電子レンジ用調理液封入袋体
【課題】マイクロ波加熱されたときに、封入された調理液を残さず確実に流出させることのできる電子レンジ用調理液封入袋体を提供すること。
【解決手段】電子レンジ用調理液封入袋体10は、調理液が封入された調理液用袋20と、気体、又は気体と液体が封入された押圧用袋30とが一体化されてなる。加熱・調理時には、押圧用袋30の熱膨張により調理液用袋20が押圧され、調理液用袋20内の圧力が一定以上になったときに、圧力調整機構42により調理液を流出させる。調理液用袋20に対する押圧用袋30の押圧力の作用により調理液用袋20内の調理液を流出させるので、調理液の粘度が高いものであっても、調理液用袋20外へ、確実に、流出させることができる。
【解決手段】電子レンジ用調理液封入袋体10は、調理液が封入された調理液用袋20と、気体、又は気体と液体が封入された押圧用袋30とが一体化されてなる。加熱・調理時には、押圧用袋30の熱膨張により調理液用袋20が押圧され、調理液用袋20内の圧力が一定以上になったときに、圧力調整機構42により調理液を流出させる。調理液用袋20に対する押圧用袋30の押圧力の作用により調理液用袋20内の調理液を流出させるので、調理液の粘度が高いものであっても、調理液用袋20外へ、確実に、流出させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用の調理液封入袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジは、冷凍食品の解凍や、食品の加温、調理等の様々な用途に用いられるが、電子レンジで調理する場合に、パッケージに食品を密封したまま調理できる電子レンジ用調理食品がある。
【0003】
しかし、パッケージに食品が密封された調理食品で電子レンジを利用して調理される商品の殆どは、食材を予め調理し、味付けしてパッケージに密封されて提供されている。これらの食品は、電子レンジを用いて調理することにより、簡単に食することができるという利点があるが、食材が予め調理されているために、調理されていない生の食材を調理した場合に比べて、一般的に、食味が劣るという問題がある。
【0004】
このため、生の食材を電子レンジで調味して調理できるようにする商品として、パッケージに食材を収納する際には食材を調理せず、例えば、水や調味料或いはスープ等の調理液を、食材とは別に冷凍して固化した状態でパッケージ内に収納しておき、電子レンジで調理するときに初めて、調理液により食材が調理されるようにすることも既に開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、水や調味量等が封入された調理液封入袋体を食品パッケージ内に食材とともに入れ、内部に封入された調理液等の液体が電子レンジによって加熱されたとき、袋体内部の圧力が上昇して開口し、開口した部分から液体が外に流出する構造を有する電子レンジ用調理液封入袋体が提供されている。
図11は特許文献1の電子レンジ用調理液封入袋体の実施例の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱が始まった状態、(c)は加熱され電子レンジ用調理液封入袋体から調理液が流出している状態、及び(d)は調理液の流出が終わった状態を、それぞれ示している。
【特許文献1】特開平6−329179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、食材を美味しく効率良く調理するには、加熱用容器の中で食材や調理液や水をそれぞれの適切な配合と温度と時間で加熱する必要があり、特に、美味しさの決め手となるスープや調理液は正確な配分が必要となる。
【0007】
しかし、特許文献1では、図11(a)に示すように、第2パッケージ102の中に食材106と調理液を封入した第1パッケージ100(調理液封入袋体)を封入する構造になっているが、調理液を封入した第1パッケージ100は圧力調整弁104が付いているだけの構造の為、第1パッケージ100の内圧と第2パッケージ102の内圧が同一になった時点で、第1パッケージ100の中に残った調理液は、第2パッケージ102の中に流出せず、食材106を適正に味付け調理することが出来ないという問題があった。
又、第1パッケージ100内の圧力が高いので、第1パッケージ100は潰されずパッケージ形状が保持され、保持された形状内に調理液が残ることになるので、第1パッケージ100内の調理液等が流出するのは、第1パッケージ100の圧力調整弁104が下向きの場合に限られることとなるが(図11(c)参照。)、第1パッケージ100の圧力調整弁104を第2パッケージ102内に下向きに封入し、物流の振動を受けても圧力調整弁104の下向きの位置を保持することは、実際問題として、困難である。
又、第1パッケージ100を外部から押圧する作用がないので、とろみの付いたあんかけ、ソース、或いはペースト状の調理液等のように調理液の粘性が高い場合に、その調理液をパッケージから流出させることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、第1に、調理液用袋と押圧用袋とが一体化されてなる電子レンジ用調理液封入袋体であって、前記調理液用袋には調理液が封入され、前記押圧用袋には気体、又は、気体と液体とが封入されたものであり、マイクロ波加熱されたとき、前記押圧用袋により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする電子レンジ用調理液封入袋体、及び、
第2に、調理液が封入された調理液用袋と押圧板とが一体化されてなり、マイクロ波加熱されたとき、前記押圧板により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする電子レンジ用調理液封入袋体によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押圧用袋の熱膨張、或いは、押圧板の熱変形により調理液の封入された調理液用袋が押圧されるので、調理液用袋に封入された調理液が粘性の高いものであっても、調理液用袋内の調理液を残さず確実に流出させることができる効果がある。
又、調理液用袋と押圧用袋は一体化されているので、物流による振動を受けてもずれることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体(以下、単に「袋体」と称する場合がある。)の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態の袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。図2は圧力調整フィルム側から見た本発明の第1実施形態の袋体の平面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。
