説明

電子写真感光体を保管するための保管箱

【課題】電子写真感光体および電子写真感光体ユニットを長期にわたり保管しても、電子写真装置で使用する際にクリーニングブレードのめくれや欠けが発生することなく、スジやムラ等の画像欠陥が発生しない保管箱を提供する
【解決手段】保管箱は、樹脂を成形することによって得られた成形物であって、特定構造の帯電防止剤の少なくとも1種および特定構造の耐候性材料の少なくとも1種を含有し、該化合物及び材料の分子量がそれぞれ560以下であり、且つ、該成形物中の該化合物及び材料の総含有量が200ppm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体を保管するための保管箱、電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱、又は、電子写真感光体及び電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱(以下、単に「保管箱」ともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に使用される電子写真感光体は、円筒状支持体上に少なくとも感光層を設けてなる構成が一般的である。また、電子写真装置で画像形成を行う場合、電子写真感光体の両端に回転駆動伝達用のギアあるいはフランジを組みつけて、電子写真感光体ユニットとして使用することが多い。電子写真プロセスでは、電子写真感光体は露光を受けることにより電子写真感光体の表面に静電潜像が形成され、該静電潜像がトナーによって現像されて可視のトナー像となり、トナー像が転写材に転写されることによって画像形成が行われる。
【0003】
電子写真感光体の表面にキズが生じたり、光の照射により電子写真特性を低下させると、画像の品質も低下し、画像欠陥を引き起こす原因となる場合がある。電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニット(以下「電子写真感光体等」ともいう。)を保管する際は、電子写真感光体の表面にキズがつかないようにすると同時に、外部からの光を遮断して電子写真特性を低下させないように留意する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1のように、電子写真感光体の表面を保護し、且つ遮光するために、電子写真感光体に保護シートを巻きつける方法が開示されている。この保護シートの固定には適度の粘着力のテープが使用されており、剥がしやすさと自然剥がれの防止を両立させている。
【0005】
しかしながら、複数の電子写真感光体に遮光性の保護シートを巻きつける工程は時間と手間を要し、量産性を低下させる要因となる。また、電子写真感光体を電子写真装置に使用する際には、巻きつけた保護シートを除去する必要が出てくるが、この場合も時間と手間を要するため、量産性を低下させることになる。保護シートにかかるコストといった観点からも保護シートを使用しない保管方法が望まれていた。
【0006】
その方法として、特許文献2では、電子写真感光体を収容する凹部を備えた包装容器を2個用いて、各々に設けられた収容凹部を互いに対向して重ね合わすことにより、各電子写真感光体の収容空間を形成する包装容器が提案されている。収容凹部は、その両端部に収容凹部の底面よりも浅い位置に設けられ収容凹部の幅よりも狭い幅に形成された支持部を備え、その支持部によって電子写真感光体ユニットの両端部に設けられたギアやフランジを支持するようになっている。これにより、電子写真感光体の感光層表面は収容凹部に接触することなく収納空間に保持され、傷の発生が防止されている。また、この包装容器では各収容凹部の仕切り壁が特定の形状を有することで、適度の強度を維持しつつ、素材の厚さを薄くして収納スペースの削減および軽量化を図っている。遮光性は成形用の材料として黒色の顔料を添加した樹脂組成物を用いることで対応している。黒色の顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックは、遮光性を有するだけでなく、埃の付着を防止するための帯電防止効果や、耐候性も有することで知られており、電子写真感光体を保管する箱や容器に対しては有用な材料である。しかしながら、箱や容器を形成する素材の厚さが薄い場合は、重い電子写真感光体の物流に対する強度は十分とはいえない。強度を確保するために、遮光性を維持できる範囲でカーボンブラックの含有量を減らしていくと、帯電防止効果や耐候性を低下させてしまうことになる。また、屋内外の物流を考慮すると、カーボンブラックだけでは、十分な帯電防止効果や耐候性を確保することは困難であり、経時変化による素材の劣化を防止するために補強が必要である。
【0007】
そこで、通常はカーボンブラック以外の他の帯電防止剤や耐候性材料を添加して、帯電防止性と耐候性を向上させている。特許文献3には、添加剤として使用することができる帯電防止剤、紫外線吸収剤等の耐候性材料の例が開示されている。一般に、これらの添加剤は高価であり、添加量によっては箱の製造コストが高くなってしまうため、低価格であり、且つ帯電防止や耐候性等の効果が出やすい低分子タイプの添加剤が使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−160785公報
【特許文献2】特許4040855号公報
【特許文献3】特開2002−189321公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、低分子タイプの帯電防止剤や耐候性材料等の添加剤を含有させた樹脂組成物を成形して得られた保管箱では、時間が経過するにつれて上記の添加剤が保管箱の表面に移行する現象が発生しやすい。さらに、保管箱の内面においては、表面に移行した成分が揮発し、電子写真感光体の表面に付着することもある。以上の現象は保管する環境の温度が高いほど顕著となる。多くの電子写真装置では、電子写真感光体の表面のトナー像を転写材に転写した後にクリーニングブレード等のクリーニング手段で残留トナーが除去される。添加剤が表面に付着した電子写真感光体では、電子写真感光体の表面に当接されたクリーニングブレードとの摩擦係数が上昇するため、クリーニングブレードがめくれたり、欠けたりする問題があった。また、この電子写真感光体を電子写真装置に装着し、画像形成を行うと、クリーニング不良に起因したスジ、ムラ等の画像欠陥が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱は、下記式(1)乃至(3)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および下記式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物から形成された成形物であって、
該化合物は、分子量がそれぞれ560以下であり、
該成形物中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱に関する。
【化1】

