説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減することにある。
【解決手段】通信のセキュリティ性が通常通信ほどに要求されないとき、車載装置20及び電子キー10間の通信が簡略化される。具体的には、第1の簡略通信においては、チャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数が低減され、第2の簡略通信においては、チャレンジ信号及びレスポンス信号が省略される。このような通信の簡略化によって、車載装置20及び電子キー10の消費電力が低減される。また、車両のセキュリティ性が確保されていないと想定されるときには、通信は簡略化されないため、全体としてセキュリティ性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーシステムにおいては、車載装置及び電子キー間の無線通信を通じて、車両ドアの施解錠やエンジン始動が可能となる(例えば、特許文献1参照)。具体的には、車載装置はその車内外に電子キーからの応答を要求するウェイク信号を送信する。電子キーは、ウェイク信号を受信すると、アック信号を送信する。車載装置は、アック信号を受信すると、チャレンジコードを含むチャレンジ信号を送信するとともに、そのチャレンジコードを暗号化することによりレスポンスコードを生成する。
【0003】
電子キーは、チャレンジ信号を受信すると、そのチャレンジ信号に含まれるチャレンジコードを暗号化することによりレスポンスコードを生成する。そして、電子キーは、そのレスポンスコードと、自身の持つIDコードとを含むレスポンス信号を送信する。車載装置は、受信したレスポンス信号のIDコードと、自身に予め記憶されるIDコードとの照合を行うとともに、同信号のレスポンスコードと、自身が生成したレスポンスコードとの照合を行う。車載装置は、ID照合及びレスポンス照合が成立した旨判断したとき、車両ドアの施解錠やエンジンの始動を許可する。このように、車載装置及び電子キー間で暗号通信を行うことで、通信のセキュリティ性を高めることができる。
【0004】
また、電子キーシステムにおいて、エンジン始動後においても電子キーが車内から車外に持ち出されたか否かを、上記信号の授受を通じて認識する、いわゆる持ち出し検知が行われている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、エンジン始動後においても所定の周期毎に車載装置及び電子キー間でセキュリティ性の高い通信が実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−029385号公報
【特許文献2】特開2008−106579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、持ち出し検知に係る通信においては、エンジン始動時に係る通信において要求されるほどのセキュリティ性は要求されない。しかし、上記電子キーシステムにおいては、持ち出し検知においても、エンジン始動時と同様に、車載装置及び電子キー間でセキュリティ性の高い暗号通信が実行されている。この持ち出し検知及びエンジン始動に係る通信に限らず、従来、車両の状況に応じたセキュリティレベルでの通信は行われていなかった。このため、必要以上にセキュリティ性が高い通信が行われている場合もあった。従って、通信に係る処理負担、ひいてはその処理に要する消費電力を低減することが困難であった。特に、電子キーにおいては、ボタン型電池が電力源として利用されている。このため、その電力量に限りがあるところ、いっそうの消費電力の低減が求められている。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減した電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、チャレンジコードを送信するとともに、そのチャレンジコードを暗号鍵を通じて暗号化することでレスポンスコードを生成する車載装置と、自身に固有のIDコードと、受信した前記チャレンジコードを暗号鍵を通じて暗号化することで生成するレスポンスコードとを無線送信する電子キーと、を備え、前記車載装置は、前記電子キーとの間で前記IDコード、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコードの送受信を通じた通常通信を行った際、自身に記憶されるIDコードと受信したIDコードとの照合、及び自身で生成したレスポンスコードと、受信したレスポンスコードとの照合が成立した旨判断したとき、車両ドアの施解錠状態の切り替え又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、車両の状態を通じて、前記電子キーとの間の通信に要求されるセキュリティ性が前記通常通信ほど要求されない旨判断したとき、前記通常通信よりも暗号強度を低減させた簡略通信を行うことをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、通常通信ほどには通信のセキュリティ性が要求されないとき、車載装置及び電子キー間の通信が簡略化される。通信の簡略化とは、例えばチャレンジコード及びレスポンスコード、若しくは暗号鍵の長さが低減されること、又はチャレンジコード及びレスポンスコードが省略されることをいう。通信の簡略化によって、車載装置及び電子キー間の通信に係る消費電力が低減される。また、通常通信ほどには通信のセキュリティ性が要求されないときにのみ通信が簡略化されるため、システム全体としてセキュリティ性が低下することが抑制される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、エンジン始動にあたっては前記通常通信を行うとともに、エンジン始動後において前記電子キーが車外に持ち出されたか否かを判断する際には前記簡略通信を行うことをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、高いセキュリティ性が要求されるエンジンの始動にあたっては通信を簡略化することなく、通常通信が行われる。