説明

電子ビーム硬化される非官能化シリコーン感圧接着剤

シリコーン感圧接着剤の調製方法が記載される。当該方法は、非官能化シリコーン材料(例えば、シリコーン流体及びゴム)を電子ビーム硬化することを含む。電子ビーム架橋の前に非官能化シリコーン材料をホットメルト処理すること、及びこのような方法によって調製される架橋接着剤もまた記載される。非官能化シリコーン材料をホットメルトコーティング及び電子ビーム硬化することによって調製される接着剤、及びこのような接着剤を組み込む接着物品もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はシリコーン感圧接着剤に関する。より詳細には、本開示は、非官能化シリコーン材料を電子ビーム硬化することによる感圧接着剤の製造方法を記載している。本開示はまた、電子ビーム照射に暴露して硬化される非官能化シリコーン材料から調製されるシリコーン感圧接着剤、及びそのような接着剤を組み込む物品を記載している。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は重要な部類の材料である。一般に、PSAは軽い圧力(例えば、指圧)で基材に接着し、典型的には、それらの最大付着強度を得るために後硬化(例えば、熱又は放射線)を必要としない。例えば、アクリル、ゴム、及びシリコーンベースの系などの種々のPSAの化学が利用可能である。シリコーンPSAは、次の有用な特徴の1つ以上を提供することができる:低表面エネルギー面への接着、短い滞留時間での迅速な接着、幅広い使用温度(即ち、最高最低気温での性能)、耐候性(紫外線放射、酸化、及び湿度への耐性を含む)、応力変化(例えば、応力の作用形態、頻度、及び角度)に対する低減された感度、及び薬品(例えば、溶媒及び可塑剤)及び生物学的物質(例えば、菌及びカビ)への耐性。
【0003】
一般に、シリコーン感圧接着剤は、重合体又はゴムと粘着付与樹脂との間の縮合反応によって形成されてきた。重合体又はゴムは、典型的には、高分子量のシラノール末端ポリ(ジオルガノシロキサン)材料、例えば、シラノール末端ポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)又はポリ(ジメチルメチルフェニルシロキサン)である。粘着付与樹脂は、典型的には、トリメチルシロキシ基で末端封止された三次元ケイ酸塩構造である。重合体又はゴムの末端シラノール基に加え、粘着付与樹脂はまた、残留シラノール官能基を有してもよい。
【0004】
このような系は高分子量の出発物質に依存するので、室温でコーティングするのに好適な粘度を得るために溶媒で希釈する必要がある。典型的なコーティング可能な溶液は、溶媒(例えば、トルエン又はキシレンなどの芳香族溶媒)中に60重量%未満の固形分を含有する。従来のシリコーンPSAを使用する場合、揮発性有機化合物(VOC)含有量が50%超過であるのが一般的であるように、コーティングの前に追加の溶媒を加えてもよい。
【0005】
シリコーンPSAの低VOC化のための多くのアプローチが研究されてきた。例えば、反応性希釈剤を用いた水性エマルション系及び液状無溶剤系(即ち、反応基を有する低分子量分子)が研究されてきた。ホットメルト配合物(典型的には硬化されない)が試みられてきた。
【0006】
これらの進歩にもかかわらず、シリコーンPSAの低VOC化のためのより確固とした方法が依然として必要とされている。用いられるシリコーン化学の更なる多種多様性を可能にし、より広範囲な最終用途性能特性を可能にする低VOC化プロセスも必要とされている。
【0007】
一部のシリコーンPSA配合物は、溶媒除去後に許容可能な性能を提供するが、一部の系は更なる架橋から利益を得る。従来のシリコーンPSAは、特定タイプの触媒を使用する熱処理によって硬化されてきた。例えば、白金触媒は付加硬化系とともに使用され、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)は水素引き抜き型(hydrogen-abstraction)硬化系とともに使用され、スズ触媒は湿気/縮合型硬化系とともに使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらアプローチのいくつかは、シロキサン主鎖に結合している有意な数の反応性官能基を必要とする。例えば、白金触媒による付加硬化系は、一般に、ケイ素結合ビニル官能基とケイ素結合水素との間のヒドロシリル化反応に依存する。広くは、例えば、特定官能基の存在が最終用途特性を妨げて、PSAの最終的な適用性を制限する可能性がある場合には、架橋を達成するためにこれら官能基の存在を必要としないシリコーン接着剤系を有することが望ましくあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
要約すると、一態様において、本開示は、架橋シリコーン感圧接着剤を製造する方法を提供する。当該方法は、非官能性ポリシロキサンゴムを含む組成物を基材に適用することと、組成物を電子ビーム照射に暴露することによって非官能性ポリシロキサンを架橋することとを含む。いくつかの実施形態において、組成物は押し出し成型される。
【0010】
いくつかの実施形態において、組成物は複数の非官能性ポリシロキサンゴムを含み、非官能性ポリシロキサン流体を更に含んでもよい。いくつかの実施形態において、非官能性ポリシロキサンの1つ以上はハロゲン化(例えば、フッ素化)される。いくつかの実施形態において、非官能性ポリシロキサンの少なくとも1つはポリ(ジアルキルシロキサン)であり、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)である。いくつかの実施形態において、非官能性ポリシロキサンの少なくとも1つは芳香族シロキサンである。
【0011】
いくつかの実施形態において、当該組成物は、触媒及び反応開始剤を実質的に含まない。いくつかの実施形態において、当該組成物は、粘着付与剤(例えば、MQ樹脂)を更に含む。いくつかの実施形態において、当該組成物は、10重量%未満の官能化シリコーンを含む。
【0012】
別の態様において、本開示は架橋シリコーン感圧接着剤を提供する。このような接着剤は、本開示に記載の方法のいずれかにしたがって製造され得る。
【0013】
更に別の態様において、本開示は、基材の第1の主表面に付着される第1の接着剤を含むテープを提供する。第1の接着剤は、本明細書に開示されるE−ビーム架橋されたシリコーン感圧接着剤の任意の1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、基材は発泡体を含む。いくつかの実施形態において、基材は高分子フィルムを含む。いくつかの実施形態において、テープは、基材の第2の主表面に付着される第2の接着剤を更に含む。いくつかの実施形態において、第2の接着剤は、本明細書に開示されるE−ビーム架橋されたシリコーン感圧接着剤の任意の1つ以上を更に含むこともできる。
【0014】
本開示の上記概要は、本発明の各実施形態を記載することを目的としない。また、本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示のいくつかの実施形態による代表的な発泡体芯テープを示す図。
【図2】本開示のいくつかの実施形態による代表的な架橋ポリシロキサン発泡体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般に、本開示のシリコーン感圧接着剤は非官能化シリコーン材料から形成される。一般に、非官能化シリコーン材料は、低分子量のシリコーンオイル、高分子量のゴム、又は樹脂、例えば、脆い固体樹脂であってもよい。いくつかの実施形態では、非官能化シリコーン材料は、脂肪族及び/又は芳香族置換を有するシロキサン主鎖を示す次の式によって表わされる線状物質であり得る。
【0017】
【化1】


