説明

電動送風機およびそれを用いた電気掃除機

【課題】高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供する。
【解決手段】ブラシレスモータ7において、インペラ8と、インペラ8の外周に通風路を形成するエアガイド9aと、インペラ8を覆いエアガイド9a前面に固定されたファンケース10とを備え、エアガイド9aは中央部に配置した熱伝導材料の円環状部材11aをその周囲の樹脂部材12aに密着させた状態でインサート成形して構成され、円環状部材11aは、円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成され、鍔部14の底面には複数のピン15を形成し、複数のピン15がモータフレーム6に設けた複数の孔16に挿入され、鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが当接することで、軸受の熱をエアガイドの冷却部へ伝導させてインペラからの気流で放熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機は家庭用の電気掃除機に多く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。家庭用の電気掃除機の入力電力は限られており、より強い吸引力を得るためには電動送風機の送風性能を向上する必要がある。同時に、掃除のしやすさの視点から掃除機本体の小回りが良いことが望まれており、電動送風機を小型化する必要がある。電動送風機を小型化するにはインペラを高速回転させて径小化する必要があるが、回転数の増加に伴ない、インペラのアンバランス量の影響が大きくなり、軸受にかかる荷重が増大するとともに、転動体と内輪・外輪との接触回数が増えて摩擦による軸受の温度上昇が増えてしまうという課題がある。また、インペラからの気流でモータ内部に通して軸受周辺を冷却しようとすると、曲がり損失が増えて電動送風機の性能が低下してしまい、小型化との両立が困難である。
【0003】
図14は、特許文献1に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。回転軸41を有した回転子42と、巻線を有した固定子43と、固定子43を内包し回転軸41を支持する軸受44を保持したフレーム45とにより構成されたブラシレスモータを備えるとともに、複数枚のブレード46を有し回転軸41に固定されたインペラ47と、インペラ47の外周に配置されたエアガイド48と、インペラ47およびエアガイド48を内包し、中央部に吸気口49を配置し、フレーム45に固定されたファンケース50を備え、前記フレーム45の外側に設けた外筒51との間に、インペラ47によって発生させ、エアガイド48に導かれた空気をフレーム45外周に沿って流す通気路52を構成している。
【0004】
そして、この外筒51の外側に駆動用半導体素子53を設置し、外筒51の内部には他端がフレーム45に当接し、気流と長手方向が一致するような冷却フィン54を設け、冷却フィン54と外筒51、フレーム45によって囲まれた独立通路の断面積が下流方向に徐々に拡大するようにフレーム45又は外筒51が傾斜した電動送風機55が開示されている。
【0005】
図15は、特許文献2に記載された従来の電動送風機の断面構成を示す図である。電動機56と、電動機により回転駆動されるファン57と、ファン57からの気流を整流するとともに、ディフューザ作用を有する整流板58とからなる電動送風機59と、電動送風機59の回転数を制御するスイッチング素子60とを備え、整流板58を熱伝導性の高い材料によって形成し、整流板58にスイッチング素子60を密着させて固定した電動送風機59が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−336696号公報
【特許文献2】特開昭63−97130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の電動送風機の構成では、外筒と冷却フィンについては熱伝導性の高い材質を用いているが、エアガイドの材質に関する記述はなく、家庭用掃除機用のエアガイドは一般に樹脂製であるので熱伝導性が低くエアガイドの風路へ熱が伝導しにくいと同時に、軸受を保持するフレームだけでは高速回転時の軸受の熱を十分に放熱させることができず、軸受の温度が急激に上がり信頼性が低下してしまうという課題を有していた。
【0008】