また、電子キーが車外に持ち出されたか否かを判断する、いわゆる持ち出し検知においては、エンジン始動ほどのセキュリティ性が要求されないため簡略通信が行われる。これにより、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記簡略通信として第1の簡略通信及び第2の簡略通信を設け、前記第1の簡略通信は、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコード、若しくは前記暗号鍵の長さを低減することにより暗号強度を低減した通信であって、前記第2の簡略通信は、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコードを省略することにより暗号強度を低減した通信であって、前記車載装置は、前記車両の状態として、エンジン停止状態において車両ドアが開閉した旨認識したとき前記通常通信を行い、当該通常通信の後であって、かつエンジン始動前には前記第1の簡略通信を行い、エンジン始動後において前記電子キーが車外に持ち出されたか否かを判断する際には前記第2の簡略通信を行うことをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、例えばユーザの乗車に伴い車両ドアが開閉した後の最初の通信においては、簡略化されていない通常通信が行われる。その後、エンジン始動前までの2回目以降の通信においてはチャレンジコード及びレスポンスコード、若しくは暗号鍵の長さを低減した第1の簡略通信が行われる。また、エンジン始動後の電子キーの持ち出し検知においては、チャレンジコード及びレスポンスコードが省略された第2の簡略通信が行われる。この第2の簡略通信においては、第1の簡略通信よりもさらに通信が簡略化されている。このように段階的に通信の簡略化を行うことで、より車両の状況に適した通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】車両の上面図。
【図3】車両ドアの施解錠時、及び初回の車室内照合に係る車載装置及び電子キー間で送受信される信号のタイミングチャート。
【図4】エンジン始動前かつ2回目以降の車室内照合に係る車載装置及び電子キー間で送受信される信号のタイミングチャート。
【図5】持ち出し検知における車載装置及び電子キー間で送受信される信号のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した電子キーシステムについて図1〜図5を参照して説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、ユーザによって所持される電子キー10と、車両2に設けられる車載装置20とを備えている。以下、電子キー10及び車載装置20の具体的構成について説明する。
【0017】
<電子キー>
電子キー10は、電子キー制御部11と、LF受信部12と、UHF送信部13とを備える。
【0018】
電子キー制御部11は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ11aを備える。このメモリ11aには電子キー10に固有のキーIDコードと、車両に固有のビークルIDコードと、レスポンスコードの生成に係る暗号鍵とが記憶されている。
【0019】
図3に示すように、LF受信部12は、その受信アンテナ12aを通じて車載装置20からのLF(Low Frequency)帯のウェイク信号を受信する。そして、LF受信部12は、ウェイク信号をパルス信号に復調したうえで電子キー制御部11へ出力する。
【0020】
電子キー制御部11は、ウェイク信号を認識すると、アック信号を生成し、それをUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、アック信号を変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介してUHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号として送信する。
【0021】
LF受信部12は、受信アンテナ12aを介してビークルID信号を受信すると、同ビークルID信号をパルス信号に復調し、それを電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、ビークルID信号を認識すると、その信号に含まれるビークルIDコードと、メモリ11aに記憶されるビークルIDコードとの照合を行う(ビークルID照合)。電子キー制御部11は、ビークルIDコードの照合が成立した旨判断したとき、メモリ11aに記憶されるキーIDコードを含むキーID信号を生成し、その生成したキーID信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、キーID信号を変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。
【0022】
LF受信部12は、受信アンテナ12aを介してチャレンジ信号を受信すると、同チャレンジ信号をパルス信号に復調し、それを電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、チャレンジ信号を認識すると、チャレンジ信号に含まれるチャレンジコードをメモリ11aに記憶される暗号鍵を利用して暗号化することによりレスポンスコードを生成する。そして、電子キー制御部11は、レスポンスコードを含むレスポンス信号を生成し、その生成したレスポンス信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、レスポンス信号を変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。上記の場合におけるレスポンス信号及びチャレンジ信号は128bitのデータからなる。
