説明

電動パワーステアリング装置

【課題】電動モータ周りの径方向寸法を小型化し得る電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】減速機11、電動モータ12、レゾルバ14、バスバー63及びPCB64を、モータ回転軸36の軸方向に沿ってそれぞれ直列に配置すると共に、当該配置にあたり、電動モータ12の軸方向一方側に減速機11を、他方側にレゾルバ14等を配置し、さらに電動モータ12とPCB64との間にバスバー63を、該バスバー63と電動モータ12との間にレゾルバ14を、それぞれ配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に用いられ、電動モータの駆動力をもって操舵アシストを行う電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動パワーステアリング装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この電動パワーステアリング装置は、電動モータとこれを駆動制御する制御回路ユニット(ECU)とからなるモータ制御装置を備えていて、このモータ制御装置では、ECUが電動モータの径方向側部に、該電動モータの駆動軸と平行となるように付設されることで、両者の良好な接続性とメンテナンス性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電動パワーステアリング装置では、ECUを電動モータの径方向側部に付設する構成となっているため、前記モータ制御装置が径方向に大型化してしまい、特に搭載時における当該モータ制御装置の径方向寸法に多くの制約を有する車両に対しては、搭載が困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、電動モータ周りの径方向寸法を小型化し得る電動パワーステアリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、とりわけ、減速機、電動モータ、回転センサ、パワー系基板及び制御系基板を、電動モータの回転軸方向にそれぞれ直列に配置すると共に、当該配置にあたり、前記電動モータの軸方向一方側に前記減速機を、他方側に前記回転センサ及び前記両基板を配置し、さらに前記電動モータと前記制御系基板との間に前記パワー系基板を、該パワー系基板と前記電動モータとの間に前記回転センサを、それぞれ配置したことを特徴としている。
【0008】
このとき、前記両基板は、ヒートシンクが構成された金属製のハウジングに収容することとして、前記回転センサを、前記電動モータの回転軸の径方向において前記ヒートシンクから離間する位置に配置することが望ましい。
【0009】
さらに、前記電源基板は、バッテリからの電力供給に供する金属配線と、該金属配線を被覆するようにインサート成型される樹脂ハウジングとから構成し、該樹脂ハウジングに、前記回転センサの出力端子の外周を包囲するセンサ挿通部を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、装置の構成要素を軸方向に直列配置することで、装置の径方向寸法の小型化が図れ、車両搭載状態における径方向範囲の制約が厳しい車両にも搭載可能となる。そして、回転センサを電動モータとパワー系基板の間に配置したことにより、当該回転センサの電気的接続も容易となり、装置の組立作業性の向上にも供される。さらには、パワー系基板を制御系基板よりも電動モータ側に配置したことにより、パワー系基板と電動モータの間の距離も短縮でき、前記中継端子についても、接続作業性の向上や電力供給ロスの低減といったメリットが得られる。
【0011】
また、前記両基板をヒートシンク部が設けられた金属製のハウジングに収容し、回転センサをヒートシンク部から径方向に離間させるように構成することで、当該ヒートシンク部によって中継端子から発せられる電磁波ノイズを遮ることが可能となり、かかる電磁波ノイズによるセンサ出力端子への悪影響の抑制が図れる。
【0012】
さらには、電源基板を構成する樹脂ハウジングにセンサ端子挿通部を設けることとして、当該センサ端子挿通部によってセンサ出力端子の外周を包囲する構成とすることで、当該センサ出力端子と金属配線との接触を防止でき、電力供給回路のショートの回避にも供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の構成を表した概略図である。
【図2】図1に示すモータユニットの具体的な構成を表した縦断面図である。