【0011】
図1(a)のように、本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体10aは、調理液用袋20aと押圧用袋30aとが、それぞれの接合部22a、32aにおいて接合・一体化されることにより形成される。調理液用袋20aには、水や調味料、又はスープ等の調理液が封入され、押圧用袋30aには、マイクロ波加熱により押圧用袋30aを膨張させるための気体、又は、気体と液体が封入される。
【0012】
なお、押圧用袋30aに封入される気体としては空気が好適であり、空気を用いることによりコストダウンを図ることができる。
又、押圧用袋30aに封入される液体としては、空気を含む塩化ナトリウム水溶液が好適である。塩化ナトリウム水溶液の沸点は水の沸点よりも高いので(塩化ナトリウムの重量比28%の飽和水溶液の沸点は110℃。)、押圧用袋30aは、接し合っている比較的低温度の調理液、及び食材から発生する水蒸気により、温度は、水の沸騰温度である100℃付近に維持されるので、押圧用袋30a内の塩化ナトリウム水溶液は沸騰しない。そして、押圧用袋30aに同封された空気が熱膨張することにより調理液用袋20aが押圧される。
そして、この空気含有量を予め調整することにより、調理液を流出させるために必要な、押圧用袋30aの熱膨張の程度を調整することができる。
【0013】
調理液用袋20aと押圧用袋30aの材質としては、プラスチックフィルムが好適である。そして、このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、飽和ポリエステル樹脂等、電子レンジでの使用に適した耐熱性のあるプラスチックフィルムであれば、特に限定されるものではない。
【0014】
そして、図2(a)のように、調理液用袋20aの押圧用袋30aと接する面の反対側の面には、調理液流出孔40、その調理液流出孔40を閉鎖するように、圧力調整機構であるフィルム42が具えられている。
このフィルム42は、高強度接合部44と低強度接合部46とを有し、これらの接合部44、46は調理液用袋20aに接着されている。この接着方法としては、人体に無害な接着剤を用いてもよいが、ヒートシール加工により接合することもできる。これにより、接着剤のような化学薬品を使用することなく接合部44、46と調理液用袋20aを接合することができるので、調理液用袋20aの調理液流出孔40から流れ出た調理液に化学薬品が混じることはない。
なお、フィルム42の材質についても、上記プラスチックフィルムが好適である。
【0015】
ここで、高強度接合部44と低強度接合部46とは、それぞれの接合の接合強度の違いを意味しており、高強度接合部44に比して低強度接合部46の接合強度は弱いものとなっている。
【0016】
以上のような構成により、電子レンジにより加熱された押圧用袋30aの熱膨張により調理液用袋20aが押圧され、押圧された調理液用袋20aの内部圧力の上昇により、調理液用袋20aの調理液流出孔40を通じてフィルム42に圧力が掛かり、その圧力が一定以上を超えると、接合強度の弱い低強度接合部46が調理液用袋20aから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する(図1(b)及び図2(b)参照。)。
このように、本発明の第1実施形態は、調理液用袋20aに対する押圧用袋30aの押圧力の作用により調理液用袋20a内の調理液を流出させるので、調理液の粘度が高いものであっても、確実に、調理液用袋20a外へ流出させることができる。
【0017】
又、上記の実施形態と異なり、調理液流出孔40とフィルム42を用いることなく、特開2005−126092号公報に開示されているように、調理液用袋20aの押圧用袋30aと接する面の反対側の面の厚み方向に予め貫通しない切込み部を設け、調理液用袋20aが圧力を受けるとその切込み部が破裂開口し、その開口部から調理液が流出するような構造としてもよい。
【0018】
次に、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体の第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態の袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。
なお、本発明の第2実施形態の調理液流出孔と圧力調整機構であるフィルムは、第1実施形態のものと同じ構造であるので、第1実施形態と同じ符号を付し、又、その構造の説明については前述したので省略する。このことは、後述する第3〜7実施形態の説明(図4〜8参照。)においても同様である。
【0019】
図3(a)のように、本発明の第2実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体10bは、調理液用袋20bに押圧板50が接合されることにより形成される。そして、押圧板50の材質としては、加熱されると調理液用袋20bに圧力を掛け、その内部の調理液を押出すように変形させられる形状記憶材や、熱収縮材等が好適である。
【0020】
なお、第2実施形態の調理液用袋20bの材質は、第1実施形態の場合と同様、プラスチックフィルムが好適である。
【0021】
このような構成により、電子レンジにより加熱された押圧板50の熱変形により調理液用袋20bが押圧され、押圧された調理液用袋20bの内部圧力が一定以上を超えると、フィルム42の低強度接合部46が調理液用袋20bから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する(図3(b)参照。)。
【0022】
又、本発明の調理液用袋と押圧用袋とを用いる電子レンジ用調理液封入袋体について、具体的に開示された第1実施形態の構成に限定されないことは当然である。
【0023】
例えば、調理液用袋20cの下側の外周部の面積(接合部22cを除く。)と、調理液用袋20cと押圧用袋30cとの仕切部の面積とを同一面積とした形状、換言すれば、接合部22c、32cを結んだ面について、前記両部分が対称となる形状としてもよい(本発明の第3実施形態)。
図4は本発明の第3実施形態の袋体10cの加熱前の断面図である。
【0024】
