説明

電動機

【課題】
電動機の引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を確実に固定し、電動機の振動等によりズレの生じない、信頼性を向上させた電動機を提供する。
【解決手段】
固定子の軸方向端面には樹脂成形された絶縁部材が装着され、前記絶縁部材はティース部と巻線を絶縁するための樹脂絶縁胴部と、前記樹脂絶縁胴部の固定子内径側に面して伸びる内周側壁と、固定子外径側に面して伸びる外周側壁を有した絶縁部材を装着した固定子において、コイルエンド部に各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が配置され、前記絶縁部材の固定子軸方向から絶縁カバーを係り合わせて固定するものであって、前記絶縁カバーの裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が動かないように押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられた電動機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫やエアコン等の室外機に用いられる密閉圧縮機に搭載される電動機、或いは、車両用として用いられる電動機の固定子のティース部に巻線が巻き付けられた巻線端部の固定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の冷蔵、エアコン等の室外機に用いられる密閉圧縮機に搭載される電動機、或いは、車両用として用いられる電動機の固定子は、固定子のティース部に樹脂絶縁を施し、樹脂絶縁の上から巻線が直接巻き付けられた集中巻方式による電動機が増えてきている。集中巻方式の電動機は従来の分布巻方式と比べて銅量が少なくて済み、銅損が低減でき電動機の性能を向上させることができる。
【0003】
集中巻方式とした電動機の固定子は極数によっては巻線端部から引き出した引出線の数も多くなり、それに伴い、巻線端部から引き出した引出線やそれらを結線した接続点の処理や固定方法も問題となってくる。固定子に樹脂絶縁を用いる多くの電動機では、各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を巻線用固定紐で樹脂絶縁と一体に固定するか、固定子端部から軸方向に伸びた固定子内径側に面した樹脂壁や、固定子外径側に面した樹脂壁に引出線を係止め固定する係り止め部を設け、この係止め部に引出線を固定しなければならないため作業性が著しく悪化している。
【0004】
このような電動機に対して特許文献1(特開2002−44896号公報)に開示されているような電動機がある。本願では図9に示している。図9の電動機は、固定子100のティース部40に巻線60を巻き付けるための樹脂胴部70cと、固定子内径に面して前記樹脂胴部から固定子軸方向に伸びる外周側壁70aと内周側壁70bを設け一体成形した絶縁部材70に、集中巻方式により巻き付けた巻線60の各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点80が散乱しないように、外径壁90aと内径壁90bが設けられた絶縁カバー90により、コイルエンド部と絶縁カバー90との間の空間に収納している。
【0005】
これにより、ティース部40に巻き付けた各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点80を、巻線用固定紐で樹脂絶縁と一体に固定したり、或いは、固定子端部から軸方向に伸びた樹脂絶縁の固定子内径側、外径側に面した樹脂壁に、各巻線端部から引き出した引出線や口出線を係り止め固定する手間が省け、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点80がバラバラに散乱するのを防止し作業性を改善した電動機であります。
【0006】
【特許文献1】特開2002−44896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような電動機では、固定子のティース部に集中巻により巻き付けられた各巻線端部から引き出された引出線や口出線及びそれらを接続した接続点の散乱を防止し、絶縁部材に設けられた外径側樹脂壁と内径側樹脂壁、並びに、散乱防止用の絶縁カバーにより、コイルエンド部と絶縁カバーとの間の空間に収納しているのみであり、電動機の固定子の周方向、径方向の振動等に対してはその空間内でズレて動き易い構造となっている。
【0008】
特に、各巻線端部から引き出した引出線や口出線を接続した接続点は、通常、固定子のティースに巻き付けた巻線と接触しないように接続点を絶縁する接続点絶縁が施されている。この接続点絶縁は電動機の振動等により接続点からずれて脱落する恐れがある。このように接続点絶縁の脱落により絶縁不良となった電動機は、焼損事故を起こしてしまう。
【0009】
従って、固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる外径側樹脂壁と内径側樹脂壁、並びに、散乱防止用の絶縁カバーにより各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点をコイルエンド部と絶縁カバーの間の空間に収納しているだけでなく、各巻線端部から引き出された引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を、確実に固定して信頼性を向上した電動機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
固定子の軸方向端面には樹脂成形された絶縁部材が装着され、
前記絶縁部材は、ティース部と巻線を絶縁するための樹脂絶縁胴部と、固定子内径側に面して樹脂絶縁胴部より固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる内周側壁と、固定子外径側に面して樹脂絶縁胴部より固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる外周側壁を有した絶縁部材を装着した固定子において、