【図3】図2に示すモータユニット単体を表した部分拡大断面図である。
【図4】図3に示すモータユニットについてカバー部材及びECUを外してA方向から見た矢視図である。
【図5】図3に示すモータユニットについてカバー部材を外してA方向から見た矢視図である。
【図6】電動モータ−ECU間の検査等に際しモータ出力端子とモータ接続部とを離間させた状態を表した図3に相当する断面図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の変形例を示した図3に相当する断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置を示した図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電動パワーステアリング装置の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下に示す実施形態では、この電動パワーステアリング装置を、従来と同様、自動車の操舵装置に適用したものを示している。
【0015】
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示しており、この電動パワーステアリング装置は、図1に示すように、その一端側がステアリングホイール1と一体回転可能に連係される入力軸2と、その一端側が図外のトーションバーを介し入力軸2の他端側に相対回転可能に連結され、その他端側がラック・ピニオン機構4を介し転舵輪5L,5Rに連係される出力軸3と、入力軸2の外周側に配置され、該入力軸2と出力軸3の相対回転変位量に基づいて操舵入力トルクを検出するトルクセンサ6と、該トルクセンサ6の検出結果や車速信号等に基づいて運転者の操舵トルクに応じた操舵アシストトルクを出力軸3に付与するモータユニット10と、から主として構成されている。
【0016】
前記ラック・ピニオン機構4は、出力軸3の一端部の外周に形成された図外のピニオン歯と当該出力軸3の一端部にほぼ直交するように配置されるラック軸7の軸方向所定範囲に形成される図外のラック歯とが噛合してなるもので、出力軸3の回転方向に応じてラック軸7が軸方向へと移動するようになっている。そして、ラック軸7の各端部はそれぞれタイロッド8,8及びナックル9,9を介し転舵輪5R,5Lに連係されており、ラック軸7が軸方向へと移動して各タイロッド8,8を介して各ナックル9,9が引っ張られることで、転舵輪5R,5Lの向きが変更されるようになっている。
【0017】
前記モータユニット10は、図2に示すように、前記操舵アシストトルクを発生させる電動モータ12と、該電動モータ12の回転数を減速して出力軸3に伝達する減速機11と、車両の運転状態に応じて電動モータ12を駆動制御するECU13と、モータ回転軸36の位置を検出することによりECU13のモータ制御に供するレゾルバ14(本発明に係る回転センサに相当)と、を備えていて、電動モータ12の一端側(Z軸負方向端側)に減速機11、他端側にECU13が配置され、電動モータ12とECU13の間にレゾルバ14が配置されている。
【0018】
前記減速機11は、出力軸3を収容する筐体と共通化されたギヤハウジング20の内部に収容されるウォーム歯車によって構成され、このウォーム歯車は、その一端部(Z軸正方向端部)がモータ回転軸36の一端部(Z軸負方向端部)に所定の軸継手15を介して接続され、その軸方向のほぼ中間部に歯部21aを有するウォームシャフト21(本発明に係る駆動側減速機に相当)と、出力軸3の外周に固定され、その外周部に前記歯部21aに噛合する歯部22aを有するウォームホイール22(本発明に係る従動側減速機に相当)と、から構成されている。
【0019】
ここで、前記ウォームシャフト21は、ギヤハウジング20の内部においてモータ回転軸36の軸線上に貫通形成されたシャフト収容部23内に収容され、前記ウォームホイール22は、ギヤハウジング20の内部において、シャフト収容部23と直交し、かつ、所定範囲がシャフト収容部23に臨むように形成されたホイール収容部24内に収容されている。
【0020】
また、前記ウォームシャフト21は、その一端部が、シャフト収容部23の一端側(Z軸正方向端側)に拡径形成された大径部23a内に収容保持される第1ギヤ用軸受GB1によって、また、その他端部が、シャフト収容部23の他端部に収容保持される第2ギヤ用軸受GB2によって、それぞれ回転自在に支持されている。
【0021】
