説明

電動塵芥収集車

【課題】電動塵芥収集車の空いたスペースを有効に利用すると共に、容易に蓄電装置を点検できるようにする。
【解決手段】塵芥収容箱が載置されるフレーム21上の一対のフレーム本体22間に電気二重層キャパシタ44(蓄電装置)が取り付けられる蓄電装置取付ブラケット30を設け、塵芥収容箱の底板に、電気二重層キャパシタ44を上方から点検するための点検用開口34を形成し、点検用開口34を点検用蓋35で開閉可能に覆う。塵芥収容箱の内部を前後にスライド移動する排出板が最前位置にあるときに点検用蓋35が排出板の傾斜部の下方に位置するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥積込装置を電力で駆動させる電動塵芥収集車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、騒音や排気ガスの発生を防ぐために、蓄電池から供給される電力で塵芥積込装置を駆動する電動塵芥収集車は知られている(例えば、特許文献1参照)。この電動塵芥収集車では、収容箱に蓄電池を上下に重ねて収納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−170580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電動塵芥収集車では、インバータなどの電気機器、塵芥積込装置を駆動させる動力を発生させる油圧ポンプ、この油圧ポンプを駆動する電動機等を狭いスペースに配置しなければならない。すると、蓄電装置の収容場所が制限されて十分な数の蓄電装置を配置できないので、エンジンを停止させて蓄電装置のみで駆動できる時間が限られてしまう。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動塵芥収集車の空いたスペースを有効に利用すると共に、容易に蓄電装置を点検できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、塵芥収容箱下方のフレームの空いたスペースに蓄電装置を配置した。
【0007】
具体的には、第1の発明では、
前後方向に延びる一対のフレーム本体を有するフレームと、該フレーム上に載置される塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の内部を前後にスライド移動する排出板と、該塵芥収容箱の後方の塵芥投入箱と、該塵芥投入箱に配置された塵芥積込装置と、該塵芥積込装置を駆動する動力を供給する電動機と、該電動機に電力を供給する蓄電装置とを備えた電動塵芥収集車であって、
上記排出板は、下方に向かい後方へ傾斜する傾斜部を有し、
上記一対のフレーム本体間は、上記蓄電装置が取り付けられる蓄電装置取付ブラケットが設けられ、
上記塵芥収容箱の底板には、上記蓄電装置を上方から点検するための点検用開口が形成され、
上記点検用開口は、点検用蓋で開閉可能に覆われており、
上記排出板が最前位置にあるときに上記点検用蓋が上記排出板の傾斜部の下方に位置する。
【0008】
上記の構成によると、塵芥収容箱下方の一対のフレーム本体間の空いたスペースに蓄電装置を配置できるので、充電容量を増やすことができる。そして、塵芥収容箱内を前後に移動する排出板の傾斜部の下方に点検用蓋を設けているので、傾斜部の下端が点検用蓋に接触せず、また、排出板を後方にずらして点検用蓋を開けることで、上方から蓄電装置を点検することができるので、点検作業が容易である。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
上記点検用開口と、上記点検用蓋との間には、防水用パッキンが狭持されると共に、上記蓄電装置は、防水シートで覆われている。
【0010】
上記の構成によると、点検用蓋と点検用開口との間の防水用パッキンにより、塵芥収容箱内の水分が蓄電装置側に流れ込まない。しかも、蓄電装置は防水シートで覆われているので、水分による漏電が防止される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、一対のフレーム本体間に蓄電装置を設け、塵芥収容箱の底板の点検用開口を点検用蓋で覆い、その上を排出板がスライド移動するようにしたことにより、電動塵芥収集車の空いたスペースを有効に利用することができると共に、容易に蓄電装置を点検することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態にかかる電動塵芥収集車における、電気二重層キャパシタ及びその周辺を一部破断した示す拡大側面図である。
【図2】電動塵芥収集車を示す側面図である。
【図3】塵芥積込装置を示す拡大側面図である。
【図4】塵芥収集車の駆動系統を示すブロック図である。
【図5】塵芥収集車の油圧回路図である。
【図6】電気二重層キャパシタ及びその周辺を拡大して示す平面図である。
【図7】図1のVII−VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
−電動塵芥収集車の構造−
図2及び図3は本発明の実施形態にかかる電動塵芥収集車1を示し、この電動塵芥収集車1の車体2上のフレーム21に塵芥収容箱3が設けられている。車体2の前方には、運転台2aが設けられている。塵芥収容箱3の後方開口部4には、その上方で投入箱支持ピン5により軸支された塵芥投入箱6が設けられている。この塵芥投入箱6は、塵芥収容箱3と塵芥投入箱6との間に設けられた回動シリンダ9(図2に二点鎖線で示す)により、投入箱支持ピン5を中心に回動自在に構成されている。
