説明

電子写真画像形成装置

【課題】像担持体に接触配置された導電部材である転写ローラの小径化を図った場合に発生する沿面放電の発生が防止できる転写ローラを備える電子写真画像形成装置の提供。
【解決手段】記録材上に転写された未定着トナー像を加熱用回転体と加圧用回転体により互いに圧接して成る定着ニップ間を通過させ未定着トナー像を永久画像とならしめる加熱定着装置を備えた電子写真画像形成装置において、導電部材は導電性弾性体の端面と芯金の成す角度が、少なくとも芯軸側は斜めに形成されている回転体状の導電部材とすることで、導電部材の端面は芯軸と直交して形成されるのではなく、少なくとも芯軸側のゴム端面は斜めに形成されることで、芯軸上のゴム端面の断面距離を、従来一般的に使用されているゴム端面が芯軸と直交して形成されたものより長く取ることが可能となり、ゴム端面を電気経路として発生する沿面放電の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性弾性体で形成された転写部材としての転写ローラに高圧を印加して像担持体上のトナー像を記録材に転写する電子写真画像形成プロセスを用いた複写機、レーザービームプリンタ等の電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザービームプリンタ等の電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置において、像担持体上に形成したトナー像を、記録材上に転写する手段として転写ローラを使用するものが知られている。
【0003】
転写ローラは、給電電極を兼ねた芯軸(一般的には金属製である)の外周面に半導電性の弾性層(ゴム部材)が形成された構成であり、以前から広く使われているコロナ帯電器に比べて、小型化が容易であること、オゾンやNOx の発生が少ないこと、記録材材の搬送が安定すること、等の利点を有している。
【0004】
この転写ローラに印加する転写バイアスは、転写ローラの抵抗値に適した電流値が流れるよう制御される。その制御は、像担持体と転写ローラ間の転写ニップ部に記録材が存在しないときに転写高圧電源から転写ローラに一定電流を流すような定電流制御を行い、この時の印加電圧から予め設定した転写制御式により算出する。この制御により、転写ローラに印加される転写バイアスは、転写ローラの抵抗が温湿度等により変化した場合でも、その抵抗値における最適な転写バイアスが印加され良好な転写性能が得られるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特特第2614309号公報
【特許文献2】特開平10−186897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の転写装置においては、更なる高画質化、転写装置の設計自由度の向上、転写ローラの低コスト化を実現するべく転写ローラを小径化していくと、像担持体表面と転写ローラ芯軸との間の距離が短くなるため、給電部材及び給電電極を兼ねた芯軸と像担持体表面との間で転写バイアスの放電が発生し易くなり、適正な転写バイアスの印加が困難になることがある。
【0007】
このような気中放電現象は、転写ローラ芯軸と像担持体表面間の空気層を通して発生する空中放電、転写ローラのゴム端面を伝わって転写ローラ芯軸と像担持表面で発生する沿面放電、転写ローラ芯軸に給電する給電部材の像担持体近傍から像担持体表面の空気層を通して発生する気中放電がある。又、絶縁破壊が起こり易い低湿環境下、気圧の低い環境下において発生し易く、更に、転写ローラの小径化を行うと、転写ローラの抵抗値が高抵抗になり、それに適した転写を実行するために転写バイアスが大きく制御される、低温低湿環境下で特に放電の恐れがある。
【0008】
転写ローラ芯軸に給電する給電部材の像担持体近傍部から像担持体表面への気中放電の対策は、給電部材の抵抗値の設定、給電部材の像担持体近傍側の形状の設定、等の対策や、特許文献2(特開平10−186897号公報)で提案されている給電部材の像担持体側を絶縁部材で構成する、等により防止する技術が確立されてきていた。
【0009】
