説明

電子写真感光体の検査方法およびリサイクル方法

【課題】リサイクルによっても感光体を新品同様に形成することができ、このリサイクル品が新品として製造されるものとも性能的に劣ることも無く、地球環境にも優しい感光体の製造にも寄与することのできる電子写真感光体用支持体のリサイクル方法および検査方法を提供すること。
【解決手段】管状もしくは円筒状の支持体の上に感光機能膜が形成された前記支持体の端部に蛍光剤(波長200nm〜420nmの光が照射されると460nm以上の蛍光を発する蛍光剤)を含有する接着剤を用いて固定された駆動用フランジを前記支持体より分離し、前記支持体の内面に波長200nm〜420nmの光を照射し、460nm以上の蛍光を測光して、前記支持体の内面の接着剤の有無を検査する電子写真用感光体のリサイクル方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる寸法精度に優れた電子写真感光体のリサイクル時の検査に関する方法であり、特に接着剤で固定された駆動用フランジを分離した際に電子写真感光体の内面(即ち、支持体の内面)に残る接着剤の固形物の残留状態を調べる電子写真感光体の検査方法およびこの方法を用いる電子写真感光体用支持体のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真感光体は、管状もしくは円筒状のアルミニウムもしくはアルミニウム合金などの導電性の支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、オーバーコート層等からなる感光機能膜を形成し、その後、複写機、レーザープリンタ等の画像形成装置の中で駆動させる為の駆動手段を取り付ける。
そしてこの駆動手段は、上記した支持体上に感光機能膜が形成された管状もしくは円筒状の電子写真用感光体(単に感光体ということがある)の端部に駆動用フランジを固定して設置される。
この駆動用フランジの固定方法は、締まり嵌めで圧入したり、カシメ、接着剤による接着等を用いて行われる。
【0003】
電子写真感光体で用いられる支持体のリサイクルを考慮した場合、固定方法として前記したカシメは不向きである。これは、カシメにより駆動用フランジを支持体に固定する場合、支持体を折り曲げもしくは絞って駆動用フランジと支持体とを繋ぎ合わせたり、又は、駆動フランジ側を変形させて支持体に食い込ませて固定する。このように支持体を変形させるため、繰り返しカシメを行うと支持体精度を悪化させるので、リサイクルにはカシメは不向きである。また、締まり嵌めによる圧入の場合、支持体と駆動用フランジの膨張率の違いにより、保管状態に拠っては駆動用フランジが電子写真感光体から外れる惧れがある。この為、接着剤を用いて固定したり、締まり嵌めによる圧入と接着剤とを併用して固定する方法が取られている。
【0004】
電子写真感光体をリサイクルする場合、先ず、駆動用フランジを取り外してから感光機能膜を除去する。そして感光機能膜を除去したリサイクルされた支持体に再び感光機能膜を形成した後、駆動用フランジを再固定する。
このリサイクルの過程で、駆動用フランジを取り外した後、接着剤の固形物(以下、固形物あるいは接着剤ということがある)が支持体の内面に残る可能性がある。
電子写真感光体の内面(支持体の内面)にこの接着剤の固形物が残っていると、感光機能膜を除去する際に、電子写真感光体を治具に固定できず、感光機能膜の除去が不完全であったり、電子写真感光体が治具に引っかかり設備のトラブルを引き起こしたりする。また、リサイクルした支持体上に感光機能膜を再度形成する際に、リサイクルした支持体を治具で正確に固定できず、正常な感光機能膜が形成できなかったり、リサイクルした支持体が治具に引っかかり設備のトラブルを引き起こす他、電子写真感光体の内面に付着した感光機能膜の塗工液の除去する工程がある場合、十分に塗工液を除去できないことがある。また感光機能膜が正常に形成できた場合でも、再度駆動用フランジを取り付ける際、支持体と駆動用フランジとの間に接着剤の固形物が挟まり、この接着剤の固形物の厚さの分だけ支持体と駆動用フランジの中心軸にずれが生じたり、支持体の変形が起きたりし、昨今のさらなる高精度が求められている電子写真用感光体では、その精度を得ることが益々できない。
その結果、電子写真感光体で用いられた支持体をリサイクルする際に、支持体の内面に固形物が残る場合には、上記した様々な不具合が生じる為に、固形物が残留していない物だけをリサイクルする必要性がある。
【0005】
このような固形物の残留状態を検査する方法として、検査員の目視による検査の他、管の内面や穴の中の検査方法として、様々な検査法が知られている。
