電動工具用スイッチ
【課題】直感的な操作によって電動工具を細かく速度制御できる電動工具用スイッチを提供する。
【解決手段】電動工具用スイッチ1は、両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板21と、回路基板に押圧され、操作部材と共に回動して、回路基板21に摺接する摺動子18と、操作部材の中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構24,25とを有し、回路基板21は、摺動子18が摺接することで回路を閉じ、摺動子18の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されている。
【解決手段】電動工具用スイッチ1は、両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板21と、回路基板に押圧され、操作部材と共に回動して、回路基板21に摺接する摺動子18と、操作部材の中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構24,25とを有し、回路基板21は、摺動子18が摺接することで回路を閉じ、摺動子18の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具用スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電道工具用の調速機能を有するスイッチとしては、電動工具のグリップに向かって引き込まれるトリガを有するトリガスイッチが用いられている。トリガスイッチは、バッテリとモータとの間に介設され、トリガの引き込み量に応じた通電比の電圧を出力することで、モータの回転速度を調節する。
【0003】
トリガスイッチは、通常、トリガと共に移動する摺動子が回路基板上に形成した印刷抵抗に摺接する可変抵抗を有し、トリガの引き込み量に応じて可変抵抗の抵抗値を変化させることで、スイッチング素子の導通時間比を変化させてモータへの出力を調節する。
【0004】
また、モータを逆転運転可能とするトリガスイッチは、出力の極性を反転させるための切換スイッチを有している。特許文献1には、モータ正転時と反転時とで、トリガの引き込み量に対するモータ回転速度を異ならせるために、トリガの引き込み量に応じて抵抗値が異なる変化をする2つの回路を並列に設け、出力の極性を反転させる切換スイッチによって、一方の回路だけを接続するようにした発明が記載されている。
【特許文献1】特許第3768400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリガスイッチを用いた電動工具を使用する際、ユーザはトリガの引き込み量を感覚的に把握するが、微細な引き込み量の違いを認識することは難しく、大まかな速度制御しかできないという問題があった。
【0006】
また、切換スイッチの操作のために、工具を持ち替えたり、一度ワークから手を離す必要が生じて、作業が中断される場合もあった。
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、直感的な操作によって電動工具を細かく速度制御できる電動工具用スイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による電動工具用スイッチは、両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、前記操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板と、前記回路基板に押圧され、前記操作部材と共に回動して、前記回路基板に摺接する摺動子と、前記操作部材の前記中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構とを有し、前記回路基板は、前記摺動子が摺接することで回路を閉じ、前記摺動子の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、前記操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されているものとする。
【0009】
この構成によれば、ユーザは、操作部材を回動させるので、その操作量を直感的に把握しやすく、操作量に応じた出力を細かく調節できる。また、操作部材の回動方向によって工具の回転方向が変わるので、工具の逆転のために余分なスイッチ操作が不要であり、作業を連続して行える。
【0010】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記2組の可変抵抗回路は、前記操作部材の回動角度に対する抵抗値の変化が互いに異なってもよい。
【0011】
この構成によれば、工具の正転時と逆転時とで速度変化特性を異ならしめ、それぞれの回転方向について工具を最も扱い易くするような速度変化特性を持たせることができる。
【0012】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記反転機構は、前記中立位置からずれた位置で極性を入れ替え、前記中立位置において前記出力端子間を短絡させてもよい。
【0013】
この構成によれば、中立位置においてモータの端子間を短絡することで、惰性によるモータの回転を停止させる短絡ブレーキの機能を発揮できる。
【0014】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記操作部材は、略円筒形に形成され、且つ、電動工具に固定されるスイッチ本体の外周に操作可能に配設されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、略円筒形の外形を有することで、ダイアルを回すような、ユーザが操作量を直感的に把握できる操作性を提供できる。また、操作部材の内部に他の構成要素を配置することで、スイッチが回動軸方向に長くならない。
