説明

電子ビーム加工で使用するためのチャンバ構造

【課題】 電子ビーム加工で使用するためのチャンバ構造を提供する。
【解決手段】 ワークピースの真空電子ビーム溶接用のチャンバ構造100は、チャンバを画定しかつ少なくとも1つのロード/アンロード開口部30を有するチャンバハウジング26と、ロード/アンロード開口部30を囲みかつロード/アンロード開口部30に対して回転軸線を中心に回転可能であるようにチャンバハウジング26に支持されるリング2と、ロード/アンロード開口部30をシールして閉じるためにリング2に接続されかつロード/アンロード開口部30に対してリング2と共に回転可能であるチャンバ閉鎖部3とを備えること特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム加工で、特に、ワークピースの真空電子ビーム溶接で使用するためのチャンバ構造、特に、小型チャンバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースの真空電子ビーム溶接のような電子ビーム加工は、通常、保持ツールがワークピースの側に配置されるチャンバ内で行われる。保持ツールは、ワークピースと共に供給され、閉鎖可能なチャンバ開口部を通してアンロードされる。
【0003】
シームを溶接装置とワークピースとの間に溶接するために必要な相対移動は、例えば、電子ビームの磁気偏向によって、または電子ビーム発生器を移動させることによって、または1つ以上の軸を有するマニピュレータを使用してワークピースを移動させることによって、またはこれらの方法の組み合わせによって行われる。
【0004】
特に、小型チャンバ内で小型ワークピースを溶接する場合、小型チャンバの開口部を通したワークピースの交換がしばしば困難になるために時間を浪費する。そのため、これらのような小型ワークピースの大規模な製造のために、ワークピースを移動させるためのマニピュレータを伴う保持ツールを、取り外し可能なチャンバ基板に取り付けることができる機械が開発されてきた。取り外し可能なチャンバ基板は、ワークピースを交換するために下降させることができるチャンバ閉鎖部の一形態でもある。複数のワークピースを保持するように、チャンバ基板を設計することもできる。
【0005】
高価な電子ビーム溶接設備のサイクル時間を最小にするために、交換可能な2つのチャンバ基板を交互に使用することが知られている。この場合、一方のワークピースはチャンバ外の1つのチャンバ基板で交換することができ、他方のワークピースは第2のチャンバ基板を使用してチャンバ内で溶接される。次に、ワークピースを保持している基板が交換される。
【0006】
これらのようなチャンバ構造では、チャンバに配置されるマニピュレータのマニピュレータ軸を移動させるための駆動装置は、例えば、チャンバ基板に取り付けられる。前記駆動装置には、可撓性接続ラインを介して流体が供給される。
【0007】
(特許文献1)は、イオンビームを発生させるためのイオンビーム源と、ワークピースの1つの表面にイオンを注入するためにワークピースが位置決めされる真空チャンバまたは注入チャンバとを有するイオン注入装置を開示している。イオン注入装置は、注入チャンバに接続されかつワークピースを保持するワークピース保持構造を有する。ワークピース保持構造は、ワークピースが回転できるように注入チャンバに嵌合される回転構成要素と、回転構成要素に移動可能に接続される移動構成要素とを備える。
【0008】
(特許文献2)は、イオンビームを発生させるためのイオンビーム源と、ワークピースの1つの表面にイオンを注入するためにワークピースが位置決めされる真空チャンバまたは注入チャンバとを備えるイオン注入装置を開示している。イオン注入装置は、注入チャンバの1つの壁部の開口部を通って注入チャンバの内部領域内に延びる走査アームを有するワークピース保持構造を備える。
【0009】
(特許文献3)は、任意の所望の幾何学的構造のワークピースに硬化工程および溶接工程を行うために使用される旋回可能な電子銃を開示している。2部分ハウジングは電子銃と被注入物との間に配置され、またこのハウジングの分離箇所は斜めに延びる。駆動要素は、分離箇所の領域に配置され、駆動ディスクを間に有する2つのディスクからなる。駆動ディスクの回転中に、これらのディスク群、すなわちハウジングの部分は、適切な歯付き要素によって互いに移動される。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6710360B2号明細書
【特許文献2】米国特許第7030395B2号明細書
