電動乗用草刈機
【課題】モータドライバを効率的に冷却することを可能とした電動乗用草刈機を提供する。
【解決手段】車体フレーム18と、そこに懸架されたモアデッキ15と、その内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、モアデッキ15上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータ50A,50Bと、モアデッキ15の後方かつ上方に位置するモアモータドライバと、それを収納する制御ボックスEの下方に備え、モアモータドライバから発生する熱を外部に放射するヒートシンクHと、モアモータ50A,50Bの外周に沿って送風路を形成する送風部材51A,51Bと、モアブレードの回転によって形成される上昇風をモアデッキ15外に送り出すための空気送出部とを備え、空気送出部を送風路と連結するように形成するとともに、送風路の出口をヒートシンクHに対向するように配置する。
【解決手段】車体フレーム18と、そこに懸架されたモアデッキ15と、その内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、モアデッキ15上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータ50A,50Bと、モアデッキ15の後方かつ上方に位置するモアモータドライバと、それを収納する制御ボックスEの下方に備え、モアモータドライバから発生する熱を外部に放射するヒートシンクHと、モアモータ50A,50Bの外周に沿って送風路を形成する送風部材51A,51Bと、モアブレードの回転によって形成される上昇風をモアデッキ15外に送り出すための空気送出部とを備え、空気送出部を送風路と連結するように形成するとともに、送風路の出口をヒートシンクHに対向するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアブレードと、モアブレードを回転させるモータとを備える電動乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用ローンモア(乗用草刈機)は、2つのモアブレードと、モアブレードを上方から覆うように備えられたモアデッキなどを備え、走行に用いるエンジンからの駆動力を伝達してモアブレードを回転させ、芝を刈っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−007414号公報
【0004】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0005】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用ローンモア(乗用草刈機)を開発することは重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動乗用ローンモアでは、モアブレードをモータで回転させるので、モータを駆動するためのモータドライバが必要となる。モータドライバは、集積回路であるため作動時に発熱し、これをどのように冷却するかが課題となる。例えば、モータドライバを水冷することが挙げられる。この場合、モータドライバを水冷するために別途、冷却水が必要となるという問題がある。また、冷却水を蓄えるためのタンクや送水管などの装置が必要となり、電動乗用ローンモアが大型化してしまうという問題がある。そこでこの発明は、簡単な構成で、モータドライバを効率的に冷却することを可能とした電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、車体フレームと、
該車体フレームから懸架されたモアデッキと、
該モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、
前記モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、
前記モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに前記車体フレームに取り付けられた、前記モアモータを駆動するモアモータドライバと、
該モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、
前記それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、
前記モアブレードの回転によって形成される上昇風を前記モアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、
該空気送出部を前記送風路と連結するように形成するとともに、
前記送風路の出口を前記放熱部に対向するように配置する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記空気送出部を前記モアデッキに複数備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記送風部材を高熱伝導性の材料で形成することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、前記左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の左側半分に風を送るように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、前記左右のモアブレードが形成する前記上昇風を前記放熱部に導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、車体フレームと、車体フレームから懸架されたモアデッキと、モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、モアデッキ上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに車体フレームに取り付けられた、モアモータを駆動するモアモータドライバと、モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、モアブレードの回転によって形成される上昇風をモアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、空気送出部を送風路と連結するように形成するとともに、送風路の出口を放熱部に対向するように配置する。
【0013】
