説明

電子チケットの発行利用方法

【課題】 購入者以外の電子チケット利用を制限しダフ行為の防止を図る電子チケットの発行利用方法を提供する。
【解決手段】 通信端末に生体識別情報を入力し、生体識別情報のハッシュ値を生成し、通信端末から電子チケット発行サーバにハッシュ値と購入申込みチケット情報とを送信し、電子チケット発行サーバで電子署名を施した電子チケットを生成し、電子チケット発行サーバから通信端末に電子チケットを送信し、通信端末からICカードに電子チケットを記憶させ、電子チケット利用時に、ICカードの電子チケットを通信端末で読み取り、通信端末から入場ゲート装置に電子チケットを送信し、通信端末に生体識別情報を入力しハッシュ値を生成し、通信端末から入場ゲート装置にハッシュ値を送信し、入場ゲート装置内でハッシュ値を照合し、一致した場合に正規の電子チケット購入者であることを認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者への電子チケットの発行と、発行された電子チケットを利用者が利用する際の認証とを行なう電子チケットの発行利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チケット購入希望者に対して、インターネットを利用して電子チケットの発行を行い、それらの発行された電子チケットを、チケット購入希望者のICカードなどの記憶媒体に記憶させることで、利用者が窓口でチケットを購入する手間を無くして効率的にチケット販売をすることができるシステムが知られている。(例えば、特許文献1、参照)
【特許文献1】特開2001−869475号公報
【0003】
これらの電子チケットシステムでは、利用者が購入したチケットの権利情報をICカードなどの記憶媒体に記憶させておき、利用者が電子チケットを使用する際に、入場ゲートに備えている読取装置でその記憶媒体に記憶されているチケットの権利情報を読み取り、その読み取られたチケットの権利情報に対する有効性の判定処理を行うことで、利用者の入場の許可を行なう。
したがって、チケットの権利情報が記憶されている記憶媒体を持参した者ならば、誰でも電子チケットを利用して入場ができるようになっている。
【0004】
一方、人気のある歌手のコンサートや、スポーツ競技などにおいては、チケットの購入を希望する者が多く、簡単にそれらのチケットの購入ができない場合があることから、不正に通常のチケット販売価格よりも高い価格で転売して利益を得るというダフ行為が行なわれている。
これらのダフ行為を行なう所謂ダフ屋は、最初にチケットを購入した者からチケットを購入して、コンサート会場やスポーツ競技場の近くなどで第三者に転売するが、これらのチケットを高値で購入した者がそのチケットを利用してコンサート会場等の入場する際には、そのチケットがダフ行為で入手されたものであるか否かが判別できない。
したがって、たとえ通常の価格よりも高値であっても、コンサートやスポーツ競技などを見たいと思う者は、不正であると認識していてもダフ屋からチケットの入手を行なうことになる。
【0005】
また、これらのダフ行為は、電子チケットとして利用者が購入したチケットの権利情報を、ICカードなどの記憶媒体に記憶させた場合でも行なうことが可能である。
たとえ電子チケットとしてチケットの権利情報を記憶媒体に記憶させたとしても、その記憶媒体を一時的にでも、高値でチケットを転売した者に貸すなどして入場させれば、入場ゲートでは、電子チケットが記憶された記憶媒体を持参した者であれば、最初に正規のルートでチケットを購入した者でなくても、従来の紙媒体のチケットを同様にダフ行為が成立することになる。
したがって、たとえ電子チケットを取り入れたシステムを構築しても、電子チケットシステムに応じたダフ行為が行なわれる危険性があるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子チケットが発行された場合において、その電子チケットを利用することができる者を、正規のルートで電子チケットを最初に購入した者に限定し、その購入者以外の第三者による電子チケットの利用を制限できるようにすることで、ダフ行為の防止を図ることができるようにした電子チケットの発行利用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子チケットの発行利用方法は、ICカードを着脱可能に備える通信端末と、前記通信端末と通信回線又は無線を介して接続された電子チケット発行サーバ及び入場ゲート装置とにより、利用者への電子チケットの発行と、電子チケットに基づいた利用者の認証を行なう電子チケットの発行利用方法であって、前記通信端末に利用者の生体識別情報を入力するステップと、前記通信端末内で前記生体識別情報のハッシュ値を生成するステップと、前記通信端末から前記電子チケット発行サーバに、前記ハッシュ値と購入申込みチケット情報とを送信するステップと、前記電子チケット発行サーバにおいて、販売チケット情報並びに前記ハッシュ値を含んだ情報に対し、電子署名を施した電子チケットを生成するステップと、前記電子チケット発行サーバから前記通信端末に、前記電子チケットを送信するステップと、前記通信端末から前記ICカードに、前記電子チケットを記憶させるステップと、前記電子チケットが利用される際に、前記ICカードに記憶されている電子チケットを前記通信端末で読み取るステップと、前記通信端末から前記入場ゲート装置に、前記電子チケットを送信するステップと、前記通信端末に、利用者の生体識別情報を入力し、該生体識別情報のハッシュ値を生成するステップと、前記通信端末から前記入場ゲート装置に、前記通信端末で生成した生体識別情報のハッシュ値を送信するステップと、前記入場ゲート装置内で、前記通信端末から受信した