残る放電現象としては、転写ローラ芯軸からの気中放電とゴム端面からの沿面放電である。転写ローラ芯軸からの気中放電は空気の絶縁破壊を伴って発生する放電現象であるので、可成りの高圧バイアスが印加されない限り発生するものではなく、ローラ式の転写方式を採用する電子写真画像形成装置においては発生するものではなく、気中放電よりは沿面放電の方が発生し易い。沿面放電は、芯軸に給電された転写バイアスが導電性ゴム端面の表面を流れる(走る)ことで像担持体表面に通電してしまう現象である。
【0010】
このため、転写ローラに印加する転写バイアスの最大値によって転写ローラの最小外径が規制されてきていた。
【0011】
そこで、本発明は、放電を伴うことなく導電部材の小型化(例えば、ローラ式の転写部材の小径化)を可能とし、高画質化、画像形成装置の設計自由度の向上、ローラ式の転写部材の小径化を図ることができる電子写真画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、像担持体上に接触配置される、導電性弾性体が芯軸上に形成された回転体状の導電部材を有し、像担持体上に形成されたトナー像を記録材上に転写し、記録材上に転写された未定着トナー像を加熱用回転体と加圧用回転体により互いに圧接して成る定着ニップ間を通過させ未定着トナー像を永久画像とならしめる加熱定着装置を備えた電子写真画像形成装置において、導電部材は導電性弾性体の端面と芯金の成す角度が、少なくとも芯軸側は斜めに、即ち直交しない面が、導電性弾性体の円周全域において形成されている回転体状の導電部材であることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導電部材の導電性弾性体の端面と芯金の成す角度が、芯軸側は斜めに形成された面、即ち直交しない面が導電性弾性体端面の円周全域に形成され、且つ、芯軸と垂直に形成された面を導電性弾性体端面の一部分或いは全周において有する回転体状の導電部材であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記導電部材の導電性弾性体の端面と芯金の成す角度は鋭角である回転体状の導電部材を有したことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記導電部材の導電性弾性体の長手方向断面の弾性体端面は、長手中央方向に頂点を有する三角形状である面を、導電性弾性体端面の円周全域において有する回転体状の導電部材であることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記回転体状の導電部材が、前記像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性弾性体が芯軸上に形成された導電部材である転写ローラにおいて、導電部材の端面は芯軸と直交して形成されるのではなく、少なくとも芯軸側のゴム端面は斜めに形成されることで、芯軸上のゴム端面の断面距離を、従来一般的に使用されているゴム端面が芯軸と直交して形成されたものより長く取ることが可能となり、ゴム端面を電気経路として発生する沿面放電の発生を防止することが可能とできる。よって、転写ローラの小径化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図2にレーザービームプリンタを例とした本発明に係る画像形成装置の概略構成、図3に電子写真プロセスカートリッジの概略構成を示す。先ず、画像形成装置全体について簡単に説明する。
(電子写真画像形成装置の全体構成及びプロセスカートリッジ構成の説明)
プロセスカートリッジを電子写真画像形成装置本体に着脱可能に装着する電子写真画像形成装置の全体構成概略及びプロセスカートリッジ構成について図2及び図3を参照して説明する。
【0020】
図2は電子写真画像形成装置(本実施の形態においてはレーザービームプリンター(以下「画像形成装置」と称す))の概略構成断面図、図3は着脱可能なプロセスカートリッジ(以下、「カートリッジ」と称す)の概略構成断面図である。
【0021】
先ず、記録材Sの流れに沿って概略的な構成を説明する。
【0022】
