説明

電動式建設機械

【課題】充電時間が短くとも、バッテリ装置の充電率を高めることができる電動式建設機械を提供する。
【解決手段】複数のバッテリ系統56A,56Bを有するバッテリ装置7と、バッテリ系統56A,56Bのうちの一方を選択的に接続し、接続されたバッテリ系統からの直流電力を交流電力に変換して電動モータ31に供給するモータ駆動制御機能を有するインバータ装置32とを備える。インバータ装置32は、バッテリ系統56A,56Bのうちの一方を選択的に接続し、接続されたバッテリ系統に外部の商用電源48からの電力を供給するバッテリ充電制御機能を有する。充電開始時にバッテリ系統56A,56Bの電圧が上限値V1未満である場合に、バッテリ系統56Aの定電流充電を開始し、その後、バッテリ系統56Aが満充電状態となる前にバッテリ系統56Bに接続を切換えて、バッテリ系統56Bの定電流充電を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式油圧ショベル等の電動式建設機械に係わり、特に、電動モータの電力源としてバッテリ装置を搭載した電動式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式建設機械の一つである電動式油圧ショベルは、例えば、電動モータによって駆動する油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、ブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、及びバケット用油圧シリンダ等)と、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、複数の方向切換弁をそれぞれ操作する操作手段(詳細には、例えば操作レバーの操作位置に対応するパイロット圧を出力する複数の操作装置)とを備えている。
【0003】
この電動式油圧ショベルにおいて、電動モータの電力源であるバッテリを搭載したものが知られている。バッテリは、例えばリチウムイオンを材料とし、1セルと呼ばれる最小単位構成が有り、市販レベルの最終形態は複数セルを1パックとした1モジュールという形となっている。そして、例えば特許文献1に記載の電動式油圧ショベルでは、複数のモジュール(すなわち、複数のバッテリ)からなるバッテリ装置を搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−44408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。上記特許文献1には明確に記載されていないものの、上記バッテリ装置は、全てのバッテリが直列接続されており、全てのバッテリからの電力供給によって電動モータを駆動する。すなわち、バッテリ系統が1つしかなく、全てのバッテリを同時に使用している。ここで、例えば工事現場などで稼働中の電動式油圧ショベルは、バッテリ装置の蓄電残量が低下して充電させたい場合に、充電場所まで自走するか、若しくは充電施設へ運搬してもらうために運搬車輌の荷台まで自走する必要がある。そして、運転者が気づかずに、全てのバッテリの蓄電残量が無くなってしまうと、電動式油圧ショベルが停止して自走できないことから、充電が困難となる。
【0006】
そこで、本願発明者らは、バッテリ装置を複数のバッテリ系統で構成し、それらのうちの1つのバッテリ系統を選択的に接続し、その1つのバッテリ系統からの直流電力をインバータで交流電力に変換して電動モータに供給するような構成(すなわち、全てのバッテリを同時に使用しないような構成)を提案する。このような構成では、例えば、使用中の1つのバッテリ系統の蓄電残量が無くなってしまい、電動式油圧ショベルが停止しても、他のバッテリ系統に接続を切換えることにより、電動式油圧ショベルを稼働することが可能である。したがって、電動式油圧ショベルが自走可能となり、充電が困難となるのを防ぐことができる。また、1つのバッテリ系統が所定の充電状態から完全放電状態となるまでのショベル稼働時間を、運転者は体感することが可能である。そのため、バッテリ系統を切換えた後、そのバッテリ系統を使い切るまでの時間が予測しやすくなり、充電タイミングを計画することができる。
【0007】
ところで、一般的に、リチウムイオン型のバッテリにおいては、充電電圧や充電電流が制限されており、定電流・定電圧方式にて充電を行うことが知られている。定電流・定電圧方式とは、最初、バッテリの電圧が上限値未満であれば、定電流充電し、その後、電圧が上限値(例えば1セル当たり4.1〜4.2V程度)に達すれば、定電圧充電する方式である。そして、上述した複数のバッテリ系統を有するバッテリ装置を充電する場合には、一例として、次のような手順が考えられる。例えば一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が上限値未満である場合に、一のバッテリ系統を定電流充電し、一のバッテリ系統の電圧が上限値に達したら一のバッテリ系統を定電圧充電し、一のバッテリ系統が満充電状態となったら他のバッテリ系統に切換えて、他のバッテリ系統を定電流充電し、他のバッテリ系統の電圧が上限値に達したら他のバッテリ系統を定電圧充電し、他のバッテリ系統を満充電状態にする。
【0008】
しかし、全てのバッテリ系統を満充電状態にするまでの充電時間は長く、そのように長い充電時間をとることが困難な場合がある。そのため、例えば作業の合間の休憩時間に充電する場合のように充電時間が短くとも、バッテリ装置の充電率を高めたいという要望がある。
【0009】
本発明の目的は、充電時間が短くとも、バッテリ装置の充電率を高めることができる電動式建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、電動モータと、前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油により駆動する複数の油圧アクチュエータと、直列接続された複数のバッテリからなるバッテリ系統を複数有するバッテリ装置と、前記複数のバッテリ系統のうちのいずれか1つを選択的に接続する接続切換手段と、前記接続切換手段で選択的に接続されたバッテリ系統から供給された直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに制御するインバータとを備えた電動式建設機械であって、前記接続切換手段で選択的に接続されたバッテリ系統に外部電源からの電力を供給し、前記バッテリ系統の電圧が予め設定された上限値未満であれば定電流充電を行い、前記バッテリ系統の電圧が前記上限値に達すれば定電圧充電を行う充電制御手段とを備え、前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統の定電流充電を開始し、その後、前記一のバッテリ系統が満充電状態となる前に前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統の定電流充電を開始する。
【0011】
比較例として、一のバッテリ系統を充電して満充電状態となってから他のバッテリ系統を充電する場合を想定する。このような比較例と比べて、本発明は、全てのバッテリ系統を満充電状態とするための充電時間がとれず、充電時間が短くなるときに、充電率を高めることができる。詳しく説明すると、一般的に、定電圧充電時は、定電流充電時と比べ、充電電流が小さく充電効率(言い換えれば、単位時間当たりの充電量)が低い。また、定電圧充電の間でも、満充電状態に近づくにつれて充電電流が小さくなり充電効率が低くなる。そのため、満充電状態により近い状態の一のバッテリ系統を充電するよりも、満充電状態により遠い状態の他のバッテリ系統を充電したほうが充電効率を高めることができる。したがって、充電時間が短くとも、バッテリ装置の充電率を高めることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統を定電流充電し、前記一のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達した直後、前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統の定電流充電を開始する。
【0013】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統を定電流充電し、前記一のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達した直後、前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統を定電流充電し、前記他のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達したら、前記他のバッテリ系統を定電圧充電する。
