説明

電力需要家居住者の生活状況推定方法およびシステム並びに生活状況推定用プログラム

【課題】推定に必要な値k及び活動電流閾値をその電力需要家に適した値に自動的に設定する。
【解決手段】総負荷電流の測定を複数の日について行い、前記電力需要家の在宅日に測定されたと判断される前記総負荷電流の測定値(A)を用いてデータ群を求めて値決定用データ群とする(B,C)と共に、値決定用データ群について、予め設定した複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を算出して降順に並べてグラフ化し(D,E)、k仮定値別のグラフを予め設定した領域CAで比較し(F)、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする(G)と共に、選択グラフについて予め設定した第2位置のk%値を活動電流閾値とする(E)ものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要家居住者の生活状況推定方法およびシステム並びに生活状況推定用プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、電力需要家の家屋内に入らない非侵入的な方法で、居住者の安否、在・不在、就寝・不就寝などの生活状況を推定する方法およびシステム並びに生活状況推定用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の居住者の生活状況を推定するシステムとして、例えば生活状況推定システムがある(特許文献1)。この生活状況推定システムでは、電力需要家の引込線引込口付近に設置された電力計によって一定時間間隔Δtごとに総消費電力を測定すると共に、前回測定の総消費電力との差の絶対値を求め、対象データとしている。そして、過去一定時間幅の中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、対象データを降順に並べ、予め設定した値kを用いて、「その値以上となる前記対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出する。このk%値の算出は、一定の計算時間刻みΔt’毎に行なわれる。そして、算出したk%値と予め設定されている閾値とを比較し、k%値≧閾値の場合には電力需要家において居住者による電気機器の意図的な操作があったと判断し、逆に、k%値<閾値の場合には電力需要家において居住者による電気機器の意図的な操作が無かったと判断する。
【0003】
値k及び閾値としては、予め適正な値が設定されている。
【0004】
この生活状況推定システムによれば、電力需要家内に配設された電気機器自体に付加的な機能や装置を設けることなく、且つ、電力需要家内に配設された特定の電気機器の情報を必要とすることなく、居住者による電気機器の意図的な操作即ち屋内での活動に伴う電気機器の使用の有無を判断することが可能であり、居住者の例えば在宅と不在との別や就寝中か活動中か等の生活状況、さらには、居住者が健常に生活しているか否かを含めた生活状況を推定することができる。そのため、システムの整備コストを低減することが可能であり、システムの普及を促進して例えば独居老人や老人のみ世帯等の生活安全性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4172709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の生活状況推定システムでは、値k及び閾値を、管理者が測定データを目視で確認しながらその電力需要家に適した値に設定する必要があり、自動設定が困難である。
【0007】
本発明は、電力需要家内に配設された電気機器自体に付加的な機能や装置を設けることなく、且つ、電力需要家内に配設された特定の電気機器の情報を必要とすることなく、居住者の生活状況を推定することができるものであって、居住者による電気機器の意図的な操作の有無を判別するための値k及び閾値をその電力需要家に適した値に自動的に設定することができる生活状況推定方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流を一定時間間隔Δt毎に測定して、一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出し、k%値が活動電流閾値以上か否かに基いて電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する生活状況推定方法であって、総負荷電流の測定を複数の日について行い、電力需要家の在宅日に測定されたと判断される総負荷電流の測定値を用いてデータ群を求めて値決定用データ群とすると共に、値決定用データ群について、予め設定した複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を算出して降順に並べてグラフ化し、k仮定値別のグラフを予め設定した領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとすると共に、選択グラフについて予め設定した第2位置のk%値を活動電流閾値とするものである。
【0009】
電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流の時刻変動には、電気機器に対する居住者の意図的な操作に起因するものの他に、例えば冷蔵庫などの様にオン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器の動作に起因するものが含まれる。そこで、一定時間間隔ごとに総負荷電流を測定し、当該各一定時間間隔における総負荷電流の変化の絶対値を求めて対象データとし、さらに一定の計算時間刻み毎に、過去一定時間幅の中で得られた複数の総負荷電流の変化の絶対値よりなるデータ群について、k%値を算出する。ここでk%値とは、その値以上となるデータ群中の対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる値と定義される。kの値を適切に選択すると、そのk%値は、居住者の意図的な操作による電気機器の総負荷電流の変化を色濃く反映したものとなり、冷蔵庫などの様にオン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器の動作による総負荷電流の変化の影響を排除したものとなる。
【0010】
したがって、k%値の時間変化を観測していて、例えばk%値が大きい場合には、電気機器に対する居住者の意図的な操作が行なわれたと推定できる。これより、居住者は在宅中であり且つ活動中であると推定できる。一方、k%値が小さい時間帯は、電気機器に対する居住者の意図的な操作が行なわれておらず、居住者は不在である若しくは就寝中である等と推定できる。さらに、k%値が小さい時間の長さが尋常でない場合、例えば丸一日以上、居住者の活動が確認できない場合、居住者が寝たきりになっている或いは居住者が家屋内で倒れている等の非常事態の可能性も考えられる。このように本発明によれば、電力需要家居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定することが可能である。
【0011】
本発明では、k%値の大小を判別するために活動電流閾値を設けており、この活動電流閾値を自動的に取得するようにしている。活動電流閾値の自動取得は次のようにして行なわれる。先ず、電力需要家についての総負荷電流の測定を複数日について行って測定データを集め、集めた測定データの中から電力需要家の在宅日に測定されたものであると判断されるデータを抽出する。ここで、在宅日に測定されたと判断されるデータの抽出は、例えばX日分の測定データがあるとすると、各日別に1日分の測定データを合計して1日の総負荷電流量を求め、1日の総負荷電流量の大きい日にち順にZ日分の測定データを抽出することで行なわれる。
【0012】
