説明

電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置

【課題】光感度が高く、残留電位が低く、しかも摩耗および傷の発生、膜の剥がれといった機械的劣化に対する耐久性に優れ、長期間安定した品質の画像が得られる電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジおよび画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に、感光層を有する電子写真感光体において、感光層が、第1バインダー樹脂と、下記式[1]


(式[1]中、Ar〜Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2以上の整数を表し、Zは一価の有機残基を表し、mは0〜4の整数を表す。)で表される電荷輸送性材料とを少なくとも含有し、電荷輸送性材料の含有率が、第1バインダー樹脂100質量部に対して、35質量部以上95質量部以下であることを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジおよび画像形成装置に関する。詳細には、特定のエナミン系電荷輸送性材料とバインダー樹脂とを一定比率で含有する電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性に優れ且つ高品質の画像が得られること等から、複写機、各種プリンター、印刷機等の分野で広く使われている。この電子写真技術の中核となる電子写真感光体としては、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)が使用されている。
【0003】
近年の電子写真プロセスの高速化に伴い、電子写真感光体を高感度化および高速応答化することが必要とされている。高感度化のためには、電荷発生材料の最適化だけでなく、それとのマッチングの良好な電荷輸送性材料の開発が必要である。高速応答化のためには、高移動度、高感度、かつ露光時に十分な低残留電位を示す電荷輸送性材料の開発が必要である。
【0004】
電子写真プロセスにおいて感光体は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等の作用を反復して受け、さまざまなストレスを受けるため劣化する。該劣化により感光体の電気的、化学的特性が変化するため、常に良好な画像を形成することは困難であった。
また、クリーニングブレード、磁気ブラシ等の摺擦や、現像剤、紙との接触等による感光層表面の摩耗や傷の発生、膜の剥がれといった、機械的劣化により感光層表面に損傷が生じる。該損傷は、コピー画像上に現れやすく直接画像品質を損うため、感光体の寿命を制限する大きな要因となっている。すなわち高寿命の感光体を開発するためには、電気的、化学的耐久性を高めると同時に機械的強度を高めることも必要である。
【0005】
有機系電子写真感光体は、通常バインダー樹脂により電荷輸送性材料が結着されており、実質的に感光層の強度を決めるのはバインダー樹脂である。バインダー樹脂と電荷輸送性材料を含有する感光層においては、電荷輸送性材料のドープ量が多いほど、十分な機械強度を持たせ難くなる。逆に、電荷輸送性材料のドープ量が少なすぎると、光感度、残留電位、さらには応答性等の特性が悪化する場合がある。
【0006】
感光体の感度向上、残留電位の低減、さらに応答性向上を目的として、さまざまな電荷輸送性材料が多数提案されている。例えば、特許文献1および2では、特定構造のエナミン系電荷輸送剤とポリアリレート樹脂とを組み合わせてキャリア輸送層(電荷輸送層)を形成することが実施例に記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に記載のエナミン系電荷輸送剤とポリアリレート樹脂とを組み合わせて使用する場合は、電荷輸送性材料の含有量が高いため、感光層表面の摩耗や傷が発生しやすく、実用化できるほどの性能が得られない場合があるという問題があった。
【特許文献1】特開平6−348045号公報
【特許文献2】特許公報第2653080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑みて、光感度が高く、残留電位が低く、しかも摩耗および傷の発生、膜の剥がれといった機械的劣化に対する耐久性に優れ、長期間安定した品質の画像が得られる電子写真感光体、該電子写真感光体を用いた電子写真カートリッジおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定構造のエナミン系電荷輸送性材料とバインダー樹脂とを一定の比率で組み合わせて用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
第1の本発明は、導電性支持体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、第1バインダー樹脂と、下記式[1]
【0010】
【化1】