この第3実施形態によれば、調理液用袋20cの接合部22cを除いた下側の外周部の面積と、調理液用袋20cと押圧用袋30cとの仕切部の面積とが同一面積、換言すれば、接合部22c、32cを結んだ面について、前記両部分が対称であるので、調理液用袋20cから調理液が押出されるとき、最終的に、押圧用袋30cとの接触面をぴったり密着させて調理液を完全に押出すことができる効果がある。
【0025】
又、調理液用袋20dと押圧用袋30dの外周面が同一のシートで形成され、そのシートの剛性が、調理液用袋20dと押圧用袋30dの仕切部のシートの剛性よりも高い電子レンジ用調理液封入袋体10dとしてもよい(本発明の第4実施形態)。
図5は本発明の第4実施形態の袋体10dの加熱前の断面図である。
【0026】
この第4実施形態によれば、調理液用袋20dと押圧用袋30dの外周面が同一のシートで形成されるので、コストを低減することができる。又、調理液用袋20dと押圧用袋30dの仕切部の剛性が外周面のシートの剛性よりも低いので、外周部にぴったりとなじみ、密着して調理液を押出すことができる。
【0027】
又、調理液用袋20eそのものの内部に、押圧用袋30eを封入する構成としてもよい(本発明の第5実施形態)。
図6は本発明の第5実施形態の袋体10eの加熱前の断面図である。
【0028】
この第5実施形態によれば、押圧用袋30eが加熱され、膨張したとき、その周りを全て調理液用袋20eに囲まれているので、熱膨張による加圧作用の逃げ場がなく、加圧作用の全てが調理液用袋20eに対して働くので、内部の調理液を効果的に押出すことができる。
【0029】
又、調理液用袋20fと押圧用袋30fを接合し、さらに押圧用袋30fの調理液用袋20fとの接合面の反対側の面を補強材52に接合する構成としてもよい(本発明の第6実施形態)。この補強材に用いられるものとしては、膨張や変形等の加熱による影響を受けにくい素材であれば、特に限定されるものではない。
図7は本発明の第6実施形態の袋体10fの加熱前の断面図である。
【0030】
この第6実施形態によれば、押圧用袋30fの調理液用袋20fとの接合面の反対側の面には補強材52が接合されているため、押圧用袋30fの熱膨張は調理液用袋20f側方向に限定されるので、調理液用袋20f内の調理液を確実に押出すのに、より好適である。
【0031】
又、押圧用袋30gに、複数の調理液を別々に封入する複数の調理液用袋20gを接合する構成としてもよい(本発明の第7実施形態)。
図8は本発明の第7実施形態の袋体10gの加熱前の断面図である。
【0032】
この第7実施形態によれば、同時に、複数の調理液を用いることができ、より本格的な調理が可能となる。
【0033】
さらに、上記の第1〜7実施形態の調理液用袋、及び/又は、押圧用袋を電子レンジのマイクロ波を減衰させる素材から形成してもよい(本発明の第8実施形態)。マイクロ波を減衰させるには、調理液用袋、及び/又は、押圧用袋にアルミニウムを蒸着させるのが好適である。
【0034】
この第8実施形態によれば(図示せず。)、調理液用袋、及び/又は、押圧用袋に蒸着させるアルミニウムの厚みによってマイクロ波入射量を調整することができ、加熱開始から調理液流出までの時間を所望のものとするのに好適である。
【0035】
以上、本発明の第1〜8実施形態につき説明したが、これらは本発明の実施形態の例示であって、本発明の実施形態が上記の実施形態に限定されるものでないことは当然である。
【具体的実施形態】
【0036】
次に、本発明の具体的実施形態につき説明する。
本発明の電子レンジ用調理液封入袋体は、この袋体単体で用いるものではなく、調理対象の食材とともに電子レンジ用加熱容器に入れられて利用される。そして、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を用いる電子レンジ用加熱容器としては、図9に示す容器が好適である。
図9は本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を使用するための電子レンジ用加熱容器70の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示し、図10は電子レンジ用加熱容器70の上部平面図である。
【0037】
以下、電子レンジ用加熱容器70の概要を説明する。
この加熱容器70は、食材60を収納する容器本体72、蓋体74、及びキャップ76からなり、容器本体72は、上部に本体嵌合部78を具え、蓋体74は、下部には蓋体下部嵌合部80、上部には、その側面に蓋体上部嵌合部84を有する蓋体凹部82を具え、キャップ76は側面にキャップ嵌合部86を具え、本体嵌合部78と蓋体下部嵌合部80、蓋体上部嵌合部84とキャップ嵌合部86が嵌合一体化される。又、蓋体凹部82は、底面に蒸気孔兼調理液滴下孔88を具え、側面に蒸気排出孔94を具えている。
【0038】
そして、容器本体72に食材60を生の状態で入れ、蓋体凹部82とキャップ76により形成される空間に本発明の電子レンジ用調理液封入袋体10を入れ、容器本体72、蓋体74、及びキャップ76をそれぞれ嵌合一体化した状態で商品としてパッケージされる(図9(a)参照。)。
【0039】
食材60と電子レンジ用調理液封入袋体10aとを入れた加熱容器70全体をマイクロ波によって加熱すると、加熱容器70内の食材60が加熱されて蒸気が発生し、容器内の圧力が高まる。キャップ76は、蒸気圧に比例する比率で、自動的に上方に押上げられ、水蒸気は蒸気排出孔94を通り、さらに蓋体頂部90とキャップフランジ92の間隙を通って加熱容器70外に排出され、適度に圧力が逃がされる(図9(b)参照。)。
【0040】
又、蓋体凹部82とキャップ76とにより形成される空間に置かれた袋体10においては、前述したように、調理液用袋20aに対する押圧用袋30aの押圧力により、圧力調整機構であるフィルム42の低強度接合部46が調理液用袋20aから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する。
そして、流れ出た調理液は蒸気孔兼調理液滴下孔88から容器本体72内の食材60上に滴下される(図9(b)参照。)。
【0041】
容器本体72に入れられた食材60は、容器内に閉じ込められた水蒸気雰囲気下において調理されるので、食材から水分が蒸発してぱさつくこともなく、又、食材60が生の状態から調理が始まり、一定時間経過後に袋体10から調理液が滴下されるという、通常の方法で調理した場合と同様の調理過程を再現することができる。
【0042】
そして、加熱が終了すると、加熱容器70内部の温度が下がり、容器内の圧力が急激に低下するので、一旦押上げられたキャップ76は、自動的に蓋体74に嵌着し、再び、キャップフランジ92が蓋体頂部90に密着して加熱容器70内部を密封する。
