説明

電動機付過給機の回転バランス修正方法および回転バランス試験装置

【課題】回転バランス試験装置を簡素化・小型化でき、スラスト軸受に過大な反スラスト力が作用することがなく、タービンインペラ側のバランス修正を容易に行うことができる電動機付過給機の回転バランス修正方法および回転バランス試験装置を提供する。
【解決手段】タービンハウジング4及びコンプレッサハウジング8を取り外した状態で、電動機18により過給機ロータ(タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6およびシャフト12)を回転駆動して、電動機付過給機10の回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランスを修正する。また、加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を供給する専用モータドライバ27を用い、電動機18を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機ロータの回転駆動を補助する電動機を備えた電動機付過給機の回転バランス修正方法および回転バランス試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の性能向上のために、内燃機関の排気ガスで駆動し吸気を圧縮して過給する過給機(「ターボチャージャ」とも称される。)が広く用いられている。また、過給機のシャフトと同軸上に電動機を組み込み、コンプレッサの回転駆動を加速補助することにより、加速応答性等を改善した過給機も用いられている。このような電動機による電動アシスト機能をもつ過給機を電動機付過給機という。
【0003】
図3は、一般的な電動機付過給機10の構成を示す断面図である。
電動機付過給機10の給気通路側にはコンプレッサインペラ6とこれを囲むコンプレッサハウジング8が配設されている。
電動機付過給機10の排気通路側にはタービンインペラ2とこれを囲むタービンハウジング4が配設されている。
タービンインペラ2はシャフト12と溶接等により一体化され、コンプレッサインペラ6は中心部にシャフト12が嵌入されてナット7により締結されている。
シャフト12はセンターハウジング14に内蔵されたジャーナル軸受16及びスラスト軸受17によって回転自在に支持されている。
この構造により、タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6及びシャフト12が一体的に回転するようになっている。以下、タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6及びシャフト12からなる回転体を「過給機ロータ」と呼ぶ。
またセンターハウジング14には、シャフト12と同軸上に連結された回転子18Aと、回転子18Aの周囲に配設された固定子18Bとを有する電動機18が内蔵されている。
【0004】
このように構成された電動機付過給機10では、内燃機関(エンジン)からの排気ガスによりタービンインペラ2を回転して、これに連結されたコンプレッサインペラ6を回転駆動すると共に電動機18によりその回転駆動を補助し、吸気を過給して内燃機関に供給する。
【0005】
一方、電動機付過給機10は、製品出荷前に、各製品ごとに回転バランス試験を行ってアンバランス量等を測定し、回転バランス修正が実施される。特に、電動機付過給機10は、電動機の搭載されていない過給機に比べ、電動機18を取り付けた分、シャフト12が長くなり、高度なバランス修正が要求される。
従来の過給機の回転バランス修正方法は、例えば下記特許文献1に開示されている。図4は、特許文献1の回転バランス修正方法を説明する図であり、この方法は、以下の(A)〜(E)の手順からなる。
(A)コンプレッサハウジングだけを取り外した状態の過給機50のタービンハウジング51を振動台52のタービンハウジング取付板53に取り付ける。
(B)加速度ピックアップ54をタービンハウジング取付板53の平坦面53aに取り付ける。
(C)回転検出器55をコンプレッサインペラ56の近傍に配置する。
(D)タービンインペラ57に圧縮空気を供給し、タービンインペラ57を高速回転させる。
(E)所定の高速回転速度に達したら、加速度ピックアップ54で過給機50の加速度(振動)を検出するとともに、回転検出器55でコンプレッサホイール56の回転角度を検出し、これらの検出された入力信号を演算器58での演算結果に基づき、過給機ロータの高速アンバランス量を修正する。
【0006】
また、下記特許文献2には、400℃以上の高温の圧縮空気にてタービンロータ(タービンインペラ)を駆動し、過給機ハウジングに設けられた振動ピックアップにて振動を検出しつつ、過給機ロータ全体として回転バランスをとること、が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−39904号公報([0016]段落、図1)
【特許文献2】特開2004−116317号公報([0013]段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1,2に開示された従来技術では、圧縮空気でタービンインペラを駆動し、過給機ロータを高速回転させ、回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランス修正を行っている。このように、過給機ロータを高速回転させるために圧縮空気源が必要となるため、回転バランス試験装置が大型化する。