(式[1]中、Ar〜Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2以上の整数を表し、Zは一価の有機残基を表し、mは0〜4の整数を表す。)で表される電荷輸送性材料とを少なくとも含有し、
該電荷輸送性材料の含有率が、第1バインダー樹脂100質量部に対して、35質量部以上95質量部以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0011】
第1の本発明の電子写真感光体は、感光層が第1バインダー樹脂と電荷輸送性材料とを所定の比率で備えているため、光感度が高く、残留電位が低く、しかも摩耗および傷の発生、膜の剥がれといった機械的劣化に対する耐久性に優れ、長期間安定した品質の画像が得られる。第1の本発明の電子写真感光体は、安定性が極めて良好であり、耐久性に優れているため、高速の複写機やカラープリンタ等の画像形成装置に好適に用いることができる。
【0012】
第1の本発明の電子写真感光体において、感光層は、電荷発生層および電荷輸送層を備えて構成され、導電性支持体上に、電荷発生層および電荷輸送層がこの順で積層されており、該電荷輸送層が、前記第1バインダー樹脂および前記電荷輸送性材料を含有していることが好ましい。感光層をこのような順積層型とすることにより、バランスの取れた光導電性を発揮することができる。
【0013】
第2の本発明は、第1の本発明の電子写真感光体、ならびに、当該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した前記電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、および、電子写真感光体上に形成された前記静電潜像を現像する現像装置からなる群から選ばれる少なくとも1つ、を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジである。これにより第1の本発明の電子写真感光体の効果を備えた電子写真感光体カートリッジが得られる。
【0014】
第3の本発明は、請求項1または2に記載の電子写真感光体、当該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した前記電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、および、電子写真感光体上に形成された前記静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置である。これにより第1の本発明の電子写真感光体の効果を備えた画像形成装置が得られる。
【発明の効果】
【0015】
第1の本発明の電子写真感光体は、感光層が第1バインダー樹脂と電荷輸送性材料とを所定の比率で備えているため、光感度が高く、残留電位が低く、しかも摩耗および傷の発生、膜の剥がれといった機械的劣化に対する耐久性に優れ、長期間安定した品質の画像が得られる。第1の本発明の電子写真感光体は、安定性が極めて良好であり、耐久性に優れているため、高速の複写機やカラープリンタ等の画像形成装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を備え、該感光層が第1バインダー樹脂と電荷輸送性材料を含有している。まず、第1バインダー樹脂について説明する。
【0017】
<第1バインダー樹脂>
本発明に係る第1バインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましく、ポリアリレート樹脂がより好ましい。これらの第1バインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。また、これらの第1バインダー樹脂は、いずれか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0018】
本発明に係る第1バインダー樹脂の粘度平均分子量は、下限が通常8,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、上限が通常300,000以下、好ましくは100,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。粘度平均分子量が小さすぎると樹脂の機械的強度が低下し実用的でなく、逆に大きすぎると導電性支持体上に該感光層を形成する際、適当な膜厚に塗布形成することが困難である。
【0019】
本発明において使用する第1バインダー樹脂の代表例として、以下の構造を有するM〜Z’の樹脂が挙げられる。ただし、本発明において使用する第1バインダー樹脂は、これらのポリマーに限定されるものではない。
【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
(電荷輸送性材料)
次に、電荷輸送性材料について説明する。本発明において、電子写真感光体の感光層に含まれる電荷輸送性材料は、下記式[1]で表されるエナミン化合物である。
【0033】
【化14】

【0034】
式[1]中、Ar〜Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2以上の整数を表し、Zは一価の有機残基を示し、mは0〜4の整数を表す。
【0035】
一般式[1]中、Ar〜Arとしては、6〜20の炭素原子を有するアリール基が好ましく、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、フェナントリル、ピレニルが挙げられる。製造コストの面で、フェニル、ナフチルのような6〜10の炭素原子を有するアリール基が特に好ましい。さらに、置換基を有する場合、該置換基としては、Hammett則における置換基定数σpが0.20以下である置換基が好ましい。
【0036】
ここで、Hammett則は、芳香族化合物における置換基が芳香環の電子状態に与える効果を説明するために用いられる経験則であって、置換ベンゼンの置換基定数σpは、置換基の電子供与/吸引の程度を定量化した値といえる。σp値が正であれば置換安息香酸の方が無置換のものより酸性が強い、つまり置換基は電子吸引性置換基となる。逆にσp値が負であると、置換基は電子供与性置換基となる。表1は、代表的な置換基のσp値である(日本化学会編、「化学便覧 基礎編II 改訂4版」、丸善株式会社、平成5年9月30日発行、p.364〜365)。
【0037】
【表1】

