説明

電子スリップ及び当該電子スリップを用いた書籍管理システム

【課題】電子スリップを書籍に容易に着脱、固定できるようにする。
【解決手段】基板と、当該基板の一部又は全部を覆うカバーとを備え、これら基板とカバーでシート状部材を挟んで当該シート状部材に取り付けられる電子スリップであって、前記基板とカバーが互いに結合されると共に、当該基板又はカバーの外側面、内側面又は内部に、情報管理を行うデータキャリアが取り付けられ、前記基板又はカバーの一方又は両方に、これら基板とカバーとを互いに簡易に着脱させる再剥離型粘着剤を設けた。電子スリップには整理用孔を備えた。書籍の在庫状況を管理する書籍管理システムに前記電子スリップを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍等に挟んで、その書籍に関する情報を記録し、適宜書き換えて在庫管理、販売管理等を行う電子スリップ及び当該電子スリップを用いた書籍管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
書籍に使用される一般的なスリップは短冊状の紙片で構成されている。このようなスリップの一面側に、書名、出版社名等の書籍に関する種々の情報が記載されている。また、商品コードが記入されている場合もある。このようなスリップは、対象となる書籍の任意のページに挟まれている。
【0003】
このような紙のスリップの場合は、スリップに記載された情報を確認するために各書籍から1枚ずつスリップを抜き取る必要があり、また新たな情報を書き込むこともできないため、管理業務が煩雑になる。このため、近年ICタグを用いた電子スリップが普及してきている。
【0004】
書籍の在庫管理等のための情報を書き込んで、適宜書き換えて、繰り返し使用できるICタグを、スリップ伝票型のホルダーに装着して書籍に挿入していた。
【0005】
情報の読み取りや書き込みは、ICタグのリーダーライターで一度に行われる。即ち、複数の書籍のスリップのICタグに対して、一度に情報を読み取り、また必要に応じて書き込まれる。
【0006】
このような電子スリップの場合、ホルダーが書籍に挿入されているだけで、特に固定されていないため、読者が書店内で書籍を閲覧する際に、ホルダーが書籍から脱落してしまうことがある。このため、棚卸しの際に、書籍の管理情報が読み取れないという現象が多く見られた。そして、このような脱落の問題を解消するために、特許文献1,2に記載のようなスリップが提案されている。
【0007】
この特許文献1,2に記載のスリップは、再剥離型粘着剤で書籍に貼ったり剥がしたりできるようにしたラベル型のスリップである。
【0008】
このラベル型のスリップを書籍に貼って管理し、販売等によって管理不要となった時点でスリップを剥がして保存し、再利用する。
【特許文献1】特開平10−105059号公報
【特許文献2】特開平10−105618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献に記載のスリップでは、書籍から抜け落ちることはないが、剥がした後の保存が容易でない。即ち、スリップを書籍から剥がした後、そのまま重ねると、むき出しの再剥離型粘着剤によって隣同士のスリップがくっついてしまう。このため、再剥離型粘着剤を剥離紙で覆う必要があり、再利用に適したものではなかった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、書籍等に装着しやすく、脱落しにくく、回収しやすく、回収後の保管が容易な電子スリップ及び当該電子スリップを用いた書籍管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、請求項1の本発明の電子スリップは、基板と、当該基板の一部又は全部を覆うカバーとを備え、これら基板とカバーでシート状部材を挟んで当該シート状部材に取り付けられる電子スリップであって、前記基板とカバーが互いに結合されると共に、当該基板又はカバーの外側面、内側面又は内部に、情報管理を行うデータキャリアが設けられ、前記基板又はカバーの一方又は両方に、これら基板とカバーとを互いに簡易に着脱させる簡易着脱手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
前記構成により、基板とカバーとで書籍のページ等のシート状部材を挟んで奥まで挿入する。この状態で、データキャリアに対して、外部のリーダー・ライタで情報を書き込み、書き換え又は読み出す。
【0013】
前記簡易着脱手段は、再剥離型粘着剤であることが望ましい。電子スリップには整理用孔を備えることが望ましい。少なくとも前記基板はフィルム基材で構成されることが望ましい。
【0014】