【0015】
塵芥投入箱6の後部には投入口7が開口され、その内部には塵芥積込装置20が装備されている。塵芥積込装置20は、塵芥投入箱6内に投入口7を通じて投入された塵芥55を圧縮して塵芥収容箱3内に積込むためのものである。
【0016】
具体的には、図3に示すように、塵芥投入箱6の両側壁には案内溝部材8が補強枠を兼ねて前方上部より後方下部に向かって敷設されている。左右の案内溝部材8間にはその横幅一杯に広がる摺動板10が摺動自在に収容されている。塵芥投入箱6の側壁から外側に突出する、摺動板10を支持する摺動板支持軸12と塵芥投入箱6の下部間には、塵芥投入箱6の外側で案内溝部材8の傾斜方向に沿って設けられた摺動シリンダ13が連結されている。図2に示すように、摺動シリンダ13は、側壁とサイドカバー6aとの間に設けられている。この摺動シリンダ13の伸縮作動によって摺動板10を案内溝部材8に沿って上下に往復移動させるようにしている。摺動板10の下端には、塵芥投入箱6の横幅一杯に広がる圧縮板15が前後に揺動自在に支持されている。圧縮板15の背面に突設した接続部15aと上記摺動板10の背面上部に設けられた摺動板支持軸12との間には、揺動シリンダ14が連結され、この揺動シリンダ14の伸縮作動によって上記圧縮板15を前後に揺動させるようにしている。
【0017】
図2に一部破断して示すように、塵芥収容箱3の内部には、塵芥収容箱3内の塵芥を排出する排出装置18が設けられている。具体的には、塵芥収容箱3内には排出板17が前後方向に摺動自在に配設されている。排出板17は、塵芥収容箱3の横幅及び上下高さと略同じ大きさに形成された側面視で湾曲した板状体であり、上下中間から下方に向かい後方へ傾斜する傾斜部17aを有する。例えば、傾斜部17aの下端は合成樹脂板が設けられ、塵芥収容箱3の底板3aの表面の塵芥等を掻き出すようになっている。排出板17は、前方から連結された排出シリンダ16の伸縮動作により塵芥収容箱3内を前後に摺動するようになっている。
【0018】
運転台2aと塵芥収容箱3との間の車体2上には、直方体状の電装品収容箱25が設けられている。この電装品収容箱25には、インバータ45、電動機としての電動モータ46、後述する発電機42の電圧を調整する自動電圧調整器43等が収容されている。
【0019】
図4に示すように、電動塵芥収集車1は、車両エンジン40に駆動されるトランスミッション41を備えている。さらに電動塵芥収集車1は、車両エンジン40に駆動される発電機42を備えている。この発電機42で得られた電力は、上記電装品収容箱25に収容した自動電圧調整器43を経て電気二重層キャパシタ44又はインバータ45に電力を供給可能に構成されている。詳しくは説明しないが、この電動塵芥収集車1は、制動時等の動力で発電機42を駆動して電気二重層キャパシタ44に蓄電する、いわゆる制動回生を行えるようになっている。そして、発電機42又は電気二重層キャパシタ44からの電力がインバータ45で調整され、電動モータ46に供給されるように構成されている。
【0020】
図5に油圧機器60の油圧回路61を示す。油圧機器60は、電動モータ46に駆動される油圧ポンプ47を備えている。また、例えば電装品収容箱25の下方且つ後方には、油圧ポンプ47に流通する作動油が貯留される作動油タンク62が設けられている。作動油タンク62と油圧ポンプ47とは、油圧配管64で接続されている。作動油タンク62内の作動油は、油圧配管64を通して油圧ポンプ47で吸い上げられて供給側の油圧配管61aに流通されてコントロールバルブ63に供給されるように構成されている。各シリンダ9,13,14,16は、油圧配管61bを介してコントロールバルブ63に接続されている。このことで、制御装置48から送られてきた信号により、コントロールバルブ63を介して各シリンダ9,13,14,16の伸縮動作の切換が制御され、又は運転が停止されるようになっている。
【0021】
このように構成することで、塵芥積込装置20は、電動モータ46に駆動された油圧ポンプ47による高圧油を利用して摺動シリンダ13及び揺動シリンダ14の伸縮動作により摺動板10と圧縮板15とが反転、下降、圧縮及び上昇を1サイクルとして作動することで、投入口7を通じて塵芥投入箱6に投入された塵芥55を塵芥収容箱3に積込むように構成されている。
【0022】
そして、図1、図6及び図7に示すように、本実施形態では、蓄電装置としての電気二重層キャパシタ44は、フレーム21を構成する前後に延びる一対のフレーム本体22間に搭載されている。具体的には、一対のフレーム本体22間には、これら一対のフレーム本体22をつなぐ蓄電装置取付ブラケット30が設けられている。この蓄電装置取付ブラケット30は、一対のフレーム本体22の下板22aをつなぐ、例えば5本の左右支持部31と、これら5本の左右支持部31上に固定される4本の前後支持部32とを備えている。これら左右支持部31及び前後支持部33は、いずれも山形鋼で構成され、その断面形状や本数は特に限定されない。また、取付ブラケット30の下面には、ケース底板38が敷設されており、下方から雨水を巻き上げた際でも電気二重層キャパシタ44に水滴が付かないようにしている。例えば、図7に示すように、左右支持部31が下板22a等に溶接され、この左右支持部31に前後支持部32が第1ボルト71で締結されている。この前後支持部32に各電気二重層キャパシタ44が第2ボルト72で締結されている。