前記電動モータ12は、いわゆる3相交流式の表面磁石型同期モータであり、図2、図3に示すように、ECU13と共通の筐体を構成するハウジング30のうち、ギヤハウジング20の一端開口部に接続される後記の第1ハウジング31の内周面に圧入固定されたほぼ円筒状のステータ34と、該ステータ34の内周側に微小隙間を隔てて配置されたほぼ円筒状のロータ35と、該ロータ35の内周に一体回転可能に固定されたモータ回転軸36と、を備え、図1に示すように、入力軸2の外周に配設され当該入力軸2に入力された操舵トルクを検出するトルクセンサ6の検出結果や車両走行速度を検出する車速信号等に基づいてECU13により駆動制御される。
【0022】
ここで、前記ハウジング30は、図2、図3に示すように、いわゆるアルミダイキャストにより3分割に構成されたものであって、その一端部がギヤハウジング20の一端開口部に接続固定され、その内部に電動モータ12の一端側を収容する円筒状の第1ハウジング31と、ほぼ円筒状に構成されたその一端側が第1ハウジング31の他端側に接続固定されて内部に電動モータ12の他端側を収容する一方、ほぼ角筒状に構成されたその他端側内部にECU13の一方側(主として後記のバスバー63)を収容する第2ハウジング32と、該第2ハウジング32の他端側開口部を閉塞するように配置され、内部にECU13の他方側(主として後記のPCB64)を収容する有蓋角筒状の第3ハウジング33と、から構成されている。
【0023】
前記第1ハウジング31は、図2に示すように、ほぼ有底円筒状に構成されていて、その底壁である一端壁37の中心部内側には円筒状の第1軸受保持部37aが突設され、該第1軸受保持部37a内には、モータ回転軸36一端側の軸受に供する第1モータ用軸受MB1が収容保持されている。そして、前記一端壁37の中心部には、モータ回転軸36の一端部が挿通する軸挿通部37bが貫通形成され、この軸挿通部37bを介してモータ回転軸36の一端側がシャフト収容部23内へ臨むことでウォームシャフト21と連結されるようになっている。さらに、前記一端壁37の外周側には、ギヤハウジング20との固定に供する複数の取付部38がそれぞれ径方向外側へ突設されていて、該各取付部38を介してギヤハウジング20と第1ハウジング31が複数のボルト40により締結されるようになっている。
【0024】
なお、この固定に際し、前記一端壁37の外側部には、ギヤハウジング20の一端開口部に嵌合可能なほぼ円筒状に構成された第1嵌合突部39が軸方向に沿って突設されていて、この第1嵌合突部39がギヤハウジング20の一端開口部に嵌合することによってギヤハウジング20と第1ハウジング31とが相対的に位置決められ、これによって、ウォームシャフト21とモータ回転軸36との同軸度の向上に供されている。
【0025】
また、前記第1ハウジング31の他端側内周には、ステータ34の外径よりも若干小さい内径をもってほぼ寸胴に形成され、当該ステータ34を圧入等により収容固定する第1モータ収容部41が設けられている。そして、この第1モータ収容部41の先端開口部にも、前記一端側と同様、その外周側に、第2ハウジング32との固定に供する複数の取付部42が径方向外側へと突設され、該各取付部42を介して第1ハウジング31と第2ハウジング32とが複数のボルト40により締結されるようになっている。
【0026】
なお、当該固定に際しても、前記第1モータ収容部41の先端部には、前記一端側と同様、第2ハウジング32の一端開口部に嵌合可能に構成されたほぼ円筒状の第2嵌合突部43が軸方向に沿って突設されていて、該第2嵌合突部43が第2ハウジング32の一端開口部に嵌合することにより第1、第2ハウジング31,32の相対的な位置決めが行われて、これによって、第1ハウジング31内に収容保持される第1モータ用軸受MB1と、第2ハウジング32内に収容保持される後記の第2モータ用軸受MB2と、の同軸度の向上に供されている。
【0027】
前記第2ハウジング32は、図3に示すように、その一端側に、電動モータ12の他端側を収容する第2モータ収容部44が形成される一方、その他端側に、ECU13の一方側(Z軸負方向側)に配置される後記のバスバー63を収容するバスバー収容部45が形成され、これら両収容部44,45は、当該ハウジング32の円筒状部と角筒状部の境界近傍に設けられた隔壁46によって隔成されている。そして、この隔壁46には、モータ回転軸36の他端側を受容する軸受容部47がZ軸正方向側へ向かって段差縮径状に貫通形成されていて、この軸受容部47には、第2モータ収容部44内へ臨むように設けられ、レゾルバ14の一部を成す後記のレゾルバロータ71を保持するレゾルバ保持部47aと、該レゾルバ保持部47aに隣設され、モータ回転軸36の他端側の軸受に供する第2モータ用軸受MB2を収容保持する第2軸受保持部47bと、が設けられている。