そして、抽出したデータを使用して上記推定を行なう場合と同様にデータ群(値決定用データ群)を求め、予め設定したk仮定値を使用してk%値を算出する。ここで、k仮定値として複数のものを使用する。算出したk%値をk仮定値別に降順に並べてグラフ化し、予め設定した比較領域のグラフ形状を比較する。そして、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとすると共に、選択したグラフについて予め設定した第2位置のk%値を求め、このk%値を活動電流閾値とする。ここで、グラフ形状に基づいたグラフの選択では、予め設定した領域におけるk%値の最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少なく、且つ予め設定した第1位置のk%値が予め設定した最小電流値以上のグラフが選択される。
【0013】
この様にして求めたkと活動電流閾値を使用して、k%値の大小を判断し、居住者による電気機器の意図的な操作の有無を判別する。k%値が活動電流閾値よりも大きい場合には、居住者による電気機器の意図的な操作即ち屋内での活動に伴う電気機器の使用がされていると考えられ、居住者は在宅中であり且つ活動中であると推定できる。一方、k%値が活動電流閾値以下の場合には、居住者による電気機器の意図的な操作即ち屋内での活動に伴う電気機器の使用はされていないと考えられ、居住者は不在若しくは就寝中である等と推定できる。
【0014】
さらに、電力需要家の総負荷電流に基づくk%値が活動電流閾値を連続して上回っている時間即ち活動を継続している時間、又は連続して下回っている時間即ち活動を停止している時間が通常の生活パターンから想定される時間とかけ離れて長時間に亘る場合には、居住者が寝たきりになっている或いは居住者が屋内で倒れている等の非常事態が発生している可能性も考えられる。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流を一定時間間隔Δt毎に測定する測定手段と、測定手段から得られる測定値に基いて一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる前記対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出する演算手段と、活動電流閾値よりもk%値が大きいか否かに基いて電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する推定手段とを備える電力需要家居住者の生活状況推定システムであって、電力需要家の在宅日に測定されたと判断される複数日分の総負荷電流の測定値と、予め設定した複数のk仮定値と、予め設定したグラフの比較領域と、予め設定したグラフの比較領域内の第1位置と、予め設定した最小電流値と、予め設定した第2位置を記憶している記憶手段と、記憶手段に記憶されている総負荷電流の測定値を用いてデータ群を求めて値決定用データ群とすると共に、値決定用データ群について、記憶手段に記憶されている複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を算出して降順に並べてグラフ化し、k仮定値別のグラフを記憶手段に記憶されているグラフの比較領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする値k決定手段と、選択グラフについて記憶手段に記憶されている第2位置のk%値を活動電流閾値とする閾値決定手段とを備えるものである。したがって、電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定でき、電力需要家居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定できる。
【0016】
また、請求項3記載の電力需要家居住者の生活状況推定システムは、居住者の意図的な操作の有無を外部の情報処理装置に送信する通知手段を備えている。情報処理装置はk%値の時間変化を表す情報等を表示することにより、当該情報処理装置の管理者または所有者が、電力需要家居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定できる。
【0017】
さらに、請求項4記載の生活状況推定用プログラムは、少なくとも、記憶手段に予め記憶されている電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流の時間間隔Δt毎の測定値に基いて時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ記憶手段に予め記憶されている計算時間刻みΔt’毎に、記憶手段に予め記憶されている過去の時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出する演算手段と、活動電流閾値よりもk%値が大きいか否かに基いて電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する推定手段と、記憶手段に予め記憶されている総負荷電流の時間間隔Δt毎の測定値のうち、電力需要家の在宅日に測定されたと判断される複数日分のものを用いてデータ群を求めて値決定用データ群とすると共に、値決定用データ群について、記憶手段に予め記憶されている複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を算出して降順に並べてグラフ化し、k仮定値別のグラフを記憶手段に予め記憶されているグラフの比較領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする値k決定手段と、選択グラフについて記憶手段に予め記憶されている第2位置のk%値を活動電流閾値とする閾値決定手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0018】
即ち、コンピュータと生活状況推定用プログラムとによって、生活状況推定システムの演算手段、推定手段、値k決定手段、閾値決定手段が実現される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電力需要家居住者の生活状況推定方法およびシステム並びに生活状況推定用プログラムによれば、電力需要家内の電気機器自体に高度な情報処理機能や無線通信装置等の通信機能を付加または内蔵することなく、電力需要家の家屋内に入らない非侵入的な方法且つ簡易な構成で、電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定でき、電力需要家居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定できる。さらに、本発明では、電力需要家内に設置された電気機器自体が電力需要家外部の情報処理装置と通信を行うわけではなく、電力需要家の家屋内に入らない非侵入的な方法で電力需要家居住者の生活状況を推定できるので、居住者に第三者から監視されている等の意識を極力もたれないように構成できる。
【0020】
また、本発明では、電力需要家についての総負荷電流の測定を複数日について行って在宅日に測定されたものであると判断されるデータを抽出し、抽出したデータを使用して値kと活動電流閾値を設定しているので、値k及び活動電流閾値をその電力需要家の負荷パターンに応じた値にすることができ、しかも自動的に設定することができる。そのため、管理者が測定データを目視等して設定を行なうという手間と経験が必要な作業を行なう必要がなくなり、例えば多数の電力需要家を同時に推定の対象にする場合等であっても、個々の電力需要家について適切な値k及び活動電流閾値を迅速に設定することができる。また、電力需要家の負荷パターンは季節変化等に応じて変化するものであるが、値k及び活動電流閾値を自動的に設定することができるので、負荷パターンの変化に応じて値k及び活動電流閾値を更新するのが容易である。さらに、値k及び活動電流閾値の設定を管理者が行なうとその管理者の主観によって設定値にばらつきが生じる虞があるが、値k及び活動電流閾値の設定を自動化することで管理者の主観が入り込む余地がなくなり、常に一定の基準で値k及び活動電流閾値を設定することができる。しかも、値k及び活動電流閾値を設定する際、直近の測定データを使用することで値k及び活動電流閾値が電力需要家の直近の負荷パターンに応じた値になるので、電力需要家の現状に沿った推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の生活状況推定方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の生活状況推定システムの実施形態の一例を示す構成図である。