このため、モアデッキから排出された上昇風を活用してモアモータドライバを効率的に冷却することができる。これによって、モアモータドライバを冷却するために別途、風を起こす必要がないし、水冷装置など大掛かりな装置も必要ない。したがって、簡単な構成で、モータドライバを効率的に冷却することを可能とした電動乗用草刈機を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、空気送出部をモアデッキに複数備えるので、空気送出部からモアデッキ内の上昇風を効率的に取り出してモアモータドライバを冷却することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、送風部材を高熱伝導性の材料で形成するので、モアモータが発する熱を送風部材に容易に伝達することができる。そして、送風部材内を通過するモアデッキからの上昇風が受け取った熱を外部に送り出すことができ、容易にモアモータを冷却することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える送風部材の送風路の出口が放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える送風部材の送風路の出口が放熱部の左側半分に風を送るように形成されるので、左右のモアブレードからの上昇風を放熱部の左側と右側とに分担して当て、放熱部を効率よく冷却することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、左右のモアブレードが形成する上昇風を放熱部に導くので、いっそう効率的に上昇風を放熱部に当てることができ、放熱部の冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモアの斜視図である。
【図2】その側面図である。
【図3】(a)はモアデッキ周辺の拡大斜視図、(b)は(a)の平面図である。
【図4】左側に備える送風部材の、(a)は斜視図、(b)は(a)のA矢視断面図、(c)は平面図、(d)は(c)のB矢視側面図、(e)は(c)のC矢視側面図である。
【図5】右側に備える送風部材の、(a)は斜視図、(b)は(a)のB矢視断面図、(c)は平面図、(d)は(c)のA矢視側面図、(e)は(c)のC矢視側面図である。
【図6】(a)はモアデッキの平面図、(b)はモアデッキの左側の一部平面図、(c)はモアデッキの右側の一部平面図である。
【図7】送風部材とヒートシンク、制御ボックスの位置関係を説明するための平面図である。
【図8】送風部材とヒートシンク、制御ボックスの位置関係を説明するための側面図である。
【図9】モアブレードを回転させたときの風の流れを説明するための図である。
【図10】モアブレードを回転させたときの風の流れを説明するための図であり、(a)は図9のX矢視断面図、(b)は図9のY矢視断面図である。
【図11】この発明の別の例を示す一部拡大側面図である。
【図12】ガイド部の、(a)は左側からの側面図、(b)は右側からの側面図である。
【図13】ガイド部の、(a)は平面図、(b)は裏面図、(c)は(b)のA矢視断面図、(d)は(b)のB矢視断面図、(e)は(b)のC矢視断面図である。
【図14】ガイド部の取り付けを説明するための図であり、(a)は左袖部の先端と空気排出部との連結を示す図、(b)は右袖部の先端と空気排出部との連結を示す図、(c)は合流部とブラケットとの連結を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用草刈機の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア(電動乗用草刈機)10の斜視図を、図2にはその側面図を示す。電動ローンモア10は、車体フレーム18、左右の前輪11、左右の後輪(駆動輪)12、運転席13、走行操作レバー(操作部)14(右:14R,左:14L)、モアブレード(不図示)、モアデッキ15などを備えてなる。車体フレーム18は、前後方向に延びた左右一対のビームが一定間隔をもって備えられ、その一対のビームに渡し掛けるように床板FLを固設してなる。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸11Aを貫通させる。ホイールは、車軸11Aに対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0020】
車軸11Aは、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を回動自在に備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。左右の円筒部17の側面には、横フレーム19の両端を溶接などで固定する。そして、横フレーム19の、左右の円筒部17,17から少し隔たった位置にはそれぞれ車体フレーム18の先端を溶接などで固定する。なお、円筒部17は金属製の円筒、車体フレーム18および横フレーム19は、金属製の角筒である。
【0021】
車体フレーム18の下方で、かつ、前輪11と後輪12との間にはモアデッキ15を備える。モアデッキ15は、楕円状の深皿状に形成され、モアデッキ15内には2つのモアブレードを回転自在に備える。モアデッキ15の上面には、2つのモアモータ50A,50Bを載置し、それぞれの回転軸をモアデッキ15内に向けて貫通させる。そして、それぞれの回転軸の先端をモアブレードの中央部に嵌合させる。
【0022】
モアデッキ15の前部の長手方向両側にはそれぞれ補助車輪23,23を取り付ける。補助車輪23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備えてなる。ホイールの回転中心には車軸23Aを貫通させる。ホイールは、車軸23Aに対して回転自在となっている(すなわち、補助車輪23は従動回転する)。なお、芝刈りを行うときは、補助車輪23は常に走行面に接地した状態である。
【0023】
モアデッキ15は、リンク機構21を介して車体フレーム18に昇降自在に懸架されている。リンク機構21は昇降操作レバー27に連結されている。なお、図1,2では、モアデッキ15は下ろされて補助車輪23が接地した状態(芝刈りをする状態)を示している。
【0024】
電動ローンモア10の前部にはフットレストFRを設ける。フットレストFRは、運転席13に向き合うように傾斜した面を有し、車幅方向に延びた三角柱状に形成される。
【0025】
車体フレーム18の後部下方にはバッテリーBTを2つ並べて平置きに備える。バッテリーBTは、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。2つのバッテリーは直列に接続される。なお、バッテリーBTのコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器は、運転席13の下方の制御ボックス内に収納されている。バッテリーBTのコントローラは、バッテリーBTの微小な電圧の変動を補正するものである。
【0026】
運転席13の両側にはフェンダー24L,24Rを備える。フェンダー24L,24Rには、その後部が後輪(駆動輪)12の上部と干渉しないように切り欠きが設けられている。また、左右のフェンダー24L,24Rの上面には、ペットボトルなどの飲料容器を収納できる、カップフォルダが設けられている。フェンダー24L,24Rは、強化プラスチック製でカップフォルダなどを一体に形成してなるものである。
【0027】
運転席13の前方の車体フレーム18の中央付近は平坦に形成され、ステップFLとなる。ステップFLは、運転者が運転席13に乗降するために足をかけるためのものである。
【0028】
