説明

電子ペン

【課題】超音波を利用した座標入力装置おいて、電子ペンの傾きによる、電子ペンの超音波発信部と電子ペンの紙面接触部の座標のずれにより生じる位置座標誤差を小さくして精度の向上を実現する。
【解決手段】超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子9と、三次元加速度計と、筆記開始信号と三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度を発信する赤外線発光素子10もしくは電磁波発信素子と、筆記状態を検知できるセンサ7とを具備する電子ペン2、及び、前記電子ペンから発せられる筆記開始信号、三次元加速度計の3軸の加速度、超音波信号を受信して電子ペンの筆記状態での座標位置を検出する受信装置1とからなる筆跡入力システムにおいて、電子ペンのz軸、x軸、y軸の加速度と電子ペンの位置座標の情報とから、電子ペンの筆記面に対する傾斜角を計算し、超音波発信素子と電子ペン先端部との傾きを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンの傾きによる入力座標精度の悪化を向上する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線もしくは電磁波と超音波を発信する発生回路とペン先が筆記されていることを検知できるセンサを備えた電子ペンと、電子ペンから発信される赤外線信号もしくは電磁波信号を受信する受信素子と、超音波信号を受信する複数の受信素子を組み込んだ受信装置を有する手書き筆跡入力システムが開発されている。この筆跡入力システムは、電子ペンで筆記すると受信装置が、電子ペンから発信された超音波信号と赤外線とを複数の超音波受信素子と1つ以上の赤外線受信素子により受信し、電子ペンの位置座標を赤外線の到達時間を基準として複数個所の超音波到達時間から計算する。この位置座標とペン先が筆記状態であるかないかを合わせて筆跡データとして検出する。筆跡データを連続的に検出することにより、書いた文字や図形等を手書き筆跡データとして認識する筆跡入力システムが知られている。
【0003】
電子ペンに設けられている超音波発信素子は、発振する周波数に依存した外形を必要とする。例えば80kHzの周波数を使用した場合には、直径5mm、高さ4mm程度のピエゾの円柱(超音波発振素子)が必要である。前記した理由により、超音波の発信部が電子ペンの先端に設けられないために、電子ペンの持ち方や筆記方法により発生する電子ペンの傾きによる電子ペン先端部との差(電子ペンに設けられている超音波発信部と電子ペンが実際に紙面を接触している位置の差)が受信装置側に伝達されないために、実際に紙面に書かれた筆跡と受信機側に記憶された筆跡に座標の差が出でてしまう。
従来は、前記した座標の差を改善するために、電子ペン先端部から超音波を出力する構造を持つもの、電子ペンに2箇以上の超音波発信素子を持つもの、(電子ペンに三次元加速度計を2個以上取り付けたもの)がある。前記したような理由により、超音波発信素子が電子ペン先端に設けられないために様々な研究・開発がなされてきた。
また、従来、電子ペンに超音波発信器を2箇所以上取り付けることにより、電子ペンの鉛直方向の2点の本体からの距離を測定し、計算により電子ペン先端部の位置を補正していた。この方法では、2箇所目の超音波発信部を離して電子ペンに設けるのが困難(先端部に2箇所設けると、間隔が離れていないために精度がとれない。先端部に1箇所とり、後段部に一箇所取ろうとすると、筆記具は手で持つため、筆記具の後端部になり、受信が困難になる。)であった。また三次元加速度計を使用する方法では、三次元加速度計を最低2個と連続的な加速度の変化を正確に積分し、累積誤差をなくすのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4246439。ペンに2箇以上の超音波発信素子。
【特許文献2】特開2004−070887号。ペンに2箇以上の超音波発信素子。
【特許文献3】特開2004−192142号。ペンに2箇以上の超音波発信素子。
【特許文献4】特開2004−246904号。ペンに2箇以上の超音波発信素子。
【特許文献5】特表2002−541603号。ペン先端から超音波を出力。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波を利用した座標入力装置おいて、電子ペンの傾きによる超音波発信部と電子ペンが実際に紙面に接触している座標のずれは、電子ペンの位置座標誤差を大きくさせる大きな要因である。このため、超音波発信素子を電子ペン先端部にいかに近づけるかは、電子ペンの精度向上の大きな課題であった。