【0043】
ここで、前述した従来技術の特許文献1では、第2パッケージ102の中に食材106と調理液を封入した調理液封入袋体の第1パッケージ100を封入する様に設けているので、調理後食材と調理液の中から調理液封入袋体100を取出さなければならず、このことは、調理に関する時間を長くするだけではなく、調理された食材の中から調理液封入袋体100を取出し、盛付けして食べる行為は、食欲を削ぐ欠点がある(図11(d)参照。)。
しかし、上記の加熱容器70によれば、蓋体74とキャップ76の間に電子レンジ用調理液封入袋体10aが置かれているので、調理液を排出した袋体10aは調理済み食材や調理液とは混入せず、調理済み食材や調理液を取出す際、蓋体74を容器本体72から取外すと同時に取除かれ、調理液封入袋体10aの処理の手間を省くことが出来る。
【0044】
又、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体10aからの調理液の滴下開始の理想的な時間は、食材や調理方法により異なるが、その滴下開始時間については、圧力調整機構であるフィルム42の低強度接合部40の接合強度、調理液流出孔40の径の大きさ、調理液封入袋体10aの厚み方向に設けられた貫通しない切込み部の切込み深さ、或いは押圧用袋30に封入される空気や塩化ナトリウムの量により熱膨張率を予め調整しておくことで、所望の時間とする。
【0045】
なお、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体と電子レンジ用加熱容器70を用いた上記の具体的実施形態では、説明の便宜上、本発明の第1実施形態である袋体10aを用いたが、具体的実施形態に用いられる袋体は第1実施形態のものに限定されないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図2】圧力調整フィルム側から見た本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の平面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図3】本発明の第2実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図4】本発明の第3実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図5】本発明の第4実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図6】本発明の第5実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図7】本発明の第6実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図8】本発明の第7実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図9】本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を使用するための電子レンジ用加熱容器の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図10】電子レンジ用加熱容器の平面図。
【図11】特許文献1の電子レンジ用調理液封入袋体の実施例の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱が始まった状態、(c)は加熱され電子レンジ用調理液封入袋体から調理液が流出している状態、及び(d)は調理液の流出が終わった状態を示す。
【符号の説明】
【0047】
10:電子レンジ用調理液封入袋体
20:調理液用袋
22:接合部
30:押圧用袋
32:接合部
40:調理液流出孔
42:圧力調整機構(フィルム)
50:押圧板
52:補強材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用の調理液封入袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジは、冷凍食品の解凍や、食品の加温、調理等の様々な用途に用いられるが、電子レンジで調理する場合に、パッケージに食品を密封したまま調理できる電子レンジ用調理食品がある。
【0003】
しかし、パッケージに食品が密封された調理食品で電子レンジを利用して調理される商品の殆どは、食材を予め調理し、味付けしてパッケージに密封されて提供されている。これらの食品は、電子レンジを用いて調理することにより、簡単に食することができるという利点があるが、食材が予め調理されているために、調理されていない生の食材を調理した場合に比べて、一般的に、食味が劣るという問題がある。
【0004】
このため、生の食材を電子レンジで調味して調理できるようにする商品として、パッケージに食材を収納する際には食材を調理せず、例えば、水や調味料或いはスープ等の調理液を、食材とは別に冷凍して固化した状態でパッケージ内に収納しておき、電子レンジで調理するときに初めて、調理液により食材が調理されるようにすることも既に開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、水や調味量等が封入された調理液封入袋体を食品パッケージ内に食材とともに入れ、内部に封入された調理液等の液体が電子レンジによって加熱されたとき、袋体内部の圧力が上昇して開口し、開口した部分から液体が外に流出する構造を有する電子レンジ用調理液封入袋体が提供されている。
図11は特許文献1の電子レンジ用調理液封入袋体の実施例の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱が始まった状態、(c)は加熱され電子レンジ用調理液封入袋体から調理液が流出している状態、及び(d)は調理液の流出が終わった状態を、それぞれ示している。
【特許文献1】特開平6−329179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、食材を美味しく効率良く調理するには、加熱用容器の中で食材や調理液や水をそれぞれの適切な配合と温度と時間で加熱する必要があり、特に、美味しさの決め手となるスープや調理液は正確な配分が必要となる。
【0007】
しかし、特許文献1では、図11(a)に示すように、第2パッケージ102の中に食材106と調理液を封入した第1パッケージ100(調理液封入袋体)を封入する構造になっているが、調理液を封入した第1パッケージ100は圧力調整弁104が付いているだけの構造の為、第1パッケージ100の内圧と第2パッケージ102の内圧が同一になった時点で、第1パッケージ100の中に残った調理液は、第2パッケージ102の中に流出せず、食材106を適正に味付け調理することが出来ないという問題があった。