画像形成装置は電子写真方式によって画像を形成するものであり、給紙搬送手段によって記録材Sを画像形成手段へ搬送してトナー像を転写し、その記録材Sを定着手段へ搬送してトナー像を永久画像となるよう定着した後、排出トレイへと排出するものである。具体的には、装置下部に記録材Sを積載収納するカセット111が装填されている。記録材給送部内のカセット111内に積載収納されている記録材Sが、反時計回り方向に回転する給紙ローラ112によって最上位のシートから順に繰り出され、搬送ローラ対113,114により画像形成部2 に送られる。
【0023】
画像形成部2近傍には記録材の通過を検知するセンサレバー115、フォトインタラプタ116が設けられており、記録材Sの通過を検知する。この記録材Sの通過を検知した後、所定時間経過後にレーザースキャナー121によって、画像情報に応じたレーザー光が時計回り方向に回転している像担持体(被帯電体)としてのドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」と言う)151上に照射され、感光ドラム151上には静電潜像が形成される。この静電潜像は、プロセスカートリッジP内の現像部にてトナー(現像剤紛体)が付着されてトナー像として現像される。
【0024】
転写前ガイド171によって案内された記録材Sは、感光ドラム151と転写ローラ124から成る転写ニップにて記録材S上に未定着トナー像が転写され、接地された除電針172により感光ドラム151から分離され、搬送ガイド173上を移動し、定着器3に送られる。定着器3を通過して定着処理が成された記録材Sは、排紙搬送ローラ対133により機外に搬送排出される。尚、図2の4は装置の電源部及び装置を制御する制御基板を有する電装部である(詳細は省略)。
【0025】
次に、記録材Sの表裏両面印字時について説明する。
【0026】
記録材Sの両面に記録を行う場合には、前記定着部3を通過して表面側に画像記録された記録材Sを排紙搬送ローラ対133の逆転駆動及び搬送ローラ131によりスイッチバックすることで搬送ローラ対141,142により再度画像形成部2に搬送して記録材S裏面側に画像記録を行った後に排出される。
【0027】
プロセスカートリッジPは、感光ドラム151を時計周りに回転し、その表面を帯電手段である帯電ローラ152(感光ドラムからの従動回転)への直流電圧を重畳した交流電圧の印加によって一様に帯電する。電圧印加は装置本体側の電装部4より帯電接点125を介しプロセスカートリッジ側の帯電接点153、帯電ローラ152へと給電される。次いでレーザスキャナ121からの画像情報に応じたレーザー光を感光ドラム151へ照射して感光体上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像にトナーを現像することで可視化する。
【0028】
帯電ローラ152は、感光ドラム151に接触して設けられており、感光ドラム151に帯電を行う。この帯電ローラ152は、感光ドラム151に従動回転する。又、現像手段は、感光ドラム151の現像領域へトナーを供給して、感光ドラム151に形成された静電潜像を可視化現像する。
【0029】
上記現像手段は、トナー収納容器154内のトナーを攪拌部材155の回転によって現像室156に送り出す。そして、マグネットローラ(固定磁石)を内蔵した現像ローラ157を回転させるとともに、現像ブレード158によって摩擦帯電電荷を付与したトナー層を現像ローラ157の表面に形成する。現像ローラ157に電圧印加し、そのトナーを潜像に応じて感光ドラム151へ転移させることによってトナー像を形成して可視像化する。電圧印加は装置本体側の電装部4より現像接点126を介しプロセスカートリッジ側の現像接点158、現像ローラ157へと給電される。
【0030】
現像ブレード158は、現像ローラ157の周面のトナー量を規定すると共に摩擦帯電電荷を付与するものである。
【0031】
転写ローラ124によってトナー像を記録材S上に転写した後の感光ドラム151は、クリーニング手段によって感光ドラム151上に残留したトナーを除去した後、次の画像形成プロセスに供される。クリーニング手段は、感光ドラム151に当接して設けられた弾性クリーニングブレード159によって感光ドラム151上の残留トナーを掻き落として廃トナー容器160へと集められる。
【0032】
プロセスカートリッジPの表面には情報記憶媒体であるメモリタグ6が取り付けられており、装置本体側のコネクタ(不図示)に設けられている本体電気接点(不図示)と電気的接続を行い、通信を行っている。