(式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、アルキル基及びアリール基からなる群から選択され、各R5はアルキル基であり、n及びmは整数であり、m又はnの少なくとも一方はゼロでない。)いくつかの実施形態では、アルキル基又はアリール基の1つ以上は、ハロゲン置換基、例えば、フッ素を含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アルキル基の1つ以上は、−CHCHであってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、R5はメチル基であり、即ち、非官能化シリコーン材料はトリメチルシロキシ基を末端とする。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、nはゼロである、即ち、この物質はポリ(ジアルキルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、アルキル基はメチル基である、即ち、ポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、R2はアリール基であり、nはゼロである、即ち、この物質はポリ(アルキルアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1はメチル基であり、R2はフェニル基である、即ち、この物質はポリ(メチルフェニルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、R3及びR4はアリール基である、即ち、この物質はポリ(ジアルキルジアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はメチル基であり、R3及びR4はフェニル基である、即ち、この物質はポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、非官能化シリコーン材料は分枝状でもよい。例えば、式(1)を参照すると、R1、R2、R3、及び/又はR4基の1つ以上は、アルキル又はアリール(ハロゲン化アルキル又はアリールを含む)置換基と末端R5基とを有する直鎖状又は分岐状のシロキサンであってもよい。
【0020】
前述のシリコーン接着剤系とは対照的に、本開示の架橋シロキサンネットワークを得るために、出発物質のシロキサン主鎖に結合している特定官能基(例えば、水素化物基、ヒドロキシル基、ビニル基、アリル基、又はアクリル基)の存在は必要ない。しかしながら、非官能化シリコーン材料を生成する通常の過程において、残留官能基、特に水素化物及びヒドロキシ基は末端位にとどまる(即ち、R5基のように)。したがって、本明細書で使用するとき、「非官能化シリコーン材料」とは、R1、R2、R3、及びR4基が非官能基であり、かつR5基の少なくとも90%が非官能基である材料である。いくつかの実施形態では、非官能化シリコーン材料は、R5基の少なくとも98%、例えば、少なくとも99%が非官能基である材料である。本明細書で使用するとき、「非官能基」は、炭素原子、水素原子、及びいくつかの実施形態では、ハロゲン(例えば、フッ素)原子からなるアルキル基又はアリール基である。
【0021】
一般に、低分子量で低粘度の物質は流体又は油と呼ばれ、高分子量で高粘度の物質はゴムと呼ばれるが、これらの用語の間に厳格な区別は存在しない。本明細書で使用するとき、用語「流体」及び「油」は、25℃における動的粘度が1,000,000mPa・秒以下(例えば、600,000mPa・秒未満)の物質を指し、25℃における動的粘度が1,000,000mPa・秒を超える(例えば、少なくとも10,000,000mPa・秒)物質は「ゴム」と呼ばれる。
【0022】
本開示の感圧接着剤は、非官能化シリコーン材料と適切な粘着付与樹脂とを混合し、得られた混合物をホットメルトコーティングし、電子ビーム(E−ビーム)照射で硬化することによって調製される。一般に、感圧接着剤の処方に有用な任意の既知の添加物(例えば、染料、顔料、充填剤、難燃剤、微小球(例えば、膨張性微小球)などを含めることもできる。
【0023】
一般に、任意の既知の粘着付与樹脂を使用することができ、例えば、いくつかの実施形態では、ケイ酸塩粘着付与樹脂を使用することができる。いくつかの例示的接着剤組成物においては、複数のケイ酸塩粘着付与樹脂を使用して、望ましい性能を得ることができる。
【0024】
好適なケイ酸塩粘着付与樹脂には、次の構造単位:M(即ち、一価のR’SiO1/2単位)、D(即ち、二価のR’SiO2/2単位)、T(即ち、三価のR’SiO3/2単位)、及びQ(即ち、四価のSiO4/2単位)、並びにこれらの組み合わせで構成されている樹脂が挙げられる。典型的な例示的ケイ酸塩樹脂類としては、MQケイ酸塩粘着付与樹脂、MQDケイ酸塩粘着付与樹脂、及びMQTケイ酸塩粘着付与樹脂が挙げられる。これらのケイ酸塩粘着付与樹脂は通常、100〜50,000グラム/モル、例えば、500〜15,000グラム/モルの範囲内の数平均分子量を有し、かつ一般にR’基はメチル基である。
【0025】
MQケイ酸塩粘着付与樹脂は共重合体樹脂であり、各M単位はQ単位に結合しており、各Q単位はその他のQ単位の少なくとも1つに結合している。Q単位のいくつかは、その他のQ単位のみに結合している。しかしながら、いくつかのQ単位はヒドロキシルラジカルに結合して、HOSiO3/2単位(即ち、「TOH」単位)をもたらし、したがって、いくつかのケイ酸塩粘着付与樹脂のケイ素結合ヒドロキシル含量を説明できる。
