説明

電動圧縮機

【課題】振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮可能な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1は、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する内側ハウジング10と、内側ハウジング10を収容し、締結手段89A、89Bによって対象物9に固定される取付部201A、201B、202A、202Bが形成された外側ハウジング20とを有する。内側ハウジング10には、圧縮機構3に冷媒が吸入される吸入口15及び圧縮機構3から冷媒が吐出される吐出口16が形成され、吸入口15及び吐出口16に接続される外部配管50、60が固定されている。外側ハウジング20は、防振性及び断熱性を有する材料からなり、組み合わされることにより内側ハウジング10を内包可能、かつ外部配管50、60と非接触状態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機が開示されている。この電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構を作動させるモータ機構と、圧縮機構及びモータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、内側ハウジングを収容する外側ハウジングとを備えている。
【0003】
内側ハウジングには、圧縮機構に冷媒が吸入される吸入口及び圧縮機構から冷媒が吐出される吐出口が形成され、吸入口及び吐出口に接続される外部配管が固定されている。外側ハウジングは、外部に延出する外部配管と接触状態とされている。
【0004】
また、この電動圧縮機は、外側ハウジング内で内側ハウジングを支持するスプリングと、外側ハウジングと内側ハウジングとの間に区画された空間に注入されたチキソトロピ性流体とを備えている。外側ハウジングには、外部(対象物)への取付部が形成されている。
【0005】
この電動圧縮機は、スプリングとチキソトロピ性流体とにより、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が外部に伝達することを抑制可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−294365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の電動圧縮機では、外側ハウジングが外部配管と接触状態であることから、外側ハウジングと、内側ハウジングに固定された外部配管との間において、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が伝達してしまう。また、圧縮機構により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジング及びスプリングを経由して外側ハウジングから放熱されるとともに、内側ハウジングを経由してチキソトロピ性流体に奪われ易い。このため、この電動圧縮機では、冷媒の熱量が低下し易く、例えばヒートポンプとして用いた場合、暖房用の熱交換器において、十分な暖房能力を発揮し難い。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮可能な電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構を作動させるモータ機構とを備えた電動圧縮機において、
前記圧縮機構及び前記モータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、前記内側ハウジングを収容し、締結手段によって対象物に固定される取付部が形成された外側ハウジングとを有し、
前記内側ハウジングには、前記圧縮機構に前記冷媒が吸入される吸入口及び前記圧縮機構から前記冷媒が吐出される吐出口が形成され、前記吸入口及び前記吐出口に接続される外部配管が固定され、
前記外側ハウジングは、防振性及び断熱性を有する材料からなり、組み合わされることによって前記内側ハウジングを内包可能、かつ前記外部配管と非接触状態であることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
本発明の電動圧縮機では、外側ハウジングが防振性を有して内側ハウジングを内包し、外部配管と非接触状態となっているので、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が内側ハウジングから外部(対象物)に伝達されることを抑制できる。また、この電動圧縮機は、外側ハウジングが断熱性を有して熱を移動し難いものであるため、圧縮機構により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジングから外部に放熱され難い。このため、この電動圧縮機は、冷媒の熱量が低下し難く、例えばヒートポンプとして用いた場合でも、暖房用の熱交換器において、十分な暖房能力を発揮することができる。
【0011】
したがって、本発明の電動圧縮機は、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮することができる。
【0012】