【特許文献3】独国特許発明第4425090C1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、小型ワークピースを効率的に加工できる、電子ビーム加工で使用するためのチャンバ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載のチャンバ構造によって達成される。
別の有利な実施形態は従属請求項に規定されている。
【0013】
本発明のチャンバ構造は、チャンバを画定しかつ少なくとも1つのロード/アンロード開口部を有するチャンバハウジングと、ロード/アンロード開口部を囲み、かつロード/アンロード開口部に対して回転軸線を中心に回転可能であるようにチャンバハウジングに支持されるリングと、ロード/アンロード開口部をシールして閉じるためにリングに接続可能でありかつロード/アンロード開口部に対してリングと共に回転可能であるチャンバ閉鎖部とを備える。本発明の1つの基本的な考えは、例えばチャンバ基板の形状であり得るチャンバ閉鎖部を駆動して回転軸線を中心に回転させることであり、したがって、チャンバ内にマニピュレータを物理的に設ける必要なしにマニピュレータ軸を提供することである。
【0014】
本発明のチャンバ構造は、リングを駆動し、リングに接続されたチャンバ閉鎖部も回転するように駆動する回転駆動装置を備えることが好ましい。
【0015】
本発明のチャンバ構造は、チャンバが真空にされる多数の例において、負圧のみによって、チャンバ閉鎖部をリングに保持できる。大きな力が負圧に抗する場合、例えば、チャンバ閉鎖部がチャンバ基板の形状であり、重いワークピースが保持されている場合、本発明のチャンバ構造は、ロック手段によって、チャンバ閉鎖部をリングにロックできることが好ましい。
【0016】
本発明のチャンバ構造は、ポンプを備え、チャンバハウジングは、チャンバを真空にするためのおよび流体をチャンバに流入させるための入口/出口開口部を備えることが好ましい。
【0017】
本発明のチャンバ構造は、チャンバ閉鎖部を上昇させてチャンバ閉鎖部をリングに接続することによって、チャンバハウジングのロード/アンロード開口部を閉じるための、およびチャンバ閉鎖部を下降させることによってロード/アンロード開口部を開くための昇降手段を備えることが好ましい。
【0018】
本発明のチャンバ構造は、チャンバ閉鎖部が、回転軸線を中心に回転させるためにリングに接続可能な外部要素と、ロード/アンロード開口部がチャンバ閉鎖部によって閉じられている状態において、チャンバに対面する外部要素の側に配置される内部要素とを備えることが好ましい。
【0019】
内部要素は、移動可能であり、外部要素に対して選択的にロックできることが好ましい。その結果、別のマニピュレータ軸を設けることが可能になる。
【0020】
本発明のチャンバ構造は、内部要素に回転不能に接続された軸と、楔状の環状間隙を形成する軸に対向する外部要素の環状面と、環状間隙に相補的であり、かつ軸の長手方向軸線の周りでまたその長手方向軸線と同軸に移動可能であるように配置される楔形状のリングと、内部要素と外部要素との間に強制嵌合を生じさせるために、軸の長手方向軸線の方向においてリングを環状間隙に付勢するばねとを備えるカップリングを備えることが好ましい。外部要素に対する内部要素の選択的な移動およびロックが許容される。
【0021】
本発明のチャンバ構造は、外部要素に対する内部要素の移動を選択的に許容できるようにするために、楔状のリングがばねの付勢に抗して移動可能であることが好ましい。
【0022】
内部要素は、外部要素の回転中に、例えば昇降手段のような外部手段に接続されるように適合され、この外部手段によって、内部要素を回転不能に保持できるか、または外部要素の回転とは独立して内部要素を回転駆動できることが好ましい。
【0023】
本発明のチャンバ構造は、外部要素または内部要素に配置される歯付きリングと、外部要素および内部要素によって他の要素に保持され、歯付きリングに係合し、外部要素および内部要素の相対運動によって駆動でき、歯付きリングを回転させるために駆動軸(例えばワークピース保持手段)に接続される歯車とを備えることが好ましい。
【0024】
実施形態の別の特徴および利点は、図面に基づく実施形態の説明によって明確にされる。
【実施例】
【0025】