【0016】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記スイッチ本体の内部で、前記操作部材と共に前記回動軸周りに回動する作用部と、前記スイッチ本体の内壁から内向きに突出する係止部と、中央部が前記回動軸の周りに保持され、両端が前記作用部および前記係止部を挟み込むように延伸し、前記作用部を前記係止部および前記回動軸と直列させるように回動付勢する付勢バネとを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、付勢バネがスイッチ本体を貫通しないので、スイッチ本体の強度を損なわず、操作部材の十分な回動角度を確保できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回動可能な操作部材の回動方向および回動角度に応じてドリル等の工具を回転させることができるので、ユーザが工具の回転方向および回転速度を直感的に把握でき、細やかな制御ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の1つの実施形態のスイッチ1を備える電動工具2を示す。電動工具2は、先端にドリルやドライバビット、グラインダビットのような先端工具を把持して回転可能なチャック3を有し、チャック3の回転軸と略同軸の略円筒形をなし、スイッチ1を内蔵する工具本体4と、工具本体4の後端から下方、後斜めに延伸し、ユーザが把持するためのグリップ5とからなる。
【0020】
スイッチ1は、グリップ5の近傍に配設されている。また、スイッチ1は、工具本体4の両側に設けたスイッチ開口6からそれぞれ突出する操作突部7を有する。これにより、ユーザは、グリップ5を把持した手の親指や人差し指を操作突部7に伸ばして、スイッチ1を操作できるようになっている。
【0021】
工具本体4は、チャック3の回転軸に直結した不図示のモータを収容し、スイッチ1の上部に係止スイッチ8が配設され、チャック3の下方にLEDを収容した発光部9を有する。グリップ5は、バッテリ10を着脱可能に装着できる。
【0022】
図2に示すように、電動工具2は、グリップ5を揺動させて、後部本体4と一直線に配置することもできる。
【0023】
図3および4に、スイッチ1の詳細を示す。スイッチ1は、工具本体4に固定されるスイッチ本体11と、スイッチ本体11の周りで両方向にそれぞれ約30°回動可能であり、略円筒形をなし、且つ、外周面に操作突部7が形成された操作部材12とを有する。
【0024】
スイッチ本体11は、バッテリ10の両電極に接続される入力端子13,14と、モータの両電極に接続される出力端子15,16とを有する。スイッチ10は、操作部材12の回動軸がチャック3の回転軸と同軸になるように、工具本体4に取り付けられる。
【0025】
図5に、スイッチ1の分解斜視図を示す。操作部材12には、略円筒形のスイッチ本体11の内部に、操作部材12の回動軸と同軸に延伸する軸部材17が接続されており、軸部材17は、操作部材12と共に回動する。図6にさらに詳しく示すように、軸部材17には、金属板を折り曲げてなる2つの摺動子18,19を保持する保持部材20が取り付けられる。摺動子18,19は、操作部材12の回動軸に直交するようにスイッチ本体11に対して固定される回路基板21に摺接する。
【0026】
また、図7に詳しく示すように、スイッチ1は、出力端子15,16を有する電路部材22,23にそれぞれ揺動可能に支持された可動接点24,25を有する。可動接点24,25は、それぞれ、入力端子13を有する電路部材26に設けられた固定接点27,28、または、モータへの出力をスイッチングするためのFET29のドレン端子が接続される電路部材30にそれぞれ設けられた固定接点31,32のいずれかに当接する。軸部材17には、可動接点24,25を駆動するためにバネ付勢された駆動部材33,34を有する。
【0027】
また、図5に示すように、スイッチ1は、モータの逆起電力がFET29に印加されないようにする保護ダイオード35を有する。さらに、スイッチ1は、軸部材17を介して操作部材12の角度を、操作突部7が水平になる中立位置に自己復帰するように付勢する付勢バネ36を有する。
【0028】
図8に示すように、付勢バネ36は、中央部が軸部材17の周りに巻回されることによって保持され、両端がスイッチ本体11の内壁から内向きに突出した係止部37を両側から挟み込むようになっている。また、付勢バネ36は、軸部材17とスイッチ本体11との間に位置するように軸部材17に係合し、軸部材17と共に回動する作用部38をも挟み込む。また、駆動部材33,34は、固定接点31,32側にオフセットして設けられており、中立位置において、可動接点24,25をFET29のドレンに接続するようになっている。つまり、電動工具2のモータは、操作部材12が中立位置にあるとき、両端子が短絡された状態になる。
【0029】
図9に示すように、作用部38は、軸部材17および操作部材12と共に操作部材12の回動軸を中心に回動するので、ユーザが操作部材12を回動させると係止部37に対して回動し、付勢バネ36の一端を他端から離間させるように弾性変形させる。付勢バネ36は、この弾性力によって、作用部38を軸部材17の径方向に係止部37と直列するように回動させ、操作部材12を中立位置に復帰させる。
【0030】
また、操作部材12をグリップ5から見て右(図8,9では反時計回り)に回動すると、駆動部材33,34が図9に示すように回動して、可動接点24を、入力端子13を介してバッテリ10に接続される固定接点27に当接させる。逆に、操作部材12を左に回動すると、可動接点25が固定接点28に接触する。
【0031】
図10に、電動工具2の回路図を示す。一点鎖線で示す範囲がスイッチ1の回路であり、二点鎖線で示す範囲が回路基板21上に形成された回路である。バッテリ10およびモータは、上述の入力端子13,14および出力端子15,16に接続されるが、発光部9のLEDは、回路基板21の回路上に一端がハンダ付けされ、他端がスイッチ1の外側に引き出される一対のリード線(図4等には不図示)を介して接続される。
【0032】
回路基板21上の回路は、FET29のゲート電圧を周期的に増減し、そのゲート電圧を制御することによって、モータに対して電圧を出力する時間の比を可変する調速回路である。回路基板21には、図11に示すように、接触子18,19に接触する電極および印刷抵抗が形成されている。接触子18は、FET29の通電時間比を決定する抵抗値を定める基準抵抗回路の一部をなし、接触子19は、調速回路とバッテリ10とを接続または遮断する制御電源スイッチの一部をなす。接触子18,19は、それぞれ、2本一対で、2対のブラシ対を有する。接触子18,19は、各ブラシ対の回路基板21に対する当接位置が、操作部材12の回動軸を挟んで径方向に直列し、且つ、操作部材12が中立位置にあるとき水平に並ぶように、保持部材20に保持される。