また、特許文献2に記載の従来の電動送風機の構成では、整流板を熱伝導性の高い材料で形成することでスイッチング素子の冷却は可能であるが、軸受の熱を効率的に整流板へ伝導させる構成については示唆されておらず、軸受から整流板への風路への距離が遠いため、上記と同様、高速回転時の軸受冷却が十分に行えず、軸受の信頼性低下が懸念されるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高速回転時のブラシレスモータの軸受冷却を小型でかつ低圧損の構成で実現し、高い送風性能と信頼性を有する電動送風機およびそれを用いた電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、前記エアガイドは中央部に配置した金属あるいは熱伝導性のある無機材料を用いた円環状部材と前記円環状部材の周囲に密着させた樹脂部材とが一体となり構成され、前記エアガイドは、前記円環状部材が前記モータフレーム前面に突出した軸受保持部に嵌合された状態で前記モータフレームに固定されるとともに、前記円環状部材は、円環とこの円環の外周から延設した鍔部とで一体構成され、前記鍔部の底面には複数のピンが形成され、前記複数のピンが前記モータフレームに設けた複数の孔に挿入された状態で、前記鍔部の底面とモータフレーム前面とが当接される構成をしている。
【0011】
これによって、ブラシレスモータを高速で駆動させた際に、軸受内部で発生した熱は軸受保持部を通して円環状部材へと伝導し、また軸受周辺の熱は複数のピンを通じて鍔部へと伝導することで、双方の熱が円環状部材に伝導してからエアガイドの冷却部へと伝わり、インペラで発生した気流でエアガイドを強制冷却することで連続的に放熱するとともに、エアガイドの各々の風路で気流の動圧を静圧に変換することで、軸受とその周辺を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えつつ、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0012】
また、本発明の電気掃除機は、軸受の信頼性が高く小型で高い送風性能を有する電動送風機を搭載しているので、強い吸引力を有しゴミ取れ性が良好であり、小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動送風機は、エアガイドに円環状部材を有することで発熱源である軸受の熱だけでなく軸受周辺の熱もエアガイドの冷却部へ効率よく伝導させて、インペラからの気流で放熱することができるとともに、エアガイドの風路はディフューザ作用を有しているため、軸受を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えつつ、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
また、このような電動送風機を用いた電気掃除機は、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性が良
好であり、電動送風機が軽量なので、小回りが利いて使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図2】同電動送風機の円環状部材の上面から見た斜視図
【図3】同電動送風機の円環状部材の底面から見た斜視図
【図4】同電動送風機のブラシレスモータを表す斜視図
【図5】同電動送風機の展開図
【図6】同電動送風機のインペラの一部断面斜視図
【図7】同電動送風機の軸受の一部断面図
【図8】同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す断面図
【図9】同電動送風機の一部断面図
【図10】本発明の第2の実施の形態における電動送風機の一部断面図
【図11】同電動送風機の円環状部材の上面から見た斜視図
【図12】同電動送風機の円環状部材の底面から見た斜視図
【図13】同電動送風機のブラシレスモータの斜視図
【図14】従来の電動送風機の断面図
【図15】従来の電動送風機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、前記エアガイドは中央部に配置した金属あるいは熱伝導性のある無機材料を用いた円環状部材と前記円環状部材の周囲に密着させた樹脂部材とが一体となり構成され、前記エアガイドは、前記円環状部材が前記モータフレーム前面に突出した軸受保持部に嵌合された状態で前記モータフレームに固定されるとともに、前記円環状部材は、円環とこの円環の外周から延設した鍔部とで一体構成され、前記鍔部の底面には複数のピンが形成され、前記複数のピンが前記モータフレームに設けた複数の孔に挿入された状態で、前記鍔部の底面とモータフレーム前面とが当接される構成とした電動送風機としたものである。
【0016】
これによって、ブラシレスモータを高速で駆動させた際に、軸受内部で発生した熱は軸受保持部を通して円環状部材へと伝導し、また軸受周辺の熱は複数のピンを通じて鍔部へと伝導することで、双方の熱が円環状部材に伝導してからエアガイドの冷却部へと伝わり、インペラで発生した気流でエアガイドを強制冷却することで、ステータの熱を気流に伝達させてブラシレスモータ外部へ逃がすことができる。