チャンバハウジングに隣接してまたはその中に配置できる電子ビーム発生器、偏向コイル等のような電子ビーム加工用の別の手段は、図面に示されていない。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるチャンバ構造100の一実施形態を示している。チャンバ構造100は、チャンバハウジング26を備えている。チャンバハウジング26は、チャンバ23を画定している。チャンバ23では、ワークピースの真空電子ビーム溶接のような電子ビーム加工を行うことができる。本実施形態では、チャンバハウジング26は、環状円筒の壁部1とカバー22とロード/アンロード開口部30とを備える。壁部1の円筒軸線により、チャンバ23の垂直軸線が規定される。カバー22は、垂直軸線の方向においてチャンバ23の上部境界を形成する。ロード/アンロード開口部30は、垂直軸線の方向においてチャンバハウジング26の下面に形成され、環状円筒の壁部1と同一の直径を有する環状形状である。
【0027】
チャンバ構造100はリング2をさらに備える。環状のリング2は外歯システム2aを備える。リング2は、ロード/アンロード開口部30を有するチャンバハウジング26の側面において、ロード/アンロード開口部30を画定するようにその開口部30を囲むべく、軸受36と環状のシール5とを介して壁部1の外側に支持および配置される。リング2は、その中心点にある回転軸線31を中心に、玉軸受の形態の軸受36を介してロード/アンロード開口部30に対して回転可能である。本実施形態の回転軸線31は壁部1の円筒軸線に一致する。シール5はチャンバハウジング26とリング2との間に配置される。シール5は、例えば、乾性油または表面油を流動させることができる、ドイツ連邦共和国のヴァインハイムにあるフロイデンベルク社(Freudenberg,Weinheim,Germany)から入手可能なOリングシールである。
【0028】
チャンバ構造100はチャンバ閉鎖部3も有する。本実施形態では、チャンバ閉鎖部3は環状板状の基板である。チャンバ閉鎖部3は、ロード/アンロード開口部30のシール閉鎖部用のリング2に接続可能である。閉鎖状態において、リング2の溝に保持される環状シール37はリング2とチャンバ閉鎖部3との間に配置される。閉鎖状態において、チャンバ閉鎖部3は、リング2にのみ接続され、このようにして、リング2と共に、壁部1に対して回転可能である。
【0029】
チャンバ構造100は回転駆動装置4をさらに備える。回転駆動装置4は、電動モータのようなモータ4aと駆動軸4bとピニオン4cとを備える。ピニオン4cは駆動軸4bに回転不能に設けられる。モータ4aは駆動軸4bを駆動する。ピニオン4cがリング2の外歯システム2aに係合するように、回転駆動装置4が壁部1の外側に配置される。
【0030】
チャンバ構造100は壁部1の入口/出口開口部32とポンプ33とをさらに備える。本実施形態では、ポンプ33は、壁部1の外側に配置され、またライン35を介して壁部1の入口/出口開口部32に、すなわちチャンバ23に接続される。
【0031】
チャンバ構造100は、本実施形態において昇降手段6の形態の外部手段をさらに備える。一例として、昇降手段6は空圧式であり得る。本実施形態において、チャンバ閉鎖部3を方向Hに上昇させてリング2に対してチャンバ閉鎖部3を移動させ、チャンバ閉鎖部3を方向Sに下降させてリング2から取り外すために、昇降手段6が設けられる。本実施形態では、方向HとSは回転軸線31に対して同軸である。
【0032】
チャンバ構造100は代替構造を備え得る。いくつかの別形態について以下に説明する。
【0033】
チャンバハウジングの壁部およびカバーを一体形成することが可能である。ロード/アンロード開口部をチャンバの各側面に設け得る。複数のロード/アンロード開口部を設けることが可能であり、またチャンバハウジングの任意の所望の位置に配置することが可能である。さらに、チャンバハウジングは、任意の所望の形状を有することが可能であり、例えば箱状であってもよい。チャンバハウジングは、リングを回転運動するように取り付けることができる環状接管、取付具等をロード/アンロード開口部に備えれば十分である。ロック手段(図示はしない)は、リングに直接または隣接して設けることができ、例えば、チャンバ閉鎖部とリングとの間の差込嵌合部の形態、または円筒がリングを通してチャンバ閉鎖部に挿入されるプラグ接続部であってもよい。
【0034】
図1に示されている第1の実施形態を参照して、チャンバ構造100の作動について以下に説明する。
【0035】