左右の後輪12の内側には、それぞれ後輪12を駆動させるための走行モータ31を備える。走行モータ31は、左右の後輪12,12に対して1つずつ備える。なお、走行モータ13は、インホイールモータを適用してもよい。走行モータ31のドライバ(走行モータドライバ)は、運転席13の下方に備える制御ボックス(後述)に収納される。この制御ボックスには、モアモータ50A,50Bのドライバ(モアモータドライバ)、バッテリーBTの制御部など電装品類も収納する。
【0029】
走行モータ31のドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行モータ31の回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータ50A,50Bの回転は、走行モータ31の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0030】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行モータ31が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行モータ31は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行モータ31の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14L,14Rはそれぞれ左右の走行モータ13,13の回転動作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14L,14Rを前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。このような構成とすることで、車両の左右折、旋回のためのステアリング機構を設ける必要がなく、車両の構成を簡単にすることができる。
【0031】
図3(a),(b)にはこの例の要部を示す。モアデッキ15上には2つのモアモータ50A,50Bを所定の距離をもって固定する。モアモータ50A,50Bの下には、台座52A,52Bを固設して備え、台座52A,52Bをモアデッキ15にボルトによってネジ止めする。これによって、モアモータ50A,50Bをモアデッキ15に固定する。モアモータ50A,50Bの回転軸AA,ABは、モアデッキ15に形成された貫通孔(図6における符号15A)を通してモアデッキ15の内側に先端を突出させ、回転軸AA,ABの先端にそれぞれモアブレードBA,BBを固設する。なお、矢印Fは電動ローンモア10の前進方向を、矢印AXは回転軸AA,ABの回転中心を結ぶ線である。矢印AXは矢印Fに水平面上で直交する方向から一定角度だけ傾いて形成される。
【0032】
モアモータ50A,50Bの外観は円筒形状であり、その側面に沿うようにそれぞれ、送風部材51A,51Bを設ける。
【0033】
送風部材51Aは、図4(a)〜(e)に示すように、金属製(好ましくは熱伝導率が高い金属製)で、略門型の断面を有し、内側に送風路としての空間51ASが形成されている。この空間51ASは、略円筒の外面部51AOと、外面部51AOよりも小さな直径を有する略円筒の内面部51AIとを一定の距離をもって備え、両者の上端を略円環状の天板51AUで塞ぐことで形成される。したがって、送風部材51Aの下部は開放されている。さらに、外面部51AOの一部には空気排出部51AAを連続して形成する。空気排出部51AAは、略門型の断面を有し、内側に空気排出口(送風路の出口)51AXとしての空間を有する。空気排出口51AXは、空間51ASよりも大きな断面積を有する。空気排出部51AAは上方に向かって角度αだけ傾斜したラッパ状に形成される。なお、送風部材51Aは、下面側が開放されている以外は、空気排出口51AXに開口を有するのみである。このようにして、送風部材51Aは円環状に送風路を備えてなる。
【0034】
送風部材51Bは、図5(a)〜(e)に示すように、金属製(好ましくは熱伝導率が高い金属製)で、略門型の断面を有し、内側に送風路としての空間51BSが形成されている。この空間51BSは、略円筒の外面部51BOと、外面部51BOよりも小さな直径を有する略円筒の内面部51BIとを一定の距離をもって備え、両者の上端を略円環状の天板51BUで塞ぐことで形成される。したがって、送風部材51Bの下部は開放されている。さらに、外面部51BOの一部には空気排出部51BAを連続して形成する。空気排出部51BAは、略門型の断面を有し、内側に空気排出口(送風路の出口)51BXとしての空間を有する。空気排出口51BXは、空間51BSよりも大きな断面積を有する。空気排出部51BAは上方に向かって角度β(β>α)だけ傾斜したラッパ状に形成される。なお、送風部材51Bは、下面側が開放されている以外は、空気排出口51BXに開口を有するのみである。このようにして、送風部材51Bは円環状に送風路を備えてなる。
【0035】
一方、モアデッキ15には、図6(a)〜(c)に示すように、左右それぞれの貫通孔15A,15Aから一定距離(モアモータ50A,50Bの半径と略同一距離)を隔てて、スリット(空気送出部)15Cが所定の間隔で複数形成されている。このスリット15Cは、モアブレードBA,BBが回転してモアデッキ15内に風がおこされたとき、その風の一部が送り出されるためのものである。なお、モアモータ50A,50Bの台座52A,52Bにもこのスリット15Cに対応する位置にスリットが形成され、風が上方に抜けるようになっている。
【0036】
運転席13の下方で、左右のフェンダー24L,24Rの間には、図7,8に示すように、制御ボックスEを備える。この制御ボックスEは、床板FL上に載置・固定されている。制御ボックスEには、走行モータ31のドライバ(走行モータドライバ)、モアモータ50A,50Bのドライバ(モアモータドライバ)、および、バッテリーBTのバッテリーコントローラなどの電装品類を収容している。電装品類は作動時に発熱するので制御ボックスE内は高温となり、冷却が必要となる。制御ボックスE内の熱を外部に放出するために、ヒートシンク(放熱部)Hを下方に向けて突出して備える。ヒートシンクHは、側面視で床板FLの下方に突出している。ヒートシンクHは、熱伝導率の高い金属をフィン状に形成してなる。
【0037】
送風部材51A,51Bの空気排出部51AA,51BAは、ヒートシンクHに向けて風を送るものである。したがって、空気排出部51AA,51BAはヒートシンクHに風が向かうように上方に向かって適宜傾斜して形成される(この例では、空気排出部51BAのほうが空気排出部51AAの傾斜よりも上方に向かうように傾斜している)。また、空気排出部51AA,51BAは、平面視で略ラッパ状に先端が開くような形状となっている。これは、左右の空気排出部51AA,51BAから送り出される風が、それぞれが、ヒートシンクHの幅方向の左半分、右半分に適切に当たるようにするためである(なお、図8はモアデッキ15が下がって芝刈りをする状態を示している)。
【0038】