また、エアガイドの各々の風路はディフューザ作用を有しており、気流の流速を徐々に減速させながら動圧を静圧に変換することができるので、軸受とその周辺を効率よく冷却して過度な温度上昇を抑えつつ、小型で高い送風性能を有する電動送風機を実現することができる。
【0017】
第2の発明は、特に第1の発明において、エアガイドは、樹脂部材の底面と円環状部材の端面とが略同一面となるよう構成しているので、エアガイドの鍔部とモータフレーム前面との当接面積を大きくすることができ、接触熱抵抗を小さくしてモータフレーム前面からの熱流量を増やすことができる。また、エアガイドのガタツキを抑えてモータフレームに安定して固定することができる。
【0018】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、円環状部材は、内周面に複数の溝を有し、軸受保持部の外周面に設けた複数の溝と互いに嵌め合う構成をしているので、複
数の溝がない場合に比べて円環状部材と軸受保持部との接触面積を大きくすることができ、接触熱抵抗を小さくして軸受保持部から円環状部材への熱流量を増やすことができる。
【0019】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明において、エアガイドの樹脂部材は、熱伝導性フィラーを有しているので、樹脂部材の内部に熱の通り道となる熱伝導路が形成され、樹脂部材の熱伝導性を大幅に高めることができるようになり、軸受保持部およびモータフレーム前面から円環状部材へ伝導してきた熱がエアガイドの冷却部へ伝わりやすくなり、放熱効果を大幅に向上することができる。
【0020】
第5の発明は、請求項1〜4のいずれか1つの発明の電動送風機を搭載した電気掃除機とすることにより、強い吸引力を有しゴミ取れ性がよく、本体サイズが小さいので小回りの利く使い勝手がよい電気掃除機となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1〜図8は、本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示すものである。図1は同電動送風機の一部断面図であり、図2は同電動送風機の円環状部材の上面から斜視図であり、図3は同電動送風機の円環状部材の底面から見た斜視図であり、図4は同電動送風機のブラシレスモータを表す斜視図であり、図5は同電動送風機の展開図であり、図6は同電動送風機のインペラの一部断面斜視図であり、図7は同電動送風機の軸受の一部断面図であり、図8は同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す断面図である。
【0023】
図1〜図4に示すように、電動送風機1aは、回転軸2を有するロータ3とロータ3外周に対向配置されたステータ4と回転軸2の軸受5を保持しステータ4を覆うモータフレーム6とで構成されるブラシレスモータ7と、回転軸2に固定されたインペラ8と、インペラ8の外周に通風路を形成するエアガイド9aと、インペラ8を覆いエアガイド9a前面に固定されたファンケース10とを備え、エアガイド9aは中央部に配置したアルミニウム製の円環状部材11aをその周囲のポニフェニレンサルファイド(PPS)を用いた樹脂部材12aに密着させた状態でインサート成形することで構成され、円環状部材11aは、円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成され、鍔部14の底面には複数のピン15が形成され、複数のピン15がモータフレーム6に設けた複数の孔16に挿入され、鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが当接した状態でモータフレーム6に固定されている。
【0024】
なお、円環状部材11aは軸受保持部17に圧入されており、複数のピン15はその先端部がブラシレスモータ7の巻線18と絶縁距離を確保した位置に配されている。また、エアガイド9aは、樹脂部材12aの底面と鍔部14の端面とが略同一面を有している。また、図5に示すように、エアガイド9aは複数の案内翼19を有し、その上面にファンケース10が当接する状態で固定され、各々の案内翼19間に独立風路20が形成されており、各々の独立風路20はインペラ8外周からエアガイド9a外周にかけて流路断面積が連続的に大きくなっている。
【0025】
また、図6に示すように、インペラ8は、板金製の前シュラウド21とこれに対向する後シュラウド22とで3次元翼を有するインデューサ23および複数のブレード24を挟持することで構成されている。また、図7に示すように、軸受5には摩擦トルクが少ない特徴を有するころがり軸受5を使用した。ころがり軸受5は、内輪25と外輪26を有し、その間に転動体27が介在し、転動体27の転がりによって回転荷重を支えている。インペラ8入口先端部は、インペラ8が回転駆動可能な状態でPTFE樹脂製リング28を