また、店内に位置する書籍に挿入され、当該書籍の売却時に抜き取って保管される各電子スリップに、それぞれアクセスして書籍の在庫状況を管理する書籍管理システムにおいて、書籍管理装置に使用される前記電子スリップとして、前記電子スリップを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
電子スリップの基板とカバーとで書籍のページ等のシート状部材を挟んで奥まで挿入するため、電子スリップを書籍等に容易に挿入することができるようになる。
【0016】
また、簡易着脱手段によって電子スリップをシート状部材に容易に固定されることができると共に、容易に取り外すことができるようになる。
【0017】
さらに、書籍管理装置に前記電子スリップを用いることで、店内等の全ての書籍を効率的に管理することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、電子スリップと書籍管理システムとに分けて説明する。
【0019】
[電子スリップ]
以下、本実施形態に係る電子スリップについて図1〜3を基に説明する。
【0020】
電子スリップ1は、この電子スリップ1が挿入される書籍に関する情報を書き込み、書き換えると共にその情報を随時読み取って、多数の書籍を管理する際に用いられるスリップである。
【0021】
電子スリップ1は、ホルダー2と、データキャリア3とから構成されている。
【0022】
ホルダー2は、従来の紙のスリップと同じ矩形状に形成されている。ホルダー2の形状としては、これに限らず、円形、楕円形、三角形、四角形等の様々な形状とすることができる。ホルダー2は、基板4と、この基板4を覆うカバー5とから構成されている。ホルダー2は、これら基板4とカバー5とでシート状部材(例えば図6の書籍のページ7)を挟んで書籍等に取り付けられる。
【0023】
図1、図2において基板4は長方形状に形成されている。基板4の内側面(カバー5側の面)には、簡易着脱手段としての再剥離粘着層6が形成されている。なお、簡易着脱手段としては、再剥離粘着層に限らず、磁石等を用いても良い。磁石を用いる場合には、基板4とカバー5の両方に設ける必要があるが、基板4又はカバー5の内側面あるいは外側面のどちらに設けても良い。再剥離粘着層を用いる場合には、基板4又はカバー5の少なくとも一方の内側面に設ける必要があるが、両方の内側面に設けても良い。簡易着脱手段の形状や大きさ、基板4又はカバー5の平面内における設置場所は、容易に脱落しなければ特に限定されるものではなく、任意の形状や大きさ、設置場所を適宜選択すれば良い。
【0024】
再剥離粘着層6は、基板4の先端側半分(図1中の下端側半分)に設けられている。再剥離粘着層6は、再剥離型の粘着剤よりなる。具体的には、再剥離粘着層6の粘着力は、書籍のページ7に接着した電子スリップ1を剥離する際、書籍のページ7が破れることなく、かつ粘着剤が書籍のページ7に残ることなく、簡単に剥がれる程度に設定される。さらに、基板4とカバー5とで書籍のページ7を挟んだ状態で、書籍のページ7から再剥離粘着層6がずれない程度の粘着力に設定されている。再剥離粘着層6としては具体的には、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等の公知の粘着剤を用いることができる。
【0025】
カバー5は、基板4の再剥離粘着層6を覆う板材である。カバー5は、その一部が基板4と互いに結合されている。具体的には、基板4とカバー5とは1枚の長い帯状の板材である支持体で一体的に形成される。この支持体が適宜位置(本実施形態では中央部)で折り曲げられることで、その一方が基板4となり、他方がカバー5となっている。支持体の折り曲げ部8には、整理用孔9が設けられている。この整理用孔9は、必要により設ければ良いもので、電子スリップ1を整理棒(図示せず)等に通して保管するための孔である。折り曲げ部8は、必要により設ければ良いもので、帯状の支持体を超音波溶着等によって互いに接着されている。これにより、基板4とカバー5とが互いに接着する方向に常に付勢されている。また、カバー5としては、透明又は半透明の板材を用いても良い。基板4もカバー5と共に透明又は半透明の板材を用いても良い。
【0026】
データキャリア3は、電子スリップ1が挿入される書籍に関する情報を記録するための電子デバイスである。データキャリア3は、後述する書籍管理システム21のタグリーダー・ライタ23によって、書籍に関する情報が適宜、書き込まれ、又は書き換えられると共にその情報を随時読み取られるようになっている。データキャリア3は、アンテナ回路及びICチップを備えた既存のデータキャリアをそのまま用いることができる。
【0027】
アンテナ回路は、銅箔をコイル状にエッチングしたり、銀ペースト等の導電性インクを印刷したりしてコイル状に形成する。
【0028】
