説明

電動機と機器との端子接続構造、電動機及び電動パワーステアリング装置

【課題】電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させること。
【解決手段】電動機の端子接続構造1は、電動機30が有する複数の電動機側端子3と、機器31が有する複数の機器側端子5とを電気的に接続する構造である。それぞれの電動機側端子3は、機器側端子5と接続される側における接続面3Cが平行に配列され、また、それぞれの機器側端子5は、電動機側端子3と接続される側における接続面5Cが平行に配列されている。また、それぞれの電動機側端子3の接続面3Cとそれぞれの機器側端子5の接続面5Cとが対向した状態で両者が電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続するための電動機と機器との端子接続構造、この電動機と機器との端子接続構造を用いた電動機及び電動機と機器との端子接続構造を用いた電動機をアシスト用電動機とする電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、電動パワーステアリング装置等の車両又は産業機械等といった様々な用途に用いられている。電動機は、電動機の外部から電力の供給を受けるための端子及び電動機が有するセンサ類からの出力を電動機の外部へ取り出すための端子を有している。電動機の端子は、制御装置又は電源等の外部機器と電気的に接続される。端子同士を接続する構造としては、例えば、特許文献1に記載されているような技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−123922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続するにあたり、両者の接続部は、電動機の運転により発熱したり、外部からの影響により昇温したりする。電動機の端子と機器の端子との接続部は、このような条件及び環境で用いられるので、両者の接続には信頼性が要求される。本発明は、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電動機が有する複数の電動機側端子と、機器が有する複数の機器側端子とを電気的に接続する構造であり、前記複数の電動機側端子は、前記機器側端子と接続される側における接続面が平行に配列され、また、複数の前記機器側端子は、前記電動機側端子と接続される側における接続面が平行に配列されており、前記複数の電動機側端子の接続面と前記複数の機器側端子の接続面とが対向した状態で両者が電気的に接続されることを特徴とする電動機と機器との端子接続構造である。
【0006】
この電動機と機器との端子接続構造は、複数の電動機側端子の接続面が平行に配列され、複数の機器側端子の接続面が平行に配列される。このとき、電動機側端子の接続面と機器側端子の接続面とがすべて接触するように、電動機側等の配列方向における両者の位置を調整した上で、両者を電気的に接続する。電動機側端子及び機器側端子は、電動機側等の配列方向に両者が移動した場合でも、両者が撓むことにより前記移動に両者が追従するので、すべての電動機側端子の接触面とすべての機器側端子の接触面との接触を保つことができる。電動機側端子と機器側端子とが離れている状態で接合した場合に発生するスプリングバックに起因して電動機側端子と機器側端子との接続部には応力が発生する。しかし、この電動機と機器との端子接続構造は、両者が接触した状態で電動機側端子と機器側端子とを接合し、電気的に接続することにより、スプリングバックの発生及びこれに起因する応力を抑制できるので、前記応力に起因する電動機側端子と機器側端子との接続部の耐久性低下を抑制できる。その結果、この電動機と機器との端子接続構造は、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させることができる。
【0007】
本発明において、前記複数の電動機側端子と前記複数の機器側端子とは、少なくとも一方が、接続面に突起部を有することが好ましい。このようにすることで、例えば、抵抗溶接のような圧接を用いて電動機側端子と機器側端子とを接合する場合には、両者を流れる電流を小さくすることができるので、接合時におけるエネルギーを抑制できる。
【0008】
本発明において、前記複数の電動機側端子と前記複数の機器側端子とは、前記電動機側端子の接続面に、所定方向に延在する突起部を有し、前記機器側端子の接続面に、前記電動機側端子の接続面の突起部と交差する方向に延在する突起部を有することが好ましい。このようにすることで、電動機側端子と機器側端子との位置ずれが発生しても、突起部同士が交差することにより、前記位置ずれを吸収して、電動機側端子と機器側端子とを確実に接合し、電気的に接続することができる。
