説明

電子コピー目的のためのトナー樹脂

本発明は、数平均分子量約500〜10000g/mol、ガラス転移点30〜80℃及びヒドロキシル基価30mg KOH/g未満のポリカーボネートに、並びに電子コピー目的のためのトナー又は顕色剤の製造のための成分として使用されるウレタン改質樹脂中への該ポリカーボネートの使用に関する。本発明は、請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリカーボネート並びにガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価20〜100mg KOH/gの重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と多官能価イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン改質樹脂であって、その際ポリカーボネートと重縮合樹脂との比が、20:80〜80:20(質量)であり、かつポリマー混合物中のポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比が、0.4〜1.2:1であるウレタン改質樹脂、並びに、該ウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂を含有する電子コピー目的のためのトナー及び該トナーと場合によりキャリヤーとを含有する顕色剤にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、ウレタン改質樹脂のための成分として使用されるポリカーボネート、電子コピー目的のためのトナー又は顕色剤における使用のためのウレタン改質樹脂、該ウレタン改質樹脂を含有するトナー及び顕色剤に関する。本発明は、ウレタン改質樹脂、該樹脂を含有するトナー及び顕色剤の製造方法にも関する。
【0002】
超低温固定特性を有する電子コピー目的のためのトナー樹脂は、コピー機の最新型のスピードを増加させることを考慮に要求される。現在のトナー樹脂は、省エネルギーを促進するための低い実施温度で操作することも可能である。従って、トナーのガラス転移点が下がり、その結果トナーが、低い温度で定着可能である(低温定着性)ことが必要である。これらの効果を達成するために、ポリエステル樹脂を含有するトナー樹脂は、一般に、特許文献において、例えばUS−A−2009092917において記載されている。ジイソシアネートが高分子量のポリエステル樹脂と低分子量のポリエステル樹脂との混合物と反応している、ウレタン改質ポリエステル樹脂は、日本の未審査の特開平4−211272又は日本の未審査の特開平11−305481において示唆されている。
【0003】
しかしながら、ポリエステル樹脂を使用しているトナーは、優れた低い温度提供するが、貯蔵特性は不十分であるという欠点を有する。特に、トナーの貯蔵特性は、コピー機の操作中だけでなく、例えば輸送コンテナが直接日光にさらされる場合に、トナーが高温に曝されうる間の輸送中に、生じた熱に関して必須である。
【0004】
本発明の目的は、優れた低温定着性を提供する一方で、同時に貯蔵中の安定性を改良するために提供することに関して、ポリエステル樹脂を基礎とする通常のトナーの弱点を改良することであった。本発明の目的は、数平均分子量500〜10000g/mol、ガラス転移点30〜80℃及びヒドロキシル基価30mg KOH/g未満のポリカーボネートで、並びに該ポリカーボネート及びガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価29〜100mg KOH/gの重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と多官能価イソシアネート混合物との反応によって得られるウレタン改質樹脂中で、該ポリカーボネートを使用することで解決され、その際、ポリカーボネートと重縮合樹脂との比は、20:80〜80:20質量%であり、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基とポリマー混合物中のヒドロキシル基との比は、0.4〜1.2:1である。
【0005】
本発明による樹脂を基礎とするウレタン改質したポリカーボネートを使用する電子コピー目的のトナー又は顕色剤は、その低温定着性及びその貯蔵特性の点で優れている。
【0006】
本発明において使用されるポリカーボネートは、少なくとも1つのタイプの多価アルコール、カーボネート化合物及びエンドブロッキング剤を含む重縮合反応によって製造されうる。かかる反応において、ポリカーボネートは、一般に、低分子量の副産生成物、例えばアルコール又はHClの除去下で、前記化合物の反応によって形成される。かかる反応はよく知られており、例えばUS 3,689,461において記載されている。
【0007】
ポリカーボネートの製造において使用されるカーボネート化合物は、一般に、低分子量化合物、例えばホスゲン、クロロホルメート、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート又はジアリールカーボネートである。アルキレンカーボネートの例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート及び2,4−ペンチレンカーボネート等を含む。ジアルキルカーボネートの例は、対称ジアルキルカーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジ−イソ−プロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジ−イソ−ブチルカーボネート等、及び非対称ジアルキルカーボネート、例えばメチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート等を含む。アリールカーボネートの例は、対称ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等、及び非対称ジアリールカーボネート、例えばフェニルナフチルカーボネート等を含む。前記カーボネート化合物は、単独で又は異なるカーボネート化合物の混合物で使用されてよい。好ましいカーボネート化合物は、アルキレンカーボネート、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、特にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネート、並びにアリールカーボネート、特にジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート及びフェニルナフチルカーボネートである。特に好ましいカーボネート化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートである。