しかし、超音波発信部を小型化するには限界があり、それ以外の方法で電子ペンの傾きを検出し精度の向上を実現することが大きな課題となっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、電子ペンが斜めのときも電子ペンが垂直のときと同様な精度で入力できる筆記入力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、筆記開始信号と三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度を発信する赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサと、三次元加速度計を具備する電子ペン、及び、筆記時に前記電子ペンから発せられる前記筆記開始信号と三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度を受信する受信素子と、前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子と三次元加速度計を具備し、定期的に前記電子ペンから発信される前記筆記開始信号と前記超音波信号の到達時間差から、前記電子ペンの筆記状態での位置座標の検出をすることのできる受信装置とを有する受信装置によって構成される筆跡入力システムにおいて、前記電子ペンに設けられている三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度と、前記受信装置側の三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度と、電子ペンの位置座標の情報から、電子ペンの筆記面に対する傾斜角を計算し、超音波発信素子と電子ペン先端部との傾きを補正する電子ペンを提案するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、入力盤面上での電子ペンの位置を測定するに当たり、電子ペンに設けられている超音波発振素子と、筆記開始信号と三次元加速度計の情報を発信する赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子とにより測定されるXY座標と受信装置と、電子ペンに設けられている三次元加速度計とそれらの単位時間ごとの変化から、入力盤面と電子ペンのなす角θと方位αを求め、電子ペンのペン先と超音波発生部との差分(超音波発信点と電子ペン先端部の位置の違い)を補正し、電子ペンの傾きによる入力座標精度の悪化を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
電子ペンには、少なくとも位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、筆記開始信号と三次元加速度計の情報を発信する赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサと、三次元加速度計を具備する。
受信装置には、筆記時に前記電子ペンから発せられる前記筆記開始信号と、三次元加速度計の情報を受信する赤外線受光素子もしくは電磁波受信素子もしくは電磁波受信素子と前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子と三次元加速度計を具備する。
【0010】
電子ペンは、筆記状態を検知するセンサが筆記状態を確認すると、赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子からパルス信号を出力し、同時に超音波発振素子から超音波を出力する。その後、赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子は、電子ペンに内蔵の三次元加速度計により測定されたz軸、x軸、y軸の測定加速度を赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子のパルス点灯時間間隔に換算して出力する。電子ペンは、筆記状態を検知するセンサが筆記状態の終了を確認するまで、上記した動作を繰返す。
【0011】
受信装置は、電子ペンから出力される赤外線もしくは電磁波を受信することにより、電子ペンからの超音波出力時間を知ることができ、およびそれに続く赤外線もしくは電磁波を受信することによりその受信時間間隔から電子ペンにかかるz軸、x軸、y軸、それぞれの加速度を知ることができる。また、受信機にある三次元加速度計により、同時刻に受信装置自体にかかるz軸、x軸、y軸、それぞれの加速度も知ることができる。
【0012】
受信装置は、赤外線もしくは電磁波の到達時間から複数点での超音波の到達時間差を計測し、超音波測定点の間隔と音速から超音波発信点のxy位置座標を求めることができる。これは前記電子ペンの盤面に対する垂直筆記状態としての位置座標である。垂直筆記状態での位置座標データの繰返し情報から電子ペンの移動方向と移動距離を得、そこから方向を伴う移動速度と加速度を得ることができる。
【0013】