【0033】
ドラムシャッター161は、プロセスカートリッジP非装着時にはドラム保護のために閉じた状態であり、装置本体に装着されると開いた状態となる。
【0034】
次に、感光ドラム151上に形成されたトナー像を記録材S上に転写する工程について説明する。
(転写ローラの説明)
図4を参照して上述の転写工程について詳述する。尚、同図は、転写ローラ124の長手方向に直角な方向の断面図を示す。
【0035】
転写ローラ124は、図に示したように、一般的にSUS、Fe等の金属製の芯金124a上に、カーボンやイオン導電性フィラー等によって抵抗が所定の範囲に調整された半導電性のスポンジ弾性層124bが形成されたスポンジ弾性ローラを用いるのが一般的である。
【0036】
本発明の形態では、直径5mmのFeから成る芯軸124aの外周面にNBRを主とする発泡弾性体層を肉厚3mmで形成した直径11mmの転写ローラである。その製品硬度はAsker−C(500g荷重)硬度で25°〜40°であることが望ましい。25°を下回ると、転写ローラ124と感光ドラム151の接触面積(以下、「転写ニップ」と称す)が増すため転写ローラ124から感光体への電気経路が広く形成されることになり、転写電流過多による感光体への電荷メモリの発生が懸念される。逆に、40°を超えると、転写ニップが減少するため電気経路が細くなり、転写電流不足によるトナー像の飛び散りが、特に低湿下において発生し易くなる。具体的にスポンジ弾性層には、導電性付与部材が加えられたEPDM、シリコーン、NBR、ウレタン等に、架橋剤・発泡剤・充填剤等の充填剤を適量添加したものが使われている。
【0037】
又、転写ローラ124は、感光ドラム151と0.5N/cm〜2.0N/cmの範囲の押圧で接触することが記録材の安定した搬送性を達成することから望ましい。0.5N/cmを下回るとぶれ画像が発生し易く、2.0N/cmを上回ると転写ローラ124と感光ドラム151が接する面圧が大きくなるためプロセスカートリッジの装抜性(着脱性)が悪化してしまうためである。更に、弾性層124b外周面に、少なくとも1層から成るヒドリンゴム、NBR、ウレタン、水溶性ナイロン、等のコート層124cを形成しても良い。
【0038】
図5は上述の画像形成装置に組み込まれた状態における感光ドラム151及び転写ローラ124の位置関係を示す正面図である。
【0039】
図5において、給電電極を兼ねた導電材から成る芯軸(一般的に金属で形成される)124aの長手方向の一端部(同図の左側の端部)は、芯軸124aに給電を行う導電性軸受175によって回転自在に支持されており、又、他端部は絶縁性軸受176によって回転自在に支持されている。導電性軸受175は、加圧ばね(圧縮ばね)177によって感光ドラム151に向けて付勢されており、又、絶縁性軸受176も、加圧ばね(圧縮ばね)177によって感光ドラム151に向けて付勢されている。転写ローラ124は、弾性部124bがこれら加圧ばね177によって感光ドラム151表面の感光層に適度な当接圧で押圧され、感光ドラム151との間に記録材Sを挟持搬送する転写ニップ部を構成している。尚、同図中、180は感光ドラム151と一体回転するドラムギヤである。
【0040】
上述の構成において、芯軸124aに弾性層124bが被覆されていない部分を芯軸露出部とすると、導電性軸受175を介して芯軸124aに印加する転写バイアスを大きくしていった場合、この芯軸124a上のゴム端面の根元(図中の矢印の示す箇所)からゴム端面(図中の太線)を介して感光ドラム151表面に転写バイアスが流れる沿面放電現象が発生してしまうため、転写ローラ124の小径化は、用いる転写バイアスの最大出力値により制限されていた。
(転写制御の説明)
次に、感光ドラム151上に形成されたトナー像を記録材S上に転写する工程について説明する。
【0041】