前記ティース部に巻き付けられた巻線のコイルエンド部には、各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が配置され、前記絶縁部材の固定子軸方向から引出線や接続点が飛び出ないように、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定し、
前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が固定子軸方向に動かないように押さえ込むための複数の押さえ込み突起を設けた電動機とする。
【0011】
また、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーを用いて、前記絶縁カバーの底部からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起を設け、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所傾斜角を有した突起形状とした電動機とする。
【0012】
また、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーを用いて、前記絶縁カバーの裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられ、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向となるように形成した電動機とする。
【0013】
更に、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向であり、尚且つ、隣り合う突起の傾斜角度が異なるように形成した電動機とする。
【0014】
また、前記絶縁カバーの裏側の引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起の位置が、前記ティースに巻き付けた隣り合う巻線間に設けた電動機とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動機は、固定子のティース部に巻き付けられた各巻線端部から引き出された引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が散乱してバラバラにならないように、固定子のティース部と巻線を絶縁するための樹脂絶縁胴部と、この樹脂絶縁胴部の固定子内径に面して固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる外径側樹脂壁と内径側樹脂壁、並びに、散乱防止用の絶縁カバーにより、各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を、樹脂絶縁胴部に巻き付けた巻線のコイルエンド部と絶縁カバーとの間の空間に収納すると共に、絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側に、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が固定子軸方向に動かないように押さえ込む複数の押さえ込み突起を設けることにより各巻線端部から引き出した引出線や口出線、それらを接続した接続点(接続点絶縁)を確実に押さえ込むことができ、電動機の振動等により接続点絶縁がズレて脱落し、露出した接続点が巻線と接触することも無くなる。これにより接続点部分の絶縁不良を低減し、焼損事故を低減させ信頼性を向上させた電動機とすることができる。また、電動機の振動等による引出線や口出線同士の擦れによる絶縁不良も低減できる。
【0016】
また、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーを用いて、絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の複数の押さえ込み突起の形状を、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部から伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所傾斜角を有した突起形状とした電動機とすることにより、固定子のティース部に巻き付けられた各巻線端部から引き出された引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を、前記絶縁部材の固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる内周側壁から外周側壁のどちらか一方に偏らせて固定することができ、固定子のコイルエンド部上での周方向への動きを固定するのみでなく固定子のコイルエンド部上での径方向の動きを強制的に固定することができる。
【0017】
また、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーを用いて、絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の複数の押さえ込み突起の形状を、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部から伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角を逆方向にすることにより、各巻線端部から引き出された引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が、突起を縫うように固定されるため、より強固に固定子のコイルエンド部上での周方向への動きと、径方向の動きを強制的に固定することができる。
【0018】