【0014】
比較例として、一のバッテリ系統を定電流充電し、一のバッテリ系統の電圧が上限値に達した直後、他のバッテリ系統に接続を切換えて、他のバッテリ系統を定電流充電し、他のバッテリ系統の電圧が上限値に達した直後、一のバッテリ系統に接続を切換えて、一のバッテリ系統を定電圧充電する場合を想定する。このような比較例と比べて、本発明は、バッテリ系統の接続切換回数を低減することができ、接続切換用部品の寿命を向上させることができる。
【0015】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記充電制御手段は、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統及び前記他のバッテリ系統のうちの一方を選択的に接続して、前記一方のバッテリ系統を定電圧充電し、その後、前記一方のバッテリ系統が満充電状態となる前に前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統及び前記他のバッテリ系統のうちの他方に接続を切換えて、前記他方のバッテリ系統を定電圧充電する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、充電時間が短くとも、バッテリ装置の充電率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における電動式油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態における電動式油圧ショベルの全体構造を表す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態における油圧駆動装置の構成を表す油圧回路図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるインバータ装置の構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態における昇降圧器の構成を表す電気回路図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるバッテリ装置の構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるモータ駆動制御の処理内容を表すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態におけるバッテリ充電制御の処理内容を表すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図10】比較例におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図11】本発明の一変形例におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態におけるバッテリ充電制御の処理内容を表すフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施形態におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の適用対象として電動式油圧ショベルを例にとり、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本実施形態における電動式油圧ショベルの全体構造を表す側面図であり、図2は、上面図である。なお、以降、電動式油圧ショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中右側)、後側(図1中左側)、左側(図1中紙面に向かって奥側)、右側(図1中紙面に向かって手前側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0020】
これら図1及び図2において、電動式油圧ショベル(本実施形態では、運転質量6トン未満のミニショベル)は、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2の基礎下部構造をなす旋回フレーム3と、この旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト4と、このスイングポスト4に上下方向に回動可能(俯仰可能)に連結された多関節型の作業機5と、旋回フレーム4上に設けられたキャノピータイプの運転室6と、旋回フレーム4上の後側に設けられバッテリ装置7(後述の図3、図4、及び図6参照)を収納するバッテリ装置搭載部8とを備えている。
【0021】
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪10,10と、トラックフレーム9の左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)11,11と、左右それぞれの駆動輪10と従動輪11とで掛けまわされた左右の履帯(クローラ)12,12とを備えている。そして、左の走行用油圧モータ13A(後述の図3参照)の駆動により左の駆動輪10(すなわち、左の履帯12)が回転し、右の走行用油圧モータ13Bの駆動により右の駆動輪10(すなわち、右の履帯12)が回転するようになっている。
【0022】
トラックフレーム9の前側には排土用のブレード14が上下動可能に設けられており、このブレード14はブレード用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により上下動するようになっている。
【0023】
トラックフレーム9の中央部には旋回輪15が設けられ、この旋回輪15を介し旋回フレーム3が旋回可能に設けられており、旋回フレーム3(すなわち、上部旋回体2)は旋回用油圧モータ(図示せず)の駆動により旋回するようになっている。
【0024】
スイングポスト4は、旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられており、スイング用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮駆動により左右方向に回動するようになっている。これにより、作業機5が左右にスイングするようになっている。
【0025】
作業機5は、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム16と、このブーム16に上下方向に回動可能に連結されたアーム17と、このアーム17に上下方向に回動可能に連結されたバケット18とを備えている。ブーム16、アーム17、及びバケット18は、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21により上下方向に回動するようになっている。なお、バケット18は、例えばオプション用油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能になっている。
【0026】
運転室6には、運転者が着座する運転席(座席)22が設けられている。運転席22の前方には、手または足で操作可能とし前後方向に操作することで左右の旋回用油圧モータ13A,13B(すなわち、左右の履帯12,12)の動作をそれぞれ指示する左右の走行用操作レバー23A,23B(但し、後述の図3で23Aのみ示す)が設けられている。左の走行用操作レバー23Aのさらに左側の足元部分には、左右方向に操作することでオプション用油圧アクチュエータ(すなわち、アタッチメント)の動作を指示するオプション用操作ペダル(図示せず)が設けられている。右の走行用操作レバー23Bのさらに右側の足元部分には、左右方向に操作することでスイング用油圧シリンダ(すなわち、スイングポスト4)の動作を指示するスイング用操作ペダル(図示せず)が設けられている。
【0027】
運転席22の左側には、前後方向に操作することでアーム用油圧シリンダ20(すなわち、アーム17)の動作を指示し、左右方向に操作することで旋回用油圧モータ(すなわち、上部旋回体2)の動作を指示する十字操作式のアーム・旋回用操作レバー24A(図示せず)が設けられている。運転席22の右側には、前後方向に操作することでブーム用油圧シリンダ19(すなわち、ブーム16)の動作を指示し、左右方向に操作することバケット用油圧シリンダ21(すなわち、バケット18)の動作を指示する十字操作式のブーム・バケット用操作レバー24Bが設けられている。また、運転席22の右側には、前後方向に操作することでブレード用油圧シリンダ(すなわち、ブレード14)の動作を指示するブレード用操作レバー(図示せず)が設けられている。