生体識別情報のハッシュ値と、前記電子チケットに含まれているハッシュ値とを照合処理し、前記照合処理の結果が一致した場合に、前記利用者が正規の電子チケット購入者であることを認証するステップと、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子チケットの発行利用方法は、電子チケットを利用する際に、電子チケットを購入する際に登録させた生体識別情報のハッシュ値と、電子チケット利用者から読み取った生体識別情報から算出したハッシュ値とを照合して本人の認証を行なうので、電子チケットを利用することができる者が、正規のルートで電子チケットを最初に購入した者に限定され、その購入者以外の第三者による電子チケットの利用を制限できるので、ダフ行為の防止を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の概要を説明するための図、図2は、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法のシステムブロック図、図3及び図4は、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0010】
まず、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の概要を図1に基づいて説明する。
利用者1が所有する通信端末2は、チケットの発行を行うチケットセンター3に備えられているチケット管理サーバ4と、携帯電話通信網16及びインターネット17又は無線を介して通信可能に接続されており、更に、チケットを使用して入場を行なうイベント会場5に備えられている入場ゲート装置6とも無線により情報の送受信が行なえるようにしてある。
また、通信端末2は、着脱可能にICカード7が備えられ、通信端末2内において、装着されているICカード7からの情報の読み取りや、ICカード7への情報の書き込みが行なえるようにしてある。
【0011】
したがって、利用者は、通信端末2を利用することで、チケットセンター3に対して購入を希望するチケット情報の送信を行い、また、チケットセンター3からは、利用者の通信端末2に対して、電子チケットとしてチケット情報の送信を行なえるようにしてある。
また、イベント会場へ行く際にも、通信端末2を持参して、入場ゲート装置に対して電子チケットに基づいた処理を行うことで入場を行うことができるようにしてある。
【0012】
次に、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法を適応させたシステム構成について、図2のシステムブロックに基づき説明する。
まず、通信端末2には、表示手段8、ハッシュ値生成手段9、記憶手段10、ICカード読取書込手段11、通信手段12、送受信手段13、入力手段14、指紋読取手段15、制御手段16などを備えている。
ICカード読取書込手段11は、通信端末2内に装着したICカード7からの読み取り及びICカード7への情報の書き込みを行なう機能を有している。
ハッシュ値生成手段9は、生体識別情報である指紋情報をハッシュ関数によりハッシュ値を生成する機能を有している。
また、指紋読取手段15は、指紋読取センサーからなり利用者の指紋情報を読み取る。
【0013】
また、チケット管理サーバ4は、通信手段17、電子チケット発行手段18、電子署名手段19、制御手段20、チケット情報データベース21などを備えている。
チケット情報データベース21には、販売するチケットに関する情報が蓄積されている。
電子署名手段19は、販売チケット情報並びに生体識別情報である指紋情報のハッシュ値を含んだ情報に対し、電子署名を施す機能を有している。
また、電子チケット発行手段18は、電子署名手段19により電子署名を施した情報を、チケット管理サーバ4から利用者の通信端末2に送信することで、電子チケットの発行を行う機能を有している。
【0014】
次に、入場ゲート装置6には、送受信手段22、電子署名検証手段23、記憶手段24、入場ゲート開閉手段25、ハッシュ値照合手段28、制御手段29などを備えている。
送受信手段22は、通信端末2の送受信手段13とにより情報の送受信を行なう機能を有している。
電子署名検証手段23は、通信端末2から受信した電子署名が施された情報を検証する機能を有している。
【0015】
また、ハッシュ値照合手段28は、通信端末2から受信した電子署名が施された情報に含まれているハッシュ値と、通信端末2から受信した利用者の指紋情報からハッシュ関数により生成したハッシュ値とを照合する機能を有している。
入場ゲート開閉手段25は、利用者が会場に入る通路に備えているゲートの開閉を作動する機能を有し、この入場ゲート開閉手段25によるゲートの開閉は、ハッシュ値照合手段28でのハッシュ値による照合結果に基づいて制御されている。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の処理手順を、図3及び図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、利用者が電子チケットの購入を行なう場合の処理手順を説明する。
電子チケットの購入を希望する利用者は、通信端末2に備えられた指紋読取手段15である指紋読取センサーで利用者の指紋30から、利用者自身の生体識別情報として指紋情報の読み取りを行なう。(ステップS1)
次に、通信端末2内で、ハッシュ値生成手段9により読み取った指紋情報のハッシュ値を生成する。(ステップS2)
【0017】
次に、通信端末2の入力手段14から、購入申込みチケット情報の入力を行なう。(ステップS3)
そして、通信端末2から電子チケット発行サーバ4に対して、ハッシュ値と購入申込みチケット情報とを送信して、チケットの購入申込みを行なう。(ステップS4)