【0026】
ケイ素結合ヒドロキシル基(即ち、シラノール)のMQ樹脂上の濃度は、ケイ酸塩粘着付与樹脂の重量に基づいて、1.5重量%以下、1.2重量%以下、1.0重量%以下、又は0.8重量%以下まで減らすことができる。これは、例えばヘキサメチルジシラザンをケイ酸塩粘着付与樹脂と反応させることによって実現することができる。このような反応は、例えばトリフルオロ酢酸によって触媒してもよい。あるいは、トリメチルクロロシラン又はトリメチルシリルアセトアミドをケイ酸塩粘着付与樹脂と反応させてもよく、この場合、触媒は必要ではない。
【0027】
MQDシリコーン粘着付与樹脂は、M、Q及びD単位を有するターポリマーである)。いくつかの実施形態では、D単位のメチルR’基のいくつかは、ビニル(CH2=CH−)基(「DVi」単位)によって置き換えることができる。MQTケイ酸塩粘着付与樹脂は、M、Q及びT単位を有するターポリマーである。
【0028】
好適なケイ酸塩粘着付与樹脂は、Dow Corning(例えば、DC 2−7066)、Momentive Performance Materials(例えば、SR545及びSR1000)、Wacker Chemie AG(例えば、WACKER−BELSIL TMS−803)、及びRhodia Siliconesなどの供給源から市販されている。
【0029】
必ずしも必要ではないが、いくつかの実施形態では、様々な既知の添加物のいずれかが含められてもよい。代表的な添加剤には、架橋剤、触媒、定着増強剤、染料、顔料、充填剤、レオロジー変性剤、難燃剤、流動添加剤、界面活性剤、微小球(例えば、膨張性微小球)等が挙げられる。
【0030】
非官能化シリコーン材料、粘着付与樹脂、及びあらゆる任意の添加剤を、ホットメルトコーティング及び硬化の前に、種々の既知の手段のいずれかを用いて混合してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、様々な構成成分は、混合機、配合機、粉砕機、押出成形機等の一般的な装置を用いてプレブレンドされてもよい。いくつかの実施形態では、ホットメルトコーティング処理は押出成形を含む。このような実施形態では、様々な構成成分は、様々な組み合わせで又は独立して、押出成形機の1つ以上の個別のポートを通して加えられ、押出成形機の中でブレンドされ(例えば、溶融混合され)、押し出されてホットメルトコーティング組成物を形成してもよい。
【0031】
形成方法に関わらず、ホットメルトコーティング組成物は、E−ビーム照射への暴露によって硬化される。E−ビーム硬化の様々な手順が周知である。硬化は、電子ビームを供給するために使用される特定の装置に依存し、当業者は使用される装置における照射量補正モデルを規定することができる。
【0032】
市販の電子ビーム発生装置は容易に入手可能である。本明細書に記載の実施例では、照射処理は、モデルCB−300電子ビーム発生装置(Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)から入手可能)で行われた。一般に、支持体フィルム(例えば、ポリエステルテレフタレート支持体フィルム)は不活性チャンバを通過する。いくつかの実施形態では、両面にライナー(例えば、フルオロシリコーン剥離ライナー)を有した状態(「閉面」)の未硬化材料の試料が支持体フィルムに取り付けられ、約20フィート/分(6.1メートル/分)の固定速度で搬送されてもよい。いくつかの実施形態では、未硬化材料の試料は、反対面にライナーがない状態で(「開放面」)、1枚のライナーに適用されてもよい。
【0033】
未硬化材料は、一方の側から剥離ライナーを通してE−ビーム照射に暴露されてもよい。単一層積層接着剤タイプのテープの製造に関しては、電子ビーム装置に1回通すだけで十分であり得る。発泡体テープなどのより厚みのある試料は、テープの断面を通して硬化勾配を呈する場合があるので、未硬化材料を両側から電子ビームに暴露するのが望ましい場合がある。
【0034】
シリコーン材料を硬化する前述の方法とは異なり、本開示の方法は、触媒又は反応開始剤を使用する必要がない。したがって、本開示の方法は、そのような触媒又は反応開始剤を「実質的に含まない」組成物を硬化するために用いられ得る。本明細書で使用するとき、組成物が「有効量」の触媒又は反応開始剤を含んでいない場合、組成物は、「触媒又は反応開始剤を実質的に含まない」。よく理解されているように、触媒又は反応開始剤の「有効量」は、触媒又は反応開始剤の種類、硬化性材料の組成、及び硬化方法(例えば、熱硬化、UV硬化等)などの様々な要因に依存する。いくつかの実施形態では、もしも触媒又は反応開始剤の量が、同じその触媒又は反応開始剤を含んでいない組成物の同じ硬化条件における硬化時間に対して組成物の硬化時間を少なくとも10%低減しない場合、特定の触媒又は反応開始剤は「有効量」で存在していない。
【0035】
試験方法
溶媒膨潤試験。ガラス製のバイアル瓶の中で、材料の1グラムの試料を10グラムのトルエンに添加した。試料を2分間振盪し、室温で4日間放置した。次に、いくらかの不溶解ゲルがあるかどうかを判定するために、得られた溶液を目視検査した。次に、溶液を濾過し、不溶解材料を分離し、アルミ製の鍋の中で乾燥した。次の等式にしたがって各試料の抽出可能量を乾燥重量当たりで算出した。
【0036】
【数1】