【0028】
また、運転席22の左側(言い換えれば、運転室6の乗降口)には、ロック解除位置(詳細には、運転者の乗降を妨げる下降位置)とロック位置(詳細には、運転者の乗降を許容する上昇位置)に操作されるゲートロックレバー(図示せず)が設けられている。また、運転席22の右側には、キースイッチ25、ダイヤル26、充電スイッチ27、切換スイッチ28、及び残量表示器29A,29B(後述の図4及び図6参照)等が設けられている。また、運転席22の右側前方には、モニタ30が設けられている。
【0029】
図3は、上述した電動式油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置の構成を表す油圧回路図である。なお、この図3においては、代表として、左の走行用油圧モータ13A及びブーム用油圧シリンダ19に係わる構成を表している。
【0030】
図3において、電動モータ31と、この電動モータ31の電力源であるバッテリ装置7と、電動モータ31への供給電力を制御して電動モータ31を駆動制御するインバータ装置32と、電動モータ31によって駆動する油圧ポンプ33及びパイロットポンプ34と、上述した左走行用操作レバー23Aを備えた油圧パイロット式の操作装置35と、左走行用操作レバー23Aの前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33から左走行用油圧モータ13Aへの圧油の流れを制御する左走行用方向切換弁36とが設けられている。また、上述したバケット・ブーム用操作レバー24Bを備えた油圧パイロット式の操作装置37と、バケット・ブーム用操作レバー24Bの前後方向の操作に応じて油圧ポンプ33からブーム用油圧シリンダ19への圧油の流れを制御するブーム用方向切換弁38とが設けられている。なお、図示しないが、右走行用油圧モータ13B、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダに係わる構成もほぼ同様である。
【0031】
左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38等(詳細には、図示しない右走行用方向切換弁、アーム用方向切換弁、バケット用方向切換弁、旋回用方向切換弁、スイング用方向切換弁、及びブレード用方向切換弁を含む)は、センタバイパス型のものであり、センタバイパスライン39上に位置するセンタバイパス通路をそれぞれ有している。各方向切換弁のセンタバイパス通路は、センタバイパスライン39に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にある場合に連通し、図3中左側又は右側の切換位置に切換えられると遮断するようになっている。センタバイパスライン39の上流側は油圧ポンプ33の吐出ライン40に接続され、センタバイパスライン39の下流側はタンクライン41に接続されている。
【0032】
また、左走行用方向切換弁36及びブーム用方向切換弁38等は、油圧信号ライン42上に位置する信号通路をそれぞれ有している。すなわち、各方向切換弁の信号通路は、油圧信号ライン42に直列に接続されており、各方向切換弁のスプールが中立位置にある場合に連通し、図3中左側又は右側の切換位置に切換えられると遮断するようになっている。油圧信号ライン42の上流側はパイロットポンプ34の吐出ライン43から分岐するように接続され、油圧信号ライン42の下流側はタンクライン41に接続されている。油圧信号ライン41における最上流の方向切換弁36の上流側には固定絞り44が設けられ、この固定絞り44と方向切換弁36との間に圧力スイッチ45(操作検出手段)が設けられている。圧力スイッチ45は、方向切換弁36の上流側の油圧を導入し、これが予め設定された閾値に達した場合に接点を閉じるようになっている。これにより、全ての方向切換弁のうちのいずれかが切換えられたか否か、すなわち、全ての油圧アクチュエータ(詳細には、左右の走行用油圧モータ13A,13B、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21、旋回用油圧モータ、スイング用油圧シリンダ、及びブレード用油圧シリンダ)のうちのいずれかが操作されているか否かを検出し、いずれかの油圧アクチュエータが操作されている場合にON信号を出力するようになっている。
【0033】
左走行用方向切換弁36は、操作装置35からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置35は、前述した左走行用操作レバー23Aと、この操作レバー23Aの前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー23Aを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の図3中右側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が図3中右側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが前方向に回転し、左の駆動輪10及び履帯12が前方向に回転するようになっている。一方、例えば操作レバー23Aを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が左走行用方向切換弁36の図3中左側の受圧部へ出力され、これによって左走行用方向切換弁36が図3中左側の切換位置に切換えられる。これにより、左の走行用油圧モータ13Aが後方向に回転し、左の駆動輪10及び履帯12が後方向に回転するようになっている。
【0034】
ブーム用方向切換弁38は、操作装置37からのパイロット圧によって切換えられるようになっている。操作装置37は、ブーム・バケット用操作レバー24Bと、この操作レバー24Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプ34の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁(図示せず)等を有している。そして、例えば操作レバー24Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の図3中右側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が図3中右側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が縮短し、ブーム16が下がるようになっている。一方、例えば操作レバー24Bを後側に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁38の図3中左側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁38が図3中左側の切換位置に切換えられる。これにより、ブーム用油圧シリンダ19が伸張し、ブーム16が上がるようになっている。
【0035】
パイロットポンプ34の吐出ライン43には、パイロットポンプ34の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ34の吐出ライン43にはロック弁46が設けられており、このロック弁46は、上述したゲートロックレバーの操作に応じて切換えられるようになっている。詳細には、ゲートロックレバーがロック解除位置(下降位置)にある場合に閉じ状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に開き状態となるロックスイッチ47(後述の図4参照)が設けられている。そして、例えばロックスイッチ47が閉じ状態になると、このロックスイッチ47を介してロック弁46のソレノイド部が通電されて、ロック弁46が図3中下側の切換位置に切換えられる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を連通して、パイロットポンプ34の吐出圧が操作装置35,37等に導入される。一方、ロックスイッチ47が開き状態になると、ロック弁46のソレノイド部が通電されず、バネの付勢力で、ロック弁46が図3中上側の中立位置となる。これにより、パイロットポンプ34の吐出ライン43を遮断する。その結果、操作装置35,37等を操作してもパイロット圧が生成されず、油圧アクチュエータが作動しないようになっている。