〔式中、Rは、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールオキシ基である。XおよびXは、それぞれ下記式で示される結合基を示す。〕
【化2】

〔式中、mは1あるいは2である。〕
また、AおよびAは下記群から選ばれる基を示す。
【化3】

〔式中、Rは炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基である。〕
【化4】

〔式中、XおよびXの定義は、XおよびXの定義と同じであり、AおよびAの定義は、AおよびAの定義と同じである。〕
【化5】

〔式中、Rは、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基である。nは3乃至11の整数を示す。〕
【化6】

〔式中、R、RおよびRは、ヒドロキシ基、炭素数1乃至25の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。〕
【化7】

〔式中、R、R、RおよびR10は、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールオキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。XはS原子、炭素数1乃至14の2価のカルボン酸エステル基あるいは炭素数1乃至12のアルキレン基を示す。〕
【化8】

〔式中、R11およびR12は、水素原子、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。〕
【化9】

〔式中、BおよびBは下記式で示される有機基を示す。Xは、炭素数1乃至12のアルキレン基を示す。〕
【化10】

〔式中、R13は、水素原子、炭素数1乃至10の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。〕
【化11】

〔式中、R14およびR15は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールオキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。Xは単結合あるいは下記式で示される2価の有機基を示す。〕
【化12】