【図3】本実施形態の生活状況推定システムの構成例を示すブロック図である。
【図4】値k及び活動電流閾値Dを設定する手順を概念的に示し、(A)は総負荷電流の測定値を示す概念図、(B)は総負荷電流の測定値に基づいて求められた対象データの概念図、(C)は時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなる値決定用データ群を示す概念図、(D)は値決定用データ群の対象データを降順に並べたものの概念図、(E)はk仮定値別にk%値を算出して降順に並べたグラフ、(F)はk仮定値別に求めたグラフを重ね合わせたグラフ、(G)は値k及び活動電流閾値を決定する様子を示す概念図である。
【図5】各k仮定値のグラフの比較領域を拡大して示す図である。
【図6】電力需要家の総負荷電流の時間変化の一例を示す概念図である。
【図7】算出したk%値の時間変化の一例を示す概念図である。
【図8】算出したk%値の時間変化の他の例を示す概念図である。
【図9】在/不在と1日の総負荷電流量との関係を示す図である。
【図10】ある世帯のk%値(推定指標値)の時間推移を示し、秋における1日の例を示す図である。
【図11】ある世帯のk%値(推定指標値)の時間推移を示し、冬における1日の例を示す図である。
【図12】k%値(推定指標値)を降順に並び替えた例を示す図である。
【図13】グラフを選択する条件1を説明するための図で、k%値(推定指標値)を並び替えた例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1から図4に本発明の電力需要家居住者の生活状況推定方法およびシステムの実施の一形態を示す。なお、本実施形態では、図2に示す電力需要家2において本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
本実施形態の電力需要家2内の屋内配線回路17には、電気機器3として、テレビジョン受像機3a,冷蔵庫3b,インバータエアコンデショナー3c,蛍光灯3d,白熱灯からなる居間照明機器3e,白熱灯からなるトイレ照明機器3fが接続されている。屋内配線回路17は、引込線4及び電柱5に架設された電線を介して電気事業者等の電力系統に接続されている。なお、電力需要家2内の屋内配線回路17に接続される電気機器3は、本実施形態において例示したものに限定されない。
【0025】
本発明の電力需要家居住者の生活状況推定方法は、図1に示すように、パラメータ設定工程(図1のステップS1〜S2)と推定工程(図1のステップS3〜S7)より構成されている。パラメータ設定工程は、例えば必要に応じて行なわれるものであり、総負荷電流の測定を複数の日について行い、電力需要家の在宅日に測定されたと判断される総負荷電流の測定値(図4(A))を用いてデータ群を求めて値決定用データ群とする(図4(B)(C))と共に、値決定用データ群についてデータ群毎に降順に並べてグラフ化し(図4(D))、予め設定した複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を夫々のグラフから抽出して、さらに降順に並べてグラフ化し(図4(E))、k仮定値毎のグラフを予め設定した領域CAで比較し(図4(F))、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとすると共に、選択グラフについて予め設定した第2位置(図4(E)のY)のk%値を活動電流閾値(図4(E)のD)とする(図1のステップS2、図4(G))ようにしている。ここで、グラフ形状に基づくグラフの選択では、予め設定した領域CAにおけるk%値の最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少なく、且つ予め設定した領域CA内の第1位置(図4(F)のm5)のk%値が予め設定した最小電流値(図4(F)のU)以上のグラフを選択する。
【0026】
また、推定工程では、電力需要家2内に配設された電気機器3による総負荷電流を一定時間間隔Δt毎に測定して(図1のステップS3)、一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め(ステップS4)、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、値kを用いてk%値を算出し(ステップS5)、k%値が活動電流閾値D以上か否かに基いて電力需要家2内の電気機器3に対する居住者の意図的な操作の有無を推定するようにしている(ステップS6)。そして、本実施形態では、電力需要家2内の電気機器3に対する居住者の意図的な操作の有無に基づいて、電力需要家居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定するようにしている(ステップS7)。
【0027】
ここでk%値とは、その値以上となるデータ群中の対象データの数がデータ群の総データ数に対してk%となる値と定義される。
【0028】
上記生活状況推定方法は、本発明の生活状況推定システムとして実現される。本実施形態では、生活状況推定システム1が上記生活状況推定方法を用いて電力需要家2の居住者の生活状況を推定する場合を例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の生活状況推定システム1は、例えば図2および図3に示すように、電力需要家2内に配設された電気機器3による総負荷電流を一定時間間隔Δtごとに測定する測定手段10と、測定手段10から得られる測定値に基いて一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなるデータ群について、値kを用いてk%値を算出する演算手段11と、活動電流閾値Dよりもk%値が大きいか否かに基いて電力需要家2内の電気機器3に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する推定手段12とを備えている。
【0030】
また、本実施形態の生活状況推定システム1は、測定手段10から得られる測定値、演算手段11の演算結果、電力需要家2の在宅日に測定されたと判断される複数日分の総負荷電流の測定値と、予め設定した複数のk仮定値、グラフの比較領域CA及び位置m1,m2,m3,m4、グラフの比較領域CA内の第1位置m5、最小電流値U、第2位置Y、時間間隔Δt、計算時間刻みΔt’、時間幅Tなどを記録する例えばRAM(Random Access Memory)やハードディスクなどの記憶装置13(記憶手段)と、記憶装置13に記憶されている総負荷電流の測定値を用いて値決定用データ群を求め、値決定用データ群について、記憶装置13に記憶されている複数のk仮定値を用いてk仮定値別にk%値を算出して降順に並べてグラフ化し、k仮定値毎のグラフを記憶装置13に記憶されているグラフの比較領域CAで比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする値k決定手段16と、選択グラフについて記憶装置13に記憶されている第2位置Yのk%値を活動電流閾値Dとする閾値決定手段15とを備えている。
【0031】
この生活状況推定システム1は、本発明の生活状況推定用プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。即ち、少なくとも1つのCPUやMPUなどの演算処理装置と、データの入出力を行うインターフェースと、プログラムやデータを記憶するメモリを備えるコンピュータ、及び生活状況推定用プログラムによって、演算手段11、推定手段12、閾値決定手段15、値k決定手段16を実現している。即ち、演算処理装置は、メモリに記憶されたOS等の制御プログラム、生活状況推定用プログラム及び所要データ等により、上記演算手段11、推定手段12、閾値決定手段15、値k決定手段16を実現している。また、コンピュータには、例えばCRTディスプレイやプリンター等の出力装置が接続されていてもよい。
【0032】