【0036】
図4は、本実施形態におけるインバータ装置32の構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0037】
この図4において、インバータ装置32は、バッテリ装置7からの電力を電動モータ31に供給して電動モータ31を駆動するモータ駆動制御と、外部の商用電源48からのケーブルが接続された場合に商用電源48からの電力をバッテリ装置7に供給してバッテリ装置7を充電するバッテリ充電制御と、を選択的に行えるようになっている。
【0038】
このインバータ装置32は、バッテリ充電制御時に商用電源48からの電圧200Vの交流を直流に変換する整流器49と、バッテリ充電制御時に整流器49からの直流の電圧を降圧してバッテリ装置7に供給する降圧機能、及びモータ駆動制御時にバッテリ装置7からの直流の電圧200V程度を300V程度まで昇圧する昇圧機能を有する昇降圧器50と、モータ駆動制御時に昇降圧器50からの直流に基づき交流を生成して電動モータ31に供給するインバータ51と、バッテリ装置7と昇降圧器50との間に設けられた制御切換用開閉器(常開接点型の継電器)52Aと、整流器49の上流側(言い換えれば、商用電源48と整流器49との間)に設けられた制御切換用開閉器(常開接点型の継電器)52Bと、演算制御部53とを有している。昇降圧器50は、この種のものとして公知の昇降圧チョッパであり、例えば図5で示すように、スイッチング素子60a〜60d、ダイオード61a〜61d、リアクタンス62、電流センサ63、及び電解コンデンサ64で構成されている。
【0039】
インバータ装置32の演算制御部53は、上述したキースイッチ25、ダイヤル26、充電スイッチ27、切換スイッチ28、圧力スイッチ45、及びロックスイッチ47等からの信号が入力されるとともに、後述するバッテリ装置7のバッテリコントローラ54A,54Bとの間で通信可能としている。また、昇降圧器50、インバータ51、制御切換用開閉器52A,52Bを制御するとともに、モニタ30に表示信号を出力するようになっている。
【0040】
キースイッチ25は、キーシリンダ及びこのキーシリンダに挿入可能なキーで構成されており、キーの回転操作位置(OFF位置、ON位置、又はSTART位置)に応じて信号を出力するようになっている。ダイヤル26は、電動モータ31の目標回転数を指示するものであり、その回転操作位置に対応した目標回転数の信号を出力するようになっている。充電スイッチ27は、バッテリ充電制御のON・OFFを指示するものであり、その操作位置(OFF位置又はON位置)に応じて信号を出力するようになっている。
【0041】
そして、インバータ装置32の演算制御部53は、例えば、キースイッチ25からの信号の有無によってキースイッチ25がSTART位置に操作されたと判定し、ロックスイッチ47からの信号の有無によってゲートロックレバーがロック位置にあると判定した場合に、モータ駆動制御を開始するようになっている。すなわち、演算制御部53は、制御切換用開閉器52Aを閉状態、制御切換用開閉器52Bを開状態に制御するとともに、昇降圧器50へ昇圧の指令を出力する。昇降圧器50は、この指令に応じて、バッテリ装置7からの直流の電圧200V程度を300V程度まで昇圧するようになっている。また、演算制御部53は、ダイヤル26で指示された目標回転数の指令をインバータ51へ出力する。インバータ51は、この指令に応じて、電動モータ31の実回転数が目標回転数となるように、電動モータ31の印加電圧を制御するようになっている。
【0042】
また、インバータ装置32の演算制御部53は、例えば、電動モータ31の駆動中、圧力スイッチ45からの信号の有無によって全ての油圧アクチュエータが操作されていない状態であると判定し、その状態で予め設定された所定時間(例えば4秒)が経過した場合に、予め設定された所定の低速回転数(アイドル回転数)の指令をインバータ51へ出力する。インバータ51は、この指令に応じて、電動モータ31の実回転数が所定の低速回転数となるように、電動モータ31の印加電圧を制御するようになっている。
【0043】
また、インバータ装置32の演算制御部53は、例えば、電動モータ31の駆動中、キースイッチ25からの信号の有無によってキースイッチ25がOFF位置に操作されたと判定した場合に、インバータ51へ停止の指令を出力する。インバータ51は、この指令に応じて、電動モータ31を停止させるようになっている。
【0044】
また、インバータ装置32の演算制御部53は、例えば、キースイッチ25からの信号の有無によってキースイッチ25がOFF位置にあると判定し、充電スイッチ27からの信号の有無によって充電スイッチ27がON位置に操作されたと判定し、ケーブル接続検出回路(図示せず)からの信号の有無によって商用電源48からのケーブルが接続されたと判定した場合に、バッテリ充電制御を行うようになっている。すなわち、演算制御部53は、制御切換用開閉器52A,52Bを閉状態に制御するとともに、昇降圧器50へ降圧の指令を出力する。昇降圧器50は、この指令に応じて、整流器49からの直流の電圧を降圧してバッテリ装置7に供給するようになっている。
【0045】
また、インバータ装置32の演算制御部53は、例えば、バッテリ装置7の充電中、充電スイッチ27からの信号の有無によって充電スイッチ27がOFF位置に操作されたと判定した場合に、昇降圧器50へ停止の指令を出力する。昇降圧器50は、この指令に応じて、充電を停止させるようになっている。
【0046】
図6は、本実施形態におけるバッテリ装置7の構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0047】
この図6において、バッテリ装置7は、直列接続された例えば9個(図5では代表して3個のみ示す)のバッテリ(言い換えれば、モジュール)55からなる第1のバッテリ系統56Aと、直列接続された例えば9個(図5では代表して3個のみ示す)のバッテリ55からなる第2のバッテリ系統56Bとを有している。また、バッテリ装置7は、第1のバッテリ系統56Aに対応する第1のバッテリコントローラ54Aと、第2のバッテリ系統56Bに対応する第2のバッテリコントローラ54Bとを有している。各バッテリ55は、詳細を図示しないが、例えばリチウムイオンを材料とした8個のセルからなり、それらセルを監視するセルコントローラが設けられている。
【0048】
第1のバッテリ系統56Aにおける各セルコントローラは、各バッテリ55の情報(詳細には、電圧及び温度等の状態量)を取得して第1のバッテリコントローラ54Aに出力する。また、第1のバッテリ系統56Aの正極側(図5中右側)には、第1の電流センサ57A及び第1の接続切換用開閉器(常開接点型の継電器)58Aが設けられており、第1の電流センサ57Aは、第1のバッテリ系統56Aの電流を検出して、第1のバッテリコントローラ54Aに出力する。
【0049】
第1のバッテリコントローラ54Aは、複数のセルコントローラから取得した各バッテリ55の電圧情報に基づき第1のバッテリ系統56Aの総電圧を演算し、さらに第1の電流センサ57Aから取得した電流情報に基づき第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量を演算する。そして、演算した第1のバッテリ系統56Aの総電圧及び蓄電残量をインバータ装置32の演算制御部53へ送信する。また、第1のバッテリコントローラ54Aは、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量が例えば10段階の充電状態(詳細には、「0」は完全放電状態を意味し、「10」は満充電状態を意味する)のいずれに該当するかを判定し、これに対応する表示信号を残量表示器29Aに出力する。残量表示器29Aは、例えば10セグメントのバーを点灯・消灯することにより、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量を10段階で表示するようになっている。
【0050】
また、第1のバッテリコントローラ54Aは、複数のセルコントローラから取得した複数のバッテリの情報に基づき第1のバッテリ系統56Aに異常が生じていなかいかどうかを判断しており、異常が生じたと判断した場合にエラー信号をインバータ装置32の演算制御部53へ送信するようになっている。
【0051】