【0023】
また、図4に示すように、車載装置20から64bitのチャレンジ信号が送信されることがある。電子キー制御部11は64bitのチャレンジ信号を受信すると、そのチャレンジ信号から上記同様にレスポンスコードを生成し、その生成したレスポンスコードを含む64bitのレスポンス信号を無線送信する。
【0024】
<車載装置>
図1に示すように、車載装置20は、車載制御部21と、車外送信部22と、車内送信部23と、車載受信部24とを備えている。また、車載制御部21には、ロックスイッチ36と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、カーテシスイッチ37とが電気的に接続されている。
【0025】
図2の円中に拡大して示すように、車外送信部22は、車両ドアのアウトサイドドアハンドル4に内蔵されている。また、ロックスイッチ36はアウトサイドドアハンドル4の外面に設けられるとともに、ユーザに押し操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0026】
車内送信部23及び車載受信部24は車室内の略中央に設けられている。さらに、エンジンスイッチ33は運転席近傍に設けられるとともに、ユーザによって押し操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。また、ドアロック装置34は、車両ドアが閉じた状態において車両ドアを自動的に施解錠する。また、カーテシスイッチ37は車両ドアの開閉を検出し、その検出結果を車載制御部21に出力する。
【0027】
車載制御部21は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ21aを備える。このメモリ21aには、電子キー10に固有のキーIDコードと、車両に固有のビークルIDコードと、レスポンスコードの生成に係る暗号鍵とが記憶されている。
【0028】
車載制御部21は、ロックスイッチ36が操作された旨認識すると、ウェイク信号を生成し、その生成したウェイク信号を車外送信部22に出力する。車外送信部22は、ウェイク信号を変調し、その変調したウェイク信号を自身の送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。
【0029】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したアック信号をパルス信号に復調し、その復調した信号を車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、アック信号を認識すると、メモリ21aに記憶されるビークルIDコードを含むビークルID信号を生成し、その生成したビークルID信号を車外送信部22に出力する。車外送信部22は、ビークルID信号を変調し、その変調したビークルID信号を自身の送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。
【0030】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したキーID信号をパルス信号に復調し、その復調した信号を車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、キーID信号を認識すると、このキーID信号に含まれるキーIDコードと、メモリ21aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う(キーID照合)。車載制御部21は、キーIDコードの照合が成立した旨判断したとき、チャレンジコードを含むチャレンジ信号を生成し、それを車外送信部22に出力する。このとき、車載制御部21は、メモリ21aに記憶される暗号鍵を利用してチャレンジコードを暗号化することによりレスポンスコードを生成する。この暗号化に利用される暗号鍵は電子キー10及び車載装置20で共通のものが使用される。すなわち、暗号方式として共通鍵方式が採用されている。車外送信部22は、チャレンジ信号を変調し、その変調したチャレンジ信号を自身の送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。
【0031】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して受信したレスポンス信号をパルス信号に復調し、その復調した信号を車載制御部21へ出力する。車載制御部21は、レスポンス信号に含まれるレスポンスコードと、自身が生成したレスポンスコードとの照合を行う(レスポンス照合)。車載制御部21は、レスポンスコードの照合が成立した旨判断すると、ドアロック装置34を通じて車両ドアの施解錠状態を切り替える。この128bitのチャレンジ信号及びレスポンス信号の送受信を含む通信を通常通信と呼ぶ。
【0032】
車載制御部21は、車両ドアの解錠後にカーテシスイッチ37を通じて車両ドアが開閉した旨認識したとき、車内送信部23及び送信アンテナ23aを通じて車内にウェイク信号を送信する。以下、車載制御部21は電子キー10との間で上記同様に通常通信を行う。車載制御部21は、レスポンスコードの照合が成立した旨判断すると、車室内照合成立状態となる。車載制御部21は、車室内照合成立状態において、エンジンスイッチ33が操作された旨認識すると、エンジンを始動する。
【0033】