転写ローラ124は、図4に示したように、一般的にSUS、Fe等の金属製の芯金124a上に、カーボンやイオン導電性フィラー等によって抵抗が所定の範囲に調整された半導電性のスポンジ弾性層124bが形成されたスポンジ弾性ローラを用いるのが一般的である。その製品硬度はASker−C(500g荷重)硬度で25°〜40°であることが望ましい。25°を下回ると、転写ローラ124と感光ドラム151の接触面積(以下「転写ニップ」と称す)が増すため、転写ローラ124から感光体への電気経路が広く形成されることになり、転写電流過多による感光体への電荷メモリの発生が懸念される。逆に、40°を超えると、転写ニップが減少するため電気経路が細くなり、転写電流不足によるトナー像の飛び散りが、特に低湿下において発生し易くなる。具体的にスポンジ弾性層には、導電性付与部材が加えられたEPDM、シリコーン、NBR、ウレタン等に、架橋剤・発泡剤・充填剤等の充填剤を適量添加したものが使われている。
【0042】
又、転写ローラ124は、感光ドラム151と0.5N/cm〜2.0N/cmの範囲の押圧で接触することが記録材の安定した搬送性を達成することから望ましい。0.5N/cmを下回るとぶれ画像が発生し易く、2.0N/cmを上回ると転写ローラ124と感光ドラム151が接する面圧が大きくなるためプロセスカートリッジの装抜性(着脱性)が悪化してしまうためである。
【0043】
このような転写ローラ124に印加する転写バイアスの制御は以下のような内容で制御される。
【0044】
即ち、転写制御のポイントは転写時に転写ローラ124から記録材Sを介して感光体に流れ込む転写電荷を、転写ローラ124の抵抗値・画像形成装置の置かれた環境・記録材Sの状態、等の諸条件に対して最適なものとすることである。
【0045】
本目的を達成するための転写制御が特開平02−123385号公報に提案されている。本発明はATVC(Act ive Transfer Voltage Control)制御として提案がなされ、転写ローラ方式の画像形成装置では広く用いられる転写制御方式である。この方式は、転写時に転写ローラ124に印加する転写バイアス値の最適化を目的としており、画像形成直前の前回転中に転写ローラ124から感光ドラム151に所望の一定電流(Io と称す)を流し、その電流値を流すのに要したバイアス値(Vo と称す)から決定される転写バイアス値(Vt と称す)を画像転写時に印加することで、上述した転写を左右する条件によらず、常に転写ローラ124から記録材Sを介して感光体に流れ込む転写電荷を転写に最適な値として印加するように制御するものである。
【0046】
例えば、製造上の許容範囲内での抵抗値のばらつきや転写ローラ124の置かれた環境による抵抗値の変化等によって、転写ローラ124の抵抗値が高く変化した場合を考えると、抵抗値が高くなったことにより所望とするIo を流すのに要するVt を大きく設定することで、常に所望とする一定の転写電流値をIo として流せることが特徴である。実際には、記録材Sが転写ニップを通過するトナー転写時には記録材Sが存在することを考慮して、実際の転写バイアス値としての定電圧値Vt は、以下の式(ATVC式)にて表される。
【0047】
Vt =A・Vo +B (A,Bは定数)
このように接触転写方式では、転写ローラ124の抵抗値により記録材Sに印加すべき最適な転写バイアス値が変わる。又、転写ローラ124は、半導電性ゴムから形成されるため個々の抵抗値のバラツキが大きく、転写ローラ124の置かれる雰囲気下の環境にもより抵抗値が変動してしまう。
【0048】
同様に記録材Sの抵抗値に代表される特性も激しく変化することになる。これらの特性を活かして、転写ローラ124の抵抗値から高温高湿環境(H/H)と低温低湿環境(L/L)を区別することが可能となると共に、環境変動に伴う抵抗値変化や耐久に伴う抵抗値変動によって転写性が変わらないようにすることができる。又、Vt の算出は、記録材S先端にて転写爆発等の転写電流不良による現象を防ぐために、前回転によって求められたVo により算出される。
【0049】
<実施の形態1>
そこで、本実施の実施形態1では、図1に示したように転写ローラ124の弾性層124b端面を、芯軸124a側から外周面に向かって凹状の斜面として成型したものである。これにより、弾性層端面の距離を長く取れることになり、沿面放電を伴うことなく、高画質化、転写装置の設計自由度の向上、転写ローラ124の低コスト化のために転写ローラの小径化を実現することを可能とできた。
【0050】
更に、具体的に説明する。
【0051】