【0028】
また、前記隔壁46には、その一部の領域が厚肉に形成されることによって後記のFET61の放熱に供するヒートシンク部48が構成されていて、このヒートシンク部48には、電動モータ12から並列に(例えば図4参照)Z軸正方向側へと延出する後記の各モータ出力端子54が貫通する長孔状の一連のモータ端子貫通孔49が当該軸方向に沿って貫通形成されている。なお、このモータ端子貫通孔49は、そのX軸方向中心が前記各モータ出力端子54に対しX軸負方向側へオフセットするように、かつ、そのX軸方向幅W1が比較的大きく確保されていて、図6に示すように、各モータ出力端子54の先端側をX軸負方向側へ傾倒させることによって当該各モータ出力端子54の先端側を後記の各モータ接続部67から十分に離間させることが可能となっている。
【0029】
さらに、前記隔壁46には、図3に示すように、前記モータ端子貫通孔49に対しモータ回転軸36の軸線Mを挟んだ反対側であって、後記の各レゾルバ出力端子75に対応する位置に、これら各レゾルバ出力端子75を貫通させることにより当該各レゾルバ出力端子75と後記のPCB64との接続に供する、前記モータ端子貫通孔49と同様の長孔状に構成された一連のレゾルバ端子貫通孔50がZ軸方向に沿って貫通形成されている。ここで、後記のモータ出力端子54とレゾルバ出力端子75とは、必ずしも前記軸線Mを挟んでちょうど反対側に位置するように構成される必要はなく、モータ出力端子54とモータ回転軸36とを結ぶ第1仮想線L1(図4参照)に対し直角であって、かつ、モータ回転軸36を通る第2仮想線L2を引いたときにレゾルバ出力端子75が第2仮想線L2に対してモータ出力端子54の反対側に位置するように構成されていればよい。換言すれば、このような関係となるように前記両端子54,75を配置することで、後述する電磁波ノイズによる悪影響の低減効果を得るのに必要な当該両端子54,75間距離が確保されることとなる。
【0030】
また、前記第2ハウジング32の一端側には、その一部の領域に第2モータ収容部44が突出形成されていることによって、この第2モータ収容部44の側部には、当該第2モータ収容部44の突出量分だけ凹状に窪んだ段差状凹部51が構成されている。そして、かかる段差状凹部51には、X軸正方向端部の近傍に、後記のコネクタ55が挿通する長孔状のコネクタ挿通部52がZ軸方向に沿って貫通形成されている。
【0031】
前記第3ハウジング33は、後記のPCB64を収容するための基板収容部53がZ軸負方向側へと向かって開口形成されていて、この開口部をバスバー収容部45の開口部と突き合わせるように第2ハウジング32上に載置されることで、その内部に、後記のバスバー63上部に重合配置されることによってバスバー収容部45の開口から突出する後記のPCB64を収容する。なお、この第3ハウジング33の固定についても、その四隅(各隅部)に設けられた図外の取付部を介して複数のボルト(図示外)によって第2ハウジング32に締結されるようになっている。
【0032】
前記ステータ34は、第1ハウジング31の内周に圧入固定されるステータコア34aと、該ステータコア34aに装着されるステータコイル34bと、からなり、結線処理されたステータコイル34bの端部がほぼ直線状に構成されたモータ出力端子54(本発明に係る中継端子に相当)を介して後記のバスバー63に接続されている。すなわち、Z軸方向に沿って延出する各相(u相、v相、w相)に係るモータ出力端子54の先端部が、モータ端子貫通孔49を介してバスバー収容部45へと臨み、バスバー63の長手方向の一端部(図5中のX軸負方向側端部)に設けられた切欠部66aを通じ、当該バスバー63の裏面側(Z軸正方向側)に突設される後記の金属配線65の一部を構成する各モータ接続部67とそれぞれ溶接されることにより、電動モータ12とバスバー63とが電気的に接続されることとなる。
【0033】
ここで、前記モータ出力端子54は、電動モータ12とECU13との間で所定の検査を行った後に、後記のバスバー63に接続されることとなる。すなわち、前記モータ出力端子54は、弾性的に傾倒可能な程度の可撓性を備えていて、前記モータ接続部67との溶接前に、図6に示すように傾倒されることによって先端側がモータ接続部67から離間され、これら両者54,67間にプローブなど所定の検査器具(図示外)が介装されることによって電動モータ12の電流センサ(図示外)に係るキャリブレーションなど前記所定の検査が行われた後に、モータ接続部67に溶接されることとなる。換言すれば、当該実施形態では、モータ出力端子54に前述のような可撓性を持たせることで、例えば後述する第2実施形態で記載されるような他の中継部材等を用いることなく前記両者54,67を直接接続可能としつつ前記所定の検査等を行うことができるようになっており、これによって、モータユニット10の良好な組立作業性が確保されている。
