説明

電動ポンプ

【課題】ポンプケースとモータケースとの接合部の小径化をすることができる電動ポンプを得る。
【解決手段】内部にインペラ12及びモータ18を備え、かつポンプケース16とモータケース22とが別体構造とされた電動ポンプ10において、ポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ60とがモータ18の出力軸76の軸芯方向にテーパ嵌合されるように構成した。これにより、ポンプケース16とモータケース22との接合部98が電動ポンプ10の径方向外側に突出することが抑制され、ポンプケース16とモータケース22との接合部98の小径化をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体を圧送する電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラを収容してポンプ部を形成するポンプケースと該ポンプ部を駆動するモータを収容するモータケースとを接合することにより構成された電動ポンプが知られている。例えば下記特許文献1には、ポンプケースの開口端から径方向外向きに延設して形成されたフランジ部とモータケースの開口端から径方向外向きに延設して形成されたフランジ部とが重ね合わされて接合されることにより構成された電動ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−13950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、ポンプケースとモータケースとの接合部が電動ポンプの径方向外側に突出しているため、電動ポンプの外径の小径化を妨げていた。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、電動ポンプの外径の小径化をすることができる電動ポンプを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る電動ポンプは、インペラを回転可能に収容することにより流入した流体を圧送するポンプ部の外郭を形成するポンプケースと、前記インペラを回転させることにより前記ポンプ部を駆動するモータを収容するモータケースと、前記ポンプケースに設けられたテーパ部と前記モータケースに設けられたテーパ部とが前記モータの出力軸の軸線方向にテーパ嵌合されると共に溶着にて接合される接合部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の本発明では、ポンプケースのテーパ部とモータケースのテーパ部とが、モータの軸線方向にテーパ嵌合されるため、ポンプケースとモータケースとの接合部が電動ポンプの径方向外側に突出することが抑制される。換言すると、請求項1記載の本発明では、電動ポンプの外径の小径化をすることができる。
【0008】
請求項2記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1記載の電動ポンプにおいて、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか一方の外周壁に形成された前記テーパ部は該外周壁の端部に向けて先細りに形成されると共に、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか他方の内周壁に形成された前記テーパ部は該内周壁の端部に向けて末広がりに形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の本発明では、先細りに形成されテーパ部が末広がりに形成されたテーパ部に挿入及び嵌合される。従って、先細りに形成されテーパ部が末広がりに形成されたテーパ部に挿入される際に、モータケースに対するポンプケースの位置を正規の位置へガイドしながら、モータケースのテーパ部とポンプケースのテーパ部とを嵌合させることができる。
【0010】
請求項3記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1又は請求項2記載の電動ポンプにおいて、前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部とが圧入嵌合されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の本発明では、ポンプケースのテーパ部とモータケースのテーパ部とが圧入嵌合されているため、電動ポンプ内を流れる流体がポンプケースとモータケースとの接合部から漏れ出してしまうことをより一層抑制できる。換言すると、ポンプケースとモータケースとの接合部におけるシール性をより一層向上させることができる。
【0012】
請求項4記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動ポンプにおいて、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか一方には係止溝が設けられると共に、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか他方には前記係止溝に係止されることにより前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部との嵌合が外れることを抑制する係止突起が設けられたことを特徴とする。
【0013】
ところで、電動ポンプ内部には該電動ポンプ内部を流れる流体の圧力が生じている。この圧力を受けて、モータケースのテーパ部とポンプケースのテーパ部には、両者の嵌合が外れる方向への力が作用する。
【0014】