次に、図9,10を用いて、電動ローンモア10で芝刈りをする様子を説明する。図9にて平面視で、モアブレードBAが時計回りに、モアブレードBBが反時計回りに回転する(したがって、刈った芝はモアデッキ15の中央後方に向けて排出される)。すると、モアブレードBAが回転軸AAの周りに時計回りで、かつ、やや上方に向かう風WAをおこすとともに、モアブレードBBが回転軸ABの周りに反時計回りで、かつ、やや上方に向かう風WBをおこす(言い換えると、モアブレードBA,BBは回転することで上方へ向かうベクトルを有する風をおこす)。モアブレードBAが形成した風WAは、スリット(空気送出部)15Cを通って送風部材51Aの空間51AS内に送り込まれる。また、風WAの方向は、時計回り方向のベクトル成分も有しているため、送風部材51A内を時計回りに流れる。そして、空気排出部51AAより排出される。この風WAは、ヒートシンクHの略左側半分に当たって、ヒートシンクHを冷却する。
【0039】
一方、モアブレードBBが形成した風WBは、スリット15Cを通って送風部材51Bの空間51BS内に送り込まれる。また、風WBの方向は、反時計回り方向のベクトル成分も有しているため、送風部材51B内を反時計回りに流れる。そして、空気排出部51BAより排出される。この風WBは、ヒートシンクHの略右側半分に当たって、ヒートシンクHを冷却する。
【0040】
なお、風WAが送風部材51A内を流れることで、送風部材51Aと接して設けられたモータ50Aも外側から冷却される。これは、モアモータ50Aが発する熱が送風部材51Aの内面部51AIに伝達され、内面部51AIが空間51ASに発した熱を風WAによって外部へと排出することによるものである(したがって、送風部材51Aが熱伝導性の高い金属で形成されると、よりいっそうモアモータ50Aを冷却することができる)。同様に、風WBが送風部材51B内を流れることで、送風部材51Bと接して設けられたモアモータ50Bも外側から冷却される。これは、モアモータ50Bが発する熱が送風部材51Bの内面部51BIに伝達され、内面部51BIが空間51BSに発した熱を風WBによって外部へと排出することによるものである(したがって、送風部材51Bが熱伝導性の高い金属で形成されると、よりいっそうモアモータ50Bを冷却することができる)。
【0041】
図11には、この発明の別の例を示す。この例では、風WA,WBがより確実にヒートシンクHに届くように、ガイド部60を備える。ガイド部60の一端は、空気排出部51AAおよび空気排出部51BAにそれぞれピンP2、ピンP3を介して取り付ける。一方、ガイド部60の他端は、ピンP1を介してブラケット63に取り付ける。そして、ブラケット63を、横フレーム62を介して車体フレーム18に取り付ける(図14参照)。これ以外の電動ローンモア10の構造は、前の例と同一であるので、説明を省略する。
【0042】
ガイド部60は金属板を加工して形成され、図12(a),(b)、図13(a)〜(e)に示すように、左袖部61、右袖部62、合流部64で構成される。左袖部61は、断面形状が門型状で、先端部61Tは断面形状が一定であるが、それ以外の部分では、後方に向かって断面形状が上下左右に広がるように形成される。先端部61Tの両側面にはピンP2,P2が遊嵌する長孔61A,61Aが形成されている。ピンP2は、空気排出部51AAの両側面にそれぞれ突設されている。
【0043】
右袖部62は、断面形状が門型状で、先端部62Tは断面形状が一定であるが、それ以外の部分では、後方に向かって断面形状が上下左右に広がるように形成される。先端部62Tの両側面にはピンP3,P3が遊嵌する長孔62A,62Aが形成されている。ピンP3は、空気排出部51BAの両側面にそれぞれ突設されている。
【0044】
左袖部61と右袖部62とは後端にて合流し、その後方は、合流部64となっている。合流部64は、断面形状が門型状で、両側面には円形の貫通孔64A,64Aを設ける。貫通孔64Aには、ピンP1を挿入する。
【0045】
このように構成されたガイド部60は、図14(a)〜(c)に示すように、左袖部61の長孔61Aに空気排出部51AAに固設されたピンP2を遊嵌させるようにして取り付けるとともに、右袖部62の長孔62Aに空気排出部51BAに固設されたピンP3を遊嵌させるようにして取り付ける。一方、合流部64の左右の貫通孔64A,64Aにそれぞれ、ブラケット63,63に突設されたピンP1,P1を貫通させて、合流部64をブラケット63に回動自在に取り付ける。なお、ブラケット63は、略矩形の金属板で形成され、先端にピンP1を突設するとともに、後端は、横フレーム62に溶接などで固定する。横フレーム62は金属製で、一対の車体フレーム18に掛け渡すように設けられる。横フレーム62の両端は、車体フレーム18に溶接またはボルトによって固定される。このとき、ヒートシンクHは、合流部64のすぐ後方に位置する。これによって、ガイド部60が効率的に風WA,WBをヒートシンクHに導くことができる。
【0046】
なお、モアデッキ15を上昇させると、ガイド部60がピンP1を中心として上方に回動し、ピンP2が長孔61A内を、ピンP3が長孔62A内をそれぞれ移動する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明の電動乗用草刈機は、ローンモアとして芝刈作業をするのに限定されるものではなく、あらゆる草刈作業に適用しうる。また、モアブレードの駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
13 運転席
15 モアデッキ
15C スリット(空気送出部)
18 車体フレーム
31 走行モータ
50A,50B モアモータ
51A,51B 送風部材
51AX,51BX 空気排出口(送風路の出口)
60 ガイド部
E 制御ボックス
H ヒートシンク(放熱部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアブレードと、モアブレードを回転させるモータとを備える電動乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用ローンモア(乗用草刈機)は、2つのモアブレードと、モアブレードを上方から覆うように備えられたモアデッキなどを備え、走行に用いるエンジンからの駆動力を伝達してモアブレードを回転させ、芝を刈っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−007414号公報
【0004】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0005】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動による乗用ローンモア(乗用草刈機)を開発することは重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動乗用ローンモアでは、モアブレードをモータで回転させるので、モータを駆動するためのモータドライバが必要となる。モータドライバは、集積回路であるため作動時に発熱し、これをどのように冷却するかが課題となる。例えば、モータドライバを水冷することが挙げられる。この場合、モータドライバを水冷するために別途、冷却水が必要となるという問題がある。また、冷却水を蓄えるためのタンクや送水管などの装置が必要となり、電動乗用ローンモアが大型化してしまうという問題がある。そこでこの発明は、簡単な構成で、モータドライバを効率的に冷却することを可能とした電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、車体フレームと、