【0034】
前記ECU13は、図3に示すように、そのZ軸負方向側に設けられ、電動モータ12への通電を制御するMOS−FET(以下、単に「FET」と略す。)61と当該FET61への電力供給に供する図外の電力供給回路を有する電源基板62とから構成されるバスバー63(本発明に係るパワー系基板に相当)と、該バスバー63に対して反減速機11側となるZ軸正方向側に設けられ、レゾルバ14からの出力信号に基づいて前記FET61を駆動制御する図外のマイクロコンピュータ等が搭載されたプリント回路基板であるPCB64(本発明に係る制御系基板に相当)と、から主として構成されている。
【0035】
前記バスバー63において、当該バスバー63に搭載されるFET61は、モータ接続部67の近傍にて当該バスバー63の表面側に配置されると共に、当該搭載状態においてその外側面61aが放熱シート等を介してヒートシンク部48に当接するように構成されている。かかる構成により、当該FET61にて発生した熱がヒートシンク部48に吸収され、該ヒートシンク部48から第2ハウジング32の全体を通じて外部へと放散することが可能となっている。
【0036】
また、前記電源基板62は、図外のバッテリからの電力をFET61に供給する前記図外の電力供給回路を構成する導電性材料からなる金属配線65と、該金属配線65を被覆するよう所定の樹脂材料によってインサート成型されてなる樹脂ハウジング66と、から主として構成されている。そして、前記樹脂ハウジング66には、図5に示すように、その長手方向の一端縁(X軸負方向端縁)に前記各モータ出力端子54との干渉を回避する凹状の切欠部66aが設けられていて、この切欠部66aによって、前記各モータ出力端子54を、曲折等させることなくそのまま裏面側において前記各モータ接続部67と接続させることが可能となっている。また、同様に、樹脂ハウジング66の中央部近傍にも、図3に示すように、後記の各レゾルバ出力端子75との干渉を回避する長孔状の貫通孔66bが設けられていて、この貫通孔66bによって、後記の各レゾルバ出力端子75を、曲折等させることなくそのままPCB64側へと臨ませて、当該PCB64と接続させることが可能となっている。
【0037】
前記PCB64は、図5に示すように、バスバー63に対し長手方向の他端側へと偏倚するように配置されていて、その搭載状態において、同図平面視である第2ハウジング32他端開口側から見て、モータ出力端子54とモータ接続部67との接続部分が、当該PCB64により覆われることなく、前記他端開口から外部へと臨むような構成となっている。
【0038】
前記レゾルバ14は、図3に示すように、モータ回転軸36の他端側外周に一体回転可能となるように固定され、ロータ35の磁極の極対数に応じた複数の回転磁極を備えたレゾルバロータ71と、前記レゾルバ保持部47aに圧入状態に設けられて前記レゾルバロータ71外周側に所定の径方向隙間を介して非接触状態に配置され、その複数設けられた磁極にそれぞれセンサコイル73が巻回されてなるレゾルバステータ72と、から主として構成され、結線処理された各センサコイル73の端子がレゾルバ保持部47aに隣設された端子台74を介してほぼ直線状に立設された各レゾルバ出力端子75(本発明に係るセンサ出力端子に相当)を介しPCB64に接続されている。すなわち、同図中のZ軸方向に沿って延出する各磁極に係るレゾルバ出力端子75の先端部が、レゾルバ端子貫通孔50を通じてバスバー収容部45へと臨んで、さらにバスバー63(樹脂ハウジング66)が貫通孔66bを通じてPCB64へと半田付けされることで、レゾルバ14とPCB64とが電気的に接続されることとなる。
【0039】
前記コネクタ55は、前記コネクタ挿通部52を通じて、電動モータ12の径方向外側に膨出するバスバー63の所定領域に接続される構成となっていて、当該コネクタ55を介して、外部に設けられる図外の電源やセンサ類(例えばトルクセンサ6等)とバスバー63とが電気的に接続されることとなる。すなわち、当該コネクタ55は、第2モータ収容部44に対して径方向(X軸方向)にオーバーラップするような直線状に(図3参照)、かつ、段差状凹部51のZ軸方向の投影面積に収まるような扁平状に構成されていて(図5参照)、その先端側に延設されたコネクタ接続部55aを介して図外の相手側コネクタと接続される一方、その基端側に延設されたバスバー接続部55bを介してバスバー63の前記所定領域に表面側から直接接続される。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、当該装置の構成要素である減速機11と電動モータ12とECU13とをそれぞれ軸方向に直列に配置することにより、当該装置の径方向寸法の小型化を図ることができる。これにより、車両搭載状態における当該装置、特にモータユニット10の径方向寸法(範囲)の制約が厳しい車両にも搭載可能となる。