取付部は、第1取付部と第2取付部とからなり、外側ハウジングは、締結手段が第1取付部、第2取付部及び対象物に挿入されることにより、内側ハウジングを内包可能、かつ対象物に固定されることが好ましい(請求項2)。この場合、外側ハウジングに内側ハウジングを内包させる組み付け作業と、外側ハウジングを対象物に固定する組み付け作業とを同時に行うことができるので、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0013】
外側ハウジングは、第1取付部を有する第1ハウジング部材と、第2取付部を有する第2ハウジング部材とからなることが好ましい(請求項3)。このような具体的構成により、この電動圧縮機は、外側ハウジングを簡素化できる。
【0014】
内側ハウジングと外側ハウジングとの間には、防振性及び/又は断熱性を有する中間材が設けられていることが好ましい(請求項4)。この場合、この電動圧縮機は、中間材が防振性を有していれば、圧縮機構及びモータ機構からの振動及び騒音が内側ハウジングから外部に伝達することを一層抑制できる。また、この電動圧縮機は、中間材が断熱性を有していれば、中間材が熱を移動し難いものであるため、圧縮機構により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジングから外部に一層放熱され難い。その結果、この電動圧縮機は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0015】
外側ハウジングは筒状であることが好ましい(請求項5)。この場合、この電動圧縮機は、外側ハウジングを簡素化できるので、製造コストの低廉化を実現できる。また、内側ハウジングを外側ハウジングに容易に収納させることができるので、組み付け作業の簡素化も実現できる。
【0016】
外側ハウジングは容器形状であることが好ましい(請求項6)。この場合、外側ハウジングは、内側ハウジング全体を内包し、防振性及び断熱性を確実に発揮できる。その結果、この電動圧縮機は、本発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0017】
外側ハウジングは、樹脂又は繊維強化樹脂製であることが好ましい(請求項7)。この場合、外側ハウジングは、防振性及び断熱性を発揮し易くなるので、本発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0018】
外側ハウジングは、取付部に金属製の補強部を有することが好ましい(請求項8)。この場合、対象物に取り付けられた外側ハウジングに作用する力によって取付部が破損することを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の電動圧縮機が適用される空調装置の模式図である。
【図2】実施例1の電動圧縮機の模式断面図である。
【図3】実施例1の電動圧縮機に係り、外側ハウジングの斜視図である。
【図4】実施例2の電動圧縮機に係り、外側ハウジングの斜視図である。
【図5】実施例3の電動圧縮機に係り、外側ハウジングの斜視図である。
【図6】実施例4の電動圧縮機の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の電動圧縮機1は、車両に搭載されて車室内の温度調整を行う空調装置に適用されている。この空調装置は、電動圧縮機1と、方向切替弁91と、外気用熱交換器92と、膨張弁93と、車室用熱交換器94とにより構成されている。
【0022】
図2に示すように、電動圧縮機1は、圧縮機構3と、モータ機構5と、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する内側ハウジング10と、内側ハウジング10を収容する外側ハウジング20とを備えている。内側ハウジング10及び外側ハウジング20の具体的構成については、後で詳しく説明する。
【0023】
圧縮機構3は、内側ハウジング10を構成する第1内側ハウジング11の内周面11Bに固定された固定スクロール3Aと、固定スクロール3Aに対向配置された可動スクロール3Bとで構成されている。固定スクロール3Aと可動スクロール3Bとは、噛合して両者間に圧縮室3Cを形成している。第1内側ハウジング11内には、駆動軸5Aが収容されている。駆動軸5Aは、その先端部(図2の紙面右側)が先端側軸受装置5Bに回転可能に支持され、その後端部(図2の紙面左側)が後端側軸受装置5Cに回転可能に支持されている。
【0024】
モータ機構5は、圧縮機構3よりも第1内側ハウジング11の内底面11D側に配置されている。第1内側ハウジング11の内周面11Bにはステータ5Dが固定されている。ステータ5Dには、図示しない駆動回路から三相電流が供給されるようになっている。ステータ5Dの内側には駆動軸5Aに固定されたロータ5Eが設けられている。ロータ5Eは、ステータ5D内でステータ5Dに供給される電流によって回転駆動されるようになっている。駆動軸5A、ステータ5D及びロータ5Eによってモータ機構5が構成されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、モータ機構5が回転して圧縮機構3を作動させると、圧縮機構3は、吸入配管95を介して内側ハウジング10及び外側ハウジング20の外部から冷媒を吸入し、圧縮する。そして、圧縮機構3は、圧縮した冷媒を吐出配管96を介して内側ハウジング10及び外側ハウジング20の外部に吐出する。
【0026】
図1に示すように、方向切替弁91は、吸入配管95及び吐出配管96を介して、電動圧縮機1に接続されている。また、方向切替弁91は、配管97を介して外気用熱交換器92と接続されている。さらに、方向切替弁91は、配管99を介して車室用熱交換器94と接続されている。膨張弁93は、配管98Aを介して外気用熱交換器92と接続されている。また、膨張弁93は、配管98Bを介して車室用熱交換器94と接続されている。