同様に、第2のバッテリ系統56Bにおける各セルコントローラは、各バッテリ55の情報を取得して第2のバッテリコントローラ54Bに出力する。第2のバッテリ系統56Bの正極側(図5中右側)には、第2の電流センサ57B及び第2の接続切換用開閉器(常開接点型の継電器)58Bが設けられており、第2の電流センサ57Bは、第2のバッテリ系統56Bの電流を検出して、第2のバッテリコントローラ54Bに出力する。
【0052】
第2のバッテリコントローラ54Bは、複数のセルコントローラから取得した複数のバッテリの電圧情報に基づき第2のバッテリ系統56Bの総電圧を演算し、さらに第2の電流センサ57Bから取得した電流情報に基づき第2のバッテリ系統56Bの蓄電残量を演算する。そして、演算した第2のバッテリ系統56Bの総電圧及び蓄電残量をインバータ装置32の演算制御部53へ送信する。また、第2のバッテリコントローラ54Bは、第2のバッテリ系統56Bの蓄電残量が例えば10段階の充電状態のいずれに該当するかを判定し、これに対応する表示信号を残量表示器29Bに出力する。残量表示器29Bは、例えば10セグメントのバーを点灯・消灯することにより、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量を10段階で表示するようになっている。
【0053】
また、第2のバッテリコントローラ54Bは、複数のセルコントローラから取得した複数のバッテリの情報に基づき第2のバッテリ系統56Bに異常が生じていなかいかどうかを判断しており、異常が生じたと判断した場合にエラー信号をインバータ装置32の演算制御部53へ送信するようになっている。
【0054】
切換スイッチ28(前述の図4参照)は、手動操作により、バッテリ系統56A,56Bのうちのいずれか1つのバッテリ系統を選択するものであり、その操作位置に対応した選択信号を出力するようになっている。そして、インバータ装置32の演算制御部53は、切換スイッチ28から第1のバッテリ系統56Aの選択信号を入力した場合に、第1のバッテリコントローラ54Aを介して第1の接続切換用開閉器58Aを閉状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bを介して第2の接続切換用開閉器58Bを開状態に制御する。これにより、第1のバッテリ系統56Aがインバータ装置32の昇降圧器50に接続されるようになっている。また、インバータ装置32の演算制御部53は、切換スイッチ28から第2のバッテリ系統56Bの選択信号を入力した場合に、第1のバッテリコントローラ54Aを介して第1の接続切換用開閉器58Aを開状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bを介して第2の接続切換用開閉器58Bを閉状態に制御する。これにより、第2のバッテリ系統56Bがインバータ装置32の昇降圧器50に接続されるようになっている。
【0055】
次に、モータ駆動制御の処理手順を、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態におけるモータ駆動制御の処理内容を表すフローチャートである。
【0056】
切換スイッチ28で第1のバッテリ系統56Aが選択された場合を例にとって説明すると、ステップ100にて、インバータ装置32の演算制御部53は、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量が無くなったかどうか(言い換えれば、完全放電状態に達したかどうか)を判定する。例えば完全放電状態に達していない場合は、ステップ100の判定が満たされず、ステップ110に移る。ステップ110では、第1のバッテリコントローラ54Aへ閉指令信号を送信し、第2のバッテリコントローラ54Bへ開指令信号を送信する。これに応じて、第1のバッテリコントローラ54Aは第1の接続切換用開閉器58Aを閉状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bは第2の接続切換用開閉器58Bを開状態に制御する。これにより、第1のバッテリ系統56Aがインバータ装置32の昇降圧器50に接続される。
【0057】
その後、ステップ120に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、昇降圧器50へ昇圧の指令を出力し、インバータ51へ目標回転数の指令を出力する。これにより、第1のバッテリ系統56Aからの直流の電圧が昇降圧器50によって昇圧され、この直流に基づいてインバータ51によって生成された交流が電動モータ31に供給され、電動モータ31が駆動する。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、前述した検出信号により第1のバッテリ系統56Aが放電中であることを、モニタ30に表示させる。
【0058】
そして、前述のステップ100の判定が満たされるまで、前述のステップ110及び120の手順が繰返し行われる。すなわち、電動モータ31の駆動(言い換えれば、第1のバッテリ系統56Aの放電)を継続させる。ただし、バッテリコントローラ54A又は54Bからエラー信号を受信した場合には、昇降圧器50及びインバータ51へ停止の指令を出力して、電動モータ31を停止させる。このとき、モニタ30にエラー表示信号を出力し、ブザーに駆動信号を出力する。これに応じて、モニタ30の異常表示灯が点灯し、ブザーが吹鳴する。
【0059】
一方、例えば第1のバッテリ系統56Aが完全放電状態に達した場合は、ステップ100の判定が満たされ、ステップ130に移る。ステップ130では、インバータ装置32の演算制御部53は、第1のバッテリコントローラ54Aを介し残量表示器29Aに完全放電の表示信号を出力する。残量表示器29Aは、その表示信号に応じて完全放電状態を表示するため、例えば10セグメントのバーのうち両側のみを点滅させる。そして、ステップ140に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、インバータ51へ停止の指令を出力して、電動モータ31を停止させる(モータ停止手段)。このとき、ブザーに駆動信号を出力して、ブザーが吹鳴する。
【0060】
その後、ステップ150に進み、切換スイッチ28からの選択信号により、切換スイッチ28が操作されて第2のバッテリ系統56Bが選択されたかどうかを判定する。例えば切換スイッチ28が操作されず第2のバッテリ系統56Bが選択されない場合は、ステップ150の判定が満たされず、前述のステップ140に戻って上記同様の手順を繰返す。
【0061】
そして、例えば切換スイッチ28が操作されて第2のバッテリ系統56Bが選択された場合は、ステップ150の判定が満たされ、ステップ160に移る。ステップ160では、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量が無くなったかどうか(言い換えれば、完全放電状態に達したかどうか)を判定する。例えば完全放電状態に達していない場合は、ステップ160の判定が満たされず、ステップ170に移る。ステップ170では、第1のバッテリコントローラ54Aへ開指令信号を送信し、第2のバッテリコントローラ54Bへ閉指令信号を送信する。これに応じて、第1のバッテリコントローラ54Aは第1の接続切換用開閉器58Aを開状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bは第2の接続切換用開閉器58Bを閉状態に制御する。これにより、第2のバッテリ系統56Bがインバータ装置32の昇降圧器50に接続される。その後、ステップ180に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、昇降圧器50へ昇圧の指令を出力し、インバータ51へ目標回転数の指令を出力する。これにより、第2のバッテリ系統56Bからの直流の電圧が昇降圧器50によって昇圧され、この直流に基づいてインバータ51によって生成された交流が電動モータ31に供給され、電動モータ31が駆動する。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、第2のバッテリ系統56Bが放電中であることを、モニタ30に表示させる。
【0062】
そして、前述のステップ160の判定が満たされるまで、前述のステップ170及び180の手順が繰返し行われる。すなわち、電動モータ31の駆動(言い換えれば、第2のバッテリ系統56Bの放電)を継続させる。ただし、バッテリコントローラ54A又は54Bからエラー信号を受信した場合には、昇降圧器50及びインバータ51へ停止の指令を出力して、電動モータ31を停止させる。このとき、モニタ30にエラー表示信号を出力し、ブザーに駆動信号を出力する。これに応じて、モニタ30の異常表示灯が点灯し、ブザーが吹鳴する。