たとえば特許文献1には、電子写真感光体の内面に光を照射し、この内面の正常部と検査対象部とで光量を比較し、正常部と検査対象部での反射光量値を比較して塗液を塗工して感光層を構成する塗膜を形成して製造した電子写真用円筒体の内面検査方法が知られている。
【0006】
また特許文献2には、電荷輸送層塗工後の電子写真感光体の内面に波長250nm〜420nmの紫外光あるいは、近紫外光を照射し、電子写真感光体内部に残存する電荷輸送層塗工液あるいはその固形物が該紫外光などを受けて出す蛍光をセンサーヘッドで測光することにより、電荷輸送層塗工液の固化物の付着状態を検査する検査方法が知られている。
【0007】
また特許文献3には、表面に少なくとも光導電層を有する円筒状導電性支持体の端部に感光体駆動用部品を着色した接着剤を使用し、この接着剤が電子写真感光体表面に誤って付着した欠陥品を製造過程及び検査過程で容易に判別することができる方法の発明が知られている。
【0008】
【特許文献1】特許第4077258号公報
【特許文献2】特開2007−206320号公報
【特許文献3】特開平08−30144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、リサイクル性に念頭をおいて検査する点に着目した発明は開示されていないと言える。
本発明は、上述したリサイクルによっても感光体を新品同様に形成することができ、このリサイクル品が新品として製造されるものとも性能的に劣ることも無く、地球環境にも優しい感光体の製造にも寄与することのできる電子写真感光体用支持体のリサイクル方法および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、管状もしくは円筒状の支持体の上に感光機能膜が形成された前記支持体の端部に波長200nm〜420nmの光が照射されると460nm以上の蛍光を発する蛍光剤を含有する接着剤を用いて固定された駆動用フランジを前記支持体より分離し、前記支持体の内面に波長200nm〜420nmの光を照射し、460nm以上の蛍光を測光して、前記支持体の内面の接着剤の有無を検査する電子写真用感光体の検査方法を特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記接着剤は前記蛍光剤が1〜10重量%含有されている電子写真用感光体の検査方法を特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれかにおいて、前記波長200nm〜420nmの範囲の光の光源が、波長250〜420nmの紫外LEDを用いる電子写真用感光体の検査方法を特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記蛍光を測光する手段は、その分光感度が460nm以上である電子写真用感光体の検査方法を特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記蛍光を測光する手段は、その受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターが設けられている電子写真用感光体の検査方法を特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の検査方法を用い、前記支持体の内面の接着剤の有無を検査し、その接着剤の量が所定値以内のときは、前記支持体を電子写真感光体用支持体として再使用する電子写真感光体用支持体のリサイクル方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予め 電子写真用感光体の製造時に駆動用フランジの固定に用いる接着剤として波長200nm〜420nmの光が照射されると460nm以上の蛍光を発する蛍光剤を含有する接着剤を用い、リサイクルする際、電子写真用感光体から駆動用フランジを分離した後、電子写真感光体の内面に波長250nm〜420nmの紫外〜近紫外光を照射し、電子写真感光体内部に残留している接着剤が、紫外〜近紫外光を受けて出す蛍光を、分光感度が460nm以上の受光手段で測光することにより、電子写真感光体内面に残った接着剤固形物の残留状態を検査できるので、感光機能膜の再形成時や駆動用フランジの再取り付け時の不具合を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の検査方法などについて、実施形態により詳細に説明する。