また、Qは下記式で示される有機基を示す。
【化13】

〔式中、R16乃至R19は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールオキシ基を示す。〕
なお、上述したように、本発明の上記式(1)乃至(8)で示される各化合物は、分子量が560以下である。そのためには、該化合物の分子量が560以下になるように式中のR乃至R19の構造や、mおよびnの値の組み合わせを調整する必要がある。
【0011】
また、本発明は、電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱の少なくとも内面の表面に、上記式(1)乃至(3)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および上記式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物からなるコート層が設けられており、
該化合物の分子量がそれぞれ560以下であり、
該コート層中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱に関する。
【0012】
また、本発明は、電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱の中に電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットが収納された場合に該保管箱の内面と該電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットとの隙間になる位置に、上記式(1)乃至(3)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および上記式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物からなるプレート材が設置されており、
該化合物の分子量がそれぞれ560以下であり、
該プレート材中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子写真感光体等を長期にわたり保管しても、該電子写真感光体を電子写真装置で使用する際のクリーニングブレードのめくれや欠けの発生、および、スジやムラ等の画像欠陥の発生が抑えられる保管箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の、電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱の構成を示す図である。
【図2】本発明の、電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱の底面図である。
【図3】図1におけるA方向の側面図である。
【図4】図1におけるB方向の側面図である。
【図5】図1における電子写真感光体の支持部材の拡大図である。
【図6】電子写真感光体の外観図である。
【図7】本発明の、プレート材が設置されている保管箱の構成を示す図である。
【図8】電子写真装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱について、さらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態及び実施例は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
図1は、本発明の保管箱の構成を示す図である。保管箱は蓋1と底箱2から構成され、底箱2の内側には電子写真感光体あるいは電子写真感光体ユニット4の格納時にそれらを両端部で支持するための支持部材3が設けられている。支持部材3は、電子写真感光体あるいは電子写真感光体ユニット4の表面に設けられる感光層を傷つけないように、底箱2の表面との接触を防止するための部材である。
【0017】
図2は、本発明の保管箱に電子写真感光体ユニット4を収納した場合の底箱2の平面図の一例である。上記の支持部材3は収納する電子写真感光体ユニット4の数に合わせて設けられる。図2に示すA方向およびB方向からみた側面図を図3および図4にそれぞれ示す。底箱2の内側の底面は、少なくとも電子写真感光体ユニット4の電子写真感光体の感光層が最接近する部分は平面であることが好ましい。底面の表面と電子写真感光体ユニット4の表面の隙間は5mm乃至10mmであることが好ましい。また、電子写真感光体ユニット4と隣接する電子写真感光体ユニット4との間隔としては、省スペース化の観点から20mm以下が好ましく、より好ましくは、10mm以下である。
【0018】
図5は、支持部材3の形状の例を示した図である。支持部材3は電子写真感光体ユニット4の収納数に合わせて必要な個数を配置すればよく、電子写真感光体ユニット4の収納数に合わせて一体化させた形状でもよい。電子写真感光体ユニット4を支持する面には、物流時に電子写真感光体ユニット4が動いて隣接する電子写真感光体ユニット4と接触することを防止するために、凹部5を設けることが好ましい。さらに、電子写真感光体ユニット4が軸方向に動かないように、凹部5に段差を設けることができる。段差の形状は、保管する対象である電子写真感光体あるいは電子写真感光体ユニット4の端部の形状に合わせて選択すればよい。
【0019】
図6は、電子写真感光体に駆動伝達用のギア6とフランジ7を組み付けた電子写真感光体ユニット4の例を示した図である。保管箱に収納する対象は、電子写真感光体および電子写真感光体ユニット4のどちらも可能である。
【0020】
本発明の保管箱は、樹脂組成物からなる成形物である。この樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、シリコーン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン等の公知の樹脂を1種類または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましい。特に、ポリプロピレンは、比較的安価であり、他の樹脂に比べると表面が硬くてキズがつきにくく、耐衝撃性に優れている点で好ましい。
【0021】
上記成形物には、遮光性を持たせるため、カーボンブラックを含有させることが好ましい。前述したように、カーボンブラックを含有させることで、保管箱に帯電防止性や耐候性をもたせることができる。上記成形物中のカーボンブラックの含有量は、0.1乃至5重量%の範囲内とすることが好ましい。カーボンブラックの含有量を0.1重量%以上とすれば、所望の遮光性を十分に確保することができる。特に、1重量%以上とすれば、帯電防止性、耐候性も十分に確保することができる。また、含有量を5重量%以下とすれば、樹脂組成物を射出成形することによって保管箱(成形物)を成形する場合は、成形不良が抑えられ、外観不良および物理的強度の低下が抑えられる。特に、0.5重量%以下であることが好ましい。この場合、帯電防止性や耐候性を十分に確保するために、後述の帯電防止剤や耐候性材料を添加することが好ましい。
【0022】
本発明において、上記成形物には、帯電防止性、耐候性を高めるために、上記特定の帯電防止剤および耐候性材料が含有される。帯電防止剤としては、界面活性剤が用いられる。これを配合することにより、静電気による電子写真感光体の帯電劣化を防止したり、保管箱への埃の付着を防止したりする。また、耐候性材料としては、劣化防止という観点から、酸化防止剤、光安定剤および紫外線吸収剤が挙げられる。
【0023】
具体的には、上記式(1)で示される化合物(アルキルアミン誘導体)、上記式(2)で示される化合物(多価アルコールエステル型化合物)および上記式(3)で示される化合物(エーテル型化合物)は、非イオン界面活性剤であり、帯電防止剤の一種である。また、上記式(4)で示される化合物および上記式(5)で示される化合物は、フェノール系酸化防止剤であり、耐候性材料の一種である。また、上記式(6)で示される化合物(ヒンダードアミン系化合物)および上記式(7)で示される化合物(ヒンダードアミン系化合物)は、光安定剤であり、耐候性材料の一種である。また、上記式(8)で示される化合物は、紫外線吸収剤であり、耐候性材料の一種である。
【0024】
上述のとおり、上記成形物中の帯電防止剤および耐候性材料の総含有量は、上記成形物に対して200ppm以下(質量基準)にする必要があり、100ppm以下にすることが好ましい。帯電防止剤および耐候性材料の総含有量が200ppmを超えると、帯電防止剤および耐候性材料の揮発量が多くなり、電子写真感光体の表面に付着し、電子写真感光体の表面の滑り性が低下し、電子写真感光体とクリーニングブレードとの摩擦係数が上昇する。
【0025】
また、上記帯電防止剤の分子量は560以下である。分子量が560以下の帯電防止剤は、安価で入手することができ、帯電防止性も発現しやすい。ただし、帯電防止剤の表面移行と揮発を抑制するために、総含有量は200ppm以下に抑えることが必要である。なお、分子量が560を超えるにつれて、帯電防止剤の表面移行と揮発が起こりにくくなるが、該帯電防止剤の製造コストが高くなる他、成形条件の制御が複雑となる場合があり、保管箱のコストアップにつながってしまう。帯電防止性とコストダウンを両立させるには分子量が450乃至560であることが好ましい。
また、上記耐候性材料の分子量も上記帯電防止剤と同様に560以下である。分子量が560以下の耐候性材料は、安価で入手することができ、耐候性も発現しやすい。なお、分子量が560を超えるにつれて、耐候性材料の表面移行と揮発が起こりにくくなるが、該耐候性材料の製造コストが高くなり、やはり保管箱のコストアップにつながる。耐候性とコストダウンを両立させるには分子量が450乃至560であることが好ましい。
【0026】
帯電防止剤としては、非イオン界面活性剤の他に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤もある。本発明の保管箱においては、以上の帯電防止剤の中でも電子写真特性への悪影響が小さく、静電気防止効果が大きいという観点から、非イオン界面活性剤を使用する。
【0027】
本発明で使用できる非イオン界面活性剤は、下記式(1)で示される化合物(アルキルアミン誘導体)、下記式(2)で示される化合物(多価アルコールエステル型化合物)、下記式(3)で示される化合物(エーテル型化合物)である。
【化14】