【0033】
図12に、回路基板21の電極および印刷抵抗の配置を示す。接触子18の一方のブラシ対には、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRのいずれかが当接し、接触子18の他方のブラシ対には、電極OF,EF,OU,ER,ORのいずれかが当接する。つまり、接触子18は、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRのいずれかと、電極OF,EF,OU,ER,ORのいずれかとを接続する。
【0034】
接触子19の一方のブラシ対は、電極KIFまたはKIRと当接し、他方のブラシ対は、電極KAFまたはKARと当接する。電極KIFと電極KAF、並びに、電極KIRと電極KARは、それぞれ、回動軸から見て同じ角度に、中立位置から対称に形成されている。詳しくは、接触子19は、操作部材12が中立位置から右に8°以上回動すると電極KIFと電極KAFとを接続し、操作部材12が中立位置から左に8°以上回動すると、電極KIRと電極KARとを接続する。つまり、操作部材12が左右いずれかに8°以上回動されるまで、調速回路および発光部9のLEDには電力が供給されない。
【0035】
図10に示すように、電極IFと電極IRとは、共にバッテリ10の正の電極に接続され、それぞれ印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRを介してバッテリ10の負の電極に接続された電極IAに接続されている。また、接触子18によって印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRR上の何処かに接続され得る電極EFおよび電極ERは、互いに接続されている。
【0036】
このため、電極EFおよび電極ERの電位は、バッテリ10の電圧を印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRによって分圧した電位となる。つまり、基準抵抗回路は、互いに並列に接続され、接触子18が摺接することで回路を閉じ、摺動子18の位置に応じて印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRの分圧比、換言すれば、バッテリ10と電極EFおよびERとの間の抵抗値を変化させる2組の、互いに並列に接続された可変抵抗回路を含む。
【0037】
2つの可変抵抗回路は、さらに、抵抗値の高い第1抵抗R1を介してFET29を周期的にスイッチングするゲート電圧を発生させる発振回路OCに接続されている。発振回路OCは、印刷抵抗印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRの分圧比(電極EF,ERの電位)によって設定した時間比で、FET29をオンする。
【0038】
また、電極OFと電極ORは、共に電極OUに接続され、抵抗値の低い第2抵抗R2を介して発振回路OCに接続されている。第2抵抗R2を介して発振回路OCに電位を与えることで、発振回路OCは、FET29を常時オンするようなゲート電圧を出力する。
【0039】
図13に、操作部材12の回動角度と、各スイッチ機構の状態の関係を示す。上述のように、可動接点24は、操作部材12を右に回動させるとモータの一端に接続された出力電極14をバッテリ10の正の電極に接続し、モータを右回転させる。また、可動接点25は、操作部材を左に回動させると、モータの他端に接続された出力電極15をバッテリ10の正の電極に接続し、モータを左回転させる。つまり、スイッチ1は、操作部材12の回動方向に応じてモータにFET29を介してモータに印加する電圧の極性を入れ替える反転機構を有する。
【0040】
また、可動接点24,25は、中立位置においてモータの両端を短絡させる。このため、モータが慣性力によって回転しているとき、操作部材12を付勢バネ36の付勢力によって中立位置に戻すと、モータの巻線に逆起電力による逆方向の電流が流れ、モータを制動することができる。
【0041】
また、接触子19は、接触子18が電極EF,ERに当接する前に、調速回路にバッテリ10を接続して、電源を供給する。しかしながら、操作部材12が中立位置近傍にあるときは、調速回路への電源供給を停止して、無駄な電力消費を防止する。
【0042】
接触子18は、中立位置近傍において、電極IAと電極OUとを接続し、発振回路OCに0Vを入力し、FET29が常にオフとなるようなゲート電圧を出力させる。このとき、発振回路OCは、抵抗値の低い第2抵抗R2、電極OU、接触子18および電極IAを介してGNDに接続されているので、発振回路OCの電流が流出しやすく、出力するゲート電圧を十分に低下させている。
【0043】
操作部材12を中立位置から回動させると、先ず、接触子18は、電極IAを電極EFまたは電極ERに接続する。すると、発振回路OCは、抵抗値の大きな第1抵抗R1を介してGNDに接続されるので、発振回路OCから流出する電流が減少する。このため、発振回路OCは、FET29を僅かにオンするようなゲート電圧を出力するようになる。
【0044】
そして、接触子18が印刷抵抗VRFまたはVRRに当接すると、操作部材12の回動角度に比例して可変抵抗回路の出力電位が高くなり、FET29がオンする時間比が高くなる。これによって、モータは、可変抵抗回路(印刷抵抗VRFまたはVRR)の抵抗値(分極電圧)に比例した速度で回転する。
【0045】
ここで、可変抵抗回路による分極電圧が発振回路OCの電圧よりも高くなると、第1抵抗R1を介して発振回路OCに電流が流入し、ゲート電圧を高くするように作用する。そして、接触子18が電極IFまたはIRに達した後、電極IFまたはIRと電極OFまたはORとが接続され、バッテリ10の端子電圧を出力する可変抵抗回路と発振回路OCとを抵抗値の低い第2抵抗を介して接続する。これにより、可変抵抗回路を介して発振回路OCに流入する電流が十分に大きくなり、FET29を常時オンさせることによって、モータを最大速度で回転させる。
【0046】