【0063】
一方、例えば第2のバッテリ系統56Bが完全放電状態に達した場合は、ステップ160の判定が満たされ、ステップ190に移る。ステップ190では、インバータ装置32の演算制御部53は、第2のバッテリコントローラ54Bを介し残量表示器29Bに完全放電の表示信号を出力する。残量表示器29Bは、その表示信号に応じて完全放電状態を表示するため、例えば10セグメントのバーのうち両側のみを点滅させる。そして、ステップ200に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、インバータ51へ停止の指令を出力して、電動モータ31を停止させる(モータ停止手段)。このとき、ブザーに駆動信号を出力して、ブザーが吹鳴する。
【0064】
次に、本実施形態の要部であるバッテリ充電制御の処理手順を、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態におけるバッテリ充電制御の処理内容を表すフローチャートである。
【0065】
ステップ210にて、インバータ装置32の演算制御部53は、第1のバッテリコントローラ54Aから取得した第1のバッテリ系統56Aの総電圧が予め設定された上限値V(本実施形態では、各セルの電圧の上限値4.15V×各バッテリ8のセル数8個×第1のバッテリ系統56Aのバッテリ数9個=298.8V)未満であるかどうか(言い換えれば、第1のバッテリ系統56Aの蓄電残量が80%未満であるかどうか)を判定する。
【0066】
そして、例えば第1のバッテリ系統56Aの総電圧が上限値V未満である場合は、ステップ210の判定が満たされ、ステップ220に移る。ステップ220では、第1のバッテリコントローラ54Aへ閉指令信号を送信し、第2のバッテリコントローラ54Bへ開指令信号を送信する。これに応じて、第1のバッテリコントローラ54Aは第1の接続切換用開閉器58Aを閉状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bは第2の接続切換用開閉器58Bを開状態に制御する。これにより、第1のバッテリ系統56Aがインバータ装置32の昇降圧器50に接続される。
【0067】
その後、ステップ230に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、第1のバッテリ系統56Aの定電流充電を行う。詳しく説明すると、インバータ装置32の演算制御部53は、昇降圧器50の電流センサ63で検出された充電電流の検出値を入力しており、この充電電流の検出値が予め設定された所定値A(例えばA=0.5C=45A)となるように昇降圧器50に指令信号を出力する。これにより、昇降圧器50のスイッチグ素子60a〜60dがON・OFF制御され、充電電流が所定値A1となる。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、第1のバッテリ系統56Aが充電中であることを、モニタ30に表示させる。
【0068】
そして、前述のステップ210の判定が満たされなくなるまで、前述のステップ220及び230の手順が繰返し行われる。すなわち、第1のバッテリ系統56Aの総電圧が上限値Vに達するまで、第1のバッテリ系統56Aの定電流充電を継続させる。
【0069】
例えばステップ210にて第1のバッテリ系統56Aの総電圧が上限値Vに達している場合は、その判定が満たされず、ステップ240に移る。ステップ240では、インバータ装置32の演算制御部53は、第2のバッテリコントローラ54Bから取得した第2のバッテリ系統56Bの総電圧が予め設定された上限値V(本実施形態では、各セルの電圧の上限値4.15V×各バッテリ8のセル数8個×第2のバッテリ系統56Bのバッテリ数9個=298.8V)未満であるかどうか(言い換えれば、第2のバッテリ系統56Bの蓄電残量が80%未満であるかどうか)を判定する。
【0070】
そして、例えば第2のバッテリ系統56Bの総電圧が上限値V未満である場合は、ステップ240の判定が満たされ、ステップ250に移る。ステップ250では、第1のバッテリコントローラ54Aへ開指令信号を送信し、第2のバッテリコントローラ54Bへ閉指令信号を送信する。これに応じて、第1のバッテリコントローラ54Aは第1の接続切換用開閉器58Aを開状態に制御し、第2のバッテリコントローラ54Bは第2の接続切換用開閉器58Bを閉状態に制御する。これにより、第2のバッテリ系統56Bがインバータ装置32の昇降圧器50に接続される。
【0071】
その後、ステップ260に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、第2のバッテリ系統56Bの定電流充電を行う。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、第2のバッテリ系統56Bが充電中であることを、モニタ30に表示させる。そして、前述のステップ240の判定が満たされなくなるまで、前述のステップ220及び230の手順が繰返し行われる。すなわち、第2のバッテリ系統56Bの総電圧が上限値Vに達するまで、第2のバッテリ系統56Bの定電流充電を継続させる。
【0072】
ステップ240にて第2のバッテリ系統56Bの総電圧が上限値Vに達している場合は、その判定が満たされず、ステップ270に移る。ステップ270では、インバータ装置32の演算制御部53は、接続中の一方のバッテリ系統(詳細には、例えばステップ260→240→270の手順を経てれば、第2バッテリ系統56Bであり、一方、例えばステップ230→240→270の手順を経てれば、第1バッテリ系統56B)の定電圧充電を行う。詳しく説明すると、インバータ装置32の演算制御部53は、一方のバッテリ系統の総電圧が上限値Vを維持するための充電電流を演算しており、充電電流の検出値がこの演算値となるように昇降圧器50に指令信号を出力する。これにより、昇降圧器50のスイッチグ素子60a〜60dがON・OFF制御され、充電電流が演算値となる。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、一方のバッテリ系統が充電中であることを、モニタ30に表示させる。
【0073】
その後、ステップ280に進み、一方のバッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定する。具体的には、バッテリ系統の電流が予め設定された閾値A(例えばA=1A)まで低下したかどうかを判断することにより、バッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定する。あるいは、定電圧充電時間が予め設定された閾値T(例えばT=100分)経過したかどうかを判断することにより、バッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定してもよい。そして、例えば一方のバッテリ系統が満充電状態に達していない場合は、ステップ280の判定が満たされず、前述のステップ270の手順が繰返し行われる。すなわち、一方のバッテリ系統が満充電状態となるまで、一方のバッテリ系統の定電圧充電を継続させる。
【0074】
例えば一方のバッテリ系統が満充電状態に達した場合は、ステップ280の判定が満たされ、ステップ290に移る。ステップ290では、他方のバッテリ系統に接続を切換える。その後、ステップ300に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、他方のバッテリ系統の定電圧充電を行う。このとき、インバータ装置32の演算制御部53は、他方のバッテリ系統が充電中であることを、モニタ30に表示させる。
【0075】
その後、ステップ310に進み、他方のバッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定する。そして、例えば他方のバッテリ系統が満充電状態に達していない場合は、ステップ310の判定が満たされず、前述のステップ300の手順が繰返し行われる。すなわち、他方のバッテリ系統が満充電状態となるまで、他方のバッテリ系統の定電圧充電を継続させる。例えば他方のバッテリ系統が満充電状態に達した場合は、ステップ310の判定が満たされ、充電制御が終了する。
