説明

電動工具

【課題】電動工具に用いられるトリガーレバーの押し感覚を改善する。
【解決手段】この電動工具10は、駆動源と電気的に接続されたスイッチ装置43,46と、操作者からの操作を受けることでスイッチ装置43,46のオン/オフを実行可能なトリガーレバー41,45とが、操作者から把持を受ける把持部40に設置されたものである。この電動工具10には、トリガーレバー41,45が操作されてスイッチ装置43,46がオンした状態から、トリガーレバー41,45がスイッチ装置43,46をオンした状態のままで更に操作できるように、操作代付与手段50が設置されている。この操作代付与手段50については、トリガーレバーに設けてもよいし、スイッチ装置43,46に設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に係り、特に、操作者から操作を受けるトリガーレバーが操作者から把持を受ける把持部に設置された電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、操作者から操作を受けるトリガーレバーが操作者から把持を受ける把持部に設置された電動工具が知られている。例えば、下記特許文献1には、芝や雑草等の草葉を刈るのに用いられる刈払機が開示されているが、この刈払機では、ハンドルの一端に設けられた把持部に対してトリガーレバー(電源スイッチ)が設けられており、このトリガーレバー(電源スイッチ)を手で握ることで、駆動源であるモータが回転するように構成されている。
【0003】
トリガーレバー(電源スイッチ)の操作によって駆動源であるモータを起動させる機構については、一般的に、把持部内部にスイッチ装置が設置されており、また、このスイッチ装置と駆動源のモータが配線等で連結されることで電気的に接続され、トリガーレバー(電源スイッチ)が操作されてスイッチ装置を押すことで、モータの起動が行われる構成が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4071242号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、把持部内部という限られたスペースに設置されるスイッチ装置は、非常にコンパクトなものが用いられているので、スイッチ接点のストロークが非常に小さくなってしまうという構造上の不可避的な制約が存在していた。このようなストロークの小さいスイッチ接点をトリガーレバーによってオン/オフする場合、トリガーレバーの操作代は非常に小さくなってしまうので、操作者が感じるトリガーレバーの押し感覚が悪いという問題が存在していた。
【0006】
また、トリガーレバーの操作代が小さい場合には、オン/オフの切り替えに際しての余裕代が少ないので、例えば、操作者がトリガーレバーの握りを少し緩めただけでモータが停止してしまうといったような、操作上の不具合も発生してしまう。
【0007】
しかし、スイッチ接点のストロークを大きくしたスイッチ装置を新たに製造することは製造コスト上の制約からも現実的ではない。また、この種の電動工具の技術分野において、トリガーレバーの押し感覚を改善するための技術はこれまで提案されていなかった。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、電動工具に用いられるトリガーレバーの押し感覚を改善する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る電動工具(10)は、駆動源と電気的に接続されたスイッチ装置(43,46)と、操作者からの操作を受けることで前記スイッチ装置(43,46)のオン/オフを実行可能なトリガーレバー(41,45,131,161)とが、操作者から把持を受ける把持部(40)に設置された電動工具(10)であって、前記トリガーレバー(41,45,131,161)が操作されて前記スイッチ装置(43,46)がオンした状態から、前記トリガーレバー(41,45,131,161)が前記スイッチ装置(43,46)をオンした状態のままで更に操作できるように、操作代付与手段(50,130)を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る電動工具(10)では、前記操作代付与手段(130)が、前記トリガーレバー(131)に設けられていることとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る電動工具(10)において、前記操作代付与手段(130)は、前記トリガーレバー(131)に対して支軸(131a)を介して回動自在に取り付けられたプッシュバー(132)と、前記トリガーレバー(131)と前記プッシュバー(132)との間に