【0027】
車両に搭載された図示しない制御部に制御されて、方向切替弁91が吐出配管96と配管97とを連通させ、吸入配管95と配管99とを連通させると、電動圧縮機1から吐出配管96を介して吐出される冷媒は、図1に示す方向D1に沿って流れる。その一方、方向切替弁91が吐出配管96と配管99とを連通させ、吸入配管95と配管97とを連通させると、電動圧縮機1から吐出配管96を介して吐出される冷媒は、図1に示す方向D2に沿って流れる。
【0028】
外気用熱交換器92、車室用熱交換器94及び膨張弁93は周知の構成であるので、図示及び説明は簡略する。外気用熱交換器92は、外気に対する放熱又は吸熱を行うものである。車室用熱交換器94は、車室内の空気に対する放熱又は吸熱を行うものである。
【0029】
次に電動圧縮機1の内側ハウジング10及び外側ハウジング20について詳しく説明する。
【0030】
図2に示すように、内側ハウジング10は、圧縮機構3及びモータ機構5を密閉状態で収容する密閉空間10Aを有している。内側ハウジング10は、一つの部材からなっていてもよいし、互いに組み合わされて密閉空間10Aを区画する複数の部材からなっていてもよい。本実施例では、内側ハウジング10は、後端側(図2の紙面左側)が開口する第1内側ハウジング11と、第1内側ハウジング11の後端側を閉塞する第2内側ハウジング12とからなり、圧縮機構3及びモータ機構5が並ぶ方向に長い略筒形状とされている。なお、内側ハウジング10は、圧縮機構3及びモータ機構5から発生する振動及び熱や、高温高圧となる冷媒等に対する耐久性を確保するため、鉄材やアルミ材等の金属材料製とすることが好ましい。
【0031】
圧縮機構3及びモータ機構5は、焼き嵌め、圧入、ボルト締結と言った周知の固定構造で密閉空間10A内に固定されている。このような固定構造は、高い剛性で圧縮機構3及びモータ機構5を固定する半面、圧縮機構3及びモータ機構5の振動及び騒音を減衰し難くなっている。その結果、圧縮機構3及びモータ機構5の振動及び騒音は、内側ハウジング10に伝達され易くなっている。また、圧縮機構3及びモータ機構5から伝達される熱も、内側ハウジング10に伝達し易くなっている。
【0032】
第1内側ハウジング11の内底面11Dには、吸入口15が貫設されている。そして、吸入口15には、外部配管としての吸入部材50が固定されている。密閉空間10A内において、吸入口15と圧縮機構3との間には、図示しない冷媒供給経路が設けられている。
【0033】
第1内側ハウジング11と第2内側ハウジング12との間には、吐出室3Dが区画形成されている。第2内側ハウジング12の内底面12Dには、吐出口16が貫設されている。そして、吐出口16には、外部配管としての吐出部材60が固定されている。
【0034】
吸入部材50及び吐出部材60は、周知の管継ぎ手である。吸入部材50には、吸入配管95が接続されている。吐出部材60には、吐出配管96が接続されている。
【0035】
外側ハウジング20は、圧縮機構3及びモータ機構5が並ぶ方向に長い筒形状とされており、その内部に内側ハウジング10を収容している。図3に示すように、外側ハウジング20は、第1ハウジング部材201及び第2ハウジング部材202からなっている。第1及び第2ハウジング部材201、202はそれぞれ半円筒形状とされており、互いに組み合わされることにより筒状の外側ハウジング20を構成する。図2に示すように、第1及び第2ハウジング部材201、202の内壁面20Bは、内側ハウジング10の外壁面10Cに密着可能な形状とされている。
【0036】
第1及び第2ハウジング部材201、202は、防振性及び断熱性を有する材料、例えば、樹脂、繊維強化樹脂等からなる。本実施例では、第1及び第2ハウジング部材201、202は樹脂からなる。
【0037】
図3に示すように、第1ハウジング部材201において、長手方向に延びる一方の辺には2個の第1取付部201A、201Bが凸設され、長手方向に延びる他方の辺には1個の結合部201Cが凸設されている。また、第2ハウジング部材202において、長手方向に延びる一方の辺には2個の第2取付部202A、202Bが凸設され、長手方向に延びる他方の辺には1個の結合部202Cが凸設されている。
【0038】
第1取付部201A、201B、第2取付部202A、202B及び結合部201C、202Cには、金属製の補強部29Bがインサート成形され、その補強部29Bに貫通穴29Aが貫設されている。第1及び第2ハウジング部材201、202が組み合わされると、第1取付部201Aと第2取付部202Aとが当接して、それぞれの貫通穴29Aが同軸で連通する。また、第1取付部201Bと第2取付部202Bとが当接して、それぞれの貫通穴29Aが同軸で連通する。また、結合部201Cと結合部202Cとが当接して、それぞれの貫通穴29Aが同軸で連通する。
【0039】
図2に示すように、電動圧縮機1が取り付けられる車両のフレームやエンジン等の対象物9には、リブ状の係合部8が凸設されている。図3に示すように、係合部8には、2つのネジ穴8A、8Bが形成されている。
【0040】
内側ハウジング10を挟むように第1及び第2ハウジング部材201、202を組み合わせた状態で、ボルト89Aを第1及び第2取付部201A、202Aの貫通穴29Aに挿入し、その先端を係合部8のネジ穴8Aに螺入させる。また、ボルト89Bを第1及び第2取付部201B、202Bの貫通穴29Aに挿入し、その先端を係合部8のネジ穴8Bに螺入させる。さらに、ボルト89Cを結合部201C、202Cの貫通穴29Aに挿入し、その先端を図示しないナットに螺入させる。これにより、第1及び第2ハウジング部材201、202が強固に結合されるとともに、電動圧縮機1が対象物9に固定される。この際、図2に示すように、外側ハウジング20は、内側ハウジング10を内包することができる。また、第1及び第2ハウジング部材201、202の内壁面20Bが内側ハウジング10の外壁面10Cに密着することによって、外側ハウジング20は、内側ハウジング10を支持することができる。ボルト89A、89B、89Cは、本発明の締結手段の一例である。