また、この絶縁カバーの裏側の複数の押さえ込み突起の少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向であり、尚且つ、隣り合う突起の傾斜角度が異なるようにすることにより、前記効果の他に、各ティース部に巻き付けた巻線の巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を、コイルエンド部の固定子の径方向の所望の位置に固定することも可能になる。これにより、例えば、絶縁部材の内周側壁寄りまたは外周側壁寄りの一方に固めて固定することもできる。
【0019】
更に、前記絶縁カバーの裏側の引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起の位置が、前記ティースに巻き付けた隣り合う巻線間に設けることにより、固定子軸方向の動きも強制的に押さえ込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を図1及び図2を用いて説明する。図1は電動機の上から見た正面図である。
図2は、本発明の電動機に絶縁カバー9を取り付ける前の図1に示した電動機の正面図である。電動機の固定子1は、ヨーク部2から固定子1の内径方向に延びるティース部4が形成され、ヨーク部2とティース部4により6つのスロット3が形成されている。この固定子1の軸方向の両端面には、ティース部4と巻線6を絶縁するための樹脂絶縁胴部7c(図10を参照)と、固定子1の内径側に面して樹脂絶縁胴部7cより固定子1の端面側とは逆の固定子1の軸方向に伸びる内周側壁7bと、固定子1の外径側に面して樹脂絶縁胴部7cより固定子1の端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる外周側壁7aを有した絶縁部材7が装着されている。この樹脂絶縁7には巻線6を直接巻き付けた集中巻方式の巻線が施されている。
【0021】
また、電動機の固定子1のヨーク部2とティース部4に構成されたスロット3には、スロット表面を覆うようにフィルム状の絶縁フィルムが装着されている。また、同様に絶縁部材7からスロット3のスロット軸方向に伸びて、スロット軸方向のほぼ中央付近で重ね合わせて装着する上下セパレート型の樹脂絶縁のスロット絶縁としてもよい。
【0022】
前記ティース部4の巻線6が巻き付けられる樹脂絶縁胴部7cのコイルエンド部には、各巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が配置されている。本実施形態では固定子1のティース部4に巻き付けた巻線6は、三相4極、2Yで結線されている。
【0023】
U相の口出線5Uは、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線の一方の端部と結線し接続点8uを構成し、もう一方の端部は中性点8aを構成している。また、同様にV相の口出線5Vは、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線の一方の端部と結線し接続点8vを構成し、もう一方の端部は中性点8aを構成している。更に、W相の口出線5Wは、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線の一方の端部と結線し接続点8wを構成し、もう一方の端部は中性点8aを構成している。尚、各接続点には接続点絶縁を被せて絶縁している。本実施形態の「接続点」は、接続点に絶縁を被せた状態を含んでいる。
【0024】
絶縁カバー9を図3及び図4を用いて説明する。図3は図1に示した電動機に装着した絶縁カバー9の表側から見た図である。また図4は図1に示した電動機に装着した絶縁カバー9の裏側から見た図である。絶縁カバー9はコイルエンド部に面する裏側の絶縁カバー9の底部9c(絶縁部材7に係り止めされている状態で、固定子端面側と対峙する面)の固定子外径側から固定子端面側に伸びた外径壁9aと、絶縁カバー9の底部9cの固定子内径側から固定子端面側に伸びた内径壁9bとを備えている。本実施形態では絶縁カバー9の外径壁9aの上部先端部には鍵状に形成した係り止め部9dが設けられ、これにより絶縁部材7に確実に係り止めができる構造としている。尚、絶縁部材7と絶縁カバー9が係り止めされた様子を図10に示す。図10は図1のE−E’断面図である。絶縁カバー9の固定子外径側の外径壁9aに設けた係り止め部9dにより、絶縁部材7の固定子外径側の外周側壁7aの係り止め部に係り止めしている。これにより、電動機の振動等により絶縁部材7から絶縁カバー9がはずれ落ちることも無くり、巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8を確実に押さえ込むことができる。
【0025】
また、絶縁カバー9には、口出線5の固定が容易となるように絶縁カバー9の固定子外径から固定子内径に向かい切り欠いた口出線固定溝11が設けられ、この口出線固定溝11に口出線5を係り止め固定している。この口出線固定溝11は、切り欠き溝挿入部11bより切り欠き溝底部11cが若干幅広部に設けられ、口出線5の根本部が固定し易くなっている。また、この口出線固定溝11の切り欠き溝底部11cの形状は円形状、四角、三角等であり、口出線5を確実に固定しズレることのない構造としている。また、口出線5の固定が容易となるように絶縁カバー9の固定子外径から固定子内径に向かい切り欠いた口出線固定溝11は、この口出線固定溝11に口出線5が挿入し易いように、作業性を考慮してロート形状の挿入口11aとしている。これによって口出線5を口出線固定溝11に容易に挿入することができ、作業性を改善することができる。尚、絶縁カバー9の表面には、密閉圧縮機に搭載される電動機であるため、冷媒が流入するための風孔10が設けられている。
【0026】
この絶縁カバー9は、先に説明した各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が絶線部材7の固定子軸方向から飛び出ないように、前記絶縁部材7を覆うように絶縁カバー9を係り合わせて固定し、絶縁カバー9のコイルエンド部に面する裏側からは、引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が固定子軸方向に動かないように複数の押さえ込み突起12によりコイルエンド部側に押さえ付けられている。
【0027】