設置された弾性部材(133)と、を有して構成され、前記トリガーレバー(131)が操作されると、前記プッシュバー(132)が前記スイッチ装置(46)と接触して前記スイッチ装置(46)をオンし、前記プッシュバー(132)が前記スイッチ装置(46)をオンした状態のままで更に前記弾性部材(133)の弾性範囲内で前記トリガーレバー(131)が操作できるように構成されていることとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る他の電動工具(10)では、前記操作代付与手段(50)が、前記スイッチ装置(43,46)に設けられていることとすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る他の電動工具(10)において、前記操作代付与手段(50)は、少なくとも前記スイッチ装置(46)に設置された弾性部材(52,91,92)を有し、前記トリガーレバー(45,161)から押圧力を受ける前記スイッチ装置(46)が、前記弾性部材(52,91,92)の弾性範囲内で前記トリガーレバー(45,161)からの押圧方向に沿って移動可能に構成されていることとすることができる。
【0015】
またさらに、本発明に係る他の電動工具(10)において、前記操作代付与手段(50)は、前記スイッチ装置(46)を載置するとともに前記把持部(40)に対して移動可能に設置されるスイッチ台(51)と、前記スイッチ台(51)と前記把持部(40)との間に設けられる弾性部材(52,91)と、を有して構成されることとすることができる。
【0016】
また、上述した本発明に係る電動工具(10)において、前記トリガーレバー(41,45,131,161)は、駆動源を起動するメイントリガーレバー(41)と、前記メイントリガーレバー(41)とは別体に設けられ、前記駆動源の高速運転を行うために設けられる高速トリガーレバー(45,131,161)と、を少なくとも含んで構成されることとすることができる。
【0017】
さらに、上記の本発明に係る電動工具(10)において、前記高速トリガーレバー(161)は、先端部近傍に反り形状(161a)を有し、前記高速トリガーレバー(161)が前記メイントリガーレバー(41)に沿った位置に移動したときに、前記高速トリガーレバー(161)の前記先端部近傍が前記メイントリガーレバー(41)との間に隙間を有するように構成されていることとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電動工具に用いられるトリガーレバーの押し感覚を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る刈払い機の全体構成を説明するための外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る把持部の外観斜視図であり、把持部を左斜め後方から見た場合の左側面を描いたものである。
【図3】本実施形態に係る把持部の後側の側面を示す外観図である。
【図4】本実施形態に係る把持部の内部構成を説明するための図であり、左右半割構造にて構成される把持部の右側の半割部材を取り外して把持部の内部を右側から見た場合の図である。
【図5】本実施形態に係る把持部に対して操作代付与手段が設置された構成を説明するための図である。
【図6】図5で示した把持部からスイッチ装置である高速用マイクロスイッチを取り外した状態を示す図である。
【図7】本実施形態に係る操作代付与手段の構成部品を示す図である。
【図8】本実施形態に係る操作代付与手段の動作説明を行うための図である。
【図9】高速用マイクロスイッチの側に設けられる本実施形態の操作代付与手段の変形形態を例示した図である。
【図10】図9で示した操作代付与手段の動作説明のための図である。
【図11】図9で示した操作代付与手段の動作説明のための図である。
【図12】高速用マイクロスイッチの側に設けられる本実施形態の操作代付与手段のさらに別の変形形態を例示した図である。
【図13】操作代付与手段を高速トリガーレバーの側に設けた場合の形態例を説明するための概略図であり、説明の便宜のために、主要な部品以外は省略してある。
【図14】図13で例示された操作代付与手段の構成部品を説明するための部品展開図である。
【図15】図13で示した操作代付与手段の動作説明を行うための図である。