【0009】
本発明において、前記複数の電動機側端子は、接続面に、所定方向に延在する第1突起部と、前記第1突起部とは異なる方向に延在する第2突起部とを有し、前記複数の機器側端子は、接続面に、前記第1突起部と交差する方向に延在する第3突起部と、前記第2突起部と交差する方向に延在する第4突起部とを有することが好ましい。このようにすることで、第1突起部と第3突起部とが電気的に接続され、第2突起部と第4突起部とが電気的に接続される。このため、接続箇所が増加するので、信頼性がさらに向上する。
【0010】
本発明は、前記電動機と機器との端子接続構造により端子が接続されることを特徴とする電動機である。この電動機は、前記電動機と機器との端子接続構造を備えているので、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明は、車両のステアリング機構に補助操舵力を付与する、前記電動機を有し、前記ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいて前記電動機を駆動制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置である。この電動パワーステアリング装置は、前記電動機と機器との端子接続構造により電動機と制御装置等の機器とが電気的に接続されている。このため、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させて、電動パワーステアリング装置の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、電動機の端子と機器の端子とを電気的に接続する際の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る電動機と機器との端子接続構造を示す平面図である。
【図2】図2は、電動機が有する電動機側端子の斜視図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面図である。
【図4】図4は、電動機と接続される機器が有する機器側端子の斜視図である。
【図5】図5は、図4のB−B断面図である。
【図6】図6は、複数の電動機側端子と複数の機器側端子とを接合するときの状態を示す平面図である。
【図7】図7は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときの状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときにおける接合部を示す拡大図である。
【図9】図9は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときの状態を示す側面図である。
【図10】図10は、電動機と機器とを接近させて電動機側端子の接続面と機器側端子接続面とを接触させて電気的に接続する端子接続構造の斜視図である。
【図11】図11は、電動機と機器とを接近させて電動機側端子の接続面と機器側端子接続面とを接触させて電気的に接続する端子接続構造の斜視図である。
【図12】図12は、本実施形態の変形例に係る端子接続構造の斜視図である。
【図13】図13は、本実施形態の変形例に係る端子接続構造の接続部を示す図である。
【図14】図14は、本実施形態の変形例に係る端子接続構造の接続部を示す図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る電動機を備えた電動パワーステアリング装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
図1は、本実施形態に係る電動機と機器との端子接続構造を示す平面図である。電動機と機器との端子接続構造(以下、端子接続構造という)1は、電動機30が有する複数の端子である電動機側端子3と、機器(本実施形態では、例えば、コンピュータを有する電子制御装置)31が有する複数の端子である機器側端子5とを電気的に接続するための構造である。電動機側端子3及び機器側端子5は、例えば、細長い棒状の金属であり、電力の供給等に用いられるバスバーである。
【0016】
電動機30は、電力の供給を受けたり、回生した電力を取り出したり、回転中心軸Zrを中心として回転する入出力軸の回転角度を検出するレゾルバ等の回転角度検出センサの検出値を取り出したりするため、複数の電動機側端子3を有している。機器31は、電動機30の動作を制御する制御装置であり、電動機30へ電力を供給したり、前記回転角度検出センサの検出値を取得したりするため、複数の機器側端子5を有している。電動機側端子3及び機器側端子5の材料は金属であるが、金属の種類は特に限定されるものではなく、電動機側端子3と機器側端子5とを接合する手段に応じて、適切な材料を用いればよい。また、電動機側端子3及び機器側端子5の長さは、両者のクリアランスのばらつきを考慮した上で決定することが好ましい。