以上のように、本実施形態のスイッチ1は、操作部材12の回動方向と同じ方向に先端工具を回転させ、操作部材12の回動角度に応じた速度で先端工具を回転させるために使用される。操作部材12の回動方向と同じ方向に先端工具するため、ユーザは、先端工具の回転方向を間違えることがなく、回転方向に切換のために別のスイッチを操作する必要がなく、作業を連続して行える。
【0047】
また、ユーザは、グリップ5等を基準に操作部材12の回動角度を直感的に把握できるので、スイッチ1を用いて先端工具の回転速度を細やかに制御することができる。さらに、ユーザは、操作部材12の回動角度を、付勢バネ36の反力によっても感じ取ることができるため、先端工具の回転速度を把握することが容易である。尚、本発明において、モータおよびチャック3の回転速度は、原則として無負荷回転速度を指し、実際の負荷運転時の回転速度とは異なる場合がある。
【0048】
図14に、本発明の第2実施形態のスイッチ1の回路基板21を示す。尚、本実施形態は、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRの配置を除いて、第1実施形態と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態のスイッチ1では、回路図上では同じ構成であるが、印刷抵抗VFRおよび電極IRが、印刷抵抗VFFおよび電極IFと比べて、中立位置から遠く(大きく回動した位置)に形成されている。
【0049】
本実施形態では、図15に示すように、モータを正転させる場合に比べ、モータを逆転させる場合は、操作部材12をより大きく回動させる必要がある。これにより、ユーザは、先端工具を逆回転させるときは、正転させるときより、操作量が大きくなるだけでなく、付勢バネ36からより大きな反力を受けるので、より明確な意図を持って操作することを要求される。
【0050】
さらに、図16に、本発明の第3実施形態のスイッチ1の回路基板21を示す。本実施形態も、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRの配置を除いて、第1実施形態と同位置であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、印刷抵抗VFRの幅が中立位置に近い程大きくなっている。
【0051】
本実施形態では、図17に示すように、操作部材12を左に回動させる場合、操作部材12の回動角度が小さい程、操作部材12の回動角度に対する電極IAと摺動子17との間の抵抗値の変化率が小さく、モータの回転速度の変化率が小さくなる。これによって、本実施形態では、先端工具(チャック3)を逆回転させる場合は、正回転時に比べて、低速域においてより細かな速度調節が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、回転方向および回転速度を調節する電動工具に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態のスイッチを有する電動工具の側面図。
【図2】図1の電動工具の異なる使用形態の側面図。
【図3】図1のスイッチの後方斜視図。
【図4】図1のスイッチの前方斜視図。
【図5】図1のスイッチの分解斜視図。
【図6】図1のスイッチの摺動子の駆動機構に係る分解斜視図。
【図7】図1のスイッチの反転機構に係る分解斜視図。
【図8】図1のスイッチの中立位置における断面図。
【図9】図1のスイッチの回動位置における断面図。
【図10】図1の電動工具の回路図。
【図11】図1のスイッチの回路基板と摺動子との関係を示す分解斜視図。
【図12】図11の回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図13】図1のスイッチの回動角度と回路動作との関係を示す図。
【図14】本発明の第2実施形態のスイッチの回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図15】本発明の第2実施形態のスイッチの回動角度とモータ端子電圧との関係を示す図。
【図16】本発明の第3実施形態のスイッチの回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図17】本発明の第3実施形態のスイッチの回動角度とモータ端子電圧との関係を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1…スイッチ
2…電動工具
3…チャック
4…工具本体
7…操作突部
10…バッテリ
11…スイッチ本体
12…操作部材
13,14…入力端子
15,16…出力端子
17…軸部材
18,19…摺動子
21…回路基板
24,25…可動接点
29…FET
36…付勢バネ
37…係止部
38…作用部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具用スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電道工具用の調速機能を有するスイッチとしては、電動工具のグリップに向かって引き込まれるトリガを有するトリガスイッチが用いられている。トリガスイッチは、バッテリとモータとの間に介設され、トリガの引き込み量に応じた通電比の電圧を出力することで、モータの回転速度を調節する。
【0003】
トリガスイッチは、通常、トリガと共に移動する摺動子が回路基板上に形成した印刷抵抗に摺接する可変抵抗を有し、トリガの引き込み量に応じて可変抵抗の抵抗値を変化させることで、スイッチング素子の導通時間比を変化させてモータへの出力を調節する。
【0004】
また、モータを逆転運転可能とするトリガスイッチは、出力の極性を反転させるための切換スイッチを有している。特許文献1には、モータ正転時と反転時とで、トリガの引き込み量に対するモータ回転速度を異ならせるために、トリガの引き込み量に応じて抵抗値が異なる変化をする2つの回路を並列に設け、出力の極性を反転させる切換スイッチによって、一方の回路だけを接続するようにした発明が記載されている。
【特許文献1】特許第3768400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリガスイッチを用いた電動工具を使用する際、ユーザはトリガの引き込み量を感覚的に把握するが、微細な引き込み量の違いを認識することは難しく、大まかな速度制御しかできないという問題があった。