接触させて動的にシールされている。
【0026】
図8において、電気掃除機29は、本体吸気口30に連通した集塵室31と本体排気口32を備えた送風室33とを有する掃除機本体34と、集塵室31に本気吸気口と気密に装着された集塵袋35と、送風室33に設置された電動送風機1aと、電動送風機1aを覆う難燃樹脂製の防音カバー36と、送風室33の上下に配置された吸音材37とから構成されている。なお、図示していないが、本体吸気口30には、ホース、延長管が順次接続され、延長管の先端には床面上の塵埃を吸引するノズルが取りつけられている。
【0027】
以上のように構成された電動送風機1aおよびそれを用いた電気掃除機29について、以下その動作、作用を説明する。
【0028】
まず、電動送風機1aの動作について説明する。図1において、巻線18を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ8が回転する。インペラ8の回転で生じる遠心力により、インペラ8内部の空気がインペラ8内部の外周かつ後方へと押しやられ、インペラ8内部が負圧になり、前方からインペラ8内部へ流れ込む気流が発生する。
【0029】
気流はインペラ88の入口から軸方向に流入し、インデューサ23、複数のブレード24、前シュラウド21、後シュラウド22とで形成された複数の内部流路に沿って流れた後、インペラ8外周へ流出する。インペラ8から流出した気流は、エアガイド9aに複数の案内翼19で形成された各々の独立風路20に流入し、エアガイド9a外周へかけて流れる。その際、各々の独立風路20の流路断面積はインペラ8外周からエアガイド9a外周にかけて大きくなるため、独立風路20を流れる気流の流速は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0030】
電動送風機1aの送風性能は、インペラ8を回転駆動するために入力した電力と、電動送風機1aが行う仕事(インペラ8が回転することで発生する真空度と流量の積で求まる空気出力)との比であらわされる。そのため、実際に使用する流量において電動送風機1aが発生する真空度(静圧)を大きくすることが、電動送風機1aの送風性能をあげる上で大変重要となる。また、電動送風機1aを小型化するにはインペラ8を高速回転させて径小化する必要がある。従来の電動送風機1aは50,000rpm未満で駆動させており、更なる小型化には50,000rpm以上の高速回転が必要である。
【0031】
また、ブラシレスモータ7の発熱は、銅損、鉄損、機械損によるものがある。銅損は巻線18を流れる電流によって生じるジュール熱であり、電流の二乗に比例して大きくなる。また、鉄損はヒステリシス損と渦電流損に分けられる。ヒステリシス損は、モータの磁路を形成する電磁鋼板の物性が原因で発生するもので、回転による磁界の変化で磁束密度が変化することに起因する。
【0032】
また渦電流損は、コアに通る磁束の変動により磁束線のまわりに渦状の電流が流れ、その際の電気抵抗で発生するものである。機械損は、軸受5の摩擦やロータ3とステータ4間の空気の攪拌抵抗に起因するものである。特に、50,000rpm以上の高速回転には、ブラシの摺動損失がないブラシレスモータ7が適しているが、回転数の増加に伴ない、インペラ8のアンバランスが回転軸2へ及ぼす影響が大きくなるため、回転軸2の振れ回りが起こりやすくなって軸受5にかかる荷重が増大するとともに、転動体27と内輪25・外輪26との接触回数が増えて、軸受5の温度が急激に上昇し、寿命が低下してしまうという課題がある。そのため、高速回転時には、軸受5を効率よく冷却して温度上昇を抑えることが大変重要となる。一方、インペラ8からの気流をモータ内部に流して軸受5を冷却しようとすると、気流の曲がり損失が大幅に増えて電動送風機1aの性能が低下し
てしまう。
【0033】
軸受5の温度上昇は、上述した転動体27と内輪25・外輪26との摩擦による熱と、モータ内部において軸受5周辺の熱が軸受5に伝わることによって起こる。アルミニウム製の円環状部材11aは、円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成され、鍔部14の底面には複数のピン15が形成され、円環13と軸受保持部17および鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが密着しているので、円環状部材11aには軸受保持部17、複数のピン15、そしてモータフレーム6前面から熱が伝導するようになる。軸受5内部で発生した熱は軸受保持部17を通して円環状部材11aへと伝導し、また軸受5周辺の熱は複数のピン15を通じて鍔部14へと伝導する。
【0034】