【0017】
複数の電動機側端子3は、電動機側端子台2に、例えば、ねじ等の締結手段によって取り付けられる。複数の機器側端子5は、機器側端子台4に、例えば、例えば、ねじ等の締結手段によって取り付けられる。なお、電動機側端子3を電動機側端子台2に取り付ける手段及び機器側端子5を機器側端子台4に取り付ける手段は、これに限定されるものではない。また、電動機側端子台2及び機器側端子台4は、端子を取り付けて支持する機能を有していればよく、基板のようなものであってもよい。複数の電動機側端子3は、機器側端子5と接続される側における接続面3Cが平行に配列されている。また、複数の機器側端子5は、電動機側端子3と接続される側における接続面5Cが平行に配列されている。そして、端子接続構造1は、複数の電動機側端子3の接続面3Cと複数の機器側端子5の接続面5Cとが対向した状態で、両者を電気的に接続している。
【0018】
複数の電動機側端子3と複数の機器側端子5とは、例えば、溶接、はんだ付け等の接合手段によって接合されて、電気的に接続される。両者を接続する場合、電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとを対向させた上で、接続面3C、5Cとは反対面から電動機側端子3及び機器側端子5に圧力を与える。このようにした上で、電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとを溶接等により接合して、両者を電気的に接続する。
【0019】
端子接続構造1は、複数の電動機側端子3と複数の機器側端子5とは、それぞれの接続面3C、5Cが平行になる。電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとを対向させる場合、複数の電動機側端子3と複数の機器側端子5とを接近させ、両者を重なり合わせることで対向させる。そして、電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとが対向した状態で、接続面3C、5Cと直交する方向かつ両方の接続面3C、5Cを接近させて両者を接触させる。この状態で溶接等により両者を接合することで、電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとのクリアランスが過多であることによって発生するスプリングバックに起因する、電動機側端子3と機器側端子5との接続部に発生する応力を抑制することができる。電動機30が駆動されているときには、電動機側端子3及び機器側端子5の発熱による熱膨張又は外部からの影響による熱膨張等によって、両者にひずみが発生することがある。前記スプリングバックに起因する応力が電動機側端子3及び機器側端子5に発生すると、前記熱膨張等によるひずみとともに電動機側端子3及び機器側端子5の耐久性低下を招くおそれがある。端子接続構造1は、前記スプリングバックに起因して、電動機側端子3と機器側端子5との接続部に発生する応力を抑制できるので、電動機側端子3及び機器側端子5の耐久性低下を抑制することができる。次に、端子接続構造1における電動機側端子3及び機器側端子5について、より詳細に説明する。
【0020】
図2は、電動機が有する電動機側端子の斜視図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、電動機と接続される機器が有する機器側端子の斜視図である。図5は、図4のB−B断面図である。本実施形態において、複数の電動機側端子3と複数の機器側端子5とは、少なくとも一方が、接続面3C、5Cに突起部(プロジェクション)を有する。本実施形態では、電動機側端子3と機器側端子5との両方が、それぞれ突起部6と突起部7とを有する。突起部6、7は、例えば、プレス加工により設けることができる。
【0021】
図2、図3に示すように、電動機側端子3は、接続面3Cに、所定方向に延在する突起部6を有する。突起部6は、接続面3Cから突出した部分である。この例において、電動機側端子3は、2本の突起部6を有するが、突起部6の数は2個に限定されるものではない。2個の突起部6は、互いに平行であるが、平行でなくてもよい。電動機側端子3は、一端部に、電動機側端子台2に取り付けるための端子台取付部3Bを有している。突起部6は、電動機側端子3の他端部、すなわち、端子台取付部3Bとは反対側の端部に設けられる。
【0022】