【0008】
ポリカーボネートの製造において使用される多価アルコールは、一般に、数平均分子量50〜100g/molを有する多価アルコールである。多価アルコールは、1分子当たり2以上のヒドロキシル基を有してよい。有利には、二価又は三価アルコールが本発明において使用される。二価アルコールの例は、グリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト、ビスフェノールA酸化プロピレンアダクト等である。三価及びより高い多価アルコールの例は、グリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、エリトリトール、マンニトール、ソルビトール等である。
【0009】
好ましい二価アルコールは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1−3,プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトである。特に好ましい二価アルコールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトである。
【0010】
好ましい三価及び多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン及びトリメチロールプロパンである。
【0011】
さらに、エンドブロッキング剤は、ポリカーボネートの製造のために使用される。エンドブロッキング剤は、分子量を調整する機能を有し、可能な限り本発明のポリカーボネートが使用されるべきウレタン化反応を抑制する必要がある。従って、低分子量カーボネート化合物との反応及び新たなカーボネート基の形成の機能を有し、かつ反応後に常温〜約150℃までの温度でイソシアネート化合物と反応しない、あらゆる公知の化合物が、エンドブロッキング剤として使用されうる。有利には、約120℃より高い沸点を有する一価の脂肪族アルコール、一価の脂環式アルコール及び一価の芳香族アルコールが、エンドブロッキング剤として使用されうる。エンドブロッキング剤に関する好ましい例は、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール、メタクリロール及び3,5−キシレノール及びp−t−ブチルフェノールを含む。該エンドブロッキング剤は、他の原料と共に、反応過程中に又は反応の終点で導入されうる。エンドブロッキング剤の一部が重縮合の過程中に反応混合物から蒸留されてよいために、反応中にさらにエンドブロッキング剤を添加すること、又は反応の開始点でエンドブロッキング剤の過剰量を添加することが必要であってよい。反応中に添加されるエンドブロッキング剤の合計量は、ヒドロキシル価30mg KOH/g未満、有利には10mg KOH/g未満を有するポリカーボネートを生じる。
【0012】
ポリカーボネートの製造のための重縮合反応は、無触媒又は触媒によって進行しうる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、チタンのカーボネート、カルボキシレート、ボレート、シリケート、カーボネート、酸化物及びオルガノ金属化合物、並びに有利には、オルガノチタン化合物、例えばテトラ−n−ブチルチタネート[Ti(C49O)4]、テトラプロピルチタネート[Ti(C37O)4]、テトラステアリルチタネート[Ti(C1837O)4]が、触媒として使用されてよい。使用される触媒の量は、出発原料の、有利には0.001〜1質量%、及び特に0.05〜0.2質量%である。
【0013】
重縮合は、通常、部分真空まで、有利には1mbar〜1bar及びより有利には10mbar〜500mbarの大気圧で導入される。その反応温度は、通常、70〜250℃、及び有利には80〜220℃である。重縮合反応は、通常、蒸留塔を備えた撹拌タンク形反応器中で導入される。
【0014】
ポリカーボネートの製造のための好ましい一実施態様は、原料、すなわちカーボネート化合物、多価アルコール、エンドブロッキング剤及び触媒を、反応器中にワンショットで導入し、徐々に窒素雰囲気下で100〜180℃まで温度を上昇し、かつおそらく、通常、蒸留によって反応混合物から除去される、(低分子量の)化合物を含有するヒドロキシル基の除去での反応をもたらすことを含む。反応の後半は、有利には、1mbar〜150mbarの減圧下で、及び200〜250℃の反応温度下で実施される。
【0015】
本発明によるポリカーボネートは、ヒドロキシル価30mg KOH/g未満、有利には10mg KOH/g未満を有する。有利には、前記ヒドロキシル基価は、1〜30mg KOH/gの範囲、より有利には1〜10mg KOH/gの範囲内である。ポリカーボネートがヒドロキシル基価30mg KOH/g未満、有利には10mg KOH/g未満を有する場合に、ポリカーボネートとポリイソシアネートとの反応、続くウレタン化反応によって生じる分子量増加が制限され、その結果、ポリカーボネートは、その低分子量を維持したままであり、かつ従って、低温定着性の改良をもたらすと考えられる。さらに、ポリカーボネートとポリイソシアネートとの反応によって生じた分子量増加が多すぎる場合に、低温定着性は不良になることが考えられる。さらに、ヒドロキシル基価が30mg KOH/g未満、有利には10mg KOH/g未満である場合に、ポリカーボネートの吸湿性が、ポリカーボネート中に存在する比較的少数のヒドロキシル末端基によって低減されるために、その貯蔵特性が改良されることが考えられる。
【0016】