【図16】先端部近傍に反り形状が形成された場合の高速トリガーレバーの形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態では、本発明に係る電動工具が刈払い機として構成される場合を例示して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る刈払い機の全体構成を説明するための外観斜視図である。なお、以下の説明では、説明の便宜のために刈払い機10の使用状態に応じた方向を定義することとする。すなわち、図1にて図示するように、刈刃部13が設置される側を「前」、駆動部11側を「後」、把持部40が設置される側を「右」、左グリップ21側を「左」と呼ぶこととする。
【0022】
本実施形態に係る刈払い機10は、長手方向に延びる軸体形状にて形成される操作棹12と、操作棹12の一端側である前側に設置される刈刃部13と、操作棹12の他端側である後側に設置されるとともに、内部に駆動源としてのモータを備える駆動部11と、操作棹12の長手方向の中間部に設置されるハンドル14とを備えている。
【0023】
操作棹12は、中空棒状のパイプ部材により構成されており、その内部には、不図示の従動軸が回転自在な状態で内蔵されている。操作棹12の前側先端には刈刃部13が取り付けられており、刈刃部13のホルダ13aには、外周面に複数の鋸刃状の刃部が形成された円板状をした金属製の刈刃(不図示)を回転自在な状態で取り付けることが可能となっている。ホルダ13aは、従動軸の回転運動に応じて回転するので、このホルダ13aの回転によって不図示の刈刃が回転し、草葉等の刈払いを実施できるようになっている。また、刈刃の後方直近部には、刈刃の一部を覆うように防護カバー13bが設けられており、刈払い時に発生する飛散物の後方への飛散を防ぐことで、操作者の安全が確保されている。不図示の刈刃については、円板状をした金属製のものや、セラミックス製のもの、回転中心から放射状に延びる複数本の紐からなるものなど、あらゆる形式の刈刃を採用することが可能となっている。
【0024】
操作棹12の長手方向の中間部には、把持部40と左グリップ21を備えるハンドル14が取り付けられている。また、操作棹12におけるハンドル14設置位置の後方には、図示しない肩掛けベルトを取り付けることのできるホック15が設置されている。操作者は、ハンドル14が備える把持部40と左グリップ21とを両手で把持するとともに、ホック15に取り付けられた肩掛けベルトを肩に掛け回すことにより、刈払い機10の操作を安定して行うことが可能となっている。なお、ハンドル14の設置位置は、操作棹12の任意の位置に設定することができるが、モータなどの重量物が収納された駆動部11と、比較的重量が軽い刈刃部13とのバランスを考慮して、操作棹12の中間部のうちでも後方寄りにハンドル14を設置することが望ましい。
【0025】
以上、本実施形態に係る刈払い機10全体の概略構成について説明を行った。次に、本実施形態に係る刈払い機10の有意な特徴である把持部40の構成について説明を行う。ここで、図2は、本実施形態に係る把持部の外観斜視図であり、把持部40を左斜め後方から見た場合の左側面を描いたものである。また、図3は、本実施形態に係る把持部の後側の側面を示す外観図である。さらに、図4は、本実施形態に係る把持部の内部構成を説明するための図であり、左右半割構造にて構成される把持部40の右側の半割部材40bを取り外して把持部40の内部を右側から見た場合の図である。
【0026】
本実施形態に係る把持部40は、概略縦長環状の外郭形状を有して構成されており、左右に分割可能な半割部材40a,40bを重ねた構成となっている。2つの半割部材40a,40bには、いずれか一方(本実施形態では、左側の半割部材40a)にネジ溝40aが形成され、いずれか他方(本実施形態では、右側の半割部材40b)にネジ孔40bが形成されており、ネジ孔40bに対して不図示のネジを通してこのネジをネジ溝40aに螺入することにより、半割部材40a,40bが一体化して把持部40となるように構成されている。このようにして構成される把持部40は、符号Gで矢視する後方中央部分が操作者からの把持を受けるグリップ部として構成されており、また、把持部40には、駆動源であるモータを起動・制御するために、2つのトリガーレバー41,45がグリップ部Gの前方に対して傾動動作可能な状態で設置されている。
【0027】
2つのトリガーレバー41,45のうち、グリップ部Gに沿って配置される大形状のトリガーレバーが、駆動源であるモータを起動して通常運転を行うためのメイントリガーレバー41である。
【0028】
図4で詳細に示されるように、本実施形態のメイントリガーレバー41は、傾動動作の傾動中心(支点)となる支軸41aと、操作者の指からの力を受ける力点となる指掛け部41bとを有して構成されている。また、支軸41aと指掛け部41bとの間の位置には、メイントリガーレバー41に対して弾性力を及ぼすメイントリガー用コイルばね42が設置されている。このメイントリガー用コイルばね42は、把持部40からメイントリガーレバー41を常時突出させる方向、すなわち、図4において紙面右側の方向にメイントリガーレバー41を押し出すように弾性力を及ぼしている。