【0037】
剥離試験。インストロン引張試験機を使用して剥離接着力を測定した。接着剤試料を、幅1.27cm及び長さ11.4cmに切り離し、接着剤の主表面の一方を使用して厚さ0.127mm及び幅1.6cmのアルミホイル裏材に積層した。次に、得られたテープを、4.5ポンド(2kg)硬質ゴムローラを合計4回通過させて清潔なパネルに適用した。試験前に試料を、(1)室温(22℃)及び相対湿度50%で3日間、又は(2)室温(22℃)及び相対湿度50%で20分間、のいずれかの間経年処理した。次に、パネルをインストロン引張試験機に装着し、角度90度、速度30.5cm/分でテープを引き剥がした。結果は0.5インチ(1.27cm)当たりの重量ポンドで測定され、N/cmに変換された(即ち、3.5N/cm=1lbf/0.5インチ)。
【0038】
剪断力試験。テープの両縁部がパネルの両縁部と同一の広がりを持つように、2.54cm×1.27cmのテープの試料を、2.54cm×5.08cmのパネルに積層した。パネルを1.27cm重ねることで、反対方向に延びるテープとパネルの自由端とを覆った。パネルの一方の端を、70℃に設定したオーブン内の棚に、テープ試料が剪断応力下にあるように、もう一方のパネルの端部の底から吊り下げた500グラムの重りと共に吊り下げた。下方のパネルが吊り下げパネルから剥がれる時間を10,000分まで測定した。破損する迄の時間を、分で記録した。10,000分間残存した試料では、試験を中止し、値「10,000+」を記録した。
【0039】
剥離試験及び剪断力試験は、ポリプロピレンパネル及び塗装されたパネルの両方を使用して実施された。ポリプロピレンパネルはStandard Plaque Inc.(Melvindale,MI)から入手した。塗装パネルは、ACT(Hilldale,MI)からのAPR46336であると確認された。入手したとき、これらの塗装パネルは、典型的な自動車塗装系を使用して準備されていた。ベースエレクトロコートと、着色ベースコートと、低表面エネルギーのカルバメート架橋未着色アクリルベースクリアコートとを含む自動車塗装系を、ステンレス鋼パネルに塗布した。得られた試験表面は、「Accu−Dyne」溶液を使用して測定した場合、32ダイン/cmの表面エネルギーを有していた。
【実施例】
【0040】
本明細書中に記載の実施例では、照射処理を、不活性チャンバを通過する0.003インチ(0.076mm)厚、12インチ(30.48cm)幅のポリエステルテレフタレート支持体フィルムを装備したモデルCB−300電子ビーム発生装置(Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)から入手可能)で行った。両面にポリエステル剥離ライナーの付いた材料の試料(即ち、閉面構造)を、テープが一方の面からポリエステル剥離ライナーを通じて処理されるように、支持体フィルムに貼付して約20フィート/分(6.1メートル/分)の速度で搬送した。電子ビームチャンバ内の酸素レベルは、50〜100ppmの範囲に制限された。照射窓とウェブ通路との間の標準的な窒素ギャップは47mmであった。加速電圧及び電子ビーム線量は各実施例について報告された。
【0041】
試料を処理する前に、電子ビーム装置は、ASTM E1818にしたがって、Far West Technologies,Inc.(Goleta,CA)から市販されている、放射線着色剤を含有する高分子フィルムである10ミクロン及び45ミクロン線量計を用いた線量計測により検量した。検量により、加速電圧とビーム電流との関数としての、表面線量及び照射量/深さプロファイルの測度が与えられた。実際の試料の照射量は、基材1平方センチメートルに堆積したエネルギーを試料の密度で割ったものであることから、線量計とは異なる密度を有する基材のための照射量−深さプロファイルが正規化された。照射量−深さプロファイルは、テープ構造物(典型的には、ライナーと、特定組成の発泡体芯と、発泡体芯上の特定組成の任意の表面薄層とを有するもの、又は両面に2枚のライナーを備えた薄い接着剤の単一層を有するもの)それぞれについて計算して、電子ビームが浸透してテープの中心に到達しなければならない異なる層の密度の差を明らかにした。
【0042】
実施例1〜5は、電子ビーム(E−ビーム)照射が非官能化シリコーン材料に与える影響を示している。表1に要約されているように、分子量及び運動粘度が異なる5種類の非官能化シリコーン材料をGelest,Inc.(Morrisvile,PA)から入手し、それらの商標名で識別されている。各材料は、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、具体的には、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン)であった。
【0043】
非官能化シリコーン材料のそれぞれを、フルオロシリコーン剥離ライナーの上に、ナイフコータを使用して3ミル(76ミクロン)のギャップでコーティングすることによって、E−ビーム硬化試料を調製した。コーティングされた試料を、4.005ジュール(250kev)の加速電圧及び9ミリラドの線量を用いて、50ppm未満の酸素を含有する雰囲気にてE−ビーム硬化した。
【0044】
得られた試料を溶媒膨潤試験に供した。E−ビーム硬化試料のそれぞれに関して観察されたゲル化挙動及び抽出可能材料のパーセンテージが表1に要約されている。比較を目的として、未硬化の非官能化シリコーン材料のゲル化挙動及び抽出可能材料のパーセンテージもまた判定した。未硬化材料のそれぞれは溶解し、100%抽出可能材料が得られた。
【0045】
【表1】