また受信装置では、受信装置が持つ三次元加速度計により、該三次元加速度計の測定データと、電子ペンにかかる三次元加速度計の測定データを得ることができる。両方の測定データと前記超音波による測定データから、受信装置における電子ペンの向きと傾きを得ることができる。超音波受信点とペン先端との位置関係から垂直筆記状態での位置座標データをその時の電子ペンの向きと傾きに対応した位置座標データに変換し、ペンの傾きによる入力座標精度の悪化を改善することができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。図1は装置図面が煩雑にならないよう単純な構成を模式的に表現したものである。本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。また、各実施例において、同じ構成については同じ参照符号を付けた。
【0015】
図1に本発明の超音波ペン入力精度向上システムの全体像を示す。
電子ペン2は、赤外線発光素子10と筆記状態であることを検知できるセンサ(図示せず)と超音波発振素子9と三次元加速度計3と電池2、ペン側制御回路基板11で構成されている。電子ペン2のペン先には、ボールペンなどのリフィル(図示せず)が挿入されており、筆記した際に、電子ペン2内部の筆記状態を感知できるセンサ7に、加重(筆圧)を伝え、前記筆記状態を感知できるセンサ7が、筆記状態の検出を行う。筆記状態が検出されると、電子ペン側制御回路11は、赤外線発光素子10と超音波発信素子9に10msec毎に信号を与えて、赤外線パルス信号と80kHzの超音波信号を受信装置1の赤外線受光素子4と超音波受信素子5、6に向かって出力する。また、その時の三次元加速度計3のZ軸、X軸、Y軸の加速度の測定を、電子ペン側制御回路11が行い、10msecの時間間隔で測定された加速度±2Gを、2msecの時間間隔に対応させて赤外線パルス信号1回の発光を、前記受信装置1の赤外線受光素子4に向かって行う。三次元加速度計3のZ軸、X軸、Y軸の測定をそれぞれの軸に対応して1回づつ実施し、Z軸、X軸、Y軸の測定データを受信装置1の赤外線受光素子4に送信する。筆記状態が検出されなくなるまでこれを繰返す。
【0016】
受信装置1は、赤外線受光素子4と超音波受信素子5と超音波受信素子6と、三次元加速度計3と受信装置1を制御するための制御回路(図示せず)で構成されている。赤外線受光素子4は、電子ペン2側から送信される赤外線信号を受信すると、受信装置1側制御回路14は、時間の計測を開始し、超音波受信素子5と超音波受信素子6に、電子ペン2の超音波発信素子10から発信された超音波を受信するまでの時間t1(超音波受信素子5)とt2(超音波受信素子6)を測定する。また受信装置1側制御回路14は、電子ペン2の超音波発信素子10から発信された超音波を受信するまでの時間t1(超音波受信素子5)とt2(超音波受信素子6)を測定するのと同時に、赤外線受光素子4を監視し、1回目(筆記が開始されたことを感知したときの赤外線)、2回目(電子ペン2側三次元加速度計3のZ軸の加速度データとしての赤外線)、3回目(電子ペン2側三次元加速度計3のX軸の加速度データとしての赤外線)、4回目(電子ペン2側三次元加速度計3のY軸の加速度データとしての赤外線)の赤外線信号を監視し、1回目と2回目の時間差、1回目と3回目の時間差、1回目と4回目の時間差を測定し、電子ペン2側からの赤外線信号が検出されなくなるまで繰返す。この比較は、電子ペン2の傾きによる実際の電子ペンの位置と、受信装置で計算により出された電子ペンの位置の誤差を検出するために行われるものである。
【0017】
図3に電子ペン2の回路構成図を示す。電子ペン2の制御回路11は、水晶により精確な時間で動作するCPU15により全体を制御する。電子ペン2の回路全体を制御するためのプログラムおよび各種固定データは、ROM17に書かれている。一時保管データ等はRAM18に保管される。三次元加速度計3は、XYZ軸のアナログ値を、A/D変換器20を通して、CPU15に伝える。電池12の電圧は、A/D変換器20を通してCPU15に伝えられ、電池電圧が規定より下がるとCPU15は、この情報を受信装置1に伝達する。入出力ポート19は、デジタル信号の入力と出力を行う。入出力ポート19の出力ポートの片方には、発光ダイオードの赤外線発光回路21と発光ダイオード10に接続され、CPU15の指示で、発光ダイオード10の点灯・消灯を行う。入出力ポート19の出力ポートのもう片方には、超音波発信回路22と超音波発信素子9に接続され、CPU15の指示で超音波発信素子9の発振と停止を行う。入出力ポート19の入力ポートには、筆記状態を感知できるセンサ24に接続され、CPU15に電子ペン2の先端部が筆記常態であるかどうかをCPU15に伝える。
【0018】
図4に、受信装置1の回路構成図を示す。受信装置の制御回路は、水晶により精確な時間で動作するCPU15により全体を制御する。受信装置1全体を制御するプログラムおよび各種固定データは、ROM17に書かれている。一時保管データ等はRAM18に保管される。三軸加速度計3は、XYZ軸のアナログ値をA/D変換器20を通してCPU15に伝える。電池12の電圧はA/D変換器20を通して、CPU15に伝えられ、電池電圧が規定より下がるとCPU15は、この情報を外部処理装置(図示せず)に伝達し、停止する。入出力ポート19は、デジタル信号の入力と出力を行う。出力ポートには、3個のd/a変換器26が接続され、d/a変換機の出力は、比較回路25に基準電圧を供給する。3つの比較回路25には、それぞれ超音波受信素子5の増幅信号、超音波受信素子6の増幅信号、赤外線受光素子4の増幅信号が接続され、3つの比較回路25の出力は、入出力ポート19にそれぞれ接続され、cpu15に超音波受信素子5が超音波を受信した事、cpu15に超音波受信素子6が超音波を受信した事、cpu15に赤外線受光素子4が赤外線パルス信号を受信した事を伝える。