【0029】
また、メイントリガーレバー41には、支軸41aに対して指掛け部41b形成位置とは逆側の位置にスイッチ押圧片41cが形成されている。このスイッチ押圧片41cは、メイントリガーレバー41が支軸41aを傾動中心とした傾動動作を行うと、その傾動動作に伴って移動することで、把持部40の内部に設置されたスイッチ装置である起動用マイクロスイッチ43をオンするように構成されている。この起動用マイクロスイッチ43と、駆動部11の内部に設置される不図示のモータとは、配線コードによって電気的に接続されているので、メイントリガーレバー41を操作することで、駆動源である不図示のモータを起動できるようになっている。
【0030】
したがって、操作者が、グリップ部Gに対して右手の掌を配置するとともに、右手の中指、薬指及び小指等をメイントリガーレバー41の指掛け部41bに掛け、前記の指でメイントリガーレバー41をグリップ部Gの側に握り締めると、メイントリガーレバー41はメイントリガー用コイルばね42の弾性力に抗しながら支軸41aを傾動中心として傾動し、把持部40の内部側に移動することとなる。そして、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片41cが移動し、起動用マイクロスイッチ43をオンすることになるので、駆動源である不図示のモータが起動して刈払い機10を動作させることができるようになっている。
【0031】
なお、メイントリガーレバー41の最下方の位置には、把持部40から突出する方向での移動ストローク端を規定する突起部41dが形成されている。この突起部41dは、把持部40の内壁の一部に対して当接するように構成されているので、把持部40から突出する方向でメイントリガー用コイルばね42からの弾性力を常時受けることとなるメイントリガーレバー41の通常状態において、突起部41dがメイントリガーレバー41の位置決めを行う機能を発揮している。
【0032】
一方、2つのトリガーレバー41,45のうち、メイントリガーレバー41の前方上方に配置される小形状のトリガーレバーが、駆動源であるモータを高速運転させるための高速トリガーレバー45である。なお、この高速トリガーレバー45は、メイントリガーレバー41とは別体の部材として構成されたものである。
【0033】
図4で詳細に示されるように、本実施形態の高速トリガーレバー45は、傾動動作の傾動中心(支点)となる支軸45aが、メイントリガーレバー41の傾動中心である支軸41aと同じ位置となっている。この支軸45aの位置には、不図示の捻じりコイルばねが設置されており、この捻じりコイルばねが及ぼす弾性力によって、高速トリガーレバー45はメイントリガーレバー41から離れる方向、すなわち、支軸45aの位置を傾動中心として図4における紙面右上方向に向けて反時計回り方向での傾動力を有するように構成されている。また、この高速トリガーレバー45は、メイントリガーレバー41の前方に配置される下端側に、操作者の指からの力を受ける力点となる指掛け部45bを有している。
【0034】
さらに、高速トリガーレバー45には、支軸45aに対して指掛け部45b形成位置とは逆側の位置にスイッチ押圧片45cが形成されている。このスイッチ押圧片45cは、高速トリガーレバー45が支軸45aを傾動中心とした傾動動作を行うと、その傾動動作に伴って移動することで、把持部40の内部に設置されたスイッチ装置である高速用マイクロスイッチ46をオンするように構成されている。この高速用マイクロスイッチ46と、駆動部11の内部に設置される不図示のモータとは、配線コードによって電気的に接続されており、メイントリガーレバー41が操作されて起動用マイクロスイッチ43がオンの状態になり、かつ、高速トリガーレバー45が操作されて高速用マイクロスイッチ46がオンの状態になったときに、駆動源である不図示のモータが高速で運転できるようになっている。
【0035】
したがって、上述したように、操作者が、グリップ部Gに対して右手の掌を配置するとともに、右手の中指、薬指及び小指等をメイントリガーレバー41の指掛け部41bに掛け、前記の指でメイントリガーレバー41をグリップ部Gの側に握り締めると、メイントリガーレバー41はメイントリガー用コイルばね42の弾性力に抗しながら支軸41aを傾動中心として傾動し、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片41cが移動し、起動用マイクロスイッチ43をオンすることになる。さらにこの状態から、操作者が右手の人差し指を高速トリガーレバー45の指掛け部45bに掛け、人差し指で高速トリガーレバー45をメイントリガーレバー41の側に握り締めると、高速トリガーレバー45は不図示の捻じりコイルばねの弾性力に抗しながら支軸45aを傾動中心として傾動し、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片45cが移動し、高速用マイクロスイッチ46をオンすることになる。したがって、まずは起動用マイクロスイッチ43がオンされることで駆動源である不図示のモータが起動して刈払い機10が動作を開始するとともに、その後、高速用マイクロスイッチ46がオンされることでモータの高速回転が開始され、所望の刈払い作業を行うことが可能となる。