これにより、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8aをこの複数の押さえ込み突起12によりコイルエンド部上に固定し固定子の周方向の動きを確実に固定することができる。
【0028】
また、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が、固定子1の周方向の動きのみでなく、固定子1の径方向の動きも防止する場合は、前記絶縁部材7を覆うように絶縁カバー9を係り合わせて固定した状態において、この複数の押さえ込み突起12の先端部の形状を、絶縁カバー9のコイルエンド部に面する裏側の底部9cを基準として固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁9bから外径壁9aに向かい、或いは、絶縁カバー9のコイルエンド部に面する裏側の底部9cを基準として固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁9aから内径壁9bに向かい、少なくとも一カ所傾斜角θ1を有した突起形状とすることにより、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が、コイルエンド部での周方向の動きのみでなく、固定子1の径方向への動きも防止することができる。
【0029】
また、図5から図7に示したように、固定子1のティース部4の樹脂胴部7cに直接巻線6を巻き付けたコイルエンド部に位置する接続点8を絶縁カバー9の裏側に設けた複数の押さえ込み突起12によって押さえ込んでいるが、絶縁カバー9の裏側の引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8を押さえ込むための複数の押さえ込み突起12の先端部の形状を、前記絶縁部材7を覆うように絶縁カバー9を係り合わせて固定した状態において、絶縁カバー9のコイルエンド部に面する裏側の底部9cを基準として、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁9bから外径壁9aに向かい、或いは、絶縁カバー9のコイルエンド部に面する裏側の底部9cを基準として、固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁9aから内径壁9bに向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起12の傾斜角が逆方向となるように形成している。
【0030】
図5は図1(及び図2)に示した電動機のB−B’断面図である。図5ではコイルエンド部に配置した接続点8wを、絶縁カバー9を絶縁部材7に係り止め固定した状態において固定子端面側に向かい絶縁カバー9の底部9cを基準として、外径壁9aから内径壁9bに向かい所望の傾斜角θ1を有した突起12fが設けられている。この傾斜角θ1により接続点8wが絶縁部材7の外周側壁7a側のコイルエンド部端部に押さえ込まれ動かないように固定されている。
【0031】
また、図6は図1(及び図2)で示した電動機のA−A’断面図である。図6は図5と同様にコイルエンド部に配置した接続点8aを、絶縁カバー9を絶縁部材7に係り止め固定した状態において固定子端面側に向かい絶縁カバー9の底部9cを基準として、内径壁9bから外径壁9aに向かい所望の傾斜角θ2を有した突起12eが設けられている。この傾斜角θ2により接続点8aが絶縁部材7の内周側壁7b側のコイルエンド部端部に押さえ込まれ動かないように固定している。
【0032】
図7には、図5で説明した押さえ込み突起12e、12fが、どのように口出線5を押えているのかが解るように、図5のC−C’断面から見た様子を模式的に水平展開した図である。押さえ込み突起12e、12fの先端部の形状が、絶縁カバー9を絶縁部材7に係り止め固定した状態において固定子端面側に向かい絶縁カバー9の底部9cを基準として、内径壁9bから外径壁9aに向かい所望の傾斜角θ2を有した突起12eと、絶縁カバー9の底部9cを基準として、外径壁9aから内径壁9bに向かい所望の傾斜角θ1を有した突起12fが、少なくとも一カ所で隣り合う突起12e、12fの傾斜角が逆方向となるように設けている。これにより絶縁カバー9の裏面と対峙するコイルエンド部に配線される引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が、突起12eと突起12fの間を縫う様に強制的に配線され、コイルエンド部で周方向の動きのみでなく、固定子1の径方向への動きも確実に防止することができる。
【0033】
従って、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8が、コイルエンド部で周方向の動きのみでなく、固定子1の径方向への動きも防止することができ、特に電動機の振動等により固定子1の径方向への動きが激しい場合、信頼性を向上させることができる。尚、この絶縁カバー9の裏側の複数の押さえ込み突起の少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向であり、尚且つ、隣り合う突起の傾斜角度θ1とθ2(図5及び図6の例ではθ1≠θ2)が異なるように変えることにより、各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8を、コイルエンド部の固定子1の径方向の所望の位置に固定することも可能になる。これにより、例えば、絶縁部材7の内周側壁7b寄りまたは外周側壁7a寄りの一方に固めて固定することもできる。
【0034】
また、隣り合う突起の複数個を1つのブロックとして構成してもよい。この場合は、隣り合う複数の突起で構成されたブロック毎に少なくとも一カ所隣り合うブロック毎の突起の傾斜角を逆方向としてもよく、また、少なくとも一カ所隣り合うブロック毎の突起の傾斜角が逆方向であり、尚且つ、隣り合うブロック毎の突起の傾斜角度θ1とθ2(図5及び図6の例ではθ1≠θ2)が異なるようにしても同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、図5のD矢視図を図8で示す。尚、図を解りやすくするために絶縁部材7の内周側壁7bは図示していない。図8は各ティース4に巻き付けられて巻線6の巻回数や線径により巻線量が増減することによりコイルエンド部と絶縁カバー9との間に隙間が発生する。このコイルエンド部と絶縁カバー9との隙間に押さえ込み突起12(12e、12f)により引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8をコイルエンド部側に強制的に押さえ込んでいる。