図1,3においては、データキャリア3はカバー5の内側面に設けられているが、これに限らず、基板4又はカバー5の内側面あるいは外側面のどちらに設けても良い。基板4又はカバー5にポケットを設け、このポケットにデータキャリアを挿入しても良い。データキャリア3は、1つに限らず、複数設けても良い。また、形状や大きさ、基板4又はカバー5の平面内における設置場所は、特に限定されるものではなく、任意の形状や大きさ、設置場所を適宜選択すれば良い。
【0029】
以下に、電子スリップ1のデータキャリア3の具体例について図4,5を基に説明する。図4,5はそれぞれ異なるデータキャリア3の構成例として説明する。
【0030】
図4のデータキャリア3は、支持体11と、接着剤12と、電気回路(アンテナ回路)13と、ICチップ14と、粘着剤15と、表面材16とから構成されている。
【0031】
支持体11に、接着剤12を介して電気回路(アンテナ回路)13が取り付けられている。このアンテナ回路13にICチップ14が取り付けられ、粘着剤15を介して表面材16が取り付けられている。表面材16の表面には、印刷・印字受容層や、書いたり消したりすることが可能な可逆性記録層、具体的にはロイコ染料を利用した可逆性感熱記録層などを設けて、定価等の文字情報やマーク等を書き込んだり、書き換えたりしても良い。
【0032】
また、図5のデータキャリア3は、支持体11と、粘着剤15と、ICチップ14と、アンテナ回路13と、接着剤12と、基材17とから構成されている。
【0033】
基材17はアンテナ回路13をコイル状に作成するための支持基材としての役割を担っており、図4におけるデータキャリア3の支持体11の役割の一部と同じ役割を担う。
【0034】
前記支持体11、表面材16、基材17としては、上質紙やコート紙等の紙基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリカーボネート等のフィルム基材等を用いることができる。この中ではポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。これらの厚みは特に限定されるものではないが、5〜300μmが好ましく、10〜150μmがより好ましい。5μm未満だと、薄いために製造工程時にしわが入り易くなり、加工適性に劣る場合がある。300μmを超えると、支持体11に用いた時には折り曲げにくくなり、表面材16、基材17に用いた時には所望の大きさに切断しにくくなる場合がある。
【0035】
これら支持体11等は、隠蔽性を有するものが好ましい。これにより、内部のデータキャリア3や再剥離粘着層6が外部から見えず、通常のスリップと変わらない外観にできる。さらに、表面に印字適性があるものが好ましい。この印字適性には、文字だけでなくバーコード等を含む。これにより、書籍の値段や種々の情報、バーコード等を基板4又はカバー5の外側面に記載することができる。
【0036】
粘着剤15としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等の公知の粘着剤を用いることができる。接着剤12としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系等の公知の接着剤を用いることができる。
【0037】
粘着剤15は、図4においては支持体11を支持基材として作成したアンテナ回路13にICチップ14を実装したものを保護するための表面基材16を積層するためのものであり、図5においては基材17を支持基材として作成したアンテナ回路13にICチップ14を実装したものを支持体11に積層するためのものである。
【0038】
再剥離粘着層6には、適宜剥離紙を貼付してもよい。この剥離紙としては、上質紙、コート紙、ポリエチレンラミネート紙等の紙基材と、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド等のフィルム基材を用いることができる。必要により、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離剤を塗布することができる。
【0039】
基材17の表面には、印刷・印字受容層や、書いたり消したりすることが可能な可逆性記録層、具体的にはロイコ染料を利用した可逆性感熱記録層などを設けて、定価等の文字情報やマーク等を書き込んだり、書き換えたりしても良い。
【0040】
[動作]
以上のように構成された電子スリップ1は次のようにして書籍に着脱される。図6に基づいて説明する。
【0041】
電子スリップ1を書籍に挿入する際は、電子スリップ1のホルダー2のカバー5を開いて基板4から離し、これら基板4とカバー5との間に書籍のページ7を挟み込む。カバー5を開いた状態で押し込んで、基板4とカバー5の奥まで書籍のページ7を挿入する。再剥離粘着層6が書籍のページ7面に接着して電子スリップ1がページ7に固定され、電子スリップ1の抜け落ちを防止する。
【0042】