【0036】
なお、高速トリガーレバー45が有するスイッチ押圧片45cの上方の位置には、図4において反時計回りの方向で傾動する高速トリガーレバー45の移動ストローク端を規定する規定壁47が形成されている。この規定壁47は、把持部40の強度を向上させるためのリブとしての機能をも兼備する部材であり、図4において反時計回りの方向で傾動する高速トリガーレバー45のスイッチ押圧片45cからの押圧力を常時受け、高速トリガーレバー45の通常状態である非操作時における位置決めを行う機能を発揮している。
【0037】
さて、本実施形態に係る把持部40には、さらに、高速トリガーレバー45の押し感覚を改善するための機構である操作代付与手段が設置されている。そこで次に、本実施形態に係る操作代付与手段の具体的な構成について、図5〜図7を用いて説明を行うこととする。ここで、図5は、本実施形態に係る把持部に対して操作代付与手段が設置された構成を説明するための図である。また、図6は、図5で示した把持部からスイッチ装置である高速用マイクロスイッチ46を取り外した状態を示しており、図7は、本実施形態に係る操作代付与手段の構成部品を示す図である。
【0038】
図5に示されるように、本実施形態に係る操作代付与手段50は、高速用マイクロスイッチ46の側に設けられるものである。この操作代付与手段50は、高速用マイクロスイッチ46を載置するとともに把持部40に対して移動可能に設置されるスイッチ台51と、このスイッチ台51と把持部40との間に設けられる弾性部材としての第二の捻じりコイルばね52とで構成されている。図7にて詳細に示されるように、本実施形態に係るスイッチ台51は、第二の捻じりコイルばね52が設置されるとともにスイッチ台51自身の回動運動の回動中心となる回動軸51aを有している。この回動軸51aは、把持部40に形成された軸穴に嵌め込まれる。そして、把持部40とスイッチ台51とを接続する形で両部材の間に第二の捻じりコイルばね52が設置される。また、把持部40には、案内溝54が形成されている。そして、回動軸51aを回動中心として回動するスイッチ台51の初期位置の位置決めと回動動作の案内を、この案内溝54が実施するように構成されている。以上のように構成される操作代付与手段50のスイッチ台51上に対して、図5に示すように高速用マイクロスイッチ46が設置されている。
【0039】
次に、図8を用いて、上述した本実施形態に係る操作代付与手段50の動作について説明を行う。ここで、図8は、本実施形態に係る操作代付与手段の動作説明を行うための図である。
【0040】
図8において、分図(a)は、本実施形態に係る把持部40の初期状態を示している。この初期状態から、操作者がメイントリガーレバー41をグリップ部Gの側に握り締めると、メイントリガーレバー41はメイントリガー用コイルばね42の弾性力に抗しながら支軸41aを傾動中心として傾動し、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片41cが移動し、起動用マイクロスイッチ43をオンする(分図(b)の状態)。
【0041】
さらにこの状態から、操作者が右手の人差し指を高速トリガーレバー45の指掛け部45bに掛け、人差し指で高速トリガーレバー45をメイントリガーレバー41の側に握り締めると、高速トリガーレバー45は不図示の捻じりコイルばねの弾性力に抗しながら支軸45aを傾動中心として傾動し、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片45cが移動し、高速用マイクロスイッチ46をオンする(分図(c)の状態)。なお、この分図(c)の状態は、高速トリガーレバー45の傾動範囲の途中の状態で実現されるものであり、この時点では、高速トリガーレバー45は操作代を残した状態となっている。
【0042】
分図(c)の状態からさらに操作者が高速トリガーレバー45をメイントリガーレバー41の側に握り締めると、スイッチ押圧片45cから押圧力を受けた高速用マイクロスイッチ46は、操作代付与手段50の作用によって紙面右側に傾動する。すなわち、起動用マイクロスイッチ43がオンされた状態のままで、操作者はさらに高速トリガーレバー45を握り締めることができるので、高速回転を実施しているという押し感覚を確実に得ることが可能となる(分図(d)の状態)。