生活状況推定システム1による生活状況推定の実施にあたっては、先ず、値k決定手段16が値kと活動電流閾値Dの設定が必要か否かを判断する(S1)。値k決定手段16は、前回の値k及び活動電流閾値Dの設定から例えば1日、数日、数ヶ月等の予め設定された所定期間が経過している場合や、生活状況推定を今回始めて実行する場合等に値k及び活動電流閾値Dの設定が必要であると判断し、ステップS2に進んで値k及び活動電流閾値Dの設定を行なう。一方、値k決定手段16は、前回の設定の直後である場合等には値k及び活動電流閾値Dの設定は不要であると判断し、ステップS1からステップS3に進む。記憶装置13には前回の値k及び活動電流閾値Dの設定日時が記憶されており、値k決定手段16は記憶装置13に記憶されている設定日時を読み込んで前回の設定日時を知ることができる。なお、今回が生活状況推定の初めての実施であり、値k及び活動電流閾値Dが未設定の場合には、設定日時としてブランク記号が記憶されている。
【0033】
パラメータ設定工程のステップS2では、値k決定手段16が値kを設定すると共に、閾値決定手段15が活動電流閾値Dを自動設定する。ここで、記憶装置13には、電力需要家2の総負荷電流についての測定データが予め記憶されている。即ち、測定手段10によって測定された総負荷電流は記憶装置13に供給され記憶されている。
【0034】
記憶装置13には、総負荷電流として、例えば直近の数十日分又は数ヶ月分のデータが記憶されている。値k決定手段16は、記憶されているデータの中から在宅日に測定されたと判断されるデータを抽出する。例えば、記憶装置13にX日分のデータが記憶されていたとすると、各日別に1日分のデータを合計して1日の総負荷電流量を求め、1日の総負荷電流量が大きい方からZ日分のデータを抽出する。これは、過去X日のうち、全く不在であった日数は(X−Z)日よりも少ないこと、換言すれば、居住者が電気機器の意図的な操作を行なったことがある日数は少なくともZ日あることを前提としている。Zは、このような観点から決定され、予め記憶装置13に記憶されている。例えばX日は30日、Z日は7日である。
【0035】
例えば、測定手段10による総負荷電流の測定が1分間隔(時間間隔Δt=1分)で行なわれるとすると、記憶装置13には、1日分のデータとして1(個)×60(分)×24(時間)=1440個のデータ(総負荷電流の測定値)が記憶され、さらにX日分のデータとして(1440×X)個のデータが記憶されている。そして、値k決定手段16は各日別に測定値を合計して1日の総負荷電流量を算出し、1日の総負荷電流量が大きい方からZ日分のデータを抽出する。これにより、電力需要家2の在宅日に測定されたと判断されるデータとして、Z日分の(1440×Z)個のデータが抽出される。抽出されたデータは記憶装置13に記憶される。
【0036】
値k決定手段16は、抽出したZ日分のデータに基づいて、後述するステップS4,S5と同一の処理を行なって値決定用のデータ群を求める。例えば、ある測定時刻tにおいて測定された総負荷電流の測定値をDa(t)とし、測定時刻tの一つ前の測定時刻(t−Δt)において測定された総負荷電流をDa(t−Δt)とすると、一定時間間隔Δtにおける総負荷電流変化の絶対値ΔDa(t)は、数式1によって表わされる。値k決定手段16は、時間間隔Δtごとに総負荷電流変化の絶対値ΔDa(t)を求めて対象データとする(図4(A),(B))。なお、図4(A)では時間間隔Δt毎のデータDa(t)をd1,d2,…と記載し、図4(B)では時間間隔Δt毎の絶対値(対象データ)ΔDa(t)をΔd1,Δd2,…と記載している。
<数1>
ΔDa(t)=|Da(t)−Da(t−Δt)|
【0037】
次に、値k決定手段16は、一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の対象データよりなる値決定用のデータ群を求める(図4(C))。いま、時刻tから時間幅Tだけ過去に遡った時刻(t−T)から、時刻tまでの間には、n(=T/Δt)個の対象データが存在することになるので、n個の対象データからなる値決定用データ群が、計算時間刻みΔt’毎に順次求まる。
【0038】
次に、値k決定手段16は、予め設定され記憶装置13に記憶されているk仮定値を読み込み、後述するステップS5の処理と同一の処理を行なって、k仮定値を使用してk%値を算出する。k仮定値は後述する値kに対応するもので、適切な値kを求めるために便宜的に使用する値kの代表値である。本実施形態では、k仮定値として、5,10,25,50の値が予め設定されている。ただし、k仮定値としては、これらの値に限るものではなく、他の値を使用しても良い。また、k仮定値の数は4つに限るものではなく、2つ又は3つでも良く、あるいは5つ以上でも良い。
【0039】
次に、値k決定手段16は、値決定用データ群に含まれる対象データを降順に並べ(図4(D))、k仮定値を使用してk%値を求める。即ち、降順に並べた対象データのうち、大きい方から「n×k/100」番目の対象データをk%値とする。例えば、1つの値決定用データ群の中に100個(n=100)の対象データが存在する場合、k仮定値が5のときには、降順に並べた対象データのうち、大きい方向から5番目(=100×5÷100)の対象データの値がk%値となり、k仮定値が10のときには、降順に並べた対象データのうち、大きい方向から10番目(=100×10÷100)の対象データの値がk%値となる。k仮定値が25,50のときも同様である。ここで、「n×k/100」の値が整数にならない場合は、「n×k/100」の値を切り上げて用いる。ただし、必ずしも切り上げる場合に限るものではなく、切り捨て、四捨五入するようにしても良い。
【0040】
次に、値k決定手段16は、上述のようにして求めたk%値を各k仮定値別に降順に並べてグラフ化する(図4(E))。k%値はZ日分の全データについて求められているが、このグラフ化はZ日分全てをk仮定値別に纏めて行なわれる。そして、各グラフを予め設定され記憶装置13に記憶されている領域CAで比較する(図4(F))。ここで、グラフは、通常、図示するような形状を示すので、大きくカーブする(変化する)部分を比較できるように比較領域CAを決定しておく。本実施形態では、k%値を降順に並べた場合の位置m1から位置m4までを比較領域CAとしている(図5)。
【0041】
値k決定手段16は、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択する。ここで、グラフ形状に基づいたグラフの選択では、予め設定した領域におけるk%値の最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少なく、且つ予め設定した第1位置のk%値が予め設定した最小電流値以上のグラフが選択される。本実施形態では、次の2つの条件を使用して選択が行なわれる。即ち、比較領域CAにおけるグラフの最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少なく(条件1)、且つ比較領域CA内の予め設定した第1位置m5のk%値が予め設定した最小電流値U以上(条件2)のグラフを選択する。そして、選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする(図4(G))。
【0042】
本実施形態では、条件1として数式2を採用し、値k決定手段16は数式2のNkが最も大きくなるグラフを選択する。ここで、グラフの選択を図5に基づいて説明する。図5は比較領域CA即ち、位置m1から位置m4を拡大して示したものである。本実施形態では、比較領域CA内に位置m2,m3が設けられており、例えば(m1−m2)=(m2−m3)=(m3−m4)となるように、即ち等間隔になるように位置m1,m2,m3,m4が設定されている。ただし、必ずしも位置m1,m2,m3,m4を等間隔に設定する必要はなく、大小関係が位置m1<位置m2<位置m3<位置m4であれば、各位置を等間隔にしなくても良い。条件1の判定に適した位置にすれば良い。なお、図5では、グラフ選択の概念を分かり易くするために、図4のものとはグラフの形状を変化させている。
<数2>
k=(m1のk%値−m4のk%値)÷{(m2のk%値+m3のk%値)÷2}
【0043】