〔式中、Rは、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールオキシ基である。XおよびXは、下記式で示される結合基を示す。〕
【化15】

〔式中、mは、1あるいは2である。〕
また、AおよびAは下記群から選ばれる基を示す。
【化16】

〔式中、Rは、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基でる。〕
【化17】

〔式中、XおよびXの定義は、XおよびXの定義と同じであり、AおよびAの定義はAおよびAの定義と同じである。〕
【化18】

〔式中、Rは炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基である。nは3乃至11の整数を示す。〕
【0028】
式(1)で示される化合物の例を以下に示す。
【化19】

【0029】
式(2)で示される化合物の例を以下に示す。
【化20】

【0030】
式(3)で示される化合物の例を以下に示す。
【化21】

【0031】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤の他に、リン系酸化防止剤等(アルキル化アリルホスファイト、トリフェニルフォスファイト等)もある。本発明の保管箱においては、樹脂の熱分解を抑えるという観点から、フェノール系酸化防止剤を使用する。
【0032】
本発明で使用できるフェノール系酸化防止剤は、下記式(4)で示される化合物、下記式(5)で示される化合物である。なお、物流時の環境を考慮すると、耐熱性に優れているヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することが好ましい。
【化22】

〔式中、R、RおよびRはヒドロキシ基、炭素数1乃至25の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。〕
【化23】

〔式中、R、R、RおよびR10は、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールオキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。XはS原子、炭素数1乃至14の2価のカルボン酸エステル基あるいは炭素数1乃至12のアルキレン基を示す。〕
【0033】
式(4)で示される化合物の例を以下に示す。
【化24】

【0034】
式(5)で示される化合物の例を以下に示す。
【化25】

【0035】
本発明で使用できる光安定剤は、下記式(6)で示される化合物、下記式(7)で示される化合物である。
【化26】

〔式中、R11およびR12は、水素原子、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。〕
【化27】

〔式中、BおよびBは、上記の右式で示される有機基を示す。
13は水素原子、炭素数1乃至10の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。また、Xは炭素数1乃至12のメチレン基を示す。〕
【0036】
式(6)で示される化合物の例を以下に示す。
【化28】

【0037】
式(7)で示される化合物の例を以下に示す。
【化29】

【0038】
本発明で使用できる紫外線吸収剤は、下記式(8)で示される化合物である。なお、紫外線吸収剤の中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は樹脂が劣化しやすい波長320nm乃至350nmの光を吸収し、無害な振動エネルギーや熱エネルギーに変換することで、樹脂を紫外線から守る働きを有するものである。物流時の保管箱の紫外線劣化を抑制する意味で、有効な添加剤である。
【化30】

〔式中、R14およびR15は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールアルコキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。Xは、単結合あるいは下記式で示される2価の有機基を示す。〕
【化31】

また、Qは下記式で示される有機基を示す。
【化32】

〔式中、R16乃至R19は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールアルコキシ基を示す。〕
上記各基が有してもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基や、フェニル基、ナフチル基のようなアリール基や、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基や、フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子が挙げられる。
【0039】
式(8)で示される化合物の例を以下に示す。
【化33】