【0043】
なお、モータの起動・運転状態としては、図8中の分図(b)の状態でモータが起動して刈払い機10が動作を開始し、分図(c)の状態でモータの高速回転が開始される。また、分図(c)〜(d)の状態では、モータは同じ高速回転を行っている。したがって、例えば、操作者が分図(c)〜(d)の状態の範囲内で高速トリガーレバー45の操作状態を変化させたとしても、すなわち、高速トリガーレバー45の握り締めをわずかに緩めたとしても、分図(c)〜(d)の状態の範囲内であれば、モータの高速回転が終了することはない。
【0044】
以上説明した構成によって、操作者は、従来にはない高速トリガーレバー45の押し感覚を体感することができる。したがって、本実施形態の構成によって、操作性の優れた電動工具(刈払い機10)を実現することが可能となる。
【0045】
なお、上述したような高速用マイクロスイッチ46の側に設けられる操作代付与手段については、少なくともスイッチ装置に設置された弾性部材を有し、トリガーレバーから押圧力を受けるスイッチ装置が、弾性部材の弾性範囲内でトリガーレバーからの押圧方向に沿って移動可能に構成されていればよく、種々の変形形態を採用することができる。
【0046】
例えば、図9〜図11に示すように、上述したスイッチ台51に対して細長い金属線を螺旋状に巻いたコイルばね91を設置し、図6で説明した場合と同様にスイッチ台51が回動軸51aを回動中心として回動するように構成することもできる。なお、図10は、図8における分図(a)に相当し、また、図11は、図8における分図(c)に相当しており、コイルばね91を用いた場合の動作については、図8で説明した場合と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
また、高速用マイクロスイッチ46の側に設けられる操作代付与手段については、例えば図12に示されるように、上述したスイッチ台51を省略し、高速用マイクロスイッチ46自体にコイルばね92を設置する構成を採用することもできる。図12に示す構成であっても、図5〜図11にて例示した場合と同様の作用効果を有する操作代付与手段を実現することができる。
【0048】
以上、本実施形態に係る操作代付与手段50を高速用マイクロスイッチ46の側に設ける場合の形態について説明を行った。しかし、本発明に係る操作代付与手段は、トリガーレバーである高速トリガーレバー45の側に設けることも可能である。そこで、図13〜図15を用いて、操作代付与手段を高速トリガーレバー45の側に設けた場合の形態例についての説明を行うこととする。ここで、図13は、操作代付与手段を高速トリガーレバーの側に設けた場合の形態例を説明するための概略図であり、説明の便宜のために、主要な部品以外は省略してある。また、図14は、図13で例示された操作代付与手段の構成部品を説明するための部品展開図である。さらに、図15は、図13で示した操作代付与手段の動作説明を行うための図である。
【0049】
図13〜図15に例示された他の実施形態に係る操作代付与手段130は、高速トリガーレバー131と、この高速トリガーレバー131に対して支軸131aを介して回動自在に取り付けられたプッシュバー132と、高速トリガーレバー131とプッシュバー132との間に設置された弾性体である圧縮コイルばね133とを有して構成されている。すなわち、操作代付与手段130は、バネばさみ形状に相当する構成を有するものであり、常には圧縮コイルばね133から及ぼされる弾性力の作用によって、高速トリガーレバー131に対してプッシュバー132が支軸131aを回動中心として離間する方向に、つまり、図13における紙面の上方に回動するように構成されている。そして、プッシュバー132に対して押圧力が加わると、圧縮コイルばね133の弾性範囲内でプッシュバー132の先端と高速トリガーレバー131とが近付くように移動することができるようになっている。なお、高速トリガーレバー131には、プッシュバー132の離間方向での回動を規制する凸部131bが形成されており、この凸部131bにプッシュバー132が当接することで、プッシュバー132が高速トリガーレバー131に対して離間する方向へ回動する際における回動量が規制されるように構成されている。
【0050】