【0041】
外側ハウジング20が内側ハウジング10を収容した状態では、吸入部材50及び吐出部材60は、外側ハウジング20の長手方向の開放された両端から、それぞれ外部に突出している。吸入部材50及び吐出部材60は、外側ハウジング20と非接触状態とされている。
【0042】
このような構成である実施例1の電動圧縮機1が適用された空調装置は、以下のように、車室内の温度調整を行う。
【0043】
図1に示すように、車室内の冷房を行う場合、方向切替弁91は、吐出配管96と配管97とを連通させ、吸入配管95と配管99とを連通させる。そうすると、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒は、方向D1に沿って流れて、外気用熱交換器92において外気に対して放熱して液化する。そして、冷媒は、膨張弁93において圧力が下げられる。その後、冷媒は、車室用熱交換器94において車室内の空気に対して吸熱して蒸発する。その結果、車室内の空気が冷却される。そして、冷媒は、配管99、方向切替弁91及び吸入配管95を介して、電動圧縮機1に戻される。
【0044】
その一方、車室内の暖房を行う場合、方向切替弁91は、吐出配管96と配管99とを連通させ、吸入配管95と配管97とを連通させる。そうすると、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒は、方向D2に沿って流れて、車室用熱交換器94において車室内の空気に対して放熱して液化する。その結果、車室内の空気が加熱される。その後、冷媒は、膨張弁93において圧力が下げられる。そして、冷媒は、車外気用熱交換器92において外気に対して吸熱して蒸発する。その後、冷媒は、配管97、方向切替弁91及び吸入配管95を介して、電動圧縮機1に戻される。
【0045】
ここで、実施例1の電動圧縮機1において、圧縮機構3及びモータ機構5は、内側ハウジング10に対して高い剛性で固定されている。このため、仮に、内側ハウジング10と対象物9との間で振動及び騒音の伝達を抑制することができない場合、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が内側ハウジング10及び外側ハウジング20を介して、対象物9まであまり減衰することなく伝達され、ひいては車室内環境の快適性が阻害され易くなる。また、仮に、内側ハウジング10と対象物9との間で熱の伝達を抑制することができない場合、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が対象物9に奪われてしまう。
【0046】
この点、実施例1の電動圧縮機1では、圧縮機構3及びモータ機構5が内側ハウジング10に密閉状態で収容されている。そして、防振性及び断熱性を有する樹脂からなる外側ハウジング20が組み合わされることによって、外側ハウジング20が内側ハウジング10を内包でき、かつ外側ハウジング20が内側ハウジング10を支持できる。このため、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20が防振性を有して内側ハウジング10を支持することにより、内側ハウジング10から外側ハウジング20に伝達される振動を減衰させることができる。また、この電動圧縮機1では、吸入部材50と吐出部材60とが外側ハウジング20と非接触状態で内側ハウジング10に固定されている。このため、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20と、吸入部材50及び吐出部材60との間においても、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が伝達しない。その結果、この電動圧縮機1は、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が内側ハウジング10から対象物9に伝達されることを抑制できる。
【0047】
また、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20が断熱性を有して熱を移動し難いものであるため、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジング10から外側ハウジング20及び対象物9に放熱され難い。このため、この電動圧縮機1は、吸入される冷媒及び吐出される冷媒の熱量が低下し難い。このため、この電動圧縮機1は、図1に示すように、冷媒を方向D2に沿って流すことにより、ヒートポンプとして車室内の暖房に用いた場合でも、車室用熱交換器94に流れる冷媒の温度を高くすることができる。その結果、車室用熱交換器94において車室内の空気に対してより効果的に放熱することができ、十分な暖房能力を発揮することができる。
【0048】
したがって、実施例1の電動圧縮機1は、振動及び騒音が外部に伝達し難いとともに、ヒートポンプとして用いた場合に十分な暖房能力を発揮することができる。
【0049】