図4、図5に示すように、機器側端子5は、接続面5Cに、電動機側端子3の接続面3Cの突起部6と交差する方向に延在する突起部7を有する。突起部7は、接続面5Cから突出した部分である。この例において、機器側端子5は、1個の突起部7を有するが、突起部7の数は1個に限定されるものではない。機器側端子5は、一端部に、機器側端子台4に取り付けるための端子台取付部5Bを有している。突起部7は、機器側端子5の他端部、すなわち、端子台取付部5Bとは反対側の端部に設けられる。なお、突起部6、7は、断面が略台形形状であるが、突起部6、7の断面形状はこれに限定されるものではない。例えば、断面が、半円形状、略三角形状であってもよい。
【0023】
図6は、複数の電動機側端子と複数の機器側端子とを接合するときの状態を示す平面図である。図7は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときの状態を示す斜視図である。図8は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときにおける接合部を示す拡大図である。図9は、電動機側端子と機器側端子とを接合するときの状態を示す側面図である。複数の電動機側端子3と複数の機器側端子5とを電気的に接続する場合、それぞれの電動機側端子3の接続面3Cと機器側端子5の接続面5Cとを対向させる。このとき、図8に示すように、電動機側端子3の接続面3Cの突起部6と、機器側端子5の接続面5Cの突起部7とを対向させる。
【0024】
次に、図8に示すように、電動機側端子3の接続面3Cの突起部6と、機器側端子5の接続面5Cの突起部7とが互いに押し付け合うように、電動機側端子3と機器側端子5とに押圧力Pを与える。この状態で、電動機側端子3と機器側端子5とを溶接する。具体的には、電動機側端子3の接続面3Cの突起部6と、機器側端子5の接続面5Cの突起部7との間に電流を流して両者を溶融させ、溶接により接合する。すなわち、本実施形態では、抵抗溶接により突起部6、7同士を接合する。電流は、突起部6、7同士の接触部Wを流れるが、両者の接触面積は小さいので、両者の接触部Wにおける電気抵抗が高くなる。その結果、溶接時に流す電流(溶接電流)を過大にしなくても、突起部6、7同士を溶融させて接合することができる。なお、突起部6、7は必ずしも設ける必要はないが、突起部6、7のうち少なくとも一方を設けることにより、上述したように、電動機側端子3と機器側端子5とを抵抗溶接により接合する際に、溶接電流を低減することができる。
【0025】
電動機側端子3の突起部6と、機器側端子5の突起部7とは、二箇所で接合されて、電気的に接続される。このため、電動機側端子3と機器側端子5との接続部における信頼性が向上する。なお、突起部は、電動機側端子3と機器側端子5との少なくとも一方に設けられていればよい。また、突起部7は、突起部6と交差する方向に延在しているので、電動機側端子3と機器側端子5との位置ずれが発生しても、突起部6、7同士が交差することにより、前記位置ずれを吸収して、電動機側端子3と機器側端子5とを確実に接合し、電気的に接続することができる。なお、電動機側端子3と機器側端子5との接合方法は、上述した抵抗溶接に代表される圧接、アーク溶接に代表される融接及びはんだ付けに代表されるろう接等を用いることができる。
【0026】
図10、図11は、電動機と機器とを接近させて電動機側端子の接続面と機器側端子接続面とを接触させて電気的に接続する端子接続構造の斜視図である。この端子接続構造101は、電動機側端子台102に取り付けられた電動機側電極103の接続面103Cと、機器側端子台104に取り付けられた機器側端子105の接続面105Cとを対向させる。接続面103C、104Cと直交する方向は、電動機の回転中心軸Zrと直交する方向と平行な方向である。このような端子接続構造101は、電動機側端子台102と機器側端子台104とを接近させて、接続面103C、104C同士を接触させる。端子接続構造1において、複数の電動機側電極103は、それぞれの接続面103Cが同一平面になるように配置され、複数の機器側端子105は、それぞれの接続面105Cが同一平面になるように配置される。このため、電動機側電極103と機器側端子105とを電気的に接続する場合、すべての電動機側電極103の接続面103Cと、すべての機器側端子105の接続面105Cとが接触していない状態になりやすくなる。
【0027】
この状態で電動機側電極103と機器側端子105とを溶接等により接合して電気的に接続すると、電動機側電極103と機器側端子105との少なくとも一方を変形させて接続することになる。電動機側電極103及び機器側端子105は金属なので、変形したまま接続されると、金属の特性であるスプリングバックによって溶接後に元に戻ろうとする力が接続部に作用する(図11の矢印Eで示す方向)。その結果、接続部に応力が作用し続ける。この状態で、電動機の運転による接続部の発熱による熱膨張及び外部からの影響による電動機側電極103及び機器側端子105の熱膨張等によってさらなるひずみが発生すると、電動機側電極103と機器側端子105との接続部における耐久性低下を招くおそれがある。