本発明は、管状もしくは円筒状の支持体の表面に感光機能膜が形成された電子写真感光体の前記支持体の端に波長200nm〜420nmの光が照射されると460nm以上の蛍光を発する蛍光剤を含有する接着剤を用いて駆動用フランジが固定された電子写真感光体において、駆動用フランジを固定する接着剤に蛍光剤が含有された接着剤を用い、リサイクルする際に、電子写真感光体から駆動用フランジを分離した後に電子写真感光体の支持体の内面に波長200nm〜420nmの紫外光あるいは近紫外光を照射して、電子写真感光体の内面の接着剤の残留物をその蛍光を受光手段で測光して、電子写真用感光体の内面に残留した接着剤の残留状態を検査することを特徴とする。
【0013】
電子写真感光体の前記支持体としては、アルミニウムもしくはアルミニウム合金等の金属が用いられ、また駆動用フランジに樹脂製のものが用いられる可能性が高い。これら金属と合成樹脂とは、市販の接着剤を用いて固定することができる。このような接着剤として、駆動用フランジの取り付け後、速やかに固化し固定される接着剤の中で固化(重合)したときに紫外線透過性を有する接着剤が選択され、中でもシアノアクリレート系接着剤などのいわゆる瞬間接着剤を用いる事が好ましい。しかして瞬間接着剤は固化時に白化現象を生じない品番のものが特に好ましく選ばれる。このような前記したフランジとして樹脂製のものが用いられる場合、たとえばポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、アクリル樹脂から選択される1種または2種以上、さらにこれらの樹脂とポリエチレン樹脂などのポリオレフィンを含む樹脂、さらにポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロンなどのエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
【0014】
この接着剤には波長200nm〜420nmの光(紫外光もしくは近紫外光)を照射すると可視光を発光する蛍光剤が含まれている。この蛍光剤入り接着剤を用いることで、この接着剤により固定された蛍光剤を含有した固形部分、つまり残留接着剤(接着剤固形物)の部分だけをリサイクル品の遮光した作業空間において視認しやすいので好ましい。蛍光剤として波長200nm〜420nmの光が照射されると、460nm以上の蛍光を発し、接着剤と混合したときに接着剤が直ちに固化しないものが選ばれる。例えばこのような蛍光剤の例として、後に示す化学構造式(1)に示す電荷輸送物質を利用することができる。このような蛍光剤は固定のための接着剤の可使時間を極度に短くせずに、固定、固化する際に作業の自由度が広いので、固化時の残留応力による接着力の低下が少なく、またリサイクルしやすい。本発明で用いられる接着剤の蛍光剤としては、前記したように接着時の重合反応に基本的には影響を与えないため接着力の低下が無く、しかも蛍光収率に関しても変化するものではない。このため固化後の接着剤中でも紫外光〜近紫外光の照射により、蛍光を発することが可能なため、固化した接着剤を見出すのに優れている。このような蛍光剤として、後述する(1)式の化合物以外のものであってもよく、紫外光〜近紫外光を受けて可視光を出すものであればよい。たとえば紫外光〜近紫外光を受けて可視光を出す電荷輸送層に用いることが可能な材料を好ましく挙げることができる。
【0015】
使用済みの電子写真感光体をリサイクルする時、支持体から劣化した感光機能膜を除去し、再度感光機能膜を形成する。電子写真感光体を生産する時、支持体表面に感光機能膜を形成してから駆動用フランジを取り付ける。
もしリサイクルする際に、フランジを付けたままの状態で感光機能膜の再形成する場合、ワークの形状が異なる為、通常のラインとは別に専用の生産ライン(塗工、検査、梱包等)が必要になってしまう。
また、駆動用フランジは一般に樹脂製のものであり、感光機能膜の塗液に含まれる有機溶剤により、溶解したり変形する可能性が非常に高く、その対策だけでも工程が複雑になる。
感光機能膜の除去する工程でも、有機溶剤を用いる場合、樹脂フランジに触れさせない様に対策をすることが必要になる。
【0016】
それに比べ、駆動用フランジを取り外し、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の支持体上に感光機能膜を形成されただけの状態にすれば、感光機能膜の除去で有機溶剤を用いても何ら特別な対策は必要なく、感光機能膜を除去した後は、通常の製品と同じ生産工程に投入して生産を行う事が可能となる。
【0017】