本発明のポリカーボネートは、30〜80℃、有利には40〜70℃の範囲内のガラス転移点を有する。ポリカーボネートのガラス転移点は、加熱速度10℃/分で示差走査熱分析(DSC)で測定される。ガラス転移点を測定する前に、ポリカーボネートは、通常、最初の操作においてガラス転移点を超えてよく加熱され、そして10℃/分の同様の速度でガラス転移点未満に冷却される。本発明のポリカーボネートの数平均分子量は、500〜10000g/mol、有利には800〜5000g/molの範囲である。
【0017】
上記で特定したヒドロキシル基数、ガラス転移及び分子量を有するポリカーボネートは、優れた低温定着性を有し、かつ電子コピー目的のためのトナー中での高い貯蔵安定性を呈する。
【0018】
本発明によるポリカーボネートは、トナー及び/又は顕色剤の製造のための成分として使用されるウレタン改質樹脂の製造のために使用される。
【0019】
ウレタン改質樹脂は、本発明によるポリカーボネート並びにガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価20〜100mg KOH/gの重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と、多官能価イソシアネート混合物との反応によって得られる。
【0020】
ウレタン改質樹脂の製造のために使用されるポリマー混合物は、本発明によるポリカーボネート、及び重縮合樹脂を含有する。
【0021】
重縮合樹脂は、公知のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル/ポリアミド共縮合樹脂、ポリエステル/ポリカーボネート共縮合樹脂等であってよい。重縮合樹脂は、1つ以上の前記樹脂の混合物であってもよい。重縮合樹脂は、有利には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、又はポリエステル/ポリカーボネート共縮合樹脂である。
【0022】
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート化合物、多価化合物、及び場合により前記のエンドブロッキング剤を使用する方法によって得られる。好ましいカーボネート化合物は、アルキレンカーボネート、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、特にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネート、並びにアリールカーボネート、特にジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート及びフェニルナフチルカーボネートである。特に好ましいカーボネート化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートである。好ましい多価化合物は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びトリメチロールプロパンである。特に好ましい多価アルコールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトである。
【0023】
ポリエステル樹脂は、多価アルコールとポリカルボン酸との通常の重縮合によって得られる。多価アルコールは、ポリカーボネートの製造に関する前記と同様であってよい。
【0024】
ポリカルボン酸は、有利には、二塩基酸、特に脂肪族二塩基酸、例えばマロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物等、脂肪族不飽和二塩基酸、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等、及び芳香族二塩基酸、例えば無水フタル酸、フタル酸、テトラフタル酸、イソフタル酸等である。二塩基酸の用語は、前記酸の低級アルキルエステル、特に前記カルボン酸のメチル、エチル、プロピル及びブチルエステルも含んでよい。ポリカルボン酸は、3つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸、例えばトリメリト酸であってもよい。ポリエステル樹脂の製造のための好ましい多価化合物は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン及びトリメチロールプロパンである。ポリエステル樹脂の製造のための特に好ましい多価化合物は、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトである。好ましいカルボン酸は、シュウ酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、フタル酸、テレフタル酸及びイソフタル酸である。シュウ酸、コハク酸、グルタミン酸及びアジピン酸が特に好ましい。さらに、触媒、例えばスズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒等が適宜使用されうる。ポリエステル樹脂は、一般に、1mbar〜1bar、有利には10mbar〜500mbarの圧力で、150〜300℃、有利には200〜250℃の温度で製造される。ポリエステルの酸数は、通常、0.1〜50mg KOH/gの範囲、有利には1〜40mg KOH/gの範囲、及びより有利には10〜20mg KOH/gの範囲である。
【0025】
さらに、ポリエステル/ポリカーボネート共縮合は、ポリカーボネートジオールが、ポリカルボン酸を使用してエステル化反応を受ける、多価アルコール及び低分子量カーボネート化合物から製造される方法で得られる。代わりに、ポリエステルジオールは、多価アルコール及びポリカルボン酸から製造され、そして低分子量カーボネート化合物と反応する。好ましいポリカーボネート化合物は、アルキレンカーボネート、特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、特にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネート、並びにアリールカーボネート、特にジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート及びフェニルナフチルカーボネートであり、特に好ましいポリカーボネート化合物は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートである。