この購入の申込みに対して、チケット販売が行なえるのであれば、電子チケット発行サーバ4では、通信端末2から受信したハッシュ値並びにチケットに関する権利情報に電子署名を施して電子チケットを生成する。(ステップS5)
そして、電子チケット発行サーバ4から通信端末2に対して、その電子チケットを送信することで電子チケットの発行販売を行う。(ステップS6)
【0018】
電子チケットを受信した通信端末2は、通信端末2に装着されているICカード7にその電子チケットを書き込んで記憶させる。(ステップS7)
以上の処理により、電子チケットの発行、販売が行なわれる。
【0019】
次に、利用者が、購入した電子チケットをイベント会場などで使用する場合の処理手順について説明する。
まず、通信端末2は、装着されているICカード7から電子チケットを読み取る。(ステップS8)
そして、利用者がイベント会場に訪れた際に、利用者は、通信端末2を入場ゲート装置6に近づけることで、通信端末2から入場ゲート装置6に電子チケットを送信する。(ステップS9)
次に、通信端末2の指紋読取手段15で利用者の指紋情報を読み取る。(ステップS10)
通信端末2のハッシュ値生成手段9で、指紋情報のハッシュ値を生成し、入場ゲート装置6へ送信する。(ステップS11)
【0020】
次に、入場ゲート装置6で電子チケットのハッシュ値と、通信端末2から受信したハッシュ値との照合処理を行なう。(ステップS12)
そして、この照合処理の結果、ハッシュ値が一致した場合には、その利用者を正規の電子チケット購入者であるとを認証し、入場ゲート開閉手段25に対してゲートを開くための指示信号を送り、ゲートを開かせて入場ができるようにする。(ステップS13)
また、この照合処理の結果、ハッシュ値が不一致の場合には、入場ゲートは閉じた状態のまま処理を終了することで、入場を不許可とする。
【0021】
以上のように、本発明の電子チケットの発行利用方法では、入場ゲート装置6で利用者の指紋を読み取り、算出した指紋情報のハッシュ値と、既にチケットが販売された際に読み取られた指紋情報から算出しておいたハッシュ値との照合を行なうので、チケットを購入した本人だけが、その電子チケットを使用して入場できる。
したがって、第三者がその電子チケットを使用して入場しようとしても照合で不一致となり、不正な入場を防止することができる。
尚、通信端末は、携帯電話などの携帯通信端末を使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法のシステムブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る電子チケットの発行利用方法の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 利用者
2 通信端末
3 チケットセンター
4 チケット管理サーバ
5 イベント会場
6 入場ゲート装置
7 ICカード
8 表示手段
9,27 ハッシュ値生成手段
10,24 記憶手段
11 ICカード読取書込手段
12,17 通信手段
13,22 送受信手段
14 入力手段
15 指紋読取手段
16 携帯電話通信網
17 インターネット
18 電子チケット発行手段
19 電子署名手段
16,20,29 制御手段
21 チケット情報データベース
23 電子署名検証手段
25 入場ゲート開閉手段
28 ハッシュ値照合手段
30 指紋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードを着脱可能に備える通信端末と、前記通信端末と通信回線又は無線を介して接続された電子チケット発行サーバ及び入場ゲート装置とにより、利用者への電子チケットの発行と、電子チケットに基づいた利用者の認証を行なう電子チケットの発行利用方法であって、
前記通信端末に利用者の生体識別情報を入力するステップと、
前記通信端末内で前記生体識別情報のハッシュ値を生成するステップと、
前記通信端末から前記電子チケット発行サーバに、前記ハッシュ値と購入申込みチケット情報とを送信するステップと、
前記電子チケット発行サーバにおいて、販売チケット情報並びに前記ハッシュ値を含んだ情報に対し、電子署名を施した電子チケットを生成するステップと、
前記電子チケット発行サーバから前記通信端末に、前記電子チケットを送信するステップと、
前記通信端末から前記ICカードに、前記電子チケットを記憶させるステップと、
前記電子チケットが利用される際に、前記ICカードに記憶されている電子チケットを前記通信端末で読み取るステップと、
前記通信端末から前記入場ゲート装置に、前記電子チケットを送信するステップと、
前記通信端末に、利用者の生体識別情報を入力し、該生体識別情報のハッシュ値を生成するステップと、
前記通信端末から前記入場ゲート装置に、前記通信端末で生成した生体識別情報のハッシュ値を送信するステップと、
前記入場ゲート装置内で、前記通信端末から受信した生体識別情報のハッシュ値と、前記電子チケットに含まれているハッシュ値とを照合処理し、前記照合処理の結果が一致した場合に、前記利用者が正規の電子チケット購入者であることを認証するステップと、
からなることを特徴とする電子チケットの発行利用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−24062(P2006−24062A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202706(P2004−202706)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】