条件1では、位置m1のk%値と位置4のk%値との差が大きいほど良く、位置m2のk%値と位置m3のk%値は双方とも小さいほど良い。これを式で表わしたものが数式2である。数式2のNkの値が大きければ、比較領域CAにおいてグラフの最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少ないと言える。ここで、Nkの値が、グラフ(1):0.42、グラフ(2):0.62、グラフ(3):1.04、グラフ(4):5.6であったとすると、条件1では、値k決定手段16はNkの値が最も大きいグラフ(4)を選択する。
【0044】
また、本実施形態では、条件2として数式3を採用し、値k決定手段16は条件1によって選択されたグラフが条件2を満たすか否かを判断し、満たす場合にはそのグラフの選択を維持し、満たさない場合には現在選択されているグラフ以外の中から条件1及び条件2を満たすものを再度選択する。ここで、第1位置m5は、比較領域CA内において予め設定されている。
<数3>
第1位置m5のk%値≧U
【0045】
条件1で選択されたグラフ(4)において、第1位置m5のk%値(以下、k%値を適宜、推定指標値という)がU以上であれば、値k決定手段16はグラフ(4)の選択を維持する。一方、グラフ(4)の第1位置m5のk%値がU未満であれば、値k決定手段16は、条件1において2番目にNkの値が大きかったグラフ(3)を再選択する。そして、値k決定手段16は、グラフ(3)を条件2に当てはめ、第1位置m5のk%値がU以上であればグラフ(3)の選択を維持し、第1位置m5のk%値がU未満の場合には、条件1に戻り、グラフの再選択を行なう。
【0046】
本実施形態では、位置m1:降順に並べた大きい方から2%の位置、位置m2:同5%の位置、位置m3:同7%の位置、位置m4:同10%の位置、第1位置m5:同5%の位置、U=0.5Aである。ただし、これらに限るものではない。
【0047】
値k決定手段16は、このようにして選択したグラフに対応するk仮定値を値kとする(図4(G))。図4(G)では、値k決定手段16はk仮定値が10であるグラフを選択し、値kを10としている。そして、値k決定手段16は、求めた値kを記憶装置13に記憶させる。
【0048】
次に、閾値決定手段15は、値k決定手段16が選択したグラフについて、予め設定した第2位置Yのk%値を求めて活動電流閾値Dとする(図4(E))。そして、閾値決定手段15は、求めた活動電流閾値Dを記憶装置13に記憶させると共に、値kと活動電流閾値Dを求めた日時を記憶装置13に記憶させる。
【0049】
本実施形態では、第2位置Yは5である。ただし、これに限るものではない。
【0050】
次に、推定工程について説明する。ステップS3では、測定手段10が、電力需要家2内に配設された電気機器3による総負荷電流の測定を行う。ここで、測定手段10は、電力需要家2内に配設された電気機器3による総負荷電流、即ち電力需要家2全体としての負荷電流を測定するものである。本実施形態では、電流計が用いられている。
【0051】
測定手段10は電力需要家2の引込線4の引込口の付近に設置される。このような構成を採ることにより、本発明の生活状況推定方法及びシステムを、電力需要家2内の屋内配線回路17に接続している複数の電気機器3による総負荷電流を使用するもの、すなわち、電力需要家2内に配設された特定の電気機器3の情報は使用しない方法及びシステムとすることができる。
【0052】
測定手段10によって測定されて出力される電力需要家2の時刻tにおける総負荷電流Da(t)は記憶装置13に記録される。
【0053】
次に、演算手段11が、ステップS3の処理によって得られる総負荷電流Da(t)に基づいて総負荷電流変化の絶対値ΔDa(t)を求める。いま、ある測定時刻tにおいて測定された総負荷電流をDa(t)とし、測定時刻tの一つ前の測定時刻(t−Δt)おいて測定された総負荷電流をDa(t−Δt)とすると、一定時間間隔Δtにおける総負荷電流変化の絶対値ΔDa(t)は、数式4で表される。
<数4>
ΔDa(t)=|Da(t)−Da(t−Δt)|
【0054】
次に、演算手段11は、k%値を以下のようにして求める(S5)。即ち、時刻tから時間幅Tだけ過去に遡った時刻(t−T)から、時刻tまでの間に、n個のΔDaが存在するとする。この場合、n=T/Δtである。これらn個のΔDaを大きい順、即ち降順に並べると共に、大きい方から「n×k/100」番目のΔDaを、k%値(推定指標値)とする。ここで、「n×k/100」の値が整数とならない場合は、「n×k/100」の値を切り上げて用いる。ただし、切り上げに限るものではなく、小数部分を切り捨てても良いし、四捨五入しても良い。なお、本実施形態では、Δt=Δt’=1分、T=30分としている。ただし、これらの値に限るものではない。
【0055】
k%値は、時刻(t−T)から時刻tまでの間に求められるn個のΔDaの中から上位k%のΔDaを選出する基準値であり、n個のΔDaのうちk%値以上となるΔDaは「n×k/100」個あることを表す。kを適切に選択すると、k%値は、電力需要家2において居住者が意図的に操作することによる電気機器3の総負荷電流の変化を色濃く反映し、冷蔵庫3bなどの様に居住者の操作によらずオン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器3の動作による総負荷電流の変化の影響を排除したものとなる。本発明では、ステップS2によって自動的に設定された値kを使用するので、k%値を、居住者の操作によらずオン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器3の動作による総負荷電流の変化の影響を排除したものにすることができる。演算手段11は、求めたk%値を記憶装置13に記憶させる。
【0056】
居住者の操作によらずオン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器3の動作による総負荷電流の変化の影響と値kとの関係を図6〜図8に基づいて説明する。
【0057】
例えば、測定時間間隔Δtを1分として、実際に測定した電力需要家2の総負荷電流の時間変化の概念を図6に示す。同図中の符号Jで示す定期的にオン・オフを繰り返している総負荷電流の変動は、冷蔵庫3bの動作に起因するものである。図6に示す総負荷電流Da(t)の時間変化に基づいて、時間幅Tを30分に設定し、計算時間刻みΔt’を1分に設定して、k%値の時間変化を求めたものを図7および図8に示す。図7はk=25とした場合を示し、図8はk=50とした場合を示す。
【0058】
図7および図8とも、図6で見られた冷蔵庫3bの動作に起因する凹凸状の比較的低い総負荷電流の変動が排除されている。図8ではkの値が大きい分、図7よりも総負荷電流の変化の小さい部分を反映した結果となっている。また、7時〜9時や18時〜22時など、一般的に居住者が在宅しており炊事、洗濯、娯楽等を目的として電気機器3を利用する頻度が高いと思われる時間帯に、k%値が大きくなっている。したがって、例えばkを25〜50程度に設定することで、オン・オフ等の状態遷移を自動的に繰り返す電気機器3の動作による総負荷電流の変化の影響をk%値から排除でき、居住者の意図的な操作による電気機器3の総負荷電流の変化をk%値に色濃く反映させることができる。
【0059】
したがって、k%値の時間変化を観測していて、例えば図7や図8の符号Mに示すようにk%値が大きい場合には、電気機器3に対する居住者の意図的な操作が行なわれたと推定できる。これより、居住者は在宅中であり且つ活動中であると推定できる。一方、k%値が小さい時間帯は、電気機器3に対する居住者の意図的な操作が行なわれておらず、居住者は不在である若しくは就寝中である等と推定できる。さらに、k%値が小さい時間の長さが尋常でない場合、例えば丸一日以上、居住者の活動が確認できない場合、居住者が寝たきりになっている或いは居住者が家屋内で倒れている等の非常事態の可能性も考えられる。このように本発明の電力需要家居住者の生活状況推定方法によれば、居住者の生活状況、例えば在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝さらには居住者が健常に生活しているか否か、を推定することが可能である。
【0060】
本実施形態では、推定手段12が、ステップS5の処理によって得られるk%値を用いて電力需要家2における居住者による電気機器3の意図的な操作の有無の推定を行なう(S6)。具体的には、推定手段12は、記憶装置13に記録されたk%値と活動電流閾値Dの値とを比較する。
【0061】