これにより、書籍を開いてページ7をめくっても、電子スリップ1がページ7から抜け落ちることがなく、書籍に挿入された状態が維持される。
【0043】
レジで電子スリップ1を回収時は、電子スリップ1を書籍から抜き取る。このときはまず、カバー5と基板4で挟んでいるページ7からカバー5を手で開いて、基板4の再剥離粘着層6が接着しているページ7面から再剥離粘着層6と共に基板4を剥がす。再剥離粘着層6に再剥離型の粘着剤を用いているので、容易に手で剥がすことができる。この状態で電子スリップ1を書籍から抜き取る。抜き取った後、カバー5によって閉じて、再剥離粘着層6を覆う。
【0044】
抜き取った電子スリップ1は、その整理用孔9を整理棒に挿入して保管する。このとき、再剥離粘着層6はカバー5で覆われるので、隣同士の電子スリップ1同士がくっついてしまうことがなく、整理できる。
【0045】
[効果]
以上のように、電子スリップ1の基板4とカバー5とで書籍のページ7を挟んで押し込むだけで、電子スリップ1を書籍に容易に挿入することができる。
【0046】
電子スリップ1のホルダー2に再剥離粘着層6を設けたので、この再剥離粘着層6によって電子スリップ1が書籍に確実に固定され、脱落することがなくなる。書籍を開いてページ7をめくっても、電子スリップ1はページ7に固定され、書籍から脱落することがなくなる。
【0047】
ホルダー2を、従来の紙のスリップと同様に1つの平面を折り曲げ可能な構成にしたので、従来のスリップと同じ態様で、書籍にスムーズに装着することができる。
【0048】
取り外した後の電子スリップ1では、カバー5が基板4の再剥離粘着層6を覆って接着されるため、再剥離粘着層6の露出がなくなり、この再剥離粘着層6が周囲の種々のものに接着するのを防止する。例えば、整理棒に整理用孔9を通されて重ねた状態で保管された電子スリップ1が、隣同士でくっつくことが無くなり、電子スリップ1の取り扱いが簡単になる。電子スリップ1の上部に設けた整理用孔9により、回収後の電子スリップ1が容易に整理することができる。
【0049】
さらに、電子スリップ1を取り外したら再剥離粘着層6がカバー5で覆われて保護されるため、再剥離粘着層6がクリーンな状態に保たれる。これにより、再剥離粘着層6の性能劣化が軽減され、使用回数を増やすことができる。
【0050】
また、電子スリップ1を取り外すときは、ホルダー2のカバー5を開いて再剥離粘着層6をページ7面から剥がして、電子スリップ1を書籍から抜き取るだけなので、電子スリップ1を書籍から容易に回収することができる。
【0051】
抜き取った電子スリップ1は、再剥離粘着層6をカバー5で覆った状態で、整理用孔9を整理棒に挿入して保管するため、簡単に且つきれいに整理することができる。このとき、電子スリップ1は、整理用孔9を整理棒に挿入して整理する以外に、収納箱等にそのまま入れて保管してもよく、この場合も簡単に且つきれいに整理することができる。
【0052】
[書籍管理システム]
次に、前記電子スリップ1を用いた書籍管理システムについて説明する。この書籍管理システムは、1つの書店内で書籍を仕入れて、陳列して、販売又は返品する際に、多数の書籍を一元的に管理するためのシステムである。即ち、店内に位置する書籍に挿入され、当該書籍の売却時に抜き取って保管される各電子スリップに、それぞれアクセスして書籍の在庫状況を管理する書籍管理システムである。入荷書籍データを記憶する手段、増減した書籍を認識する手段、売却した書籍データを記憶する手段、入出書籍を特定する手段等を有する書籍管理装置に使用される前記電子スリップとして、前記実施形態に係る電子スリップを用いた。
【0053】
以下、本実施形態に係る書籍管理システムについて図面を参照しながら説明する。
【0054】
図7は本実施形態の書籍管理システムにおける通信構成を示す説明図であり、図8は書籍管理システムの管理コンピュータの周辺装置の説明図である。図7において、本実施形態の書籍管理システム21は、管理コンピュータ22が陳列棚25上の書籍26についての各種の管理を実行するものである。なお、図7では、陳列棚25を1個のみ示しているが、実際上は多数存在する。さらに、書籍26は店内の陳列棚25に陳列されるだけでなく、店の保管室の収納棚25等(図示せず)に収納される場合もある。
【0055】
管理コンピュータ22は、書籍26の販売数や在庫数などの在庫管理を実行するものであり、LAN27等を介して、タグリーダー・ライタ23より陳列棚25に陳列されている書籍26のデータを収集したり、LAN27を介して、タグリーダー・ライタ23によって陳列棚25に陳列されている書籍26に任意のデータを書き込むようにさせたり、書籍26のデータを管理したりするものである。タグリーダー・ライタ23は、店内の陳列棚25に限らず、保管室の収納棚25等にも取り付けられる。
【0056】