具現化する画像形成装置として用いたものは、プリントスピードが毎分22枚の、カートリッジ式(感光ドラム151やクリーナをカートリッジ化して画像形成装置本体に着脱自在に構成したもの)のレーザービームプリンタに本発明を適用した。
【0052】
先ず、本実施の形態1に用いたレーザービームプリンタの転写ローラの弾性層124b端面の凹状の斜面の角度(図中のθ)であるが、θが小さいと生産上困難である、弾性層124bが存在しない領域は弾性層が脆くなる・所定の押圧での転写ニップが形成できない、等の問題がある。
【0053】
逆にθが大きいと、弾性層124b端面の距離(図中太線の距離)が取れなくなり、沿面放電の防止効果が小さくなってしまい本発明の効果が見出せなくなる。弾性層124bの肉厚が厚ければθは大きくても沿面放電の対策効果はあるが、肉厚が薄い場合はθが小さくなければ沿面距離が稼げないことになるが、先述したような問題の発生が懸念される。又、弾性層124bは発泡体であるスポンジ弾性層から形成されており、生産性・沿面放電の対策効果を両立できる斜めの凹形状として、本発明におけるθとしては生産性の観点から40°以上、沿面放電の対策効果から65°以下の範囲となるように成型したものを用いた。
【0054】
又、転写ローラ124の抵抗値は、24℃/60%の環境下に24時間放置した後、転写ローラ124に直流高圧2kVを印加した時の抵抗値が7×10〜1×10Ωの範囲に収まるものである。尚、抵抗値の測定の詳細説明は割愛するが、回転可能に設定された転写ローラ124に当接させたアルミシリンダと芯軸124aの間に直流高圧2kVを印加しながら測定した値である。
【0055】
又、本発明で用いた画像形成装置で転写ローラ124に印加される転写高圧の最大出力値は5kVである。これは、転写ローラ124の抵抗値が最も高くなる状態においても、常に安定した転写性が得られる転写電流を流すのに必要なためである。
【0056】
転写ローラ124の抵抗値が最も高くなる場合は、抵抗公差範囲内で抵抗値が高い、通紙による抵抗値上昇の発生、低湿環境下に長時間放置した場合、等であり、これらが組み合わさった場合に転写ローラ124の抵抗値は最も高くなる。
【0057】
具体的に説明すると、環境に伴う抵抗値の変化は約5.5〜6倍程度あり、通紙による抵抗値上昇変化も約1.5〜1.7倍程度ある。よって、転写ローラ124としては抵抗値公差の上限側である1×10Ωのものを、低湿環境下で使用することで1×10×6倍=6×108
Ω、更に通紙に伴う抵抗値上昇分として6×10×1.7倍=1.02×10Ωとなる。
【0058】
一方、本発明で用いた画像形成装置の転写電流Io
は5μAを必要とするため、転写バイアスを出力する転写高圧としては1×10(Ω)×5×10−6(μA)=5×10(V)が出力できる能力が必要となる。
【0059】
次に、本実施の形態と従来例での沿面放電の対策効果の確認を行った結果について説明する。
【0060】
既説のように沿面放電の発生する条件は限られており、本実験もその条件下で実施したものである。条件としては、低温低湿環境下として10℃/10%、転写ローラ124の抵抗値としては、公差中心品として9×10Ω、公差上限品として1×10Ω、転写高圧の最大出力を必要とする1×10Ω及び高抵抗側として9×10Ω・cm、8×10Ω・cmの5水準で弾性層端面形状違いによる円面放電の発生を比較した。又、従来例として外径が6mmの芯軸124aの外周面に肉厚4.5mmで弾性層124bを形成したもの、以上三者での比較検討を実施した。
【0061】
比較実験は、上記の各転写ローラ124を画像形成装置本体に組込み、ATVC制御にて決定された転写バイアスが印加された場合に沿面放電が発生するか否かを確認した。尚、沿面放電の確認は、検討を実施したエリアの照明を消し真っ暗な状態とした中で沿面放電により発生する青白い光が発生するかどうかを確認した。又、感光ドラム上に残る放電痕を確認した。確認結果を表1に示す
【0062】
【表1】

表に示したように、従来の実施形態で転写ローラ124の小径化を図った場合は、低温低湿環境下で画像形成装置を使用し通紙耐久等を伴うことで転写ローラ124の抵抗値が上昇してしまった場合に転写バイアスとして高電圧が印加されると沿面放電の発生が確認されるが、本発明の実施形態においては沿面放電の発生がなく、従来から広く使用されてきた外径の大きな転写ローラと遜色のないものとできることが判明した。