【0028】
端子接続構造1は、複数の電動機側端子3の接続面3Cが平行に配列され、複数の機器側端子5の接続面5Cが平行に配列される。このため、電動機側端子3と機器側端子5とを接触させる場合には、これらが配列されている方向(端子配列方向、図6の矢印Da、Dbで示す方向)に電動機側端子3又は機器側端子5を移動させて、両者を接触させればよい。このとき、電動機側端子3の接続面3Cの突起部6と機器側端子5の接続面5Cの突起部7とがすべて接触するように、端子配列方向における両者の位置を調整した上で、両者を電気的に接続する。電動機側端子3及び機器側端子5は、端子配列方向に両者が移動した場合でも、両者が撓むことにより前記移動に両者が追従するので、すべての電動機側端子3の突起部6とすべての機器側端子5の突起部7との接触が保たれる。このように、端子接続構造1は、すべての電動機側端子3の突起部6とすべての機器側端子5の突起部7とを接触させる際の調整が比較的容易であり、かつすべての突起部6、7同士を確実に接触させることも容易である。さらに、端子接続構造1は、すべての突起部6、7同士が接触した状態で両者を接合し、電気的に接続できるので、スプリングバックに起因して電動機側端子3と機器側端子5との接続部に発生する応力を低減することができる。
【0029】
このように、端子接続構造1において、電動機側端子3と機器側端子5とを接触させて溶接等により接合する場合、それぞれの突起部6、7同士が対向し、かつ接触していればよい。したがって、端子接続構造1によれば、図6に示す、回転中心軸Zrと直交する方向における電動機側端子台2と機器側端子台4とのクリアランスCがばらついていても、突起部6、7同士が対向し、かつ接触していれば、電動機側端子3と機器側端子5とを確実に電気的に接続することができる。すなわち、端子接続構造1は、回転中心軸Zrと直交する方向における電動機側端子台2と機器側端子台4との位置決め精度が低くても、電動機側端子3と機器側端子5とを確実に電気的に接続し、かつ前記スプリングバックに起因する前記応力を低減できる。その結果、端子接続構造1は、回転中心軸Zrと直交する方向における電動機側端子台2と機器側端子台4との位置合わせ及び端子配列方向における電動機側端子3と機器側端子5との位置合わせに要する手間を低減することができる。さらに、端子接続構造1は、前記スプリングバックに起因する前記応力を低減して電動機側端子3と機器側端子5との接続部の耐久性低下を抑制して、接続部の信頼性を向上させることができる。
【0030】
特に、端子接続構造1は、電動機30と、機器31との位置決めに使用する基準部の精度等によって、電動機側端子3と機器側端子5とのクリアランスにばらつきが発生するような場合に適用されると効果的である。このような場合に端子接続構造1が適用されると、電動機30と機器31とのクリアランスはばらついても、電動機側端子3と機器側端子5とを接触させることができるので、溶接等によって両者を確実に接合して、両者の接続の信頼性を向上させることができる。
【0031】
(変形例)
図12は、本実施形態の変形例に係る端子接続構造の斜視図である。図13、図14は、本実施形態の変形例に係る端子接続構造の接続部を示す図である。端子接続構造1aは、上述した端子接続構造1と同様であるが、電動機側端子3a及び機器側端子5aの有する突起部が異なる。
【0032】
端子接続構造1aにおいて、電動機側端子3aは、接続面3Caに、所定方向に延在する第1突起部6Aと、第1突起部6Aとは異なる方向に延在する第2突起部6Bとを有する。また、機器側端子5aは、接続面5Caに、第1突起部6Aと交差する方向に延在する第3突起部7Aと、第2突起部6Bと交差する方向に延在する第4突起部7Bとを有する。本変形例では、電動機側端子3aと機器側端子5aとは、いずれも単数のみ示しているが、上述した端子接続構造1と同様に、端子接続構造1aは、電動機側端子3a及び機器側端子5aをそれぞれ複数有している。
【0033】
本変形例において、第1突起部6A、第2突起部6B、第3突起部7A及び第4突起部7Bは、少なくとも1個あればよく、その数は限定されない。本実施形態において、電動機側端子3aの第1突起部6Aと機器側端子5aの第4突起部7Bとはいずれも2個であり、電動機側端子3aの第2突起部6Bと機器側端子5aの第3突起部7Aとはいずれも1個である。このように、本変形例において、第1突起部6Aと第3突起部7Aとは、数が異なり、第2突起部6Bと第4突起部7Bとは数が異なる。
【0034】