タグリーダー・ライタ23は、例えば、陳列棚25の基台25Aの内部空間内に設けられている。このタグリーダー・ライタ23のアンテナ部分として、アンテナシステム24−1〜24−4が設けられており、タグリーダー・ライタ23は、例えば、管理コンピュータ22の制御下で、アンテナシステム 24−1〜24−4を読取り駆動して陳列棚25に陳列されている書籍26のデータを読み取ったり、アンテナシステム 24−1〜24−4を書込み駆動して陳列棚25に陳列されている所定の書籍26にデータを書き込んだりするものである。
【0057】
各アンテナシステム24−1、…、24−4は、例えば、基台25Aの棚板25aや中間位置の棚板25b(例えば、その下面部)にそれぞれ設けられているものであり(なお、天井板25cに設けられていても良い)、書籍26に取り付けられている前記電子スリップ1との通信を実行するものである。
【0058】
なお、タグリーダー・ライタとしては、陳列棚に設置するものに限らず、小型で手に持ってデータキャリアにかざす、いわゆるハンディタイプのものでも良い。
【0059】
管理コンピュータ22は、図8に示すような周辺装置(内蔵していても良い)を有している。すなわち、管理コンピュータ22には、操作入力装置(キーボードやマウス装置)30、ディスプレイ31、外部記憶装置32、OCR装置33、データベース装置34、プリンタ35、タグリーダー・ライタ36及び金銭処理機37などが接続されている。
【0060】
外部記憶装置32は、各種の記録媒体のアクセス装置として書き出したものである。例えば、書籍の出荷元から、納品データを記録媒体の形で供給されたときには、外部記憶装置32を介してそのデータが管理コンピュータ22に取り込まれることになる。
【0061】
OCR装置33は、紙帳票上の文字を認識するものである。例えば、書籍の出荷元から、納品データが所定フォーマットの紙帳票で提供された場合に、OCR装置33が、書籍名や書籍コードなどを文字認識して納品データを管理コンピュータ22に与えるものである。
【0062】
データベース装置34は、例えば、HDDなどの記録装置で構成され、各種のデータベースを記憶している。データベース装置34は、例えば、陳列棚25に現存する書籍26の在庫管理データベース34aや、販売した書籍26のデータベース34bや、発注データベース34cや、会計データベース34dなどを有する。プリンタ35は、管理コンピュータ22の指示下で印刷を実行するものであり、例えば、入荷に対する検品結果を印刷する。
【0063】
タグリーダー・ライタ36は、販売等のためにユーザから持ち込まれた書籍26に挿入された電子スリップ1のデータキャリア3に個別にアクセスするものである。陳列棚25に設けられているタグリーダー・ライタ23が、多数枚(例えば100枚)の電子スリップ1のデータキャリア3の同時読取りに対応できるものであるが、タグリーダー・ライタ36は、1枚の電子スリップ1のデータキャリア3を個別にアクセスできるものを適用しても良い。
【0064】
金銭処理機37は、例えば、いわゆるレジスタ装置が該当し、販売等の対価の入金や釣り銭の排出などを行うものである。
【0065】
次に、前記書籍管理システムの動作について説明する。動作としては、(1)陳列棚25に現存する書籍26の現状確認動作、(2)書籍26の販売等の個別書籍動作、(3)書籍入荷に対する検品動作、(4)出荷元への返品書籍の取りまとめ動作などがあり、管理コンピュータ22が、内蔵する実行用のプログラムに従って、各種の動作を実行制御する。
【0066】
まず、陳列棚25に現存する書籍26の現状確認動作を説明する。なお、現状確認動作自体には、既存の方法を適用することができる。
【0067】
例えば、管理コンピュータ22は、周期的(例えば1時間毎)に、又は、書籍26に動きがあったとき(例えば、タグリーダー・ライタ23を利用した個別商品動作の終了時や、常時スタンバイのタグリーダー・ライタ36から書籍26の移動の通知があったとき)や店員が起動したときに、図9に示すプログラム22aを開始し、全ての陳列棚25に存在する各書籍26の電子スリップ1のデータキャリア3からデータ収集してバッファリングし(ステップ100)、在庫管理データベース34aの格納内容と照合し(ステップ101)、照合結果を3分類に分類する(ステップ102)。すなわち、バッファリングした収集データにも在庫管理データベース34aにも存在する書籍26、バッファリングした収集データには存在するが在庫管理データベース34aには存在しない陳列棚25に新たに追加された商品、バッファリングした収集データには存在しないが在庫管理データベース34aには存在する陳列棚25から新たになくなった商品に分類する。
【0068】