【0026】
好ましい多価アルコールは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトであり、かつ好ましいポリカルボン酸は、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水フタル酸、フタル酸、テトラフタル酸及びイソフタル酸である。特に好ましい多価アルコールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトである。ポリカーボネート/ポリエステル共縮合の酸数は、通常、0.1〜50mg KOH/gの範囲、有利には1〜40mg KOH/gの範囲、及びより有利には10〜20mg KOH/gの範囲である。
【0027】
重縮合樹脂のガラス転移点は、10〜60℃、有利には20〜50℃の範囲である。重縮合樹脂のガラス転移点は、加熱速度10℃/分で示差走査熱分析(DSC)で測定される。ガラス転移点を測定する前に、重縮合樹脂は、通常、最初の操作においてガラス転移点を超えて加熱され、そして同様の速度でガラス転移点未満に冷却される。
【0028】
重縮合樹脂のヒドロキシル基価は、20〜100mg KOH/g、有利には30〜90mg KOH/gの範囲である。
【0029】
ポリマー混合物中の本発明によるポリカーボネートと重縮合樹脂との比は、通常、20:80〜80:20(質量)、及び有利には30:70〜70:30(質量)の範囲である。
【0030】
ポリマー混合物は、多官能価イソシアネート化合物と反応して、ウレタン改質樹脂が得られる。
【0031】
ウレタン改質樹脂は、本発明によるポリカーボネート並びにガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価20〜100の重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と、多官能価イソシアネート混合物との反応によって得られる。
【0032】
多官能価イソシアネート化合物は、W.Siefkenによる、Annalen der Chemie、562、75〜136頁において記載されているタイプの脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族及び複素環式ポリイソシアネートを含んでよい。特定の例は、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−及び−1,4−ジイソシアネート及びそれらの異性体の混合物;1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート(IPDI));2,4−及び2,6−ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート及びそれらの異性体の混合物、ペルヒドロ−2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体の混合物(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、ホルムアルデヒドでのアニリンの縮合によって、続くホスゲン化によって得られるタイプのポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートを含む。一般に、特に、容易に利用できるポリイソシアネート、例えば2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体の混合物(TDI)、ホルムアルデヒドでのアニリンの縮合によって、続くホスゲン化によって得られるタイプのポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、"粗"MDI及び蒸留した又は"純粋な"MDIを使用することが好ましい。これら化合物の全ては、特許文献においてよく知られている。好ましい多官能価イソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート、特にテトラメチレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、特にイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;芳香族ポリイソシアネート、特にトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリマーMDI)、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネートを含む。
【0033】
ポリイソシアネート化合物と共に添加されたイソシアネート基とポリマー混合物中に存在するヒドロキシル基との合計数のモル比は、0.4〜1.2:1、有利には0.6〜1.1:1である。
【0034】
ポリイソシアネート化合物とポリマー混合物との反応は、イソシアネート基に不活性である溶剤の不在又は存在で実施されてよい。適した溶剤は、エステル、例えばエチルアセテート又はブチルアセテート;ケトン、例えばアセトン又はブタノン;芳香族化合物、例えばトルエン又はキシレン;ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン及びテトラクロロエチレン;エーテル、例えばジイソプロピルエーテル;並びにアルカン、例えばシクロヘキサン、石油エーテル又はリグロインを含む。有利には、前記反応は、追加の溶剤の添加なしに、溶融物中で導入される。
【0035】
前記反応を、ポリマー混合物中に、一定の速度で、100〜180℃の温度で、分散及び混合しながら、多官能価イソシアネートを導入することによって実施してよい。有利には、ポリマー混合物への多官能価イソシアネートの添加は、押出機中で、特に二軸スクリュー押出機中で実施される。さらに、公知の触媒、例えばオクタン酸スズ、オレイン酸スズ、ジブチルスズジラウレート等を、ウレタン化反応を触媒化するために使用してよい。
【0036】
本発明によるウレタン改質樹脂は、電子コピー目的のためのトナーの製造のための成分として使用されてよい。
【0037】