【0019】
図5に、電子ペン2の超音波発振タイミング図を示す。超音波が80kHz12.5μsecの周期で数サイクル出力され、電子ペンの先端部で筆記状態が検出されなくなるまで10msecごとに繰返す。
【0020】
図6に、電子ペン2の赤外線発光のタイミング図を示す。筆記状態が検出されると、第1座標(赤外線と超音波によって決定された、最初の座標)の赤外線発光を開始する。最初に、赤外線発光素子10に、1μsecの開始信号をパルス発光をする。次に、1msecの休止時間をおいて、2msecの幅の中に1μsecのパルス発光を3回する。2msecの幅のどこで発光するかは、電子ペン2の三次元加速度計3のZ軸、X軸、Y軸で測定した加速度2G〜−2Gで2msecを分割した時間で各々発光し、1msecの休止期間をおいて3回繰返す。前記発光を電子ペンの先端部で筆記状態が検出されなくなるまで10msecごとに繰返す。
【0021】
図7に、受信装置1の赤外線受光素子4の増幅回路のタイミング図を示す。電子ペン2から赤外線が発光されると、受信装置1の赤外線受光素子4は、電子ペン2からの赤外線発光信号を同一時間に受信し、その信号を増幅し比較回路に出力する。
【0022】
図8に、受信装置1の赤外線信号比較器21のタイミング図を示す。赤外線信号比較回路は、アナログ信号をデジタル信号に変換して、開始第1座標の信号を出力し、続いて電子ペン2の三次元加速度計により検出された電子ペン2のZ軸の加速度信号、X軸の加速度信号、Z軸の加速度信号を出力する。その後も赤外線が継続すれば前記処理を繰返す。
【0023】
図9に、受信装置1の超音波受信装置5のタイミング図を示す。電子ペン2から出力された超音波信号を電子ペン2からの距離に対応した時間t1後に受信する。
【0024】
図10に、受信装置1の超音波受信素子5信号比較回路のタイミング図を示す。t1後に受信増幅された信号は、比較器25に入力されパルス信号列を作りだす。最初に作られたパルスが超音波受信素子5到達時間t1になり、CPU15に伝達される。
【0025】
図11に本体超音波受信左側のタイミング図を示す。電子ペンから出力された超音波信号を電子ペンからの距離に対応した時間t2後に受信する。
【0026】
図12に本体超音波受信左側信号比較回路のタイミング図を示す。t2後に受信増幅された信号は比較器に入力されパルス信号列を作りだす。最初に作られたパルスが超音波左側到達時間t2になり、CPUに伝達される。
【0027】
CPUは左右の超音波到達時間t1とt2とその時の音速から、電子ペンが入力盤面に垂直に立つ場合の位置座標を計算する。
【0028】
図13に受信装置1と、電子ペン2の三次元加速度計の図を示す。受信装置1の三次元加速度計3のz軸は、zh、X軸はXh、Y軸はYhであらわされ、電子ペン2に設けられている三次元加速度計3のz軸はzp、X軸はXp、Y軸はYpであらわされる。電子ペン2が盤面8上で静止しているときには、両方のベクトルは同じであり、地球上であれば1Gで重力方向に一致する。また、盤面8上での電子ペン2の傾きはθであらわし、盤面8上での方向はφであらわす。
【0029】
また、盤面8上での電子ペン2の移動方向はVpであらわし、移動座標は、開始が(x0、y0)、次の通過点が(x1、y1)、移動時間がΔtとする。そのため、盤面8上の電子ペン2の傾きθは、盤面の重力加速度と電子ペンの重力加速度は同一であるため明らかである。また、電子ペン2が盤面8上で停止しているかどうかは、受信装置1が赤外線と超音波で盤面8上の電子ペン2の位置を計測し続けているので明らかである。このとき、電子ペン2の三次元加速度計3は円筒形の超音波発振子9に対して三次元上の中心にあることが望ましい。その場合、電子ペン2の超音波発振子9が受信装置1に対して等距離であっても受信装置1に対して姿勢が変化すれば速やかに判明する。逆に電子ペン2の三次元加速度計3が等速度運動中で加速度計に変化がなくても電子ペン2の超音波発信子9の移動で速やかに判明する。もちろん、電子ペン2の何処に三次元加速度計3が搭載されていても、同様の処理をすることは可能である。
【0030】
しかし、処理する計算量が大幅に増加する。電子ペン2が盤面8上で加速度運動しないとき√(Xh+Yh+Zh)=√(Xp+Yp+Zp)が成立つ。受信装置1の三次元加速度計3のx・y座標と平行に接続されている盤面8上にて電子ペンが筆記されるとき、電子ペン2および受信装置1側の三次元加速度計3と超音波と赤外線により計算される座標と、同様に計測・計算される次の到達座標とからなる移動距離と時間から方向と速度が計算され、さらに加速度が計算される。計算された方向と加速度は、電子ペン2で、その時計測された三次元加速度計3の測定データと一致する。よって、電子ペンの傾きθと方向はφ計算され、電子ペン2が盤面8と垂直状態と仮定して、超音波到着時間t1、t2を基準とされる赤外線もしくは電磁波とにより測定された位置座標は、さらに超音波発振素子9の盤面からの高さと超音波発振素子9の先端部からの角度等の構造により補正される。
