説明

電子レンジ調理用容器

【課題】2つの部品点数のみで容器内の圧力をコントロールしながら加熱調理ができ、且つ、主要部が紙製でありながら、耐熱性・耐水性・耐浸透性を有する電子レンジ調理用容器を提供すること。
【解決手段】食材を収納する容器本体1aと容器本体に嵌合される上蓋2aとからなり、容器本体1aと上蓋2aは上下に対向する嵌合当て付け面を有し、嵌合当て付け面に、通気孔21aを設けた電子レンジ調理用容器10aにおいて、容器本体1aは、口縁カール部13aを具えた紙製容器11aを具え、紙製容器11aの内面、及び口縁カール部13aを覆うようにプラスチックフィルムがコーティングされている。容器本体の主要部が紙製のため、廃棄に伴う環境への負荷が軽減され、口縁カール部を設け、紙製容器の内側と口縁カール部全体を覆うようにプラスチックフィルムをコーティングすることで、強度を維持し、耐水性・耐熱性・耐浸透性を具え、口縁カール部の巻きの戻りが防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品や麺類や惣菜等の各種食材を電子レンジにより加熱調理するための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ調理用容器は、食材を密封して保存や搬送ができ、短時間で調理ができる簡便な調理用器具である。そして、このような容器を使用して加熱調理する際には、蒸気圧を自動的にコントロールし、容器内の調味液を容器外部に漏らさず、電子レンジ内や容器外周を汚さないことが重要である。
さらに、美味しく、栄養素をできるだけ減らさず、効率良く調理する為に、食材を素早く高温にすることや、容器内圧力を大気圧より高い蒸気圧でコントロールできる必要があり、その為には、容器の各部品の精度確保が必要不可欠となる。
従来の電子レンジ調理用容器の一例として、特許文献1の容器がある。
【特許文献1】特許第3962377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の容器は、容器本体、上蓋、及びフランジ付キャップからなり、上蓋の上部とキャップのフランジを密着させて蒸気排出の開閉部を構成し、高まった蒸気圧でキャップのフランジを上蓋から押上げて蒸気を排出する構造になっているが、容器本体、上蓋、及キャップという3つの部材から構成されるため、部品点数が多くなり、製造コストが嵩む、また,保管・運搬の際に嵩張るという問題を有していた。
【0004】
また、プラスチック容器は、原料が石油であることから、原油価格の高騰の影響を受け易いばかりでなく、ごみ問題や環境ホルモン等の環境問題を惹き起こすため、そのような問題のない紙製であることが望まれるようになっている。
しかし、通常の紙コップのような紙基材の内面に樹脂をラミネートしただけの容器を使用して電子レンジ調理をすると、容器本体の接合部や、蓋体と容器本体の嵌合部から汁が漏れる、容器が水分を吸収して軟化することによる強度が低下する、蒸気圧によって蓋体が外れ易くなる等の問題がある。
【0005】
そこで、2つの部品点数のみで容器内の圧力をコントロールしながら加熱調理ができ、且つ、主要部が紙製でありながら、耐熱性・耐水性・耐浸透性を有する電子レンジ調理用容器の必要性が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、
食材を収納する容器本体と容器本体に嵌合される上蓋とからなり、容器本体と上蓋は上下に対向する嵌合当て付け面を有し、嵌合当て付け面に、通気孔を設けた電子レンジ調理用容器において、
容器本体は、口縁カール部を具えた紙製容器を具え、
紙製容器の内面、及び口縁カール部を覆うように、プラスチックフィルムがコーティングされていることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器、により、
第2に、
食材を収納する容器本体と容器本体に嵌合される上蓋とからなる電子レンジ調理用容器であって、容器本体の中央部に凸部を具え、凸部と上蓋が当て付く部分に通気孔を設けた電子レンジ調理用容器において、
容器本体は、口縁カール部を具えた紙製容器を具え、
紙製容器の内面、及び口縁カール部を覆うように、プラスチックフィルムがコーティングされていることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器、により前記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器本体の主要部が紙製であるから、環境に配慮した電子レンジ調理用容器を提供することができ、紙製容器の内側及び口縁カール部全体を覆うようにプラスチックフィルムをコーティングすることで、耐水性・耐熱性・耐浸透性を具えることができる。従って、汁物や、水分を多く含む食材であっても、従来どおり、加熱・調理することができる。
また、口縁カール部により、特に、横押しに対する強度を維持することができ、口縁カール部のプラスチックフィルムコーティングにより、巻きの戻りを防ぐことができる。
【0008】
さらに、本発明の電子レンジ調理用容器は、容器本体と上蓋という2点の構成部材のみからなるので、製造コストを低く抑えることができる。
しかも、電子レンジによる加熱調理時に発生する蒸気圧を調整する圧力調整機構が具えられていることにより、加熱調理時には、調味液の漏れや上蓋が外れるのを防止しながら、食材に所定の圧力をかけて、蒸し効果を出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【実施形態1】
【0010】
まず、本発明の第1実施形態について、図1乃至図4により説明する。