【0038】
このような置換基あるいは有機残基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、フェニル、4−トリル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。中でも、電気特性の面から、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0039】
前記一般式[1]中、一価の有機残基Zとしては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、フェニル、4−トリル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。中でも、電気特性の面から、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0040】
前記一般式[1]中、nとしては、2以上の整数が好ましい。相溶性や製造コスト等の観点から総合的に考えると、n=2の場合が特に好ましい。mとしては、0〜1の整数が好ましいが、製造コストの観点から考え、m=0の場合が特に好ましい。
【0041】
一般式[1]で表される電荷輸送性材料(エナミン系化合物)の代表例として、以下の例示化合物CT−1〜CT−14が挙げられる。ただし、本発明における電荷輸送性材料はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
【化15】

【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

【0048】
【化21】

【0049】
【化22】

【0050】
【化23】

【0051】
【化24】

【0052】
【化25】

【0053】
【化26】

【0054】
【化27】

【0055】
【化28】

【0056】
これらの電荷輸送性材料(エナミン誘導体)は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、本発明の例示化合物CT−3は、次の反応式に従って製造することができる。
【0057】
【化29】

【0058】
ジアリールアミン誘導体Aをp−トルエンスルホン酸等の酸触媒の存在下で、ジアリールアセトアルデヒドBと還流脱水することによって縮合させ、目的物である電荷輸送性材料CT−3を得ることができる。
本発明においては、式[1]で表される電荷輸送性材料に加えて、これら以外の電荷輸送性材料を併用しても構わない。併用する電荷輸送性材料としては、公知の電荷輸送性材料のいずれも使用可能であるが、正孔輸送性能を有するものが好ましく、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリグリシジルカルバゾール、ポリアセナフチレン等の高分子化合物、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体等の低分子化合物、もしくはこれらが複数結合されたものが使用でき、これらの中でも、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、アリールアミン誘導体、もしくはこれらが複数結合されたものが好適に用いられる。
式[1]で表される電荷輸送性材料以外の電荷輸送性材料を併用する場合、併用する電荷輸送性材料の量に特に制限はないが、電荷輸送性材料全体を基準(100質量%)として、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を有する。感光層の形態は特に限定されず、従前知られているいずれの形態であってもよいが、具体的には、電荷発生物質を含んだ層と電荷輸送性材料を含んだ層とを積層した積層型感光体と、電荷輸送性材料を含む層に電荷発生物質を分散させた単層型感光体が挙げられる。また、積層型感光体には、電荷発生層、電荷輸送層を導電性支持体側からこの順に積層した順積層型感光体と、逆に積層した逆積層型感光体があり、本発明ではいずれの構成でもよいが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光体が好ましい。積層型感光体の場合は、電荷輸送層が上記した第1バインダー樹脂および電荷輸送性材料を含有している。
【0060】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
【0061】
陽極酸化皮膜は、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成することができ、中でも、硫酸中での陽極酸化処理することにより形成することが好ましい。硫酸中での陽極酸化の場合、処理条件は通常のものであれば特に限定されないが、硫酸濃度は100g/l〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2g/l〜15g/l、液温は15℃〜30℃、電解電圧は10V〜20V、電流密度は0.5A/dm〜2A/dmの範囲内に設定されるのが好ましい。
【0062】
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことが好ましい。封孔処理は、公知の方法で行われればよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケル等の金属塩を含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
【0063】
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、特に限定されないが、3g/l〜6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度は、下限が通常25℃以上、好ましくは30℃以上、上限が通常40℃以下、好ましくは35℃以下である。また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、下限が通常4.5以上、好ましくは5.5以上、上限が通常6.5以下、好ましくは6.0以下である。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることができる。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1分〜3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性をさらに改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
【0064】
上記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることができるが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5g/l〜20g/lとするのが好ましい。処理温度は、下限が通常80℃以上、好ましくは90℃以上、上限が通常100℃以下、好ましくは98℃以下である。また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0〜6.0とするのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることができる。処理時間は、通常10分以上、好ましくは15分以上である。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。さらに、実質上塩類を含まない高温水や高温水蒸気で処理しても構わない。次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件にすることが必要になり、その場合には生産性が悪くなるとともに、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好ましい。
【0065】
導電性支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ホールブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
【0066】
<下引き層>
下引き層としては、樹脂、または、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中では、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。また、該金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも下引き層の特性および下引き層を形成するための分散液等の安定性から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましい。
【0067】
下引き層は、上記金属酸化物粒子が第3バインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられる第3バインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示すため好ましい。
金属酸化物粒子の含有割合は特に限定されないが、第3バインダー樹脂を基準(100質量%)として、10質量%〜500質量%とすることが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができ、感光体特性および塗布性から、0.1μm〜20μmが好ましい。また、下引き層は、公知の酸化防止剤等を含んでいても良い。
【0068】
<電荷発生層>
本発明の感光体が積層型感光体である場合、感光層は電荷発生物質を含有する電荷発生層を備えている。電荷発生物質は単独で用いてもよいし、いくつかを混合して用いてもよい。通常電荷発生物質が第2バインダー樹脂に結着した形で電荷発生層が形成される。電荷発生層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0069】