【0006】
また、切換スイッチの操作のために、工具を持ち替えたり、一度ワークから手を離す必要が生じて、作業が中断される場合もあった。
【0007】
前記問題点に鑑みて、本発明は、直感的な操作によって電動工具を細かく速度制御できる電動工具用スイッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明による電動工具用スイッチは、両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、前記操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板と、前記回路基板に押圧され、前記操作部材と共に回動して、前記回路基板に摺接する摺動子と、前記操作部材の前記中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構とを有し、前記回路基板は、前記摺動子が摺接することで回路を閉じ、前記摺動子の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、前記操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されているものとする。
【0009】
この構成によれば、ユーザは、操作部材を回動させるので、その操作量を直感的に把握しやすく、操作量に応じた出力を細かく調節できる。また、操作部材の回動方向によって工具の回転方向が変わるので、工具の逆転のために余分なスイッチ操作が不要であり、作業を連続して行える。
【0010】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記2組の可変抵抗回路は、前記操作部材の回動角度に対する抵抗値の変化が互いに異なってもよい。
【0011】
この構成によれば、工具の正転時と逆転時とで速度変化特性を異ならしめ、それぞれの回転方向について工具を最も扱い易くするような速度変化特性を持たせることができる。
【0012】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記反転機構は、前記中立位置からずれた位置で極性を入れ替え、前記中立位置において前記出力端子間を短絡させてもよい。
【0013】
この構成によれば、中立位置においてモータの端子間を短絡することで、惰性によるモータの回転を停止させる短絡ブレーキの機能を発揮できる。
【0014】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記操作部材は、略円筒形に形成され、且つ、電動工具に固定されるスイッチ本体の外周に操作可能に配設されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、略円筒形の外形を有することで、ダイアルを回すような、ユーザが操作量を直感的に把握できる操作性を提供できる。また、操作部材の内部に他の構成要素を配置することで、スイッチが回動軸方向に長くならない。
【0016】
また、本発明の電動工具用スイッチにおいて、前記スイッチ本体の内部で、前記操作部材と共に前記回動軸周りに回動する作用部と、前記スイッチ本体の内壁から内向きに突出する係止部と、中央部が前記回動軸の周りに保持され、両端が前記作用部および前記係止部を挟み込むように延伸し、前記作用部を前記係止部および前記回動軸と直列させるように回動付勢する付勢バネとを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、付勢バネがスイッチ本体を貫通しないので、スイッチ本体の強度を損なわず、操作部材の十分な回動角度を確保できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回動可能な操作部材の回動方向および回動角度に応じてドリル等の工具を回転させることができるので、ユーザが工具の回転方向および回転速度を直感的に把握でき、細やかな制御ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の1つの実施形態のスイッチ1を備える電動工具2を示す。電動工具2は、先端にドリルやドライバビット、グラインダビットのような先端工具を把持して回転可能なチャック3を有し、チャック3の回転軸と略同軸の略円筒形をなし、スイッチ1を内蔵する工具本体4と、工具本体4の後端から下方、後斜めに延伸し、ユーザが把持するためのグリップ5とからなる。
【0020】
スイッチ1は、グリップ5の近傍に配設されている。また、スイッチ1は、工具本体4の両側に設けたスイッチ開口6からそれぞれ突出する操作突部7を有する。これにより、ユーザは、グリップ5を把持した手の親指や人差し指を操作突部7に伸ばして、スイッチ1を操作できるようになっている。
【0021】
工具本体4は、チャック3の回転軸に直結した不図示のモータを収容し、スイッチ1の上部に係止スイッチ8が配設され、チャック3の下方にLEDを収容した発光部9を有する。グリップ5は、バッテリ10を着脱可能に装着できる。
【0022】
図2に示すように、電動工具2は、グリップ5を揺動させて、後部本体4と一直線に配置することもできる。
【0023】
図3および4に、スイッチ1の詳細を示す。スイッチ1は、工具本体4に固定されるスイッチ本体11と、スイッチ本体11の周りで両方向にそれぞれ約30°回動可能であり、略円筒形をなし、且つ、外周面に操作突部7が形成された操作部材12とを有する。
【0024】
スイッチ本体11は、バッテリ10の両電極に接続される入力端子13,14と、モータの両電極に接続される出力端子15,16とを有する。スイッチ10は、操作部材12の回動軸がチャック3の回転軸と同軸になるように、工具本体4に取り付けられる。
【0025】
図5に、スイッチ1の分解斜視図を示す。操作部材12には、略円筒形のスイッチ本体11の内部に、操作部材12の回動軸と同軸に延伸する軸部材17が接続されており、軸部材17は、操作部材12と共に回動する。図6にさらに詳しく示すように、軸部材17には、金属板を折り曲げてなる2つの摺動子18,19を保持する保持部材20が取り付けられる。摺動子18,19は、操作部材12の回動軸に直交するようにスイッチ本体11に対して固定される回路基板21に摺接する。