このように、本発明では、感光機能膜の形成に特殊な設備を用いずに、前記したような通常の生産設備を用いた方が生産効率が良いので、一度、駆動用フランジを取り外し、通常の生産設備で感光機能膜を形成できるようにする。この時、駆動用フランジに機械的な力を加える方法や、溶剤を塗布し接着剤を溶解あるいは軟化させて接着力を弱めてから引き抜く方法等が用いられる。駆動用フランジを接着剤で固定している場合は電子写真用感光体の内面に接着剤の固形物が残っている可能性がある。
【0018】
電子写真感光体の内面に、波長200nm〜420nmの紫外光〜近紫外光を照射すると、接着剤に含有される蛍光剤が可視光の蛍光を発するので、接着剤(固形物)の残留状態を確認できる。
この蛍光を受光手段で測定し、受光量を予め設定しておいた閾値と比較することにより、残留する接着剤の検査を行う事ができる。
【0019】
このような蛍光剤は、駆動用フランジを固定する前記したような接着剤中に1〜10重量%の蛍光剤を含有させることが好ましい。
接着剤に含有される蛍光剤が1重量%未満だと蛍光が弱く検出が困難となることがあり、10重量%を越すと接着剤に蛍光剤が混ざらずに不均一になるため接着不良を起こし易くなる。
本発明では、接着剤の残留を、紫外乃至近紫外光を照射して蛍光の有無を測定して支持体内面の固化物の残留度合いを検査することができる。
このような紫外光あるいは近紫外光を照射する光源としては、紫外LEDを挙げることができる。紫外光の光源としては市販のブラックライトや、紫外LED、他に紫外光を含む白色光源に写真用ガラスフィルターを組み合わせて可視光部を遮る様にした物等があるが、φ24〜φ40等の小径の電子写真用感光体の内面を均一に照射しやすい様に小型化できる為、特に波長250nm〜420nmの紫外LEDを使用するのが好ましい。
【0020】
一方、前記した光源により照射されることにより、接着剤(固化物)からの蛍光を受光する手段としては、その受光手段の分光感度が460nm以上であることが好ましい。本発明において、光源の波長を200nm〜420nmとし、受光手段の分光感度のピークを460nm以上とすることで、一般的に電子写真用感光体に用いられるアルミニウムもしくはアルミニウム合金の支持体の内面の表面性、光沢等に影響されずに蛍光剤を含んだ接着剤の固形物を検出する事ができる。しかもこのように蛍光と励起光とが異なれば受光手段に仮に励起光である紫外〜近紫外光が入射された場合であっても、これを蛍光と判定することが無く、極めて正確に蛍光を測定して汚染の程度(すなわち固化した接着剤の残留程度)を正確に判定可能である。
【0021】
本発明の方法で使用される検査装置としては、たとえば図1に示すように、光源2と、受光素子4とを有して基板5上に設置されて構成されている。また光源2からの発光光を照射面に効率よく照射可能なように、リニアフレネルレンズ6をLEDと照射面との間に設けることができる。このレンズの設置により、検査装置のコンパクト化が図られ、照射面に対して照射角度も自在に調製可能とすることができる。
【0022】
ここで、受光手段である受光素子4としては、Siフォトダイオード、GaAsPフォトダイオード、GaPフォトダイオードなどが挙げられ、これらの受光素子を用いて、受光素子4からの出力信号を図示しないトランジスタ、オペアンプなどにより公知の各種の増幅回路により増幅し、A/D変換してデジタル信号化することができる。また他に受光手段として、CCD等を備えるデジタルカメラで撮影し、得られたデジタル信号を画像処理により接着剤の残留程度を判定することもできる。これらデジタル信号をコンピュータなどの演算機能を有する手段に取り込み、メモリ等にデジタル情報として保存しておくこともできる。さらに、デジタル情報を用いて表示部に表示したり、外部にデータとして取り出すこともできる。また検査装置の光源2としては、上記したように、光源の波長を250nm〜420nmの発光範囲の紫外LEDを用いることができる。公知の紫外光光源である重水素ランプあるいは希ガスランプなどの紫外光源等では、コンパクト化に限度があるかまたはさらに導光手段(光ファイバなど)を用いるようにすればセンサヘッド部をコンパクト化して使用可能にすることができる。このようなコンパクト化により、熱も比較的発生せずに支持体1の内面を照射可能し、これによって固化した接着剤内の蛍光体が発した蛍光を受光素子で受光することが可能な構成とすることができる。また公知の紫外光光源をセンサヘッド部に設けなくてもよく、支持体内面を照射するように直接照射しセンサヘッドを支持体内面の近傍に設定してその蛍光を測光可能なように構成することもできる。
【0023】