本発明の感光体に用いる電荷発生物質としては、例えば、セレンおよびその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等の有機顔料等各種光導電材料が使用できる。中でも、有機顔料を使用することが好ましく、フタロシアニン顔料、アゾ顔料を使用するのがより好ましい。
【0070】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、あるいは、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等が配位したフタロシアニン類が使用される。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit.Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン顔料は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかを混合して用いても良い。ここでのフタロシアニン顔料の混合方法としては、それぞれの顔料を製造後に混合してもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態としたものであってもよい。処理工程の処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
【0071】
電荷発生層における第2バインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等を使用することができる。第2バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、第2バインダー樹脂100質量部に対して、電荷発生物質が30質量部〜500質量部の範囲である。また、電荷発生層の膜厚は、下限が通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、上限が通常2μm以下、好ましくは0.8μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。
また電荷発生層は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。さらに、上記物質の蒸着膜であってもよい。
【0072】
<電荷輸送層>
本発明の感光体が積層型感光体である場合、感光層は、式[1]で表される電荷輸送性材料および上記した第1バインダー樹脂を含有する電荷輸送層を有する。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0073】
電荷輸送層において、電荷輸送性材料の含有率は、第1バインダー樹脂100質量部に対して、下限が通常35質量部以上、好ましくは45質量部以上、より好ましくは50質量部以上、上限が通常95質量部以下、好ましくは85質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。電荷輸送性材料の含有率が低すぎると、良好な電気特性が得られず、画像品質が低下する場合がある。また、電荷輸送性材料の含有率が高すぎると、電荷輸送層に十分な強度を付与できなくなる。さらに、露光後の残留電位が極端に低くなり、そのため過剰にトナーが搬送されて、トナーの消費量が多くなってしまう。
【0074】
電荷輸送層の膜厚は、下限が通常5μm以上、好ましくは10μm以上、上限が通常50μm以下、好ましくは45μm以下である。膜厚が薄すぎると摩耗により感光体の寿命が短くなり、膜厚が厚すぎると露光光や電荷の拡散により画像の解像度が悪化する傾向がある。
【0075】
なお、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤等を含有させても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
【0076】
<単層型電子写真感光体>
単層型電子写真感光体の感光層の場合には、上記電荷輸送層における第1バインダー樹脂と電荷輸送性材料の配合比と同様にして配合した材料中に、上記の電荷発生物質が分散されて感光層が形成される。
【0077】
その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが望ましく、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、電荷発生物質の量は、感光層全体を基準(100質量%)として、下限が好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、上限が好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0078】
単層型感光体の感光層の膜厚は、下限が通常5μm以上、より好ましくは10μm以上、上限が通常50μm以下、より好ましくは45μm以下である。またこの場合にも成膜性、可撓性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えば、シリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0079】
<保護層>
積層型および単層型いずれの感光体においても、感光層の上に感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けても良い。
【0080】
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、保護層はフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0081】
<溶媒と分散媒>
感光体を構成する各層を塗布形成するための塗布液の作製に用いられる溶媒あるいは分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を併用して用いられる。
【0082】
<層形成方法>
感光体を構成する各層は、各層を形成するための塗布液または分散液を支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、スパイラル塗布、リング塗布、バーコート塗布、ロールコート塗布、ブレード塗布等により塗布し、乾燥することにより形成される。
【0083】
スプレー塗布法としては、エアスプレー、エアレススプレー、静電エアスプレー、静電エアレススプレー、回転霧化式静電スプレー、ホットスプレー、ホットエアレススプレー等があるが、均一な膜厚を得るための微粒化度、付着効率等を考えると、回転霧化式静電スプレーにおいて、再公表平1−805198号公報に開示されている搬送方法、すなわち円筒状ワークを回転させながらその軸方向に間隔を開けることなく連続して搬送することにより、総合的に高い付着効率で膜厚の均一性に優れた電子写真感光体を得ることが好ましい。
【0084】
スパイラル塗布法としては、特開昭52−119651号公報に開示されている注液塗布機またはカーテン塗布機を用いた方法、特開平1−231966号公報に開示されている微小開口部から塗料を筋状に連続して飛翔させる方法、特開平3−193161号公報に開示されているマルチノズル体を用いた方法等がある。
【0085】
浸漬塗布法の場合は、塗布液または分散液の作製において、単層型感光層の場合、および積層型感光層の電荷輸送層の場合には、塗布液等の全体を基準(100質量%)として、全固形分濃度の下限を好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、上限を好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下とする。また、塗布液等の粘度は、下限が好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上、上限は好ましくは700mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以下に調整するように温度等を調整すればよい。積層型感光層の電荷発生層の場合には、塗布液等の全体を基準(100質量%)として、固形分濃度の下限は好ましくは1質量%以上、上限は好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、粘度は好ましくは0.1mPa・s以上10mPa・s以下である。
【0086】
その後塗布膜を乾燥するが、必要かつ充分な乾燥が行われるように乾燥温度、時間を調整する。乾燥温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、上限が通常250℃以下、好ましくは170℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。乾燥方法としては、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機および遠赤外線乾燥機を用いた方法が挙げられる。
【0087】
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0088】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(像露光手段)3、および現像装置(現像手段)4を備えて構成され、さらに、必要に応じて転写装置(転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)6、および定着装置(定着手段)7が設けられる。
【0089】
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、およびクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0090】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置等がよく用いられる。
【0091】