また、一般的に過給機は、エンジンに搭載された場合に、過給機内部の圧力バランスが適正となるように設計されているが、上記の従来技術では、コンプレッサハウジングだけを取り外した状態で、回転バランス試験を実施するため、通常の圧力バランスとならない。すなわち、図3を参照して説明すれば、コンプレッサハウジング8だけを取り外し、タービンインペラ2に圧縮空気を供給すると、その周辺の圧力バランスによりタービンインペラ2には図3で左方向の力が作用する。このため、シャフト12を介してスラスト軸受17にタービン側への過大な軸方向荷重(反スラスト力)が作用していまい、スラスト軸受17に悪影響を与える。
さらに、タービンインペラ2はタービンハウジング4に覆われているため、タービンインペラ2側でバランス修正が必要な場合、タービンハウジング4やこれに接続された配管を取り外す必要があり、バランス修正作業が煩雑となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転バランス試験装置を簡素化・小型化でき、スラスト軸受に過大な反スラスト力が作用することがなく、タービンインペラ側のバランス調整を容易に行うことができる電動機付過給機の回転バランス修正方法および回転バランス試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の電動機付過給機の回転バランス修正方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法は、シャフトの両端にタービンインペラ及びコンプレッサインペラが連結されこれらが一体的に回転する過給機ロータの回転を内蔵された電動機により加速補助するように構成された電動機付過給機の回転バランスを修正する方法であって、前記電動機により前記過給機ロータを回転駆動して、前記電動機付過給機の回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランスを修正する、ことを特徴とする。
【0011】
このように、電動機付過給機に内蔵された電動機を使用して、過給機ロータを回転駆動して、電動機過給機の回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランスを修正するので、過給機ロータを高速回転させるための圧縮空気をタービンインペラに供給する必要が無い。
このため、圧縮空気源が不要となり、回転バランス試験装置の簡素化・小型化が可能となる。
【0012】
また、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法では、加速補助時に前記電動機に電力を供給する加速補助用モータドライバとは別の専用モータドライバであって前記加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を前記電動機に供給する専用モータドライバを用い、前記電動機を駆動させる、ことを特徴とする。
【0013】
完成品(最終製品)としての電動機付過給機は、加速補助時に電動機に電力を供給するためのモータドライバにより、電動機が駆動されるが、通常、そのような加速補助用モータドライバは、あくまで加速補助に必要十分な出力が得られる電力を電動機に供給するように設計されている。このため、加速補助用モータドライバでは、回転バランス試験に要求される高速回転まで電動機の回転数を上げることが困難な場合がある。
本発明の方法では、加速補助用モータドライバとは別の専用モータドライバであって加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を供給する専用モータドライバを用い、電動機を駆動させるので、回転バランス試験に要求される高速回転まで電動機の回転数を上げることができる。
また、電動機を駆動しているときのアンバランス量を計測することにより、電磁気的なアンバランスも修正することが可能であり、回転体の振動による騒音を低減することができる。
【0014】
また、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法では、前記タービンハウジング及びコンプレッサハウジングを取り外した状態で、前記電動機により前記過給機ロータを回転駆動する、ことを特徴とする。
【0015】
上述したように、本発明の方法では、電動機により過給機ロータを回転駆動するので、回転バランス試験に際してタービンインペラに圧縮空気を供給する必要が無い。このため、コンプレッサハウジングのみならず、タービンハウジングも取り外した状態で、回転バランス試験を実施することが可能である。
したがって、従来の方法のように、過給機内部の圧力バランスが崩れることがなく、スラスト軸受に過大なスラスト力又は反スラスト力が作用することがない。
また、従来の方法では、タービンインペラ側のバランス調整が必要な場合は、タービンハウジングやこれに接続された配管を取り外す必要があったが、本発明の方法によれば、そのような作業が不要であるため、バランス修正作業を迅速に行うことができ、修正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0016】
また、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法では、内部が減圧された減圧チャンバ内に前記電動機付過給機を設置して、前記過給機ロータを回転駆動する、ことを特徴とする。
【0017】