したがって、図13に示す初期状態からメイントリガーレバー41(図13では図示を省略してある)を紙面右側に引き寄せると、まず初めにメイントリガーレバー41が不図示の起動用マイクロスイッチと接触してこの起動用マイクロスイッチをオンし、駆動源である不図示のモータが起動を始める。この状態からさらに、高速トリガーレバー131を図13の紙面右側に引き寄せると、プッシュバー132が高速用マイクロスイッチ46と接触して高速用マイクロスイッチ46をオンし、駆動源である不図示のモータが高速駆動を開始する。さらにその後、メイントリガーレバー41が起動用マイクロスイッチをオンし、かつ、高速トリガーレバー131のプッシュバー132が高速用マイクロスイッチ46をオンした状態のままで、さらにトリガーレバー131を紙面右側に引き寄せると、不図示のモータによる高速駆動を維持したままで圧縮コイルばね133の弾性範囲内でプッシュバー132に対して高速トリガーレバー131が接近し、操作者に押し感覚を認識させることが可能となる。
【0051】
以上のような構成を有する操作代付与手段130を用いた場合の把持部40の動作について、図15を用いて説明する。ここで、図15は、他の実施形態に係る操作代付与手段の動作説明を行うための図である。
【0052】
図15において、分図(a)は、本実施形態に係る把持部40の初期状態を示している。この初期状態から、操作者がメイントリガーレバー41をグリップ部Gの側に握り締めると、メイントリガーレバー41はメイントリガー用コイルばね42の弾性力に抗しながら支軸41aを傾動中心として傾動し、この傾動動作に伴って不図示の起動用マイクロスイッチをオンする(分図(b)の状態)。
【0053】
さらにこの状態から、操作者が右手の人差し指を高速トリガーレバー131の指掛け部131bに掛け、人差し指で高速トリガーレバー131をメイントリガーレバー41の側に握り締めると、まず初めにプッシュバー132が高速用マイクロスイッチ46と接触して高速用マイクロスイッチ46をオンする(分図(c)の状態)。なお、この分図(c)の状態は、高速トリガーレバー131の傾動範囲の途中の状態で実現されるものであり、この時点では、高速トリガーレバー131は操作代を残した状態となっている。
【0054】
分図(c)の状態からさらに操作者が高速トリガーレバー131をメイントリガーレバー41の側に握り締めると、圧縮コイルばね133の弾性範囲内でプッシュバー132に対して高速トリガーレバー131が接近し、操作者に押し感覚を認識させることが可能となる。すなわち、起動用マイクロスイッチ43がオンされた状態のままで、操作者はさらに高速トリガーレバー131を握り締めることができるので、高速回転を実施しているという押し感覚を確実に得ることが可能となる(分図(d)の状態)。
【0055】
なお、モータの起動・運転状態としては、図15中の分図(b)の状態でモータが起動して刈払い機10が動作を開始し、分図(c)の状態でモータの高速回転が開始される。また、分図(c)〜(d)の状態では、モータは同じ高速回転を行っている。したがって、例えば、操作者が分図(c)〜(d)の状態の範囲内で高速トリガーレバー131の操作状態を変化させたとしても、すなわち、高速トリガーレバー131の握り締めをわずかに緩めたとしても、分図(c)〜(d)の状態の範囲内であれば、モータの高速回転が終了することはない。
【0056】
以上説明した構成によって、操作者は、従来にはない高速トリガーレバー131の押し感覚を体感することができる。したがって、図13〜図15で示した他の実施形態の構成によって、操作性の優れた電動工具(刈払い機10)を実現することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0058】
例えば、上述した高速トリガーレバー45,131は、メイントリガーレバー41の側に握り締められてメイントリガーレバー41に沿って配置されたときには、メイントリガーレバー41との間に隙間を作らないように構成されていた。しかし、本発明に係る高速トリガーレバーについては、例えば、図16に示す高速トリガーレバー161のように、先端部近傍に反り形状161aを形成しておき、この高速トリガーレバー161がメイントリガーレバー41に沿った位置に移動したときに、高速トリガーレバー161の先端部近傍がメイントリガーレバー41から離れるように構成しておくことが可能である。高速トリガーレバー161の先端部近傍に反り形状161aを形成しておくことで、高速トリガーレバー161の先端部近傍とメイントリガーレバー41との間には必ず隙間が形成されるので、操作者がこの箇所で指を詰めてしまうような事態を回避することが可能となる。
【0059】
また、本発明に係る弾性部材については、上述した実施形態ではいずれも金属製のコイルばねを用いた場合を例示して説明したが、上述した実施形態と同様の作用効果を有する弾性力を発揮できるものであれば、ゴムなどのような周知の他の弾性部材に置き換えることが可能である。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、本発明の特徴を刈払い機10に適用した場合を例示して説明したが、本発明の特徴事項は、刈払い機10だけではなく、本発明の把持部を設置可能なあらゆる形式の電動工具に対しても適用することが可能である。