又、第1パッケージ100内の圧力が高いので、第1パッケージ100は潰されずパッケージ形状が保持され、保持された形状内に調理液が残ることになるので、第1パッケージ100内の調理液等が流出するのは、第1パッケージ100の圧力調整弁104が下向きの場合に限られることとなるが(図11(c)参照。)、第1パッケージ100の圧力調整弁104を第2パッケージ102内に下向きに封入し、物流の振動を受けても圧力調整弁104の下向きの位置を保持することは、実際問題として、困難である。
又、第1パッケージ100を外部から押圧する作用がないので、とろみの付いたあんかけ、ソース、或いはペースト状の調理液等のように調理液の粘性が高い場合に、その調理液をパッケージから流出させることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、第1に、調理液用袋と押圧用袋とが一体化されてなる電子レンジ用調理液封入袋体であって、前記調理液用袋には調理液が封入され、前記押圧用袋には気体、又は、気体と液体とが封入されたものであり、マイクロ波加熱されたとき、前記押圧用袋により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする電子レンジ用調理液封入袋体、及び、
第2に、調理液が封入された調理液用袋と押圧板とが一体化されてなり、マイクロ波加熱されたとき、前記押圧板により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする電子レンジ用調理液封入袋体によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押圧用袋の熱膨張、或いは、押圧板の熱変形により調理液の封入された調理液用袋が押圧されるので、調理液用袋に封入された調理液が粘性の高いものであっても、調理液用袋内の調理液を残さず確実に流出させることができる効果がある。
又、調理液用袋と押圧用袋は一体化されているので、物流による振動を受けてもずれることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体(以下、単に「袋体」と称する場合がある。)の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態の袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。図2は圧力調整フィルム側から見た本発明の第1実施形態の袋体の平面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。
【0011】
図1(a)のように、本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体10aは、調理液用袋20aと押圧用袋30aとが、それぞれの接合部22a、32aにおいて接合・一体化されることにより形成される。調理液用袋20aには、水や調味料、又はスープ等の調理液が封入され、押圧用袋30aには、マイクロ波加熱により押圧用袋30aを膨張させるための気体、又は、気体と液体が封入される。
【0012】
なお、押圧用袋30aに封入される気体としては空気が好適であり、空気を用いることによりコストダウンを図ることができる。
又、押圧用袋30aに封入される液体としては、空気を含む塩化ナトリウム水溶液が好適である。塩化ナトリウム水溶液の沸点は水の沸点よりも高いので(塩化ナトリウムの重量比28%の飽和水溶液の沸点は110℃。)、押圧用袋30aは、接し合っている比較的低温度の調理液、及び食材から発生する水蒸気により、温度は、水の沸騰温度である100℃付近に維持されるので、押圧用袋30a内の塩化ナトリウム水溶液は沸騰しない。そして、押圧用袋30aに同封された空気が熱膨張することにより調理液用袋20aが押圧される。
そして、この空気含有量を予め調整することにより、調理液を流出させるために必要な、押圧用袋30aの熱膨張の程度を調整することができる。
【0013】
調理液用袋20aと押圧用袋30aの材質としては、プラスチックフィルムが好適である。そして、このプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、飽和ポリエステル樹脂等、電子レンジでの使用に適した耐熱性のあるプラスチックフィルムであれば、特に限定されるものではない。
【0014】
そして、図2(a)のように、調理液用袋20aの押圧用袋30aと接する面の反対側の面には、調理液流出孔40、その調理液流出孔40を閉鎖するように、圧力調整機構であるフィルム42が具えられている。
このフィルム42は、高強度接合部44と低強度接合部46とを有し、これらの接合部44、46は調理液用袋20aに接着されている。この接着方法としては、人体に無害な接着剤を用いてもよいが、ヒートシール加工により接合することもできる。これにより、接着剤のような化学薬品を使用することなく接合部44、46と調理液用袋20aを接合することができるので、調理液用袋20aの調理液流出孔40から流れ出た調理液に化学薬品が混じることはない。
なお、フィルム42の材質についても、上記プラスチックフィルムが好適である。
【0015】
ここで、高強度接合部44と低強度接合部46とは、それぞれの接合の接合強度の違いを意味しており、高強度接合部44に比して低強度接合部46の接合強度は弱いものとなっている。
【0016】
以上のような構成により、電子レンジにより加熱された押圧用袋30aの熱膨張により調理液用袋20aが押圧され、押圧された調理液用袋20aの内部圧力の上昇により、調理液用袋20aの調理液流出孔40を通じてフィルム42に圧力が掛かり、その圧力が一定以上を超えると、接合強度の弱い低強度接合部46が調理液用袋20aから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する(図1(b)及び図2(b)参照。)。
このように、本発明の第1実施形態は、調理液用袋20aに対する押圧用袋30aの押圧力の作用により調理液用袋20a内の調理液を流出させるので、調理液の粘度が高いものであっても、確実に、調理液用袋20a外へ流出させることができる。
【0017】