(a)製造業者によって報告された分子量。運動粘度測定値から導かれ、数平均分子量に相関すると記載されている。
【0046】
実施例6〜11は、感圧接着剤の処方の際にE−ビーム硬化された非官能化シリコーン材料を使用する例を示している。商標名で識別される材料の説明が表2に提供されている。
【0047】
【表2】


(b)運動粘度は報告されなかったが、この材料は高粘度ゴムであった。
【0048】
非官能化シリコーン材料のそれぞれと、WACKER−BESIL TMS−803 MQ粘着付与樹脂(Wacker Chemie AGより入手)とを50/50重量比で混合して、硬化接着剤試料を調製した。熱及び圧力を用いて2枚のフルオロシリコーンライナーの間にシリコーン材料を押圧し、2ミル(50ミクロン)乾燥厚さを得た。次に、フルオロシリコーンライナーで支持された状態で、2枚のライナー(閉面)の間でシリコーン材料を照射した。これら積層体を、特定の線量条件で(50ppm未満の酸素を有する窒素雰囲気下で)E−ビーム照射した。3〜18ミリラドのE−ビーム線量に試料を暴露した。次に、硬化した試料を塗装パネルを使用した剥離試験に供した。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
高分子量の(高粘度)非官能化PDMSゴム(EL Polymer NA)及びMQ粘着付与樹脂(WACKER−BESIL TMS−803)(共にWacker Chemie AGから入手)をベースとする組成物を使用して、E−ビーム線量の範囲にわたる剪断力及び剥離性を評価した。実施例12〜17は、低分子量の(低粘度)非官能化シリコーンオイル(Wacker Chemie AGからのAK 500000)の量を変化させることによる影響を示しているが、この場合、PDMSゴム又はMQ粘着付与樹脂のいずれかの相対量が対応して低下する。接着剤組成は表4に要約されている。
【0051】
【表4】

【0052】
この試料を、ポリプロピレンパネル(表5a)及び塗装パネル(表5b)を使用した剥離試験に供した。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
実施例18〜20は、高粘度の非官能化シリコーン重合体(EL Polymer)及びMQ粘着付与剤(TMS−803)と共に、低粘度のポリ(アルキルアリール)シロキサン非官能化シリコーンオイル(ポリメチルフェニルシロキサン(「PMPS」、#801;(CAS番号63148−58−3)、Scientific Polymer Products,Inc.(Ontario,New York)から入手可能)を含ませることの影響を示している。PMPS材料は、分子量約2600及び粘度500csを有していた。接着剤組成が表6に要約されている。
【0056】
【表7】

【0057】
試料は、様々な線量でE−ビーム硬化され、ポリプロピレンパネル及び塗装パネル(表7a参照)を使用した剥離試験に供された。硬化した試料はまた、ポリプロピレンパネル及び塗装パネル(表7b)を使用した剪断力試験にも供された。
【0058】
【表8】