前記トナーは、典型的に、ウレタン改質樹脂と、1つ以上の成分、例えば着色剤、蝋、蝋分散剤、電荷調整剤、次期材料及びさらなるバインダー樹脂とを配合することによって得られる。
【0038】
着色は任意であるが、通常、着色剤が含まれ、Colour Index、Volumes I and II、Second Edition(参照をもって本願に開示されたものとする)において挙げられているあらゆる材料であってよい。有利には、着色剤はカーボンブラックである。トナーは、有利には、トナーの質量に対して、1〜15質量%、及びより有利には3〜10質量%の量で着色剤に含まれる。量が少なすぎる場合に、生じたトナーの着色力は劣化してよい。量が多すぎる場合に、着色剤は、生じたトナー中によく分散されず、生じたトナーの着色力及び電気的性質の劣化をもたらしてよい。
【0039】
本発明のウレタン改質樹脂に加えてトナー中に存在してよい追加のバインダー樹脂は、ビニルポリマー、例えばスチレンのホモポリマー及びコポリマーを含む。スチレンポリマーは、スチレン又はスチレン同族体の40〜100質量%、及び1つ以上の低級アルキルアクリレート又はメタクリレートの0〜40質量%を含有するものを含む。スチレンポリマーは、スチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−クロロスチレン、及びビニルトルエン;並びにアルキルアクリレートもしくはメタクリレート、又はアクリル酸、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルアクリル酸、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びオクチルメタクリレートから選択される二重結合を有するモノカルボン酸を含み、かつ有用なバインダーでもある。バインダーは、非ビニルタイプ樹脂、例えばフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、一般にビスフェノール由来のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA及びエピクロロヒドリン、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、並びにポリエーテル樹脂であってもよい。本発明によるウレタン改質樹脂と他のバインダー樹脂との比は、一般に、1:0〜1:10(質量)、有利には1:0〜2:1、特に1:0〜5:1の範囲である。
【0040】
トナー中に存在してよい他の成分は、ポリオレフィン蝋を含有してもよい。バインダー樹脂中に分散されるべきポリオレフィン蝋として、有利には、軟化点80℃〜160℃及び数平均分子量(Mn)約1000〜約10000を有する低分子量ポリエチレン又は低分子量ポリプロピレンを使用してよい。トナー中に存在する蝋の量は、通常、トナーの質量に対して、約0.1〜約10質量%、及びより有利には約1〜約6質量%である。トナーは、蝋分散剤、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)を含んでもよい。
【0041】
トナーのための他の任意の添加物は、電荷調整剤である。"電荷調整"という用語は、得られたトナーの摩擦電気の電荷特性を改質するトナー添加剤を言う。非常に広い種類の正及び負の電荷トナーのための電荷調整剤を利用できる。適した電荷調整剤は、例えば米国特許番号第3,893,935号;第4,079,014号;第4,323,634号;第4,394,430号、並びに英国特許番号第1,501,065号;及び第1,420,839号を開示している。電荷調整剤の混合物を使用してもよい。電荷調整剤の特定の例は、サリチル酸クロムオルガノ錯体塩、及びアゾ−イオン錯体塩、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルカリサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、金属含有ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、及びアルキルピリジニウム塩を含む。これらの化合物は、通常、粉末トナーを製造するために使用される。
【0042】
前記トナーは、有利には、バインダー(ウレタン改質樹脂及び他のバインダー樹脂)の0.1〜10質量%、及び有利には0.2〜5質量%の量で、電荷調整剤を含有する。量が少なすぎる場合に、生じたトナーの電荷は制御できない。量が多すぎる場合に、トナーは、電荷量が大きすぎ、従って、現像ローラ間の静電引力を増加させる。従って、生じたトナーの流動性及び生じた画像の密度は劣化しうる。
【0043】
前記トナーは、磁気材料を含んでもよい。有用な磁気材料の例は、鉄の混合酸化物、鉄ケイ素合金、鉄アルミニウム、鉄アルミニウムケイ素、ニッケル鉄モリブデン、クロム鉄、鉄ニッケル銅、鉄コバルト、鉄及び磁鉄鉱の酸化物を含む。本発明において有用な磁気キャリヤー粒子のサイズは非常に広く、有利には100μm未満の平均粒子サイズを有し、かつより有利には約5〜約45μmの平均キャリヤー粒子サイズを有する。
【0044】
前記トナーは、一般に、トナーの質量に対して、30〜60%の樹脂(ウレタン改質樹脂及び他のバインダー樹脂)、30〜50%の磁気材料、場合により1〜20%の他の成分、例えば着色剤、蝋、蝋分散剤及び電荷調整剤を含有する。
【0045】
前記トナーは、場合により、トナーの流動性を高めるための流動剤を含んでよい。外的にトナー粒子と混合されるべき流動剤として使用するために利用できるのは、無機粒子材料、例えばシリカ、アルミナ、及びチタニアである。流動剤は、疎水性付与剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤及びシリコーン油で疎水処理されうる。流動剤の量は、トナーの質量に対して、通常、0.1〜1質量%である。
【0046】
前記トナーは、あらゆる公知の方法、例えば請求項6〜8のいずれか1項に記載のウレタン改質樹脂と、1種以上の前記成分とを配合すること、及びそのようにして得られたバルク材料を微粉砕することによって得られる。
【0047】