端子接続構造1aは、2本の第1突起部6Aと1本の第3突起部7Aとが交差する。また、1本の第2突起部6Bと2本の第4突起部7Bとが交差する。そして、第1突起部6Aと第3突起部7Aとは二箇所で、第2突起部6Bと第4突起部7Bとは同じく二箇所で接合され、電気的に接続される。このようにすることで、電動機側端子3aと機器側端子5aとは、複数箇所で電気的に接続されるので、信頼性が向上する。
【0035】
本実施形態及びその変形例に係る端子接続構造1、1aは、電動機側端子3と機器側端子5とが略同寸法である場合に、両者を電気的に接続することができる。また、平板状の電動機側端子3と機器側端子5とを電気的に接続することができるので、大電流を流す用途にも好適である。このように、本実施形態及びその変形例に係る端子接続構造1、1aは、略同寸法かつ平板状の電動機側端子3と機器側端子5とを電気的に接続する際に好適である。
【0036】
(電動パワーステアリング装置)
図15は、本実施形態に係る電動機を備えた電動パワーステアリング装置の構成を示す図である。電動パワーステアリング装置10は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール11と、ステアリングシャフト12と、操舵力アシスト機構13と、ユニバーサルジョイント14と、ロアシャフト15と、ユニバーサルジョイント16と、ピニオンシャフト17と、ステアリングギヤ18と、タイロッド19と、を備える。また、電動パワーステアリング装置10は、ECU(Electronic Control Unit)20と、トルクセンサ21aと、車速センサ21bと、を備える。
【0037】
ステアリングシャフト12は、入力軸12aと出力軸12bとを含む。入力軸12aは、一方の端部がステアリングホイール11に連結され、他方の端部がトルクセンサ21aを介して操舵力アシスト機構13に連結される。出力軸12bは、一方の端部が操舵力アシスト機構13に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント14に連結される。本実施形態では、入力軸12a及び出力軸12bは、鉄等の磁性材料から形成される。
【0038】
ロアシャフト15は、一方の端部がユニバーサルジョイント14に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント16に連結される。ピニオンシャフト17は、一方の端部がユニバーサルジョイント16に連結され、他方の端部がステアリングギヤ18に連結される。ステアリングギヤ18は、ピニオン18aと、ラック18bとを含む。ピニオン18aは、ピニオンシャフト17に連結される。ラック18bは、ピニオン18aに噛み合う。ステアリングギヤ18は、ラックアンドピニオン形式として構成される。ステアリングギヤ18は、ピニオン18aに伝達された回転運動をラック18bで直進運動に変換する。タイロッド19は、ラック18bに連結される。
【0039】
操舵力アシスト機構13は、減速装置22と電動機30とを含む。減速装置22は、出力軸12bに連結される。電動機30は、減速装置22に連結され、かつ、補助操舵トルクを発生させる。なお、電動パワーステアリング装置10は、ステアリングシャフト12と、トルクセンサ21aと、減速装置22とによりステアリングコラムが構成されている。電動機30は、前記ステアリングコラムの出力軸12bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態の電動パワーステアリング装置10は、コラムアシスト方式である。
【0040】
トルクセンサ21aは、ステアリングホイール11を介して入力軸12aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ21bは、電動パワーステアリング装置10が搭載される車両の走行速度を検出する。
【0041】
ECU20は、電動機30とトルクセンサ21aと車速センサ21bと電気的に接続される。ECU20は、電動機30の動作を制御する。また、ECU20は、トルクセンサ21a及び車速センサ21bのそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU20は、トルクセンサ21aから操舵トルクTを取得し、かつ、車速センサ21bから車両の走行速度Vを取得する。ECU20は、イグニッションスイッチ23がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)24から電力が供給される。ECU20は、操舵トルクTと走行速度Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU20は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動機30へ供給する電流値を調節する。
【0042】