昇降手段6は、方向Hにおいてチャンバ閉鎖部3をリング2まで上昇させることによってチャンバ閉鎖部3を移動させる。この工程により、チャンバ閉鎖部3がロード/アンロード開口部30を閉じることになる。次に、ポンプ33を作動させることによって、入口/出口開口部32とライン35とを介して、負圧がチャンバ23内に発生される。このようにして、チャンバ閉鎖部3がリング2にまたはその上に保持される。チャンバ閉鎖部3を確実に固定するために、例えば、重いワークピースによって荷重が生じることによって、チャンバ23内の負圧にもかかわらずチャンバ閉鎖部3がリング2から外れることを、付加的に設けたロック装置によって防止できる。チャンバ23内の負圧を維持するために、シール5が壁部1とリング2との間に設けられ、シール37がチャンバ閉鎖部3とリング2との間に設けられる。負圧がチャンバ23内に発生して、チャンバ閉鎖部3がリング2にまたはその上に保持されるとすぐに、昇降手段6がチャンバ閉鎖部3から方向Sに取り外される。この状態は図1に示されている。
【0036】
回転駆動装置4用のモータ4aは、この状態において、駆動軸4bと、外歯システム2aに係合するピニオン4cとを介してリング2を回転駆動することが可能である。この工程中に、リング2は、軸受36において壁部1の外側に沿って回転する。チャンバ閉鎖部3をリング2に接続した結果、リング2が回転するときに、リング2と共にチャンバ閉鎖部3が回転する。
【0037】
チャンバ23を開くために、昇降手段6が方向Hに移動される。チャンバ閉鎖部3を方向Sに下降させることによってロード/アンロード開口部30を開くことができるように、空気のような流体が、ポンプ33、ライン35および入口/出口開口部32を介して、および/または図示されていない弁を介してチャンバ23に入れられる。
【0038】
第1の実施形態は、チャンバの内部に駆動軸を設けることなく、また駆動軸がチャンバの壁部を貫通することなく、ワークピース用の運動軸が内部に設けられるチャンバ構造を提供する。
【0039】
(第2の実施形態)
図2は、チャンバ構造100の第2の実施形態を示している。第2の実施形態は、以下に説明するチャンバ閉鎖部3の構成と特徴とを除いて、第1の実施形態に一致する。第1の実施形態と同様に、チャンバ閉鎖部3は基板の形状である。本実施形態のチャンバ閉鎖部3は外部要素12と内部要素14とカップリング27とを備える。
【0040】
第1の実施形態のチャンバ閉鎖部3と同様に、外部要素12は、回転軸線31を中心に回転させるためにリング2に接続可能である。外部要素12は、中央の貫通孔42を有する中央の凹部41を外側に有する環状板状である。ロック手段43は、中央の凹部41に回転不能に配置され、またロック手段43の内側において回転軸線31の周りに円錐環状面34を有する。回転軸線31は円錐環状面34の円錐軸線に一致する。
【0041】
ロード/アンロード開口部30が、チャンバ閉鎖部3によって閉じられている状態において、内部要素14はチャンバ23に対面するように外部要素12の内部に配置される。外部要素12に対面する側において、内部要素14は突出部39を備える。内部要素14は、回転軸線31に対して同軸方向にある貫通孔40も備える。
【0042】
本実施形態では、カップリング27は、軸9、外部要素12の環状面34、リング15およびばね16を備える。軸9は内部要素14に回転不能に接続されかつそれにシールされる。軸9が環状面34に対向して配置されて、楔状の環状間隙Fを形成する。チャンバ23の反対側の軸9の端部に、軸9は溝11を有する。リング15は、環状間隙Fの楔形状に相補的な楔形状を有する。リング15は、回転軸線31に一致する軸9の長手方向軸線の周りに配置される。リング15は長手方向軸線と同軸に移動可能である。ばね16は、リング15を環状間隙Fに付勢するように、外部要素12に対面する側の内部要素14に配置される。
【0043】
本実施形態では、チャンバ構造100は歯付きリング8をさらに備える。歯付きリング8は、内部要素14に対面する側において、外部要素12の貫通孔42と同心に形成される。歯付きリング8の歯システム44は、本実施形態において、内歯システムである(軸9の長手方向軸線の方向の半径方向内側)。
【0044】
チャンバ構造100は歯車7をさらに備える。歯車7はワークピース保持手段(図示はしない)の駆動軸21に設けられる。歯車7はピニオンであり、歯システム44を介して歯付きリング8に係合する。駆動軸21は貫通孔40を通ってチャンバ23内に延びる。
【0045】
チャンバ構造100は環状シール38をさらに備える。シール38は、軸9の長手方向軸線の周りに同心に、内部要素14と外部要素12との間の貫通孔42に配置される。一例として、シール38は、ドイツ連邦共和国のヴァインハイムにあるフロイデンベルク社(Freudenberg,Weinheim,Germany)から入手可能なOリングシールである。
【0046】
チャンバ閉鎖部3は、軸受13、例えば玉軸受をさらに備える。軸受13は、外部要素12と内部要素14との間の歯付きリング8の半径方向外側に設けられる。
【0047】