また、ブラシレスモータ7内部で銅損、鉄損に起因して発生しモータフレーム6へ伝導した熱についても、その一部がモータフレーム6前面より鍔部14へと伝わる。インペラ8からの気流は、エアガイド9aの独立風路20を流れてその内壁面を連続的に冷却しているため、独立風路20の内壁面と円環状部材11aとの温度差が発生し、円環状部材11aの熱は独立風路20の内壁面へ伝導する。独立風路20の内壁面へ伝導した熱は、独立流路を流れるインペラ8からの気流に連続的に伝達し、エアガイド9a外部へ放熱される。つまり、軸受5だけでなく、ブラシレスモータ7内部における軸受5周辺の熱についても、アルミニウム製の円環状部材11aへ伝導させることができるため、軸受5だけでなく、軸受5周辺についても効率冷却することができる。
【0035】
また、エアガイド9aの各々の風路はディフューザ作用を有しており、気流の流速を徐々に減速させながら動圧を静圧に変換することができるので、軸受5とその周辺の過度な温度上昇を抑えつつ、小型で高い送風性能を有する電動送風機1aを実現することができる。金属は樹脂に比べて一般に熱伝導率が高いため、円環状部材11aの鍔部14の厚みを厚くして、鍔部14と独立風路20との距離を更に小さくすれば、更に熱抵抗を小さくすることが可能になり、エアガイド9aによる放熱効果を向上することができる。ただし、樹脂に比べて比重が大きいため、鍔部14の厚みを厚くした分、質量も大きくなってしまう。また、複数のピン15については、その径を大きくし、ピン数を増やした方が熱伝導する際の熱抵抗が小さくなりブラシレスモータ7内部からの熱流量は大きくなるが、モータフレーム6自体の強度が落ちてしまうため、双方の観点から最適値を求めればよい。
【0036】
円環状部材11aに使用する材料としては、アルミニウム以外にも、銀、銅、金、黄銅、鉄などの金属がある他、ベリリア、珪素、窒化アルミ、マグネシア、アルミナなどの無機材料が考えられる。
【0037】
次に、電気掃除機29の動作について説明する。図8において、電動送風機1aのインペラ8が回転すると、集塵室31が負圧状態になり、ノズル(図示せず)から吸引された塵埃を含む気流が本気吸気口を通過して集塵室31へ流入する。集塵袋35で塵埃を濾過分離した清潔な気流は、電動送風機1aのインペラ8へ流入し、通気路に設けられた複数の風路を通過した後、防音カバー36の排気口から流出して掃除機本体34外部へと放出される。
【0038】
電気掃除機29は、小型で送風性能の高い電動送風機1aを搭載しているため、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機1aの本体サイズが小さくて、小回りが利いて使い勝手がよい。また、掃除機本体34内の吸音面積や排気通路の延長を行うことで、運転音の小さな電気掃除機29にすることも可能である。
【0039】
以上のように、本実施の形態においては、エアガイド9aを中央部に配置したアルミニウム製の円環状部材11aをその周囲のポニフェニレンサルファイド(PPS)を用いた
樹脂部材12aに密着させた状態でインサート成形することで構成し、円環状部材11aは、円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成し、鍔部14の底面には複数のピン15が形成され、複数のピン15がモータフレーム6に設けた複数の孔16に挿入され、鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが当接した状態でモータフレーム6に固定することで、軸受5の熱だけでなく、ブラシレスモータ7内部における軸受5周辺の熱を円環状部材11aを通じてエアガイド9aの独立風路20の内壁面に効率よく伝導させ、インペラ8からの気流で連続的に放熱することができるため、インペラ8の高速回転時にも軸受5とその周辺の温度上昇を抑えつつ、小型で高効率の電動送風機1aを実現することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、アルミニウム製リングを軸受保持部17に圧入する事例で説明したが、必ずしも圧入嵌合する必要はなく、熱伝導性グリスをリング内面もしくは軸受保持部17に塗布して嵌合させることで接触熱抵抗を低減するのでもよく、同様の効果を得ることができる。ただし、一般に金属のほうが熱伝導性グリスよりも熱伝導率が高いため、軸受保持部17とリングとの隙間はできる限り小さくする方が望ましい。
【0041】
なお、本実施の形態においては、図9に示すように、エアガイド9aおよびモータフレーム6の外周面と隙間を設けて配置されたモータケース38を備えた電動送風機1aとすることで、エアガイド9a外周から流出した気流がモータフレーム6とモータケースとの間の通風路を流れるようになり、モータフレーム6の熱を気流に伝達することができるため、モータフレーム6側面も合わせて冷却することができる。
【0042】
(実施の形態2)