電動機30の端子(電動機側端子)と、ECU20の端子(機器側端子)とは、本実施形態に係る端子接続構造1(図7等参照)又は端子接続構造1a(図12等参照)によって電気的に接続されている。このため、端子間の接続部の耐久性低下が抑制されるとともに、接続の信頼性が向上するので、端子接続構造1、1aは、電動パワーステアリング装置10のように、高い信頼性が要求される装置に対して好適である。
【0043】
電動パワーステアリング装置10は、以上のような構成である。ステアリングホイール11に入力された操舵者(運転者)の操舵力は、入力軸12aを介して操舵力アシスト機構13の減速装置22に伝わる。この時に、ECU20は、入力軸12aに入力された操舵トルクTをトルクセンサ21aから取得し、かつ、走行速度Vを車速センサ21bから取得する。そして、ECU20は、電動機30の動作を制御する。電動機30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置22に伝えられる。出力軸12bを介して出力された操舵トルク(補助操舵トルクを含む)は、ユニバーサルジョイント14を介してロアシャフト15に伝達され、さらにユニバーサルジョイント16を介してピニオンシャフト17に伝達される。ピニオンシャフト17に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ18を介してタイロッド19に伝達され、操舵輪を転舵させる。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、101 電動機と機器との端子接続構造(端子接続構造)
2、102 電動機側端子台
3、3a、103 電動機側端子
3B 端子台取付部
3C、3Ca、5C、5Ca、103C、105C 接続面
4 機器側端子台
5、5a、105 機器側端子
5B 端子台取付部
6、7 突起部
6A 第1突起部
6B 第2突起部
7A 第3突起部
7B 第4突起部
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリングシャフト
13 操舵力アシスト機構
14 ユニバーサルジョイント
15 ロアシャフト
16 ユニバーサルジョイント
17 ピニオンシャフト
18 ステアリングギヤ
19 タイロッド
21a トルクセンサ
21b 車速センサ
22 減速装置
23 イグニッションスイッチ
30 電動機
31 機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機が有する複数の電動機側端子と、機器が有する複数の機器側端子とを電気的に接続する構造であり、
前記複数の電動機側端子は、前記機器側端子と接続される側における接続面が平行に配列され、また、複数の前記機器側端子は、前記電動機側端子と接続される側における接続面が平行に配列されており、前記複数の電動機側端子の接続面と前記複数の機器側端子の接続面とが対向した状態で両者が電気的に接続されることを特徴とする電動機の端子接続構造。
【請求項2】
前記複数の電動機側端子と前記複数の機器側端子とは、少なくとも一方が、接続面に突起部を有する請求項1に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項3】
前記複数の電動機側端子と前記複数の機器側端子とは、前記電動機側端子の接続面に、所定方向に延在する突起部を有し、前記機器側端子の接続面に、前記電動機側端子の接続面の突起部と交差する方向に延在する突起部を有する請求項1に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項4】
前記複数の電動機側端子は、接続面に、所定方向に延在する第1突起部と、前記第1突起部とは異なる方向に延在する第2突起部とを有し、
前記複数の機器側端子は、接続面に、前記第1突起部と交差する方向に延在する第3突起部と、前記第2突起部と交差する方向に延在する第4突起部とを有する請求項1に記載の電動機の端子接続構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の端子接続構造により端子が接続されることを特徴とする電動機。
【請求項6】
車両のステアリング機構に補助操舵力を付与する、請求項5に記載の電動機を有し、前記ステアリング機構に対する操舵トルクと車速とを少なくとも用いて演算した操舵補助指令値に基づいて前記電動機を駆動制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−17259(P2013−17259A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146594(P2011−146594)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】