【0076】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を、比較例と比較しながら説明する。図9は、本実施形態におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートであり、図10は、比較例におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。これら図9及び図10は共に、第1のバッテリ系統56Aの電圧及び充電電流の経時変化、並びに第2のバッテリ系統56Bの電圧及び充電電流の経時変化を表している。
【0077】
本実施形態では、例えば図9で示すように充電開始時に第1のバッテリ系統56Aの電圧及び第2のバッテリ系統56Bの電圧が上限値V未満である場合に、まず、第1のバッテリ系統56Aを選択的に接続して、第1のバッテリ系統56Aを定電流充電する。そして、第1のバッテリ系統56Aの電圧が上限値Vに達したら(時間t1)、第2のバッテリ系統56Bに接続を切換えて、第2のバッテリ系統56Bを定電流充電する。そして、第2のバッテリ系統56Bの電圧が上限値Vに達したら(時間t2)、第2のバッテリ系統56Bを定電圧充電する。そして、第2のバッテリ系統56Bが満充電状態となったら(時間t3)、第1のバッテリ系統56Aに接続を切換えて、第1のバッテリ系統56Aを定電圧充電する。
【0078】
一方、比較例では、図10で示すように、第1のバッテリ系統56Aを充電して満充電状態となってから、第2のバッテリ系統56Bを充電する。詳しく説明すると、まず、第1のバッテリ系統56Aを選択的に接続して、第1のバッテリ系統56Aを定電流充電する。そして、第1のバッテリ系統56Aの電圧が上限値Vに達したら(時間t1)、第1のバッテリ系統56Aを定電圧充電する。そして、第1のバッテリ系統56Aが満充電状態となったら(時間t4)、第2のバッテリ系統56Bに接続を切換えて、第2のバッテリ系統56Bを定電流充電する。そして、第2のバッテリ系統56Bの電圧が上限値Vに達したら(時間t3)、第2のバッテリ系統56Bを定電圧充電する。
【0079】
このような比較例と比べて、本実施形態は、全てのバッテリ系統56A,56Bを満充電状態とするための充電時間がとれず、充電時間が図中のt1〜t3の間と短くなるときに、バッテリ装置7の充電率を高めることができる。詳しく説明すると、充電時間t1〜t3の範囲において、比較例では、第1のバッテリ系統56Aの定電圧充電→第2のバッテリ系統の定電流充電の制御手順で行うのに対し、本実施形態では、第2のバッテリ系統56Bの定電流充電→第2のバッテリ系統56Bの定電圧充電の制御手順で行っている。そして、図示からも明らかなように、定電圧充電時は、定電流充電時と比べ、充電電流が小さく充電効率(言い換えれば、単位時間当たりの充電量)が低い。また、定電圧充電の間でも、満充電状態に近づくにつれて充電電流が小さくなり充電効率が低くなる。そのため、充電時間t1〜t3の範囲においては、本実施形態のほうが比較例よりもバッテリ装置7の充電率を高めることができる。
【0080】
また、本実施形態においては、第2のバッテリ系統56Bの定電流充電→第2のバッテリ系統56Bの定電圧充電の制御手順とすることにより、例えば第2のバッテリ系統56Bの定電流充電→第1のバッテリ系統56Aの定電圧充電の制御手順とする場合と比べ、バッテリ系統の接続切換回数を低減することができ、接続切換用部品(接続切換用開閉器58A,58B)の寿命を向上させることができる。
【0081】
なお、上記一実施形態においては、第2のバッテリ系統56Bの定電流充電→第2のバッテリ系統56Bの定電圧充電の制御手順とする場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記第1の実施形態と比べてバッテリ系統の切換回数が多くなるものの、例えば図11で示すように第2のバッテリ系統56Bの定電流充電→第1のバッテリ系統56Aの定電圧充電の制御手順としてもよい。このような変形例においても、上記一実施形態と同様、充電時間が短くとも、バッテリ装置7の充電率を高めることができる。
【0082】
本発明の他の実施形態を図12及び図13により説明する。本実施形態は、一のバッテリ系統を定電圧充電し、その後、一のバッテリ系統が満充電状態となる前に他のバッテリ系統に接続を切換えて、他のバッテリ系統を定電圧充電する実施形態である。なお、本実施形態において、上記一実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0083】
図12は、本実施形態におけるバッテリ充電制御の処理内容を表すフローチャートである。
【0084】
本実施形態では、上記一実施形態同様、ステップ210〜270の手順を行う。その後、ステップ320に進み、接続中の一方のバッテリ系統の電流が予め設定された設定値A(但し、定電流充電時の電流値A>A>完全放電状態の電流値A)まで低下したかどうかを判定する。そして、例えば一方のバッテリ系統の電流が設定値Aまで低下していない場合は、ステップ320の判定が満たされず、前述のステップ270の手順が繰返し行われる。すなわち、一方のバッテリ系統の定電圧充電を継続させる。
【0085】
例えば一方のバッテリ系統の電流が設定値Aまで低下した場合は、ステップ320の判定が満たされ、ステップ290に移る。ステップ290では、他方のバッテリ系統に接続を切換える。その後、ステップ300に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、他方のバッテリ系統の定電圧充電を行う。
【0086】
その後、ステップ310に進み、他方のバッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定する。そして、例えば他方のバッテリ系統が満充電状態に達していない場合は、ステップ310の判定が満たされず、前述のステップ300の手順が繰返し行われる。すなわち、他方のバッテリ系統が満充電状態となるまで、他方のバッテリ系統の定電圧充電を継続させる。
【0087】
例えば他方のバッテリ系統が満充電状態に達した場合は、ステップ310の判定が満たされ、ステップ330に移る。ステップ330では、一方のバッテリ系統に接続を切換える。その後、ステップ340に進み、インバータ装置32の演算制御部53は、一方のバッテリ系統の定電圧充電を行う。
【0088】
その後、ステップ280に進み、一方のバッテリ系統が満充電状態に達したかどうかを判定する。そして、例えば一方のバッテリ系統が満充電状態に達していない場合は、ステップ280の判定が満たされず、前述のステップ340の手順が繰返し行われる。すなわち、一方のバッテリ系統が満充電状態となるまで、一方のバッテリ系統の定電圧充電を継続させる。例えば一方のバッテリ系統が満充電状態に達した場合は、ステップ280の判定が満たされ、充電制御が終了する。
【0089】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態におけるバッテリ装置充電時の動作を説明するためのタイムチャートである。
【0090】
本実施形態では、例えば図13で示すように充電開始時に第1のバッテリ系統56Aの電圧及び第2のバッテリ系統56Bの電圧が上限値V未満である場合に、まず、第1のバッテリ系統56Aを選択的に接続して、第1のバッテリ系統56Aを定電流充電する。そして、第1のバッテリ系統56Aの電圧が上限値Vに達したら(時間t1)、第2のバッテリ系統56Bに接続を切換えて、第2のバッテリ系統56Bを定電流充電する。そして、第2のバッテリ系統56Bの電圧が上限値Vに達したら(時間t2)、第2のバッテリ系統56Bを定電圧充電する。
【0091】
そして、第2のバッテリ系統56Bの電流が設定値Aまで低下したら(時間t5)、第1のバッテリ系統56Aに接続を切換えて、第1のバッテリ系統56Aを定電圧充電する。そして、第1のバッテリ系統56Aが満充電状態となったら(時間t6)、第2のバッテリ系統56Bに接続を切換えて、第2のバッテリ系統56Bを定電圧充電する。
【0092】
このような本実施形態においても、上記一実施形態と同様、充電時間が短くとも、充電率を高めることができる。また、本実施形態においては、上記一実施形態と比べて、バッテリ系統の接続切換回数が多くなるものの、充電時間が図中のt5〜t6の間と短くなるときに、さらに充電率を高めることができる。
【0093】