図10〜図13は、本発明の実施の形態2における電動送風機1bの構成を示すものである。図10は同電動送風機1bの一部断面図であり、図11は同電動送風機1bの円環状部材11bの上面から見た斜視図であり、図12は同電動送風機1bの円環状部材11bの底面から見た斜視図であり、図13は同電動送風機1bのブラシレスモータ7を表す斜視図である。なお、実施の形態と同一要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図10において、電動送風機1bは、中央部に配置したアルミニウム製の円環状部材11bをその周囲の導電性フィラーを添加したポニフェニレンサルファイド(PPS)を用いた樹脂部材12bに密着させた状態でインサート成形することで構成されたエアガイド9bと、軸受保持部17の外周面に設けられた複数の軸方向に設けられた直線状溝39を有するモータフレーム6とを有している。
【0044】
また、図11、図12に示すように、円環状部材11bは、円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成され、円環13の内周面に直線状の凸部40を有し、かつ鍔部14の底面には複数のピン15が形成され、複数のピン15がモータフレーム6に設けた複数の孔16に挿入され、鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが当接した状態でモータフレーム6に固定されている。軸受保持部17では、軸方向の直線状溝39と円環13の内周面に設けた直線状の凸部40とが互いに嵌め合っており、嵌合部には熱伝導性グリスを塗布して接触熱抵抗を小さくするようにしている。
【0045】
以上のように構成された電動送風機1bについて、以下その動作、作用を説明する。
【0046】
図10において、巻線18を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期してロータ3が回転し、回転軸2に固定されたインペラ8が回転する。インペラ8の回転で生じる遠心力により、インペラ8内部の空気がインペラ8内部の外周かつ後方へと押しやられ、インペラ8内部が負圧になり、前方からインペラ8内部へ流れ込む気流が発生する。気
流はインペラ8の入口から軸方向に流入し、複数の内部流路に沿って流れた後、インペラ8外周へ流出する。インペラ8から流出した気流は、エアガイド9bに複数の案内翼19で形成された各々の独立風路20に流入し、エアガイド9b外周へかけて流れる。その際、各々の独立風路20を流れる気流の流速は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。
【0047】
アルミニウム製の円環状部材11bは直線状の凸部40を有し、軸受保持部17において直線状溝39と互いに嵌め合い密着しているので、円環状部材11bと軸受保持部17との接触面積を大きくして接触熱抵抗を小さくすることができ、発熱源となる軸受5に接触している軸受保持部17から円環状部材11bへの熱流量を大幅に増やすことができる。これにより、エアガイド9bの独立風路20へ熱が伝わりやすくなり、エアガイド9bの放熱効果を向上することができる。
【0048】
また、エアガイド9bの樹脂部材12bには導電性フィラーを添加しているので、樹脂部材12bの内部に熱の通り道となる熱伝導路が形成されて、樹脂部材12bの熱伝導性を大幅に高めることができるようになり、軸受保持部17、複数のピン15、そしてモータフレーム6前面から円環状部材11bへ伝導してきた熱がエアガイド9bの樹脂部材12bを通じて冷却部である独立風路20へと伝わりやすくなり、インペラ8からの気流で効率よく放熱させることができ、エアガイド9bの放熱効果を大幅に向上することができる。
【0049】
熱伝導性樹脂としては、ポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)の他に、ナイロンおよび液晶ポリマー(LCP)が知られている。導電性のフィラーとしては金属粉末、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられ、絶縁性のフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナなど焼結セラミックが用いられており、絶縁性の有無に応じて選択するフィラーを使い分ける必要がある。導電性フィラーを配合した樹脂を用いる方が、絶縁性フィラーを配合した樹脂に比べて熱伝導性を大きくすることができるため、エアガイド9bの樹脂部材12bには導電性フィラーを配合した樹脂を用いるのが望ましい。充填剤の配合比率を大きくすると、溶融時の粘度が大きくなって成形性が低下するため、注意が必要である。