また本発明では、図2に示すように、受光手段4と受光面との間に、500nm以下の光を遮光する光学フィルター7を設けることが好ましい。本発明では光源として波長200nm〜420nmの紫外光あるいは近紫外光、好ましくはその紫外光の光源として波長250〜420nmの紫外LEDを使用し、受光素子として分光感度のピークが460nm以上である受光素子を使用するが、受光手段の受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルター7を設ける事により、受光素子に500nm以下の光が入ることを防ぐことができるので、光源である紫外光の影響を受けにくくなり、その他、迷光や散乱光の影響を少なくして支持体内面に残留している固化した接着剤の残留状態を画像情報あるいは数値のみの情報、さらに数値と位置情報との対の情報によって、固化した接着剤の残留状態を残留情報としてその残留情報の有無を判断して検査し、残留情報として数値化された情報を含んである場合、この数値化された情報により、ある所定値を超えているか否かを判定してリサイクルするか否かを決定することができる。本発明の方法では、照射光は紫外〜近紫外光の範囲にあり、好ましくは光源からの入射光の入射角度がある方向からのものである。その照射によって発する蛍光は、前記した入射角度に依存せずに発光される。このため、受光手段は前記した入射光に対する反射角度の方向に設置すると照射光も受光素子に入力されるため、ノイズが多いものとなる。しかし本発明では、このような角度を避けて受光手段を設置することにより、迷光の浸入を極力防止でき、また、受光体への入射光によるノイズも極力防止可能であり、感度の点からも極めて有利な方法でもある。
【0024】
本発明では、上記した検査方法をリサイクル時に適用することによって、感光体に駆動部が固定された端部の位置での固化した接着剤の残留状態をコンピュータに入力された前記したデジタル情報から判定することもできる。この際に、たとえば画像情報として表示部に表示しながら、その判定をたとえばある所定値を閾値とし、これを超えた場合にその超えた部分を、表示部において多色あるいは強度を変えて表示するなど、様々な表示機能により表示でき、またさらなる画像表示機能により画像処理した画像を表示できるように任意に設定することができる。
【0025】
また本発明では、検査装置の紫外LEDの最大輝度の位置を原点とし、この原点を管状もしくは円筒状の支持体の中心軸(感光体の駆動軸)上に設定し、この原点に対して管状もしくは円筒状の支持体(感光体)を、支持体の中心軸を中心にして回転させて円筒座標(r,θ,Z)として蛍光のデータを収集するようにすることができる。ここでrは前記原点を回転軸とする、中心から支持体の内面までの距離であり、θは回転角である。このようにすることにより、光源からの照射面への照射量を略一定と規定できるため、本発明の検査方法では、本発明の方法によって得られる蛍光強度が、信頼できる物理量の1つとして評価に十分に寄与するとともに、信頼度の高いものである。
【0026】
図3〜図4は、本発明を実施するのに好適な装置の構成を示す構成図である。
図3および図4において、1は検査対象である電子写真感光体(感光機能膜が形成された支持体)であり、構成を判り易くする為に電子写真感光体1の稼働手段が設けられる側の一部を切り欠いた状態を示してある。図において8は電子写真感光体1を保持し回転させる手段(駆動手段)であり、9は本発明の方法で用いられる検査装置である紫外光光源と受光素子からなるセンサヘッドであり、10は紫外光光源への電力源と受光素子からの信号を増幅し閾値を比較する演算処理手段である。また11は紫外照射ランプ(紫外光光源)であり、12はセンサヘッド9と演算処理手段10を接続するためのケーブルである。
【0027】
図3は本発明のリサイクル方法および検査方法に採用された検査装置の第1の実施形態である。
電子写真感光体1の中に図1もしくは図2の構造のセンサヘッドを挿入し、電子写真感光体1を駆動手段8を用いて、1回転/2秒の速度で回転させる。
センサヘッド9に収められた光源2から発せられた紫外光は、リニアフレネルレンズを通り、電子写真感光体1内面の紫外光照射面3に照射される。
紫外光照射面3に蛍光物質を含んだ接着剤が存在する場合、存在する接着剤への紫外線の照射により、蛍光が発せられる。発せられた蛍光は受光手段4で受光される。図2のセンサヘッドが用いられる場合には、500nm以下の波長の光を遮光する光学フィルター7が設けられている為、光源2から出た250nm〜420nmの迷光や散乱光が受光手段4に入射する事を防止でき、紫外光の影響を抑える事ができる。
【0028】
受光手段4は受光量に応じて電気信号を生じさせ、演算処理手段10に信号が送られる。