【0063】
以上、述べてきたように本発明の実施形態を用いれば、従来困難であった転写ローラ124の小径化を行っても、問題のない画像形成装置を提供することが可能とできる。
【0064】
<実施の形態2>
本実施の形態2においても、先の実施の形態1と同様の画像形成装置であるレーザービームプリンタに本発明を適用した。
【0065】
本実施の形態2におけるレーザービームプリンタの転写ローラ124は図6に示したような、芯軸側は斜めな凹面上と、芯軸と直行する端面も有する複合的な弾性層端面を有したものとした。転写ローラ124の抵抗値に関しては、先に説明した実施の形態1と同様であるので説明は省略する。
【0066】
次に、本実施の形態と、比較例として弾性層124b端面が芯軸124aと直交する形態のもの、従来例として小径化していない形態のもの、の三者で沿面放電の確認を行った結果に関して説明する。確認は、既に説明してあるように沿面放電の発生する先述した同条件下で実施した。又、転写ローラ抵抗値に関しても先述した実施の形態1と同様の5水準のものを用い、沿面放電の発生も同様な確認とした。
【0067】
【表2】

表に示したように、従来の実施形態で転写ローラ124の小径化を図った場合は、低温低湿環境下で画像形成装置を使用し通紙耐久等を伴うことで転写ローラ124の抵抗値が上昇してしまった場合に転写バイアスとして高電圧が印加されると沿面放電の発生が確認されるが、本発明の実施形態においては沿面放電の発生がなく、従来から広く使用されてきた外径の大きな転写ローラと遜色のないものとできることが判明した。
【0068】
本実施の形態は、前記実施の形態1に用いた転写ローラに比較して、弾性層端面124bが斜めに凹になっている部位が少ないので、確実な転写ニップが形成できる弾性層124b端面を有した転写ローラ124とすることが可能である。
【0069】
一方、転写ローラの生産性の観点からも、前記実施の形態1よりは容易に生産できる点も優れている。しかし、弾性層端面124bの断面距離が前記実施の形態1より短くなってしまう面もある。よって、前記実施の形態1との比較において、該画像形成装置に適した形態を取捨選択する必要がある。
【0070】
以上、述べてきたように本発明の実施形態を用いれば、従来困難であった転写ローラ124の小径化を行っても、問題のない画像形成装置を提供することが可能とできる。
【0071】
<実施の形態3>
本実施の形態3においても、先の実施の形態1,2と同様の画像形成装置本体であるレーザービームプリンタに本発明を適用した。
【0072】
本実施の形態3におけるレーザービームプリンタの転写ローラ124は、図7に示したように、弾性層124bの端面の断面を、頂点が転写ローラ124の長手中心方向に頂点を有する三角形状としたものである。
【0073】
本実施の形態の特徴は、画像形成措置の記録材Sの搬送方向と直交する弾性体124bの長手方向において、最大通紙の記録材Sの巾の弾性層124bが形成されていることである。そのため、記録材S端部までの画像形成を許可した画像形成装置において使用した場合でも、記録材S端までの画像転写が確実に実行できることである。
【0074】
しかも、転写ローラ124の全長は先に説明した実施の形態1及び2と同等のものとすることが可能である。
【0075】
本実施の形態は、上記した特徴からの長所と欠点を考慮した上で、取捨選択するものとして提案した。
【0076】
本実施の形態での効果に関しては、先述した実施の形態1,2と同様であることは述べるまでもないので割愛するが、従来困難であった転写ローラ124の小径化を行っても、問題のない画像形成装置を提供することが可能となる。
【0077】
<他の実施の形態>
前述した実施の形態では、電子写真画像形成装置としてレーザビームプリンタを例示したが、電子写真画像形成プロセスを用いて、記録紙、OHPシート、布等の記録媒体に画像を形成する装置であり、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えば、LEDプリンタ、レーザービームプリンタ等)、電子写真ファクシミリ装置及び電子写真ワードプロセッサ等の他の画像形成装置においても上述構成を適用し得ることは明らかである。