【0040】
上記成形物には、以上の帯電防止剤および耐候性材料の他に、成形時の加工性を高めるために用いる滑剤、可塑剤あるいは充填剤等が含有されていても良いが、おのおのの分子量を560以下にするとともに、以上の帯電防止剤および耐候性材料を含めた全ての添加剤の使用量の合計を200ppm以下にすることが好ましい。また、アルデヒド化合物、硫黄化合物やシアン化合物は少量でも電子写真特性に悪影響を与える可能性があるので、これらの使用は極力控えるようにすることが好ましい。
【0041】
本発明の保管箱は、上記の樹脂組成物を用いて一体成形した成形物であることが好ましい。成形方法としては、射出成形法、圧縮成形法、押出し成形法、真空成形法等が挙げられる。これらの中でも射出成形法が特に好ましい。射出成形法としては、通常の射出成形法であれば特に制限なく使用することができる。なお、成形時には、カーボンブラック、帯電防止剤、耐候性材料等の添加剤および樹脂等の原料をミキサー等でドライブレンド後、溶融混練してペレット化してから成形機にかけてもよい。
【0042】
保管箱の厚みとしては、物流時に強度を維持できるものであれば特に限定されるものではないが、0.1mm乃至5.0mmが好ましく、0.5mm乃至3.0mmがより好ましい。特に、底箱2は物流時の衝撃に対して強くしておく必要があり、1.0mm乃至3.0mmであることが好ましい。
【0043】
本発明の別の保管箱は、上記の帯電防止剤および耐候性材料等の添加剤を含む樹脂組成物からなるコート層を、保管箱の少なくとも内面の表面に設けたものである。支持部材に関しては、支持部材の表面がコート層を設ける対象となるが、電子写真感光体の表面と対向しないことから必ずしも必要ではない。コート層は、上記樹脂組成物をキシレン、トルエン等の芳香族系有機溶媒に溶解および/または分散させた液を保管箱の内面に塗布することによって形成することができる。塗布方法としては、ブラシ塗布法、ロール塗布法等を挙げることができる。また、上記の押出し成形法を用いることもできる。帯電防止剤および耐候性材料の分子量、含有量等の諸条件の必須範囲/好適範囲は上記の保管箱と同様である。例えば、化合物(帯電防止剤および耐候性材料)の分子量は560以下である。また、コート層中の化合物の総含有量は200ppm以下であり、100ppm以下であることが好ましい。
【0044】
また、本発明のさらに別の保管箱は、上記の帯電防止剤および耐候性材料等の添加剤を含む樹脂組成物からなるプレート材を保管箱の中に設置したものである。保管箱の中のプレート材の位置は、保管箱の中に電子写真感光体等が収納された場合に保管箱の内面と電子写真感光体等との隙間になる位置である。図7は、保管箱の中にプレート材8を設置した場合の例を示した図である。この場合、各プレート材8は保管箱の内壁の形状に合わせて成形することが好ましい。プレート材の成形方法としては、上記の射出成形法、押出し成形法等を用いることができる。また、支持部材3もプレート材と同様の樹脂を用いて成形すればよいが、電子写真感光体の表面と対向しないことから必ずしも同じ樹脂である必要はない。帯電防止剤および耐候性材料の分子量、含有量等の諸条件の必須範囲/好適範囲は上記の保管箱と同様である。例えば、化合物(帯電防止剤および耐候性材料)の分子量は560以下である。また、プレート材中の化合物の総含有量は200ppm以下であり、100ppm以下であることが好ましい。
【0045】
次に、本発明の保管箱に収容可能な電子写真感光体の構成について説明する。
電子写真感光体の感光層の層構成は単層型および積層型のいずれの構成でもよい。電子写真特性の向上および安定化という観点から積層型であることが好ましい。以下に、積層型の電子写真感光体の構成を例にとって説明する。
【0046】
本発明に用いられる円筒状基体としてはアルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄の如き金属または合金が挙げられるが、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金が選択されることが多い。
【0047】
上述したように、円筒状基体と後述の中間層との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の防止や、円筒状基体の傷の被覆を目的として、導電層を設けている。
【0048】
導電層は、金属酸化物粒子の如き導電性粒子と結着樹脂を溶剤とともに分散させて得られる導電層用塗布液を円筒状基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。好適な金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛や酸化チタンの粒子が挙げられる。。導電性粒子には、表面に被覆層を設けてもよい。導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、ケトン、スルホキシド、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
【0049】
導電性粒子の体積抵抗率は0.1Ω・cm乃至1000Ω・cmの範囲が好ましく、特には1Ω・cm乃至1000Ω・cmの範囲がより好ましい。この体積抵抗率は、三菱油化(株)製の抵抗測定装置ロレスタAPを用いて測定して求めた値である。測定サンプルとして、49MPaの圧力で固めてコイン状としたものを用いる。また、導電性粒子の体積平均粒径は0.05μm乃至1.00μmの範囲が好ましく、特には0.07μm乃至0.70μmの範囲がより好ましい。この体積平均粒径は、遠心沈降法により測定した値である。導電層中の導電性粒子の割合は、導電層全質量に対して1.0質量%乃至90.0質量%の範囲が好ましく、特には5.0質量%乃至80.0質量%の範囲がより好ましい。
【0050】
導電層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。これらは、円筒状基体に対する接着性が良好であるとともに、導電性粒子の分散性を向上させ、かつ、成膜後の耐溶剤性が良好である。これらの中でも、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリアミド酸樹脂が好ましい。
【0051】
導電層を粗面化し、干渉縞を防止する手段としては、粗し材の粒子を添加することが挙げられる。粗し材は不定形粒子ではなく、多面体やボール状のように形状が定まった樹脂粒子が好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の硬化性樹脂の粒子が挙げられる。中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。粗し材粒子の平均粒径は、1.0μm乃至9.0μmであることが好ましい。。
【0052】
粗し材粒子の含有量は均一かつ適切な粗面を形成させるという観点から導電性粒子と結着樹脂の総和に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0053】
導電層と電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設ける。中間層は、感光層の接着性、塗工性および円筒状基体からの電荷注入性の改良、並びに感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。
【0054】
中間層を形成するための樹脂としては以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂の如き樹脂。さらに、酸化チタンや酸化アルミニウムを含有させてもよい。
【0055】
中間層は上記の樹脂と溶剤からなる中間層用塗布液を導電層上に塗布し、乾燥させることによって形成させることができる。中間層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
【0056】
中間層の膜厚は0.50μm乃至2.50μmであることが好ましく、0.50μm乃至2.00μmであることがより好ましい。
【0057】