このように、減圧チャンバ内に電動機付過給機を設置して、過給機ロータを回転駆動するので、タービンインペラ及びコンプレッサインペラの回転時にこれらに作用する空気抵抗が低減される。このため、回転バランス試験に要求される高速回転まで確実に電動機の回転数を上げることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の電動機付過給機の回転バランス試験装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス試験装置は、シャフトの両端にタービンインペラ及びコンプレッサインペラが連結されこれらが一体的に回転する過給機ロータの回転を内蔵された電動機により加速補助するように構成された電動機付過給機に対し回転バランス修正のための試験を行う、電動機付過給機の回転バランス試験装置であって、前記電動機付過給機のシャフトを回転自在に支持するセンターハウジングを設置・固定可能な過給機設置台と、加速補助時に前記電動機に電力を供給する加速補助用モータドライバとは別の専用モータドライバであって前記加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を前記電動機に供給する専用モータドライバと、前記電動機過給機の回転バランス修正に必要なデータを検出するデータ検出手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス試験装置では、前記電動機付過給機を収容可能であり、且つ、内部を減圧可能な減圧チャンバをさらに備える、ことを特徴とする。
【0020】
上記の電動機付過給機の回転バランス試験装置により、上記本発明にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回転バランス試験装置を簡素化・小型化でき、スラスト軸受に過大な反スラスト力が作用することがなく、タービンインペラ側のバランス修正を容易に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法を実施するための回転バランス試験装置20の概略構成を示す図である。
この回転バランス試験装置20は、電動機付過給機10に対し回転バランス修正のための試験を行う装置であり、図1に示すように、過給機設置台22、専用モータドライバ27及びデータ検出手段(31,32)、を備えている。
【0024】
本実施形態において修正対象としている電動機付過給機10は、図3に示した電動機付過給機10と同様のものであり、シャフト12を回転駆動しその加速を補助するための電動機18を内蔵している。
そして、この電動機付過給機10は、回転バランス試験を行うために、タービンハウジング4とコンプレッサハウジング8が取り外され、タービンインペラ2とコンプレッサインペラ6が外部に露出した状態で、回転バランス試験装置20に設置・固定されている。なお、図1に示す電動機付過給機10において、図3と共通する部分には、同一の符号を付している。
【0025】
なお、本実施形態において修正対象としている電動機付過給機10は、タービン側にシャフト12の軸受が配設され、コンプレッサ側に電動機18が配設された形式のものであるが、本発明の適用範囲はこれに限られず、他の形式の電動機付過給機にも適用できる。
したがって、例えば特開2003−293785号公報に開示されている、中央部に電動機が配設されその両側に軸受を配設した形式の電動機付過給機にも当然に適用可能である。
【0026】
本実施形態において、過給機設置台22は、電動機付過給機10のセンターハウジング14を設置・固定するための台であり、センターハウジング14が取り付けられる取付部23と、取付部23が固定される上板24と、上板24を支持する複数の脚部25と、脚部25を支持し床面35上に設置された底板26と、を備えている。
取付部23は、上部材23a、下部材23b及び締結部品23c(例えばボルト)からなり、上部材23aと下部材23bとの間でセンターハウジング14を挟持し、堅固に固定できるようになっている。
なお、過給機設置台22の形態は、本実施形態に示すものに限られず、電動機付過給機10のセンターハウジング14を設置・固定できる範囲で種々の形態を採用できる。
【0027】
専用モータドライバ27は、加速補助時に電動機18に電力を供給するための加速補助用モータドライバとは別のモータドライバである。
完成品(最終製品)としての電動機付過給機10は、加速補助時に電動機18に電力を供給するためのモータドライバにより、電動機18が駆動されるが、通常、そのような加速補助用モータドライバは、あくまで加速補助に必要十分な出力が得られる電力を電動機18に供給するように設計されている(例えば出力1kW程度)。
ところが、電動機付過給機10のタービンハウジング4とコンプレッサハウジング8を取り外した状態であっても、回転バランス試験に必要な高速回転まで過給機ロータを回転駆動させるためには5〜6kW程度の出力が必要となる。このため、加速補助用モータドライバでは、回転バランス試験に要求される高速回転まで電動機18の回転数を上げることが困難な場合がある。
そこで、この専用モータドライバ27は、加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を電動機18に供給する。この供給電力は、回転バランス試験に必要な高速回転まで過給機ロータを回転駆動させることができるように設定する。
【0028】