なお、電子写真感光体1および帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、電子写真感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーがなくなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。さらに、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
【0092】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光(像露光)を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED等が挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光等で露光を行えばよい。
【0093】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像等の乾式現像方式や、湿式現像方式等の任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、および、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジ等の容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0094】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等を被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
【0095】
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1および供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43および現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0096】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂等の樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅等の金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は4.9×10−2N/cm〜4.9N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0097】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを撹拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
【0098】
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法等を用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4μm〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト状の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化できるため好適に用いられる。
【0099】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写等の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法等、任意の方式を用いた装置を使用することができる。図1では、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとして示されている。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙、媒体、被転写体)Pに転写するものである。
【0100】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナー等、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。ただし、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆どない場合には、クリーニング装置6はなくても構わない。
【0101】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71および下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部および下部の各定着部材71、72は、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、さらにテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シート等の公知の熱定着部材を使用することができる。さらに、各定着部材71、72は、離型性を向上させるために、シリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0102】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0103】
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行われる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
【0104】
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行う。
【0105】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
【0106】
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
【0107】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0108】
また、画像形成装置はさらに変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、さらには複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【0109】
<電子写真感光体カートリッジ>
さらに、電子写真感光体カートリッジは、上記のような電子写真感光体1および帯電装置2を備えた構成以外の構成としてもよい。具体的には、電子写真感光体1、ならびに、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、および定着装置7からなる群から選ばれる1以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真感光体カートリッジ)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。このような形態の電子写真感光体カートリッジとすることで、例えば、電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「質量部」を示す。
【0111】
<電荷輸送性材料(エナミン化合物)の製造>
電荷輸送性材料(エナミン化合物)の製造について、CT−3を代表として説明する。
(製造例1:CT−3の製造)
窒素雰囲気下、還流管、Dean−stark分水器を順次に反応器にセットし、N,N’−ジ(p−トリル)ベンジジン7.29g(20mmol)、ジフェニルアセトアルデヒド8.63g(44mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.20gをそれぞれ反応器に仕込み、撹拌をしながら、キシレン50mlに溶解した。その後、140℃を維持しながら、2時間還流脱水し、室温まで冷却した。反応液とトルエン/脱塩水(v/v=1:1)を混合撹拌し、分液した。得られた有機層をNaOHの水溶液(1N)で洗浄、分液し、さらに有機層を脱塩水2〜3回で洗浄、分液した。得られた有機層の溶媒を減圧留去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル400g、展開溶媒:トルエン/ヘキサン=1/2)に通し、さらにメタノールによる再沈殿で精製した。真空乾燥した後、上記の例示化合物CT−3を黄色い粉末として得た(収量10.81g、収率75%、純度99.5%)。なお、純度は、高速液体クロマトグラフィーのチャートの単純面積比率値から算出した。この化合物のIRスペクトル(JASCO FT/IR−350 spectrophotometer)を図2に示す。
【0112】
<実施例1:電子写真感光体A1>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着層(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その導電性支持体のアルミニウム蒸着層上に、以下の下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。
【0113】
下引き層用分散液の調製は以下の手法で行った。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機(カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールのボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、および、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表される化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表される化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層分散液を得た。
【0114】
【化30】