【0041】
また、この際、前記レゾルバ14を電動モータ12とバスバー63との間に配置したことから、当該レゾルバ14の電気的な接続も容易となって、装置の組立作業性の向上にも寄与することができる。
【0042】
さらに、上記直列配置に際して、前記バスバー63をPCB64よりも電動モータ12側に配置するようにしたことから、バスバー63と電動モータ12の間の距離も短縮することが可能となり、当該両者12,63間の接続作業性の向上や電力供給ロスの低減といったメリットを得ることができる。
【0043】
しかも、前記PCB64はモータ出力端子54とモータ接続部67との接続部分近傍に被らないよう、バスバー63に対しオフセット配置されていることから、電動モータ12とECU13との間の前記所定の検査等を行うに際し、前記検査器具等とPCB64との干渉を回避することが可能となり、当該検査等の作業の容易化にも供される。
【0044】
また、上記直列配置に伴い、前記モータ出力端子54及びレゾルバ出力端子75について、ほぼ曲折等させることなくモータ回転軸36の軸方向に沿って延出させる構成としたことから、バスバー63及びPCB64との間で軸方向接続が可能となり、これによって、当該接続作業の容易化も図れる。
【0045】
さらには、前記コネクタ55を、前記段差状凹部51にて電動モータ12と両軸(図3中のX軸、Z軸)方向でオーバーラップするよう設けたことにより、当該コネクタ55を設けることによるモータユニット10の軸・径の両方向に係る大型化を抑制することが可能となって、装置のコンパクト化の実効を図ることができる。
【0046】
また、前記ヒートシンク部48が設けられた第2ハウジング32にバスバー63を収容しつつ、各レゾルバ出力端子75を、ヒートシンク部48を隔てて各モータ出力端子54に対し径方向へ離間させるような構成としたことから、各モータ出力端子54を包囲するヒートシンク部48が遮蔽壁として機能し、当該ヒートシンク部48によって各モータ出力端子54から発せられる電磁波ノイズを遮ることが可能となる。その結果、当該電磁波ノイズによるレゾルバ出力端子75への悪影響を抑制することに供される。
【0047】
さらに、かかる構成とするにあたって、モータ出力端子54とレゾルバ出力端子75の配置についても、当該両者54,75をモータ回転軸36に対して互いに反対側となるように設定したことから、当該両者54,75間の距離が十分に確保されることとなり、前記ヒートシンク部48による遮蔽効果と相俟ってモータ出力端子54からの電磁波ノイズによる悪影響をより効果的に抑制することが可能となっている。
【0048】
図7は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の第1実施形態の変形例を表したものである。
【0049】
すなわち、この変形例では、前記樹脂ハウジング66の表面側に、前記バスバー収容部45内へと臨む各レゾルバ出力端子75を包囲する端子包囲部68(本発明に係るセンサ端子挿通部に相当)が一体に設けられている。この端子包囲部68は、樹脂ハウジング66の表面における貫通孔66bの孔縁に筒状の包囲壁68aが立設されることによって構成され、バスバー収容部45内へと臨むレゾルバ出力端子75が軸方向範囲において広く覆われるようになっている。そして、この包囲壁68aの先端開口部内周縁には、内方(基端側)へ向かって当該開口を漸次縮小させるテーパ部68bが設けられていて、かかるテーパ部68bによって、レゾルバ出力端子75の端子包囲部68への挿入が案内(ガイド)され、当該挿入作業を良好に行えるようになっている。
【0050】
このように、本変形例では、前記樹脂ハウジング66表面に端子包囲部68を設けることとして、当該端子包囲部68によりレゾルバ出力端子75の外周を包囲する構成としたことから、ECU13とレゾルバ14の配線作業を行う際の各レゾルバ出力端子75と金属配線65との接触を防止することが可能となり、これによって、前記電力供給回路のショートを回避することができる。
【0051】
図8は、本発明に係る電動パワーステアリング装置の第2実施形態を示しており、前記第1実施形態を基本として、前記モータ出力端子54とモータ接続部67(金属配線65)との接続形態を変更したものである。