昇降手段6はスプライン10をさらに備える。スプライン10は昇降手段6に配置され、またスプライン10の形状は溝11の形状に相補的である。
【0048】
本実施形態では、昇降手段6を使用するチャンバ閉鎖部3によるロード/アンロード開口部30の開閉、負圧の発生、およびチャンバ23への流体の流入が、第1の実施形態と同様に行われる。
【0049】
図2は、ロード/アンロード開口部30が、チャンバ閉鎖部3によって閉じられ、負圧がチャンバ23内に発生され、昇降手段6がチャンバ閉鎖部3から取り外されている状態を示している。この状態において、リング2が、駆動軸4bとピニオン4cとを介して回転装置のモータによって駆動された場合、内部要素14および外部要素12が共に回転する。内部要素14と外部要素12の同時回転は、内部要素14と外部要素12との間の強制嵌合によって生じる。ばね16が、軸9の長手方向軸線の方向においてリング15を環状間隙Fに付勢するカップリング27によって、強制嵌合が生じる。
【0050】
外部要素12に対する内部要素14の移動を選択的に許容するために、ばね16の付勢に抗してリング15を移動させることができる。本実施形態では、この移動が、昇降手段6を方向Hに上昇させることによって許容される。この工程中に、昇降手段6に配置されるスプライン10が溝11に係合する。その結果、リング15は、ばね16の付勢に抗して移動される。この状態では、内部要素14は、スプライン10を溝11に係合させることによって回転不能に保持される。リング2がこの状態において回転手段のモータの駆動軸4bおよびピニオン4cを介して駆動された場合、外部要素12は内部要素14の回転運動なしに回転する。外部要素12のおよび内部要素14の互いの相対運動により、歯車7が、歯付きリング8を介して駆動され、このようにして、駆動軸21も回転するように駆動される。
【0051】
代わりに、外部要素12の回転とは独立して内部要素14が回転するように、或る装置(図示はしない)によって、内部要素14を駆動してもよい。
【0052】
昇降手段6が方向Sに下降された場合、内部要素14と外部要素12との間に強制嵌合が再び生じる。この理由は、スプライン10が溝11から取り外され、またリング15が、ばね16によって環状間隙Fに付勢されるからである。
【0053】
(第3の実施形態)
図3は、チャンバ構造100の第3の実施形態を示している。第3の実施形態は、以下に説明する特徴を除いて、第2の実施形態に一致する。歯車7が係合する歯付きリング8の歯システム44は半径方向外側に形成される。
【0054】
本実施形態のチャンバ構造100はチャンバ23内にマニピュレータ28を備える。本実施形態では、マニピュレータ28はウォーム軸18と平坦なディスク17とを備える。ウォーム軸18は歯車7の駆動軸21に配置される。ディスク17は、回転軸24を中心に回転できるようにウォーム軸18に配置される。回転軸24は駆動軸21に対して垂直である。
【0055】
外部要素12が内部要素14に対して移動している状態において、歯車7は、歯付きリング8を介して駆動され、このようにして、駆動軸21も回転するように駆動される。次に、ウォーム軸18を介して、駆動軸21は、回転軸24を中心に回転させるようにディスク17を駆動する。
【0056】
(第4の実施形態)
図4は、チャンバ構造100の第4の実施形態を示している。第4の実施形態は、以下に説明する特徴を除いて、第2の実施形態に一致する。歯車7が係合する歯付きリング8の歯システム44は半径方向外側に形成される。
【0057】
本実施形態のチャンバ構造100は、チャンバ23内にマニピュレータ29を備える。本実施形態では、マニピュレータ29は、ウォーム軸18と、スピンドル20と、直線移動可能なテーブル19とを備える。ウォーム軸18は歯車7の駆動軸21に配置される。スピンドル20は、駆動軸21が回転できるように、ウォーム軸18の駆動軸21に対して垂直に配置される。テーブル19は、スピンドル20の移動軸25に沿って移動可能である。
【0058】
外部要素12が内部要素14に対して移動している状態において、歯車7が歯付きリング8を介して駆動され、このようにして、駆動軸21も回転するように駆動される。次に、駆動軸21が、ウォーム軸18とスピンドル20とを介して移動軸25に沿ってテーブル19を駆動する。
【0059】
別の実施形態では、図3または図4に示されている特徴を有するチャンバ構造100は、交互に作動される外部要素12および内部要素14の相対運動を、異なる軸24、25に伝達することを許容する作動手段(図示はしない)をチャンバ23内に設けることができる。さらに、マニピュレータ28、29の複数の動作位置に対応する軸9の対応する箇所に、複数の溝11を設けることができ、昇降手段6が方向Hに上昇されているときに、前記複数の溝11にスプライン10が係合する。