【0023】
一方、図6に示すように、塵芥収容箱3の底板3aには、電気二重層キャパシタ44を点検するための略矩形の点検用開口34が形成されている。この点検用開口34は、鋼板等よりなる矩形状の点検用蓋35が第3ボルト73で締結されることで、開閉可能に覆われている。なお、図6では、見やすくするために点検用蓋35を省略している。この点検用蓋35は、図2に示すように、排出板17が最前位置にあるときに排出板17の傾斜部17aの下方に位置するように構成されている。
【0024】
そして、点検用開口34と点検用蓋35との間には、矩形枠状のゴム等よりなる防水用パッキン36が狭持されている。また、4つの電気二重層キャパシタ44は、上方から耐熱性のある樹脂製シート等よりなる防水シート37で覆われている。
【0025】
−電気二重層キャパシタの点検方法−
電気二重層キャパシタ44を点検するには、まず、排出板17を後方へ移動させる。
【0026】
次いで、電動塵芥収集車1を完全に停止させる。
【0027】
次いで、図示しない塵芥収容箱3前方の検査用ドアを開いて塵芥収容箱3内に入る。
【0028】
次いで、点検用蓋35を閉じる第3ボルト73を全て外し、点検用蓋35を取り外す。すると、点検用開口34を上方から見ることができるので、この点検用開口34から、防水シート37を外して電気二重層キャパシタ44の点検、交換等を上方から行う。
【0029】
点検後は、再び点検用蓋35を閉じる。このように、電気二重層キャパシタ44の点検、交換等を極めて容易に行うことができる。
【0030】
この閉じられた点検用蓋35の上までは傾斜部17aの下端が移動してこないので、点検用蓋35のためにボルトなど凹凸があっても排出装置18の作動に悪影響を与えることがない。
【0031】
したがって、実施形態1にかかる電動塵芥収集車1によると、電動塵芥収集車1の空いたスペースを有効に利用することができると共に、容易に電気二重層キャパシタ44を点検することができる。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、塵芥積込装置20を圧縮式のものとしたが、回転板の回転動作と押込板の揺動動作との協動によって塵芥投入箱6に投入された塵芥55を圧縮して塵芥収容箱3に積込む回転式の塵芥積込装置としてもよい。この場合にも油圧ポンプ47からの高圧の作動油により、各油圧駆動部を駆動するようにすればよい。
【0034】
上記実施形態では、蓄電装置を電気二重層キャパシタとしたが、これに限定されず、鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル・水素蓄電池等でもよい。
【0035】
上記実施形態では、電力を供給する手段を発電機42としたが、外部電力51(図4に示す)などの電源も使用してもよい。また、上記実施形態では、電動塵芥収集車1は、回生制動可能としているが、必ずしも回生制動は必要ではなく、その場合には、電気二重層キャパシタ44は、発電機42又は外部電力51により充電すればよい。
【0036】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 電動塵芥収集車
3 塵芥収容箱
3a 底板
17 排出板
17a 傾斜部
20 塵芥積込装置
21 フレーム
22 フレーム本体
22a 下板
30 蓄電装置取付ブラケット
34 点検用開口
35 点検用蓋
36 防水用パッキン
37 防水シート
44 電気二重層キャパシタ(蓄電装置)
46 電動モータ(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる一対のフレーム本体を有するフレームと、該フレーム上に載置される塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の内部を前後にスライド移動する排出板と、該塵芥収容箱の後方の塵芥投入箱と、該塵芥投入箱に配置された塵芥積込装置と、該塵芥積込装置を駆動する動力を供給する電動機と、該電動機に電力を供給する蓄電装置とを備えた電動塵芥収集車であって、
上記排出板は、下方に向かい後方へ傾斜する傾斜部を有し、
上記一対のフレーム本体間は、上記蓄電装置が取り付けられる蓄電装置取付ブラケットが設けられ、
上記塵芥収容箱の底板には、上記蓄電装置を上方から点検するための点検用開口が形成され、
上記点検用開口は、点検用蓋で開閉可能に覆われており、
上記排出板が最前位置にあるときに上記点検用蓋が上記排出板の傾斜部の下方に位置する
ことを特徴とする電動塵芥収集車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動塵芥収集車において、
上記点検用開口と、上記点検用蓋との間には、防水用パッキンが狭持されると共に、上記蓄電装置は、防水シートで覆われている
ことを特徴とする電動塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−76860(P2012−76860A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222334(P2010−222334)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】