【0059】
【表9】

【0060】
いくつかの実施形態では、本開示のシリコーンPSAは、発泡体芯テープの薄い接着剤層として有用である。代表的な発泡体芯テープが図に示されている。テープ10は、発泡体芯20とシリコーンPSA層30とを含んでいる。PSA層と発泡体芯との間に任意のプライマー層40が介在している。いくつかの実施形態では、発泡体芯20の反対側の表面に第2の接着剤層50が貼り合わされていてもよい。ここでも、いくつかの実施形態では、接着剤層を発泡体芯に固着するのを助けるためにプライマー層が使用されてもよく、又は、図1に示されるように、接着剤層50は発泡体芯20に直接付着されてもよい。発泡体芯テープに加え、いくつかの実施形態では、本開示のシリコーンPSAは、内部支持体(例えば、スクリム)を有するか又は有さないかのいずれかで、無支持フィルムとして使用されてもよい。
【0061】
代表的な発泡体芯は、アクリレート、シリコーン、ポリオレフィン、ポリウレタン、及びゴム(例えば、ブロック共重合体)の1つ以上を含む。これらの材料は、任意の既知の技法、例えば、球体(例えば、膨張性微小球などのガラス及び高分子微小球)を含める、起泡する、化学発泡剤を使用するなどの技法によって形成されてもよい。いくつかの実施形態では、発泡体芯(例えば、シリコーン発泡体芯)は、シリコーンPSAとは別に、又はシリコーンPSAと同じ工程において、E−ビーム硬化されてもよい。
【0062】
シリコーンPSAは、他の単一コーティングされた及び両面コーティングされたテープ構造物の一部として用いられてもよい、即ち、支持層、例えば、紙、高分子フィルム(例えば、ポリテトラフルオロエチレン又はウレタン重合体などのフッ素化重合体)、あるいは金属箔に、直接又は間接的に付着されてもよい。
【0063】
実施例12〜17及び18〜20の接着剤組成を使用する発泡体芯テープ試料を次のように調製した。熱及び圧力を用いて2枚のフルオロシリコーンライナーの間にシリコーン材料を押圧し、2ミル(50ミクロン)乾燥厚さを得た。次に、フルオロシリコーンライナーで支持された状態で、2枚のライナー(閉面)の間でシリコーン材料を照射した。これら積層体を、特定の線量条件で(50ppm未満の酸素を有する窒素雰囲気下で)E−ビーム照射した。暴露の後、一方のライナーを除去し、ゴムで裏打ちされたローラー及び手の圧力を用いて、ACRYLIC FOAM TAPE 5666(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能なアクリル発泡体芯を有するセルフスティックテープ)の片面に積層した。E−ビーム装置は、ブロードバンド・カーテン型電子ビーム処理装置(PCT Engineered Systems,LLC(Davenport,IA))であった。
【0064】
塗装パネルを使用して、得られた発泡体芯テープの薄いシリコーン接着剤の剥離接着力を測定した。結果は表8に要約されている。
【0065】
【表10】

【0066】
上記の方法及び製品は感圧接着剤に関するが、同様の方法を用いて、非官能化シリコーン材料から非感圧材料を作製してもよい。E−ビーム架橋ポリシロキサンネットワークを有するこのような材料は、フィルム及びコーティングを包含する。
【0067】
本開示のE−ビーム硬化された非官能化シリコーン接着剤は、高温及び低温用途などの特定の利点をシリコーン接着剤が提供する用途を含む、種々の用途で使用され得る。
【0068】
繊細な表面が汚れないようにするために、及び引っかき傷や染みなどの使用による損傷ができないようにするために、取り付けやすい保護フィルムを必要とする場合が多い。このような用途を目的として多くの接着剤付き透明フィルムが使用されてきた。しかしながら、これらの用途で使用される接着剤は固有の要件を有する。これらは、接着剤と保護される面との間に滑らかで気泡のない付着面を得るための特別なツール又は工程段階を必要としないで、簡単に適用されなければならない。接着剤はまた、保護面への適切な付着状態を形成しなければならない。場合によっては、接着剤で付着された保護層を、保護されることが意図されるその下の表面から、きれいにかつ簡単に除去することができるように、経時的に堆積する接着剤がほとんど又は全くないのが望ましくあり得る。例えば、ある保護フィルムが損傷した場合、その保護フィルムを簡単に除去しかつ交換するのが望ましくあり得る。最後に、保護物品、例えば、保護フィルム及び接着剤は光学的に透明である(即ち、材料は可視スペクトルの入射光線の少なくとも97%を透過する)のが、多くの場合望ましい。
【0069】
簡単だが欠陥のない取り付けための一般的な方法には、気泡及びしわのない適用を助けるために、水/イソプロピルアルコールで活性化される速乾性接着剤(塗料保護フィルムで使用されるものなど)を使用することが挙げられる。しかしながら、特別な溶液及び装置(例えば、スキージ)が必要である。あるいは、接着剤とその下の表面との間に空気通路を形成して、空気抜きを達成しかつ付着面に空気が溜まるのを防止するために、構造化接着剤が使用されてきた。しかしながら、接着剤の構造は、望ましくない光学的効果をもたらす可能性がある。これらのアプローチのいずれも、精密なLCDディスプレイ、特にタッチセンサ方式のLCDディスプレイ用のスクリーンプロテクタに最適ではない。
【0070】
近年、自然発生的に浸潤することによって滑らかな表面上に事実上自己適用する自己浸潤型接着剤(self wetting adhesive)が、特にスクリーンプロテクタ用の保護フィルムとして開発されている。自己浸潤型接着剤は非粘着性エラストマーで製造されてきた。驚くべきことに、本発明者らは、いくつかの実施形態において、本開示のシリコーン接着剤を自己浸潤用途で使用することができることを発見した。
【0071】
自己浸潤型接着剤の実施例
実施例SW−1。ガラス製の瓶の中で、50gのEL Polymer NA(Wacker Chemie,AG)を100gのトルエンに添加した。瓶を密封してローラーの上に24時間置いた。溶液を様々なフィルムの上に、ナイフコータによって(ある厚さまで)コーティングした。フィルムは、国際公開特許WO2009/076389(Hao、2009年6月18日発行)に記載されている方法にしたがって作製された、様々な厚さのハードコート(HC)を有する反射防止フィルであった。(「光沢又はつや消しARフィルム上のSW−1」)。コーティングされたフィルムを70℃で15分間乾燥させた。次に、乾燥した試料を、加速電圧4.80ジュール(300keV)及び線量8ミリラドで、窒素雰囲気下(<100ppm酸素)において、外気にさらした状態でE−ビーム硬化した。
【0072】
ステンレス鋼基材の代わりにガラス基材を用いたこと以外は、ASTM3330−90に記載の試験方法と同様の剥離接着力試験を行った。硬化接着剤フィルムを1.27センチメートル×15.2センチメートルのストリップに切断した。次に、2キログラムのローラーをストリップの上に一度通過させ、各ストリップを10センチメートル×20センチメートルの清潔な溶媒洗浄されたガラス製試験片に付着させた。付着された組立品を室温で1週間(7d−RT)、及び70℃で1週間(7d−HT)保持した。試料の180°剥離接着力に関して、IMASS滑り/剥離試験機(モデル3M90、Instrumentors Inc.(Strongsville,OH)から市販)を使用し、0.30メートル/分(12インチ/分)の速度で10秒間のデータ収集時間にわたって試験した。3つの試料を試験した。報告された剥離接着力値は、3つのサンプルのそれぞれの剥離接着力値の平均である。
【0073】
浸潤試験手順。硬化接着剤フィルムを、幅2.54センチメートル及び長さ10.16センチメートルに切断し、ガラス基材への自己積層によるラミネーションの容易さに関して試験した。ストリップの一端を指圧でガラスに付着し、長さ10.16センチメートルのフィルムの残りの部分をガラス基材の上にもたれ掛けさせた。ガラスに接触すると、接着剤は基材を自己浸潤し始めた(即ち、空気を移動させてガラスに付着する)。浸潤時間を、長さ10.16センチメートルのフィルム接着剤全体がガラス基材を浸潤して、10%未満の面積が気泡を封じ込めるのに必要な時間として記録した。
【0074】
結果は、いくつかの市販の製品に関する結果と共に表9に要約されている。
【0075】
【表11】