【0026】
また、図7に詳しく示すように、スイッチ1は、出力端子15,16を有する電路部材22,23にそれぞれ揺動可能に支持された可動接点24,25を有する。可動接点24,25は、それぞれ、入力端子13を有する電路部材26に設けられた固定接点27,28、または、モータへの出力をスイッチングするためのFET29のドレン端子が接続される電路部材30にそれぞれ設けられた固定接点31,32のいずれかに当接する。軸部材17には、可動接点24,25を駆動するためにバネ付勢された駆動部材33,34を有する。
【0027】
また、図5に示すように、スイッチ1は、モータの逆起電力がFET29に印加されないようにする保護ダイオード35を有する。さらに、スイッチ1は、軸部材17を介して操作部材12の角度を、操作突部7が水平になる中立位置に自己復帰するように付勢する付勢バネ36を有する。
【0028】
図8に示すように、付勢バネ36は、中央部が軸部材17の周りに巻回されることによって保持され、両端がスイッチ本体11の内壁から内向きに突出した係止部37を両側から挟み込むようになっている。また、付勢バネ36は、軸部材17とスイッチ本体11との間に位置するように軸部材17に係合し、軸部材17と共に回動する作用部38をも挟み込む。また、駆動部材33,34は、固定接点31,32側にオフセットして設けられており、中立位置において、可動接点24,25をFET29のドレンに接続するようになっている。つまり、電動工具2のモータは、操作部材12が中立位置にあるとき、両端子が短絡された状態になる。
【0029】
図9に示すように、作用部38は、軸部材17および操作部材12と共に操作部材12の回動軸を中心に回動するので、ユーザが操作部材12を回動させると係止部37に対して回動し、付勢バネ36の一端を他端から離間させるように弾性変形させる。付勢バネ36は、この弾性力によって、作用部38を軸部材17の径方向に係止部37と直列するように回動させ、操作部材12を中立位置に復帰させる。
【0030】
また、操作部材12をグリップ5から見て右(図8,9では反時計回り)に回動すると、駆動部材33,34が図9に示すように回動して、可動接点24を、入力端子13を介してバッテリ10に接続される固定接点27に当接させる。逆に、操作部材12を左に回動すると、可動接点25が固定接点28に接触する。
【0031】
図10に、電動工具2の回路図を示す。一点鎖線で示す範囲がスイッチ1の回路であり、二点鎖線で示す範囲が回路基板21上に形成された回路である。バッテリ10およびモータは、上述の入力端子13,14および出力端子15,16に接続されるが、発光部9のLEDは、回路基板21の回路上に一端がハンダ付けされ、他端がスイッチ1の外側に引き出される一対のリード線(図4等には不図示)を介して接続される。
【0032】
回路基板21上の回路は、FET29のゲート電圧を周期的に増減し、そのゲート電圧を制御することによって、モータに対して電圧を出力する時間の比を可変する調速回路である。回路基板21には、図11に示すように、接触子18,19に接触する電極および印刷抵抗が形成されている。接触子18は、FET29の通電時間比を決定する抵抗値を定める基準抵抗回路の一部をなし、接触子19は、調速回路とバッテリ10とを接続または遮断する制御電源スイッチの一部をなす。接触子18,19は、それぞれ、2本一対で、2対のブラシ対を有する。接触子18,19は、各ブラシ対の回路基板21に対する当接位置が、操作部材12の回動軸を挟んで径方向に直列し、且つ、操作部材12が中立位置にあるとき水平に並ぶように、保持部材20に保持される。
【0033】
図12に、回路基板21の電極および印刷抵抗の配置を示す。接触子18の一方のブラシ対には、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRのいずれかが当接し、接触子18の他方のブラシ対には、電極OF,EF,OU,ER,ORのいずれかが当接する。つまり、接触子18は、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRのいずれかと、電極OF,EF,OU,ER,ORのいずれかとを接続する。
【0034】
接触子19の一方のブラシ対は、電極KIFまたはKIRと当接し、他方のブラシ対は、電極KAFまたはKARと当接する。電極KIFと電極KAF、並びに、電極KIRと電極KARは、それぞれ、回動軸から見て同じ角度に、中立位置から対称に形成されている。詳しくは、接触子19は、操作部材12が中立位置から右に8°以上回動すると電極KIFと電極KAFとを接続し、操作部材12が中立位置から左に8°以上回動すると、電極KIRと電極KARとを接続する。つまり、操作部材12が左右いずれかに8°以上回動されるまで、調速回路および発光部9のLEDには電力が供給されない。
【0035】
図10に示すように、電極IFと電極IRとは、共にバッテリ10の正の電極に接続され、それぞれ印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRを介してバッテリ10の負の電極に接続された電極IAに接続されている。また、接触子18によって印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRR上の何処かに接続され得る電極EFおよび電極ERは、互いに接続されている。
【0036】
このため、電極EFおよび電極ERの電位は、バッテリ10の電圧を印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRによって分圧した電位となる。つまり、基準抵抗回路は、互いに並列に接続され、接触子18が摺接することで回路を閉じ、摺動子18の位置に応じて印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRの分圧比、換言すれば、バッテリ10と電極EFおよびERとの間の抵抗値を変化させる2組の、互いに並列に接続された可変抵抗回路を含む。
【0037】