【0078】
又、本発明の実施形態中では、弾性層124bの断面は直線形状として説明してきたが、曲線であっても同様の効果が期待できるのは勿論、階段状に形成しても同様の効果が得られる等、沿面放電を防ぐために弾性層124bの断面距離を長くできる構成のものであれば、その形態は問うものではない。
【0079】
又、実施形態中では像担持体である感光ドラム151に当接される導電部材として、トナー像を転写する転写ローラでの実施を説明してきたが、高圧バイアスが印加されるローラ状の導電部材への適用が可能であることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1の説明図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図3】本発明に係るプロセスカートリッジの概略断面図である。
【図4】本発明に係る転写ローラの概略断面図である。
【図5】本発明の従来例の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
2 画像形成部
3 定着器
4 電源部、電装部
5 給紙部
6 メモリタグ
P プロセスカートリッジ
S 記録材
111,215 カセット
112,217,218 給紙ローラ
113,114 搬送ローラ対
115 センサレバー
116 フォトインタラプタ
121 レーザースキャナー
124,204 転写ローラ
124a 芯軸
124b 弾性層
124c コート層
125,153 帯電接点
126,158 現像接点
133 排紙搬送ローラ対
141,142 搬送ローラ対
151,201 感光体
152 帯電ローラ
154 トナー収納容器
155 攪拌部材
157 現像ローラ
158 現像ブレード
159 クリーニングブレード
160 廃トナー容器
161 ドラムシャッター
171 転写前ガイド
172 除電針
173 搬送ガイド
175 導電性軸受
176 絶縁性軸受
177 加圧ばね
180 ドラムギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に接触配置される、導電性弾性体が芯軸上に形成された回転体状の導電部材を有し、像担持体上に形成されたトナー像を記録材上に転写し、記録材上に転写された未定着トナー像を加熱用回転体と加圧用回転体により互いに圧接して成る定着ニップ間を通過させ未定着トナー像を永久画像とならしめる加熱定着装置を備えた電子写真画像形成装置において、
該導電部材は導電性弾性体の端面と芯金の成す角度が、少なくとも芯軸側は斜めに、即ち直交しない面が、導電性弾性体の円周全域において形成されている回転体状の導電部材であることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【請求項2】
前記導電部材の導電性弾性体の端面と芯金の成す角度が、芯軸側は斜めに形成された面、即ち直交しない面が導電性弾性体端面の円周全域に形成され、且つ、芯軸と垂直に形成された面を導電性弾性体端面の一部分或いは全周において有する回転体状の導電部材であることを特徴とする請求項1記載の電子写真画像形成装置。
【請求項3】
前記導電部材の導電性弾性体の端面と芯金の成す角度は鋭角である回転体状の導電部材を有したことを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真画像形成装置。
【請求項4】
前記導電部材の導電性弾性体の長手方向断面の弾性体端面は、長手中央方向に頂点を有する三角形状である面を、導電性弾性体端面の円周全域において有する回転体状の導電部材であることを特徴とする請求項1記載の電子写真画像形成装置。
【請求項5】
前記回転体状の導電部材が、前記像担持体表面に形成されたトナー像を転写材に転写するための転写ローラであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−235419(P2006−235419A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52269(P2005−52269)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】