活動電流閾値Dは、電力需要家2において居住者による電気機器3の意図的な操作が行われたか否かを判断するための閾値であり、ステップS2の実行により算出されて記憶装置13に記録されている。
【0062】
そして、推定手段12は、k%値が活動電流閾値D以下の値から活動電流閾値Dよりも大きな値に推移した場合には電力需要家2において居住者による電気機器3の意図的な操作が開始されたと判断する。
【0063】
一方、推定手段12は、k%値が活動電流閾値Dよりも大きな値から活動電流積分値D以下の値に推移した場合には電力需要家2における居住者による電気機器3の意図的な操作が終了したと判断する。
【0064】
さらに、本実施形態では、推定手段12がステップS6の処理によって得られる居住者による電気機器3の意図的な操作の有無の推定結果に基づいて電力需要家2の居住者の生活状況の推定を行う(S7)。
【0065】
推定手段12は、ステップS6の処理において、居住者による電気機器3の意図的な操作が開始されたと推定した場合には居住者は在宅中であり且つ活動中であると判断してこの推定結果を表す情報として活動開始情報を出力する。
【0066】
一方、推定手段12は、ステップS6の処理において居住者による電気機器3の意図的な操作が終了したと推定した場合には居住者は在宅しているが活動停止中若しくは不在若しくは就寝中であると判断してこの推定結果を表す情報として活動終了情報を出力する。
【0067】
さらに、推定手段12は、例えば、昼間に活動終了情報を出力してから時間が経過した場合には居住者は不在であるとの推定結果を出力したり、夜間に活動終了情報を出力してから所定の時間が経過した場合には居住者は就寝中であるとの推定結果を出力したりする。
【0068】
ここで、本実施形態の生活状況推定システム1は、推定手段12が出力する活動開始情報や活動終了情報を外部の情報処理装置に送信する通知手段14を更に備え、推定手段12が出力するこれらの情報を利用して電力需要家2内で生活する居住者の安否を確認するようにしている。
【0069】
この場合、上述した生活状況推定方法及びシステムを居住者の安否確認方法及びシステムとして利用することができる。以下、この安否確認システムの対象となる電力需要家2の居住者のことを対象者と呼ぶ。
【0070】
この安否確認システムによれば、対象者が健常に生活しているか否かを対象者の家族や担当医師等が遠隔から確認することができるようになるので、対象者の生活安全性の向上に寄与する。したがって、この安否確認システムは、例えば一人暮らしの老人や身体障害者の世帯又は老人のみの世帯に設置される場合に特に有用である。
【0071】
外部の情報処理装置としては、例えば、対象者の安否確認を業として行う事業者(以下、安否確認事業者と呼ぶ)が運用するコンピュータ20(以下、安否情報管理手段20と呼ぶ)、または、対象者の家族や担当医師等が所有するパーソナルコンピュータ若しくは電話機や携帯電話機等の情報端末機21が用いられる。
【0072】
また、通知手段14と安否情報管理手段20と情報端末機21との相互間の通信には有線又は無線の通信回線及び通信プロトコル等の通信技術が用いられる。そして、通知手段14と安否情報管理手段20と情報端末機21とには採用された通信回線及び通信技術による通信を可能にするハードウェア並びにソフトウェアが実装される。
【0073】
安否情報管理手段20や情報端末機21は、これらが備える演算機能等により、活動終了情報を最後に受信した時刻から活動開始情報を受信することなく経過した現時刻までの時間(以下、活動停止時間と呼ぶ)を算出すると共に算出された活動停止時間と予め定められた活動停止基準時間とを比較する。
【0074】
活動停止基準時間は、対象者の生活パターン等を考慮して適宜設定される。具体的には例えば、一日8時間程度の睡眠中に電気機器の意図的な操作は行われないことは通常であることを考慮して活動停止基準時間が9時間から12時間程度の間に設定されることが考えられる。または、対象者の生活パターンとして日中は外出する時間が長い場合や対象者の生活態様として電気機器の意図的な操作を頻繁には行わないことが通常である場合にはこれらの事情を考慮して活動停止基準時間が12時間から24時間程度の間に設定されることも考えられる。
【0075】
さらに、安否情報管理手段20や情報端末機21は、これらが備える演算機能等により、活動開始情報を最後に受信した時刻から活動終了情報を受信することなく経過した現時刻までの時間(以下、活動継続時間と呼ぶ)を算出すると共に算出された活動継続時間と予め定められた活動継続基準時間とを比較する。
【0076】
活動継続基準時間は、対象者の生活パターン等を考慮して適宜設定される。具体的には例えば、対象者の生活態様として一日16時間程度の屋内での活動中電気機器が継続的に使用されることが通常である場合にはこれを考慮して活動継続基準時間が16時間から20時間程度の間に設定されることが考えられる。
【0077】
そして、安否情報管理手段20や情報端末機21は、活動停止時間が活動停止基準時間以上となる場合又は活動継続時間が活動継続基準時間以上となる場合に自身が備えるスピーカやディスプレイ等の出力装置に警告音や警告メッセージ等の警告情報を自動出力し、安否確認事業者又は対象者の家族や担当医師等に対して注意を促す。
【0078】
そして、警告情報を受信した安否確認事業者又は対象者の家族や担当医師等は対象者が寝たきりになっていたり屋内で倒れていたりする等の非常事態が発生している可能性があると判断し、例えば、安否確認事業者又は対象者の家族や担当医師等が対象者に電話連絡等をして安否確認を行ったり、安否確認事業者が対象者の家族や担当医師等に電話連絡等をして対象者の安否確認の依頼を行ったりする等の措置が施される。これにより、独居老人や老人のみ世帯等において非常事態が発生した場合にそのことが誰にも知られることなく事態がより悪化してしまうことを防ぐことが可能となり、独居老人や老人のみ世帯等の生活安全性が確保される。
【0079】
この安否確認方法及びシステムによれば、電力需要家2内に配設された電気機器3自体に付加的な機能や装置を設けることなく、且つ、電力需要家2内に配設された特定の電気機器3の情報を必要とすることなく、居住者による電気機器3の意図的な操作即ち屋内での活動に伴う電気機器3の使用の有無を判断することが可能であり、居住者が健常に生活しているか否かを推定することができる。したがって、安否確認システムの整備コストを低減することができ、システムの普及を促進して例えば独居老人や老人のみ世帯等の生活安全性の向上を図ることができる。さらに、本発明では、電力需要家2内に配設された特定の電気機器3の情報を使わずに居住者の健常性を推定するようにしているので、第三者から監視されている又は生活態様が知られてしまう等の意識を居住者が持つなどの不快感を与えることを防止することができる。したがって、システムの普及を促進して例えば独居老人や老人のみ世帯等の生活安全性の向上を図ることができる。
【0080】
本発明では、電力需要家2についての総負荷電流の測定を複数日について行って在宅日に測定されたものであると判断されるデータを抽出し、抽出したデータを使用して値k及び活動電流閾値Dを求めているので、値k及び活動電流閾値Dをその電力需要家2の負荷パターンに応じた値にすることができ、しかも自動的に設定することができる。そのため、管理者が測定データを目視等して値k及び活動電流閾値Dを設定するという手間と経験が必要な作業を行なう必要がなくなり、例えば多数の電力需要家2を同時に推定の対象にする場合等であっても、各電力需要家2毎に適切な値k及び活動電流閾値Dを迅速に設定することができる。
【0081】
また、電力需要家2の負荷パターンは季節変化等に応じて変化するものであるが、本発明では値k及び活動電流閾値Dを自動的に設定することができるので、負荷パターンの変化に応じて値k及び活動電流閾値Dを適切な値に更新するのが容易である。
【0082】
さらに、値k及び活動電流閾値Dの設定を管理者が行なうとその管理者の主観によって設定値にばらつきが生じる虞があるが、本発明では値k及び活動電流閾値Dの設定を自動化することができるので、値k及び活動電流閾値Dの設定に人間の主観が入り込む余地がなくなり、常に一定の基準で活動電流閾値Dを設定することができる。
【0083】