バッファリングした収集データにはデータが存在するが在庫管理データベース34aの格納内容には存在しない書籍26や、バッファリングした収集データには存在しないが在庫管理データベース34aには存在する書籍26があれば、その正当性の確認処理を実行する(ステップ103,104)。そして、バッファリングした収集データの内容に、在庫管理データベース34aの格納内容を更新させて、一連の処理を終了する(ステップ105)。なお、図9では省略しているが、正当性を管理コンピュータ22の処理で確認できない場合には、異常報知をディスプレイ31などに行って、店員に確認させた後、バッファリングした収集データの内容、又は、それを作業者が修正した内容に、在庫管理データベース34aの格納内容を更新させる。これにより、書籍26の紛失、盗難等を確認する。
【0069】
購入者が店員に書籍26を手渡して購買を申し込んだ場合には、店員は、タグリーダー・ライタ36から、その書籍26に貼付されている電子スリップ1のデータキャリア3のデータを読み取らせた後、操作入力装置30から起動などして、精算処理を実行させる。管理コンピュータ22は、このような場合には、在庫管理データベース34aから該当するデータを消去すると共に、販売した書籍26のデータベース34bにデータを追加し、また、会計データベース34dにもデータを追加又は修正する。
【0070】
次に、商品入荷に対する検品動作を説明する。なお、書籍26の入荷時に電子スリップ1を書籍26に挿入する。この電子スリップ1の挿入は、上述のようにして行い、短時間で容易に行うことができる。さらに、タグリーダー・ライタ36でその書籍26の情報を電子スリップ1のデータキャリア3に書き込む。管理コンピュータ22側にも記録する。
【0071】
次いで、各入荷書籍26を陳列棚25等に載置し、操作入力装置30を介して検品動作を起動する。各入荷書籍26を陳列棚25に位置させる直前に、陳列棚25に現存する書籍26の現状確認動作を実行しておくことが好ましい。
【0072】
検品動作が起動されると、管理コンピュータ22は、図10に示すプログラム22bを開始する。そしてまず、全ての陳列棚25に存在する書籍26の電子スリップ1のデータキャリア3からデータを収集してバッファリングし(ステップ200)、在庫管理データベース34aの格納内容と照合し(ステップ201)、バッファリングした収集データには存在するが在庫管理データベース34aには存在しない陳列棚25に新たに追加された書籍26を認識する(ステップ202)。
【0073】
その後、新たに追加された書籍26のデータを、発注データベース34cのその出荷元に係る格納内容と照合し(ステップ203)、新たに追加された書籍26のデータを分類する(ステップ204)。
【0074】
新たに陳列棚25等に追加された書籍26であって発注データベース34cに記載されたもの(第1分類)、新たに陳列棚25に追加された書籍26であって発注データベース34cに記載されていないもの(第2分類)、発注データベース34cにだけ記載されているもの(第3分類)に分類する。第1分類の書籍26は、発注通りに納品された書籍26であり、第2分類の書籍26は、発注していないのに納品された書籍26であり、第3類の書籍26は、発注されているのに納品されていない書籍26である。
【0075】
管理コンピュータ22は、それぞれの分類の書籍26を記載したリストをデータベース34または管理コンピュータ22内のバッファメモリに格納する。
【0076】
管理コンピュータ22は、バッファメモリを検索し、第2分類の書籍26があれば、そのような第2分類の書籍26を記述した未発注納品リスト(このリストの情報は後述するようにして消去されるまで継続して格納される)をプリンタ35によって印刷させると共に(ステップ205、206)、バッファリングした収集データから未発注納品のデータを消去した後、消去後のバッファリングした収集データの内容に、在庫管理データベース34aの格納内容を更新させる(ステップ207,208)。この更新時においては、入荷書籍26について所定項目のデータを追加するようにしても良い。例えば、再販制度下の書籍26であれば、当該納品日から所定期間後の期日を返品日としてデータに含める。また例えば、陳列開始日から販売日までの期間などを管理する場合では、在庫管理データベース34aの格納内容を更新させる際に、陳列開始日(測定日)をデータに含める。管理コンピュータ22は、これらのデータを、在庫管理データベース34aに含めるだけでなく、陳列棚25のタグリーダー・ライタ23によって、該当する入荷書籍26の電子スリップ1に書き込むようにさせても良い。
【0077】
管理コンピュータ22はバッファメモリを検索し、第3分類の書籍26があれば、そのような第3分類の書籍26を記述した納品催促リストをプリンタ35によって印刷させ(ステップ209、210)、また、第1分類の書籍26を記述した納品書籍リストをプリンタ35によって印刷させる(ステップ211)。そして、発注データベース34cを納品されていない書籍26のデータだけが残るように更新する(ステップ212)。場合によっては、この更新により、発注データベース34cの全てのデータが消去されることがあり得る。印刷された納品催促リストは、例えば、発注先にFAX送信されたりする。なお、納品催促リストの印刷に代え、又は、印刷に加え、納品催促リストのデータを電子メールなどで発注先に送信するようにしても良い。