演算処理手段10に送られた信号は、ここで信号増幅処理、演算処理され、単位時間毎に測定開始からの最大値が求められる。
電子写真感光体1が1周以上回転し、内面全周の測定が終了した後に、測定開始からの最大値(測定された最大値)を閾値と比較し、合否判定(リサイクル可能かどうかの判定)が行なわれる。
【0029】
図4は本発明のリサイクル方法および検査方法に採用された検査装置の第2の実施形態を示す図である。
電子写真感光体1の中に図1もしくは図2の構造のセンサヘッドを挿入し、電子写真感光体1を駆動手段8を用いて、1回転/2秒の速度で回転させる。
センサヘッド9内の光源(紫外LED)2の発光を止め、変わりに紫外光光源11から紫外光を照射し、電子写真用感光体1内面の紫外光照射面3に照射される。
紫外光照射面3に蛍光物質を含んだ接着剤が存在した場合、前記同様に蛍光が発せられる。発せられた蛍光は受光手段4で受光される。図2のセンサヘッドを用いる場合は500nm以下の波長の光を遮光する光学フィルター7を設ける為、前記同様に、紫外光の影響を抑える事ができる。
そして受光手段4は受光量に応じた電気信号が発生し、この信号が演算処理手段10に送られ、前記同様に、この送られた信号は信号増幅処理、演算処理されて、単位時間毎に測定開始からの最大値が求まる。
電子写真感光体1が1周以上回転し、内面全周の測定が終了すると、測定開始からの最大値を閾値と比較することにより、前記同様に合否判定することができる。
【0030】
図1において、1は電子写真感光体であり断面の一部を示してある。2は紫外LED、3は紫外光照射面、4は蛍光を測光する受光素子(受光手段)、5は紫外LED2及び受光素子5を取り付ける台、6はリニアフレネルレンズである。図3の構成からなる光学系において、リニアフレネルレンズの焦点処理を、支持体の内面に照射する光を略平行光束(たとえば広がり角度を0〜5度)とする範囲にすることにより、紫外光照射面における光照射面の形状を前記した支持体内面への入射角度と、その入射に対する反射する光を受光する受光角度とのなす角度を0〜90度となるようにすることができる。
ここで、リニアフレネルレンズの表面凹凸の方向は、電子写真感光体の軸方向と一致させる必要がある。
またリニアフレネルレンズ6の替わりにシリンドリカルレンズを使用する場合には、図1のリニアフレネルレンズ6の替わりにシリンドリカルレンズを組み込む。
【0031】
図1に示すセンサヘッドの構成によって、紫外LEDから出た紫外光はリニアフレネルレンズ6によって照射面3において、たとえば矩形になるように整えられる。
照射面3に駆動用フランジを固定するための接着剤の固化物が存在すると、紫外LEDによる紫外〜近紫外光が照射されることに伴い蛍光が発光される。
蛍光が発光された場合、その蛍光は受光素子4で捉えられる。
【0032】
図2は本発明を実施するのに好適な構成の他の例を示している。
図2において、同一符号のものは同一のものをあらわしている。図2において7は光学フィルターをあらわす。
光学フィルター7としては、ゼラチンをベースとする光学フィルターや、トリアセチルセルロース(tri-acetyl-cellulose)をベースとした透明の基材が使用可能である。例えば、富士フイルム社製SC−50フィルターなどを使用できる。
図2に示す構成では、図1と同様に紫外LEDから出た紫外光はリニアフレネルレンズ6によって照射面3において矩形になるように整えられる。照射面3に駆動用フランジを固定するための接着剤の固化物が存在すると、紫外LED光の照射により蛍光を発する。蛍光が発光されると、その蛍光は光学フィルター7を通過した後、受光素子4で捉えられる。
【0033】
本発明では、当然であるが、検査対象である電子写真感光体1が置かれている環境は、周囲の光が入らないように遮光することが好ましく、特に、受光素子5には検査対象面以外からの光が可能な限り、入らないようにする必要がある。
また、本発明においては、紫外光源に変調をかけその変調周波数で信号処理を行なうと、周囲からの漏れ光によるノイズを除くために有効な場合も有る。すなわちある周波数に変調して紫外光源を発光させ、この変調周波数の蛍光のみをデータとして受光させることにより、さらにS/N比を稼いでノイズの少ないデータを得ることもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。しかしながら本発明はこれら実施例に限定されて解釈されるものではない。なお実施例1及び2は前記した第1実施形態(図3)の装置を用い、実施例3は第2実施形態(図4)の装置を用いた。また、ここでの部は重量基準である。
【0035】
