウムなどの無機膜の他、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂等の有機膜を用いることも可能である。
【0074】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。本実施の形態では、図26および27に示すように、強磁性薄膜は、正方形の環状パターン33で構成され、前記正方形の対角線方向に電流が流れるように給電部5A,5Bが設けられ、これらに直交する方向に検出部5C,5Dが形成されたことを特徴とする。
本実施の形態でも、前記実施の形態5の磁界センサの環状パターン3に代えて正方形の環状パターン33を形成しただけで、他の構成については前記実施の形態5と同様であり、ここでは説明を省略する。同一部位には同一符号を付した。ここで図26はこの磁界センサの原理説明図、図27に上面図を示す。
【0075】
ここで磁束密度ベクトルは素子が持つ自発磁化ベクトルMと外部磁界ベクトルHの合成であり、外部磁界がない場合には磁束密度ベクトルは自発磁化ベクトル方向となる。
外部磁界が交流磁界の場合は、自発磁化ベクトルを中心に図の上下方向に振動する。
【0076】
この構成によれば、センサの出力 Vmrは次式で表すことができる。
ただし、電流密度ベクトルと磁束密度ベクトルのなす角をθ1、θ2、
ACとADのなす角をφ、
外部磁界がない時のAC間の電圧をVAC0、AD間の電圧をVAD0、
磁気抵抗効果による電圧変化の最大値をΔVrとする。
【0077】
【数4】

【0078】
となり最大となる。つまり角度90度の時に最大となる。
丸形環状においても略同式にて表現できるが、円形状の場合、電流密度ベクトルの方向がAからC、AからDの間で変化し、出力最大となるφ=45度 以外の成分も存在するため正方形に比べて出力が小さくなる。
【0079】
なお、前記実施の形態では、磁性体薄膜をスパッタリング法で形成したが、スパッタリング法に限定されることなく、真空蒸着法あるいは、塗布法、浸漬法などによっても形成可能である。
【0080】
また基板についても、シリコンなどの半導体基板のほか、サファイア、ガラス、セラミック等の無機系基板あるいは、樹脂等の有機系基板などいずれを用いてもよい。これらのなかでは特に、いわゆる可撓性に優れ、薄くて軽いものを用いることが好ましく、例えば、印刷配線板等として広く使用されているプラスチックフィルムと同様の基板を使用することができる。より具体的には、プラスチックフィルム材質として公知の各種の材料、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリポロピレン(PP)、テフロン(登録商標)等が利用可能である。可撓性の基板を用いることにより、測定すべき電線を囲むように配置するなど、より高感度となるように配置することが可能となる。また、ハンダによる接合を考慮して、耐熱性の高いポリイミドフィルムを用いるようにしてもよい。なお基板の厚さは、特に限定されるものではないが、1〜300μm程度の厚さのものが好ましい。
【0081】
さらにまた、ガラス基板などの基板上に直接磁性体薄膜パターンを形成して磁界センサを形成してもよいが、一旦チップを形成し、これをガラス基板やプリント配線板などにワイヤボンディング法や、フリップチップ法で実装するようにしてもよい。またチップ内に、処理回路も含めて集積化することでより高精度で信頼性の高い磁界センサを提供することが可能となる。
【0082】
なお前記実施の形態に限定されるものではなく、磁性薄膜の出力取り出し方向を素子電流方向に対し直交する方向とするとともに、素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成するものであれば適用可能であり、方向の正負を判定することができ、かつ磁界を印加しないときのオフセットがなくなるため回路構成を簡単にすることができる。
また前記実施の形態では強磁性薄膜を用いた磁界センサを用いたが、これに限定されることなく他の磁界センサを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明してきたように、本発明の電力計測装置によれば、力率が1でない場合あるいは高調波電流が含まれた負荷であっても正しい電力計測を行うことができ、変流器などの電流センサを用いた従来の電力計測装置に比較して小型化、低いコスト化が可能となることから、種々の省エネツールに適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 基板
2 絶縁膜
3、33 強磁性薄膜((環状)パターン)
4、24 補助パターン
5A,5B 給電部
5C,5D 検出部
100 強磁性薄膜
200 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流が流れる一次導体に対し、平行となるように配置された磁性薄膜と、
前記一次導体に接続され、前記磁性薄膜に抵抗体を介して素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、
前記磁性薄膜両端の出力を検出する検出部とを具備した磁界センサと、
前記検出部の出力から直流成分を抽出する直流成分抽出部とを具備した電力計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力計測装置であって、
前記磁界センサは、前記直流成分抽出部と同一基板上に形成された電力計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力計測装置であって、
前記磁界センサの前記磁性薄膜は、前記基板上に成膜され、前記検出部が前記基板上の配線パターンと直接接続された電力計測装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力計測装置であって、
前記磁界センサは、
前記基板上に成膜された磁性薄膜と、
前記磁性薄膜に素子電流を供給する入出力端子を備えた給電部と、
前記磁性薄膜両端の出力を検出する検出電極部とを具備し、
前記配線パターンが前記給電部と前記検出電極部と同一の導体層で構成された電力計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力計測装置であって、
前記磁性薄膜は、前記素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように形成された電力計測装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電力計測装置であって、
前記磁性薄膜は、磁化方向が前記素子電流の方向と一致するように形成された電力計測装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電力計測装置であって、
前記検出部は、前記素子電流の方向に直交する方向に形成された電力計測装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電力計測装置であって、
前記直流成分抽出部は、出力値を商用周波数fのf分の1の周期毎に積算する積算部を具備した電力計測装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電力計測装置であって、
前記素子電流の一次電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス点検出部を具備し、
前記ゼロクロス点検出部の出力に応じて、前記直流成分抽出部の駆動タイミングが決定される電力計測装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力計測装置であって、
前記検出部に並列接続されたコンデンサを具備した電力計測装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の電力計測装置を用い、
磁性薄膜のパターンに対し、
素子電流の方向に対して磁気抵抗が対称となるように、素子電流を供給する工程と、
前記素子電流の供給によって生起された出力の直流成分を取り出し、電力情報とする電力測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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