しかしながら、請求項4記載の本発明では、係止突起が係止溝に係止されているため、モータケースのテーパ部とポンプケースのテーパ部との嵌合が外れる方向への力を上記係止突起及び係止溝に受け止めさせることができる。その結果、モータケースのテーパ部とポンプケースのテーパ部との嵌合が外れる方向への力を溶着部にて受け止める必要がないため、該溶着部におけるシール性の信頼性を向上させることができると共に、ポンプケースとモータケースとの接合強度の余裕度を向上させることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動ポンプにおいて、前記接合部における溶着は、前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部との間の全周に連続して施されたことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の本発明では、接合部における溶着が、ポンプケースのテーパ部とモータケースのテーパ部との間の全周に連続して施されているため、別途シール材を設けることなく、ポンプケースとモータケースとの接合部におけるシール性を確保することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明に係る電動ポンプは、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電動ポンプにおいて、前記接合部はレーザー溶着にて接合されたことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の本発明では、ポンプケースとモータケースとの接合部がレーザー溶着にて接合されているため、例えばオービタル溶着等により接合した場合と比べ、均一で高い溶着強度を得ることができる。その結果、溶着部におけるシール性や接合強度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る電動ポンプを示す断面図である。
【図2】(A)はポンプケースを示す断面図であり、(B)はポンプケースのテーパ部を示す拡大断面図である。
【図3】(A)はモータケースを示す断面図であり、(B)はモータケースのテーパ部を示す拡大断面図である。
【図4】インペラが取付けられたモータを示す断面図である。
【図5】ポンプケースとモータケースとの接合部を示す拡大断面図である。
【図6】(A)はポンプケースのテーパ部とモータケースのテーパ部とが圧入嵌合される前の状態を示す拡大断面図であり、(B)は圧入嵌合中の状態を示す拡大断面図であり、(C)は圧入嵌合が終了しかつ熱溶着が施された状態を示す拡大断面図である。
【図7】(A)は係止突起が係止溝に係止される前の状態のポンプケースとモータケースとの接合部を示す拡大断面図であり、(B)はモータケースのテーパ部がポンプケースのテーパ部に嵌合される際の係止突起及び係止溝の状態を示す拡大断面図であり、(C)は係止突起が係止溝に係止された状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図5を用いて、本発明の実施形態に係る電動ポンプについて説明する。
【0021】
図1に示されるように、電動ポンプ10は、インペラ12を回転可能に収容することにより流入した流体を圧送するポンプ部14を形成するポンプケース16と、インペラ12を回転させることによりポンプ部14を駆動するモータ18と、を備えている。また、電動ポンプ10は、モータ18及び該モータ18を制御する回路部20を収容するモータケース22を備えている。さらに、電動ポンプ10はカバー24を備えている。
【0022】
以下、電動ポンプ10の主要な要素であるポンプケース16、モータケース22及びモータ18について説明し、次いで本発明の要部であるポンプケース16とモータケース22との接合部98について説明する。
【0023】
(ポンプケース)
図2(A)に示されるように、ポンプケース16は液体が流入する入口管26及び液体が流出する出口管28を備え、かつ熱可塑性樹脂により形成された一体部品である。具体的には、ポンプケース16は略円盤平板状の基部30及び該基部30の径方向内側の端部から後述するモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に突出した膨出部32を備えている。また、ポンプケース16は、膨出部32の径方向内側の端部から後述するインペラ12の第1円盤部96の形状に沿って延在するインペラガイド部34を備えている。さらに、ポンプケース16は、インペラガイド部34の径方向内側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に延出して形成された管状の入口管26を備えている。また、この入口管26の端部には、ゴムホース等の配管の抜けを抑制する抜け止め突起36が形成されている。さらに、ポンプケース16は上記膨出部32に接続されると共に、入口管26の開口方向と直交する方向に延出形成された管状の出口管28が形成されている。この出口管28の端部には、ゴムホース等の配管の抜けを抑制する抜け止め突起36が形成されている。
【0024】
さらに、ポンプケース16は、基部30の径方向外側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)と反対方向に延在する円筒状の開放端部38を備えている。即ち、この開放端部38はモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)と反対方向に開口している構成である。さらに、図2(B)に示されるように、開放端部38における内周壁には、該開放端部38の開口方向に末広がりとされたテーパ部40が形成されている。
【0025】
以上説明したポンプケース16に後述するインペラ12が収容されることにより、入口管26から流入した流体を出口管28に向けて圧送するポンプ部14(図1参照)が形成される。
【0026】
(モータケース)
図3(A)に示されるように、モータケース22は熱可塑性樹脂により形成された略円柱状の一体部品である。また、モータケース22の一方の端部には後述するロータ78を収容するための第1凹部42が形成されており、モータケース22の他方の端部には回路部20を収容するための第2凹部44が形成されている。
【0027】