また、値k及び活動電流閾値Dを設定する際、直近の測定データを使用することで値k及び活動電流閾値Dが電力需要家2の直近の負荷パターンに応じた値になり、電力需要家2の現状に沿った推定を行うことができる。ただし、使用するデータは必ずしも厳密に直近に測定したデータでなくても良い。推定に必要な程度に電力需要家2の負荷パターンを値k及び活動電流閾値Dに反映させることができれば、測定からある程度の時間が経過したデータを使用しても良い。
【0084】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0085】
例えば上述の実施形態では、推定手段12が出力する操作検出情報を、通知手段14により外部の情報処理装置である安否情報管理手段20または情報端末機21に送信するようにしたが、推定手段12により安否判断まで行なってその判断結果を示す情報を、通知手段14により安否情報管理手段20または情報端末機21に送信するようにしても良い。この場合、例えば推定手段12は、上述した操作検出情報を記憶装置13に記録する。また、推定手段12は、最後に操作検出情報を記録した時点から現時点までの時間を算出し、当該算出した時間長と、予め定められた判断基準時間(例えば24時間)とを比較し、操作検出情報の記録を行なっていない時間長が判断基準時間以上となる場合に、対象者が寝たきりになっている或いは対象者が家屋内で倒れている等の非常事態の可能性があると判断し、警報情報を出力する。通知手段14は、この警報情報を安否情報管理手段20または情報端末機21に送信する。
【0086】
また、上述の説明では、条件1として数式2を採用していたが、数式2に代えて、数式5を採用しても良い。即ち、数式2では分母に「m2のk%値とm3のk%値との平均」を使用していたが、数式5のように分母に「m1からm4までのk%値全ての合計(積分値)」を使用しても良い。
【数5】

ここで、V:各kに対する推定指標値を降順に並び変えた値の上位m%の値である。なお、分母にくる値は、例えばΔt=1分、Z=7日、m1=2%、m4=10%の場合、806(≒806.4=1440×7×(10−2)÷100)個程度の数値Vの合計を計算することになる。
【0087】
条件1として数式5を採用した場合にも、数式2を採用した場合と同様に、比較領域CAにおいてグラフの最大値と最小値の差が大きく且つ大きな値をとる個数が少ないグラフを選択することができる。
【0088】
また、数式5の分母において、Vを全て合計するのではなく、その中の幾つかを比較領域CAの一部の領域のみに偏らないようにピックアップして合計するようにしても良い。
【0089】
さらに、上述の説明では、電力需要家2側に測定手段10の他に演算手段11、推定手段12、記憶装置13、値k決定手段16、閾値決定手段15を設けていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、例えば、測定手段10を電力需要家2側に設置し、演算手段11、推定手段12、記憶装置13、値k決定手段16、閾値決定手段15を管理者側に設置しても良い。
【0090】
さらに、本発明の電力需要家居住者の生活状況推定方法およびシステムは、必ずしも居住者の安否確認方法およびシステムとして利用するものには限られない。例えば、本発明により推定される電力需要家居住者の在宅・不在宅あるいは就寝・不就寝の生活パターンの情報を、空調機器などの電気機器の学習に利用し、当該電気機器が当該学習に基いて需要家居住者の生活パターンに適合した運転を行なえるようにしても良い。
【0091】
また、上述の実施形態では、時刻(t−T)から時刻tまでの間に求められたn個のΔDaを大きい順に並べると共に、大きい方から「n×k/100」番目のΔDaをk%値とし、「n×k/100」の値が整数とならない場合は「n×k/100」の値を切り上げて用いるようにしたが、k%値の算出方法は必ずしも上記例には限らない。例えば、「n×k/100」の値が整数とならない場合に、「n×k/100」の前後にあたる順位のΔDaの値を用いて、内挿法により、当該前後のΔDaの間にあり且つ「n×k/100」と対応する値を算出し、当該算出した値をk%値としても良い。また、値k及び活動電流閾値Dを決定するためのk%値についても同様である。
【実施例1】
【0092】
本発明によって値k及び活動電流閾値Dの自動設定が可能であること、及び、自動設定した値k及び活動電流閾値Dが適切なものであることを確認するための実験を行なった。実験は、実際に測定した総負荷電流のデータを使用して計算を行ない、過去に行なった実証試験と比較するかたちで行なった。過去に行なった実証試験では、管理者がデータを目視によって検討しながら設定した値k及び活動電流閾値Dを使用した。
【0093】
以下に、実験のフローを示す。
(1) 過去X(=14)日のデータから在宅日Z(=7)日を抽出
(2) (1)にて抽出したZ日分のデータを用いて、見守り(推定)に使用する値kを決定
(3) (1)にて抽出したZ日分のデータを用いて、(2)にて決定した値kに対して見守りに使用する活動電流閾値Dを決定
(4) 毎日、世帯ごとに(1)〜(3)を繰り返す
【0094】
(1)では、パラメータ(値k及び活動電流閾値D)の決定に用いる日の抽出を行っている。当該日直近のX日から、1日の総負荷電流量(単位:Ah)の大きいZ日を抽出する。図9は、ある世帯の在/不在状況ごとの1日の総負荷電流量の分布である。終日不在の日には、在宅の日と比べて1日の総負荷電流量が小さくなっていることが分かる。過去X日からZ日を抽出し、また毎日データを更新することにより、負荷パターンの変化に追従し、またZ日までの不在の影響を排除して値k及び活動電流閾値Dの設定を行うことができる。
【0095】
(2)では、見守りに使用する値kを決定している。図10及び図11に、ある世帯の総負荷電流、及び値kを5,10,25,50%としたときの推定指標値(k%値)の時間推移を示す。図10は秋における1日の例、図11は冬における1日の例である。実証試験での運用には、図10の日には値k=25%、活動電流閾値D=0.3[A]を用いており、午前10時〜10時半、及び午後6時半〜7時頃に活動電流閾値Dを超えると判定された。しかし、同パラメータにて図11に示す日の見守りを行うと、推定指標値が暖房機器の運転に反応して継続して大きい値となるため、居住者の主体的な機器操作を把握できなくなった。実証試験での運用には、図11の日には値k=5%、活動電流閾値D=5[A]を用いた。これにより、推定指標値が暖房機器以外の主体的な動作にも反応して大きな値を取り、かつ暖房機器のみの運転では閾値を超えないようになった。このように同一世帯においても、季節によって使用する電気機器が変わると負荷パターンが変わり、同じ値kによる見守りが難しくなることが分かった。
【0096】
上記のように、推定指標値は、居住者の主体的な電気機器操作による電流の変化に大きく反応し、かつ冷蔵庫や温水便座等の自動で運転する機器や、長時間にわたり運転される機器による電流変化には反応しないことが望まれる。すなわち、推定指標値は、その相対的な変動幅が大きく、かつ長時間にわたり大きな値を取り続けないことが望ましい。そこで、(1)で抽出したZ日について、各kの値に対する推定指標値を降順に並び変えることを考える。
【0097】
図12に、推定指標値を降順に並び変えた結果の例を示す。値kが適切に選択されている場合には、居住者の主体的な操作にのみ推定指標値が反応するため、推定指標値が大きな値をとる時間の割合は小さく、推定指標値は急激に減少する。主体的な操作以外の電流パターンに反応している場合には、推定指標値が大きな値をとる時間の割合が大きく、推定指標値が大きいところで水平に近い形をとる。すなわち、各kに対する推定指標値を降順に並び変えた値の上位m%の値をVとすると、相対的な変動幅が大きくかつ長時間にわたり大きな値を取らないためには、図13に示した4つのカーブのうち、(4)のような形となるのが好ましい。すなわち、Vm1がVm4に対して十分に大きく、またその間に位置するVm2、Vm3が相対的に小さい方が良い。このような特性を持つカーブでは、数式6で定義された評価指標Nが大きくなる。
【数6】

【0098】
よって、k=5,10,25,50%のそれぞれに対してNを計算し、最も大きいものを当該日の見守りに使用するkとする(条件1)。ただし、相対的なカーブの形が理想的であっても、推定指標値が余りにも小さい場合には、見守りに適さない場合があるので、m5[%](第1位置)およびU[A]をあらかじめ設定しておき、Vm5≧Uを満たすようにする(条件2)。これらの2つの条件を満たしたkを見守り(推定)に使用する。
