説明

電子写真用ロールの芯金及びその製造方法

【課題】コストアップを招くことなくギヤへの挿入性を確保する。
【解決手段】芯金1の直径をD、面取部2によって芯金1の端面に形成される円形部分4の直径をd、平面部3の芯金径方向での最大深さをxとした場合、D−2x>dの関係となるように面取部2及び平面部3を形成することで、芯金1の端面と平面部3との間に、面取部2の一部となる案内部2aを周方向へ分断することなく残すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機やプリンタ等の電子写真装置に使用される帯電ロールや現像ロール等の電子写真用ロールの芯金と、その芯金の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真用ロールとしては、例えば電子写真複写機に用いられる帯電ロールのように、アルミニウムやステンレス等の金属製の芯金の外周に、ベースゴム層と、抵抗調整層及び表層とからなるロール部を形成したものがよく知られている。このような電子写真用ロールには、芯金の端部にギヤが外嵌されてトルク伝達が行われるものがある。
この場合、ギヤから芯金へのトルク伝達を確実に行うために、図7(A)に示すように、芯金10の端部側面には、Dカットと称される軸線と平行な平面部11が形成されて、ギヤの中心に形成された同形状の嵌合孔に差し込み嵌合される(Dカットの例として特許文献1参照)。また、芯金10の当該端部側の端面には、ギヤの嵌合孔への差し込みの際にギヤの嵌合孔と干渉しないように、C面加工と称される面取部12が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−338244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記芯金10においては、先にC面加工を行って面取部12を形成してからフライス加工で平面部11を形成することになるため、A部分にバリが生じ、ギヤへの組み付け時に嵌合孔と引っ掛かって組み付けできない場合がある。そこで、同図(B)に示すように、A部分に新たに面取部13を形成してバリを除去すれば挿入性に係る不具合は解消されるが、加工工程が増えることでコストアップを招くことになる。
【0005】
そこで、本発明は、コストアップを招くことなくギヤへの挿入性が容易に確保可能となる電子写真用ロールの芯金とその製造方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電子写真用ロールの芯金であって、芯金の直径をD、面取部によって芯金の端面に形成される円形部分の直径をd、平面部の芯金径方向での最大深さをxとした場合、D−2x>dの関係となるように面取部及び平面部が形成されて、芯金の端面と平面部との間に、面取部の一部が周方向へ分断されることなく残っていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、製造工程において芯金の端部を把持するチャック部と干渉しない面取部を確保するために、芯金の端面と平面部との間の面取部は、芯金軸方向で0.5mm以上残るようにしたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、残る面取部の一部を大きく確保するために、面取部は、芯金の軸線に対して45°未満の角度で形成される構成としたものである。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、電子写真用ロールの芯金の製造方法であって、芯金の直径をD、面取部によって芯金の端面に形成される円形部分の直径をd、平面部の芯金径方向での最大深さをxとした場合、D−2x>dの関係となるように面取部及び平面部を形成することで、芯金の端面と平面部との間に、面取部の一部を周方向へ分断することなく残すようにしたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4の目的に加えて、製造工程において芯金の端部を把持するチャック部と干渉しない面取部を確保するために、芯金の端面と平面部との間の面取部は、芯金軸方向で0.5mm以上残すようにしたものである。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5の目的に加えて、残る面取部の一部を大きく確保するために、面取部は、芯金の軸線に対して45°未満の角度となるように形成する構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び4に記載の発明によれば、平面部を形成しても面取部の一部が残るようにしたことで、平面部における面取部側の端縁にバリが生じない。よって、平面部の形成後に新たな面取加工を行う必要がなく、コストアップを招くことがない。また、残った面取部の一部によってギヤの嵌合孔への挿入性も確保可能となる。
請求項2及び5に記載の発明によれば、残す面取部を0.5mm以上としたことで、製造工程において芯金の端部を把持するチャック部との干渉を防止でき、面取部に反り返りが生じることが無くなる。
請求項3及び6に記載の発明によれば、面取部の角度を45°未満としたことで、残る面取部の一部を大きく確保できる。よって、より良好な挿入性が得られると共に、チャック部との干渉もより効果的に防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電子写真用ロールに用いられる芯金の一例を示す説明図で、左が端部側から見た正面、右が側面の一部を示している。この芯金1はアルミニウム等の金属製で、端面には、C面加工によって面取部2が形成され、当該端面を含む端部側面には、芯金1の軸線と平行な平面部3が形成されている。ここでも加工手順としては、面取部2が形成された後に平面部3が形成されることになるが、ここでは、面取部2と平面部3との間に、面取部2の一部である案内部2aが、芯金1の軸方向への長さKだけ残るようになっている。
【0010】
これは、芯金1の直径をD、面取部2によって芯金1の端面に残る円形部分4の直径をd、平面部3の芯金径方向での最大深さをxとした場合、D−2x>dの関係となるように面取部2と平面部3とを形成することで、面取部2の後に平面部3を形成しても、その間で面取部2が図7(A)のように周方向へ分断されてなくなることがないようにしたものである。
【0011】
従って、以上の如く構成された芯金1及びその製造方法によれば、上記式の関係となるように面取部2及び平面部3を形成して、芯金1の端面と平面部3との間に案内部2aを残すようにしたことで、平面部3における面取部2側の端縁にバリが生じない。よって、平面部3の形成後に新たな面取加工を行う必要がなく、コストアップを招くことがない。また、案内部2aによってギヤの嵌合孔への挿入性も確保可能となる。
以下、本発明の実施例を列挙する。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1の端面に、挿入角度(芯金1の軸線に対する角度)θが45°で芯金軸方向の長さL1が2mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが1mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合、円形部分4はφ4mmとなる。
【実施例2】
【0013】
図2に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1aの端面に、挿入角度θが45°で芯金軸方向の長さL1が1.5mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが0.5mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合、円形部分4はφ5mmとなり、実施例1よりも面積が大きくなるため、芯金1の端面から給電する場合に必要な導電面積を十分確保可能となる。
【実施例3】
【0014】
図3に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1bの端面に、挿入角度θが14.036°で芯金軸方向の長さL1が6mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが2mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合も円形部分4はφ5mmとなる。
本実施例3以下では、挿入角度を小さくして軸方向長さKの寸法を大きく確保しているので、製造工程内で芯金の端部を把持するチャック部のV溝内面と干渉して反り返りを起こすおそれがなくなる。
【実施例4】
【0015】
図4に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1cの端面に、挿入角度θが16.699°で芯金軸方向の長さL1が5mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが1.667mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合も円形部分4はφ5mmとなる。
【実施例5】
【0016】
図5に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1dの端面に、挿入角度θが20.556°で芯金軸方向の長さL1が4mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが1.333mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合も円形部分4はφ5mmとなる。
【実施例6】
【0017】
図6に示すように、アルミニウム製で直径φ8mmの芯金1eの端面に、挿入角度θが5°で芯金軸方向の長さL1が17.145mmとなる面取部2を形成した後、端部上面にフライス加工で芯金軸方向の長さL2が10mmの平面部3を形成して、平面部3と円形部分4との間に、芯金軸方向長さKが6mmとなる案内部2aが残るようにした。この場合も円形部分4はφ5mmとなる。
【0018】
表1は、各実施例1〜6及び、比較例1(図7(A)で説明した従来の芯金)、比較例2(同図(B)で説明した従来の芯金)を、夫々ギヤへの挿入性、コスト、端面から給電する場合に必要な円形部分の径、チャック部との接触回避の各項目について比較したもので、各項目ごとに芯金に要求される要求値を満たすものを○、満たさないものを×、要求値を満たすが他の例よりは性能としては劣るものを△として評価している。なお、チャック部との接触回避の評価は、n数100を、実際に製造工程に投入し、チャック部との干渉がなく案内部に反り返りが生じないものを○、干渉があって反り返りが3本以上発生したものを×、反り返りが2本以下のものを△としている。
【0019】
ここでは、挿入角度の要求値は上限を85°としているが、挿入性やチャック部との干渉を考慮すると、案内部を大きく確保できる45°未満で設定するのがより好ましい。また、挿入角度の下限は、小さすぎると平面部の面積が小さくなり、トルク伝達において不利が生じるおそれがあるため、5°を要求値としている。
一方、円形部分の径は、端面からの給電を考慮して、少なくとも導電面積として必要と考えられるφ4を要求値としている。
そして、接触回避では、長さKが0.5mmを下回ると反り返りが3本以上発生してしまうため、0.5mm以上を要求値としている。
【0020】
【表1】