【0115】
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図3に示す粉末X線回折スペクトルを有するD型のオキシチタニウムフタロシアニン10部を1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行い顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液160部と、ポリビニルブチラール(電気化学工業社製、商品名#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部と、適量の1,2−ジメトキシエタンとを混合して、最終的に固形分濃度4.0質量%の分散液を作製した。
この分散液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイアバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
【0116】
次に、製造例1で合成した電荷輸送性材料(CT−3)40部、第1バインダー樹脂N100部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80質量%、トルエン20質量%)640部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。この液を上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートA1を作製した。なお、ポリアリレート樹脂Nの粘度平均分子量は34,700であった。
【0117】
用いられた第1バインダー樹脂の粘度平均分子量の測定法は以下の通りである。ポリアリレート樹脂をジクロロメタンに溶解し、濃度Cが6.00g/Lとなる溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間tが136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
【0118】
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
【0119】
<実施例2〜32(電子写真感光体A2〜A32)、比較例1〜16(電子写真感光体P1〜P16)>
表2または表3に示した第1バインダー樹脂と電荷輸送性材料を使用した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体A2〜A32、電子写真感光体P1〜P16を得た。第1バインダー樹脂の粘度平均分子量、第1バインダー樹脂100質量部に対する電荷輸送性材料の使用量を、表2および表3に示した。
【0120】
<特性評価>
製造した電子写真感光体A1〜A32、P1〜P16について以下の電気特性試験と摩耗試験を行った。結果を表2および表3に示した。
(電気特性試験)
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを外径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、感光体の初期表面電位が−(マイナス。以下同じ。)700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cmで露光したときの100ミリ秒後の露光後表面電位(以下、VLと呼ぶことがある。)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとし、高速応答の条件とした。また、感光体表面電位が、−700Vから−350Vになるまでに要した半減露光エネルギーE1/2(μJ/cm)を求めた。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%(以下、NN環境と呼ぶことがある。)で行った。
【0121】
(摩耗試験)
上記感光体シートを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(Taber社製)により、摩耗評価を行った。試験条件は、23℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS−10Fを用いて、荷重なし(摩耗輪の自重)で1000回回転後の摩耗量を試験前後の質量を比較することにより測定した。
【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
以上の結果より、一般式[1]で表される本発明のエナミン系電荷輸送性材料を用いた感光体は、感光層における電荷輸送性材料の含有率が、第1バインダー樹脂100質量部に対して35質量部以上95質量部以下の場合に、電気特性と耐摩耗性とのバランスが良好となり、好ましい特性を示すことがわかった。
【0125】
<実施例33>
CuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、9.3°、13.2°、26.2°および27.1°に主たる回折ピークを示すA型のオキシチタニウムフタロシアニン10部、ポリビニルブチラール(電気化学工業社製、商品名:デンカブチラール #6000C)2.5部、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHH)2.5部、1,2−ジメトキシエタン450部、および4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン50部を混合し、サンドグラインドミルで粉砕、分散処理を行った。このようにして得られた分散液を、直径30mm、長さ357mmの、表面をアルマイト処理したアルミニウム製チューブ面に、膜厚が0.4μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
【0126】
次に、この電荷発生層上に、電荷輸送性材料(CT−3)40部、ポリアリレートY100部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(質量比8:2)500部に溶解させた溶液を塗布し、乾燥後の膜厚が33μmとなるように電荷輸送層を設けて感光体を作製した。このようにして得られた感光体を、キヤノン社製デジタル複写機GP405の電子写真カートリッジに搭載し、画像を形成し、形成された画像の1枚目(初期画像)と、30000枚目(耐刷後画像)の画質を評価した。また、その際の感光体の感光層の膜減り量を、感光層厚みの変化から計測した。結果を表4に示す。
【0127】
<実施例34〜48(電子写真感光体A34〜A48)、比較例17〜20(電子写真感光体P17〜P20)>
表4に示すバインダー樹脂と電荷輸送性材料を使用した以外は、実施例33と同様にして、電子写真感光体A34〜A48、電子写真感光体P17〜P20を得た。なお、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、表2に示したものと同様である。
【0128】
【表4】