なお、上記実施形態等においては、インバータ装置32は、バッテリ装置7からの電力を電動モータ31に供給して電動モータ31を駆動するモータ駆動制御(第1の制御モード)、及び外部の商用電源48からのケーブルが接続された場合に商用電源48からの電力をバッテリ装置7に供給してバッテリ装置7を充電するバッテリ充電制御(第2の制御モード)を、キースイッチ25及び充電スイッチ27の操作に応じて選択的に行えるように構成し、第2の制御モード中に、例えばバッテリ系統56Aの定電流充電→バッテリ系統56Bの定電流充電などの制御手順を行う場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、前述した第1の制御モード及び第2の制御モード、商用電源48からの電力を電動モータ31に供給して電動モータ31を駆動する第3の制御モード、並びに商用電源48からの電力を電動モータ31及びバッテリ装置7に供給して電動モータ31を駆動するとともにバッテリ装置7を充電する第4の制御モードを、キースイッチ25、充電スイッチ27、及びモード選択スイッチ(図示せず)の操作に応じて選択的に行えるように構成し、第4の制御モード中に、例えばバッテリ系統56Aの定電流充電→バッテリ系統56Bの定電流充電などの制御手順を行ってもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0094】
また、上記実施形態等においては、例えばバッテリ系統56Aを定電流充電してバッテリ系統56Aの電圧が上限値に達した直後、バッテリ系統56Bに接続を切換えて、バッテリ系統56Bを定電流充電する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば例えばバッテリ系統56Aを定電流充電してバッテリ系統56Aの電圧が上限値に達したら、バッテリ系統56Aを定電圧充電し、その後、バッテリ系統56Aが満充電状態となる前に(言い換えれば、バッテリ系統56Aの電流が設定値Aまで低下したら)、バッテリ系統56Bに接続を切換えて、バッテリ系統56Bを定電流充電してもよい。この場合は、上記実施形態等と比べ、効果が小さくなるものの、バッテリ装置7の充電率を高めることができる。
【0095】
また、上記実施形態等においては、接続中の一方のバッテリ系統の蓄電残量が無くなって電動モータ31が停止した場合に、切換スイッチ28の手動操作により他方のバッテリ系統に接続を切換える場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば接続中の一方のバッテリ系統の蓄電残量が無くなって電動モータ31が停止してから、予め設定された所定時間が経過したときに、自動的にバッテリ系統を切換えてもよい。
【0096】
また、上記実施形態等においては、バッテリ装置7は、バッテリ系統56A,56Bをそれぞれ構成するバッテリ55の数が同じである場合を例にとって説明したが、これに限られず、異ならせてもよい。具体例の一つとしては、第1のバッテリ系統56Aは、直列接続された12個のバッテリ55で構成され、第2のバッテリ系統56Bは、直列接続された6個のバッテリ55で構成されてもよい。また、上記実施形態等においては、バッテリ装置7は、2つのバッテリ系統56A,56Bを有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、3つ以上のバッテリ系統を有していてもよい。具体例の一つとしては、直列接続された6個のバッテリ55からなるバッテリ系統を3つ有していてもよい。
【0097】
なお、以上においては、本発明の適用対象である電動式油圧ショベルは、作業機用油圧アクチュエータ(詳細には、ブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、バケット用油圧シリンダ21)以外の油圧アクチュエータとして、左右の走行用油圧モータ13A,13B及び旋回用油圧モータ等を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば左右の走行用油圧モータ13A,13Bに代えて、バッテリ装置7からの供給電力によって駆動する左右の走行用電動モータを備えてもよい。また、例えば旋回用油圧モータに代えて、バッテリ装置7からの供給電力によって駆動する旋回用電動モータを備えてもよい。また、電動式油圧ショベルに限られず、他の電動式建設機械に適用してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0098】
7 バッテリ装置
13A 左の走行用油圧モータ
13B 右の走行用油圧モータ
19 ブーム用油圧シリンダ
20 アーム用油圧シリンダ
21 バケット用油圧シリンダ
28 切換スイッチ(接続切換手段)
31 電動モータ
32 インバータ装置(接続切換手段、充電制御手段)
33 油圧ポンプ
48 商用電源
51 インバータ
55 バッテリ
56A 第1のバッテリ系統
56B 第2のバッテリ系統
58A 第1の接続切換用開閉器(接続切換手段)
58B 第2の接続切換用開閉器(接続切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
前記電動モータによって駆動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油により駆動する複数の油圧アクチュエータと、
直列接続された複数のバッテリからなるバッテリ系統を複数有するバッテリ装置と、
前記複数のバッテリ系統のうちのいずれか1つを選択的に接続する接続切換手段と、
前記接続切換手段で選択的に接続されたバッテリ系統から供給された直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに制御するインバータとを備えた電動式建設機械であって、
前記接続切換手段で選択的に接続されたバッテリ系統に外部電源からの電力を供給し、前記バッテリ系統の電圧が予め設定された上限値未満であれば定電流充電を行い、前記バッテリ系統の電圧が前記上限値に達すれば定電圧充電を行う充電制御手段とを備え、
前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統の定電流充電を開始し、その後、前記一のバッテリ系統が満充電状態となる前に前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統の定電流充電を開始することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の電動式建設機械において、
前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統を定電流充電し、前記一のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達した直後、前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統の定電流充電を開始することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の電動式建設機械において、
前記充電制御手段は、前記複数のバッテリ系統のうちの一のバッテリ系統及び他のバッテリ系統の電圧が前記上限値未満である場合に、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統を選択的に接続して、前記一のバッテリ系統を定電流充電し、前記一のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達した直後、前記接続切換手段で前記他のバッテリ系統に接続を切換えて、前記他のバッテリ系統を定電流充電し、前記他のバッテリ系統の電圧が前記上限値に達したら、前記他のバッテリ系統を定電圧充電することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項4】
請求項2又は3記載の電動式建設機械において、
前記充電制御手段は、前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統及び前記他のバッテリ系統のうちの一方を選択的に接続して、前記一方のバッテリ系統を定電圧充電し、その後、前記一方のバッテリ系統が満充電状態となる前に前記接続切換手段で前記一のバッテリ系統及び前記他のバッテリ系統のうちの他方に接続を切換えて、前記他方のバッテリ系統を定電圧充電することを特徴とする電動式建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−38928(P2013−38928A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173298(P2011−173298)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】