【0078】
その後、管理コンピュータ22は、在庫管理データベース34aから、返品期日が本日である書籍26のデータをリストアップした返品書籍リスト(このリストの情報は後述するようにして消去されるまで、データベース34又は管理コンピュータ22内のバッファメモリに継続して格納される)をプリンタ35によって印刷させ(ステップ213)、書籍入荷に対する一連の検品動作を終了する。
【0079】
店員は、以上のような検品動作が終了すると、未発注納品リストに記述された発注していないのに納品された書籍26を陳列棚25から回収したり、返品書籍リストに記述された返品期日が本日である書籍26を陳列棚25から回収したりする。この回収時に、未発注納品書籍26の回収容器と、返品書籍26の回収容器とを別個のものとしておく。なお、返品書籍リストを、書籍26の出荷元別に(言い換えると返品先毎に)印刷し、又は、1枚のリストの中で出荷元が区別つくように印刷し、出荷元が区別つくように回収可能としても良い。
【0080】
店員は、以上のような回収後に、操作入力装置30から、管理コンピュータ22に対し、回収終了操作を行う。
【0081】
このとき、管理コンピュータ22は、図11に示すプログラム22cを開始する。そしてまず、管理コンピュータ22から、全ての陳列棚25に存在する全ての書籍26の電子スリップ1のデータキャリア3からデータを収集してバッファリングし(ステップ300)、在庫管理データベース34aの格納内容と照合し(ステップ301)、在庫管理データベース34aには存在するがバッファリングした収集データには存在しない陳列棚25から回収された書籍26を認識する(ステップ302)。
【0082】
その後、管理コンピュータ22は、上述した未発注納品リストに記述された書籍26の全てが、認識された回収書籍26に含まれているか否かを判別する(ステップ303)。なお、未発注納品リスト自体が作成されていない場合は、未発注納品リストに記述された書籍26の全てが認識された回収書籍26に含まれているとみなして、以下の処理を行う。ステップ302で認識された回収書籍26に含まれていない、未発注納品リストに記述された書籍26が1個でもあれば(かかる書籍26は陳列棚25からの回収がなされていない)、管理コンピュータ22は、タグリーダー・ライタ23によって、そのような書籍26の全てに挿入されている電子スリップ1のデータキャリア3が読み取られることを待ち受け(ステップ304)、電子スリップ1のデータキャリア3の読み取りを認識すると、記憶している未発注納品リストのデータを消去すると共に、バッファリングしている収集データからもその書籍データを消去する(ステップ305)。タグリーダー・ライタ23による読み取り動作は、陳列棚25から回収したことの確認のために実行される。
【0083】
以上のようにして、未発注納品リストに記述された書籍26の全てが回収された状態になると(ステップ303で肯定結果、又は、ステップ304の処理終了)、管理コンピュータ22は、上述した返品書籍リストに記述された書籍26の全てが、認識された回収書籍26に含まれているか否かを判別する(ステップ306)。なお、返品書籍リストに返品書籍26が記述されていない場合は、返品書籍リストに記述された書籍26の全てが認識された回収書籍26に含まれているとみなして、以下の処理を行う。ステップ302で認識された回収書籍26に含まれていない、返品書籍リストに記述された書籍26が1個でもあれば(かかる書籍26は陳列棚25からの回収がなされていない)、管理コンピュータ22は、タグリーダー・ライタ23によって、そのような書籍26の全てに挿入されている電子スリップ1のデータキャリア3が読み取られることを待ち受け(ステップ307)、データキャリア3の読み取りを認識すると、記憶している返品書籍リストのデータを消去すると共に、バッファリングしている収集データからもその書籍データを消去する(ステップ308)。
【0084】
その後、管理コンピュータ22は、バッファリングしている収集データに、在庫管理データベース34aの格納内容を更新し(ステップ309)、図11に示す一連の処理を終了する。
【0085】
上記実施形態によれば、在庫管理で利用する陳列棚25に係るデータキャリア3のアクセス構成を適用し、書籍入荷時や書籍返品時の書籍26の確認動作をも実行するようにしたので、書籍入荷時、売却時や書籍返品時の店員による商品の確認作業などを簡単なものとすることができる。また、定期的に行われる棚卸しにおいても、普段から全体の管理が行われており、かつ各書籍26に対して電子スリップ1が抜け落ちることなく確実に挿入されているため、棚卸し作業を短時間で容易に行うことができる。