上記車室内照合成立状態においては有効時間が存在する。すなわち、車載制御部21は、車室内照合成立状態となったときから、有効時間が経過した旨判断したとき、車室内照合が成立するか否かを再び判断する。この2回目以降の車室内照合においては、車載装置20及び電子キー10間の通信は簡略化された第1の簡略通信が行われる。また、車載制御部21は、有効時間の経過前であっても、他の車両ドアが開閉した旨認識したとき第1の簡略通信を行う。1回目の車室内照合が成立していることから、2回目以降においては通信を簡略化してもシステム全体としてのセキュリティ性は確保される。
【0034】
図4に示すように、第1の簡略通信においては、車載制御部21は、受信したキーID信号に基づき、キーIDコードの照合が成立した旨判断したとき、64bitのチャレンジ信号を送信する。この64bitのチャレンジ信号は、128bitのチャレンジ信号の前半と同様の内容である。
【0035】
また、車載制御部21は、64bitのレスポンス信号を認識すると、同レスポンス信号についてレスポンスコードの照合を行い、この照合が成立した旨判断したとき、車室内照合成立状態となる。この64bitのレスポンス信号は、128bitのレスポンス信号の前半と同様の内容である。
【0036】
さらに、上記背景技術においても説明したように、エンジン始動後には、車載装置20及び電子キー10間の無線通信を通じて電子キー10の持ち出し検知が行われる。この持ち出し検知は、例えば、エンジン始動後の車両ドアが開閉したときに実行される。図5に示すように、持ち出し検知においては、車載装置20及び電子キー10間でチャレンジ信号及びレスポンス信号の送受信を省略した第2の簡略通信が行われる。持ち出し検知においては、エンジン始動時と異なって高いセキュリティ性は要求されないため、通信を簡略化してもシステム全体としてのセキュリティ性は確保される。
【0037】
図5に示すように、第2の簡略通信においては、車載制御部21は、キーID信号を受信し、その信号のキーIDコードの照合が成立した旨判断したとき、車室内に電子キー10が存在している旨判断する。第2の簡略通信においては、車載装置20及び電子キー10において暗号鍵を利用した暗号化処理を行う必要がないことから、車載装置20及び電子キー10の消費電力を低減することができる。特に、電子キー10においては、ボタン型電池(図示略)が電力源として利用されている。このため、その電力量に限りがあるところ、電子キー10における消費電力の低減は特に有益である。
【0038】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)通信のセキュリティ性が通常通信ほどには要求されないとき、車載装置20及び電子キー10間の通信が簡略化される。具体的には、第1の簡略通信においては、チャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数が低減され、第2の簡略通信においては、チャレンジ信号及びレスポンス信号が省略される。このような通信の簡略化によって、車載装置20及び電子キー10の消費電力が低減される。また、車両のセキュリティ性が確保されていないと想定されるときには通信は簡略化されないため、システム全体としてのセキュリティ性を確保することができる。
【0039】
(2)高いセキュリティ性が要求されるエンジンの始動にあたっては通信を簡略化することなく、128bitのチャレンジ信号及びレスポンス信号の送受信を含む通常通信が行われる。また、電子キー10が車外に持ち出されたか否かを判断する持ち出し検知においては、エンジン始動ほどのセキュリティ性が要求されないため、第2の簡略通信が行われる。これにより、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減することができる。
【0040】
(3)ユーザの乗車に伴い車両ドアが開閉したときの最初の通信においては、簡略化されていない通常通信が行われる。その後、エンジン始動前までの2回目以降の通信においてはチャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数が低減された第1の簡略通信が行われる。また、エンジン始動後の電子キー10の持ち出し検知においては、チャレンジ信号及びレスポンス信号が省略された第2の簡略通信が行われる。このように段階的に通信の簡略化を行うことで、より車両の状況に適した通信を行うことができる。
【0041】
(4)第1及び第2の簡略通信においては、通常通信に比べて暗号処理に係る負担が小さいため、より迅速に通信を行うことができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0042】
・上記実施形態において、キーIDコードをレスポンス信号に含ませてもよい。この場合、電子キー10は、ビークルID信号を受信すると、キーID信号に代えてアック信号を送信する。
【0043】
・上記実施形態においては、2回目以降の車室内照合においては、64bitのチャレンジ信号及びレスポンス信号が送受信されていた。しかし、2回目以降の車室内照合において、チャレンジ信号及びレスポンス信号を128bitに維持しつつ、bit数の少ない暗号鍵を利用してもよい。この場合であっても、暗号化に係る処理、ひいては消費電力を低減することができる。また、チャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数、及び暗号鍵のbit数の両方を減らしてもよい。
【0044】
・さらに、チャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数は、64bit又は128bitに限らず、例えば、32bit又は256bit等であってもよい。