積層型電子写真感光体の場合、中間層の上には電荷発生層が形成される。電荷発生層は電荷発生材料を0.3倍乃至4倍の重量の結着樹脂および溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルまたは液衝突型高速分散機を使用して分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0058】
本発明に用いられる電荷発生材料としては、以下のものが挙げられる。セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドンおよび非対称キノシアニン系の各顔料。上記の各種電荷発生物質の中でも、高感度であるという点で、近年フタロシアニン顔料が広く使用されている。代表的なフタロシアニン顔料としては、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが挙げられる。
【0059】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルメタクリレート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂。特には、ブチラール樹脂などが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0060】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
【0061】
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.01μm乃至2μmであることがより好ましい。
【0062】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を必要に応じて添加することもできる。
【0063】
電荷発生層上には電荷輸送層が形成される。電荷輸送層には電荷輸送物質が含有され、電荷輸送物質としては、以下のものが挙げられる。トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0064】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂。
【0065】
また、表面層には滑剤として、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイルやシリコーン樹脂を添加させてもよい。
【0066】
図8は、電子写真装置の概略構成を示した図である。以下、図8を用いて、電子写真プロセスを説明する。101は像担持体としての電子写真感光体であり軸101aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体はその回転過程で帯電手段102によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部103にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光など)を受ける。これにより電子写真感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0067】
その静電潜像はついで現像スリーブ104aを内蔵する現像手段104によってトナーで現像され、そのトナー像が転写手段105により不図示の給紙部から電子写真感光体101と転写手段105との間に電子写真感光体の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。
像転写を受けた転写材Pは電子写真感光体面から分離されて定着手段108へ導入されて像定着を受けて複写物(コピー)として機外へ排出される。
【0068】
像転写後の電子写真感光体の表面はクリーニング手段106にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化されて、さらに、前露光手段107により除電処理されて繰り返して像形成に使用される。
【0069】
電子写真感光体の帯電手段102としてはコロナ帯電装置や接触帯電方式のローラ帯電装置が一般に広く使用されている。また転写手段105に関しても同様である。上述の電子写真感光体や現像手段、クリーニング手段などの電子写真装置の構成要素のうち、複数の要素を一体に結合して装置ユニットとして構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。例えば、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段の少なくとも1つを電子写真感光体とともに一体に支持してユニットを形成し、レールなどの案内手段を用いて装置本体に着脱自在に構成しても良い。
【実施例】
【0070】
〔実施例1〕
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は質量部である。
保管箱に用いる成形用樹脂ペレット(樹脂組成物のペレット)を以下のようにして作製した。
ポリプロピレン(密度900kg/m、融点170℃):140部
カーボンブラック:0.336部
式(1−5)の帯電防止剤:0.00705部
式(6−4)の耐候性材料:0.00681部
上記の材料を混合後、混錬押出機にて混練し、成形用の樹脂ペレットを得た。
得られた樹脂ペレットを射出成形機にて、温度200℃で射出成形して、図1に示される保管箱の蓋、底箱および支持部材を作製した。蓋および底箱の肉厚は2.5mmとした。帯電防止剤および耐候性材料の含有量は、粉末状に粉砕した成形物をクロロホルムで抽出し、LC−MS分析で測定した。LC−MS装置としては、Agilent(株)製LC−MS(LC:Agilent1200SL、MS:Agilent6130)を用いた。また、帯電防止剤、耐候性材料の含有量は、標準物質を用いて、濃度とピーク面積の検量線を作成し、定量することでそれぞれ求めた。保管箱の帯電防止剤および耐候性材料の含有量を表1に示す。
【0071】
次に、電子写真感光体は以下のようにして作製した。
内径がφ29.00mm、肉厚が0.8mm、長さ:260.5mmからなるアルミニウムシリンダーを円筒状基体として使用した。
次に、10質量%のアンチモンを含有させた酸化錫で被覆した酸化チタン導電性粒子(紛体抵抗150Ω・cm、酸化錫の被覆率45質量%)12部、フェノール樹脂4部、平均粒径2.0μmのシリコーン樹脂粒子1.60部、およびメタノール22部を、直径1mmのガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で3時間分散して、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を塗布速度を調節して浸漬塗布し、150℃で30分間熱硬化して、膜厚が20.0μmの導電層を形成した。
【0072】
次に、ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)1部、および、メトキシメチル化6ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)1.9部を、メタノール30部/n−ブタノール25部の混合溶媒で溶解して、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を膜厚が0.50μmとなるように塗布速度を調節して浸漬塗布し、105℃で10分間熱風乾燥させて、導電層上に中間層を形成した。
【0073】
次に、CuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°、16.6°、25.5°および28.2°に強いピークを有するクロロガリウムフタロシアニン6.5部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製)3部およびシクロヘキサノン50部からなる溶液を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で8時間分散し、次に、酢酸エチル100部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、90℃で10分間乾燥して、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0074】
次に、下記式で示される構造を有する電荷輸送物質8部、
【化34】