【0052】
すなわち、この実施形態では、前記各モータ接続部67に対し前記各モータ出力端子54が所定量だけ離間するように予めオフセット配置され、当該両者54,67が断面U字状の各中継部材56を介して間接的に接続されるようになっている。そして、かかる構成とすることで、本実施形態に係るモータ端子貫通孔49のX軸方向幅W2は、前記第1実施形態より小さい、前記各モータ出力端子54の挿通作業に必要十分な大きさに設定されている。
【0053】
したがって、本実施形態によっても、前記減速機11、電動モータ12及びECU13を直列配置したことによる特異な作用効果が得られるのは前記第1実施形態と同様であり、とりわけ本実施形態の場合には、前記モータ出力端子54とモータ接続部67とがオフセット配置されて中継部材56を介して接続される構成となっていることから、前記所定の検査等を行う際、前記第1実施形態のようにわざわざ両者54,67を離間させる必要がなくなる。この結果、当該検査等の作業をより効率的かつ容易に行うことが可能となって、生産性の向上やこれに伴う製造コストの低廉化にさらに寄与することができる。
【0054】
また、かかる構成とすることで、前記第1実施形態のようにモータ端子貫通孔49についてモータ出力端子54を傾倒させるために要するX軸方向幅Wx(=W1−W2)を省略できる分(図6中の仮想線参照)、当該幅Wxに基づくヒートシンク部48の体積をより増大させることが可能となって、当該ヒートシンク部48による吸熱性の向上にも供される。
【0055】
以下、前記各実施形態から把握される特許請求の範囲に記載した以外の技術的思想について説明する。
【0056】
(a)請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記中継端子と前記センサ出力端子とを、前記電動モータの回転軸に対して互いに反対側となる領域に配置したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0057】
このように両端子間距離を比較的大きく確保することによって、中継端子から発せられる電磁波ノイズによるセンサ出力端子への悪影響を抑制することができる。
【0058】
(b)請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記中継端子及び前記センサ出力端子を、それぞれ前記電動モータの軸方向に沿って延出するように設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0059】
かかる構成とすることで、両端子についての軸方向組み付けが可能となり、当該組み付け作業性の向上に供される。
【0060】
(c)前記(b)に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記中継端子は、その先端側が前記電力供給回路の側部にて該電力供給回路と接続可能となるように、かつ、前記電力供給回路との接続前の状態において前記先端側が前記電動モータの回転軸に対し径方向へ撓み変形可能となるように設けられていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0061】
このように中継端子に可撓性をもたせる構成としたことで、当該中継端子の先端部と電力供給回路とを離間させることが可能となる。これにより、当該両者間をバイパスさせるように電流センサや調整器具、検査器具等を接続することが可能となり、校正等の作業性の向上に供される。
【0062】
(d)前記(b)に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記中継端子は、その先端部が、前記電力供給回路の側部まで延出し、かつ、当該電力供給回路の側方にオフセット配置され、中継部材を介して前記電力供給回路と接続可能に設けられていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0063】
このように中継端子の先端部を電力供給回路の側端部から離間するかたちで配置して、別途中継部材を介装し接続する構成としたことから、当該接続前において中継端子の先端部と電力供給回路とを予め離間させることが可能となる。これにより、当該両者間をバイパスさせるように電流センサや調整器具、検査器具等を接続することが可能となり、キャリブレーション等の作業性の向上に供される。
【0064】