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては、エアガイド9bを中央部に配置した円環13とこの円環13の外周から延設した鍔部14とで一体構成された円環状部材11bを、その周囲の導電性フィラーを添加したポニフェニレンサルファイド(PPS)を用いた樹脂部材12bに密着させた状態でインサート成形することで構成し、円環13の内周面に直線状の凸部40を有し、かつ鍔部14の底面には複数のピン15が形成され、複数のピン15がモータフレーム6に設けた複数の孔16に挿入され、鍔部14の底面とモータフレーム6前面とが当接した状態でモータフレーム6に固定することで、円環状部材11bと軸受保持部17との接触熱抵抗が小さくなり、かつ、モータフレーム6内の熱を複数のピン15が直接受熱することで、直接、軸受5に接触している軸受保持部17から円環状部材11bへの熱流量を大幅に増やすことができるとともに、エアガイド9bの樹脂部材12bの熱伝導性が向上して円環状部材11bからエアガイド9bの冷却部へ熱が伝わりやすくなり、エアガイド9bによる軸受5の冷却効果を大幅に向上することができる。これにより、インペラ8の高速回転時にも軸受5の信頼性が高く、小型で高効率の電動送風機1bを実現することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、エアガイド9bが、円環状部材11bとその周囲に密着させた樹脂部材12bとが一体となり構成された事例で説明したが、全て金属あるいは熱伝導性のある無機材料を用いて作製したエアガイド9bでもよく、樹脂に比べて大幅に熱伝導性を向上することはできるが、質量が樹脂に比べて重くなってしまい、また複雑な案内翼
19形状だと製造が困難であるため、コストがかさんでしまうという課題がある。
【0052】
なお、上述した各実施の形態1、2の構成は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜組み合わせて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる電動送風機は、軸受で発生した熱をエアガイドに有した熱伝導性の高い円環状部材を介してエアガイドの冷却部へ効率よく伝熱させて、インペラからの気流で放熱することで、ブラシレスモータを効率よく冷却しながら小型で高い送風性能を有するので、家庭用は勿論のこと、業務用の電気掃除機に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1a、1b 電動送風機
2 回転軸
3 ロータ
4 ステータ
5 軸受
6 モータフレーム
7 ブラシレスモータ
8 インペラ
9a、9b エアガイド
10 ファンケース
11a、11b 円環状部材
12a、12b 樹脂部材
17 軸受保持部
19 案内翼
20 独立風路
29 電気掃除機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するロータと前記ロータ外周に対向配置されたステータと前記回転軸の軸受を保持し前記ステータを覆うモータフレームとで構成されるブラシレスモータと、前記回転軸に固定されたインペラと、前記インペラの外周に通風路を形成するエアガイドと、前記インペラを覆い前記エアガイド前面に固定されたファンケースとを備え、前記エアガイドは中央部に配置した金属あるいは熱伝導性のある無機材料を用いた円環状部材と前記円環状部材の周囲に密着させた樹脂部材とが一体となり構成され、前記エアガイドは、前記円環状部材が前記モータフレーム前面に突出した軸受保持部に嵌合された状態で前記モータフレームに固定されるとともに、前記円環状部材は、円環とこの円環の外周から延設した鍔部とで一体構成され、前記鍔部の底面には複数のピンが形成され、前記複数のピンが前記モータフレームに設けた複数の孔に挿入された状態で、前記鍔部の底面とモータフレーム前面とが当接される構成とした電動送風機。
【請求項2】
エアガイドは、樹脂部材の底面と円環状部材の端面とが略同一面となるよう構成した請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
円環状部材は、内周面に複数の溝を有し、軸受保持部の外周面に設けた複数の溝と互いに嵌め合う構成とした請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
エアガイドの樹脂部材は、熱伝導性フィラーを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を搭載した電気掃除機。

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−24133(P2013−24133A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159652(P2011−159652)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】