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態の電子レンジ調理用容器10a(以下、「容器10a」と略す。)を示す。図1は本発明の第1実施形態の容器本体の縦断面図、図2(A)は本発明の第1実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第1実施形態の容器の通気孔部の縦断面図、図3は、本発明の第1実施形態の容器の嵌合部の拡大縦断面図、図4(A)及び(B)は本発明の第1実施形態の容器の変形例である。
なお、図1以外の図におけるプラスチックフィルムは、紙製容器と一体になっているものとして、図示は省略してあり、説明の便宜上、図1の容器本体の上部周辺の具体的形状は、図2〜4に具体的に例示したものとは異なっている。
【0011】
図2(B)に示すように、容器10aは、食材を収納するための容器本体1aと、容器本体1aに嵌合される上蓋2aからなる。
【0012】
図2(B)に示すように、容器本体1aは、口縁カール部13aが形成された紙製容器11aと、その内面及び口縁カール部13aに積層接着によりコーティングされたプラスチックフィルム12a(図示省略)からなる。
紙製容器11aは、パルプモールド成形等によって製造されたものを、プラスチックフィルム12aは、ポリオレフィン系樹脂等からなるものを好適に使用することができ、周知の真空成形と圧空成形によりコーティングすることができる。
【0013】
上蓋2aは、容器本体内の食材が見えるようにするため、また嵌合部の精度を上げるために、例えば、延伸ポリスチレン(OPS)、耐熱延伸ポリスチレン(耐熱OPS)、又はポリプロピレン(PP)等の耐熱性の良好なプラスチック材料を用い、圧空成形や真空成形等のサーモフォーミング法により成形される。
なお、さらに環境問題を重視する場合には、植物起源の素材から合成できるバイオプラスチックの一つであるポリ乳酸を用いることができる。ポリ乳酸は、生分解性を有するカーボンニュートラルな合成樹脂であるため、前記のプラスチック製上蓋に比べ、高い環境効果をあげることができる。また、抗菌性があることから、食物を扱う容器に好適である。
【0014】
図2(B)に示すように、容器本体1aは、食材収納部と本体嵌合部15a及び口縁カール部13aを具え、上蓋2aは、外周部に上蓋下部嵌合部25aを具え、本体嵌合部15a及び口縁カール部13aと上蓋下部嵌合部25aが一体化されて使用される。
さらに、本体嵌合部15a及び上蓋下部嵌合部25aには、上下に対向する当て付け面16a及び26a、その当て付け面から立上がる嵌合側面に、上下に、外側方に向いて設けられた凸部17a,27aがそれぞれ設けられている(図3参照)。
この本体嵌合部15aの凸部17aが蓋体下部嵌合部25aの凸部27aと嵌合することにより、本体容器1aと蓋体2aが容易に外れないようになっている。また、容器本体の凸部17aの内側の上下方向の寸法を、蓋体の凸部27aの寸法より若干大きくしておくことにより、弾性変形により、通気孔21aから蒸気圧を抜くだけではなく、電子レンジ調理の際に急激に膨張した蒸気の圧力を、容器本体1a及び蓋体2aの嵌合部15a及び25aにおいても一時的に受け、副次的圧力調整機構として機能させることができる(請求項3、4参照)。
【0015】
このようにして、容器内の蒸気の圧力を調整することができるので、密閉した容器を電子レンジによるマイクロ波加熱しても上蓋が外れたりすることはなく、大気圧より高い加圧状態にある水蒸気雰囲気下で調理できるので、蒸し効果を利用した調理が可能となる。
また、容器本体の主要部を紙製とし、口縁カール部も含めてプラスチックフィルムでコーティングすることで、必要な強度のほか、耐熱性、耐水性、耐浸水性を具えることができる。
【0016】
なお、図4にあるように、容器の形状は、円形状のものでなく、多角形、楕円形でも構わず、通気孔の数や形状も図示したものに限定されない。
【実施形態2】
【0017】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態の容器の嵌合部の拡大縦断面図である。
【0018】
第1実施形態の容器は、加熱時に容器内の蒸気を排出し、加熱終了後には圧力調整機構が閉じて容器を密閉するため、加熱終了後に容器内の温度が下がると、容器内が負圧となり、そのまま放置しておくと、負圧に耐え切れず、容器本体、又は上蓋が凹んで変形してしまう恐れがある。多少の負圧であれば、通気孔付近の容器の変形により、容器外部の空気を導入させることができるが、急な減圧又は容器内の食材が汁物である場合等には、液漏れする可能性があり、容器の変形は極力避けなければならない。
特に、本発明のように主要部を紙製とした場合には、上蓋よりも容器本体が潰れる可能性が高くなる。
【0019】
そこで、容器内の負圧状態により容器が変形することを防ぐために、図5のように、容器本体1b及び上蓋2bの嵌合部分の当て付け面16bと26bが蒸気発生前においても完全に密着していない形状のものを用いることができる。
【0020】
この実施形態では、加熱調理に伴って容器内部で発生する蒸気は、常に、通気孔21bを通って外部に排出されるが、外部へ排出される蒸気の量は無制限ではなく、通気孔21bを通り得る制限された量だけであるから、容器内の圧力は大気圧よりは高めに維持され、蒸し効果も発揮される。なお、蒸し効果については従来の密閉式の場合と比べても、殆ど遜色ない程度にすることができる。
【0021】
調理終了後に、容器内部の圧力が低下しようとしても、通気孔21bから空気が流入するため、容器内圧力は低下せず、容器の潰れを防止することができる。
【実施形態3】
【0022】
以下、図6を参照して、第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。