該車体フレームから懸架されたモアデッキと、
該モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、
前記モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、
前記モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに前記車体フレームに取り付けられた、前記モアモータを駆動するモアモータドライバと、
該モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、
前記それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、
前記モアブレードの回転によって形成される上昇風を前記モアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、
該空気送出部を前記送風路と連結するように形成するとともに、
前記送風路の出口を前記放熱部に対向するように配置する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記空気送出部を前記モアデッキに複数備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記送風部材を高熱伝導性の材料で形成することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、前記左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の左側半分に風を送るように形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、前記左右のモアブレードが形成する前記上昇風を前記放熱部に導くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、車体フレームと、車体フレームから懸架されたモアデッキと、モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、モアデッキ上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに車体フレームに取り付けられた、モアモータを駆動するモアモータドライバと、モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、モアブレードの回転によって形成される上昇風をモアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、空気送出部を送風路と連結するように形成するとともに、送風路の出口を放熱部に対向するように配置する。
【0013】
このため、モアデッキから排出された上昇風を活用してモアモータドライバを効率的に冷却することができる。これによって、モアモータドライバを冷却するために別途、風を起こす必要がないし、水冷装置など大掛かりな装置も必要ない。したがって、簡単な構成で、モータドライバを効率的に冷却することを可能とした電動乗用草刈機を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、空気送出部をモアデッキに複数備えるので、空気送出部からモアデッキ内の上昇風を効率的に取り出してモアモータドライバを冷却することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、送風部材を高熱伝導性の材料で形成するので、モアモータが発する熱を送風部材に容易に伝達することができる。そして、送風部材内を通過するモアデッキからの上昇風が受け取った熱を外部に送り出すことができ、容易にモアモータを冷却することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える送風部材の送風路の出口が放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える送風部材の送風路の出口が放熱部の左側半分に風を送るように形成されるので、左右のモアブレードからの上昇風を放熱部の左側と右側とに分担して当て、放熱部を効率よく冷却することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、左右のモアブレードが形成する上昇風を放熱部に導くので、いっそう効率的に上昇風を放熱部に当てることができ、放熱部の冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモアの斜視図である。
【図2】その側面図である。
【図3】(a)はモアデッキ周辺の拡大斜視図、(b)は(a)の平面図である。
【図4】左側に備える送風部材の、(a)は斜視図、(b)は(a)のA矢視断面図、(c)は平面図、(d)は(c)のB矢視側面図、(e)は(c)のC矢視側面図である。
【図5】右側に備える送風部材の、(a)は斜視図、(b)は(a)のB矢視断面図、(c)は平面図、(d)は(c)のA矢視側面図、(e)は(c)のC矢視側面図である。
【図6】(a)はモアデッキの平面図、(b)はモアデッキの左側の一部平面図、(c)はモアデッキの右側の一部平面図である。
【図7】送風部材とヒートシンク、制御ボックスの位置関係を説明するための平面図である。
【図8】送風部材とヒートシンク、制御ボックスの位置関係を説明するための側面図である。
【図9】モアブレードを回転させたときの風の流れを説明するための図である。
【図10】モアブレードを回転させたときの風の流れを説明するための図であり、(a)は図9のX矢視断面図、(b)は図9のY矢視断面図である。
【図11】この発明の別の例を示す一部拡大側面図である。
【図12】ガイド部の、(a)は左側からの側面図、(b)は右側からの側面図である。
【図13】ガイド部の、(a)は平面図、(b)は裏面図、(c)は(b)のA矢視断面図、(d)は(b)のB矢視断面図、(e)は(b)のC矢視断面図である。
【図14】ガイド部の取り付けを説明するための図であり、(a)は左袖部の先端と空気排出部との連結を示す図、(b)は右袖部の先端と空気排出部との連結を示す図、(c)は合流部とブラケットとの連結を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用草刈機の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア(電動乗用草刈機)10の斜視図を、図2にはその側面図を示す。電動ローンモア10は、車体フレーム18、左右の前輪11、左右の後輪(駆動輪)12、運転席13、走行操作レバー(操作部)14(右:14R,左:14L)、モアブレード(不図示)、モアデッキ15などを備えてなる。車体フレーム18は、前後方向に延びた左右一対のビームが一定間隔をもって備えられ、その一対のビームに渡し掛けるように床板FLを固設してなる。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸11Aを貫通させる。ホイールは、車軸11Aに対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0020】