【0129】
以上の結果より、本願発明の構成とした場合に限り、繰り返し使用した場合の摩耗による膜減り量が抑制され、かつ、良好な初期画像を形成することが可能で、しかも繰り返し画像形成した耐刷後でも良好な画像が得られることがわかった。
【0130】
<比較例21〜28(電子写真感光体P21〜P28)>
下記の電荷輸送物質CT−15、CT−16をそれぞれ用い、バインダー樹脂を、表5に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして、比較例としての電子写真感光体P21〜P28を得た。なお、バインダー樹脂の粘度平均分子量、電荷輸送物質の使用量も、表5に示した。
【0131】
【化31】

【0132】
【化32】

【0133】
【表5】

【0134】
以上の結果より、公知のエナミン系電荷輸送性材料CT−15、CT−16を、本発明範囲内の比較的高部数で用いた感光体は、耐摩耗性は比較的良好であるものの、電気特性は、一般式[1]で表される本発明のエナミン系電荷輸送性材料を用いた感光体に比べ、明らかに劣ることが分った。従って、エナミン類縁体を電荷輸送材料として用いた感光体としては、やはり一般式[1]で表される本発明のエナミン系化合物を含有する場合に限り、電気特性と耐摩耗性とのバランスが良好となり、好ましい特性を示すことがわかった。
【0135】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジおよび画像形成装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の一実施例を示す概念図である。
【図2】本発明の例示化合物CT−3のIRスペクトルである。
【図3】実施例で用いたD型のオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【符号の説明】
【0137】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、第1バインダー樹脂と、下記式[1]
【化1】

(式[1]中、Ar〜Arは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2以上の整数を表し、Zは一価の有機残基を表し、mは0〜4の整数を表す。)で表される電荷輸送性材料とを少なくとも含有し、該電荷輸送性材料の含有率が、第1バインダー樹脂100質量部に対して、35質量部以上95質量部以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記感光層が、電荷発生層および電荷輸送層を備えて構成され、前記導電性支持体上に、電荷発生層および電荷輸送層がこの順で積層されており、
該電荷輸送層が、前記第1バインダー樹脂および前記電荷輸送性材料を含有している、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子写真感光体、当該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した前記電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、および、電子写真感光体上に形成された前記静電潜像を現像する現像装置、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−186967(P2009−186967A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153599(P2008−153599)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】