電子写真目的のためのトナーを得るための最も一般的な方法は、例えば、前記ウレタン改質樹脂を、粒子サイズ0.5〜5mmまで微粉砕し、他の添加剤、例えば着色剤、ポリオレフィン蝋及び電荷調整剤並びに他のバインダーを添加し、前記成分を、例えばHenshall混合機で混合し、そしてその混合物を100〜150℃でニーダ等の中で磨砕し、そのようにして得られたバルク材料を微粉砕及びグレーディングすることを含む。前記トナー粒子は、有利には粒子サイズ5〜15μmを有する。
【0048】
本発明のトナーは、電子コピー目的のための顕色剤の製造のために使用されうる。
【0049】
前記顕色剤は、実質的にトナーからなる1成分の顕色剤、又はトナー及びキャリヤーを含む2成分の顕色剤であってよい。
【0050】
本発明の顕色剤は、有利には、90〜98質量%、及びより有利には93〜97質量%の量でキャリヤーを含有する。
【0051】
前記キャリヤーは、コア及び場合によりコアを覆う樹脂層を含む。
【0052】
コアのために使用できる材料の特定の好ましい例は、制限されることなく、マグネシウム−ストロンチウム、マンガン−マグネシウム材料、銅−亜鉛及び鉄粉末を含む。
【0053】
前記コアは、有利には平均粒子直径10〜150μmを有する。
【0054】
樹脂層に使用可能な樹脂の特定の好ましい例は、制限されることなく、アミノ樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、水素化オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデンとアクリルモノマーとのコポリマー、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとのコポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ素化モノマーとのターポリマー、並びにシリコーン樹脂を含む。これらの樹脂は、単独で又は組合せで使用されうる。前記樹脂層は、所望の場合に導電力を含んでよい。使用可能な導電性粉末の特定の例は、制限されることなく、金属粉末、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛を含む。導電性粉末は、有利には、平均粒子直径1μm未満を有する。樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等を有機溶剤中で溶解してカバー層被覆液体を製造し、そして公知の方法、例えばディップ被覆法、スプレー被覆法及びはけ塗り法によってコア状にカバー層被覆液体を均一に適用することによって形成されうる。そして被覆層は、乾燥及び焼付けを受ける。有機溶剤の特定の例は、制限されることなく、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びセロソルブブチルアセテートを含む。焼付け方法は、外的加熱法又は内的加熱法であってよい。特定の焼付け法は、固定電気炉、移動電気炉、回転電気炉、バーナ炉及びマイクロ波を含むが、しかしそれらに制限されない。
【0055】
有利には、キャリヤーは、0.01〜5.0質量%の量でカバー層を含む。
【0056】
本発明の顕色剤は、電子コピー目的のために適用することができる。
【0057】
電子コピー中に、電子又は磁気潜像が、一般に、トナーを含む顕色剤によって可視像の形になる。特に、電子写真においては、電子潜像が光受容器上に形成され、そして現像液で現像してトナー画像を形成する。トナー画像は、記録媒体、例えば紙上に転写され、そして熱等の適用によってそれら上に固定される。
【0058】
ポリイソシアネート混合物と、本発明のポリエステル及び重縮合樹脂を含有するポリマー混合物との反応によって製造されたウレタン改質樹脂は、トナー及び顕色剤のための従来のバインダー樹脂と比較していくつかの利点を有する。本発明によるウレタン改質樹脂は、トナーの製造のために使用した場合に、優れた貯蔵安定性、改良された靱性及び低減された脆性を付与する。ウレタン改質樹脂は、いわゆるオフセットの発生、例えば溶融トナーの加熱ローラへの部分粘着による固定ローラの汚染を妨げる、高いオフセット耐性を付与する。さらに、ウレタン改質充填剤は、低い粘度のままであり、トナー目的のために使用される他の充填剤成分とよく混合し、そして少量の熱で溶融して、高速印刷を可能にし、かつ固定温度が低い場合にトナー画像が紙上で不完全に固定されることから妨げる優れた低温定着性をもたらす。従って、本発明のウレタン改質樹脂は、同様の時間で低温定着性を改良する場合に、相反する効果の解像度、すなわち貯蔵安定性及びオフセット特性の改良を可能にする。本発明によるウレタン改質樹脂を成分として使用するトナー及び顕色剤は、トナーの真発熱量に関する特に良好な特性を示し、かつ高速コピーを可能にする。
【0059】
本発明は、以下の例証によって記載されるが、しかし本発明は、これらの例証によって制限されない。
【0060】
実施例
次の実施例において、"部"は質量部を意味し、かつ"%"は質量%を意味する。
【0061】
ガラス転移点:
ガラス転移点を、示差走査熱分析(Seiko Denshi Kogyo Co.社製のDSC210)を使用して、温度上昇速度10℃/分で測定した。測定操作前に、試料を、ガラス転移点より上によく加熱し、そして冷却速度10℃/分でガラス転移点未満までよく冷却する。
【0062】
ヒドロキシル基価:
ヒドロキシル基価を、JIS K 0070の方法に基づいて測定した。
【0063】
数平均分子量:
数平均分子量を、標準ポリスチレン計算を使用するGPC法で測定した。
【0064】
実施例1:ポリカーボネートA−1の製造
ジエチルカーボネート(472部)、1,6−ヘキサンジオール354部及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を、窒素雰囲気下で導入した。温度を、100℃から180℃まで、6時間にわたって常圧で上昇させた。p−t−ブチルフェノール300部をこの温度で添加し、そして反応を3時間180℃で、そしてさらに3時間にわたって200℃まで加熱することによって実施した。この後に、未反応のジエチルカーボネート等を減圧下で蒸留し、そしてポリカーボネートA−1を得た。このガラス転移点は53℃であり、ヒドロキシル基価は8mg KOH/gであり、かつ数平均分子量は800g/molであった。
【0065】
実施例2:ポリカーボネートA−2の製造