・上記実施形態においては、2回目以降の車室内照合においてもチャレンジ信号及びレスポンス信号が送受信されていた。しかし、2回目以降の車室内照合においても、持ち出し検知時の通信と同様に、チャレンジ信号及びレスポンス信号の送受信を省略した第2の簡略通信を行ってもよい。また、逆に、持ち出し検知時に第1の簡略通信を行ってもよい。
【0045】
・上記実施形態においては、ロックスイッチ36が操作されたときにウェイク信号が車外に送信されていた。しかし、エンジン停止状態であって施錠状態にある場合、一定周期毎にウェイク信号が車外に送信される構成であってもよい。この場合、車載制御部21は、キーID照合及びレスポンス照合が成立した旨判断した場合には、車室外照合成立状態となる。車載制御部21は、車室外照合成立状態において、ロックスイッチ36が操作された旨認識すると、車両ドアの施解錠状態を切り替える。本構成においても、2回目以降の車室外照合においては、第1又は第2の簡略通信を行ってもよい。
【0046】
・上記実施形態においては、エンジン始動に係る通信と、持ち出し検知に係る通信との間で、通信内容を変えることでセキュリティレベルを変化させていた。しかし、例えば車両ドアの施錠に係る通信と、車両ドアの解錠に係る通信との間でセキュリティレベルを変化させてもよい。例えば、より高度なセキュリティ性が要求される車両ドアの解錠に係る通信においては通常通信を行う。そして、車両ドアの施錠に係る通信においては、第1又は第2の簡略通信が行われる。
【0047】
また、車両ドアの施解錠に係る通信においては第2の簡略通信を行って、エンジン始動に係る通信においては通常通信を行ってもよい。また、128bit→64bit→32bitのように、通信毎にチャレンジ信号及びレスポンス信号のbit数を減らしてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、車載制御部21は、持ち出し検知時に、キーIDコードの照合が不成立である旨判断した場合、正規の電子キー10が存在するか疑わしいとして、通常通信を再度行ってもよい。
【0049】
・上記実施形態においては、持ち出し検知は、エンジン始動後であって車両ドアが開閉したときに実行されていた。しかし、持ち出し検知は、その他、車速、シフト状態、窓開閉状態、イグニッション状態、ステアリングロックの解除状態、エンジン始動状態及びイモビライザの状態に基づき実行してもよい。
【0050】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載装置は車両ドアの解錠にあたっては前記通常通信を行うとともに、車両ドアの施錠にあたっては前記簡略通信を行う電子キーシステム。
【0051】
同構成によれば、高いセキュリティ性が要求される車両ドアの解錠にあたっては通信を簡略化することなく通常通信が行われる。また、車両ドアの施錠にあたっては、車両ドアの解錠ほどのセキュリティ性が要求されないため簡略通信が行われる。これにより、セキュリティ性を確保しつつ通信に係る消費電力を低減することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、20…車載装置、21…車載制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャレンジコードを送信するとともに、そのチャレンジコードを暗号鍵を通じて暗号化することでレスポンスコードを生成する車載装置と、
自身に固有のIDコードと、受信した前記チャレンジコードを暗号鍵を通じて暗号化することで生成するレスポンスコードとを無線送信する電子キーと、を備え、
前記車載装置は、前記電子キーとの間で前記IDコード、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコードの送受信を通じた通常通信を行った際、自身に記憶されるIDコードと受信したIDコードとの照合、及び自身で生成したレスポンスコードと、受信したレスポンスコードとの照合が成立した旨判断したとき、車両ドアの施解錠状態の切り替え又はエンジンの始動を許可する電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、車両の状態を通じて、前記電子キーとの間の通信に要求されるセキュリティ性が前記通常通信ほど要求されない旨判断したとき、前記通常通信よりも暗号強度を低減させた簡略通信を行う電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、エンジン始動にあたっては前記通常通信を行うとともに、エンジン始動後において前記電子キーが車外に持ち出されたか否かを判断する際には前記簡略通信を行う電子キーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記簡略通信として第1の簡略通信及び第2の簡略通信を設け、前記第1の簡略通信は、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコード、若しくは前記暗号鍵の長さを低減することにより暗号強度を低減した通信であって、前記第2の簡略通信は、前記チャレンジコード及び前記レスポンスコードを省略することにより暗号強度を低減した通信であって、
前記車載装置は、前記車両の状態として、エンジン停止状態において車両ドアが開閉した旨認識したとき前記通常通信を行い、当該通常通信の後であって、かつエンジン始動前には前記第1の簡略通信を行い、エンジン始動後において前記電子キーが車外に持ち出されたか否かを判断する際には前記第2の簡略通信を行う電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60718(P2013−60718A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198568(P2011−198568)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】