【0061】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
10 刈払い機、11 駆動部、12 操作棹、13 刈刃部、13a ホルダ、13b 防護カバー、14 ハンドル、15 ホック、21 左グリップ、40 把持部、40a,40b 半割部材、40a ネジ溝、40b ネジ孔、41 メイントリガーレバー、41a 支軸、41b 指掛け部、41c スイッチ押圧片、41d 突起部、42 メイントリガー用コイルばね、43 起動用マイクロスイッチ、45 高速トリガーレバー、45a 支軸、45b 指掛け部、45c スイッチ押圧片、46 高速用マイクロスイッチ、47 規定壁、50 操作代付与手段、51 スイッチ台、51a 回動軸、52 第二の捻じりコイルばね、54 案内溝、91,92 コイルばね、130 操作代付与手段、131 高速トリガーレバー、131a 支軸、131b 凸部、132 プッシュバー、133 圧縮コイルばね、161 高速トリガーレバー、161a 反り形状、G グリップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と電気的に接続されたスイッチ装置と、操作者からの操作を受けることで前記スイッチ装置のオン/オフを実行可能なトリガーレバーとが、操作者から把持を受ける把持部に設置された電動工具において、
前記トリガーレバーが操作されて前記スイッチ装置がオンした状態から、前記トリガーレバーが前記スイッチ装置をオンした状態のままで更に操作できるように、操作代付与手段を備えることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具において、
前記操作代付与手段が、前記トリガーレバーに設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具において、
前記操作代付与手段は、
前記トリガーレバーに対して支軸を介して回動自在に取り付けられたプッシュバーと、
前記トリガーレバーと前記プッシュバーとの間に設置された弾性部材と、
を有して構成され、
前記トリガーレバーが操作されると、前記プッシュバーが前記スイッチ装置と接触して前記スイッチ装置をオンし、前記プッシュバーが前記スイッチ装置をオンした状態のままで更に前記弾性部材の弾性範囲内で前記トリガーレバーが操作できるように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1に記載の電動工具において、
前記操作代付与手段が、前記スイッチ装置に設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項5】
請求項4に記載の電動工具において、
前記操作代付与手段は、少なくとも前記スイッチ装置に設置された弾性部材を有し、
前記トリガーレバーから押圧力を受ける前記スイッチ装置が、前記弾性部材の弾性範囲内で前記トリガーレバーからの押圧方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電動工具において、
前記操作代付与手段は、
前記スイッチ装置を載置するとともに前記把持部に対して移動可能に設置されるスイッチ台と、
前記スイッチ台と前記把持部との間に設けられる弾性部材と、
を有して構成されることを特徴とする電動工具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動工具において、
前記トリガーレバーは、
駆動源を起動するメイントリガーレバーと、
前記メイントリガーレバーとは別体に設けられ、前記駆動源の高速運転を行うために設けられる高速トリガーレバーと、
を少なくとも含んで構成されることを特徴とする電動工具。
【請求項8】
請求項7に記載の電動工具において、
前記高速トリガーレバーは、先端部近傍に反り形状を有し、
前記高速トリガーレバーが前記メイントリガーレバーに沿った位置に移動したときに、前記高速トリガーレバーの前記先端部近傍が前記メイントリガーレバーとの間に隙間を有するように構成されていることを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−182083(P2012−182083A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45533(P2011−45533)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】