図6(A)は本発明の第3実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第3実施形態の容器の縦断面図である。
【0023】
図6に示すように、容器本体1cは、容器中央部分に凸部14cを具えており、上蓋2cは、通気孔21cを容器本体との嵌合部分25cにではなく、容器本体の凸部14cと当て付く中央部分に具えている。
蒸気発生時には、上蓋の中央部分が上方へ持上げられるため、上蓋上面と容器本体の凸部14cの当て付け面18cが離れ、通気孔21cから、容器内部の蒸気を逃がすことができる。
蒸気が逃げた後は、上蓋2cが弾性で元の状態に戻るため、上蓋2cと容器本体1cは、図6(B)のように、中央部分で密着状態に戻る。
なお、図6に円錐台形状に表わされている凸部14cは、円筒形状又は多角筒形状であっても構わない。
【実施形態4】
【0024】
以下、図7を参照して、第4実施形態について、第3実施形態と異なる点を説明する。
図7は(A)は本発明の第4実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第4実施形態の容器の縦断面図である。
【0025】
第3実施形態では、凸部14cの当て付け面18cが上蓋の中央の扁平な部分と密着する形状であったが、本実施形態では、上蓋に凹部22dを設け、凹部の底面28dに通気孔21dを設けて、凸部14dの当て付け面18dに当て付くようにしてある。このような実施形態であると、容器内部の蒸気の量をより多くすることができるので、蒸し効果を高めることができる。
【0026】
なお、容器本体1と蓋体2との嵌合部分は、図8(a)のように、容器本体が斜面のままであったり、(b)のように、垂直であったり、(c)のように、外向きに「く」の字状であったり、(f)のように、前記「く」の字状部分に、蓋体のR形状を組合わせたり、或いは、後述するように、副次的圧力調整機構として機能するように、(d)又は(e)のように、斜面又は垂直面で、容器本体が蓋体の凸部を嵌合させるための凸部を有するようにし、且つ、容器本体の凸部の内側が、蓋体の凸部の上下動を許容する大きさにすることも考えられる。なお、蓋体の径方向外端は、図示したように、下向きに延びてさらに外側に開いている形状に限定されることはなく、下向きに延びてさらに外側に開いている部分をなくして、水平な端部で終わるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の容器本体の縦断面図。
【図2】(A)は本発明の第1実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第1実施形態の容器の縦断面図。
【図3】本発明の第1実施形態の容器の嵌合部の拡大縦断面図。
【図4】(A)及び(B)は本発明の第1実施形態の容器の変形例。
【図5】本発明の第2実施形態の容器の嵌合部の拡大縦断面図。
【図6】(A)は本発明の第3実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第3実施形態の容器の縦断面図。
【図7】(A)は本発明の第4実施形態の容器の分解上面図、(B)は本発明の第4実施形態の容器の縦断面図。
【図8】(A)〜(F)は、本発明の実施形態の容器本体と蓋体の嵌合部分の異なる実施形態を示した主要部断面図。
【符号の説明】
【0028】
1: 容器本体
11: 紙製容器
12: プラスチックフィルム
13: 口縁カール部
2: 上蓋
10: 電子レンジ調理用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納する容器本体と該容器本体に嵌合される上蓋とからなり、前記容器本体と上蓋は上下に対向する嵌合当て付け面を有し、前記嵌合当て付け面に、通気孔を設けた電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、口縁カール部を具えた紙製容器を具え、
前記紙製容器の内面、及び前記口縁カール部を覆うように、プラスチックフィルムがコーティングされていることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。
【請求項2】
食材を収納する容器本体と該容器本体に嵌合される上蓋とからなる電子レンジ調理用容器であって、前記容器本体の中央部に凸部を具え、前記凸部と上蓋が当て付く部分に通気孔を設けた電子レンジ調理用容器において、
前記容器本体は、口縁カール部を具えた紙製容器を具え、
前記紙製容器の内面、及び前記口縁カール部を覆うように、プラスチックフィルムがコーティングされていることを特徴とする、
電子レンジ調理用容器。
【請求項3】
前記容器本体と上蓋の嵌合部分に、前記上蓋の凸部を嵌合させるための凸部を有する、請求項1又は2の電子レンジ調理用容器の容器本体。
【請求項4】
前記容器本体と上蓋の嵌合部分に設けられた凸部の内側が、前記上蓋の凸部の上下動を許容する大きさである、請求項3の電子レンジ調理用容器の容器本体。
【請求項5】
前記上蓋がポリ乳酸製である、請求項1から4のいずれかの電子レンジ調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−47280(P2010−47280A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212375(P2008−212375)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(306012846)NEWS CHEF株式会社 (30)
【Fターム(参考)】