【0031】
また、盤面8上の電子ペン2の方向は、今回と次回に検出される赤外線と超音波により検出される座標と今回と次回に検出される三次元加速度計3のデータから計算できる。もちろん、その間三次元加速度計3に何の変化もなければ不明である。しかし、人が字を書くとき、線を引くときには、常に速度が変化し、方向が変化し、盤面から電子ペン2が離れる。これらは常に三次元加速度計3に変化を与えるし、赤外線と超音波による距離測定に変化をもたらす。この変化により、過去の電子ペン2の方向φを明らかにする。よって、電子ペンの赤外線と超音波によって測定された超音波発信子9の位置にある電子ペン2の傾きθは電子ペンと受信装置1に共通にかかる重力加速度が同じであることで計算でき、電子ペンの方向φは、盤面上を次の移動点に移動するときの電子ペン2と受信装置1の三次元加速度計3の差分と赤外線と超音波によって測定された電子ペン2の移動方向と加速度から計算できる。
【0032】
しかも、基本位置は赤外線と超音波により測定されているので、三次元加速度計3はその時その時の加速度を計測すればよく慣性航法装置のように正確な積分を続ける必要はない。あくまで切れ切れの加速度を計測すればよくその要求精度は比較にならないので、このシステムはローコストで製作できる。また、計算量は多いが、多くは表でも代替できるし、要求される電子ペン2と受信装置1の角度精度は±5度程度で十分である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の電子ペンの全体像を示す図
【図2】電子ペンの傾きを示す図
【図3】電子ペンの回路構成図
【図4】受信装置の回路構成図
【図5】電子ペンの超音波発振タイミング図
【図6】電子ペンの赤外線発振タイミング図
【図7】受信装置側の赤外線受信器
【図8】受信装置側の赤外線受信比較器の出力の説明図
【図9】受信器側の超音波受信素子
【図10】受信装置側の超音波受信素子の出力説明図
【図11】受信装置側の超音波受信の説明図
【図12】受信装置側の超音波受信素子から比較器への出力説明図
【図13】受信装置と電子ペンとの三次元説明図
【符号の説明】
【0034】
1. 受信装置
2. 電子ペン
3. 三次元加速度計
4. 受光素子
5. 超音波受信素子
6. 超音波受信素子
7. 筆記状態であることを検知できるセンサ
8. 入力盤面
9. 超音波発振子
10.赤外線発光素子
11.ペン側制御回路
12.電池
14.本体側制御回路
15.CPU
16.水晶発振子
17.ROM
18.RAM
19.入出力ポート
20.A/D変換器
21.赤外線発光回路
22.超音波発振回路
23.ペンスイッチ回路
24.増幅器
25.比較器
26.D/A変換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発振素子と、筆記開始信号と三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度を発信する赤外線発光素子もしくは電磁波発信素子と、筆記状態であることを検知できるセンサと、三次元加速度計を具備する電子ペン、及び、筆記時に前記電子ペンから発せられる前記筆記開始信号と三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度を受信する受信素子と、前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子と三次元加速度計を具備し、定期的に前記電子ペンから発信される前記筆記開始信号と前記超音波信号の到達時間差から、前記電子ペンの筆記状態での位置座標の検出をすることのできる受信装置とを有する受信装置によって構成される筆跡入力システムにおいて、前記電子ペンに設けられている三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度と、前記受信装置側の三次元加速度計のz軸、x軸、y軸の加速度と、電子ペンの位置座標の情報から、電子ペンの筆記面に対する傾斜角を計算し、超音波発信素子と電子ペン先端部との傾きを補正することを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
電子ペンの三次元加速度計が超音波発信素子の内側にある請求項1記載の電子ペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−9542(P2010−9542A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171513(P2008−171513)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】