エチレンカーボネート(分子量88.1)(880部)、1,4−ブタンジオール1170部及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.22部を、窒素雰囲気下で導入した。温度を、100℃から170℃まで、6時間にわたって常圧で上昇させた。p−t−ブチルフェノール(分子量150)108部をこの温度で添加し、そして反応を3時間170℃で、そしてさらに3時間190℃まで加熱することによって実施した。この後に、未反応のエチレンカーボネート等を蒸留し、そしてポリカーボネートA−2を得た。このガラス転移点は45℃であり、ヒドロキシル基価は6mg KOH/gであり、かつ数平均分子量は2000g/molであった。
【0066】
実施例3:重縮合樹脂B−1の製造
ジエチルカーボネート(分子量118)(389部)、1,6−ヘキサンジオール(分子量118)472部及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.09部を、窒素雰囲気下で導入した。温度を、100℃から180℃まで、3時間にわたって常圧で上昇させ、そして反応を、3時間180℃で、そしてさらに3時間にわたって200℃まで加熱することによって実施した。この期に、未反応の材料を減圧下で蒸留し、そしてポリカーボネートB−1を得た。このガラス転移点は53℃であり、ヒドロキシル基価は58mg KOH/gであり、かつ数平均分子量は1900g/molであった。
【0067】
実施例4:重縮合樹脂B−2の製造
エチレンカーボネート(分子量88.1)(880部)、1,4−ブタンジオール1080部及び反応触媒としてテトラブチルチタネート0.2部を、窒素雰囲気下で導入した。温度を、100℃から170℃まで、6時間にわたって常圧で上昇させ、そして反応を、3時間170℃で、そしてさらに3時間にわたって190℃まで加熱することによって実施した。この後に、未反応のエチレンカーボネート等を蒸留し、そしてポリカーボネートB−2を得た。このガラス転移点は43℃であり、ヒドロキシル基価は56mg KOH/gであり、かつ数平均分子量は2000g/molであった。
【0068】
実施例5:A−1とB−1とからのウレタン改質樹脂の製造
ポリカーボネート(A−1)(60部)及びポリカーボネート樹脂(B−1)40部を、二軸混合器中で混合した。トリレンジイソシアネート(1OH基当量当たり1NCO基当量)4.4部を、ポリマー混合物に、2時間にわたって押出機を使用して添加した。得られた材料を冷却し、そして粗い微粉砕機を使用して0.5〜20mmの粒子サイズまで粗く微粉砕した。
【0069】
実施例6:A−1とB−2とからのウレタン改質樹脂の製造
ポリカーボネート(A−1)(60部)及びポリカーボネート樹脂(B−2)40部を、二軸混合器中で混合した。トリレンジイソシアネート(1OH基当量当たり1NCO基当量)4.2部を、ポリマー混合物に、2時間にわたって押出機を使用して供給した。得られた材料を冷却し、そして粗い微粉砕機を使用して0.5〜20mmの粒子サイズまで粗く微粉砕した。
【0070】
実施例7:A−2とB−2とからのウレタン改質樹脂の製造
ポリカーボネート(A−2)(50部)及びポリカーボネート樹脂(B−2)50部を、二軸混合器中で混合した。トリレンジイソシアネート(1OH基当量当たり1NCO基当量)4.8部を、ポリマー混合物に、2時間にわたって押出機を使用して供給した。得られた材料を冷却し、そして粗い微粉砕機を使用して0.5〜20mmの粒子サイズまで粗く微粉砕した。
【0071】
実施例8(比較例):ウレタン改質樹脂の製造
ガラス転移点53℃、ヒドロキシル基価8mg KOH/g及び数平均分子量約800g/molを有するポリエステル樹脂C−1を、シュウ酸ジメチルエステル472部、1,6−ヘキサンジオール354部及び安息香酸メチル544部を使用して通常の溶融重縮合法によって得た。
【0072】
さらに、ガラス転移点48℃、ヒドロキシル基価56mg KOH/g及び数平均分子量約2000g/molを有するポリエステル樹脂C−2を、シュウ酸ジメチルエステル354部及び1,6−ヘキサンジオール389部を使用して同様の方法で得た。
【0073】
ポリエステル樹脂C−1(60部)とポリエステル樹脂C−2の40部とを混合した。トリレンジイソシアネート(1OH基当量当たり1NCO基当量)4.2部を、ポリマー混合物に、2時間にわたって押出機中で供給した。得られた材料を冷却し、そして粗い微粉砕機を使用して0.5〜20mmの粒子サイズまで粗く微粉砕した。
【0074】
実施例9:電子写真目的のためのトナー組成物の評価
カーボンブラック6部、電荷調整剤1部及びポリプロピレン蝋1.5部を、実施例5〜7及び実施例8(比較例)において得られたウレタン改質100部と配合し、そして分散し、Henshall混合機中で混合し、次に二軸混合機で磨砕した。バルク状トナー組成物を得た。
【0075】
前記組成物を粗い微粉砕した後に、それらを、細かい微粉砕機(Nippon Pneumatic Co.社製の1型ミル)中で細かく微粉砕し、そしてグレード分けした。平均粒子サイズ約8μmのトナー粒子を得た。流動剤(Nippon Aerosil R972)(0.5質量%)を、トナー粒子に添加し、そしてトナーを得た。フェライトキャリヤー(Nippon Teppun社製のF150)(96部)を、トナー4部にて添加して、顕色剤を製造した。
【0076】
低温定着性:
トナー画像を、市販のコピー機(Sanda Kogyo社製のDC1257)を使用して紙上に転写し、そして定着試験を、転写されている紙上のトナーでの市販のコピー機(Sharp Co.社製のSF8400A)の固定部の改良で実施した。その試験を、190mm/秒までのホットロールセットの速度で実施した。低温オフセットを定着しない低い限界温度を、定着温度として取った。
【0077】
貯蔵特性:
トナー(4g)を、温度55℃及び湿度60%を有する環境中に72時間放置した。放置後、トナー凝集が生じた範囲を視覚的に観察し、そして貯蔵特性を、以下に示した評価基準を基に評価した。
【0078】
評価基準:
4:凝集が、48時間後、又は72時間後でさえもみられなかった。
3:凝集が48時間後にはみられなかったが、しかしわずかな凝集が72時間後にはみられた。
2:凝集が48時間後にはみられなかったが、しかし明らかな凝集が72時間後にはみられた。