又、上記の実施形態と異なり、調理液流出孔40とフィルム42を用いることなく、特開2005−126092号公報に開示されているように、調理液用袋20aの押圧用袋30aと接する面の反対側の面の厚み方向に予め貫通しない切込み部を設け、調理液用袋20aが圧力を受けるとその切込み部が破裂開口し、その開口部から調理液が流出するような構造としてもよい。
【0018】
次に、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体の第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態の袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示す。
なお、本発明の第2実施形態の調理液流出孔と圧力調整機構であるフィルムは、第1実施形態のものと同じ構造であるので、第1実施形態と同じ符号を付し、又、その構造の説明については前述したので省略する。このことは、後述する第3〜7実施形態の説明(図4〜8参照。)においても同様である。
【0019】
図3(a)のように、本発明の第2実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体10bは、調理液用袋20bに押圧板50が接合されることにより形成される。そして、押圧板50の材質としては、加熱されると調理液用袋20bに圧力を掛け、その内部の調理液を押出すように変形させられる形状記憶材や、熱収縮材等が好適である。
【0020】
なお、第2実施形態の調理液用袋20bの材質は、第1実施形態の場合と同様、プラスチックフィルムが好適である。
【0021】
このような構成により、電子レンジにより加熱された押圧板50の熱変形により調理液用袋20bが押圧され、押圧された調理液用袋20bの内部圧力が一定以上を超えると、フィルム42の低強度接合部46が調理液用袋20bから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する(図3(b)参照。)。
【0022】
又、本発明の調理液用袋と押圧用袋とを用いる電子レンジ用調理液封入袋体について、具体的に開示された第1実施形態の構成に限定されないことは当然である。
【0023】
例えば、調理液用袋20cの下側の外周部の面積(接合部22cを除く。)と、調理液用袋20cと押圧用袋30cとの仕切部の面積とを同一面積とした形状、換言すれば、接合部22c、32cを結んだ面について、前記両部分が対称となる形状としてもよい(本発明の第3実施形態)。
図4は本発明の第3実施形態の袋体10cの加熱前の断面図である。
【0024】
この第3実施形態によれば、調理液用袋20cの接合部22cを除いた下側の外周部の面積と、調理液用袋20cと押圧用袋30cとの仕切部の面積とが同一面積、換言すれば、接合部22c、32cを結んだ面について、前記両部分が対称であるので、調理液用袋20cから調理液が押出されるとき、最終的に、押圧用袋30cとの接触面をぴったり密着させて調理液を完全に押出すことができる効果がある。
【0025】
又、調理液用袋20dと押圧用袋30dの外周面が同一のシートで形成され、そのシートの剛性が、調理液用袋20dと押圧用袋30dの仕切部のシートの剛性よりも高い電子レンジ用調理液封入袋体10dとしてもよい(本発明の第4実施形態)。
図5は本発明の第4実施形態の袋体10dの加熱前の断面図である。
【0026】
この第4実施形態によれば、調理液用袋20dと押圧用袋30dの外周面が同一のシートで形成されるので、コストを低減することができる。又、調理液用袋20dと押圧用袋30dの仕切部の剛性が外周面のシートの剛性よりも低いので、外周部にぴったりとなじみ、密着して調理液を押出すことができる。
【0027】
又、調理液用袋20eそのものの内部に、押圧用袋30eを封入する構成としてもよい(本発明の第5実施形態)。
図6は本発明の第5実施形態の袋体10eの加熱前の断面図である。
【0028】
この第5実施形態によれば、押圧用袋30eが加熱され、膨張したとき、その周りを全て調理液用袋20eに囲まれているので、熱膨張による加圧作用の逃げ場がなく、加圧作用の全てが調理液用袋20eに対して働くので、内部の調理液を効果的に押出すことができる。
【0029】
又、調理液用袋20fと押圧用袋30fを接合し、さらに押圧用袋30fの調理液用袋20fとの接合面の反対側の面を補強材52に接合する構成としてもよい(本発明の第6実施形態)。この補強材に用いられるものとしては、膨張や変形等の加熱による影響を受けにくい素材であれば、特に限定されるものではない。
図7は本発明の第6実施形態の袋体10fの加熱前の断面図である。
【0030】
この第6実施形態によれば、押圧用袋30fの調理液用袋20fとの接合面の反対側の面には補強材52が接合されているため、押圧用袋30fの熱膨張は調理液用袋20f側方向に限定されるので、調理液用袋20f内の調理液を確実に押出すのに、より好適である。
【0031】
又、押圧用袋30gに、複数の調理液を別々に封入する複数の調理液用袋20gを接合する構成としてもよい(本発明の第7実施形態)。
図8は本発明の第7実施形態の袋体10gの加熱前の断面図である。
【0032】
この第7実施形態によれば、同時に、複数の調理液を用いることができ、より本格的な調理が可能となる。
【0033】
さらに、上記の第1〜7実施形態の調理液用袋、及び/又は、押圧用袋を電子レンジのマイクロ波を減衰させる素材から形成してもよい(本発明の第8実施形態)。マイクロ波を減衰させるには、調理液用袋、及び/又は、押圧用袋にアルミニウムを蒸着させるのが好適である。
【0034】
この第8実施形態によれば(図示せず。)、調理液用袋、及び/又は、押圧用袋に蒸着させるアルミニウムの厚みによってマイクロ波入射量を調整することができ、加熱開始から調理液流出までの時間を所望のものとするのに好適である。
【0035】
以上、本発明の第1〜8実施形態につき説明したが、これらは本発明の実施形態の例示であって、本発明の実施形態が上記の実施形態に限定されるものでないことは当然である。
【具体的実施形態】
【0036】
次に、本発明の具体的実施形態につき説明する。
本発明の電子レンジ用調理液封入袋体は、この袋体単体で用いるものではなく、調理対象の食材とともに電子レンジ用加熱容器に入れられて利用される。そして、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を用いる電子レンジ用加熱容器としては、図9に示す容器が好適である。
図9は本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を使用するための電子レンジ用加熱容器70の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態をそれぞれ示し、図10は電子レンジ用加熱容器70の上部平面図である。