また、外側ハウジング20は、ボルト89Aが第1取付部201A、第2取付部202A及びネジ穴8A(対象物9)に挿入され、ボルト89Bが第1取付部201B、第2取付部202B及びネジ穴8B(対象物9)に挿入され、結合部201C、202Cにボルト89Cが挿入されることにより、内側ハウジング10を内包でき、かつ対象物9に固定される。このため、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20に内側ハウジング10を内包させる組み付け作業と、外側ハウジング20を対象物9に固定する組み付け作業とを同時に行うことができるので、組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0050】
さらに、外側ハウジング20は、第1取付部201A、202Aを有する第1ハウジング部材201と、第2取付部202A、202Aを有する第2ハウジング部材202とからなっている。このような具体的構成により、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20を簡素化できる。
【0051】
また、この電動圧縮機1は、外側ハウジング20が簡素な筒状であるので、製造コストの低廉化を実現できる。また、内側ハウジング10を外側ハウジング20に容易に収容させることができるので、組み付け作業の簡素化も実現できる。
【0052】
さらに、この電動圧縮機1は、第1及び第2ハウジング部材201、202が樹脂製であることにより、外側ハウジング20が防振性及び断熱性を発揮し易くなるので、本発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0053】
また、取付部29は、金属製の補強部29Bにより補強されている。このため、この電動圧縮機1は、対象物9に取り付けられた外側ハウジング20に作用する力によって取付部29が破損することを確実に防止できる。
【0054】
(実施例2)
図4に示すように、実施例2の電動圧縮機では、実施例1における外側ハウジング20の代わりに、外側ハウジング21を採用している。その他の構成は、実施例1の電動圧縮機1と同様である。このため、実施例1の電動圧縮機1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0055】
外側ハウジング21は、第1ハウジング部材211及び第2ハウジング部材212からなっている。第1及び第2ハウジング部材211、212は、実施例1における第1及び第2ハウジング部材201、202の長手方向の両端に略半円形状の壁部213を追加したものである。壁部213には、吸入部材50及び吐出部材60と接触しないように切り欠き214が形成されている。第1及び第2ハウジング部材211、212が互いに組み合わされることにより、容器形状である外側ハウジング21が構成される。
【0056】
上記構成である実施例2の電動圧縮機では、容器形状である外側ハウジング21が内側ハウジング10全体を内包し、防振性及び断熱性を確実に発揮できる。その結果、この電動圧縮機は、本発明の作用効果をより確実に奏することができる。
【0057】
(実施例3)
図5に示すように、実施例3の電動圧縮機では、実施例1における外側ハウジング20の代わりに、外側ハウジング22を採用している。その他の構成は、実施例1の電動圧縮機1と同様である。このため、実施例1の電動圧縮機1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0058】
外側ハウジング22は、ハウジング部221、222と、双方を連結するヒンジ部223とが一体成形されたものである。
【0059】
ハウジング部221は、実施例1における第1ハウジング部材201から結合部201Cを除いた形状とされている。ハウジング部222は、実施例1における第2ハウジング部材202から結合部202Cを除いた形状とされている。ヒンジ部223は、ハウジング部221において取付部201A、201Bと反対側で長手方向に延びる辺と、ハウジング部222において取付部202A、202Bと反対側で長手方向に延びる辺とを接続している。ヒンジ部223が変形して、ハウジング部221とハウジング部222とが当接することにより、筒状の外側ハウジング22が構成される。
【0060】
上記構成である実施例3の電動圧縮機は、実施例1の電動圧縮機1と同様の作用効果を奏することができる。また、この電動圧縮機は、結合部201C、202C及びボルト89Cを省略したことにより、部品点数の削減や組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0061】
(実施例4)
図6に示すように、実施例4の電動圧縮機2では、実施例1における外側ハウジング20の代わりに、外側ハウジング23を採用し、内側ハウジング10と外側ハウジング23との間に中間材31、32を設けている。その他の構成は、実施例1の電動圧縮機1と同様である。このため、実施例1の電動圧縮機1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0062】
外側ハウジング23は、密着部231と、離間部232とを有する。密着部231は、外側ハウジング23の長手方向の両端側で内側ハウジング10の外壁面10Cと密着している。離間部232は、長手方向の一端側の密着部231と他端側の密着部231との間で、内側ハウジング10の外壁面10Cから離間して、隙間を形成している。
【0063】
中間材31、32は、離間部232と、内側ハウジング10の外壁面10Cとの隙間に設けられている。
【0064】