モータケース22の一方の端部に形成された第1凹部42は、モータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に開口した略U字状断面を成している。具体的には、第1凹部42は、円形の底壁46を備えており、この底壁46の中心部にはモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に突出形成された管状の軸支部48が設けられている。後述するモータ18の出力軸76がこの軸支部48に支持されることにより、モータ18の出力軸76が該軸支部48を軸中心として回転可能となる構成である。また、第1凹部42は、底壁46の径方向外側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に延在する内周壁50を備えている。さらに、第1凹部42は、内周壁50の端部から該内周壁50の径方向外側に延在する第1インペラガイド壁52及び該第1インペラガイド壁52の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に延在する第2インペラガイド壁54を備えている。この、第1インペラガイド壁52及び第2インペラガイド壁54は、後述するインペラ12の第2円盤部88の外周端部の形状に沿って形成されている。
【0028】
また、モータケース22は、第1凹部42の第2インペラガイド壁54の端部から段差部56を介してモータケース22の径方向外側に延在する側壁58を備えている。また、図3(B)に示されるように、モータケース22は、側壁58の径方向外側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に向かって先細りに形成されたテーパ部60を備えている。換言すると、モータケース22の外周壁62の端部にテーパ部60が設けられている構成である。このテーパ部60が上記ポンプケース16のテーパ部40と嵌合する。
【0029】
図3(A)に示されるように、モータケース22の他方の端部に形成された第2凹部44は、上記第1凹部42と反対方向に開口したU字状断面を成している。具体的には、第2凹部44は、円形の底壁64を備えている。この底壁64には回路部20を固定する図示しない固定部が形成されている。また、第2凹部44は、底壁64の径方向外側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)と反対方向に延在する内周壁66を備えている。
【0030】
また、モータケース22は、第2凹部44の内周壁66の端部と外周壁62とを繋ぐ傾斜壁68を備えている。この傾斜壁68に対してカバー24の取付部70が接合される構成である。
【0031】
また、モータケース22は、外周壁62の径方向外側に突出して形成された外部電源接続部72を備えている。この、外部電源接続部72には外部電源を回路部20に供給するための供給端子74が設けられている。
【0032】
(モータ)
図4に示されるように、モータ18は、出力軸76、ロータ78及びステータ80を主要な要素として構成されている。
【0033】
出力軸76は、円柱状の鋼材に浸炭処理等の表面処理が施されることにより構成されており、その一方の端部は上記モータケース22の軸支部48に挿入される回転軸部82とされている。即ち、出力軸76は軸支部48に片持ち支持されている構成である。
【0034】
ロータ78は、上記出力軸76の径方向外側に配置された圧肉円筒状を成している。また、このロータ78の内部には、その周方向に沿って複数のマグネット84が設けられている。さらに、このロータ78はロータ保持部材86を介して出力軸76に固定されている。
【0035】
また、ロータ78には、モータ18の出力軸76を軸中心する円盤状の第2円盤部88が接続部90を介して一体形成されている、また、この第2円盤部88にはその周方向に沿って複数のブレード92が立設されている。さらにこの複数のブレード92の端部には中心部に貫通孔94を備えた円盤状の第1円盤部96が接合されている。以上説明した、第1円盤部96、第2円盤部88及び複数のブレード92によってインペラ12が構成されている。
【0036】
ステータ80は、図示しない導電性の巻線が、環状に形成された継鉄に巻回されることにより構成されている。また、ステータ80は上記ロータ78を囲うように配置されており、このステータ80が界磁する磁界を受けて、ロータ78が出力軸76を軸中心として回転する。このロータ78の回転に伴い、ロータ78に接続されたインペラ12が回転する構成である。また、ステータ80はモータケース22に鋳込まれることにより固定されている(図3参照)。
【0037】
次に、本発明の要部であるポンプケース16とモータケース22との接合部98について説明する。
【0038】
(接合部)
図5に示されるように、ポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ部60とがモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)にテーパ嵌合される。次いで、ポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ部60とがレーザー溶着にて接合されることにより接合部98は構成されている。
【0039】
本実施形態では、ポンプケース16はレーザー透過性の樹脂にて形成されており、モータケース22はレーザー吸収性の樹脂にて形成されている。この場合、外部からポンプケース16の開放端部38にレーザーを照射すると、モータケース22のテーパ部60の表面(即ちポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ部60との間)にてレーザーを吸収して発熱する。この熱によって、ポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ部60との間には溶着部100が形成される。また、本実施形態では、溶着部100はポンプケース16に設けられたテーパ部40とモータケース22に設けられたテーパ部60との間の全周に連続して設けられている。
【0040】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0041】