【0037】
以下、電子レンジ用加熱容器70の概要を説明する。
この加熱容器70は、食材60を収納する容器本体72、蓋体74、及びキャップ76からなり、容器本体72は、上部に本体嵌合部78を具え、蓋体74は、下部には蓋体下部嵌合部80、上部には、その側面に蓋体上部嵌合部84を有する蓋体凹部82を具え、キャップ76は側面にキャップ嵌合部86を具え、本体嵌合部78と蓋体下部嵌合部80、蓋体上部嵌合部84とキャップ嵌合部86が嵌合一体化される。又、蓋体凹部82は、底面に蒸気孔兼調理液滴下孔88を具え、側面に蒸気排出孔94を具えている。
【0038】
そして、容器本体72に食材60を生の状態で入れ、蓋体凹部82とキャップ76により形成される空間に本発明の電子レンジ用調理液封入袋体10を入れ、容器本体72、蓋体74、及びキャップ76をそれぞれ嵌合一体化した状態で商品としてパッケージされる(図9(a)参照。)。
【0039】
食材60と電子レンジ用調理液封入袋体10aとを入れた加熱容器70全体をマイクロ波によって加熱すると、加熱容器70内の食材60が加熱されて蒸気が発生し、容器内の圧力が高まる。キャップ76は、蒸気圧に比例する比率で、自動的に上方に押上げられ、水蒸気は蒸気排出孔94を通り、さらに蓋体頂部90とキャップフランジ92の間隙を通って加熱容器70外に排出され、適度に圧力が逃がされる(図9(b)参照。)。
【0040】
又、蓋体凹部82とキャップ76とにより形成される空間に置かれた袋体10においては、前述したように、調理液用袋20aに対する押圧用袋30aの押圧力により、圧力調整機構であるフィルム42の低強度接合部46が調理液用袋20aから剥離し、その剥離箇所から調理液が流出する。
そして、流れ出た調理液は蒸気孔兼調理液滴下孔88から容器本体72内の食材60上に滴下される(図9(b)参照。)。
【0041】
容器本体72に入れられた食材60は、容器内に閉じ込められた水蒸気雰囲気下において調理されるので、食材から水分が蒸発してぱさつくこともなく、又、食材60が生の状態から調理が始まり、一定時間経過後に袋体10から調理液が滴下されるという、通常の方法で調理した場合と同様の調理過程を再現することができる。
【0042】
そして、加熱が終了すると、加熱容器70内部の温度が下がり、容器内の圧力が急激に低下するので、一旦押上げられたキャップ76は、自動的に蓋体74に嵌着し、再び、キャップフランジ92が蓋体頂部90に密着して加熱容器70内部を密封する。
【0043】
ここで、前述した従来技術の特許文献1では、第2パッケージ102の中に食材106と調理液を封入した調理液封入袋体の第1パッケージ100を封入する様に設けているので、調理後食材と調理液の中から調理液封入袋体100を取出さなければならず、このことは、調理に関する時間を長くするだけではなく、調理された食材の中から調理液封入袋体100を取出し、盛付けして食べる行為は、食欲を削ぐ欠点がある(図11(d)参照。)。
しかし、上記の加熱容器70によれば、蓋体74とキャップ76の間に電子レンジ用調理液封入袋体10aが置かれているので、調理液を排出した袋体10aは調理済み食材や調理液とは混入せず、調理済み食材や調理液を取出す際、蓋体74を容器本体72から取外すと同時に取除かれ、調理液封入袋体10aの処理の手間を省くことが出来る。
【0044】
又、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体10aからの調理液の滴下開始の理想的な時間は、食材や調理方法により異なるが、その滴下開始時間については、圧力調整機構であるフィルム42の低強度接合部40の接合強度、調理液流出孔40の径の大きさ、調理液封入袋体10aの厚み方向に設けられた貫通しない切込み部の切込み深さ、或いは押圧用袋30に封入される空気や塩化ナトリウムの量により熱膨張率を予め調整しておくことで、所望の時間とする。
【0045】
なお、本発明の電子レンジ用調理液封入袋体と電子レンジ用加熱容器70を用いた上記の具体的実施形態では、説明の便宜上、本発明の第1実施形態である袋体10aを用いたが、具体的実施形態に用いられる袋体は第1実施形態のものに限定されないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図2】圧力調整フィルム側から見た本発明の第1実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の平面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図3】本発明の第2実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図4】本発明の第3実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図5】本発明の第4実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図6】本発明の第5実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図7】本発明の第6実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図8】本発明の第7実施形態の電子レンジ用調理液封入袋体の加熱前の断面図。
【図9】本発明の電子レンジ用調理液封入袋体を使用するための電子レンジ用加熱容器の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱後の状態を示す。
【図10】電子レンジ用加熱容器の平面図。
【図11】特許文献1の電子レンジ用調理液封入袋体の実施例の断面図で、(a)は加熱前の状態、(b)は加熱が始まった状態、(c)は加熱され電子レンジ用調理液封入袋体から調理液が流出している状態、及び(d)は調理液の流出が終わった状態を示す。
【符号の説明】
【0047】
10:電子レンジ用調理液封入袋体
20:調理液用袋
22:接合部
30:押圧用袋
32:接合部
40:調理液流出孔
42:圧力調整機構(フィルム)
50:押圧板
52:補強材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理液用袋と押圧用袋とが一体化されてなる電子レンジ用調理液封入袋体であって、
前記調理液用袋には調理液が封入され、前記押圧用袋には気体、又は気体と液体とが封入されたものであり、