車軸11Aは、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を回動自在に備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。左右の円筒部17の側面には、横フレーム19の両端を溶接などで固定する。そして、横フレーム19の、左右の円筒部17,17から少し隔たった位置にはそれぞれ車体フレーム18の先端を溶接などで固定する。なお、円筒部17は金属製の円筒、車体フレーム18および横フレーム19は、金属製の角筒である。
【0021】
車体フレーム18の下方で、かつ、前輪11と後輪12との間にはモアデッキ15を備える。モアデッキ15は、楕円状の深皿状に形成され、モアデッキ15内には2つのモアブレードを回転自在に備える。モアデッキ15の上面には、2つのモアモータ50A,50Bを載置し、それぞれの回転軸をモアデッキ15内に向けて貫通させる。そして、それぞれの回転軸の先端をモアブレードの中央部に嵌合させる。
【0022】
モアデッキ15の前部の長手方向両側にはそれぞれ補助車輪23,23を取り付ける。補助車輪23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備えてなる。ホイールの回転中心には車軸23Aを貫通させる。ホイールは、車軸23Aに対して回転自在となっている(すなわち、補助車輪23は従動回転する)。なお、芝刈りを行うときは、補助車輪23は常に走行面に接地した状態である。
【0023】
モアデッキ15は、リンク機構21を介して車体フレーム18に昇降自在に懸架されている。リンク機構21は昇降操作レバー27に連結されている。なお、図1,2では、モアデッキ15は下ろされて補助車輪23が接地した状態(芝刈りをする状態)を示している。
【0024】
電動ローンモア10の前部にはフットレストFRを設ける。フットレストFRは、運転席13に向き合うように傾斜した面を有し、車幅方向に延びた三角柱状に形成される。
【0025】
車体フレーム18の後部下方にはバッテリーBTを2つ並べて平置きに備える。バッテリーBTは、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。2つのバッテリーは直列に接続される。なお、バッテリーBTのコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器は、運転席13の下方の制御ボックス内に収納されている。バッテリーBTのコントローラは、バッテリーBTの微小な電圧の変動を補正するものである。
【0026】
運転席13の両側にはフェンダー24L,24Rを備える。フェンダー24L,24Rには、その後部が後輪(駆動輪)12の上部と干渉しないように切り欠きが設けられている。また、左右のフェンダー24L,24Rの上面には、ペットボトルなどの飲料容器を収納できる、カップフォルダが設けられている。フェンダー24L,24Rは、強化プラスチック製でカップフォルダなどを一体に形成してなるものである。
【0027】
運転席13の前方の車体フレーム18の中央付近は平坦に形成され、ステップFLとなる。ステップFLは、運転者が運転席13に乗降するために足をかけるためのものである。
【0028】
左右の後輪12の内側には、それぞれ後輪12を駆動させるための走行モータ31を備える。走行モータ31は、左右の後輪12,12に対して1つずつ備える。なお、走行モータ13は、インホイールモータを適用してもよい。走行モータ31のドライバ(走行モータドライバ)は、運転席13の下方に備える制御ボックス(後述)に収納される。この制御ボックスには、モアモータ50A,50Bのドライバ(モアモータドライバ)、バッテリーBTの制御部など電装品類も収納する。
【0029】
走行モータ31のドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行モータ31の回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータ50A,50Bの回転は、走行モータ31の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0030】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行モータ31が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行モータ31は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行モータ31の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行モータ31が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14L,14Rはそれぞれ左右の走行モータ13,13の回転動作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14L,14Rを前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。このような構成とすることで、車両の左右折、旋回のためのステアリング機構を設ける必要がなく、車両の構成を簡単にすることができる。
【0031】
図3(a),(b)にはこの例の要部を示す。モアデッキ15上には2つのモアモータ50A,50Bを所定の距離をもって固定する。モアモータ50A,50Bの下には、台座52A,52Bを固設して備え、台座52A,52Bをモアデッキ15にボルトによってネジ止めする。これによって、モアモータ50A,50Bをモアデッキ15に固定する。モアモータ50A,50Bの回転軸AA,ABは、モアデッキ15に形成された貫通孔(図6における符号15A)を通してモアデッキ15の内側に先端を突出させ、回転軸AA,ABの先端にそれぞれモアブレードBA,BBを固設する。なお、矢印Fは電動ローンモア10の前進方向を、矢印AXは回転軸AA,ABの回転中心を結ぶ線である。矢印AXは矢印Fに水平面上で直交する方向から一定角度だけ傾いて形成される。
【0032】
モアモータ50A,50Bの外観は円筒形状であり、その側面に沿うようにそれぞれ、送風部材51A,51Bを設ける。
【0033】