図1に示された本実施形態の電動ポンプ10は、一例としてエンジンの冷却水を循環するためのポンプとして用いられる。この場合、ポンプケース16に設けられた出口管28には、エンジンの冷却水導入口に接続された配管(図示省略)が接続され、また出口管28には、熱交換器の冷却水出力口に接続された配管(図示省略)が接続される。さらに、外部電源を供給する端子(図示省略)が電動ポンプ10の外部電源接続部72に接続される。この状態でエンジン内部の冷却水の温度が上がり、電動ポンプ10が作動すると、モータ18の回転に伴いインペラ12が回転する。これに伴い、ポンプ部14が駆動され、ポンプケース16の入口管26から流入した冷却水が出口管28に向けて圧送される。
【0042】
ここで、本実施形態では、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とが、モータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)にテーパ嵌合されるため、ポンプケース16とモータケース22との接合部98が電動ポンプ10の径方向外側に突出することが抑制される。換言すると、電動ポンプ10の外径の小径化をすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、先細りに形成されテーパ部60が末広がりに形成されたテーパ部40に挿入及び嵌合される。従って、先細りに形成されテーパ部60が末広がりに形成されたテーパ部40に挿入される際に、モータケース22に対するポンプケース16の位置を正規の位置へガイドしながら、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とを嵌合させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、接合部98における溶着がポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60との間の全周に連続して施されている。そのため、別途シール材を設けることなく、ポンプケース16とモータケース22との接合部98におけるシール性を確保することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ポンプケース16とモータケース22との接合部98がレーザー溶着にて接合されているため、例えばオービタル溶着等により接合した場合と比べ、均一で高い溶着強度を得ることができる。その結果、溶着部におけるシール性や接合強度をさらに向上させることができる。
【0046】
(第1変形例)
次に、図6を用いて第1変形例に係る接合部について説明する。なお、上記実施形態と同一の部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
図6(A)及び(B)に示されるように、本変形例に係る接合部102は、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とが圧入嵌合されて接合されていることに特徴がある。
【0048】
図6(A)に示されるように、ポンプケース16に形成されたテーパ部40の先端41の内径は、モータケース22に形成されたテーパ部60の基端61の外径よりも半径dだけ小さく形成されている。そのため、ポンプケース16のテーパ部40をモータケース22のテーパ部60に嵌合させると、ポンプケース16の開放端部38の半径はdだけ径方向外側に拡開する。即ち、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とが締め代dを有して圧入嵌合されている構成である。この状態で、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とがレーザー溶着にて接合されることにより接合部102は構成されている。
【0049】
(本変形例の作用並びに効果)
本変形例に係る接合部102では、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とが圧入嵌合されているため、電動ポンプ10内を流れる流体が接合部102から漏れ出してしまうことをより一層抑制できる。即ち、接合部102におけるシール性をより一層向上させることができる。
【0050】
(第2変形例)
次に、図7を用いて第2変形例に係る接合部について説明する。なお、上記実施形態と同一の部材については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
図7(A)に示されるように、本変形例に係る接合部104では、係止溝106がモータケース22に設けられると共に、該係止溝106に係止される係止突起108がポンプケース16に設けられていることに特徴がある。
【0052】
係止溝106はモータケース22の径方向外側に開口した角溝形状を成しており、またこの係止溝106はテーパ部60の基端61に隣接してかつモータケース22の全周に渡って設けられている。また、係止溝106は、上壁110、下壁112及びこの上壁110と下壁112とを繋ぐ底壁114を備えている。
【0053】
係止突起108は、開放端部38の先端からポンプケース16の径方向内側に突出形成されており、また開放端部38の先端の全周に渡って設けられている。さらに、係止突起108は、上壁116、下壁118及びこの上壁116と下壁118とを繋ぐ先端壁120を備えている。さらに、先端壁120の内径は、上記係止溝106の底壁114の外径と略同一の内径とされかつモータケース22のテーパ部60の基端61の外径よりも小さな内径とされている。
【0054】
図7(B)に示されるように、ポンプケース16のテーパ部40をモータケース22のテーパ部60に嵌合させる場合、先ず、ポンプケース16の開放端部38に形成された係止突起108がモータケース22のテーパ部60上をスライドする。この場合、開放端部38はその径方向外側に弾性変形する。次いで、図7(C)に示されるように、係止突起108がモータケース22のテーパ部60を乗り越えると、開放端部38が弾性復元する。その結果、係止突起108がモータケース22の係止溝106に係止される構成である。さらに、この状態で、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60とがレーザー溶着にて接合されることにより接合部104は構成されている。