【0021】
このように、実施例1〜6は、何れも追加工なく形成される案内部を有しており、挿入性やコストにおいて比較例1,2に比べて有利であることは明らかである。
【0022】
なお、芯金の材質や寸法、面取部や平面部の寸法等は上記実施例に限定するものではなく、本発明が提示する関係式によって、平面部を形成しても面取部の一部が残る構成であれば、適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の芯金の説明図である。
【図2】実施例2の芯金の説明図である。
【図3】実施例3の芯金の説明図である。
【図4】実施例4の芯金の説明図である。
【図5】実施例5の芯金の説明図である。
【図6】実施例6の芯金の説明図である。
【図7】(A)(B)共に従来の芯金の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・芯金、2・・面取部、2a・・案内部、3・・平面部、4・・円形部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面円形の軸体の端面外周に面取部が、当該端面を含む端部側面に軸線と平行な平面部が夫々形成されてなる電子写真用ロールの芯金であって、
前記芯金の直径をD、前記面取部によって前記芯金の端面に形成される円形部分の直径をd、前記平面部の前記芯金径方向での最大深さをxとした場合、
D−2x>d
の関係となるように前記面取部及び平面部が形成されて、前記芯金の端面と平面部との間に、前記面取部の一部が周方向へ分断されることなく残っていることを特徴とする電子写真用ロールの芯金。
【請求項2】
芯金の端面と平面部との間の面取部は、前記芯金軸方向で0.5mm以上残るようにした請求項1に記載の電子写真用ロールの芯金。
【請求項3】
面取部は、芯金の軸線に対して45°未満の角度で形成される請求項1又は2に記載の電子写真用ロールの芯金。
【請求項4】
横断面円形の軸体の端部外周に面取部を形成した後、当該端面を含む端部側面に軸線と平行な平面部を形成する電子写真用ロールの芯金の製造方法であって、
前記芯金の直径をD、前記面取部によって前記芯金の端面に形成される円形部分の直径をd、前記平面部の前記芯金径方向での最大深さをxとした場合、
D−2x>d
の関係となるように前記面取部及び平面部を形成することで、前記芯金の端面と平面部との間に、前記面取部の一部を周方向へ分断することなく残すようにしたことを特徴とする電子写真用ロールの芯金の製造方法。
【請求項5】
芯金の端面と平面部との間の面取部は、前記芯金軸方向で0.5mm以上残すようにした請求項4に記載の電子写真用ロールの芯金の製造方法。
【請求項6】
面取部は、芯金の軸線に対して45°未満の角度となるように形成する請求項4又は5に記載の電子写真用ロールの芯金の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−40102(P2008−40102A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213689(P2006−213689)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】