下記式で示される構造を有する電荷輸送物質4部、
【化35】

および下記式で示される構造単位を有するポリエステル樹脂10部
【化36】

およびジメチルシリコーンオイル0.1部を、モノクロロベンゼン80部/ジメトキシメタン20部の混合溶媒で溶解して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0075】
この電荷輸送層用塗布液を膜厚が15.0μmとなるように塗布速度を調節して浸漬塗布し、120℃で60分間熱風乾燥させて、電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。
【0076】
以上のようにして、作製した電子写真感光体にヒューレットパッカード社から販売されているレーザービームプリンター(LaserJet4350)のプロセスカートリッジに使用されているギアおよびフランジを切曲げカシメ法で組み付け、電子写真感光体ユニットを作製した。作製した電子写真感光体ユニットを上記の保管箱に収納し、高温高湿環境(温度45℃、相対湿度90%)で15日間放置した。
上述したように、保管箱の添加剤成分が揮発し、保管箱に収納した電子写真感光体の表面に付着していくと、電子写真感光体の表面の摩擦係数が上昇し、クリーニングブレードがめくれたり、欠けたりする問題が発生する。この状態で画像出力を行うと、クリーニング不良となり、スジ、ムラ等の画像欠陥が発生しやすくなる。
【0077】
まず、上記の電子写真感光体ユニットを保管箱から取り出し、電子写真感光体の表面の動摩擦係数を測定した。動摩擦係数の測定は温度30℃、相対湿度55%において新東科学(株)製のHEIDON−14を用いて行った。ゴムブレードにはウレタンブレード(ゴム硬度65°)を5mm×25mm×2mmにカットしたものを使用した。該ゴムブレードは50gの荷重をかけた状態で電子写真感光体の表面に対して角度25°で当接させ、電子写真感光体を50mm/minのスピードで平行移動させたときに、電子写真感光体とゴムブレードとの間に働く摩擦力を、ゴムブレード側に取り付けた歪みゲージの歪み量として計測し、引っ張り荷重に換算した。動摩擦係数はブレードが動いている時の「電子写真感光体に加わる力(g)」/「ブレードに加えた荷重(g)」から求めた。動摩擦係数は0.41であった。
【0078】
次に、上記のように作製、保管した電子写真感光体ユニットの中で、動摩擦係数を測定していないものを上記のレーザービームプリンター(LaserJet4350)のプロセスカートリッジに装着した。このプロセスカートリッジを該レーザービームプリンター本体に設置し、高温高湿環境(温度35℃、相対湿度80%)で24時間放置した。該高温高湿環境において画像形成間隔を5秒あけてハーフトーン画像10枚の画像出力試験を行った。
上記の画像出力試験において出力したハーフトーン画像について、画像欠陥の有無を評価したが、画像欠陥は発生していなかった。画像の評価基準は以下に示すとおりである。
A:画像欠陥無し。
B:クリーニングブレード部での鳴き(スリップ音)が不定期に発生したが、画像欠陥無し。
C:軽微な薄いスジ、ムラが発生しているが、実用上、問題とならないレベル。
D:明確なスジ、ムラが発生。
【0079】
また、画像出力試験後のプロセスカートリッジを本体から取り出し、さらにプロセスカートリッジから電子写真感光体ユニットを取り外して、クリーニングブレードの状態を観察したが、ブレードめくれによるエッジ欠けは発生していなかった。評価結果を表2に示す。
【0080】
〔実施例2乃至8〕
保管箱の帯電防止剤および耐候性材料並びにそれらの含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、保管および評価をそれぞれ行った。いずれの場合も明確なスジ、ムラの画像欠陥は発生せず、クリーニングブレードにも異常はみられなかった。
評価結果を表2に示す。
【0081】
〔実施例9〕
保管箱の帯電防止剤および耐候性材料並びにそれらの含有量を表1に示すように変更し、電子写真感光体の電荷輸送層に酸化防止剤(IRGANOX 1076;チバ・ジャパン(株)製)0.5部および二次酸化防止剤(TPL−R;(株)住友化学製)0.5部を含有させ、同様の高温高湿環境で横線画像(線幅:2ドット幅;隣接線間距離:1cm)10枚の画像出力を追加して行った以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、保管および評価を行った。その結果、画像欠陥は発生せず、クリーニングブレードにも異常はみられなかった。評価結果を表2に示す。
【0082】
〔実施例10〕
ポリプロピレンとカーボンブラックのみから成形された保管箱の内面に樹脂ペレットのコート層を設けた以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、保管および評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0083】
〔実施例11〕
実施例1の成形用樹脂ペレットからプレート材を成形し、このプレート材を、ポリプロピレンとカーボンブラックのみから成形された保管箱の内面に設けた以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、保管および評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
〔比較例1〕
保管箱の帯電防止剤および耐候性材料並びにそれらの含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、保管および評価を行った。画像出力時にクリーニングブレードの鳴きが発生し、一時的にめくれた形跡が確認されたが、クリーニングブレードの欠損は無かった。また、画像にはスジ状の画像欠陥が発生していた。評価結果を表2に示す。
【0085】
〔比較例2〕
保管箱の帯電防止剤および耐候性材料並びにそれらの含有量を表1に示すように変更した以外は実施例9と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、実施例9と同様の保管および評価を行った。画像出力を開始した直後からクリーニングブレードの鳴きが発生し、16枚目でクリーニングブレードめくれが発生した。また、ハーフトーン画像にはスジ状の画像欠陥が発生し、横線画像には線の輪郭がボケる現象が発生していた。該ボケ現象が発生した原因は明確にはなっていないが、電子写真感光体が高温高湿環境下で保管されている間に、電子写真感光体の表面が帯電防止剤や耐候性材料の付着により部分的に水分に曝され易くなり、電荷輸送層に含有されている酸化防止剤が劣化した可能性がある。結果を表2に示す。
【0086】
〔参考例1〕
保管箱の帯電防止剤および耐候性材料並びにそれらの含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして保管箱および電子写真感光体を作製し、評価を行った。帯電防止剤および耐候性材料は式(H−1)および式(H−2)で示される高分子量タイプの材料をそれぞれ使用しているため、ブレードめくれや画像欠陥は発生しなかった。ただし、保管箱の製造コストは上記の実施例よりも高く、経済的とはいえない。評価結果を表2に示す。なお、式(H−2)の高分子材料としてはCHIMASSORB 944(分子量 2000乃至3100;チバ・ジャパン(株)製)を用いた。該含有量は、定量できなかったため、ペレット調製時の仕込み量で示した。
【化37】