また、専用モータドライバ27は、電力ケーブル28により電動機18と電気的に接続されるようになっている。本実施形態では、電力ケーブル28の先端に設けられたプラグ29を、センターハウジング14に設けられたソケット30に差し込むことにより接続できるようになっている。
なお、プラグ29またはソケット30は、電力ケーブル28の専用モータドライバ27側の端部に設けられていてもよい。
【0029】
データ検出手段は、電動機付過給機10の回転バランス修正に必要なデータを検出するための手段であり、本実施形態では、回転検出器31と加速度ピックアップ32を有している。
回転検出器31は、本実施形態ではコンプレッサインペラ6の近傍に配置されており、過給機ロータの高速回転時にその回転角度を検出する。なお、回転検出器31は、コンプレッサインペラ6の近傍に配置される代わりに、タービンインペラ2の近傍に配置されてもよい。
加速度ピックアップ32は、例えばマグネットによりセンターハウジング14に取り付けられ、過給機ロータの高速回転時にその加速度(振動)を検出する。
【0030】
さらに、この回転バランス試験装置20は、と回転検出器31と加速度ピックアップ32からの検出データに基づき、どの角度でどのような加速度(振動)が生じているかを判断し、バランス修正に必要な演算を行う演算器34を備えている。演算器34による演算結果は、図示しないディスプレーまたはプリンターにより出力されるようになっている。
【0031】
次に、この回転バランス試験装置20を用いた電動機付過給機の回転バランス修正方法を説明する。
まず、タービンハウジング4及びコンプレッサハウジング8を取り外した状態で、電動機付過給機10を、上記の過給機設置台22に設置・固定する。
次に、加速度ピックアップ32を電動機付過給機10のセンターハウジング14に取り付け、回転検出器31をコンプレッサインペラ6(またはタービンインペラ2)の近傍に配置する。
次に、電力ケーブル28のプラグ29をソケット30に差し込み、専用モータドライバ27から電動機18へ電力供給が可能な状態とする。
【0032】
次に、専用モータドライバ27からの電力供給により、電動機18を駆動させ、電動機付過給機10の過給機ロータ(タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6およびシャフト12)を高速回転させる。
過給機ロータがアンバランス量の計測を行う所定の回転速度まで到達したら、加速度ピックアップ32により振動及び位相を検出するとともに、回転検出器31により過給機ロータの回転角度を検出し、この検出データに基づいて、演算器34によりバランス修正に必要な演算を実行し、図示しないディスプレー又はプリンターにより演算結果が出力される。
そして、この演算結果に基づいて、回転バランスの修正を行う。このとき、回転バランス修正は、タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6またはナット7の一部を削除することにより行う。
【0033】
次に、本実施形態にかかる方法および装置の作用・効果について説明する。
本実施形態にかかる方法および装置によれば、電動機付過給機10に内蔵された電動機18を使用して、タービンインペラ2、コンプレッサインペラ6およびシャフト12からなる過給機ロータを回転駆動して、電動機過給機10の回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランスを修正するので、過給機ロータを高速回転させるための圧縮空気をタービンインペラ2に供給する必要が無い。
このため、圧縮空気源が不要となり、回転バランス試験装置20の簡素化・小型化が可能となる。
また、電動機18を駆動しているときのアンバランス量を計測することにより、電磁気的なアンバランスも修正することが可能であり、回転体の振動による騒音を低減することができる。
【0034】
また、加速補助用モータドライバでは、回転バランス試験に要求される高速回転まで電動機の回転数を上げることが困難な場合があるが、本発明では、加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を供給する専用モータドライバ27を用い、電動機18を駆動させるので、回転バランス試験に要求される高速回転まで過給機ロータの回転数を上げることができる。
【0035】
また、本発明によれば、電動機18により過給機ロータを回転駆動するので、回転バランス試験に際してタービンインペラ2に圧縮空気を供給する必要が無いため、コンプレッサハウジング8のみならず、タービンハウジング4も取り外した状態で、回転バランス試験を実施することが可能である。
したがって、従来の方法のように、過給機内部の圧力バランスが崩れることがなく、スラスト軸受に過大なスラスト力又は反スラスト力が作用することがない。
また、従来の方法では、タービンインペラ2側のバランス調整が必要な場合は、タービンハウジング14やこれに接続された配管を取り外す必要があったが、本発明の方法によれば、そのような作業が不要であるため、バランス修正作業を迅速に行うことができ、修正作業時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2実施形態にかかる電動機付過給機の回転バランス修正方法を実施するための回転バランス試験装置20の概略構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態にかかる回転バランス試験装置20は、第1実施形態のものに、減圧チャンバ36をさらに備えたものである。