(a)Digital Lifestyle Outfittersより入手
(b)Best Buy,Inc.より入手
(c)Zaggより入手
【0076】
粘着付与剤充填レベルが浸潤時間及びガラスへの剥離接着力に与える影響を評価した。自己浸潤型接着剤の実施例を、表10に要約されている組成にしたがって調製した。試料は、様々な量のPDMSゴム(EL Polymer NA)とMQ粘着付与樹脂(TMS−803)とを含んだ。各実施例で、ガラス瓶の中で材料を100gのトルエンに添加した。瓶を密封してローラーの上に24時間置いた。溶液をナイフコータによってフィルム上にコーティングした。コーティングされたフィルムを70℃で15分間乾燥させた。次に、乾燥した試料を4.80ジュール(300keV)及び8ミリラドでE−ビーム硬化した。
【0077】
【表12】


)EL−P−NA=EL Polymer NA
【0078】
粘着付与された及び粘着付与されていない接着剤への鉱物油の添加が浸潤時間及びガラスへの剥離接着力に与える影響を評価した。自己浸潤型接着剤の実施例を、表11に要約されている組成にしたがって調製した。各実施例で、ガラス瓶の中で材料を100gのトルエンに添加した。瓶を密封してローラーの上に24時間置いた。溶液をナイフコータによってフィルム上にコーティングした。コーティングされたフィルムを70℃で15分間乾燥させた。次に、乾燥した試料を4.80ジュール(300keV)の加速電圧及び6ミリラドの線量でE−ビーム硬化した。
【0079】
【表13】

【0080】
E−ビーム線量が浸潤時間に与える影響を評価した。自己浸潤型接着剤の実施例を、表12Aに要約されている組成にしたがって調製した。各実施例で、ガラス瓶の中で材料を100gのトルエンに添加した。瓶を密封してローラーの上に24時間置いた。
【0081】
【表14】

【0082】
溶液をナイフコータによってフィルム上にコーティングした。コーティングされたフィルムを70℃で15分間乾燥させた。乾燥したコーティングされたフィルムを4.80ジュール(300keV)の加速電圧及び表12Bに記載の線量でE−ビーム硬化した。各試料の浸潤時間を評価した。
【0083】
【表15】