【0060】
例えば二重チャンバの形状であるチャンバ構造の別の実施形態(図示はしない)は、3つのチャンバ閉鎖部が120°の間隔で配置され、かつ加工動作の時間を最小にするために2つのチャンバに交互に流体を供給する。
【0061】
必要に応じて、説明した実施形態の特徴のすべてを組み合わせることができる。
【0062】
出願時の記載のために、かつ実施形態および/または特許請求の範囲の特徴を組み合わせるのとは独立して、請求された発明を限定するために、発明の詳細な説明および/または特許請求の範囲に開示されているすべての特徴が、別個にまた互いに独立して開示されるように意図されることは明らかである。出願時の記載のために、また特に価値範囲を限定するように、請求された発明を限定するために、実体群のすべての価値範囲または価値指標が、可能なあらゆる中間価値または中間実体を開示していることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態のチャンバ構造の断面図であり、チャンバ構造の垂直軸線に沿った断面図。
【図2】第2の実施形態のチャンバ構造の部分断面図であり、チャンバ構造の垂直軸線に沿った部分断面図。
【図3】第3の実施形態のチャンバ構造の部分断面図であり、チャンバ構造の垂直軸線に沿った部分断面図。
【図4】第4の実施形態のチャンバ構造の部分断面図であり、チャンバ構造の垂直軸線に沿った部分断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 壁部
2 リング
2a 外歯システム
3 チャンバ閉鎖部
4 駆動装置
4a モータ
4b 駆動軸
4c ピニオン
5 シール
6 昇降手段
7 歯車
8 歯付きリング
9 軸
10 スプライン
11 溝
12 外部要素
13 軸受
14 内部要素
15 リング
16 ばね
17 ディスク
18 ウォーム軸
19 テーブル
20 スピンドル
21 駆動軸
22 カバー
23 チャンバ
24 回転軸
25 移動軸
26 チャンバハウジング
27 カップリング
28 マニピュレータ
29 マニピュレータ
30 ロード/アンロード開口部
31 回転軸線
32 入口/出口開口部
33 ポンプ
34 環状面
35 ライン
36 軸受
37 シール
38 シール
39 突出部
40 貫通孔
41 凹部
42 貫通孔
43 ロック手段
44 歯システム
100 チャンバ構造
H 昇降手段6の上昇方向
S 昇降手段6の下降方向
F 外部要素12と内部要素14との間の間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム加工用のチャンバ構造(100)であり、
チャンバ(23)を画定しかつ少なくとも1つのロード/アンロード開口部(30)を有するチャンバハウジング(26)と、
前記ロード/アンロード開口部(30)を囲むように前記チャンバハウジング(26)に支持され、かつ前記ロード/アンロード開口部(30)に対して回転軸線(31)を中心に回転可能であるリング(2)と、
前記ロード/アンロード開口部(30)をシールして閉じるために前記リング(2)に接続可能でありかつ前記ロード/アンロード開口部(30)に対して前記リング(2)と共に回転可能であるチャンバ閉鎖部(3)と、
を備えるチャンバ構造(100)。
【請求項2】
前記リング(2)用の回転駆動装置(4)をさらに備える請求項1に記載のチャンバ構造。
【請求項3】
前記チャンバハウジング(26)と前記リング(2)との間に設けられるシール(5)をさらに備える請求項1または2に記載のチャンバ構造。
【請求項4】
前記リング(2)と前記チャンバ閉鎖部(3)とをロックするためのロック手段をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項5】
前記チャンバ閉鎖部(3)が板状である請求項1から4のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項6】
前記チャンバハウジング(26)が、流体を前記チャンバ(23)から排出するためのおよび流体を前記チャンバ(23)に流入させるための入口/出口開口部(32)を備え、ポンプ(33)が前記チャンバ(23)を真空にするために設けられる請求項1〜5のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項7】