2つの可変抵抗回路は、さらに、抵抗値の高い第1抵抗R1を介してFET29を周期的にスイッチングするゲート電圧を発生させる発振回路OCに接続されている。発振回路OCは、印刷抵抗印刷抵抗VRFまたは印刷抵抗VRRの分圧比(電極EF,ERの電位)によって設定した時間比で、FET29をオンする。
【0038】
また、電極OFと電極ORは、共に電極OUに接続され、抵抗値の低い第2抵抗R2を介して発振回路OCに接続されている。第2抵抗R2を介して発振回路OCに電位を与えることで、発振回路OCは、FET29を常時オンするようなゲート電圧を出力する。
【0039】
図13に、操作部材12の回動角度と、各スイッチ機構の状態の関係を示す。上述のように、可動接点24は、操作部材12を右に回動させるとモータの一端に接続された出力電極14をバッテリ10の正の電極に接続し、モータを右回転させる。また、可動接点25は、操作部材を左に回動させると、モータの他端に接続された出力電極15をバッテリ10の正の電極に接続し、モータを左回転させる。つまり、スイッチ1は、操作部材12の回動方向に応じてモータにFET29を介してモータに印加する電圧の極性を入れ替える反転機構を有する。
【0040】
また、可動接点24,25は、中立位置においてモータの両端を短絡させる。このため、モータが慣性力によって回転しているとき、操作部材12を付勢バネ36の付勢力によって中立位置に戻すと、モータの巻線に逆起電力による逆方向の電流が流れ、モータを制動することができる。
【0041】
また、接触子19は、接触子18が電極EF,ERに当接する前に、調速回路にバッテリ10を接続して、電源を供給する。しかしながら、操作部材12が中立位置近傍にあるときは、調速回路への電源供給を停止して、無駄な電力消費を防止する。
【0042】
接触子18は、中立位置近傍において、電極IAと電極OUとを接続し、発振回路OCに0Vを入力し、FET29が常にオフとなるようなゲート電圧を出力させる。このとき、発振回路OCは、抵抗値の低い第2抵抗R2、電極OU、接触子18および電極IAを介してGNDに接続されているので、発振回路OCの電流が流出しやすく、出力するゲート電圧を十分に低下させている。
【0043】
操作部材12を中立位置から回動させると、先ず、接触子18は、電極IAを電極EFまたは電極ERに接続する。すると、発振回路OCは、抵抗値の大きな第1抵抗R1を介してGNDに接続されるので、発振回路OCから流出する電流が減少する。このため、発振回路OCは、FET29を僅かにオンするようなゲート電圧を出力するようになる。
【0044】
そして、接触子18が印刷抵抗VRFまたはVRRに当接すると、操作部材12の回動角度に比例して可変抵抗回路の出力電位が高くなり、FET29がオンする時間比が高くなる。これによって、モータは、可変抵抗回路(印刷抵抗VRFまたはVRR)の抵抗値(分極電圧)に比例した速度で回転する。
【0045】
ここで、可変抵抗回路による分極電圧が発振回路OCの電圧よりも高くなると、第1抵抗R1を介して発振回路OCに電流が流入し、ゲート電圧を高くするように作用する。そして、接触子18が電極IFまたはIRに達した後、電極IFまたはIRと電極OFまたはORとが接続され、バッテリ10の端子電圧を出力する可変抵抗回路と発振回路OCとを抵抗値の低い第2抵抗を介して接続する。これにより、可変抵抗回路を介して発振回路OCに流入する電流が十分に大きくなり、FET29を常時オンさせることによって、モータを最大速度で回転させる。
【0046】
以上のように、本実施形態のスイッチ1は、操作部材12の回動方向と同じ方向に先端工具を回転させ、操作部材12の回動角度に応じた速度で先端工具を回転させるために使用される。操作部材12の回動方向と同じ方向に先端工具するため、ユーザは、先端工具の回転方向を間違えることがなく、回転方向に切換のために別のスイッチを操作する必要がなく、作業を連続して行える。
【0047】
また、ユーザは、グリップ5等を基準に操作部材12の回動角度を直感的に把握できるので、スイッチ1を用いて先端工具の回転速度を細やかに制御することができる。さらに、ユーザは、操作部材12の回動角度を、付勢バネ36の反力によっても感じ取ることができるため、先端工具の回転速度を把握することが容易である。尚、本発明において、モータおよびチャック3の回転速度は、原則として無負荷回転速度を指し、実際の負荷運転時の回転速度とは異なる場合がある。
【0048】
図14に、本発明の第2実施形態のスイッチ1の回路基板21を示す。尚、本実施形態は、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRの配置を除いて、第1実施形態と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態のスイッチ1では、回路図上では同じ構成であるが、印刷抵抗VFRおよび電極IRが、印刷抵抗VFFおよび電極IFと比べて、中立位置から遠く(大きく回動した位置)に形成されている。
【0049】
本実施形態では、図15に示すように、モータを正転させる場合に比べ、モータを逆転させる場合は、操作部材12をより大きく回動させる必要がある。これにより、ユーザは、先端工具を逆回転させるときは、正転させるときより、操作量が大きくなるだけでなく、付勢バネ36からより大きな反力を受けるので、より明確な意図を持って操作することを要求される。
【0050】
さらに、図16に、本発明の第3実施形態のスイッチ1の回路基板21を示す。本実施形態も、電極IF,IA,IRおよび印刷抵抗VRF,VRRの配置を除いて、第1実施形態と同位置であるので、重複する説明は省略する。本実施形態では、印刷抵抗VFRの幅が中立位置に近い程大きくなっている。
【0051】
本実施形態では、図17に示すように、操作部材12を左に回動させる場合、操作部材12の回動角度が小さい程、操作部材12の回動角度に対する電極IAと摺動子17との間の抵抗値の変化率が小さく、モータの回転速度の変化率が小さくなる。これによって、本実施形態では、先端工具(チャック3)を逆回転させる場合は、正回転時に比べて、低速域においてより細かな速度調節が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、回転方向および回転速度を調節する電動工具に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1実施形態のスイッチを有する電動工具の側面図。
