説明

電動パワーステアリング装置

【課題】 ハウジングの剛性を高める為の肉盛り、及びボルト穴の為の余分の鍔部が不要であり、重量を低減出来る電動パワーステアリング装置の提供。
【解決手段】 トルク検出装置10が検出したトルクに基づき駆動される電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して、ラックピニオン機構18,19へ伝達するウォーム減速機構14とを備え、トルク検出装置10がセンサハウジング24aに収納され、ウォーム減速機構14がウォームハウジング25aに収納され、ラックピニオン機構18,19がラックハウジング26aに収納された電動パワーステアリング装置。センサハウジング24a及びウォームハウジング25aが、軸心部に貫通孔11bが設けられた中空ボルト11で締結され、センサハウジング24a、ウォームハウジング25a及びラックハウジング26aが、中空ボルト11の貫通孔11bを挿通したボルト12で締結された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵部材に加えられたトルクを検出するトルク検出装置と、トルク検出装置が検出したトルクに基づき駆動される操舵補助モータと、操舵補助モータの回転を減速して、ラックピニオン機構へ伝達するウォーム減速機構とを備え、トルク検出装置がセンサハウジングに、ウォーム減速機構がウォームハウジングに、ラックピニオン機構がラックハウジングにそれぞれ収納された電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の電動パワーステアリング装置の要部構成例を示す部分縦断面図である。この電動パワーステアリング装置は、図示しないステアリングホイールに連動する入力軸としての伝動軸16と、伝動軸16にトーションバー17を介して同軸的に連結され、ピニオン18aを有する出力軸としてのピニオン軸18と、ピニオン18aに噛合して、ピニオン軸18の回転力を左右方向へ変換して前輪(図示せず)に伝えるラック軸19とを備えている。また、トーションバー17のねじれの大きさに基づき、ステアリングホイールに加えられたトルクを検出するトルク検出装置10と、トルク検出装置10が検出したトルクに基づき駆動制御される操舵補助用の電動モータ2と、電動モータ2の回転をピニオン軸18に減速して伝達するウォーム(図示せず)及びウォームホイール14を有するウォーム減速機構とを備えている。
【0003】
トルク検出装置10はセンサハウジング24に、ウォームホイール14を有するウォーム減速機構はウォームハウジング25に、ピニオン軸18及びラック軸19はラックハウジング26にそれぞれ収納されている。
センサハウジング24及びウォームハウジング25は、互いに離隔した2箇所において、センサハウジング24に設けられた貫通孔33を挿通したボルト31が、ウォームハウジング25に設けられたボルト穴31aに螺合することにより締結されている。
【0004】
また、ウォームハウジング25及びラックハウジング26は、互いに離隔した2箇所において、ウォームハウジング25に設けられた貫通孔を挿通したボルト32が、ラックハウジング26に設けられたボルト穴に螺合することにより締結されている。
特許文献1には、上述したような、操舵補助用の電動モータの回転をピニオン軸に直接的に伝達するピニオン式の電動パワーステアリング装置が記載されている。
【特許文献1】特開2001−122137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の電動パワーステアリング装置では、ウォームハウジング25及びラックハウジング26を締結する2つのボルト32の間隔Aは、図9(ステアリングホイール側からの外観図)に示すように、センサハウジング24及びウォームハウジング25を締結する2つのボルト31が存在する為、2つのボルト31の間隔Bより大きくせざるを得ず、必要以上に間隔Aを大きくしている。その為、ウォームハウジング25及びラックハウジング26の剛性を高める為に肉盛りをしたり、ボルト穴の為の鍔部を設けなければならず、その分、重量が増すという問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ウォームハウジング及びラックハウジングの剛性を高める為の肉盛りが不要であり、ボルト穴の為の余分の鍔部を設ける必要がなく、重量を低減することが出来る電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る電動パワーステアリング装置は、操舵部材に加えられたトルクを検出するトルク検出装置と、該トルク検出装置が検出したトルクに基づき駆動制御される操舵補助用の電動モータと、該電動モータの回転を減速して、ラックピニオン機構へ伝達するウォーム減速機構とを備え、前記トルク検出装置がセンサハウジングに収納され、前記ウォーム減速機構がウォームハウジングに収納され、前記ラックピニオン機構がラックハウジングに収納された電動パワーステアリング装置において、前記センサハウジング及びウォームハウジングが、軸心部に貫通孔が設けられた1又は複数の中空ボルトで締結され、前記センサハウジング、ウォームハウジング及びラックハウジングが、前記中空ボルトの貫通孔を挿通したボルトで締結されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記センサハウジングは、前記ウォームハウジングに隣接し、該ウォームハウジングは、前記ラックハウジングに隣接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、センサハウジング及びウォームハウジングが、中空ボルトで締結され、センサハウジング、ウォームハウジング及びラックハウジングが、中空ボルトの貫通孔を挿通したボルトで締結されているので、ウォームハウジング及びラックハウジングの剛性を高める為の肉盛りが不要であり、ボルト穴の為の鍔部を設ける必要がなく、重量を低減することが出来る電動パワーステアリング装置を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態を、それを示す図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施の形態の構成を示す部分縦断面図である。この電動パワーステアリング装置は、図示しないステアリングホイール(操舵部材)に連動する入力軸としての伝動軸16と、伝動軸16にトーションバー17を介して同軸的に連結され、ピニオン18aを有する出力軸としてのピニオン軸18と、ピニオン18aに噛合するラック歯19aを有し、ピニオン軸18の回転力を左右方向へ変換して前輪(図示せず)に伝えるラック軸19とを備えている。
【0011】
この電動パワーステアリング装置は、また、トーションバー17のねじれの大きさに基づき、ステアリングホイールに加えられたトルクを検出するトルク検出装置10と、トルク検出装置10が検出したトルクに基づき駆動制御される操舵補助用の電動モータ2と、電動モータ2の回転をピニオン軸18に減速して伝達するウォーム(図示せず)及びウォームホイール14を有するウォーム減速機構とを備えている。
【0012】
トルク検出装置10はセンサハウジング24aに、ウォームホイール14を有するウォーム減速機構はウォームハウジング25aに、ピニオン軸18及びラック軸19はラックハウジング26aにそれぞれ収納されている。
センサハウジング24aは、伝動軸16及びピニオン軸18を転がり軸受20,21により支持し、ウォームハウジング25aは、ピニオン軸18を転がり軸受23により支持しており、センサハウジング24a及びウォームハウジング25aの嵌合部には防水用の封止環22が設けられている。
【0013】
隣接するセンサハウジング24a及びウォームハウジング25aは、互いに離隔した2箇所において、センサハウジング24aに設けられた貫通孔13を挿通した中空ボルト11が、ウォームハウジング25aに設けられたボルト孔11aに螺合することにより締結されている。
図2は、センサハウジング24a、ウォームハウジング25a及びラックハウジング26aの締結構造を概念的に示す断面図であり、中空ボルト11は、図示するように、軸心部に設けられた貫通孔11bを有している。
【0014】
隣接するウォームハウジング25a及びラックハウジング26aは、中空ボルト11の貫通孔11bを挿通したボルト12が、ラックハウジング26aに設けられたボルト穴12aに螺合することにより締結されている。これにより、センサハウジング24a、ウォームハウジング25a及びラックハウジング26aは、上記2箇所で締結することが出来、ウォームハウジング25a及びラックハウジング26aを締結する2つのボルト12の間隔をBとして従来より小さくすることが出来る。
【0015】
(開示技術1)
図3は、今回開示する電動パワーステアリング装置の電動モータ及びウォーム減速機構の構成例を示す部分横断面図である。この電動モータ2及びウォーム減速機構40,14を備える電動パワーステアリング装置の要部構成例は、図8に示す電動パワーステアリング装置と同様であるので、説明を省略する。
電動モータ2のモータ軸45の一方の端部は、筒状の継手44の一方の半部に回転不能に嵌合され、継手44の他方の半部は、その内面に多数の溝が形成され、同様に多数の溝が形成されたウォーム軸43の一方の端部が、セレーション圧入されている。
【0016】
ウォーム軸43は、ウォームハウジング25内で、転がり軸受41,42(42が電動モータ2側)により支持され、ウォーム40が、ウォームホイール14に噛合している。ウォームホイール14は、ピニオン軸18に同軸に圧入され、ピニオン軸18の軸心部に設けられた中空部には、トーションバー17が挿通している。
【0017】
ウォームハウジング25の、ウォーム軸43の他方の端部に対向する部分には、図4(a)に示すように、円形の開口部(孔)46が設けられている。
モータ軸45の他方の端部は、図4(b)に示すように、モータハウジング47内で、転がり軸受49に支持されており、モータハウジング47の、モータ軸45の他方の端部に対向する部分には、円形の開口部(孔)48が設けられている。
【0018】
上記開口部46,48を設けることにより、ウォーム軸43及びモータ軸45に直接圧入荷重を加えることが出来るので、転がり軸受41,49に圧痕を付けることなく、継手44の他方の半部及びウォーム軸43の一方の端部をセレーション圧入することが可能となる。また、継手44及びウォーム軸43をセレーション圧入で連結することにより、従来のスプライン嵌合で連結することにより発生することがあったガタ及び異音を無くすことが出来る。