1:凝集が48時間以内に既にみられた。
【0079】
前記の結果を表に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量約500〜10000g/mol、ガラス転移点30〜80℃及びヒドロキシル基価30mg KOH/g未満のポリカーボネート。
【請求項2】
ガラス転移点40〜70℃及びヒドロキシル基価10mg KOH/g未満を有する、請求項1に記載のポリカーボネート。
【請求項3】
前記ポリカーボネートが、多価アルコール、カーボネート化合物及びブロッキング剤の反応によって得られる、請求項1又は2に記載のポリカーボネート。
【請求項4】
前記多価アルコールが、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトからなる群から選択され、前記ポリカーボネート化合物が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートからなる群から選択され、かつ前記エンドブロッキング剤が、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、1−オクタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール、メタクリロール及び3,5キシレノール、及びp−t−ブチルフェノールからなる群から選択される、請求項3に記載のポリカーボネート。
【請求項5】
電子コピー目的のためのトナー又は顕色剤の製造のための成分として使用されるウレタン改質樹脂において、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリカーボネートの使用。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のポリカーボネート並びにガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価20〜100mg KOH/gの重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と多官能価イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタン改質樹脂であって、ポリカーボネートと重縮合樹脂との比が、20:80〜80:20(質量)であり、かつポリマー混合物中のポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比が、0.4〜1.2:1である、ウレタン改質樹脂。
【請求項7】
前記重縮合樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル/ポリカーボネート共縮合樹脂の1つ以上のタイプである、請求項6に記載のウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂。
【請求項8】
前記重縮合樹脂が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートからなる群から選択されるカーボネート化合物、並びに1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA酸化エチレンアダクト及びビスフェノールA酸化プロピレンアダクトからなる群から選択される多価化合物から製造されたポリカーボネート樹脂である、請求項7に記載のウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂。
【請求項9】
請求項6から8までのいずれか1項に記載のウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂を含む、電子コピー目的のためのトナー。
【請求項10】
請求項9に記載のトナー、及び場合によりキャリヤーを含有する、電子コピー目的のための顕色剤。
【請求項11】
電子コピー目的のためのトナー又は顕色剤における成分として、請求項6から8までのいずれか1項に記載のウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂の使用。
【請求項12】
請求項1又は3に記載のポリカーボネート並びにガラス転移点10〜60℃及びヒドロキシル基価20〜100mg KOH/gの重縮合樹脂を含有するポリマー混合物と多官能価イソシアネート化合物との反応によってウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂の製造方法であって、ポリカーボネートと重縮合樹脂との比が、20:80〜80:20(質量)であり、かつポリマー混合物中のポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基とヒドロキシル基とのモル比が、0.4〜1.2:1である、ウレタン改質したポリカーボネートを基礎とする樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項6から8までのいずれか1項に記載のウレタン改質樹脂と、着色剤、バインダー樹脂、蝋、蝋分散剤、流動剤、磁気材料及び電荷調整剤からなる群から選択される1つ以上の他の成分とを配合し、そして得られたバルク材料を微粉砕することによって得られるトナーの製造方法。
【請求項14】
請求項9に記載のトナーとキャリヤーとを配合することによる、顕色剤の製造方法。
【請求項15】
電子潜像の支持部材上に電子潜像を形成すること、かつ請求項10に記載の顕色剤又は請求項9に記載のトナー又は請求項6に記載のウレタン改質樹脂で電子潜像を現像することを含む、画像形成法。

【公表番号】特表2012−532941(P2012−532941A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518965(P2012−518965)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059625
【国際公開番号】WO2011/003898
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】