マイクロ波加熱されたとき、前記押圧用袋により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする、
電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項2】
調理液が封入された調理液用袋と押圧板とが一体化されてなり、
マイクロ波加熱されたとき、前記押圧板により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする、
電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項3】
前記調理液用袋が調理液流出孔を有し、前記圧力調整機構が該調理液流出孔を閉鎖するように接着されたフィルムからなる、請求項1又は2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項4】
前記調理液用袋が調理液流出孔を有し、前記圧力調整機構が調理液流出孔を閉鎖し前記調理液用袋体の厚み方向に貫通しない切込み部からなる、請求項1又は2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項5】
前記気体が空気である、請求項1、3、又は4のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項6】
前記液体が塩化ナトリウム水溶液である、請求項1又は3から5のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項7】
前記調理液用袋の外周部の面積と、前記調理液用袋と押圧用袋の仕切部の面積が同一である、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項8】
前記調理液用袋と押圧用袋の外周面が同一のシートで形成され、該シートの剛性が前記調理液用袋と押圧用袋の仕切部の剛性よりも高い、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項9】
前記押圧用袋が調理液用袋との接合面の反対側の面に補強材を有する、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項10】
複数の調理液が別々に封入された複数の調理液用袋を具えた、請求項1から9のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項11】
前記調理液用袋又は押圧用袋のうちの少なくとも1つが電子レンジのマイクロ波を減衰させる材料からなる、請求項1又は3から10のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項12】
前記調理液用袋が電子レンジのマイクロ波を減衰させる材料からなる、請求項2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項1】
調理液用袋と押圧用袋とが一体化されてなる電子レンジ用調理液封入袋体であって、
前記調理液用袋には調理液が封入され、前記押圧用袋には気体、又は気体と液体とが封入されたものであり、
マイクロ波加熱されたとき、前記押圧用袋により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする、
電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項2】
調理液が封入された調理液用袋と押圧板とが一体化されてなり、
マイクロ波加熱されたとき、前記押圧板により調理液用袋が押圧され、該調理液用袋内の圧力が一定以上になったときに前記調理液を流出させる圧力調整機構を有することを特徴とする、
電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項3】
前記調理液用袋が調理液流出孔を有し、前記圧力調整機構が該調理液流出孔を閉鎖するように接着されたフィルムからなる、請求項1又は2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項4】
前記調理液用袋が調理液流出孔を有し、前記圧力調整機構が調理液流出孔を閉鎖し前記調理液用袋体の厚み方向に貫通しない切込み部からなる、請求項1又は2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項5】
前記気体が空気である、請求項1、3、又は4のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項6】
前記液体が塩化ナトリウム水溶液である、請求項1又は3から5のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項7】
前記調理液用袋の外周部の面積と、前記調理液用袋と押圧用袋の仕切部の面積が同一である、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項8】
前記調理液用袋と押圧用袋の外周面が同一のシートで形成され、該シートの剛性が前記調理液用袋と押圧用袋の仕切部の剛性よりも高い、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項9】
前記押圧用袋が調理液用袋との接合面の反対側の面に補強材を有する、請求項1又は3から6のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項10】
複数の調理液が別々に封入された複数の調理液用袋を具えた、請求項1から9のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項11】
前記調理液用袋又は押圧用袋のうちの少なくとも1つが電子レンジのマイクロ波を減衰させる材料からなる、請求項1又は3から10のいずれかの電子レンジ用調理液封入袋体。
【請求項12】
前記調理液用袋が電子レンジのマイクロ波を減衰させる材料からなる、請求項2の電子レンジ用調理液封入袋体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−161188(P2009−161188A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339429(P2007−339429)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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