尚、特開平9−221045号公報には、モータの出力シャフトに一体化されたモータボス(継手)と、ウォームが設けられた伝動シャフトとの間に、回転規制部材を挟み込ませた電動パワーステアリング装置が開示されている。
【0019】
(開示技術2)
図5は、今回開示する電動パワーステアリング装置の構成例を示す部分縦断面図である。この電動パワーステアリング装置は、図示しないステアリングホイールに連動する操舵軸の上部軸62と、上部軸62に連動する伝動軸56と、伝動軸56にトーションバー67を介して同軸的に連結された下部軸58とを備えている。
【0020】
この電動パワーステアリング装置は、また、トーションバー67のねじれの大きさに基づき、ステアリングホイールに加えられたトルクを検出するトルク検出装置50と、トルク検出装置50が検出したトルクに基づき駆動制御される操舵補助用の電動モータ68と、電動モータ68の回転を下部軸58に減速して伝達するウォーム70及びウォームホイール52を有するウォーム減速機構とを備えている。
【0021】
トルク検出装置50はセンサハウジング64に、ウォーム70及びウォームホイール52を有するウォーム減速機構はウォームハウジング65にそれぞれ収納されている。
センサハウジング64は、伝動軸56及び下部軸58を転がり軸受60,61により支持し、ウォームハウジング65は、下部軸58を転がり軸受63により支持している。
【0022】
センサハウジング64の、トルク検出装置50の回路基板50a側には、開口部が設けられており、この開口部は、カバー体53により覆われている。カバー体53には、回路基板50a上の可変抵抗器(ボリューム)を調整する為の、ドライバを挿通する孔54が設けられている。孔54の周縁部には、図6に示すように、ゴムグロメット55が装着され、ドライバが挿通するとき以外は、トルク検出装置50は外部と遮断されるようになっている。
【0023】
これにより、図7に示すように、ボリューム調整後に挿入し難いキャップ57を嵌め入れ、再調整のときには、キャップ57を再使用出来ない従来の方法に比べて、何度でも容易に再調整が可能であり、キャップ57による音発生が無く、また、一度、ゴムグロメット55を装着すると外す必要がないという効果を得ることが出来る。
尚、特開2003−300432号公報には、自動車の前照灯の光軸調整用の工具を挿通する為の孔に、グロメットを設けた自動車の前照灯光軸調整構造が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の実施の形態の構成を示す部分縦断面図である。
【図2】センサハウジング、ウォームハウジング及びラックハウジングの締結構造を概念的に示す断面図である。
【図3】今回開示する電動パワーステアリング装置の電動モータ及びウォーム減速機構の構成例を示す部分横断面図である。
【図4】ウォームハウジングの開口部(孔)及びモータハウジングの開口部(孔)を示す部分断面図である。
【図5】今回開示する電動パワーステアリング装置の構成例を示す部分縦断面図である。
【図6】孔の周縁部に装着されたゴムグロメットを示す断面図である。
【図7】孔に装着されたキャップを示す断面図である。
【図8】従来の電動パワーステアリング装置の要部構成例を示す部分縦断面図である。
【図9】図8に示す電動パワーステアリング装置の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
2 電動モータ
10 トルク検出装置
11 中空ボルト
11a ボルト孔
12a ボルト穴
11b,13 貫通孔
12 ボルト
14 ウォームホイール(ウォーム減速機構)
17 トーションバー
18 ピニオン軸
18a ピニオン
19 ラック軸
24a センサハウジング
25a ウォームハウジング
26a ラックハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材に加えられたトルクを検出するトルク検出装置と、該トルク検出装置が検出したトルクに基づき駆動制御される操舵補助用の電動モータと、該電動モータの回転を減速して、ラックピニオン機構へ伝達するウォーム減速機構とを備え、前記トルク検出装置がセンサハウジングに収納され、前記ウォーム減速機構がウォームハウジングに収納され、前記ラックピニオン機構がラックハウジングに収納された電動パワーステアリング装置において、
前記センサハウジング及びウォームハウジングが、軸心部に貫通孔が設けられた1又は複数の中空ボルトで締結され、前記センサハウジング、ウォームハウジング及びラックハウジングが、前記中空ボルトの貫通孔を挿通したボルトで締結されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記センサハウジングは、前記ウォームハウジングに隣接し、該ウォームハウジングは、前記ラックハウジングに隣接している請求項1記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−103636(P2006−103636A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296642(P2004−296642)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】