【0099】
(3)では、見守りに使用する活動電流閾値Dを決定している。活動電流閾値Dは、(1)で抽出したZ日について、(2)で決定した値kに対する推定指標値を降順に並び変え、上からY[%](第2位置)の値とする。例えばY=5%の場合、抽出した日に対して平均1.2時間(=24時間×0.05)が活動電流閾値Dを超えることとなる。
【0100】
(1)〜(3)を世帯ごとに毎日自動で計算し、得られたパラメータ(値k及び活動電流閾値D)を用いることにより、適切な見守りを行うことが可能となる。
【0101】
表1に、実際に見守りに使用したパラメータを用いた場合(特許文献1の生活状況推定方法を使用した実証試験の場合)と、本発明により設定したパラメータを用いた場合の、見守りの推定結果を示す。ただしここでは、X≧7日以上(計測を開始してから8日目以降)のデータを用いており、m1=2%,m2=5%,m3=7%,m4=10%として、m5=Y=5%のケースとm5=Y=10%のケースを計算した。
【0102】
【表1】

【0103】
本発明により設定したパラメータを用いた場合も、手動により設定したパラメータを用いた場合(実証試験の場合)とほぼ同様の推定結果を得られていることが分かる。在宅であっても、電気をあまり使用しなかった場合には、推定指標値が活動電流閾値Dまで届かず、推定結果として不在となる。
【0104】
また表2に、活動電流閾値Dを超えなかった日数、閾値を6時間未満超えた日数、6時間以上超えた日数を示す。手動により設定したパラメータを用いた場合(実証試験の場合)の推定結果と比べて、本発明の自動設定による結果の方が、閾値を6時間以上超えた日数が少なくなっている。これは、自動設定では閾値が使用電気機器の変更、追加に追従して、適切な大きさになっているからである。
【0105】
【表2】

【0106】
以上より、本発明により自動設定したパラメータ(値k及び活動電流閾値D)を使用することで、管理者が手動によって設定した場合(実証試験の場合)と同様の推定結果を得ることができること、及び、本発明による自動設定が電力需要家の負荷パターンの変化に追従できることを確認できた。
【符号の説明】
【0107】
1 生活状況推定システム
2 電力需要家
3 電気機器
10 測定手段
11 演算手段
12 推定手段
14 通知手段
15 閾値決定手段
16 値k決定手段
20 安否情報管理手段(外部の情報処理装置)
21 情報端末機(外部の情報処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流を一定時間間隔Δt毎に測定して、前記一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の前記対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる前記対象データの数が前記データ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出し、前記k%値が活動電流閾値以上か否かに基いて前記電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する生活状況推定方法であって、前記総負荷電流の測定を複数の日について行い、前記電力需要家の在宅日に測定されたと判断される前記総負荷電流の測定値を用いて前記データ群を求めて値決定用データ群とすると共に、前記値決定用データ群について、予め設定した複数のk仮定値を用いて前記k仮定値別に前記k%値を算出して降順に並べてグラフ化し、前記k仮定値別のグラフを予め設定した領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択した前記グラフに対応する前記k仮定値を前記値kとすると共に、前記選択グラフについて予め設定した第2位置のk%値を前記活動電流閾値とすることを特徴とする電力需要家居住者の生活状況推定方法。
【請求項2】
電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流を一定時間間隔Δt毎に測定する測定手段と、前記測定手段から得られる測定値に基いて前記一定時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ一定の計算時間刻みΔt’毎に、過去一定時間幅Tの中で得られた複数の前記対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる前記対象データの数が前記データ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出する演算手段と、活動電流閾値よりも前記k%値が大きいか否かに基いて前記電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する推定手段とを備える電力需要家居住者の生活状況推定システムであって、前記電力需要家の在宅日に測定されたと判断される複数日分の前記総負荷電流の測定値と、予め設定した複数のk仮定値と、予め設定したグラフの比較領域と、予め設定したグラフの比較領域内の第1位置と、予め設定した最小電流値と、予め設定した第2位置を記憶している記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記総負荷電流の測定値を用いて前記データ群を求めて値決定用データ群とすると共に、前記値決定用データ群について、前記記憶手段に記憶されている前記複数のk仮定値を用いて前記k仮定値別に前記k%値を算出して降順に並べてグラフ化し、前記k仮定値別のグラフを前記記憶手段に記憶されているグラフの比較領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択した前記グラフに対応する前記k仮定値を値kとする値k決定手段と、前記選択グラフについて前記記憶手段に記憶されている第2位置のk%値を前記活動電流閾値とする閾値決定手段とを備えることを特徴とする電力需要家居住者の生活状況推定システム。
【請求項3】
前記居住者の意図的な操作の有無を外部の情報処理装置に送信する通知手段を備えることを特徴とする請求項2記載の電力需要家居住者の生活状況推定システム。
【請求項4】
少なくとも、記憶手段に予め記憶されている電力需要家内に配設された電気機器による総負荷電流の時間間隔Δt毎の測定値に基いて時間間隔Δt毎の総負荷電流変化の絶対値を対象データとして求め、且つ前記記憶手段に予め記憶されている計算時間刻みΔt’毎に、前記記憶手段に予め記憶されている過去の時間幅Tの中で得られた複数の前記対象データよりなるデータ群について、値kを用いて、「その値以上となる前記対象データの数が前記データ群の総データ数に対してk%となる」値であるk%値を算出する演算手段と、活動電流閾値よりも前記k%値が大きいか否かに基いて前記電力需要家内の電気機器に対する居住者の意図的な操作の有無を推定する推定手段と、前記記憶手段に予め記憶されている前記総負荷電流の時間間隔Δt毎の測定値のうち、前記電力需要家の在宅日に測定されたと判断される複数日分のものを用いて前記データ群を求めて値決定用データ群とすると共に、前記値決定用データ群について、前記記憶手段に予め記憶されている複数のk仮定値を用いて前記k仮定値別に前記k%値を算出して降順に並べてグラフ化し、前記k仮定値別のグラフを前記記憶手段に予め記憶されているグラフの比較領域で比較し、グラフ形状に基づいて1つのグラフを選択し、選択した前記グラフに対応する前記k仮定値を前記値kとする値k決定手段と、前記選択グラフについて前記記憶手段に予め記憶されている第2位置のk%値を前記活動電流閾値とする閾値決定手段としてコンピュータを機能させるための生活状況推定用プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−43984(P2011−43984A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191698(P2009−191698)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】