中間材31と中間材32とは異なる材料からなっている。すなわち、中間材31は、防振性を有する材料、例えば、ゴム、エラストマー、樹脂、繊維強化樹脂、シリコンゲル等からなる。本実施例では、中間材31はゴム製の環状体、いわゆるOリングである。中間材31は、離間部232における長手方向の一端側と他端側とに配設されている。中間材31は、離間部232と、内側ハウジング10の外壁面10Cとの隙間に圧縮変形した状態で装着されている。
【0065】
その一方、中間材32は、断熱性を有する材料、例えば、グラスウール等の繊維集合体、発泡材、セルロースファイバー、真空断熱材等からなる。本実施例では、中間材32はグラスウール製の肉厚シート状体である。中間材32は、内側ハウジング10の外壁面10Cに巻き付けられて、離間部232と、内側ハウジング10の外壁面10Cとの隙間に充填されている。
【0066】
上記構成である実施例4の電動圧縮機2は、中間材31が防振性を有することにより、圧縮機構3及びモータ機構5からの振動及び騒音が内側ハウジング10から対象物9に伝達することを一層抑制できる。また、この電動圧縮機1は、中間材32が断熱性を有することにより、中間材32が熱を移動し難いものであるため、圧縮機構3により圧縮されて高温高圧となった冷媒の熱が内側ハウジング10から対象物9に一層放熱され難い。その結果、この電動圧縮機2は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0067】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0068】
例えば、実施例4において、外側ハウジング23は密着部231と離間部232とを有していたが、密着部231を削除し、外側ハウジング23は中間材31、32を介して内側ハウジング10を内包してもよい。
【0069】
また、実施例4において、中間材31、32の代わりに、防振性及び断熱性を有する単一部材による中間材を用いていてもよい。また、中間材として、防振性又は断熱性のどちらか一方のみを有していてもよい。
【0070】
圧縮機構3は、スクロール式に限らず、往復式、ベーン式その他の周知の圧縮方式を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は車両等の空調に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、2…電動圧縮機
3…圧縮機構
5…モータ機構
10…内側ハウジング
201A、201B、202A、202B…取付部(201A、201B…第1取付部、202A、202B…第2取付部)
20、21、22、23…外側ハウジング
89A、89B、89C…締結手段(ボルト)
9…対象物
31、32…中間材
15…吸入口
16…吐出口
50、60…外部配管(50…吸入部材、60…吐出部材)
201、211…第1ハウジング部材
202、212…第2ハウジング部材
29B…補強部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、前記圧縮機構を作動させるモータ機構とを備えた電動圧縮機において、
前記圧縮機構及び前記モータ機構を密閉状態で収容する内側ハウジングと、前記内側ハウジングを収容し、締結手段によって対象物に固定される取付部が形成された外側ハウジングとを有し、
前記内側ハウジングには、前記圧縮機構に前記冷媒が吸入される吸入口及び前記圧縮機構から前記冷媒が吐出される吐出口が形成され、前記吸入口及び前記吐出口に接続される外部配管が固定され、
前記外側ハウジングは、防振性及び断熱性を有する材料からなり、組み合わされることによって前記内側ハウジングを内包可能、かつ前記外部配管と非接触状態であることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記取付部は、第1取付部と第2取付部とからなり、
前記外側ハウジングは、前記締結手段が前記第1取付部、前記第2取付部及び前記対象物に挿入されることにより、前記内側ハウジングを内包可能、かつ前記対象物に固定される請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記外側ハウジングは、前記第1取付部を有する第1ハウジング部材と、前記第2取付部を有する第2ハウジング部材とからなる請求項2記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとの間には、防振性及び/又は断熱性を有する中間材が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記外側ハウジングは筒状である請求項1乃至4のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記外側ハウジングは容器形状である請求項1乃至4のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記外側ハウジングは、樹脂又は繊維強化樹脂製である請求項1乃至6のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記外側ハウジングは、前記取付部に金属製の補強部を有する請求項7記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19300(P2013−19300A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152559(P2011−152559)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】