送風部材51Aは、図4(a)〜(e)に示すように、金属製(好ましくは熱伝導率が高い金属製)で、略門型の断面を有し、内側に送風路としての空間51ASが形成されている。この空間51ASは、略円筒の外面部51AOと、外面部51AOよりも小さな直径を有する略円筒の内面部51AIとを一定の距離をもって備え、両者の上端を略円環状の天板51AUで塞ぐことで形成される。したがって、送風部材51Aの下部は開放されている。さらに、外面部51AOの一部には空気排出部51AAを連続して形成する。空気排出部51AAは、略門型の断面を有し、内側に空気排出口(送風路の出口)51AXとしての空間を有する。空気排出口51AXは、空間51ASよりも大きな断面積を有する。空気排出部51AAは上方に向かって角度αだけ傾斜したラッパ状に形成される。なお、送風部材51Aは、下面側が開放されている以外は、空気排出口51AXに開口を有するのみである。このようにして、送風部材51Aは円環状に送風路を備えてなる。
【0034】
送風部材51Bは、図5(a)〜(e)に示すように、金属製(好ましくは熱伝導率が高い金属製)で、略門型の断面を有し、内側に送風路としての空間51BSが形成されている。この空間51BSは、略円筒の外面部51BOと、外面部51BOよりも小さな直径を有する略円筒の内面部51BIとを一定の距離をもって備え、両者の上端を略円環状の天板51BUで塞ぐことで形成される。したがって、送風部材51Bの下部は開放されている。さらに、外面部51BOの一部には空気排出部51BAを連続して形成する。空気排出部51BAは、略門型の断面を有し、内側に空気排出口(送風路の出口)51BXとしての空間を有する。空気排出口51BXは、空間51BSよりも大きな断面積を有する。空気排出部51BAは上方に向かって角度β(β>α)だけ傾斜したラッパ状に形成される。なお、送風部材51Bは、下面側が開放されている以外は、空気排出口51BXに開口を有するのみである。このようにして、送風部材51Bは円環状に送風路を備えてなる。
【0035】
一方、モアデッキ15には、図6(a)〜(c)に示すように、左右それぞれの貫通孔15A,15Aから一定距離(モアモータ50A,50Bの半径と略同一距離)を隔てて、スリット(空気送出部)15Cが所定の間隔で複数形成されている。このスリット15Cは、モアブレードBA,BBが回転してモアデッキ15内に風がおこされたとき、その風の一部が送り出されるためのものである。なお、モアモータ50A,50Bの台座52A,52Bにもこのスリット15Cに対応する位置にスリットが形成され、風が上方に抜けるようになっている。
【0036】
運転席13の下方で、左右のフェンダー24L,24Rの間には、図7,8に示すように、制御ボックスEを備える。この制御ボックスEは、床板FL上に載置・固定されている。制御ボックスEには、走行モータ31のドライバ(走行モータドライバ)、モアモータ50A,50Bのドライバ(モアモータドライバ)、および、バッテリーBTのバッテリーコントローラなどの電装品類を収容している。電装品類は作動時に発熱するので制御ボックスE内は高温となり、冷却が必要となる。制御ボックスE内の熱を外部に放出するために、ヒートシンク(放熱部)Hを下方に向けて突出して備える。ヒートシンクHは、側面視で床板FLの下方に突出している。ヒートシンクHは、熱伝導率の高い金属をフィン状に形成してなる。
【0037】
送風部材51A,51Bの空気排出部51AA,51BAは、ヒートシンクHに向けて風を送るものである。したがって、空気排出部51AA,51BAはヒートシンクHに風が向かうように上方に向かって適宜傾斜して形成される(この例では、空気排出部51BAのほうが空気排出部51AAの傾斜よりも上方に向かうように傾斜している)。また、空気排出部51AA,51BAは、平面視で略ラッパ状に先端が開くような形状となっている。これは、左右の空気排出部51AA,51BAから送り出される風が、それぞれが、ヒートシンクHの幅方向の左半分、右半分に適切に当たるようにするためである(なお、図8はモアデッキ15が下がって芝刈りをする状態を示している)。
【0038】
次に、図9,10を用いて、電動ローンモア10で芝刈りをする様子を説明する。図9にて平面視で、モアブレードBAが時計回りに、モアブレードBBが反時計回りに回転する(したがって、刈った芝はモアデッキ15の中央後方に向けて排出される)。すると、モアブレードBAが回転軸AAの周りに時計回りで、かつ、やや上方に向かう風WAをおこすとともに、モアブレードBBが回転軸ABの周りに反時計回りで、かつ、やや上方に向かう風WBをおこす(言い換えると、モアブレードBA,BBは回転することで上方へ向かうベクトルを有する風をおこす)。モアブレードBAが形成した風WAは、スリット(空気送出部)15Cを通って送風部材51Aの空間51AS内に送り込まれる。また、風WAの方向は、時計回り方向のベクトル成分も有しているため、送風部材51A内を時計回りに流れる。そして、空気排出部51AAより排出される。この風WAは、ヒートシンクHの略左側半分に当たって、ヒートシンクHを冷却する。
【0039】
一方、モアブレードBBが形成した風WBは、スリット15Cを通って送風部材51Bの空間51BS内に送り込まれる。また、風WBの方向は、反時計回り方向のベクトル成分も有しているため、送風部材51B内を反時計回りに流れる。そして、空気排出部51BAより排出される。この風WBは、ヒートシンクHの略右側半分に当たって、ヒートシンクHを冷却する。
【0040】
なお、風WAが送風部材51A内を流れることで、送風部材51Aと接して設けられたモータ50Aも外側から冷却される。これは、モアモータ50Aが発する熱が送風部材51Aの内面部51AIに伝達され、内面部51AIが空間51ASに発した熱を風WAによって外部へと排出することによるものである(したがって、送風部材51Aが熱伝導性の高い金属で形成されると、よりいっそうモアモータ50Aを冷却することができる)。同様に、風WBが送風部材51B内を流れることで、送風部材51Bと接して設けられたモアモータ50Bも外側から冷却される。これは、モアモータ50Bが発する熱が送風部材51Bの内面部51BIに伝達され、内面部51BIが空間51BSに発した熱を風WBによって外部へと排出することによるものである(したがって、送風部材51Bが熱伝導性の高い金属で形成されると、よりいっそうモアモータ50Bを冷却することができる)。
【0041】
図11には、この発明の別の例を示す。この例では、風WA,WBがより確実にヒートシンクHに届くように、ガイド部60を備える。ガイド部60の一端は、空気排出部51AAおよび空気排出部51BAにそれぞれピンP2、ピンP3を介して取り付ける。一方、ガイド部60の他端は、ピンP1を介してブラケット63に取り付ける。そして、ブラケット63を、横フレーム62を介して車体フレーム18に取り付ける(図14参照)。これ以外の電動ローンモア10の構造は、前の例と同一であるので、説明を省略する。
【0042】
ガイド部60は金属板を加工して形成され、図12(a),(b)、図13(a)〜(e)に示すように、左袖部61、右袖部62、合流部64で構成される。左袖部61は、断面形状が門型状で、先端部61Tは断面形状が一定であるが、それ以外の部分では、後方に向かって断面形状が上下左右に広がるように形成される。先端部61Tの両側面にはピンP2,P2が遊嵌する長孔61A,61Aが形成されている。ピンP2は、空気排出部51AAの両側面にそれぞれ突設されている。
【0043】