前記チャンバ閉鎖部(3)を上昇および下降させるための昇降手段(6)をさらに備える請求項1から6のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項8】
前記チャンバ閉鎖部(3)が、
前記回転軸線(31)を中心に回転させるために前記リング(2)に接続可能な外部要素(12)と、
前記チャンバ閉鎖部(3)によって前記ロード/アンロード開口部(30)が閉じられている状態において、前記チャンバ(23)に対面する前記外部要素(12)の側に配置される内部要素(14)と、
を備える請求項1から7のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項9】
前記外部要素(12)に対して前記内部要素(14)を選択的に移動させてロックすることができる請求項8に記載のチャンバ構造。
【請求項10】
前記内部要素(14)に回転不能に接続される軸(9)と、
楔状の環状間隙(F)を形成する前記軸(9)に対向する前記外部要素(12)の環状面(34)と、
前記環状間隙(F)に相補的でありかつ前記軸(9)の長手方向軸線の周りでまた該長手方向軸線と同軸に移動可能であるように配置される楔状のリング(15)と、
前記内部要素(14)と前記外部要素(12)との間に強制嵌合を生じさせるために、前記軸(9)の前記長手方向軸線の方向において前記リング(15)を前記環状間隙(F)に付勢するばね(16)と、
を備えるカップリング(27)をさらに備える請求項8または9に記載のチャンバ構造。
【請求項11】
前記外部要素(12)に対する前記内部要素(14)の移動を選択的に許容するために、前記ばね(16)の前記付勢に抗して楔状の前記リング(15)を移動させることができる請求項10に記載のチャンバ構造。
【請求項12】
前記外部要素(12)の回転中に、前記内部要素(14)と前記外部要素(12)とが共に回転するように前記内部要素(14)を保持すべく、または前記外部要素(12)の回転とは独立して前記内部要素(14)を回転駆動すべく適合される外部装置(6)に、前記内部要素(14)が接続されるように適合される請求項9から11のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項13】
前記外部装置が前記昇降手段(6)である請求項12に記載のチャンバ構造。
【請求項14】
前記外部要素(12)または前記内部要素(14)に配置された歯付きリング(8)と、
前記外部要素(12)および前記内部要素の他の要素に保持され、前記歯付きリング(8)に係合し、前記外部要素および前記内部要素(12、14)の相対運動によって駆動できる少なくとも1つの歯車(7)と、
前記歯車(7)を回転させるために前記歯車(7)に接続される少なくとも1つの駆動軸(21)と、
をさらに備える請求項8から13のいずれか一項に記載のチャンバ構造。
【請求項15】
前記チャンバ(23)内にワークピースを位置決めするためのマニピュレータ(28、29)と、
前記マニピュレータ(28、29)の回転軸(24)および/または移動軸(25)を駆動するために前記駆動軸(21)に接続されかつ前記マニピュレータ(28、29)に接続されるウォーム軸(18)と、
をさらに備える請求項14に記載のチャンバ構造。
【請求項16】
前記ウォーム軸が、前記駆動軸(21)の回転を複数の被駆動軸(24、25)の1つ以上の軸に選択的に伝達する前記チャンバ(23)内の作動手段である請求項14または15に記載のチャンバ構造。
【請求項17】
前記マニピュレータ(28、29)の複数の動作位置に応じて対応する複数の溝(11)が前記軸(9)の適切な箇所に設けられ、前記昇降手段(6)の上昇時にスプライン(10)が前記対応する複数の溝に係合可能であるように適合される請求項15または16に記載のチャンバ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−4547(P2008−4547A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−158006(P2007−158006)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(507198738)オール ウェルディング テクノロジーズ アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】All Welding Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Emmy−Noether−Strase 2, DE−82216 Maisach Germany
【Fターム(参考)】