【化38】

【0087】
【表1】

【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱は、下記式(1)乃至(3)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および下記式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物からなる成形物であって、
該化合物の分子量がそれぞれ560以下であり、
該成形物中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱。
【化1】

式中、Rは炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールオキシ基である。XおよびXは下記式で示される結合基を示す。
【化2】

式中、mは1あるいは2である。
また、AおよびAは下記群から選ばれる基を示す。
【化3】

式中、Rは炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基である。
【化4】

式中、XおよびXの定義はXおよびXの定義と同じであり、AおよびAの定義はAおよびAの定義と同じである。
【化5】

式中、Rは炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基である。nは3乃至11の整数を示す。
【化6】

式中、R、RおよびRはヒドロキシ基、炭素数1乃至25の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。
【化7】

式中、R、R、RおよびR10は炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールオキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。XはS原子、炭素数1乃至14の2価のカルボン酸エステル基あるいは炭素数1乃至12のアルキレン基を示す。
【化8】

式中、R11およびR12は水素原子、炭素数1乃至20の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。
【化9】

式中、BおよびBは下記式で示される有機基を示す。
【化10】

式中、R13は水素原子、炭素数1乃至10の置換または非置換アルキル基あるいは置換または非置換アリール基を示す。また、Xは炭素数1乃至12のアルキレン基を示す。
【化11】

式中、R14およびR15は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アリールオキシ基あるいは置換または非置換カルボン酸エステル基を示す。Xは単結合あるいは下記式で示される2価の有機基を示す。
【化12】

また、Qは下記式で示される有機基を示す。
【化13】

式中、R16乃至R19は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1乃至15の置換または非置換アルキル基、置換または非置換アリール基、置換または非置換アルコキシ基あるいは置換または非置換アリールオキシ基を示す。
【請求項2】
電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱の少なくとも内面の表面に、請求項1に記載の式(1)乃至(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および請求項1に記載の式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物からなるコート層が設けられており、
該化合物の分子量がそれぞれ560以下であり、
該コート層中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱。
【請求項3】
電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットを保管するための保管箱において、
該保管箱の中に電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットが収納された場合に該保管箱の内面と該電子写真感光体および/または電子写真感光体ユニットとの隙間になる位置に、請求項1に記載の式(1)乃至(3)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤および請求項1に記載の式(4)乃至(8)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐候性材料を含有する樹脂組成物からなるプレート材が設置されており、
該化合物の分子量がそれぞれ560以下であり、
該プレート材中の該化合物の総含有量が200ppm以下である
ことを特徴とする保管箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−53532(P2011−53532A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203677(P2009−203677)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】