【0055】
(本変形例の作用並びに効果)
【0056】
電動ポンプ10を作動させると、電動ポンプ10の内部には該電動ポンプ10の内部を流れる流体の圧力が生じる。この圧力を受けて、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60との間には、両者の嵌合が外れる方向(矢印B方向)への力が作用する(図7(C)参照)。
【0057】
しかしながら、本変形例に係る接合部104では、係止突起108が係止溝106に係止されているため、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60との嵌合が外れる方向への力を上記係止突起108及び係止溝106に受け止めさせることができる。詳述すると、係止突起108の上壁116が係止溝106の上壁110に当接することにより、上記の流体の圧力による力を受け止めている。その結果、流体の圧力による力を溶着部100にて受け止める必要がないため、該溶着部100における流体のシール性を向上させることができると共に、ポンプケース16とモータケース22との接合強度の余裕度を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、テーパ部40とテーパ部60とがテーパ嵌合された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ポンプケース16の開放端部38の開口方向に先細りとされたテーパ部とモータケース22の側壁58の径方向外側の端部からモータ18の出力軸76の軸線方向(矢印A方向)に向かって末広がりに形成されたテーパ部とがテーパ嵌合されても良い。この場合、ポンプケース16の開放端部38を開口変形させながら、ポンプケース16側のテーパ部とモータケース側のテーパ部とを嵌合させる構成となる。
【0059】
また、本実施形態では、ポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60との間の全周に連続して熱溶着が施された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、部分的に溶着を施しても良い。このように、熱溶着を全集に施すか、あるいは部分的に施すかは接合部の接合強度やシール性等を考慮して適宜設定すればよい。
【0060】
さらに、上記実施形態及び変形例では、レーザー溶着にてポンプケース16のテーパ部40とモータケース22のテーパ部60との間を溶着した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、オービタル溶着等他の溶着方法を用いても良い。このように、溶着方法は生産設備やポンプケース16及びモータケース22の材料等を考慮して適宜設定すればよい。
【0061】
また、第2変形例においては、係止突起108をポンプケース16に形成し、また係止溝106をモータケース22に形成した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、係止突起108をモータケース22に形成し、また係止溝106をポンプケース16に形成した構成としても良い。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 電動ポンプ
12 インペラ
14 ポンプ部
16 ポンプケース
18 モータ
22 モータケース
40 テーパ部
60 テーパ部
62 外周壁
76 出力軸
98 接合部
100 溶着部
102 接合部
104 接合部
106 係止溝
108 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを回転可能に収容することにより流入した流体を圧送するポンプ部の外郭を形成するポンプケースと、
前記インペラを回転させることにより前記ポンプ部を駆動するモータを収容するモータケースと、
前記ポンプケースに設けられたテーパ部と前記モータケースに設けられたテーパ部とが前記モータの出力軸の軸線方向にテーパ嵌合されると共に溶着にて接合される接合部と、
を備えた電動ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか一方の外周壁に形成された前記テーパ部は該外周壁の端部に向けて先細りに形成されると共に、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか他方の内周壁に形成された前記テーパ部は該内周壁の端部に向けて末広がりに形成された請求項1記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部とが圧入嵌合された請求項1又は請求項2記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか一方には係止溝が設けられると共に、前記ポンプケース及び前記モータケースのうちいずれか他方には前記係止溝に係止されることにより前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部との嵌合が外れることを抑制する係止突起が設けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
前記接合部における溶着は、前記ポンプケースのテーパ部と前記モータケースのテーパ部との間の全周に連続して施された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項6】
前記接合部はレーザー溶着にて接合された請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72344(P2013−72344A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211591(P2011−211591)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】