【0084】
官能化シリコーン材料を使用して比較例を調製した。シラノール末端ポリジメチルシロキサン(GelestからDMS−S42として入手)をナイフコータによってフィルム上にコーティングした。コーティングされた試料を4.80ジュール(300keV)及び6ミリラドで更にE−ビーム硬化した。硬化した官能化シリコーンは100秒後にガラスパネルを浸潤しなかった。
【0085】
本発明者らはまた、いくつかの実施形態において、本開示のE−ビーム硬化された非官能化シリコーン材料を使用してシリコーン発泡体を製造することができることを発見した。シリコーン発泡体は、弾力、広範な使用温度安定性(例えば、−50℃〜約200℃)、不活性、及び固有の難燃性などの特異的性質を提供する。一般に、シリコーン発泡体は、セル成長又は膨張(即ち、発泡プロセス)及びセル安定化(即ち、架橋プロセス)が同時に起こるプロセスで製造されてきた。シリコーン発泡体の最も一般的なセル膨張化学は、化学的発泡剤、例えば、アゾ含有化合物又は架橋反応の副産物の凝縮気体に依存する。
【0086】
これと反対に、本開示のE−ビーム硬化プロセスを用いることにより、セル膨張又は発泡プロセス、及びセル安定化又は架橋プロセスを別々に最適化することができる。いくつかの実施形態では、このことにより、発泡体セルサイズを均一に分布した状態でセル構造の改善された制御をもたらすことができる。E−ビーム硬化されたシリコーン発泡体は、剛性の非高分子中空微小球(例えば、ガラス気泡)及び膨張性高分子中空微小球の両方を含む微小球から作製され得る。
【0087】
発泡体の実施例
【0088】
【表16】

【0089】
20gのEL POLYMER NA(Wackerより入手)、3gのTMS−803(Wackerより入手)、及び2gのMICROPEARL F100膨張性微小球(Henkelより入手)を、93℃(200°F)及び16RPMでBrabenderの中で混合して実施例F−1を調製した。次に、この混合物を204℃(400°F)で加熱プレッサー(Carver Laboratory Press)を用いて膨張させた。得られた厚さ1.65mm(65ミル)の発泡シートは乳白色であり、かつ自己粘着性であった。次に、この発泡シートを4.80ジュール(300keV)及び6ミリラドで両側からE−ビーム照射した。このように作製された硬化自己粘着性シリコーン発泡体の密度は9.75g/in3(3.8g/cm3)であった。
【0090】
表14A及び14Bに記載の処方にしたがって発泡体実施例F−2〜F−12を調製した。スピードミキサー(DAC 600 FVZ)を使用して構成成分を2350RPMで5分間混合した。次に、この混合物を加熱プレッサー(Carver Laboratory Press)を用いて204℃(400°F)で圧縮した。得られた厚さ1.5mm(60ミル)の発泡シートは乳白色であった。次に、この発泡シートを4.80ジュール(300keV)及び15ミリラドで両側からE−ビーム照射した。ガラスビーズを使用した試料の得られた発泡体密度は表14Aに要約されている。
【0091】
【表17】

【0092】
膨張性高分子微小球を使用した試料の得られた発泡体密度が表14Bに要約されている。
【0093】
【表18】

【0094】
代表的な架橋ポリシロキサン発泡体200が図2に例示されている。発泡体200は、高分子微小球220が全体に分散している架橋ポリシロキサン材料210を含んでいる。図示されていないが、高分子微小球と共に又は高分子微小球の代わりにガラス気泡を含めることができる。
【0095】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び変更が、当業者には自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非官能性ポリシロキサン材料を含む組成物を基材に適用することと、前記組成物を電子ビーム照射に暴露することによって前記非官能性ポリシロキサンを架橋することとを含む、架橋シリコーン感圧接着剤の製造方法。
【請求項2】
前記非官能性ポリシロキサン材料が、25℃で1,000,000mPa・秒を超える動的粘度を有するゴムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
適用することがホットメルトコーティングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が複数の非官能性ポリシロキサンゴムを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、25℃で600,000mPa・秒未満の動的粘度を有する非官能性ポリシロキサン流体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非官能性ポリシロキサン材料の少なくとも1つがフッ素を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非官能性ポリシロキサン材料の少なくとも1つがポリ(ジメチルシロキサン)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非官能性ポリシロキサン材料の少なくとも1つが芳香族シロキサンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が触媒及び反応開始剤を実質的に含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物がMQ樹脂粘着付与剤を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が10重量%未満の官能化シリコーンを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、ガラスビーズ及び高分子微小球の少なくとも一方を更に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法に従って製造されるシリコーン感圧接着剤。
【請求項14】
電子ビーム架橋組成物を含むシリコーン感圧接着剤であって、前記組成物が、少なくとも1つの架橋された非官能性ポリシロキサン材料を含むシリコーン感圧接着剤。
【請求項15】
前記組成物が触媒及び反応開始剤を実質的に含まない、請求項13に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項16】
ガラスビーズ及び高分子微小球の少なくとも一方を更に含む、請求項13又は14に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項17】
前記接着剤が、ガラス浸潤手順に従って測定した場合に、10秒以下のガラスへの浸潤時間を有する、請求項12〜16のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項18】
基材の第1の主表面に付着される第1の接着剤を含む接着剤物品であって、前記第1の接着剤が、請求項12〜17のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤を含む、接着剤物品。
【請求項19】
前記基材が発泡体を含む、請求項18に記載の接着剤物品。
【請求項20】
前記基材及び前記接着剤が光学的に透明である、請求項18に記載の接着剤物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−507607(P2012−507607A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534767(P2011−534767)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062576
【国際公開番号】WO2010/056543
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】