(実施例1)
評価用試料として、直径30mm、長さ340mmの中空円筒状のアルミニウム製支持体に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液を順次、浸漬塗工し、乾燥して、それぞれ3.0μm厚の下引き層、0.2μm厚の電荷発生層、30μm厚の電荷輸送層を形成し、評価用の電子写真感光体を作成した。
【0036】
[下引き層塗工液]
ポリアミド樹脂 10部
酸化チタン 40部
1−ブタノール 20部
メチルアルコール 180部
【0037】
[電荷発生層塗工液]
チタニルフタロシアニン 3部
ポリビニルブチラール樹脂 1部
シクロヘキサノン 250部
シクロヘキサン 50部
【0038】
[電荷輸送層塗工液]
ポリカーボネート樹脂 10部
シリコーンオイル 0.02部
塩化メチレン 80部
下記構造式(1)の電荷輸送物質 7部
【0039】
駆動用フランジを固定する接着剤として、東亜合成社製の「アロンアルファ802(粘度:100mPa・S/25℃)」に蛍光剤として、以下に示す下記構造式(1)の電荷輸送物質を混ぜ、蛍光剤を含有する接着剤を作成した。
【0040】
【化1】

【0041】
接着剤と蛍光剤を混ぜる比率は下記の様にした。比率は重量部である。
接着剤1 接着剤:蛍光剤 =80.0:10.0
接着剤2 接着剤:蛍光剤 =85.0:15.0
接着剤3 接着剤:蛍光剤 =90.0:10.0
接着剤4 接着剤:蛍光剤 =95.0:5.0
接着剤5 接着剤:蛍光剤 =99.0:1.0
接着剤6 接着剤:蛍光剤 =99.5:0.5
接着剤7 接着剤:蛍光剤 =100.0:0.0
【0042】
前記した評価用の電子写真感光体に、上記の接着剤1〜7を用いて樹脂フランジを接着剤で固定し固化した後に駆動用フランジを取り外し、それぞれ、接着剤1〜7に対応させたサンプル1〜7とした。
【0043】
評価用のセンサとして、図2に示すセンサヘッドを作成した。
光源2として、OptoSupply社製のOSSV5111A(紫外LED)を2個使用した。また受光素子5として、浜松ホトニクス社製SiフォトダイオードS7686を2個用いた。リニアフレネルレンズ3は、幅1cm、長さ2cmに切断した有機光学製L426(焦点距離7mm)を用いた。リニアフレネルレンズ3は、光源2である紫外LEDの光を整形する為に設置した。光源2(紫外LED)の発光ピーク波長は約400nmであった。
Siフォトダイオードからの信号は、それぞれ、NPNトランジスタ(品名2SC1815)で増幅した。この増幅した2つのSiフォトダイオードからの信号をAtmel社のワンチップマイコンAtmega8のアナログ信号ピンに供給し、それぞれ90回/秒の速度でA/D変換を行い0〜1023の数値に変換し、その最大値を求めた。
こうして製作したセンサ(センサヘッド)を、サンプル(リサイクルした筒状の感光体)の内面に挿入し、光源(紫外LED)2からの光の照射位置がサンプルの開口端から10〜15mmになる様にし、サンプルを1回転/2秒の速度で回転させて測定を行い、1周内で測定した値の最大値をとった。
【0044】
(実施例2)
実施例1の評価用センサのSiフォトダイオードの受光面に光学フィルターとして富士フィルム社製の光学フィルター(品名:SC−50)を設けてセンサを作成し、実施例1と同様にしてサンプル1〜6を測定した。なお、SC−50フィルターの JIS B−7133で定義する透過限界波長は約500nmである。
【0045】
(実施例3)
光源として前記の紫外LEDに代えて、東京光学機械社製の TPCON PAN UV LAMP PUV−1を用い、実施例1と同様に前記サンプル1〜6を検査した。PAN UV LAMP PUV−1の照射する光の波長は200nm〜400nmの範囲であった。
上記東京光学機械社製のTPCON PAN UV LAMP PUV−1は、ブラックライトとして実験室で用いられている。その概略を図5に示す。図5に示すように、右側の金属で囲まれた四角の枠から紫外線が照射されるように構成されている。供給電源は100VのACである。
【0046】
(比較例1)
実施例1と同じ条件で、サンプル7および接着剤を着けていない状態のサンプルを検査した。
【0047】
(比較例2)
実施例2と同条件でサンプル7および接着剤を着けていない状態のサンプルを検査した。
【0048】
(比較例3)
実施例3と同条件で、サンプル7および接着剤を着けていない状態のサンプルを検査した。
【0049】
表1に実施例1〜3および比較例1〜3の検査結果を示す。