【0036】
図8に示すように絶縁カバー9の裏側の複数の押さえ込み突起12(12e、12f)の位置が、前記ティース4に巻き付けた巻線6の、隣り合う巻線間となる様に設けられている。これにより各ティース部4に巻き付けた巻線6の巻線端部から引き出した引出線や口出線5及びそれらを接続した接続点8を、各ティース4に巻き付けた巻線量の増減によりコイルエンド部と絶縁カバー9との隙間の大きさに関係なくコイルエンド側に強制的に押さえ込み固定子軸方向への動きを確実に押さえ込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態の電動機の固定子を上から見た正面図。
【図2】図1の電動機の固定子に絶縁カバーを取り付ける前の図。
【図3】本実施形態の絶縁カバーの図。
【図4】図3に示した絶縁カバーの裏側の図。
【図5】突起12fの形状が解るようにした図1のB−B’断面図。
【図6】突起12eの形状が解るようにした図1のA−A’断面図。
【図7】図1に示した電動機を、図5及び図6に示したC−C’断面から見た模式図。
【図8】図1に示した電動機を、図5に示した固定子内径側から見たD矢視図。
【図9】従来例の電動機のコイルエンド部の断面図。
【図10】絶縁部材と絶縁カバーとの係り止め部詳細図
【符号の説明】
【0038】
1、100・・・固定子
2・・・ヨーク部
3・・・スロット
4、40・・・ティース部
5・・・口出線
6、60・・・巻線
7、70・・・絶縁部
7a、70a・・・外周側壁
7b、70b・・・内周側壁
7c・・・胴部
8、8a、8u、8v、8w、80・・・接続点
9、90・・・絶縁カバー
9a、90a・・・外径壁
9b、90b・・・内径壁
9c、90c・・・底部
10・・・風孔
11・・・口出線固定溝
12、12e、12f・・・突起
θ1、θ2・・・傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子の軸方向端面には樹脂成形された絶縁部材が装着され、
前記絶縁部材は、ティース部と巻線を絶縁するための樹脂絶縁胴部と、固定子内径側に面して樹脂絶縁胴部より固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる内周側壁と、固定子外径側に面して樹脂絶縁胴部より固定子端面側とは逆の固定子軸方向に伸びる外周側壁を有した絶縁部材を装着した固定子において、
前記ティース部に巻き付けられた巻線のコイルエンド部には、各巻線端部から引き出した引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が配置され、前記絶縁部材の固定子軸方向から引出線や接続点が飛び出ないように、前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定し、
前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点が固定子軸方向に動かないように押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられたことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーであって、
前記絶縁カバーの底部からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられ、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所傾斜角を有して形成されていることを特徴とする請求項1項に記載の電動機。
【請求項3】
前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーであって、
前記絶縁カバーの裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられ、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向となるように形成されていることを特徴とする請求項1項または請求項2項に記載の電動機。
【請求項4】
前記絶縁部材を覆うように絶縁カバーを係り合わせて固定した状態において、前記絶縁カバーはコイルエンド部に面する裏側の底部から、固定子内径側に面して固定子端面側に伸びる内径壁と、前記絶縁カバーの底部の固定子外径側に面して固定子端面側に伸びる外径壁を備えた絶縁カバーであって、
前記絶縁カバーの裏側からは、引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起が設けられ、前記突起の形状が、前記絶縁カバーのコイルエンド部に面する裏側の底部を基準として伸びた内径壁から外径壁に向かい、或いは、外径壁から内径壁に向かい、少なくとも一カ所隣り合う突起の傾斜角が逆方向であり、隣り合う突起の傾斜角度が異なるように形成されていることを特徴とする請求項3項に記載の電動機。
【請求項5】
前記絶縁カバーの裏側の引出線や口出線及びそれらを接続した接続点を押さえ込むための複数の押さえ込み突起の位置が、前記ティースに巻き付けた隣り合う巻線間に設けたことを特徴とする請求項1項及至請求項4項のいずれかに記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−45952(P2010−45952A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209982(P2008−209982)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】