【0086】
[変形例]
前記実施形態では、カバー5を基板4の全部を覆うように構成したが、基板4の一部を覆うように構成しても良い。具体的には、基板4の再剥離粘着層6のみを覆う大きさにしても良い。
【0087】
また、再剥離粘着層6も、前記実施形態のように大きいものでなくても、基板4の一部にだけ設けるようにしても良い。弱い力でページ7面に接着できる程度の広さの再剥離粘着層6であればよい。
【0088】
これらの場合も、上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る電子スリップを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子スリップを開いた状態で示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子スリップを開いた状態で示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子スリップのデータキャリアの具体例を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電子スリップのデータキャリアの具体例を示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子スリップの使用例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る書籍管理システムにおける通信構成を示す説明図である。
【図8】書籍管理システムの管理コンピュータの周辺装置の説明図である。
【図9】現状確認動作プログラムを示すフローチャートである。
【図10】検品動作プログラムを示すフローチャートである。
【図11】返品書籍の取りまとめ動作プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1:電子スリップ、2:ホルダー、3:データキャリア、4:基板、5:カバー、6:再剥離粘着層、8:折り曲げ部、9:整理用孔、11:支持体、12:接着剤、13:アンテナ回路、14:ICチップ、15:粘着剤、16:表面材、17:基材、21:書籍管理システム、22:管理コンピュータ、23:タグリーダー・ライタ、24:アンテナシステム、25:陳列棚、26:書籍、27:LAN、30:操作入力装置、31:ディスプレイ、32:外部記憶装置、33:OCR装置、34:データベース装置、35:プリンタ、36:タグリーダー・ライタ、37:金銭処理機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、当該基板の一部又は全部を覆うカバーとを備え、これら基板とカバーでシート状部材を挟んで当該シート状部材に取り付けられる電子スリップであって、
前記基板とカバーが互いに結合されると共に、当該基板又はカバーの外側面、内側面又は内部に、情報管理を行うデータキャリアが設けられ、
前記基板又はカバーの一方又は両方に、これら基板とカバーとを互いに簡易に着脱させる簡易着脱手段を設けたことを特徴とする電子スリップ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子スリップにおいて、
前記簡易着脱手段が、再剥離型粘着剤であることを特徴とする電子スリップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子スリップにおいて、
整理用孔を備えたことを特徴とする電子スリップ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子スリップにおいて、
少なくとも前記基板がフィルム基材で構成されたことを特徴とする電子スリップ。
【請求項5】
店内に位置する書籍に挿入され、当該書籍の売却時に抜き取って保管される各電子スリップに、それぞれアクセスして書籍の在庫状況を管理する書籍管理システムにおいて、
入荷書籍データを記憶する手段と、増減した書籍を認識する手段と、売却した書籍データを記憶する手段と、入出書籍を特定する手段とを有する書籍管理装置に使用される前記電子スリップとして、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子スリップを用いたことを特徴とする書籍管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−64155(P2009−64155A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230294(P2007−230294)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】