【図2】図1の電動工具の異なる使用形態の側面図。
【図3】図1のスイッチの後方斜視図。
【図4】図1のスイッチの前方斜視図。
【図5】図1のスイッチの分解斜視図。
【図6】図1のスイッチの摺動子の駆動機構に係る分解斜視図。
【図7】図1のスイッチの反転機構に係る分解斜視図。
【図8】図1のスイッチの中立位置における断面図。
【図9】図1のスイッチの回動位置における断面図。
【図10】図1の電動工具の回路図。
【図11】図1のスイッチの回路基板と摺動子との関係を示す分解斜視図。
【図12】図11の回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図13】図1のスイッチの回動角度と回路動作との関係を示す図。
【図14】本発明の第2実施形態のスイッチの回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図15】本発明の第2実施形態のスイッチの回動角度とモータ端子電圧との関係を示す図。
【図16】本発明の第3実施形態のスイッチの回路基板の電極および印刷抵抗の配置を示す背面図。
【図17】本発明の第3実施形態のスイッチの回動角度とモータ端子電圧との関係を示す図。
【符号の説明】
【0054】
1…スイッチ
2…電動工具
3…チャック
4…工具本体
7…操作突部
10…バッテリ
11…スイッチ本体
12…操作部材
13,14…入力端子
15,16…出力端子
17…軸部材
18,19…摺動子
21…回路基板
24,25…可動接点
29…FET
36…付勢バネ
37…係止部
38…作用部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、
前記操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板と、
前記回路基板に押圧され、前記操作部材と共に回動して、前記回路基板に摺接する摺動子と、
前記操作部材の前記中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構とを有し、
前記回路基板は、前記摺動子が摺接することで回路を閉じ、前記摺動子の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、前記操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されていることを特徴とする電動工具用スイッチ。
【請求項2】
前記2組の可変抵抗回路は、前記操作部材の回動角度に対する抵抗値の変化が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の電動工具用スイッチ。
【請求項3】
前記反転機構は、前記中立位置からずれた位置で極性を入れ替え、前記中立位置において前記出力端子間を短絡させることを特徴とする請求項1または2に記載の電動工具用スイッチ。
【請求項4】
前記操作部材は、略円筒形に形成され、且つ、電動工具に固定されるスイッチ本体の外周に操作可能に配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動工具用スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ本体の内部で、前記操作部材と共に前記回動軸周りに回動する作用部と、
前記スイッチ本体の内壁から内向きに突出する係止部と、
中央部が前記回動軸の周りに保持され、両端が前記作用部および前記係止部を挟み込むように延伸し、前記作用部を前記係止部および前記回動軸と直列させるように回動付勢する付勢バネとを有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電動工具用スイッチ。
【請求項1】
両方向に回動可能であり、中立位置に自己復帰するように付勢された操作部材と、
前記操作部材の回動軸に直交するように配置された回路基板と、
前記回路基板に押圧され、前記操作部材と共に回動して、前記回路基板に摺接する摺動子と、
前記操作部材の前記中立位置からの回動方向に応じて出力端子間の極性を入れ替える反転機構とを有し、
前記回路基板は、前記摺動子が摺接することで回路を閉じ、前記摺動子の当接位置に応じて抵抗値が変化する2組の可変抵抗回路が、前記操作部材の中立位置に対応する位置から回動方向両側に、電気的に並列に接続されて形成されていることを特徴とする電動工具用スイッチ。
【請求項2】
前記2組の可変抵抗回路は、前記操作部材の回動角度に対する抵抗値の変化が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の電動工具用スイッチ。
【請求項3】
前記反転機構は、前記中立位置からずれた位置で極性を入れ替え、前記中立位置において前記出力端子間を短絡させることを特徴とする請求項1または2に記載の電動工具用スイッチ。
【請求項4】
前記操作部材は、略円筒形に形成され、且つ、電動工具に固定されるスイッチ本体の外周に操作可能に配設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動工具用スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ本体の内部で、前記操作部材と共に前記回動軸周りに回動する作用部と、
前記スイッチ本体の内壁から内向きに突出する係止部と、
中央部が前記回動軸の周りに保持され、両端が前記作用部および前記係止部を挟み込むように延伸し、前記作用部を前記係止部および前記回動軸と直列させるように回動付勢する付勢バネとを有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電動工具用スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−155295(P2010−155295A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333666(P2008−333666)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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