減圧チャンバ36は、電動機付過給機10を収容可能であり、且つ、内部を減圧可能に構成されている。減圧チャンバ36には、排気ライン38及び減圧ポンプ37(真空ポンプ)が接続されており、これにより減圧チャンバ36内が所定の減圧状態とされる。
【0037】
本実施形態にかかる回転バランス試験装置20の他の部分の構成は、上述した第1実施形態と同様である。
【0038】
本実施形態にかかる回転バランス試験装置20を用いた電動機付過給機の回転バランス修正方法では、減圧チャンバ36内に電動機付過給機10を設置して、過給機ロータを回転させ、回転バランス試験を実施する。その他の手順については、上述した第1実施形態と同様である。
このように、減圧チャンバ36内に電動機付過給機10を設置して、過給機ロータを回転駆動するので、タービンインペラ2及びコンプレッサインペラ6の回転時にこれらに作用する空気抵抗が低減される。
このため、回転バランス試験に要求される高速回転まで確実に過給機ロータの回転数を上げることができる。
【0039】
なお、減圧チャンバ36内の減圧度(真空度)は、高いほどタービンインペラ2及びコンプレッサインペラ6に作用する空気抵抗が低くなるため好ましいが、少なくとも大気圧(0.1MPa)より低く設定すれば、空気抵抗低減効果が得られる。
【0040】
上記各実施形態の説明から明らかなように、本発明によれば、回転バランス試験装置を簡素化・小型化でき、スラスト軸受に過大な反スラスト力が作用することがなく、タービンインペラ側のバランス修正を容易に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】一般的な電動機付過給機の構成を示す図である。
【図4】従来技術による電動機付過給機の回転バランス修正方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
2 タービンインペラ
4 タービンハウジング
6 コンプレッサインペラ
7 ナット
8 コンプレッサハウジング
10 電動機付過給機
12 シャフト
14 センターハウジング
16 ジャーナル軸受
17 スラスト軸受
18 電動機
18A 回転子
18B 固定子
20 回転バランス試験装置
22 過給機設置台
23 取付部
23a 上部材
23b 下部材
23c 締結部品
24 上板
25 脚部
26 底板
27 専用モータドライバ
28 電力ケーブル
29 プラグ
30 ソケット
31 回転検出器
32 加速度ピックアップ
34 演算器
35 床面
36 減圧チャンバ
37 減圧ポンプ
38 排気ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの両端にタービンインペラ及びコンプレッサインペラが連結されこれらが一体的に回転する過給機ロータの回転を内蔵された電動機により加速補助するように構成された電動機付過給機の回転バランスを修正する方法であって、
前記電動機により前記過給機ロータを回転駆動して、前記電動機付過給機の回転バランス修正に必要なデータを検出し、回転バランスを修正する、
ことを特徴とする電動機付過給機の回転バランス修正方法。
【請求項2】
加速補助時に前記電動機に電力を供給する加速補助用モータドライバとは別の専用モータドライバであって前記加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を前記電動機に供給する専用モータドライバを用い、前記電動機を駆動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の電動機付過給機の回転バランス修正方法。
【請求項3】
電動機付過給機のタービンハウジング及びコンプレッサハウジングを取り外した状態で、前記電動機により前記過給機ロータを回転駆動する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機付過給機の回転バランス修正方法。
【請求項4】
内部が減圧された減圧チャンバ内に前記電動機付過給機を設置して、前記過給機ロータを回転駆動する、ことを特徴とする請求項3に記載の電動機付過給機の回転バランス修正方法。
【請求項5】
シャフトの両端にタービンインペラ及びコンプレッサインペラが連結されこれらが一体的に回転する過給機ロータの回転を内蔵された電動機により加速補助するように構成された電動機付過給機に対し回転バランス修正のための試験を行う、電動機付過給機の回転バランス試験装置であって、
前記電動機付過給機のシャフトを回転自在に支持するセンターハウジングを設置・固定可能な過給機設置台と、
加速補助時に前記電動機に電力を供給する加速補助用モータドライバとは別の専用モータドライバであって前記加速補助用モータドライバの供給電力より大きい電力を前記電動機に供給する専用モータドライバと、
前記電動機過給機の回転バランス修正に必要なデータを検出するデータ検出手段と、を備える、
ことを特徴とする電動機付過給機の回転バランス試験装置。
【請求項6】
前記電動機付過給機を収容可能であり、且つ、内部を減圧可能な減圧チャンバをさらに備える、ことを特徴とする請求項5に記載の電動機付過給機の回転バランス試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−183203(P2007−183203A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2307(P2006−2307)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】