右袖部62は、断面形状が門型状で、先端部62Tは断面形状が一定であるが、それ以外の部分では、後方に向かって断面形状が上下左右に広がるように形成される。先端部62Tの両側面にはピンP3,P3が遊嵌する長孔62A,62Aが形成されている。ピンP3は、空気排出部51BAの両側面にそれぞれ突設されている。
【0044】
左袖部61と右袖部62とは後端にて合流し、その後方は、合流部64となっている。合流部64は、断面形状が門型状で、両側面には円形の貫通孔64A,64Aを設ける。貫通孔64Aには、ピンP1を挿入する。
【0045】
このように構成されたガイド部60は、図14(a)〜(c)に示すように、左袖部61の長孔61Aに空気排出部51AAに固設されたピンP2を遊嵌させるようにして取り付けるとともに、右袖部62の長孔62Aに空気排出部51BAに固設されたピンP3を遊嵌させるようにして取り付ける。一方、合流部64の左右の貫通孔64A,64Aにそれぞれ、ブラケット63,63に突設されたピンP1,P1を貫通させて、合流部64をブラケット63に回動自在に取り付ける。なお、ブラケット63は、略矩形の金属板で形成され、先端にピンP1を突設するとともに、後端は、横フレーム62に溶接などで固定する。横フレーム62は金属製で、一対の車体フレーム18に掛け渡すように設けられる。横フレーム62の両端は、車体フレーム18に溶接またはボルトによって固定される。このとき、ヒートシンクHは、合流部64のすぐ後方に位置する。これによって、ガイド部60が効率的に風WA,WBをヒートシンクHに導くことができる。
【0046】
なお、モアデッキ15を上昇させると、ガイド部60がピンP1を中心として上方に回動し、ピンP2が長孔61A内を、ピンP3が長孔62A内をそれぞれ移動する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明の電動乗用草刈機は、ローンモアとして芝刈作業をするのに限定されるものではなく、あらゆる草刈作業に適用しうる。また、モアブレードの駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
13 運転席
15 モアデッキ
15C スリット(空気送出部)
18 車体フレーム
31 走行モータ
50A,50B モアモータ
51A,51B 送風部材
51AX,51BX 空気排出口(送風路の出口)
60 ガイド部
E 制御ボックス
H ヒートシンク(放熱部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
該車体フレームから懸架されたモアデッキと、
該モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、
前記モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、
前記モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに前記車体フレームに取り付けられた、前記モアモータを駆動するモアモータドライバと、
該モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、
前記それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、
前記モアブレードの回転によって形成される上昇風を前記モアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、
該空気送出部を前記送風路と連結するように形成するとともに、
前記送風路の出口を前記放熱部に対向するように配置することを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記空気送出部を前記モアデッキに複数備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
前記送風部材を高熱伝導性の材料で形成することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、前記左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の左側半分に風を送るように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項5】
前記左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、前記左右のモアブレードが形成する前記上昇風を前記放熱部に導くことを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項1】
車体フレームと、
該車体フレームから懸架されたモアデッキと、
該モアデッキ内側に回転自在に備える左右一対のモアブレードと、
前記モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータと、
前記モアデッキの後方かつ上方に配置されるとともに前記車体フレームに取り付けられた、前記モアモータを駆動するモアモータドライバと、
該モアモータドライバの下方に備え、該モアモータドライバで発生する熱を放射する放熱部と、
前記それぞれのモアモータの外周に沿って送風路を形成する送風部材と、
前記モアブレードの回転によって形成される上昇風を前記モアデッキ外に送り出すための空気送出部とを備え、
該空気送出部を前記送風路と連結するように形成するとともに、
前記送風路の出口を前記放熱部に対向するように配置することを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記空気送出部を前記モアデッキに複数備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
前記送風部材を高熱伝導性の材料で形成することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記右側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の右側半分に風を送るように形成されるとともに、前記左側のモアブレードを回転させるモアモータの外周に沿って備える前記送風部材の送風路の出口が前記放熱部の左側半分に風を送るように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項5】
前記左右の送風路の出口にガイド部を取り付けて、前記左右のモアブレードが形成する前記上昇風を前記放熱部に導くことを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−170336(P2012−170336A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32204(P2011−32204)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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