本発明に係る方法である実施例1〜3において、サンプル1〜2では、接着剤に蛍光剤が完全には混合せず、不均一となった。またこれらの接着剤を使用すると接着不良を起こしやすかった。比較例1〜3のサンプル7の値をノイズNとして実施例1〜3のサンプル1〜6の数値を用いてS/N比を括弧書きで表した。
その結果、蛍光剤が0.5重量%の接着剤のものは、実施例1〜3では、それぞれ、1.11、1.10および1.05であり、S/N比が小さく判別しにくいサンプルであることがわかった。これに対してサンプル5(蛍光剤が1重量%含まれている接着剤の固形物)では、1.38、1.40、1.24であり、ノイズとの区別が十分に可能であった。
一方、接着剤を塗布しない時は検査値に差が認められ、接着剤の有無を検査可能であることが判った。なお実施例3において用いたTPCONのUVライトは元々その光量が少なく、また光源の大きさの都合で被測定部と距離が離れているため、さらに照射光量が少なくなったものと思われる。
本発明では、支持体内面の接着剤の有無・残量を検査することが基本的に重要であり、固化した接着剤の残量の有無の差が数値等により明確に判れば検査可能である。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の検査方法で用いられる検査装置(センサーヘッド)の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の検査方法で用いられる検査装置(センサーヘッド)の概略構成を示す他の図である。
【図3】本発明の検査方法に係る第1の実施形態(実施例1および実施例2)を説明するための図である。
【図4】本発明の検査方法に係る第2の実施形態(実施例3)を説明するための図である。
【図5】第2の実施形態に使用される光源11の例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電子写真用感光体
2 紫外LED
3 紫外光照射面
4 蛍光を測光する受光手段
5 紫外LED、受光手段を取り付ける台
6 リニアフレネルレンズ
7 光学フィルター
8 電子写真用感光体の駆動手段
9 紫外光光源と受光手段からなるセンサヘッド
10 紫外光光源への電力源および受光手段からの信号増幅・演算処理手段
11 紫外光光源(東京光学機械社製の TPCON PAN UV LAMP PUV-1)
12 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状もしくは円筒状の支持体の上に感光機能膜が形成された前記支持体の端部に波長200nm〜420nmの光が照射されると460nm以上の蛍光を発する蛍光剤を含有する接着剤を用いて固定された駆動用フランジを前記支持体より分離し、前記支持体の内面に波長200nm〜420nmの光を照射し、460nm以上の蛍光を測光して、前記支持体の内面の接着剤の有無を検査することを特徴とする電子写真用感光体の検査方法。
【請求項2】
前記接着剤は前記蛍光剤が1〜10重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体の検査方法。
【請求項3】
前記波長200nm〜420nmの範囲の光の光源が、波長250〜420nmの紫外LEDを用いることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の電子写真用感光体の検査方法。
【請求項4】
前記蛍光を測光する手段は、その分光感度が460nm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用感光体の検査方法。
【請求項5】
前記蛍光を測光する手段は、その受光面に500nm以下の光を遮光する光学フィルターが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体の検査方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検査方法を用い、前記支持体の内面の接着剤の有無を検査し、その接着剤の量が所定値以内のときは、前記支持体を電子写真感光体用支持体として再使用することを特徴とする電子写真感光体用支持体のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−72419(P2010−72419A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240643(P2008−240643)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】