(e)請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記センサ端子挿通孔の前記回転センサ側の端部に、内方へ向かって内径が漸次減少するように構成されるテーパ部を設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0065】
かかる構成としたことで、テーパ部によりセンサ端子挿通孔に対するセンサ出力端子の挿入が案内(ガイド)され、当該センサ出力端子の良好な挿通作業性を確保することができる。
【0066】
(f)請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記パワー系基板を前記電動モータの外形よりも径方向外側に突出させ、
当該パワー系基板の突出部の前記電動モータ側の面に、前記バッテリからの電力を供給する配線と前記電力供給回路との接続に供するコネクタを直接接続させると共に、該コネクタを、前記突出部から前記電動モータ側へ延出させるように配設したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0067】
かかる構成としたことで、コネクタを設けることによって生ずる装置の大型化を最小限に抑えることが可能となり、装置小型化の実効を図ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…ステアリングホイール
4…操舵機構
5L,5R…転舵輪
11…減速機
12…電動モータ
13…ECU
14…レゾルバ(回転センサ)
21…ウォームシャフト(駆動側減速機)
22…ウォームホイール(従動側減速機)
34…ステータ
35…ロータ
36…モータ回転軸
54…モータ出力端子(中継端子)
61…FET(トランジスタ)
62…電源基板
63…バスバー(パワー系基板)
64…PCB(制御系基板)
75…レゾルバ出力端子(センサ出力端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達する操舵機構に設けられた従動側減速機と、該従動側減速機と噛合する駆動側減速機とから構成される減速機と、
前記駆動側減速機と同軸状に配置され、該駆動側減速機と一体に回転するロータと該ロータの外周側に配置されるステータとから構成されて、前記駆動側減速機を回転駆動する電動モータと、
前記電動モータの回転軸方向において該電動モータに対し前記減速機の反対側に配置され、前記電動モータへの通電を制御するトランジスタと、該トランジスタへのバッテリの電力供給に供する電力供給回路が搭載された電源基板とから構成されるパワー系基板と、
前記電力供給回路と前記電動モータとを電気的に接続し、前記電力供給回路から前記電動モータへ電力を供給する中継端子と、
前記電動モータと前記パワー系基板の間に配置され、前記ロータの回転位置を検出する回転センサと、
前記電動モータの回転軸方向において前記パワー系基板に対し前記減速機の反対側に配置され、前記回転センサの出力信号に基づいて前記トランジスタを駆動制御する制御系基板と、
前記制御系基板と前記回転センサとを電気的に接続し、該回転センサの出力信号を前記制御系基板へと伝達するセンサ出力端子と、を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記パワー系基板及び前記制御系基板を金属製のハウジング内に収容するよう構成すると共に、該ハウジングの内部に、前記トランジスタの放熱に供するヒートシンク部を設け、
前記中継端子を、前記ヒートシンク部を貫通するように配置し、
前記センサ出力端子を、前記ヒートシンク部を隔てて前記中継端子から離間配置したことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記電源基板を、前記バッテリからの電力を前記トランジスタに供給する導電性材料からなる金属配線と、該金属配線を被覆するようにインサート成型された樹脂材料からなる樹脂ハウジングとによって構成し、
前記樹脂ハウジングに、前記センサ出力端子が挿通することで該センサ出力端子の外周を包囲するセンサ端子包囲部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−197051(P2012−197051A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63498(P2011−63498)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(301041449)日立オートモティブシステムズステアリング株式会社 (44)
【Fターム(参考)】